説明

重要コンテンツを認証データに保持した状態で文書を自己認証する方法

【課題】重要コンテンツを認証データに保持した状態で文書を自己認証する方法を提供する。
【解決手段】認証データの生成時、ダウンサンプリングすることなく署名を圧縮することにより、解像度及び品質が保持される。圧縮された署名データ(ビットストリング)は、文書の画像セグメントに埋め込まれる。例えば、ビットストリングの各ビットは、1以上の画像ピクセルの下位ビットに保持される。当該ビットストリングからハッシュコードが算出され、文書上に印刷されるバーコードに保存される。読み取られた文書を認証するため、ビットストリングが画像セグメントから復元される。その復元されたビットストリングからハッシュコードが算出され、バーコードから抽出されたハッシュコードと比較される。復元されたビットストリングから再生成された署名は、読み取られた文書における署名と比較される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書自己認証方法に関し、特に、認証データに高解像度で文書の署名等の重要コンテンツを保持する文書自己認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テキスト、グラフィックス、画像等を含む元のデジタル文書は、多くの場合印刷され、印刷されたハードコピーは配布、複写等がなされ、その後、多くの場合読みとられてデジタル形式に戻る。読み取られたデジタル文書を認証するとは、その読み取られた文書が元のデジタル文書の真正なコピーであるか否か、すなわち、その文書がハードコピー形式の状態において改ざんされたか否かを判定することをいう。改ざんは、故意行為又は偶然の出来事に起因して起こり得る。閉ループ処理における文書の認証とは、文書自体の認証情報を有する印刷文書を生成し、読み取られた文書から抽出された認証情報を用いて、その読み取られた文書を認証することをいう。そのような印刷文書は、当該印刷文書上の情報以外の情報を必要とせずにそのコンテンツの認証を行うことから、自己認証文書と言われる。
【0003】
バーコード、特に2次元(2d)バーコードを用いた自己認証文書を生成する方法が提案されている。具体的にそのような方法は、文書(ビットマップ画像、テキスト、グラフィックス等)のコンテンツを処理するステップと、それを文書コンテンツを表す認証データに変換するステップと、当該認証データを2dバーコード(認証バーコード)にエンコードするステップと、印刷文書と同一の記録媒体に当該バーコードを印刷するステップと、を含む。これにより自己認証文書が生成される。そのような印刷文書を認証するために、当該文書が読み取られ、例えば、光学式文字認識(OCR)技術を用いて抽出されたテキスト、ビットマップ画像等、文書のコンテンツを表す読み取りデータが取得される。認証バーコードも読み取られ、それに含まれた認証データが抽出される。そして、読み取られたデータが認証データと比較され、印刷文書に改ざんされた箇所があるか否か、すなわち、当該文書が真正であるか否かが判定される。何が改ざんされたかを判定可能な認証技術もあれば、改ざんがなされたか否かを単に判定する技術もある。
【0004】
2dバーコードを用いた文書の認証方法については、2008年3月18日に出願された共同所有の米国特許出願番号12/050701及び12/050718に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
文書のコンテンツをエンコードするバーコードを生成するため、多くの場合、文書中のコンテンツの種類によって異なる取り扱いがなされる。テキスト・コンテンツは、テキスト文字列としてエンコードされ得る。一方、データサイズが大きくなりがちな画像コンテンツは、一般に、バーコードにコード化する前に、ダウンサンプリングや圧縮されることによってサイズが縮小される。このように、画像コンテンツを表すバーコードに保持される認証データは、一般に、文書中の元の画像データよりも解像度が低い。
【0006】
文書中には、多くの場合、署名等の重要コンテンツを含む領域がある。従来の文書認証技術では、署名は一般に画像として取り扱われていた。すなわち、署名画像がダウンサンプリングされ圧縮されて、その後バーコードにコード化されていた。このように、認証ステップの間、読み取られた文書上のバーコードから抽出された署名画像は、多くの場合、質が悪く、抽出された署名画像と読み取られた文書上の署名との比較は当てにならなかった。
【0007】
したがって、本発明は、従来技術の限定及び不都合に起因する一以上の問題を実質的に取り除くことが可能な文書認証方法を対象とする。
【0008】
本発明の目的は、高品質データに署名等の重要コンテンツを保持する自己認証文書を生成する方法と、そのような文書を認証する関連する方法と、を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる特徴及び効果は、以下の記載に示されるものであり、その一部は該記載から明白になり、或いは、本発明の実施により得られるであろう。本発明の目的とその他の効果は、添付図面と共に詳細な説明及び特許請求の範囲において具体的に示された構成によって実現及び達成されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの及び/又は他の目的を達成するため、具体的かつ広範に記載されているように、本発明は、信頼性のある自己認証文書を生成して文書認証する方法を提供するものであり、(a)第1デジタル文書を取得する工程と、(b)前記第1デジタル文書から第2デジタル文書を生成する工程と、(c)前記第2デジタル文書を印刷又は保存する工程と、を有し、工程(b)は、(b1)前記第1デジタル文書を分割して、重要コンテンツを含む少なくとも1つのセグメントと、複数のピクセルからなる非重要画像を含む少なくとも1つのセグメントと、を抽出する工程と、(b2)前記重要コンテンツを処理して、処理されたデータのビットストリングを生成する工程と、(b3)前記非重要画像を変更して、前記ビットストリングを当該非重要画像に埋め込む工程と、を含み、前記ビットストリングの各データビットは、前記変更された非重要画像の1以上のピクセルの所定の下位ビットに埋め込まれ、前記第2デジタル文書は、前記重要コンテンツを含むセグメントと、変更された前記非重要画像を含むセグメントと、を含む。
【0011】
上記工程(b)は更に、(b4)ハッシュ関数を用いて、処理されたデータの前記ビットストリングからハッシュコードを算出する工程と、(b5)前記ハッシュコードをバーコードにエンコードする工程と、を含んでもよく、前記第2デジタル文書は更に前記バーコードを含む。
【0012】
上記方法は、更に、(d)前記印刷文書を読み取って第3デジタル文書を生成する工程と、(e)前記第3デジタル文書を解析して、当該文書が真正であるか否かを判定する工程と、(f)前記第3デジタル文書が真正であるか否かを示す結果を表示又は保存する工程と、を有してもよく、工程(e)は、(e1)前記第3デジタル文書を分割して、少なくとも、前記重要コンテンツを含むセグメントと、変更された前記非重要画像を含むセグメントと、を抽出する工程と、(e2)前記非重要画像に埋め込まれた前記ビットストリングを復元する工程と、(e3)前記復元されたビットストリングを処理して、再生成された重要コンテンツを取得する工程と、(e4)前記再生成された重要コンテンツを、工程(e1)で取得された重要コンテンツと比較して、それらが実質的に同一であるか否かを判定し、それらが実質的に同一でない場合、前記第3デジタル文書は真正ではないと判定する工程と、を含む。
【0013】
工程(e)は更に、(e5)前記第3デジタル文書における前記バーコードを特定し、当該バーコードにエンコードされた前記ハッシュコードを抽出する工程と、(e6)前記ハッシュ関数を用いて、前記復元されたビットストリングからハッシュコードを算出する工程と、(e7)前記算出されたハッシュコードを、前記バーコードから抽出されたハッシュコードと比較して、それらが同一であるか否かを判定し、それらが同一でない場合、前記第3デジタル文書は真正ではないと判定する工程と、を含んでもよい。
【0014】
別の態様において、本発明は、(a)デジタル文書を取得する工程と、(b)前記デジタル文書を解析して、当該文書が真正であるか否かを判定する工程と、(f)前記デジタル文書が真正であるか否かを示す結果を表示又は保存する工程と、を有し、前記デジタル画像は、印刷文書を読み取ることによって生成され、前記印刷文書は、重要コンテンツを含む少なくとも1つのセグメントと、非重要画像を含む少なくとも1つのセグメントと、を含み、前記非重要画像にはビットストリングが埋め込まれており、前記ビットストリングは、前記重要コンテンツを処理することによって生成され、工程(b)は、(b1)前記デジタル文書を分割して、少なくとも、前記重要コンテンツを含むセグメントと、前記非重要画像を含むセグメントと、を抽出する工程と、(b2)前記非重要画像に埋め込まれた前記ビットストリングを復元する工程と、(b3)前記復元されたビットストリングを処理して、再生成された重要コンテンツを取得する工程と、(b4)前記再生成された重要コンテンツを、工程(b1)で取得された重要コンテンツと比較して、それらが実質的に同一であるか否かを判定し、それらが実質的に同一でない場合、前記デジタル文書は真正ではないと判定する工程と、を含む文書認証方法を提供する。
【0015】
前記印刷文書は、ハッシュコードがコード化されたバーコードを更に含んでもよく、前記ハッシュコードは、前記ビットストリングからハッシュ関数を用いて算出されたものであり、工程(b)は更に、(b5)前記デジタル文書における前記バーコードを特定し、当該バーコードにエンコードされた前記ハッシュコードを抽出する工程と、(b6)前記ハッシュ関数を用いて、前記復元されたビットストリングからハッシュコードを算出する工程と、(b7)前記算出されたハッシュコードを、前記バーコードから抽出されたハッシュコードと比較して、それらが同一であるか否かを判定し、それらが同一でない場合、前記デジタル文書は真正ではないと判定する工程と、を含んでもよい。
【0016】
別の態様において、本発明は、データ処理装置に上記方法を実行させるコンピュータプログラム製品を提供する。
【0017】
当然のことながら、以上の一般的記載及び以下の詳細な記載は、何れも説明のための例示であって、特許請求の範囲に記載された発明のさらなる説明を提供することを意図したものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る、自己認証文書の生成処理を示すフロー図である。
【図2】本発明の実施形態に係る、当該文書の印刷及び読み取り後の当該文書の認証処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態は、改良された文書認証方法を提供する。この改良された文書認証方法では、文書中の署名等の重要コンテンツが、当該文書の有する認証データに高い解像度で保持される。
【0020】
従来の文書認証方法では、認証バーコード・スタンプのサイズが、高解像度で認証データを保存するのに一般に不十分であった。上述のように、従来の文書認証方法は、画像データを認証データに変換してバーコードに保存するために、一般に、画像データのダウンサンプリングを行うものであった。多くの場合、署名等の重要コンテンツに関して、ダウンサンプリングは不満足な認証結果をもたらしていた。
【0021】
本発明の実施形態によると、認証データの生成時に、署名等の重要コンテンツがダウンサンプリングされることなく処理されるか、或いは比較的高いサンプリング・レートでダウンサンプリングされ、比較的低い圧縮比で圧縮されることによって、情報の解像度及び品質が保持される。重要コンテンツの認証データは、バーコードに保存されるよりはむしろ、例えば、画像ピクセルの下位ビットに保存される等、文書上の画像に埋め込まれる。これにより、比較的多量の認証データが画像に埋め込み可能である。安全性を高めるため、重要コンテンツの認証データに対してハッシュコードが生成され、バーコードに保存される。
【0022】
図1及び図2を参照して、文書自己認証方法についてより詳細に説明する。図1は、自己認証文書の生成処理を示すフロー図である。図2は、文書が印刷され、配布され、そして読み取られた後に当該文書を認証する処理を示すフロー図である。
【0023】
図1を参照する。まず、デジタル文書が複数のセグメントに分割される(ステップS11)。各セグメントには、例えば、テキストのパラグラフ、テキスト行、図形オブジェクト、画像オブジェクト、署名等が含まれる。文書を分割する技術はよく知られており、どの分割技術を用いてもよい。署名はもともとビットマップ画像であるが、署名が、非署名画像に見られるような広がった黒又はグレー領域を含むというよりは、実質的に均一の線幅の線を主に含むという事実によって、及び/又は署名画像が一般に比較的低い画像密度を有するという事実によって、非署名画像と区別され得る。本開示で用いられているように、特に指定のない限り、「画像」とは非署名画像をいう。このように、ステップS11は、署名を非署名画像と区別して署名セグメントを抽出するステップを含む。全ての非署名セグメント(テキスト、グラフィックス、画像等)に対して通常の従来の処理を施して認証データを生成し、それをバーコードにエンコードする(ステップS13)。この処理には、光学式文字認識、画像のダウンサンプリング、圧縮等が含まれてもよい。
【0024】
セグメントが署名セグメントである場合(ステップS12においてY)、署名画像がダウンサンプリングされずに圧縮され、圧縮データがビットストリングとして表される(ステップS14)。ビットストリングは、署名セグメントの認証データを構成する。圧縮方法として、JPEG等の圧縮方法を用いてもよい。次いで、圧縮された署名画像のビットストリングが、文書の1以上の画像オブジェクトに埋め込まれる(ステップS15)。ビットストリングを画像に埋め込む方法として、様々な方法が用いられる。好ましい実施形態において、ビットストリングの各ビットは、n×mピクセルを1ブロックとした画像の下位ビットに埋め込まれる。n×mのブロックを用いることで、読み取られた文書からビットストリングが復元されるときに、ノイズを抑制することができる。ビットを埋め込むためには、画像が、十分な数のビット(例えば、8ビット)をもつ複数ビットピクセル値を有していなければならない。文書中の元の画像のピクセル値が、不十分な数のビットを有していれば、十分な数のビットとなるようにピクセル値が変換される。例えば、元の画像が白黒であれば、ピクセル値は、2進値の0及び1から、8ビット値の16及び255に変換される。データビットをピクセルの下位ビットに埋め込むために、埋め込まれるデータビットの値に応じて、ピクセル値の1以上の所定の下位ビットがいくぶん変更される。所定の下位ビットは、例えば、最下位3ビット、最下位4ビット等であり、文書の印刷及び読み取りに使用されるプリンタ及びスキャナの特性(グレースケール解像度、ノイズレベル等)に依存する。
【0025】
一実施形態において、ビットストリングの埋め込みに用いられる画像は、8ビットピクセル値として表わされる白黒画像である。ここで、白ピクセルのピクセル値は255であり、黒ピクセルのピクセル値は16である。埋め込み対象のデータビットが0である場合、データビットを埋め込んだ後のピクセル値は、白ピクセルが255で黒ピクセルが16となる。埋め込み対象のデータビットが1である場合、データビットを埋め込んだ後のピクセル値は、白ピクセルが239で黒ピクセルが0となる。結果として得られる画像では、画像の黒領域が黒よりわずかに薄くなり(ダークグレー)、画像の白領域がわずかにグレーになる。当然のことながら、これはほんの一例であって、データビットをピクセル値に埋め込む方法として、当業者が容易に設計可能な他の方法を用いてもよい。ビットストリングの埋め込みに用いられる画像は、グレースケールの画像であってもよい。ただし、この場合の結果として得られる、読み取られた画像(スキャン画像)から抽出されたビットストリングデータはやや不安定である。
【0026】
一実施形態において、n及びmの値は、それぞれ、2、2である。nとmの値が大きくなるにつれ、ビットストリングの埋め込みに必要な画像が大きくなるが、当該ビットストリングを復元するために読み取られた画像におけるノイズは低くなる。一例として、画像セグメントのサイズが2cm×2cmで、読み取り(スキャン)が600dpi (dots per inch) 解像度で行われる場合、当該画像セグメントには約472×472ピクセルが含まれる。一つの署名に対する圧縮されたビットストリングが約1KB(8kビット)で、各データビットが、2×2ピクセルからなるブロック(n=2、m=2)に埋め込まれる場合、一つの署名を埋め込むために約32k(32768)ピクセルが必要となる。このように、文書の2cm×2cmの画像セグメントには、約6〜7個の署名が埋め込み可能である。
【0027】
図1に戻り、適切なハッシュ関数(好ましくは、暗号学的ハッシュ関数)を用いて、圧縮された署名データのビットストリングからハッシュコードが算出され、バーコードにコード化される(ステップS16)。ハッシュコードは比較的サイズが小さく、例えば、128ビット、256ビット等である。ハッシュコードの目的は、画像に埋め込まれたビットストリングが改ざんされたか否かを、認証中(図2参照)に判定することである。ハッシュコードの使用はオプションであるが、ハッシュコードを使用することで認証方法の安全性が向上する。また、署名及び当該署名を埋め込む画像の双方が、置き換えられ又は取り除かれる可能性がなくなる。加えて、ビットストリングが埋め込まれた画像セグメントの位置や埋め込みアルゴリズム等の管理情報も、バーコードにエンコードされ得る。
【0028】
文書の全てのセグメントが処理されると(ステップS17においてN)、認証バーコードと、圧縮された署名データのビットストリングを埋め込むいくつかの変更された画像セグメントと、を有するデジタル文書、すなわち、自己認証文書が生成される(ステップS18)。このデジタル文書は、印刷され、又は後の印刷のために保存される(ステップS18)。
【0029】
図1に示す処理において、ステップS15とS16の順番は重要ではない。また、ステップS13及びS16のそれぞれには、データをバーコードにエンコードするステップが示されているが、文書中の全てのセグメントが処理された後に、1ステップでバーコードデータを生成するステップを実行するようにしてもよい。
【0030】
次に、図2を参照する。印刷後に読み取られた自己認証文書を認証するために、その読み取られたデジタル文書が複数のセグメントに分割される(ステップS21)。各セグメントには、例えば、テキストのパラグラフ、テキスト行、図形オブジェクト、画像オブジェクト、署名等が含まれる。このステップは、図1のステップS11と類似している。文書中のバーコードが特定され、デコードされ、そして、当該バーコードからハッシュコードが抽出される(ステップS22)。このステップでは、圧縮された署名データのビットストリングが埋め込まれた画像セグメントの位置に関する情報も、当該バーコードから抽出される。バーコードに含まれるその他の情報も、必要に応じて抽出され、使用される。読み取られた文書中のバーコードを特定する技術は周知である。
【0031】
次いで、圧縮された署名データのビットストリングが埋め込まれた画像セグメントを解析することによって、当該埋め込まれたビットストリングが復元される(ステップS23)。なお、十分なグレースケールの深さ及び解像度を有するグレースケールスキャンを用いて文書が読み取られる。画像ピクセルから埋め込まれたビットを復元することは、埋め込み処理の逆の処理であると考えられる。例えば、例示的な上述の埋め込み方法を用いると、読み取り画像におけるピクセルのピクセル値が約255又は16である場合、埋め込まれたデータビットは0であり、ピクセル値が約239又は0である場合、埋め込まれたデータビットは1である。ステップS23で復元されたビットストリングは、圧縮された署名画像を表す。復元されたビットストリングから、自己認証文書の生成時に使用されたハッシュ関数と同一のものを用いて、ハッシュコードが算出される(ステップS24)。ステップS24で算出されたハッシュコードは、バーコードから抽出されたハッシュコードと比較され、画像セグメント、及びそれ故に埋め込まれたビットストリングが、文書が読み取られる前に改ざんされたか否かが判定される(ステップS25)。2つのハッシュコードが異なる場合、当該文書が改ざんされた(すなわち、真正ではない)と判定される(ステップS27)。認証結果は、ユーザに対して表示され、又は保存され、本処理が終了する(ステップS32)。
【0032】
2つのハッシュコードが同一であれば、次のステップに移行する。圧縮された署名画像を表すビットストリングは解凍され、当該署名画像が再生成される(ステップS28)。再生成された署名画像は、文書分割ステップS21から得られた署名画像セグメントと比較され、これら2つの画像が実質的に同一であるか否かが判定される(ステップS29)。2つの画像を比較する技術は周知であり、どのような比較技術を用いてもよい。どの技術を用いるかによって、2つの画像が実質的に同一であるか否かを判定する基準が異なる。これは、ノイズ及び他の要素に起因してそれらが完全に同一になるわけではないからである。2つの署名画像が実質的に同一ではない場合(ステップS30においてN)、当該文書は改ざんされた(すなわち、真正はない)と判定される(ステップS27及びステップS32)。2つの署名画像が実質的に同一である場合(ステップS30においてY)、文書の他のセグメント(例えば、テキスト、画像、グラフィックス等)に対する認証が行われる(ステップS31)。認証判定の最終結果は、ユーザに対して表示され、又は保存される(ステップS32)。
【0033】
図2に示す処理において、種々のステップの順番は一般に重要ではない。例えば、ステップS24〜S26は、ステップS28〜S30の後に実行されてもよい。ステップS25及びS29の双方において比較がなされ、ステップS26及びS30の双方における回答がYesである場合に、署名が真正であると判定される。また、上述のように、ハッシュコードはオプションのセキュリティ機能である。よって、ハッシュコードを使用しない場合、ステップS22、S24、S25、及びS26は省略される。
【0034】
上述の説明では、署名を重要コンテンツとして用いた。より一般には、当該方法を用いて、任意の重要コンテンツを表すビットストリングを非重要画像セグメントに埋め込むことによって、当該任意の重要コンテンツをエンコードすることができる。
【0035】
上述の方法は、コンピュータ、並びに当該コンピュータに接続された、オプションとしてのプリンタ、スキャナ及び/又はプリンタ/スキャナ/複写機のオールインワン装置を含むデータ処理システムにおいて実行される。自己認証デジタル文書を生成する第1の処理(図1の処理)と、読み取られたデジタル文書を認証する第2の処理(図2の処理)とは、異なるコンピュータで実行可能である。それぞれの処理は、プリンタ又はスキャナが接続されたコンピュータ、又はこれらが接続されていないコンピュータによって実行可能である。第1の処理を実行するコンピュータは、生成するデジタル文書を保存し、印刷のために当該文書を別のコンピュータに送信することができる。第2の処理を実行するコンピュータは、別のコンピュータから、認証対象となる読み取られた文書を受信可能である。当該処理は、適切な処理能力を有するプリンタ又はスキャナによっても実行可能である。これらの処理は、好ましくは、ソフトウェア又はファームウェアとして実行される。
【0036】
本発明の主旨と範囲を逸脱しない限り、本発明の文書認証方法及び関連する装置に種々の改変や変形を加えてよいことは、当業者にとって言うまでもない。このように、本発明は、添付の特許請求の範囲とその均等物の範囲内となる改変や変形に及ぶことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1デジタル文書を取得する工程と、
(b)前記第1デジタル文書から第2デジタル文書を生成する工程と、
(c)前記第2デジタル文書を印刷又は保存する工程と、を有し、
工程(b)は、
(b1)前記第1デジタル文書を分割して、重要コンテンツを含む少なくとも1つのセグメントと、複数のピクセルからなる非重要画像を含む少なくとも1つのセグメントと、を抽出する工程と、
(b2)前記重要コンテンツを処理して、処理されたデータのビットストリングを生成する工程と、
(b3)前記非重要画像を変更して、前記ビットストリングを当該非重要画像に埋め込む工程と、を含み、
前記ビットストリングの各データビットは、前記変更された非重要画像の1以上のピクセルの所定の下位ビットに埋め込まれ、
前記第2デジタル文書は、前記重要コンテンツを含むセグメントと、変更された前記非重要画像を含むセグメントと、を含む、文書認証方法。
【請求項2】
前記重要コンテンツは1以上の署名画像を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b2)は、前記重要コンテンツを圧縮することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b1)において、前記第1デジタル文書から分割された前記非重要画像は2値のピクセル値を有し、
工程(b3)は、前記2値のピクセル値を2進値の0又は1から8ビット値の16又は255に変換することと、埋め込み対象のデータビットが1である場合にピクセル値を0及び239に変更すること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)は更に、
(b4)ハッシュ関数を用いて、処理されたデータの前記ビットストリングからハッシュコードを算出する工程と、
(b5)前記ハッシュコードをバーコードにエンコードする工程と、を含み、
前記第2デジタル文書は更に前記バーコードを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(b1)は、文書コンテンツを含む付加セグメントを抽出することを更に含み、
工程(b)は更に、
(b6)前記非重要画像を含むセグメントと前記付加セグメントとを処理して認証データを生成する工程と、
(b7)前記認証データをバーコードにエンコードする工程と、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(c)は、前記第2デジタル文書を印刷して印刷文書を作成することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
(d)前記印刷文書を読み取って第3デジタル文書を生成する工程と、
(e)前記第3デジタル文書を解析して、当該文書が真正であるか否かを判定する工程と、
(f)前記第3デジタル文書が真正であるか否かを示す結果を表示又は保存する工程と、を更に有し、
工程(e)は、
(e1)前記第3デジタル文書を分割して、少なくとも、前記重要コンテンツを含むセグメントと、変更された前記非重要画像を含むセグメントと、を抽出する工程と、
(e2)前記非重要画像に埋め込まれた前記ビットストリングを復元する工程と、
(e3)前記復元されたビットストリングを処理して、再生成された重要コンテンツを取得する工程と、
(e4)前記再生成された重要コンテンツを、工程(e1)で取得された重要コンテンツと比較して、それらが実質的に同一であるか否かを判定し、それらが実質的に同一でない場合、前記第3デジタル文書は真正ではないと判定する工程と、
を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(e)は更に、
(e5)前記第3デジタル文書における前記バーコードを特定し、当該バーコードにエンコードされた前記ハッシュコードを抽出する工程と、
(e6)前記ハッシュ関数を用いて、前記復元されたビットストリングからハッシュコードを算出する工程と、
(e7)前記算出されたハッシュコードを、前記バーコードから抽出されたハッシュコードと比較して、それらが同一であるか否かを判定し、それらが同一でない場合、前記第3デジタル文書は真正ではないと判定する工程と、
を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記重要コンテンツは1以上の署名画像を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記復元されたビットストリングは、圧縮された署名画像を表し、
工程(e3)は、前記ビットストリングを解凍することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(a)デジタル文書を取得する工程と、
(b)前記デジタル文書を解析して、当該文書が真正であるか否かを判定する工程と、
(f)前記デジタル文書が真正であるか否かを示す結果を表示又は保存する工程と、を有し、
前記デジタル画像は、印刷文書を読み取ることによって生成され、
前記印刷文書は、重要コンテンツを含む少なくとも1つのセグメントと、非重要画像を含む少なくとも1つのセグメントと、を含み、
前記非重要画像にはビットストリングが埋め込まれており、
前記ビットストリングは、前記重要コンテンツを処理することによって生成され、
工程(b)は、
(b1)前記デジタル文書を分割して、少なくとも、前記重要コンテンツを含むセグメントと、前記非重要画像を含むセグメントと、を抽出する工程と、
(b2)前記非重要画像に埋め込まれた前記ビットストリングを復元する工程と、
(b3)前記復元されたビットストリングを処理して、再生成された重要コンテンツを取得する工程と、
(b4)前記再生成された重要コンテンツを、工程(b1)で取得された重要コンテンツと比較して、それらが実質的に同一であるか否かを判定し、それらが実質的に同一でない場合、前記デジタル文書は真正ではないと判定する工程と、
を含む、文書認証方法。
【請求項13】
前記重要コンテンツは1以上の署名画像を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記復元されたビットストリングは、圧縮された署名画像を表し、
工程(b3)は、前記ビットストリングを解凍することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記印刷文書は、ハッシュコードがコード化されたバーコードを更に含み、
前記ハッシュコードは、前記ビットストリングからハッシュ関数を用いて算出されたものであり、
工程(b)は更に、
(b5)前記デジタル文書における前記バーコードを特定し、当該バーコードにエンコードされた前記ハッシュコードを抽出する工程と、
(b6)前記ハッシュ関数を用いて、前記復元されたビットストリングからハッシュコードを算出する工程と、
(b7)前記算出されたハッシュコードを、前記バーコードから抽出されたハッシュコードと比較して、それらが同一であるか否かを判定し、それらが同一でない場合、前記デジタル文書は真正ではないと判定する工程と、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
データ処理装置を制御するためのコンピュータ読み取り可能なプログラムコードが組み込まれたコンピュータ利用可能なメディアを有し、
前記コンピュータ読み取り可能なプログラムコードは、前記データ処理装置に文書認証処理を実行させるように構成され、当該処理は、
(a)第1デジタル文書を取得する工程と、
(b)前記第1デジタル文書から第2デジタル文書を生成する工程と、
(c)前記第2デジタル文書を印刷又は保存する工程と、を有し、
工程(b)は、
(b1)前記第1デジタル文書を分割して、重要コンテンツを含む少なくとも1つのセグメントと、複数のピクセルからなる非重要画像を含む少なくとも1つのセグメントと、を抽出する工程と、
(b2)前記重要コンテンツを処理して、処理されたデータのビットストリングを生成する工程と、
(b3)前記非重要画像を変更して、前記ビットストリングを当該非重要画像に埋め込む工程と、を含み、
前記ビットストリングの各データビットは、前記変更された非重要画像の1以上のピクセルの所定の下位ビットに埋め込まれ、
前記第2デジタル文書は、前記重要コンテンツを含むセグメントと、変更された前記非重要画像を含むセグメントと、を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項17】
前記重要コンテンツは1以上の署名画像を含む、請求項16に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項18】
工程(b2)は、前記重要コンテンツを圧縮することを含む、請求項17に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項19】
工程(b1)において、前記第1デジタル文書から分割された前記非重要画像は2値のピクセル値を有し、
工程(b3)は、前記2値のピクセル値を2進値の0又は1から8ビット値の16又は255に変換することと、埋め込み対象のデータビットが1である場合にピクセル値を0及び239に変更すること、を含む、請求項16に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項20】
工程(b)は更に、
(b4)ハッシュ関数を用いて、処理されたデータの前記ビットストリングからハッシュコードを算出する工程と、
(b5)前記ハッシュコードをバーコードにエンコードする工程と、を含み、
前記第2デジタル文書は更に前記バーコードを含む、請求項16に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項21】
工程(b1)は、文書コンテンツを含む付加セグメントを抽出することを更に含み、
工程(b)は更に、
(b6)前記非重要画像を含むセグメントと前記付加セグメントとを処理して認証データを生成する工程と、
(b7)前記認証データをバーコードにエンコードする工程と、
を含む、請求項20に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項22】
工程(c)は、前記第2デジタル文書を印刷して印刷文書を作成することを含む、請求項20に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項23】
(d)前記印刷文書を読み取って第3デジタル文書を生成する工程と、
(e)前記第3デジタル文書を解析して、当該文書が真正であるか否かを判定する工程と、
(f)前記第3デジタル文書が真正であるか否かを示す結果を表示又は保存する工程と、を更に有し、
工程(e)は、
(e1)前記第3デジタル文書を分割して、少なくとも、前記重要コンテンツを含むセグメントと、変更された前記非重要画像を含むセグメントと、を抽出する工程と、
(e2)前記非重要画像に埋め込まれた前記ビットストリングを復元する工程と、
(e3)前記復元されたビットストリングを処理して、再生成された重要コンテンツを取得する工程と、
(e4)前記再生成された重要コンテンツを、工程(e1)で取得された重要コンテンツと比較して、それらが実質的に同一であるか否かを判定し、それらが実質的に同一でない場合、前記第3デジタル文書は真正ではないと判定する工程と、
を含む請求項22に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項24】
工程(e)は更に、
(e5)前記第3デジタル文書における前記バーコードを特定し、当該バーコードにエンコードされた前記ハッシュコードを抽出する工程と、
(e6)前記ハッシュ関数を用いて、前記復元されたビットストリングからハッシュコードを算出する工程と、
(e7)前記算出されたハッシュコードを、前記バーコードから抽出されたハッシュコードと比較して、それらが同一であるか否かを判定し、それらが同一でない場合、前記第3デジタル文書は真正ではないと判定する工程と、
を含む請求項23に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項25】
前記重要コンテンツは1以上の署名画像を含む、請求項24に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項26】
前記復元されたビットストリングは、圧縮された署名画像を表し、
工程(e3)は、前記ビットストリングを解凍することを含む、請求項25に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項27】
データ処理装置を制御するためのコンピュータ読み取り可能なプログラムコードが組み込まれたコンピュータ利用可能なメディアを有し、
前記コンピュータ読み取り可能なプログラムコードは、前記データ処理装置にデジタル文書を認証するための処理を実行させるように構成され、当該処理は、
(a)デジタル文書を取得する工程と、
(b)前記デジタル文書を解析して、当該文書が真正であるか否かを判定する工程と、
(f)前記デジタル文書が真正であるか否かを示す結果を表示又は保存する工程と、を有し、
前記デジタル画像は、印刷文書を読み取ることによって生成され、
前記印刷文書は、重要コンテンツを含む少なくとも1つのセグメントと、非重要画像を含む少なくとも1つのセグメントと、を含み、
前記非重要画像にはビットストリングが埋め込まれており、
前記ビットストリングは、前記重要コンテンツを処理することによって生成され、
工程(b)は、
(b1)前記デジタル文書を分割して、少なくとも、前記重要コンテンツを含むセグメントと、前記非重要画像を含むセグメントと、を抽出する工程と、
(b2)前記非重要画像に埋め込まれた前記ビットストリングを復元する工程と、
(b3)前記復元されたビットストリングを処理して、再生成された重要コンテンツを取得する工程と、
(b4)前記再生成された重要コンテンツを、工程(b1)で取得された重要コンテンツと比較して、それらが実質的に同一であるか否かを判定し、それらが実質的に同一でない場合、前記デジタル文書は真正ではないと判定する工程と、
を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項28】
前記重要コンテンツは1以上の署名画像を含む、請求項27に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項29】
前記復元されたビットストリングは、圧縮された署名画像を表し、
工程(b3)は、前記ビットストリングを解凍することを含む、請求項28に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項30】
前記印刷文書は、ハッシュコードがコード化されたバーコードを更に含み、
前記ハッシュコードは、前記ビットストリングからハッシュ関数を用いて算出されたものであり、
工程(b)は更に、
(b5)前記デジタル文書における前記バーコードを特定し、当該バーコードにエンコードされた前記ハッシュコードを抽出する工程と、
(b6)前記ハッシュ関数を用いて、前記復元されたビットストリングからハッシュコードを算出する工程と、
(b7)前記算出されたハッシュコードを、前記バーコードから抽出されたハッシュコードと比較して、それらが同一であるか否かを判定し、それらが同一でない場合、前記デジタル文書は真正ではないと判定する工程と、
を含む、請求項27に記載のコンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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