説明

重量物支持装置及び該装置を用いた不同沈下修復又は防止工法

【課題】高さが広範囲に調整可能でありながらコンパクトな重量物支持装置及び該装置を用いた不同沈下修復又は不同沈下防止方法の提供。
【解決手段】重量物支持装置1は、ジャッキの上において重量物の荷重を受ける上部台板20と、該上部台板と平行でジャッキの下においてジャッキを支える下部台板10であって間隔をおいてジャッキを取囲む外周縁部に少なくとも三つの貫通孔15を備えたものと、少なくとも三本の支柱40であって夫々が一端41において上部台板の外周縁部に取付けられ下端43側において下部台板10の前記少なくとも三つの貫通孔15のうち対応する貫通孔を貫通して下部台板から突出するもの40と、支柱の夫々のところにおける上部台板20と下部台板10との間隔を規定する間隔規定手段55であって対応する支柱のうち上部台板と下部台板との間の領域の所望部位に位置決めされるものとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物支持装置及び該装置を用いた不同沈下修復又は防止工法に係る。
【背景技術】
【0002】
地盤に比較的強固な支持層がある場合に、地盤沈下等により沈下した建築物ないし構造部の如き重量物の沈下を修正したり、隣接地域での工事等により沈下の虞れのある重量物の沈下を防ぐために、該重量物を支えるべく、該重量物の自重を利用して油圧ジャッキにより支持杭ないし鋼管杭を地中に打込むアンダーピニング工法(以下では、「鋼管圧入工法」又は「鋼管杭工法」若しくは「支持杭工法」ともいう)は知られている。
【0003】
このアンダーピニング工法による鋼管杭の打込み即ち圧入に際しては、鋼管杭の下端が地中の強固な地盤に達するまで、重量物例えば建築物の基礎の下において、鋼管杭の上端側に鋼管杭を溶接によりつなぎつつ鋼管杭の圧入を繰返す。鋼管杭の下端部が強固な地盤に達すると、次に、鋼管杭を支えとして利用して、建築物等のうち該杭に対面する基礎部を持上げて該基礎部の高さを調整して建築物等を水平に復元させる。すなわち、建築物等の基礎と該基礎に対面する鋼管杭の上端との間に、重量物支持装置を配置し、該重量物支持装置及び手動ジャッキによって建築物等を水平状態に最終的に復元させる。
【0004】
従来知られている重量物支持装置は、ジャッキの上において建築物等の荷重を受ける矩形板状の上部台板と、該上部台板と平行でジャッキの下においてジャッキを支える矩形板状の下部台板であって該下部台板のうち上部台板に対面する側の主面においてジャッキを取囲む外周縁部に下端で固着された四本の管体を備えたものと、四本のボルトからなる支柱であって夫々が上端において上部台板のうち下部台板に向いた主面の外周縁部に固着され下方に延び下部台板の前記四本の管体に挿入可能なものと、各ボルトに螺合されたナットであって管体の上面に当接されて上部台板と下部台板との間の間隔を規定するものとを有する(特許文献1)。
【0005】
この重量物支持装置では、下部台板上の支柱に囲まれた領域に配置されるジャッキにより下部台板に対する上部台板の位置を調整し、該調整位置においてナットの下端面が管体の上端面に当接するように各ナットの対応するボルトに対する螺合位置を調製・確定する。これにより、下部台板と上部台板との間隔、換言すれば、鋼管杭の上端(下部台板の下面)に対する建築物等の基礎の下端位置(上部台板の上面位置)が確定される。
【0006】
しかしながら、この従来の重量物支持装置では、ボルトを管体から引出し得る最大長が管体の長さよりも小さくなるので、最終的に調整可能な高さ(上部台板と下部台板との間隔)が制約されるから、調整すべき高さを予め正確に考慮してボルトや管体の長さが所望の大きさの重量物支持装置を準備しておく必要がある。すなわち、調整すべき高さが高い場合、該高さ分だけの長さのある管体を備えた重量物支持装置を準備しておく必要があるか、場合によっては継ぎ足されるべき鋼管杭の長さを調整する必要があり、作業が煩雑になるのを避け難い。また、水平修復を行う際に鋼管杭が事前の予想以上に沈むと、水平修復が完全には行い難くなる虞れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平4−69270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記した点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、高さが広範囲に調整可能でありながらコンパクトな重量物支持装置及び該装置を用いた不同沈下修復又は不同沈下防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の重量物支持装置は、前記目的を達成すべく、ジャッキの上において重量物の荷重を受ける上部台板と、該上部台板と平行でジャッキの下においてジャッキを支える下部台板であって間隔をおいてジャッキを取囲む外周縁部に少なくとも三つの貫通孔を備えたものと、少なくとも三本の支柱であって夫々が一端において上部台板の外周縁部に取付けられ下端側において下部台板の前記少なくとも三つの貫通孔のうち対応する貫通孔を貫通して下部台板から突出するものと、支柱の夫々のところにおける上部台板と下部台板との間隔を規定する間隔規定手段であって対応する支柱のうち上部台板と下部台板との間の領域の所望部位に位置決めされるものとを有する。
【0010】
本発明の重量物支持装置では、上部台板と平行でジャッキの下においてジャッキを支える下部台板が、「間隔をおいてジャッキを取囲む外周縁部に少なくとも三つの貫通孔を備え」、少なくとも三本の支柱の夫々が、「一端において上部台板の外周縁部に取付けられ下端側において下部台板の前記少なくとも三つの貫通孔のうち対応する貫通孔を貫通して下部台板から突出する」ので、支柱が貫通孔を貫通して突出する突出長を変えることによって、上部台板と下部台板との間隔が調整され得るから、一方では高さが広範囲に調整可能であり、他方では、コンパクトに形成され得る。鋼管圧入工法の場合に鋼管杭の打込みが完了した後、鋼管杭の上に載置される下部台板の貫通孔に挿通される各支柱は、(下部台板上にジャッキが配設される場合には)間隔をおいてジャッキを周方向に取囲むことになる(下部台板の)外周縁部に配置されるので、下部台板から下方に突出した支柱が下部台板の下に位置することになる支持杭ないし鋼管杭に当たることなく該鋼管杭の周囲に位置することになる(鋼管杭の代わりに簡便に支持プレートと共に鋼管を用いる場合には該鋼管に当たることなく該鋼管の周囲に位置することになる)。即ち、鋼管杭工法により圧入された鋼管杭の周囲には溶接等の便宜のために予めある程度の大きさ(広さ)の穴が掘られているので下部台板から下方に突出する支柱は地盤ないし地面に妨げられることなく鋼管杭の領域の周りのスペースに侵入し得る(簡便に支持プレートと共に鋼管を用いる場合も支持プレートの配設用の比較的大きい(広い)穴がありこの穴が支柱の侵入スペースを与える)。
【0011】
以上において、下部台板の貫通孔は、(下部台板上に配設される)ジャッキの配設領域又は(下部台板の下で下部台板を支える)鋼管杭の領域を取囲む三角形又は多角形を形成するように、三つ以上であれば、四つでも、五つ以上でもよい。また、下部台板及び上部台板は典型的には矩形(長方形(正方形の場合を含む))であるけれども、矩形以外の四辺形でも、三角形でも、五角形以上の多角形でもよい。
【0012】
本発明の重量物支持装置では、典型的には、下部台板の各貫通孔に一列につながった貫通孔を規定する管体が下部台板のうち上部台板に対面する主面から上部台板に向かって突設されており、前記間隔規定手段は、各管体のうち上部台板に対面する突出端面に当接して上部台板と下部台板との間隔を規定するように構成されており、下部台板の周方向に隣接する管体の間には、一組の隣接する管体間を除いて、梁状補強材が設けられている。
【0013】
その場合、管体が支持可能な荷重を高め得るだけでなく、該管体を繋ぐ梁状補強材が支持荷重を高め得る。なお、梁状補強材は、隣接管体間に一本だけであってもよいけれども、支持荷重を高めるためには、典型的には、二本以上が並設される。ここで、ジャッキの出し入れを容易にするために、典型的には、隣接管体間の一箇所(手前側になる箇所)は梁状補強材を設けないでおく。但し、出し入れが可能である限り、例えば、梁状補強材の本数を減らして出し入れを可能にしてもよい。
【0014】
本発明の重量物支持装置では、典型的には、前記支柱は外周に雄ねじが形成されたボルトからなり、前記間隔規定手段は該ボルトに螺合されたナットからなる。
【0015】
その場合、ナットのボルトに対する螺合位置を変えるだけで、間隔設定が可能になる。但し、位置調整が可能であれば、他の手段でもよい。なお、所望ならば、ナットを二つ設けておいてゆるみ止めナットとして働くようにしておいてもよい。
【0016】
この場合、本発明の重量物支持装置では、典型的には、ボルトが上部台板に螺着されている。
【0017】
その場合、ボルトを下部台板だけでなく上部台板から外し得るので、部品がコンパクトな状態になる。この場合、一つの建築物等を支えるために多数の重量物支持装置を要するので、非設置状態において全体としては無視し難いスペースを占有する虞れがあるものを、該占有スペースを最低限に抑え得る。なお、この場合、ボルトを下部台板だけでなく上部台板から外し得るので、重量物支持装置を鋼管杭(または鋼管)上で組立てることも可能になる。但し、所望ならば、ボルトが上部台板に溶接等によって固着されていてもよい。
【0018】
本発明の重量物支持装置では、典型的には、上部台板のうち下部台板の貫通孔に対面する部位にはナットが固着されていて、該ナットに、ボルトが螺着されるように構成されている。
【0019】
その場合、ボルト上端の上部台板のところでの支持が強固に行われ易い。すなわち、ボルトの端面を上部台板に溶接等によって固着する場合と比較して、該ボルトよりも径が大きく且つ平坦な形状が形成され易いナットを上部台板に溶接等により固着することになるので、固着が強固に行われ易い。
【0020】
この場合も、ボルトの上端が上部台板に固着されたナットに強固に固定され得るように、該ナットと協働してゆるみ止めナットを形成するもう一つのナットをボルトの上端部に螺合しておいて、該ナットを上部台板のナットに締め付けることによって上部台板に固着されたナットに対するボルト上端部の螺合が緩むのを確実に避け得るようにしてもよい。
【0021】
本発明の重量物支持装置では、典型的には、上部及び下部台板が矩形であり、下部台板が矩形の頂点に対応する部位に四つの貫通孔を備え、下部台板の各貫通孔に一列につながった貫通孔を規定する管体が下部台板のうち上部台板に対面する主面から上部台板に向かって突設されており、前記間隔規定手段は、各管体のうち上部台板に対面する突出端面に当接して上部台板と下部台板との間隔を規定するように構成されており、下部台板の周方向に隣接する管体の間には、一組の隣接する管体間を除いて、少なくとも一本の梁状補強材が設けられており、前記支柱は外周に雄ねじが形成されたボルトからなり、前記間隔規定手段は該ボルトに螺合されたナットからなり、ボルトが上部台板に螺着されている。
【0022】
その場合、占有スペースを最低限に抑えつつ強固な固着が行われ得る。
【0023】
本発明の重量物支持装置では、典型的には、上部台板のうち下部台板の貫通孔に対面する部位にはナットが固着されていて、該ナットに、ボルトが螺着されるように構成されている。
【0024】
その場合、上述の通り、溶接等による固着が強固に行われ易い。
【0025】
本発明の重量物支持装置では、典型的には、下部台板の下面から鋼管と嵌合可能な位置決め用管状部材が突設されている。
【0026】
その場合、位置決め用管状部材を鋼管に嵌合させるだけで、重量物支持装置が交換に対して正確に位置決めされ得る。ここで、鋼管は、例えば、鋼管杭(支持杭)工法ないし鋼管圧入工法(アンダーピニング工法)で用いられている鋼管杭であっても、地盤が比較的安定している場合に鋼管杭の代わりに地中に埋設したプレート上で支持された短い鋼管により簡便に不同沈下に対処するプレート・支柱型の工法で用いられる(比較的短い)鋼管であってもよい。いずれにしても、この場合、位置決め用管状部材が重量物支持装置の鋼管杭等に対する容易で正確な位置決めを可能にするので、重量物支持装置は、アンバランスに起因する不測の横荷重を受ける虞れが低減され、垂直荷重が適切にかかり得る。
【0027】
本発明の水平修復工法は、前記目的を達成すべく、上述のような重量物支持装置を用いて、沈下した建築物や構造物の水平修復工事を行う。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の好ましい一実施例の重量物支持装置としてのジャッキ調整台の斜視説明図。
【図2】図1のジャッキ調整台の一部破断正面説明図。
【図3】図1のジャッキ調整台の一部破断左側面説明図。
【図4】図1のジャッキ調整台の調整動作を示した図2と同様な説明図。
【図5】図1のジャッキ調整台を用いた水平修復工法を示したもので、(a)は住宅が傾いた状態を示した説明図、(b)は図1のジャッキ調整台を用いて水平修復工法を適用した結果を示した説明図。
【図6】図1のジャッキ調整台(図の簡明化のために補強板は図示せず)を用いた水平修復工法を示したもので、(a)は油圧ジャッキによるアンダーピニング工法の途中の段階を示した説明図、(b)は油圧ジャッキによるアンダーピニング工法の最後の段階を示した説明図、(c)は図1の重量物支持装置としてのジャッキ調整台とジャーナルジャッキとによる水平修復の開始準備段階を示した説明図、(d)はジャッキ調整台とジャーナルジャッキとによる水平修復が始まった状態を示した説明図、(e)はスペーサを追加した状態を示した説明図、(f)はスペーサを利用してジャッキ調整台とジャーナルジャッキとによる水平修復を完了した状態を示した説明図。
【図7】図6に示したジャッキ調整台を用いた水平修復工法におけるジャッキ調整台と鋼管杭とジャーナルジャッキとの関係を示した一部破断正面説明図。
【図8】図7の断面を示したもので、(a)は図7のVIIIA−VIIIA線断面説明図、(b)は図7のVIIIB−VIIIB線断面説明図、(c)は図7のVIIIC−VIIIC断面説明図、(d)は図7のVIIID−VIIID線断面説明図。
【図9】図1のジャッキ調整台を床下において鋼管杭上で組み立てる例を示したもので、(a)は関連部品を重ねて載置した状態を示した説明図、(b)は支柱ボルトで繋ぐと共に調整用ナットを組み込んでジャッキ調整台の組立が完了した状態を示した説明図。
【図10】図1の変形例のジャッキ調整台をプレートを利用した沈下修正に適用する例を示したもので、(a)はプレートを利用した沈下修正工法により沈下の修正を行った例を示す図5の(b)と同様な説明図、(b)は(a)の工法で用いる本発明の変形例のジャッキ調整台及び関連要素を示した一部破断正面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の好ましい一実施の形態を添付図面に示した好ましい一実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0030】
本発明の好ましい一実施例の重量物支持装置としてのジャッキ調整台1は、図1から図4に示したように、下部台板としてのジャッキ下部板10と、上部台板としてのジャッキ上部板20と、管体としての管状支柱ないし支柱管30と、支柱としてのボルトないし支柱ボルト40と、固定用ナット50と、間隔規定手段としての高さ調整用ナット55と、梁状補強材としての補強板60とを有する。
【0031】
ジャッキ下部板10は、矩形の鋼製厚板の下部板本体11と、該本体11の四隅12で本体11の主面13,14間において主面13,14に垂直に形成された貫通孔15fL,15fR,15rL,15rR(手前側の孔は15fで奥側の孔は15rで示し、正面側からみて左側の孔は15Lで右側の孔は15Rで示し、また、区別しないとき又は総称するときは15で示す(以下の他の要素においてこのような説明がない場合も同様))とを有する。下部板本体11の厚さT1は、支えるべき荷重の大きさQや板本体11の縦横の実効的なサイズW1,L1に応じて選択され、例えば、19mm程度の厚さT1を有する。但し、より大きくてもより小さくてもよい。下部板本体孔15の直径D1(図2)は、ボルト40の外径D2よりも多少大きく、例えば、25mm程度である。但し、より大きくてもより小さくてもよい。なお、ジャッキ下部板10の縦横のサイズW1,L1は、少なくとも、ジャッキ(典型的には、ジャーナルジャッキ)が支柱管30,30,30,30によって規定される中央設置領域Sに容易に配置され該領域Sから容易に取出し得るように選択される。
【0032】
支柱管30は、鋼製の管すなわち鋼管で、横断面が環状の円筒管31からなる。支柱管30の太さないし外径D3は、支えるべき荷重Qや該管30の長さL3や肉厚等に応じて選択され、支柱管30の内径D4は、ジャッキ下板10の孔15の径D1と実際上同じである。支柱管30,30間の間隔(L1−D1)は例えば166mm程度である。但し、より大きくてもより小さくてもよい。支柱管30は、該管30の中央孔32(図2)が実際上孔15と整列するように、該管30の下端部33において下部板10の孔15の周壁に溶接により固着されている。なお、支柱管30の下端部33が下部板10に強固に固定され得る限り、所望ならば、下部板10の主面13において孔15の周壁に凹部を形成しておき支柱管30の下端部33の先端を該凹部に嵌込んで溶接・固着するなど、他の任意の手段を用いてもよい。
【0033】
支柱管30についても、孔15fL,15fR,15rL,15rRの夫々の周壁に溶接されたものを符号30fL,30fR,30rL,30rRで表し、手前側の支柱管は30fで奥側の孔は30rで示し、また、区別しないとき又は総称するときは30で示す。
【0034】
手前側の支柱管30fL,30fRの間を除き、隣接する支柱管30,30の間には、補強板60が溶接により固着されている。補強板60の固着位置や数や厚さや幅は、支えるべき荷重の大きさQや管30の太さD3や長さL3等により異なり得る。この例では、補強板60は、上側補強板61と下側補強板62とからなる。上側及び下側補強板61,62は、同一素材で同一形状を有する。所望ならば、異なっていてもよい。また、補強板60としては、上側及び下側補強板61,62の二枚の補強板を有する代わりに、一枚の補強板からなっていてもよい。更に、場合によっては、補強板はなくてもよい。更に、補強板60が水平に平行に延びる代わりに、例えば、支柱管30を含む全体として三角形状になるように、一つ又は二つの補強板が斜めに取り付けられてもよい。この例では、左側の支柱管30fL,30rLの間には左側の上側及び下側補強板61L,62Lが溶接され、奥側の右側及び左側の支柱管30rL,30rRの間には奥側の上側及び下側補強板61r,62rが溶接され、右側の支柱管30fR,30rRの間には右側の上側及び下側補強板61R,62Rが溶接されて、隣接する支柱管30,30を補強している。手前側の支柱管30fL,30fRの間の領域S1は、ジャッキ(典型的には、ジャーナルジャッキ)が支柱管30,30,30,30によって規定される中央設置領域Sに容易に配置され該領域Sから容易に取出し得るように、開放されている。
【0035】
ジャッキ上部板20は、ジャッキ下部板10と同様な矩形の鋼製厚板の上部板本体21と、該本体21のうち下部板10に向いた下側の主面22には、下部板10の孔15fL,15fR,15rL,15rRに向き合う四隅23に、固定用ナット50fL,50fR,50rL,50rR(手前側の固定用ナットは50fで奥側の孔は50rで示し、また、区別しないとき又は総称するときは50で示す)が溶接等により固着されている。上部板本体21のところでの縦横の実効的なサイズW2,L2は下部板本体11の縦横のサイズW1,L1と同じである。上部板本体21の厚さT2も、支えるべき荷重の大きさQや板本体21の縦横の実効的なサイズW2,L2や支柱ボルト40の径や長さや固定用ナット50の大きさ(厚さ、正六角形の最大径)等に応じて選択され、例えば、厚さT2=16mm程度である。
【0036】
支柱としてのボルト40は、上端部41でジャッキ上部板20と一体的な固定用ナット50に螺着され、通常は、中央部分42が支柱管30の中央孔32及びジャッキ下部板10の貫通孔15に挿通されて、下端側部分43がジャッキ下部板10の貫通孔15から下方に突出している。ジャッキ下部板10が下側主面14の中央領域14Sで後で詳述する鋼管杭70の上端71等上に載置された状態では、支柱ボルト40は、中央部分42に螺合された高さ調整用ナット55がその下面56で支柱管30の上端面34(図2)に当接する位置で位置決めされる。高さ調整用ナット55はストッパないし係止部材として働く。
【0037】
支柱ボルト40についても、固定用ナット50fL,50fR,50rL,50rRに螺着されたものを符号40fL,40fR,40rL,40rRで表し、手前側の支柱ボルトは40fで奥側の孔は40rで示し、また、区別しないとき又は総称するときは40で示す。支柱ボルト40の各要素41,42等についても同様とする。
【0038】
支柱ボルト40は、上端部41でジャッキ上部板20の固定用ナット50に螺合されることにより固定されるので、組立て前においては、ジャッキ上部板20が支柱ボルト40と別体で取り扱われ得るから、コンパクトな収納、持ち運びが可能になる。なお、一旦螺着した支柱ボルト40の上端部41と固定用ナット50との螺合が調整用ナット55の螺合位置の調整の際のトルクの作用下で緩むのを避けるべく、図4において想像線52で示したように、固定用ナット50に加えてもう一つのナット52をゆるみ止めナット52として固定用ナット50の下側において螺合部にねじ込むようにしてもよい。但し、所望ならば、支柱ボルト40の上端部41を固定用ナット50に対して取外し不能となるように固着しておいてもよい。その場合、固定用ナット50を設けないで、支柱ボルト40の上端部41をジャッキ上部板20に溶接等により固着しても、ナット50の代わりの固定用補助部材を介して上端部41をジャッキ上部板20に溶接等により固着してもよい。
【0039】
以上の如く構成された重量物支持装置としてのジャッキ調整台1では、調整用ナット55が支柱ボルト40の上端部41の近傍に位置決めされて図2の正面図において実線で示した短縮位置P1を採る場合、支柱ボルト40の下側部分43がジャッキ下部板10の孔15を貫通して大きく下方に突出した状態で、調整用ナット55の下面56が支柱管30の上端面34に当接する。この短縮位置P1では、固定用ナット50が調整用ナット55の近傍まで下がり、ジャッキ上部板20とジャッキ下部板10との間隔ないしジャッキ下部板10を基準としたジャッキ上部板20の高さHが最低レベルH1に近くなる。
【0040】
一方、ジャッキ調整台1において、ジャッキ上部板20が上向きU1に引き上げられて図4において実線で示した中間伸張位置P2を採る場合、支柱ボルト40の下側部分43及び下端部44が支柱管30内に入り込み該管30内の下部に位置する状態で、調整用ナット55の下面56が支柱管30の上端面34に当接する。この中間伸張位置P2では、固定用ナット50が調整用ナット55から相当程度離れ、ジャッキ上部板20とジャッキ下部板10との間隔ないしジャッキ下部板10を基準としたジャッキ上部板20の高さHが中程度H2に達する。この中間伸張位置P2では、調整ナット55と固定用ナット50との間隔、換言すれば、支柱ボルト40のうち支柱管30の上方に露出する部分45の長さL4が、概ね支柱管30の長さL3と同程度になる。すなわち、支柱ボルトの調整可能な長さが支柱管の長さ以下である従来の重量物支持装置ないし従来のジャッキ調整台では、ジャッキ上部板20が中間伸張位置P2を採ろうとすると支柱ボルトが支柱管から抜けてしまうことになるけれども、この重量物支持装置としてのジャッキ調整台1では、従来はできなかったような高さ調整が容易に行われ得る。
【0041】
なお、支柱管30の長さL3を予め長くしておけば、広い範囲の高さ調整が可能であるけれども、その場合、ジャッキ上部板20とジャッキ下部板10との間隔(ジャッキ下部板10を基準としたジャッキ上部板20の高さ)Hを支柱管30の長さL3以下にすることができないので、調整可能な高さHの下限値が大きくなって狭いところの高さ調整ができなくなってしまう。
【0042】
また、ジャッキ調整台1において、ジャッキ上部板20が更に上向きU1に引き上げられて図4において想像線で示した最高伸張位置P3に設定される場合、支柱ボルト40の下側部分43の大半が支柱管30から上方に露出するけれども支柱ボルト40の(下側部分43の)下端部44が支柱管30内でその上部領域内に残る状態で、調整用ナット55の下面56が支柱管30の上端面34に当接する。この最高伸張位置P3では、固定用ナット50が調整用ナット55から支柱管30の長さL3よりもはるかに大きく離れ、ジャッキ上部板20とジャッキ下部板10との間隔ないしジャッキ下部板10を基準としたジャッキ上部板20の高さHが最大高さH3に達する。この最高伸張位置P3では、調整ナット55と固定用ナット50との間隔、換言すれば、支柱ボルト40のうち支柱管30の上方に露出する部分45の長さL5は、支柱管30の長さL3よりもはるかに長くなる。すなわち、支柱ボルトの調整可能な長さが支柱管の長さ以下である従来の重量物支持装置ないし従来のジャッキ調整台と比較して、この重量物支持装置としてのジャッキ調整台1では、はるかに広い(長い)範囲の高さ調整が容易に行われ得る。
【0043】
上述のような構造のジャッキ調整台1において、例えば、ジャッキ下部板10の厚さT1=19mm、ジャッキ上部板20の厚さT2=16mm、各補強板60の幅(高さ)32mmで厚さ9mm、支柱40の径D2=24mm、支柱管30高さL3=220mm、外径D3=34mm、肉厚が3.2mm程度の場合において、高さH=450mmの場合には48トン程度の垂直荷重Qに耐え得ると共に3.0トン程度の横荷重に耐え得、高さH=600mmの場合には42〜43トン程度の垂直荷重Qに耐え得ると共に2.4トン程度の横荷重に耐え得、高さH=900mmの場合(但し、L3=240mmである点は異なる)には25トン程度の垂直荷重Qに耐え得ることを確認した。すなわち、このジャッキ調整台1では、支柱ボルト40の長さを長くし得て、ジャッキ下部板10に対するジャッキ上部板20の高さHを原理的に高くし得ることは当然として、このように高さHを高くしたジャッキ調整台1が、通常の鋼材によって形成されるだけで、実際上、20トンを超える荷重を確実に支え得ることを確認し、このジャッキ調整台1が、アンダーピニング工法により打込まれた鋼管杭70の上に載置されて、不同沈下等の生じた建築物等の沈下修正に効果的に適用され得ることを確認した。なお、当然ながら、望まれる耐荷重の増減に応じて、例えば、支柱ボルト40の径D2を太くしたり細くしたりし得ることも確認した。
【0044】
地盤沈下等により沈下したり傾いたりした住宅等の建築物に対して、アンダーピニング工法を利用して当該建築物の沈下及び傾きの修正を行うに際して、以上の如く構成された重量物支持装置としてのジャッキ調整台1を用いて当該建築物の傾きの修正を行う例を、図1〜図4に加えて、図5から図8に基づいて説明する。
【0045】
図5の(a)に示したように、地盤の沈下が起こって地盤の一部E1が沈み、本来の地表面J1に対して地面部分J2が下がり、住宅Aが基礎Bから傾いたとする。
【0046】
アンダーピニング工法では、住宅Aの支持を損なわない範囲で、住宅Aの基礎Bの下の一部に穴G(図5の(b)及び図6の(a)参照)を掘り、該穴Gの表面G1に鋼管杭70を立て、図6の(a)に示したように、該鋼管杭70と住宅Aの基礎Bのうち該鋼管杭70の直上に位置する部分B1との間に油圧ジャッキKを配設し、住宅Aの基礎部分B1にかかる荷重を反力として利用して鋼管杭70を穴Gの下の地盤E1中に、下向きU2に圧入する。鋼管杭70が穴Gの下の地盤E1中に入り込むと、鋼管杭70の上端に新たな鋼管杭70の下端を溶接してつなぎ、全体として長くなった鋼管杭70の上端の油圧ジャッキKによる押込み乃至打込みを繰返す。このような鋼管杭70のU2方向押込みないし打込みは、鋼管杭70の下端部が固い地盤Ehに達するまで続けられる。鋼管杭70の長さは例えば、3/4m〜1m程度であり、このようにして、アンダーピニング工法による鋼管杭70の打込みが完了した状態で、基礎部分B1の下端B1aと鋼管杭70の上端71との間には、50cm程度(油圧ジャッキKの長さ)〜1.5m程度(油圧ジャッキKと鋼管杭70の長さとの和)の隙間が残る。
【0047】
このような鋼管杭70の打込みは、一つの住宅Aの基礎Bの下の多数の箇所(例えば数10箇所〜数100箇所)で行われる。図5の(a)では、見易さのために、住宅Aの下に大きな穴Gをあけたかのごとく示されているけれども、実際には、穴Gは住宅Aの支持状態が損なわれない範囲で明けられる。
【0048】
アンダーピニング工法による鋼管杭70の打込みが完了した箇所では、図6の(c)、図7及び図8の(d)に示したように、鋼管杭70の上に、重量物支持装置としてのジャッキ調整台1を載置する。
【0049】
このとき、ジャッキ調整台1は、そのジャッキ下部板10の下側主面14が、その中央領域14Sで鋼管杭70の上端面71に当接するように、該鋼管杭70上に載置される。図7及び図8の(d)からわかるように、ジャッキ調整台1の鋼管杭70上への載置に際して、ジャッキ調整台1のうちジャッキ下部板10の下面14から下方U2に突出した支柱ボルト40は下部板10の四隅12において下部板10を貫通しているので、支柱ボルト40は、鋼管杭70の周囲の空き領域ないしスペースNを利用して上下方向U1,U2に変位され得るから、該支柱ボルト40の突出長にかかわらず、ジャッキ下部板10から下方U2に突出した支柱ボルト40がジャッキ調整台1の鋼管杭70上への載置の邪魔になる虞れがなく、また、ジャッキ上部板20の高さ変動に伴う支柱ボルト40の上下方向U1.U2への変位動作が鋼管杭70によって妨げられることもない。
【0050】
なお、隙間ないしスペース等の関係で組立済みのジャッキ調整台1を床下に持込み難いような場合には、予め組立済みのジャッキ調整台1を床下の穴G内に打ち込んである鋼管杭70上に載置する代わりに、図9の(a)及び(b)に示したように鋼管杭70上で(該鋼管杭70の上端面71上で)ジャッキ調整台1を組立ててもよい。
【0051】
その場合、例えば、まず、図9の(a)に示したように、鋼管杭70の上端面71上にジャッキ下部板10を載置し、該ジャッキ下部板10の上面13上にジャッキ受台65を載置し、該ジャッキ受台90上にジャッキ上部板20を載置する。このとき、ジャッキ下部板10の四隅の貫通孔15は、鋼管杭70の外周面の外側で該外周面から離れた空間領域Nに位置する。ここで、組立補助治具として働くジャッキ受台65は、自立可能でジャッキ80の配設の邪魔にならないように、例えば半円筒状体66のスペーサ67の形態を有し、ジャッキ受台65の高さは、支柱管30の高さよりも高く且つジャッキ下部板10上に配設されるべき手動ジャッキ80の最小高さよりも高い。次に、図9の(b)に示したように、領域Nを利用してジャッキ下部板10の下面14側から上向きU1に貫通孔15に支柱ボルト40を挿入する。なお、この場合、鋼管杭70の外径がジャッキ調整台1の隣接する支柱ボルト40,40間の間隔よりも大きくてもよい。支柱ボルト40は、貫通孔15及びこれと整列した支柱管30の中央孔32を上向きU1に貫通して支柱管30の上端から突出する。支柱管30を貫通した支柱ボルト40に上端側から調整用ナット55を螺合し、支柱ボルト40の上端41側を上向きU1に突出させる。次に、支柱ボル40を更に上に伸長させてその上端部41をジャッキ上部板20の下面22側に固定されている固定用ナット50に螺合して、ジャッキ上部板10への支柱ボルト40の螺合を完了する。調整用ナット55の螺合位置を調整することによりジャッキ上部板20とジャッキ下部板10との距離が調整され得ることは、上述の通りである。
【0052】
図9の(a)及び(b)に示したように床下の穴Gのところに圧入された鋼管杭70の上でジャッキ調整台1を組み立てるのは、特に、四箇所に設けられる支柱ボルト40が長くジャッキ調整台1の高さが高過ぎて隙間ないしスペース等の関係で組立済みのジャッキ調整台1を床下に持込み難いような場合に特に適する。なお、このジャッキ調整台1は、従来のジャッキ調整台と異なり、ジャッキ下部板10に対するジャッキ上部板20の高さが極めて大きい範囲で調整可能なように、上端部41でジャッキ上部板20に取付けられた支柱ボルト40がジャッキ下部板10に対して可動に該ジャッキ下部板10の貫通孔15に挿通されており、ジャッキ下部板10に対するジャッキ上部板20の高さ調整可能範囲は支柱ボルト40の長さに依存することから、安定な荷重支持が可能な範囲で支柱ボルト40の長さを長くすることが望まれる故に、図9の(a)及び(b)に示したように床下の穴Gのところに圧入された鋼管杭70の上でジャッキ調整台1を組み立てることは、このジャッキ調整台1であればこそ可能であり且つ特に有効な組付方法になる。
【0053】
なお、固定用ナット50が緩み止めナットになるように、ナットを二つ直列に並べてもよいことは図4に関して説明したのと同様である。いずれにしても、これにより、ジャッキ上部板20とジャッキ下部板10とを所望間隔に設定して、鋼管杭70上でのジャッキ調整台1の配置を完了する。
【0054】
なお、以上において、鋼管杭70上へのジャッキ調整台1の載置ないし鋼管杭70上でのジャッキ調整台1の組立の際に、ジャッキ調整台1のジャッキ下部板10の中心を鋼管杭70の中心に対して容易にできるだけ正確に位置決めし得るように、図2や図9の(a)において想像線16で示したように、ジャッキ下部板10の下面14に鋼管杭70に嵌合される位置決め用管状部ないしスリーブ16を溶接等により形成しておいてもよい。
【0055】
鋼管杭70上へのジャッキ調整台1の載置ないし鋼管杭70上でのジャッキ調整台1の組立が完了すると、次に、図6の(c)及び図7並びに図8の(b)及び(c)に示したように、鋼管杭70上に載置されたジャッキ調整台1のジャッキ下部板10上にジャーナルジャッキの如き手動ジャッキ80を載置する。このジャーナルジャッキ80の載置は、ジャッキ調整台1の手前側の支柱管30fL,30fR間の隙間S1(補強板60のない領域)を介して行われる。ジャッキ調整台1を鋼管杭70上に載置した状態では、図6の(c)に示したように、ジャッキ調整台1のジャッキ上部板20と住宅Aの基礎Bの部分B1との間には隙間Bgがある。換言すれば、隙間Bgが残り且つジャッキ下部板10とジャッキ上部板20との間にジャーナルジャッキ80を載置し得るように、調整ナット55で、ジャッキ下部板10とジャッキ上部板20との間隔H1を調整しておく。
【0056】
ジャーナルジャッキ80は、例えば、本体81とラム部82とラチェットハンドル部83とを備え、手前側に突出したラチェットハンドル部83をM1,M2方向に往復回動させることにより、ベベルピニオンを一方向に回してこれに噛合したベベルギアを一方向に回転させ、ねじ部を介して本体81に係合し上端に荷重受部となるヘッドを備えたラム部82をベベルギアの回転に応じてU1方向に上昇させるものである。ジャーナルジャッキ80は、典型的には、10トン程度〜50トン程度の荷重を支え得、U1方向への持上げストロークは10cm程度である。
【0057】
ジャーナルジャッキ80のラチェットハンドル部83をM1,M2方向に往復回動させることにより、ラム部82の荷重受部となるヘッド上端面82aをジャッキ調整台1のジャッキ上部板20の下面22に当接させ、更に、ラム部82を伸張させることにより、ジャッキ上部板20の上面24を住宅Aの基礎部分B1の下面B1aに当接させる。これにより、ジャッキ調整台1及び鋼管杭70を介して、ジャーナルジャッキ80で住宅Aの基礎部分B1をその下面B1aで支える沈下修正準備完了状態になる。なお、図9の(a)及び(b)の如く床下において鋼管杭70の上でジャッキ調整台1を組立てた場合には、沈下修正準備完了状態になったときには、ジャッキ受台65の上端がジャッキ調整台1のジャッキ上部板20の下面22から離れた状態になっているので、該ジャッキ受台65をジャッキ上部板20とジャッキ下部板10との間から取除く。
【0058】
住宅Aの基礎Bを支えるべき全ての部分B1,・・・において、鋼管杭70、ジャッキ調整台1及びジャーナルジャッキ80が、沈下修正準備完了状態に設定されると、全てのジャーナルジャッキ80を一斉に作動させて、基礎部分B1,・・・の押上げ乃至沈下修正作業を開始する。沈下修正は住宅Aの基礎Bの部分B1,・・・の全体に亘って一様に行われるので、ここでは、特定箇所B1の沈下修正作業に限って説明する。
【0059】
ジャーナルジャッキ80の伸張によるジャッキ上部板20の押上げの進行に伴い、多くの場合、多少なりとも、鋼管杭70も下方U2に押込まれる(但し、鋼管杭70がそれ以上下方U2に押込まれなくてもよい)。
【0060】
ジャーナルジャッキ80はストロークが小さいので、住宅Aの基礎Bの部分B1の沈下修正が不十分なうちにジャッキ80のストロークの許容範囲に近づくと、ジャーナルジャッキ80の伸張を一旦停止させ、図6の(d)において実線で示したように、各調整ナット55をその下端面56が対応する支柱管30の上端面34に当接するまで移動させる。これにより、この箇所では、基礎部分B1は、ジャーナルジャッキ80ではなくてジャッキ調整台1を介して、鋼管杭70で支えられた状態になる。
【0061】
従って、ラチェットハンドル部83の係合を一旦解除してジャーナルジャッキ80のラム部82をU2方向に下げ、図6の(e)に示したように、スペーサ85をジャーナルジャッキ80のラム部82の上端82aに載置して、スペーサ85の上端86と基礎部分B1の下面B1aとの間隔を小さくした状態で、再度、ジャーナルジャッキ80を操作して、ジャッキ上部板20の上面24を住宅Aの基礎部分B1の下面B1aに当接させる。これにより、再度、沈下修正準備完了状態になる。なお、スペーサ85は、鋼管87とその上下端に溶接された鋼板88,89とからなる。所望の横断面サイズと高さとを備え荷重を支えジャッキ調整台1内でジャーナルジャッキ80上に配設し得る限り、スペーサ85の構造は他のどのようなものでもよい。
【0062】
次に、全てのジャーナルジャッキ80を一斉に作動させて、基礎部分B1,・・・の押上げ乃至沈下修正作業を再開する。ジャーナルジャッキ80の伸張によるジャッキ上部板20を介した住宅Aの基礎部分B1の押上げ(沈下修正)の進行及びこれに伴う鋼管杭70の下方U2に押込みは、図5の(b)に示したように、住宅Aの基礎Bすなわ基礎部分B1,・・・の全体が所望の高さ位置に復元されるまで続けられる(必要な箇所では、スペーサの追加を繰返す)。これにより、例えば、図6の(f)に示したように、所望の沈下修正が行われた状態になる。住宅の基礎Bが実際上水平になると、各ジャッキ調整台1において、四箇所の調整ナット55,55,55,55、即ち、調整ナット55fL,55rL,55fR,55rRの夫々を該ナット55fL,55rL,55fR,55rRの下端面56fL,56rL,56fR,56rRが対応する支柱管30fL,30rL,30fR,30rRの上端面34fL,34rL,34fR,34rRに当接するまでねじ込み、四箇所の夫々において、支柱40、調整ナット55及び支柱管30により、ジャッキ上部板20を介して、基礎部分B1aを支持する。
【0063】
これにより、沈下修正が完了するので、ジャーナルジャッキ80を縮めてジャッキ調整台1の配設領域Sから取出す。
【0064】
なお、ジャッキ下部板1の下面14側に位置決め用管状部ないしスリーブ16がある場合、スリーブ16を鋼管杭70の上端開口に嵌めるだけで、ジャッキ調整台1の中心(幅方向及び長さ方向の中心)が鋼管杭70の中心に対して実際上正確に位置決めされ得るので、ジャッキ上部板20で下向きU2の荷重を受けた場合にジャッキ調整台1にアンバランスな力が横向きの荷重としてかかる虞れが最低限に抑えられ、ジャッキ上部板20で受ける下向きU2の荷重Qを、支柱ボルト40,40,40,40、調整ナット55,55,55,55、支柱管30,30,30,30及びジャッキ下部板10を介して、鋼管杭70で上向きU1に支え得る。特に、支柱ボルト40が支柱管30上に長く突出する場合にジャッキ調整台1が横荷重に対して弱くなり易いけれども、スリーブ16によりジャッキ調整台1が適切に位置決めされることにより、アンバランスな配置に起因する横荷重を受ける虞れが最低限に抑えられ得る。
【0065】
多数のジャッキ調整台1,1,1,・・・によって、住宅Aのコンクリート等の基礎Bを支えた状態で、最後に、多数のジャッキ調整台1,1,1,・・・のある多数の穴G(図5では便宜上一つの穴Gで示したけれども、通常は住宅Aの支持が失われないように、穴Gは多数又は複数の別々の穴からなる)を埋める。このとき、例えば、穴Gの上部は、モルタルその他で固める。
【0066】
なお、支柱40が極めて長い場合であって、図4に示したようにジャッキ上部板20を上向きU1に最大限押し上げた位置P3又はこれに準ずる状態に設定して高さHを最大高さH3又はこれに近い値に設定したような場合には、振動等による揺れが無視し難くなる虞れがある場合がある。そのような場合、所望ならば、手動ジャッキ80を取り外した後、該ジャッキ80のあったところに、該ジャッキ80の高さと同程度の高さ(例えば、高さH3と同程度の高さ(厳密にはジャッキ80を取り外したスペースに配設可能なように例えば高さH3よりも多少(例えば数mm程度)小さい高さ(H3−Δ)の鋼管48を、図5の(b)において想像線48で示したように(図5の(b)の例では高さHは高くないけれども便宜上この図を利用して鋼管48の配置の例を示す)、ジャッキ下部板10とジャッキ上部板20との間に配置して、該鋼管48の上下端をジャッキ下部板10及びジャッキ上部板20に溶接して補強するようにしてもよい。その場合、該鋼管48の溶接後に、穴Gを埋めたり、モルタル等で固める。
【0067】
また、地盤が比較的強固である等の場合には、アンダーピニング工法により硬い地盤に打ち込んだ鋼管杭70にジャッキ調整台1を載せて住宅等を持ち上げる代わりに、費用を抑えるべく、図10の(a)及び(b)に示したように、硬い地盤の代わりとして働くプレート90を床下に埋込むと共に該プレート90上に載置されて鋼管杭70の如くジャッキ調整台1を支える支持台をなす比較的短い鋼管91の形態の荷重受台ないしジャッキ受台92に載せて、住宅等を持ち上げるようにしてもよい。なお、図10の(a)及び(b)に示した例では、ジャッキ調整台1は、鋼管杭70の代わりをなす管状の荷重受台92に嵌合されて位置決めを可能にする位置決め用管状部ないしスリーブ16を有する。また、地盤の強固さに多少の不安が残ったり、ある程度のコストをかけ得るような場合には、一部のジャッキ調整台1については、プレート90及び荷重受台92の代わりに、図10の(a)において想像線で示したように、図5の(b)や図6の(c)〜(f)において説明したのと同様な鋼管杭70で支えるようにしてもよい(即ち、鋼管杭70で支える部分とプレート90及び荷重受台92(鋼管91)で支える部分とを組合わせてもよい)。
【0068】
鋼管杭70の代わりにプレート90及び荷重受台92(鋼管91)を用いる場合にも、程度の差こそあれ、ジャッキ調整台1が図1〜図9に示した場合と同様に働き得ることは明らかであるから重複する説明は行わない。
【符号の説明】
【0069】
1 ジャッキ調整台(重量物支持装置)
10 ジャッキ下部板(下部台板)
11 下部板本体
12 隅
13 上側主面
14 下側主面(下面)
14S 中央領域
15,15f,15fL,15fR,15r,15rL,15rR 貫通孔
16 位置決め用管状部(スリーブ)
20 ジャッキ上部板(上部台板)
21 上部板本体
22 下側主面(下面)
23 隅
24 上面
30,30f,30fL,30fR,30r,30rL,30rR 支柱管(管体)
31 円筒管
32 中央孔
33 下端部
34,34f,34fL,34fR,34r,34rL,34rR 上端面
40,40f,40fL,40fR,40r,40rL,40rR ボルト(支柱)
41 上端部
42 中央部分
43 下端側部分
44 下端部
45 上方露出部分
48 鋼管
50,50fL,50fR,50rL,50rR,50f,50r 固定用ナット
55,55fL,55fR,55rL,55rR 調整用ナット(間隔規定手段)
56,56fL,56fR,56rL,56rR 下面
60 補強板(梁状補強材)
61,61L,61r 上側補強板
62,62L,62r 下側補強板
65 ジャッキ受台(組立補助具治具)
66 半円筒状体
67 スペーサ
70 鋼管杭
71 上端
80 手動ジャッキ
81 本体
82 ラム部
82a 上端面
83 ラチェットハンドル部
85 スペーサ
86 上端
87 鋼管
88,89 鋼板
90 プレート
91 鋼管
92 荷重受台
A 住宅
B 基礎
B1 基礎部分(鋼管杭の直上部分)
B1a 基礎部分の下面
Bg 隙間
D1 直径
D2 外径
D3 外径(太さ)
D4 内径
E1 地盤の一部
Eh 固い地盤
G 穴
G1 穴の表面
H 調整可能な高さ
H1 最低レベル(高さ)
H2 中程度の高さ
H3 最大高さ
J1 本来の地表面
J2 地面部分
K 油圧ジャッキ
M1,M2 回動方向
N 空き領域(スペース)
P1 短縮位置
P2 中間伸張位置
P3 最高伸張位置
T1,T2 厚さ
L1,L2,L3 長さ
S 中央設置領域
S1 領域
U1 上向き
U2 下向き
W1,W2 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャッキの上において重量物の荷重を受ける上部台板と、
該上部台板と平行でジャッキの下においてジャッキを支える下部台板であって間隔をおいてジャッキを取囲む外周縁部に少なくとも三つの貫通孔を備えたものと、
少なくとも三本の支柱であって夫々が一端において上部台板の外周縁部に取付けられ下端側において下部台板の前記少なくとも三つの貫通孔のうち対応する貫通孔を貫通して下部台板から突出するものと、
支柱の夫々のところにおける上部台板と下部台板との間隔を規定する間隔規定手段であって対応する支柱のうち上部台板と下部台板との間の領域の所望部位に位置決めされるものと
を有する重量物支持装置。
【請求項2】
下部台板の各貫通孔に一列につながった貫通孔を規定する管体が下部台板のうち上部台板に対面する主面から上部台板に向かって突設されており、
前記間隔規定手段は、各管体のうち上部台板に対面する突出端面に当接して上部台板と下部台板との間隔を規定するように構成されており、
下部台板の周方向に隣接する管体の間には、一組の隣接する管体間を除いて、梁状補強材が設けられている請求項1に記載の重量物支持装置。
【請求項3】
前記支柱は外周に雄ねじが形成されたボルトからなり、前記間隔規定手段は該ボルトに螺合されたナットからなる請求項1又は2に記載の重量物支持装置。
【請求項4】
ボルトが上部台板に螺着されている請求項1から3までのいずれか一つの項に記載の重量物支持装置。
【請求項5】
上部台板のうち下部台板の貫通孔に対面する部位にはナットが固着されていて、該ナットに、ボルトが螺着されるように構成されている請求項4に記載の重量物支持装置。
【請求項6】
上部及び下部台板が矩形であり、
下部台板が矩形の頂点に対応する部位に四つの貫通孔を備え、
下部台板の各貫通孔に一列につながった貫通孔を規定する管体が下部台板のうち上部台板に対面する主面から上部台板に向かって突設されており、
前記間隔規定手段は、各管体のうち上部台板に対面する突出端面に当接して上部台板と下部台板との間隔を規定するように構成されており、
下部台板の周方向に隣接する管体の間には、一組の隣接する管体間を除いて、少なくとも一本の梁状補強材が設けられており、
前記支柱は外周に雄ねじが形成されたボルトからなり、前記間隔規定手段は該ボルトに螺合されたナットからなり、ボルトが上部台板に螺着されている
請求項1に記載の重量物支持装置。
【請求項7】
上部台板のうち下部台板の貫通孔に対面する部位にはナットが固着されていて、該ナットに、ボルトが螺着されるように構成されている請求項6に記載の重量物支持装置。
【請求項8】
下部台板の下面から鋼管と嵌合可能な位置決め用管状部材が突設されている請求項1から7までのいずれか一つの項に記載の重量物支持装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一つの項に記載の重量物支持装置を用いて、不同沈下した重量物又は不同沈下する虞れのある重量物の不同沈下を修正又は防止する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate