説明

重量物昇降装置

【課題】 重量物を長ストローク上げ下げでき、且つその昇降動作中及び動作停止中に水平力が作用しても安全に昇降動作する昇降装置を提供する。
【解決手段】 重量物Wを昇降させる昇降部A1の昇降に追従して伸長/収縮する転倒防止手段Bを設け、前記昇降部A1は、複数の昇降手段1と、下枠体2と、上枠体3とを備えると共にその上下枠体3、2に亘って複数の昇降手段1を連結して構成し、下枠体2、上枠体3とに亘って架設する転倒防止手段Bを、平板4をヒンジ連結した2体の蛇腹状体B1、B1をその平板4の面同士を所定間隔をおいて接近状に対向配置させた状態でヒンジ連結部の揺動中心部6、6同士を1つおきに連結し且つ2体の蛇腹状体B1、B1の上下端を上下枠体3、2に揺動可能に連結して、昇降手段1の伸縮動作に追従する伸縮動作中に2体の蛇腹状体B1、B1における連結された前記揺動中心部6、6間の上下の平板4、4で中間ヒンジ9、9が互いに離間する菱形形状部10を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁等の重量物を昇降する昇降装置に関し、更に詳しくは昇降動作中及び動作停止時に昇降部に作用する水平力(横倒力)に対抗して転倒を防止する転倒防止機能を備えた重量物昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
重量物を上げ下げする昇降装置として、重量物を載承支持して昇降するものにジャッキ装置がある。
そのジャッキ装置は、一般的に油圧式ジャッキで構成され、ロッドの伸長によって重量物を上げ下げし得るように構成されている。
ところで、この種のジャッキ装置には、重量物を載承することによる鉛直荷重の他に、地震や風(横風)などの水平力(横倒力)が作用する。前者の鉛直荷重はそのジャッキ装置の能力(定格荷重)に相当し、後者の水平力(横倒力)に対抗する力は一般的に前記能力の20〜30%が求められている。
【0003】
しかして、重量物を上げ下げする昇降装置の能力が200〜300トン(t)、ストロークを3000mmとした場合、耐水平力の能力は40トン〜90トンとなるが、このような能力を備えたジャッキ装置を構成しようとした場合、シリンダやピストンロッドの外径は非常に大きなものとなり、単独で構成することは殆ど不可能であり、仮に製作できたとしてもこれを現場に搬送し、設置するための運搬手段や設置手段が必要となるが、これ等の製作もほとんど不可能である。
【0004】
能力(鉛直荷重)については複数のジャッキ装置を集合することで対応できるが、それらジャッキ装置は一般的にストロークが200〜300mmと短く、耐水平力も能力の5〜10%程度であり、ストロークが約10倍となった場合は、耐水平力は勿論のこと鉛直荷重に対しても耐えられず、長ストロークが要求される昇降装置には全く使用できないものである。
【0005】
しかして、重量物等を荷台に載せて昇降するジャッキ装置が開発され、提案されている。そのジャッキ装置は、基台と荷台との間に荷台昇降用シリンダを配設し、更に基台と荷台の間に一対の2つ折れリンク機構を配設し、両リンク機構のリンク棒間を横梁で結合し、横梁と基台との間に、2つ折れリンク機構の開度を調整するリンクシリンダを設けたものである(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
そして、前記ジャッキ装置は前記構成により、昇降作動の間、各荷台昇降シリンダは荷台上の積載物の垂直方向の荷重を、2つ折れリンク機構は幅方向の横荷重を受け持ち、しかも2つ折れリンク機構のリンク棒間を横梁で結合しているから、横荷重に対する剛性を高くできるとしている。
【0007】
しかしながら、横荷重に対する剛性が向上される方向は、リンクシリンダが伸縮する方向のみで、それと直交する方向の横荷重に対しては剛性の向上は期待できない。尚、前記2つ折れリンク機構を直交する二方向に配置することも考えられるが、該リンク機構を交差して配置することは構造的に不可能である。
【0008】
【特許文献1】特開2000−289994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記した従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、数百トンの重量物を長ストロークで上げ下げ可能であり、且つ重量物の昇降動作中及び動作停止中に水平力(横倒力)が作用しても安全に昇降動作することが出来る重量物昇降装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決する為に本発明が講じた技術的手段は、重量物を接地状態の昇降手段で上下昇降する重量物昇降装置であって、一端が接地され他端側が鉛直方向に伸縮して重量物を上げ下げする昇降部と、その昇降部の昇降動作に追従して伸長/収縮する転倒防止手段を設け、前記昇降部は、複数の昇降手段と、下枠体と、上枠体とを備えると共に、その下枠体、上枠体に亘って複数の昇降手段を連結して構成され、前記転倒防止手段は、下枠体、上枠体とに亘って架設することによって配置してなり、
該転倒防止手段は、平板または矩形状枠体をヒンジ連結した2体の蛇腹状体をその平板または矩形状枠体の面同士を所定間隔をおいて接近状に対向配置させた状態で同一高さのヒンジ連結部の揺動中心部同士を1つおきに連結すると共に2体の蛇腹状体の上下端を上下枠体に揺動可能に連結して、昇降手段の伸縮動作に追従する2体の蛇腹状体における連結された前記揺動中心部間の上下の平板または上下の矩形状枠体で中間ヒンジが互いに離間する菱形形状部を形成するように構成したことを特徴とする重量物昇降装置(請求項1)である。
前記昇降手段としては、流体圧(水または空気)、油圧等で作動するジャッキが好適であり、昇降のストローク(能力)に応じて多段伸長型を選択使用する。
前記昇降部を構成する下枠体と上枠体の形状は、平面角形(例えば、四角形、多角形等)、或いは円形、楕円形等、何れでも良い。
前記2体の蛇腹状体が各々平板をヒンジ連結して形成されている場合、平板には水平力(風)が通り抜ける窓孔を開設すると有効である。
多段伸長ジャッキは、能力の異なる複数のジャッキが一本物状に順次収納されている構成のものである。
【0011】
前記手段によれば、複数の昇降手段が同期して作動することで上枠体(荷台)は水平状態で昇降し、上枠体に載承した重量物を安全に昇降できる。そして、上枠体と下枠体とが昇降動作に追従して伸長/収縮する転倒防止手段で連結されている為、昇降動作中及び昇降動作の停止中に水平力(横倒力)が作用しても前記転倒防止手段が対抗し、昇降装置が転倒するのを防止する。
そして、単なる1体の蛇腹体からなる横倒防止手段では、伸びきっていない段階や折畳み途中段階に風等で生じる上下方向への捩り応力に対して弱い、くの字状部を形成するが、本発明では横倒防止手段として、昇降手段の伸縮動作に追従して、連結された揺動中心部間の対向配置する上下の平板や上下の矩形状枠体で中間ヒンジを中心にして対称状のくの字状板部、逆くの字状板部からなる菱形形状部を形成しながら展開伸長したり、展開伸長状態から菱形形状部を形成しながら折畳み状態になる。
そのため、伸び途中部、折畳み途中部に形成される菱形形状部の剛性が前記捩り応力に対して優れた耐強度を発揮して捩じれ変形を防止して、それ以上の伸長展開と折畳みを損わない。
そして、平板または矩形状枠体をヒンジ連結した2体の蛇腹状体が伸長しきった状態では剛板になるため端面方向からの水平力(横倒力)に対して優れた耐力を発揮する。
【0012】
また、重量物を接地状態の昇降手段で上下昇降する重量物昇降装置であって、一端が接地され他端側が鉛直方向に伸縮して重量物を上げ下げする昇降部と、その昇降部の昇降動作に追従して伸長/収縮する転倒防止手段とを設け、前記昇降部は、複数の昇降手段と、下枠体と、その下枠体上方の複数段の上枠体とを備えると共に、高さ方向に相隣設するその各枠体に亘って複数の前記昇降手段を連結し、前記転倒防止手段は、高さ方向に相隣設するその各枠体とに亘って架設することによって配置してなり、
該転倒防止手段は、平板または矩形状枠体をヒンジ連結した2体の蛇腹状体をその平板または矩形状枠体の面同士を所定間隔をおいて接近状に対向配置させた状態で同一高さのヒンジ連結部の揺動中心部同士を1つおきに連結すると共に2体の蛇腹状体の上下端を高さ方向に相隣設する前記枠体に揺動可能に連結して、各段の昇降手段の伸縮動作に追従する2体の蛇腹状体における連結された前記揺動中心部間の上下の平板または上下の矩形状枠体でその中間ヒンジが互いに離間する菱形形状部を形成するように構成したことを特徴とする重量物昇降装置であっても良いものである(請求項2)。
この請求項2は、上枠体を昇降台として多段式にしたものである。例えば三段式であると仮定すると、転倒防止手段はその下枠体とすぐ上位の上枠体、その上枠体と更にその上位の上枠体とに亘って各々複数段の昇降手段を設ける。転倒防止手段は、各段での昇降手段の伸縮時に前記請求項1と同様に昇降途中(伸び途中段階や折畳み途中段階)に形成される菱形形状部が強度を付与して、風等で上下方向に生じる捩り応力に対抗する。
前記転倒防止手段は、高さ方向に相隣設する各枠体(例えば下枠体と上枠体との間、下枠体と上枠体との間、上枠体と上枠体との間等)間の昇降手段の伸縮動作に追従して揺動中心部間の対向配置する上下の平板各々や上下の矩形状枠体各々が完全に当接または近接する折畳み状態から揺動中心部間の対向配置する上下の平板や上下の矩形状枠体全てで菱形形状部を同時に形成しながら展開伸長するように構成したり、同折畳み状態から上枠体(作用点側)に連結されている側の揺動中心部間の対向配置する上下の平板や上下の矩形状枠体で順次菱形形状部を形成しながら展開伸長するように構成する。
【0013】
以上の手段によれば、下段の複数の昇降手段から順々に作動させて下段の枠体(上枠体)から上昇させて載承する重量物を持ち上げ、上段の複数の昇降手段から順々に作動させて載承する重量物を下降させる。その昇降動作に追従して転倒防止手段が伸長/収縮し、昇降動作中や昇降動作の停止中に水平力が作用しても、その転倒防止手段が対抗し、昇降装置の転倒を防止する。
そして、各段の昇降手段の伸縮動作途中で水平力が作用した時の作用は請求項1と同様である。
【0014】
請求項1記載の下枠体と上枠体とに亘って設けられる昇降手段は、多段伸長ジャッキであると、その多段伸長ジャッキの機能で、上枠体を所要高さまで重量物を上昇させる(請求項3)。
また、請求項4記載のように昇降手段は、1段ジャッキまたは2段伸長ジャッキであると、所要高さまで重量物の上昇を各段の複数の昇降手段で分担して行い。それによって各段のジャッキを最小段数(例えば1段ジャッキまたは2段伸長ジャッキ)のものを使用可能にして、使用される伸長ジャッキの断面積を小さくして、装置自体の重量と共に装置コストを低減させることができる。
【0015】
そして、請求項1または3記載の前記昇降部を構成する上枠体、下枠体が平面矩形状で、下枠体、上枠体の四隅またはその近傍に昇降手段を配置し、前記転倒防止手段を、複数の昇降手段で各々区画される4周面に配置したり(請求項5)、請求項2または4記載の前記昇降部を構成する上枠体、下枠体が平面矩形状で、その高さ方向に相隣設する各枠体の四隅またはその近傍に昇降手段を配置し、前記転倒防止手段を、複数の昇降手段で各々区画される各段の4周面に配置すると好ましいものである(請求項6)。
【0016】
前記手段によれば、平面略矩形状をした昇降部の4面にそれぞれ転倒防止手段を配置しているため、昇降装置のいずれの面に水平力が作用しても、その水平力が作用する方向と同方向に、平板または矩形状枠体の長辺方向が向いた伸長展開する2体の蛇腹状体からなる転倒防止手段が対抗して昇降装置が転倒するのを防止する。即ち、昇降装置における水平力が作用する面と直交する面に配置したその転倒防止手段が水平力に対抗し、昇降装置が転倒するのを防止し、鉛直起立状態に保持する。従って、安全に昇降作業を行うことが出来る。
【0017】
また、請求項5、6において、転倒防止手段を配置した昇降部の4周面やその昇降部におれる各段の4周面にブレースを斜設補強しても良いものである。
このブレースによって、転倒防止手段と相乗して水平力に対して優れた耐力を発揮する。
そして、昇降部を、複数の昇降手段と、下枠体、その下枠体上方の複数段の上枠体とを備えて、高さ方向に相隣設する枠体間に亘って複数の昇降手段を連結して構成した多段式の重量物昇降手段にあっては、周面各面の狭いモーメント的な有利なエリアにブレースで耐力壁を構成し、その耐力壁を転倒防止手段で更に補強する。
【発明の効果】
【0018】
(請求項1、2)重量物を載承して昇降動作する最中或いは重量物を載承して所定上昇高さまで持ち上げた時、該装置に水平力が作用しても昇降動作に追従して伸長/収縮する転倒防止手段が常に対応する為、装置が水平力を受けて転倒するようなことは無く、安定して昇降動作を行うことができる。
しかも、転倒防止手段は、平板または矩形状枠体をヒンジ連結した2体の蛇腹状体をその平板または矩形状枠体の面同士を所定間隔をおいて接近状に対向配置させた状態で同一高さのヒンジ連結部の揺動中心部同士を1つおきに連結すると共に2体の蛇腹状体の上下端を上下枠体に揺動可能に連結して、昇降部の昇降動作に追従する伸縮動作中に2体の蛇腹状体における連結された前記揺動中心部間の上下の平板または上下の矩形状枠体で中間ヒンジが互いに離間する菱形形状部を形成するように構成しているので、平板または矩形状枠体をヒンジ連結した1体の蛇腹体からなる横倒防止手段の場合のように伸び途中段階や折畳み途中段階で風等で上下方向に生じる捩り応力に対して弱い、くの字状部を形成せずに菱形形状部を形成して強度アップして、捩じれ変形を防止して伸長展開させ、また収縮させる(折畳む)ことができる。
その上、転倒防止手段の伸長展開/収縮は、昇降部における上下する枠体(上枠体)の上下動作で行われる為、別途、伸縮動力源を必要とせず、より安価に製作することができる。
【0019】
(請求項3)大きいストロークの昇降装置を構成することができる。
【0020】
(請求項4)しかも、昇降手段で昇降される上枠体が複数段で構成され、高さ方向に相隣設するその枠体を昇降手段で連結して、所要高さまでの重量物の上昇を各段の複数の昇降手段で分担して行えるようにしており、各段のジャッキとしてストローク(能力)が小さな断面積の小さいジャッキ(例えば1段ジャッキ、2段伸長ジャッキ)を使用可能にして、装置自体の重量を低減して運搬コストや手間を削減し、装置を廉価に提供することができる。
【0021】
(請求項5、6)昇降装置のいずれの面に水平力が作用しても、その水平力が作用する面と直交する面に配置した転倒防止手段が対応して昇降装置を鉛直起立状態に保持する。従って、安全に昇降作業を行うことが出来る。
【0022】
(請求項7、8)また、4周面がブレースで補強されるので、転倒防止手段として相乗して水平力に対して優れた耐力を発揮する。
しかも、下枠体、その下枠体上方の複数段の上枠体の各段の4周面をブレースで補強していると、周面各面の狭いモーメント的な有利なエリアが耐力壁を形成するので、転倒防止手段として効果的に補助し、優れた転倒防止性能を備えた重量物昇降装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明に係る重量物昇降装置の実施の数例を図面に基づいて説明すると、図1乃至図5はその第1の実施の形態を、図6乃至図8は、同第2の実施の形態を、図9は、同第3の実施の形態を各々示している。
まず、その第1の実施の形態を説明すると、
図1は重量物昇降装置の全体を示す外観図で、重量物昇降装置Aは、4本の昇降手段1と、その4本の昇降手段1の基部側を連結する下枠体2と、4本の昇降手段1の伸縮する作動部を連結する上枠体3とからなる昇降部A1と、その昇降部A1の昇降動作中及び昇降動作停止時、該昇降部A1に作用する水平力(横倒力)に抗して昇降部A1の転倒を防止する転倒防止手段Bとで構成されている。
【0024】
昇降部A1を構成する4本の昇降手段1は、油圧式の多段伸長ジャッキ(図示は3段伸長ジャッキ)で構成され、その昇降手段1は下枠体2、上枠体3の四隅近傍に配置取り付けられている。
【0025】
前記昇降手段1の基部相互を連結する下枠体2は、金属製型材を用いて平面視矩形状に形成され、その矩形の長辺における四隅近傍位置に前記昇降手段1の基部を嵌合し得る取付孔2aが開設され、その取付孔2aに昇降手段1を構成する多段伸長ジャッキが嵌合固定されて下枠体2と一体化されている。尚、下枠体2に対する昇降手段1の固定は、多段伸長ジャッキのシリンダ外周にフランジを突出形成し、そのフランジを前記取付孔2aの周囲に起立固定した保持枠にボルト・ナットで締着固定して行われている。
【0026】
また、昇降手段1の伸縮する作動部を連結する上枠体3は、複数の昇降手段1の能力を合体すると共に重量物Wを載承する荷台を構成するもので、前記した下枠体2と同様、金属製型材を用いて平面視矩形状に形成され、その矩形の長辺に昇降手段1の伸縮するロッドの先端が連結固定されている。それにより、上枠体3は複数の昇降手段1が同期して作動することで水平状態を維持して上下昇降される。
【0027】
そして、前記昇降部A1を構成する平面視矩形状の下枠体2と、昇降手段1で上下昇降される上枠体3とに亘って、昇降部A1の昇降動作中及び昇降動作停止時に該昇降部A1に作用する水平力に対抗する転倒防止手段Bが設けられている。
その転倒防止手段Bは前記下枠体2と上枠体3との間の周囲4面に配置すると共に下端を下枠体2、上端を上枠体3に取り付けて、上下二面を除いた周面4面に設けられている。即ち、昇降部A1における前・後面及び左・右面に配置され、何れの方向の水平力(横倒力)に対しても対応できるようになっており、また、昇降部A1の上下昇降に追従して展開伸長/折畳み収縮するように構成されている。
前記転倒防止手段Bは、図4に示すように金属製の矩形状を呈する金属製の平板4、4の上下の長辺に間隔をおいて湾曲状板部5、5を形成し、上下の平板4、4間において上下の湾曲状板部5、5を、互いの間を埋め合うように横方向に一直線に並設した状態で揺動中心部(軸)6でその上下の湾曲状板部5…をヒンジ連結した所要長さの2体の蛇腹状体B1、B1を備えている。
この2体の蛇腹状体B1、B1は、図1、図4に示すように前記平板4…の面同士を所定間隔をおいて接近状に対向配置させた状態で同一高さ1つおきのヒンジ連結部の揺動中心部6同士を連結プレート7で連結し、上下端に下枠体2、上枠体3に取り付ける支持板8、8を揺動可能にヒンジ連結して、その支持板8、8を下枠体2、上枠体3夫々に取り付けて、2体とも昇降部A1における前・後面及び左・右面の長辺と平行にして、図5に示すように昇降手段1の伸縮途中に連結プレート7、7間の上下の平板4、4一対で中間ヒンジ9、9(連結プレート間のヒンジ)が同時に離間して両端を開放する菱形形状部10…を形成するように構成されている。
連結プレート7、7間の上下の平板4、4各々は、図4に示すように中間ヒンジ9、9各々の湾曲状板部5、5の外周面同士が互いに当接して上下の平板4、4が挟角(α)を180度よりも若干小さくする角度まで伸長するようになっている。
従って、油圧式の多段伸長ジャッキ1では、伸び途中、折畳み途中には各連結プレート7、7間の上下の金属製の平板4、4各々で菱形形状部10…を形成しながら2体の蛇腹状体B1、B1が伸びきるまで伸長し、また上下の連結プレート7、7が上下に当接するまで折畳まれる。
【0028】
前記構成とした重量物昇降装置Aは、上枠体3の上に重量物Wを載置して昇降部A1の昇降手段1を作動させることで、上枠体3は水平状態を維持して上昇し、重量物Wを所定高さまで持ち上げる(上昇させる)ことができる。そして、前記上枠体3の上昇動作に追従して折畳まれて、連結プレート7、7間に上下の金属製の平板4、4一対で菱形形状部10を形成しながら、連結プレート7、7間の上下の平板4、4各々が挟角を180度よりも若干小さくするように中間ヒンジ9、9各々の湾曲板部5、5の外周面同士が互いに当接して、2体の蛇腹状体B1、B1に伸長展開し、昇降装置Aのいずれの面に水平力が作用しても、その水平力が作用する方向と同方向を向いて伸長展開した2体の蛇腹状体(転倒防止手段)B1、B1が剛体となって、昇降装置Aが転倒するのを防止する。
そして、昇降部A1昇降途中時に横倒防止手段Bの伸び途中部、折畳み途中部に連結プレート7、7間の上下の平板4、4一対で中間ヒンジ9、9が互いに離間する菱形形状部10を形成するので、その菱形形状部10の剛性が伸び途中部、折畳み途中部の強度を増強し、横倒防止手段Bに風等で上下方向に捩り応力が発生しても、各菱形形状部10が強度アップして、その捩じり応力に対抗し、伸長展開、折畳み収縮を阻害しなくなる。
【0029】
次に図6乃至図8に示す第2の実施の形態を説明すると、重量物昇降装置Aは、下枠体2に対して複数段の上枠体3…をその上方に配置すると共にその高さ方向に相隣設する各枠体(下枠体2とそのすぐ上の上枠体3、上枠体3とそのすぐ上の上枠体3等)を各々複数の昇降手段1で連結して昇降部A1を構成し、その高さ方向に相隣設する枠体(下枠体2とそのすぐ上の上枠体3、上枠体3とそのすぐ上の上枠体3等)に亘って第1の実施の形態と同様な構成の転倒防止手段Bを取り付けたものである。
この実施の形態では高さ方向に2体の上枠体3…を配置した2段式の重量物昇降装置を示している。
前記下枠体2、上枠体3は、各々平面視矩形状を呈している。
【0030】
前記昇降手段1は、この実施の形態では2段伸長ジャッキを使用し、中段の上枠体3の四隅に下向きに設け、その上枠体3の四隅近傍に上向きに設けてある。
この2段伸長ジャッキは、伸長/収縮する1段目のネジロッド11内から二段目のネジロッド21が伸長/収縮するもので、下向きな2段伸長ジャッキは、ネジロッド21を下枠体2の四隅に連結し、上向きな2段伸長ジャッキは、ネジロッド21を最上位の上枠体3の四隅近傍に連結している。
符号12は、伸長時にネジロッド11、21の緩みを防止する安全ナットであり、周知の通り、電動トルクモータで安全ナットを回転締結させてネジロッド11、21の突出状態を保持するようになっている。
【0031】
この重量物昇降装置Aは、下向きな2段伸長ジャッキの1段目、2段目、上向きな2段伸長ジャッキの1段目、2段目の各々のジャッキアップ、ジャッキダウンによって最上位の上枠体3に載承される重量物Wを昇降するようになっている。
【0032】
前記横倒防止手段Bは、前記する第1の実施の形態と同様な構成になっており、上下端を前記昇降部A1を構成する高さ方向に相隣設する枠体(下枠体2とそのすぐ上の上枠体3、上枠体3とそのすぐ上の上枠体3等)に亘って架設して構成されている。
そして、昇降手段1である下向きな2段伸長ジャッキ、上向きな2段伸長ジャッキの伸縮時には、その1段目、2段目に該当する伸び途中部、折畳み途中部に前記菱形変形部10を形成しながら伸長展開し、また折畳まれるようになっている。
【0033】
この横倒防止手段Bは、前記する第1の実施の形態と同様に昇降手段1の伸縮途中で風等で上下方向に捩り応力が働くようなことがあっても、連結プレート7、7間の上下の金属製の平板4、4で形成され、中間ヒンジ9、9が互いに離間するその菱形形状部10で対抗して、その剛性で捩じれ変形を防止して伸長展開し、また折畳むことができるようになっている。
【0034】
前記転倒防止手段Bを構成する金属製の平板4の大きさは、第1、第2の実施の形態共に、その構成から長辺の長さを昇降部A1を構成する上枠体3、下枠体2の辺の長さ内に収まる長さとするのが好ましく、短辺の長さは短い方が昇降部A1の収縮時における上・下枠体より水平方向外側への突出量を少なくできる。
また、図示の場合は第1の実施の形態では昇降部A1の周囲4面に、第2の実施の形態では各段の周囲4面に転倒防止手段Bをそれぞれ1個ずつ配置しているが、長辺の長さを短くしたものを各面に複数列(例えば、二列)配置するなど任意である。
更に、金属製の平板に代わりに、金属製の枠体を使用しても良く、その場合にはその枠体は金属製の平板に周囲を除いて窓孔を開設して形成したものでも良いものである。
【0035】
次に図9に示す第3の実施の形態を説明すると、この実施の形態は、前記する第2の実施の形態で示す各段の4周面の各面にブレース(例えばワイヤーブレース)13を斜設したものであり、下枠体2とそのすぐ上の一段目の上枠体3とに亘って設けると共に一段目の上枠体3と二段目の上枠体3とに亘って設けて、各段の各面(上面を除く周面4面)をそのブレース(ワイヤーブレース)13の張力で耐力壁にしている。
このブレース13は、2段伸長ジャッキのジャッキアップに応じて耐力壁を各面に形成できるようにその張力を調節可能にするのが好適なものである。
このブレースと、横倒防止手段との併用によって、水平力(横倒力)に対して秀でた重量物昇降装置を構成することができる。
【0036】
尚、このブレースは、前記第1の実施の形態のように多段伸長ジャッキで昇降部が昇降される重量物昇降装置の前記4周面に斜設補強することも包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】重量物昇降装置の第1の実施の形態を示し、昇降手段が伸長した状態の正面図。
【図2】昇降手段が収縮した状態の正面図。
【図3】平面図。
【図4】横倒防止手段の部分拡大斜視図。
【図5】伸縮中途状態を示す正面図。
【図6】重量物昇降装置の第2の実施の形態を示し、2段の昇降手段が伸長した状態の正面図。
【図7】収縮中途状態を示す正面図。
【図8】2段の昇降手段が収縮した状態を示す正面図。
【図9】重量物昇降装置の第3の実施の形態の正面図。
【符号の説明】
【0038】
A:重量物昇降装置 A1:昇降部
B:転倒防止手段 1:昇降手段
2:下枠体 3:上枠体
4:平板(金属製の平板) 6:揺動中心部
7:連結プレート 10:菱形形状部
B1、B1:蛇腹状体 13:ブレース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物を接地状態の昇降手段で上下昇降する重量物昇降装置であって、一端が接地され他端側が鉛直方向に伸縮して重量物を上げ下げする昇降部と、その昇降部の昇降動作に追従して伸長/収縮する転倒防止手段とを設け、前記昇降部は、複数の昇降手段と、下枠体と、上枠体とを備えると共に、その下枠体、上枠体に亘って複数の昇降手段を連結して構成され、前記転倒防止手段は、下枠体、上枠体とに亘って架設することによって配置してなり、
該転倒防止手段は、平板または矩形状枠体をヒンジ連結した2体の蛇腹状体をその平板または矩形状枠体の面同士を所定間隔をおいて接近状に対向配置させた状態で同一高さのヒンジ連結部の揺動中心部同士を1つおきに連結すると共に2体の蛇腹状体の上下端を上下枠体に揺動可能に連結して、昇降手段の伸縮動作に追従する2体の蛇腹状体における連結された前記揺動中心部間の上下の平板または上下の矩形状枠体で中間ヒンジが互いに離間する菱形形状部を形成するように構成したことを特徴とする重量物昇降装置。
【請求項2】
重量物を接地状態の昇降手段で上下昇降する重量物昇降装置であって、一端が接地され他端側が鉛直方向に伸縮して重量物を上げ下げする昇降部と、その昇降部の昇降動作に追従して伸長/収縮する転倒防止手段とを設け、前記昇降部は、複数の昇降手段と、下枠体と、その下枠体上方の複数段の上枠体とを備えると共に、高さ方向に相隣設するその各枠体に亘って複数の前記昇降手段を連結し、前記転倒防止手段は、高さ方向に相隣設するその各枠体とに亘って架設することによって配置してなり、
該転倒防止手段は、平板または矩形状枠体をヒンジ連結した2体の蛇腹状体をその平板または矩形状枠体の面同士を所定間隔をおいて接近状に対向配置させた状態で同一高さのヒンジ連結部の揺動中心部同士を1つおきに連結すると共に2体の蛇腹状体の上下端を高さ方向に相隣設する前記枠体に揺動可能に連結して、各段の昇降手段の伸縮動作に追従する2体の蛇腹状体における連結された前記揺動中心部間の上下の平板または上下の矩形状枠体でその中間ヒンジが互いに離間する菱形形状部を形成するように構成したことを特徴とする重量物昇降装置。
【請求項3】
前記各昇降手段が多段伸長ジャッキであることを特徴とする請求項1記載の重量物昇降装置。
【請求項4】
前記昇降手段が1段ジャッキまたは2段伸長ジャッキであることを特徴とする請求項2記載の重量物昇降装置。
【請求項5】
前記昇降部を構成する上枠体、下枠体が平面矩形状で、下枠体、上枠体の四隅またはその近傍に昇降手段を配置し、前記転倒防止手段を、複数の昇降手段で各々区画される4周面に配置したことを特徴とする請求項1または3記載の重量物昇降装置。
【請求項6】
前記昇降部を構成する上枠体、下枠体が平面矩形状で、その高さ方向に相隣設する各枠体の四隅またはその近傍に昇降手段を配置し、前記転倒防止手段を、複数の昇降手段で各々区画される各段の4周面に配置したことを特徴とする請求項2または4記載の重量物昇降装置。
【請求項7】
前記転倒防止手段を配置した昇降部の4周面にブレースを斜設補強したことを特徴とする請求項5記載の重量物昇降装置。
【請求項8】
前記転倒防止手段を配置した昇降部における各段の4周面にブレースを斜設補強したことを特徴とする請求項6記載の重量物昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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