説明

重量物運搬装置におけるロック機構

【課題】 重量物を支えるための設計の自由度を広くするとともに、H型鋼の強度や重量物を支えるための強度を確保した上で、スムース、且つ迅速にロック及びロック解除する。
【解決手段】 H型鋼2のフランジ4間にH型鋼2の長手方向と交差する方向から抜き挿しされるロック部材81を備え、当該ロック部材81を、フランジ4間に挿入された状態において、ロック部材81の下面がH型鋼2の既設のリブ6の上面と対面させる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物運搬装置におけるロック機構に関し、詳しくは、重量物を上下方向に運搬する重量物運搬装置のロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の重量物を上下方向に運搬する重量物運搬装置の構造として、長手方向を上下方向として設置したH型鋼をクランプする上下2箇所のクランプ部と、当該両クランプ部間に亘って配設された上下に伸縮するジャッキ部とで構成され、前記下側のクランプ部には重量物載置部が連結される。
前記構成の重量物運搬装置によれば、上下のクランプ部をH型鋼に対して交互にクランプ及びクランプ解除しながら、ジャッキ部を伸縮させることにより、重量物を連続的に上昇又は下降させることができる。
又、重量物運搬装置には、重量物の上昇・下降時において重量物を載置した重量物載置部の落下事故防止のために、ロック機構を備えている。
前記ロック機構の構成として、H型鋼に長手方向と直交する貫通孔を上下2箇所開け、当該貫通孔にピン部材を挿入することによりロックし、貫通孔からピン部材を抜くことによってロック解除するようにしたものが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記のロック機構の構成である場合、H型鋼の強度を確保するために貫通孔の大きさがある程度制限されるため、ピン部材の径を貫通孔の径に合わせた径のものを使用せざるを得ず、重量物を支えるための強度の設計自由度が狭いものであった。
又、ピン部材を貫通孔に対してスムースに挿入させるには、ピン部材の軸心と貫通孔の中心とを同心にすることが必要であり、ピン部材と貫通孔を同心にする場合には、前記ジャッキ部の伸縮時における停止位置の正確性が求められるが、そのジャッキ部の停止位置を正確な位置にするための調整に時間がかかってしまうため、重量物の上昇・下降を連続的に行うという重量物運搬装置の機能を充分に発揮しているものでないと推察できる。
【0004】
ところで、前記ピン部材を貫通孔に対してスムース、且つ迅速に挿入する手段として、貫通孔と貫通孔に挿入された状態のピン部材との遊びを大きくすれば、ジャッキ部の伸縮時における停止位置の正確性もそれほど求められず、しかもピン部材が貫通孔に接触したり引っ掛かったりすること無くスムース、且つ迅速な挿入ができるが、前記遊びを大きくするということは、貫通孔の径を拡げたり、ピン部材の径を更に小径にしたりすることになるため、H型鋼の強度や重量物を支えるための強度を確保するという点から現実的な手段ではない。
尚、前記課題を解決する先行技術文献情報に関しては、本願出願人の知り得る範囲において無い。
【0005】
本発明は、重量物を支えるための設計の自由度を広くするとともに、H型鋼の強度や重量物を支えるための強度を確保した上で、スムース、且つ迅速にロック及びロック解除することを課題とし、この課題を解決した重量物運搬装置におけるロック機構の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するため、下記の技術的手段を採用した。
その第1発明は、長手方向を上下方向として設置したH型鋼に沿うジャッキ部の伸縮動と、当該伸縮動に応じてH型鋼に対してクランプ及びクランプ解除する上下2箇所のクランプ部とによって、重量物を上下方向に運搬する重量物運搬装置に装備され、前記H型鋼に対して係脱することにより、重量物運搬装置を支持及び支持解除するロック機構において、ロック機構は、H型鋼のフランジ間にH型鋼の長手方向と交差する方向から抜き挿しされるロック部材を備え、当該ロック部材は、フランジ間に挿入された状態において、ロック部材の下面がH型鋼のウエブとフランジと一体に設けられた既設のリブの上面と対面することを特徴とする重量物運搬装置におけるロック機構にしたことである。
【0007】
前記ロック部材は、ウエブを挟んで左右両側のフランジ間のいずれか一方に挿入される形態でも良いが、重量物を支えるための強度の向上という観点から、第2発明のように、ロック部材をウェブを挟んで両側のフランジ間に対し夫々1個ずつ挿入するようにすることが好ましい。
又、重量物運搬装置の構成を簡易化する観点から、第3発明では、前記ロック機構をクランプ部兼用としたことを特徴とする重量物運搬装置におけるロック機構にした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の重量物運搬装置におけるロック機構によれば、下記の優れた効果が期待できる。
第1発明によれば、ロック部材をフランジ間に挿入するとともに、挿入されたロック部材の下面と既設のリブの上面とが対面することで、重量物運搬装置がH型鋼に対してロックされる構造である。
すなわち、本発明のロック機構は、H型鋼における既設のリブを利用して重量物運搬装置をロックするものであるので、従来のようにH型鋼に対してその強度を低下させてしまうような加工をする必要がない。
したがって、重量物を支えるための設計の自由度を広くするとともに、H型鋼の強度や重量物を支えるための強度を確保した上で、スムース、且つ迅速にロック及びロック解除することができる重量物運搬装置におけるロック機構を提供できる。
【0009】
又、第2発明によれば、ロック部材をウェブを挟んで左右両側の両フランジ間に対し夫々1個ずつ挿入するようにしているので、重量物を支えるための強度が向上する。
【0010】
又、第3発明によれば、ロック機構をクランプ部兼用としているので、重量物運搬装置を簡易化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の重量物運搬装置におけるロック機構を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
又、本形態におけるH型鋼2は、図1に示すように、重量物Aを挟むように前後2本ずつ計4本の立設され、その1本毎に重量物運搬装置1が上下動可能に装着されている。
又、前方2本のH型鋼2と後方2本のH型鋼2とには、夫々重量物載置部3がH型鋼2の上下方向に沿ってスライド可能に係合され、当該重量物載置部3は、重量物運搬装置1に連結されて当該重量物運搬装置1の上下動に伴って上下スライドするようにされている。
H型鋼2は、左右のフランジ4と、両フランジ4を連結するウエブ5と、これらフランジ4とウエブ5とに一体に設けられた多数のリブ6とからなる周知のものである。
【0012】
重量物運搬装置1は、図2及び図3に示すように、クランプ部7Aの下方にロック機構8Aが連結された上側クランプ9Aと、クランプ部7Bの下方にロック機構8Bが連結された下側クランプ9Bと、これら上側クランプ9Aと下側クランプ9Bとに亘って連結された2本のジャッキ部9Cとから構成されている。
【0013】
前記クランプ部7A,7Bは、例えば、油圧によりH型鋼2における両フランジ4に対してクランプ及びクランプ解除される周知構造のものである。
前記ジャッキ部9Cは、例えば、油圧により伸縮する周知構造のものであり、H型鋼5におけるフランジ51と対面する位置にし、上側クランプ9Aにおけるロック機構8Aと下側クランプ9Bにおけるクランプ部7Bとに亘って連結されている。
【0014】
ロック機構8A,8Bは、図4及び図5に示すように、H型鋼2における両フランジ4間に対し、H型鋼2の長手方向と直交する方向に抜き挿しされるロック部材81と、当該ロック部材81を抜き挿し動作させるための油圧ジャッキ82とから構成されている。
ロック部材81は、鋼材を用いてH型鋼2におけるフランジ4,4間に適合状に挿し込まれる幅とする略立方体状に形成され、フランジ4,4間と正対するように位置している。
又、ロック部材81の厚みや幅を重量物の重さに対応して増減することにより、その強度を調節することができる。
又、ロック部材81は、前記フランジ4,4間に挿入された状態でロック部材81の下面がリブ6上に載置されることによって、ロック部材81がH型鋼2に対して掛止状にロックするので、重量物運搬装置1がH型鋼5に対して落下防止される。
尚、本形態のロック機構8A,8Bは、ロック部材81を2個有し、H型鋼2におけるウエブ5を挟んで両側のフランジ4,4間に1個ずつ抜き挿しされるようにしたものである。
【0015】
前記構成の重量物運搬装置1によれば、重量物Aを上昇させる際に、先ず、H型鋼2に対して下側クランプ9Bにおけるクランプ部7Bをクランプするとともに、ロック機構8Bのロック部材81をフランジ4,4間に挿入して下側クランプ9Bをロック状態とする(図5参照)。
このとき、上側クランプ9Aのクランプ部7Aはクランプ解除され、ロック機構8Aのロック部材81がフランジ4,4間から抜かれ、上側クランプ9Aのロックが解除されている(図4参照)。
この状態で、ジャッキ部9Cの伸長により上側クランプ9Aを、ロック機構8Aにおけるロック部材81がフランジ4,4間に挿入された際に、ロック部材81の下面がリブ6上に載置される位置まで上昇させる(図示せず)。
【0016】
次に、H型鋼2に対して上側クランプ9Aのクランプ部7Aをクランプさせるとともに、ロック機構8Aのロック部材81をフランジ4,4間に挿入して上側クランプ9Aをロックし、その直後、下側クランプ9Bにおけるクランプ部7Bのクランプを解除するとともに、ロック機構8Bのロック部材81をフランジ4,4間から抜いて下側クランプ9Aをロック解除する(図示せず)。
そして、この状態からジャッキ部9Cを収縮させることにより、下側クランプ9Aが上昇し、これに伴って重量物Aを載置した重量物載置部3が上昇することにより、重量物Aが上方に運搬される(図示せず)。
前記動作を繰り返すことにより、所定位置まで重量物Aを運搬する。
逆に、重量物Aを下降させる動作においては、前記の動作の逆動作を行うことによって下降させることができる。
【0017】
なお、本発明は、例示した実施の形態に限定するものでは無く、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
例えば、本形態で例示したロック機能8A,8Bは、2個のロック部材81を用いて、H型鋼2におけるウエブ5を挟んで両側のフランジ4,4間に1個ずつ抜き挿しされるようにしているが、本発明は、ロック部材81を1個としたロック機構8A,8Bも含み、この場合、ロック部材81が片側のフランジ4,4間に挿入されてロックする(図示せず)。
又、本形態で例示した重量物運搬装置1は、クランプ部7A,7Bとロック機構8A,8Bを備えたものであるが、本発明は、ロック機構8A,8Bのロック機能をクランプ機能として兼用しても良く、この場合、クランプ部が省略された重量物運搬装置1にすることができる(図示せず)。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る重量物運搬装置におけるロック機構の実施の一例を示す使用状態図。
【図2】図1の要部拡大正面図。
【図3】同、要部拡大側面図。
【図4】図3の(4)-(4)線断面図。
【図5】同、(5)-(5)線断面図。
【符号の説明】
【0019】
A:重量物
1:重量物運搬装置
2:H型鋼
3:重量物載置部
4:フランジ
5:ウエブ
6:リブ
7A:クランプ部
7B:クランプ部
8A:ロック機構
8B:ロック機構
9A:上側クランプ
9B:下側クランプ
9C:ジャッキ部
81:ロック部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を上下方向として設置したH型鋼に沿うジャッキ部の伸縮動と、当該伸縮動に応じてH型鋼に対してクランプ及びクランプ解除する上下2箇所のクランプ部とによって、重量物を上下方向に運搬する重量物運搬装置に装備され、前記H型鋼に対して係脱することにより、重量物運搬装置を支持及び支持解除するロック機構において、
ロック機構は、H型鋼のフランジ間にH型鋼の長手方向と交差する方向から抜き挿しされるロック部材を備え、当該ロック部材は、フランジ間に挿入された状態において、ロック部材の下面がH型鋼のウエブとフランジと一体に設けられた既設のリブの上面と対面することを特徴とする重量物運搬装置におけるロック機構。
【請求項2】
ロック部材をウェブを挟んで両側のフランジ間に対し夫々1個ずつ挿入するようにしていることを特徴とする請求項1に記載の重量物運搬装置におけるロック機構。
【請求項3】
ロック機構をクランプ部兼用としていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の重量物運搬装置におけるロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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