重金属や塩蓄積性、または重金属、塩または乾燥に対する耐性を変化させる遺伝子及び、これらを利用して製造する形質転換体
【課題】重金属や塩に対する耐性及び蓄積性を変化させることができる遺伝子、または塩や乾燥抵抗性を変化させる遺伝子を含む再対合ベクター、及びこれから製造される形質転換体の提供。
【解決手段】重金属耐性や蓄積性を変化させることができる遺伝子であって、類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜蛋白質を暗号化する配列を有する遺伝子。該遺伝子は6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質をコードする配列を有する。また、乾燥抵抗性を変化させる遺伝子は、GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質をコードする配列からなる群より選択される。
【解決手段】重金属耐性や蓄積性を変化させることができる遺伝子であって、類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜蛋白質を暗号化する配列を有する遺伝子。該遺伝子は6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質をコードする配列を有する。また、乾燥抵抗性を変化させる遺伝子は、GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質をコードする配列からなる群より選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重金属や塩耐性または蓄積性を変化させることができる遺伝子及び、これら遺伝子を利用して製造される形質転換網に関し、より詳しくは重金属や塩に対する耐性や蓄積性を変化させる遺伝子及び、これら遺伝子と塩や乾燥抵抗性を向上させる遺伝子を含む再組合ベクター及び、この再組合ベクターを利用して製造する形質転換体及び重金属、塩、乾燥に対する耐性が優れていたり重金属を効果的に除去または蓄積することができる形質転換植物と重金属吸収が減少した形質転換植物、前記植物を利用した環境浄化方法及び安全な作物開発に関するものである。
【背景技術】
【0002】
重金属は主な環境汚染因子で、反応性酸素種(Reactive OxidationSpecies)の生成、DNA損傷及び細胞内の様々な蛋白質と酵素の非活性化を引き起こす。過去数十年間産業化が進められることに伴って重金属による環境汚染が急激に増加した。1990年初めには年平均放出量が、カドミウム22,000トン、銅954,000トン、鉛796,000トン、亜鉛1,372,000トンに至った(Alloway BJ&Ayres DC(1993)Principles of environmental pollution. Chapman and Hall, London)。また、重金属に汚染された土壌は植物の正常な成長を阻害し、穀物の汚染を引き起こして人間の健康を脅かしているのが実情である。
【0003】
したがって、全世界的に重金属を土壌から除去するための研究が進められている。一般的な方法は物理的または化学的な方法で、汚染された部分を直接除去或いは埋めたり、アルカリ溶液を利用して固定したりろ過したりする方法がこれに属する(Salt DE, Blaylock M,Kumar NPBA, Viatcheslav D, Ensley BD, et al.(1995)。Phytoremediation:a novel strategy for the removal of toxic metals from the environment using plants. Bio-Technology 13, 468-74;Raskin I, Smith RD, Salt DE.(1997)Phytoremediation of metals:using plants to remove pollutants from the environment. Curr. Opin. Biotechnol. 8,221-6)。しかし、このような方法は高費用で、莫大なエネルギーが所要されるという問題がある。
【0004】
これに反し、植物環境浄化技術(Phytoremediation)は植物を利用する環境浄化法で、重金属を除去するのに非常に効率的、経済的で環境親和的な方法であって、植物抽出(phytoextraction)、根ろ過(rhizofiltration)及び植物安定化(phytostabilization)の3種類の方法を含む。植物抽出は重金属が蓄積できる能力を持っている植物を利用して土壌から重金属を除去する方法であり、根ろ過は植物の根を利用して汚染された水質から汚染物質を除去する方法で、植物安定化は植物を利用して土壌にある毒性物質を非活性化する方法である(Salt DE et al.,Biotechnology 13(5):468-474、1995)。
【0005】
植物環境浄化技術の一例として、ラレアトリデンタタ(Larrea tridentata)植物を用いて銅、ニッケル及びカドミウムを浄化する方法(米国特許第5,927,005号)、ハクサイ科(Brassicaceae family)の植物を利用する方法(Baker et al.,New Phytol.127:61-68、1994)等が報告された。他の方法として、重金属に対する抵抗性を持たせる遺伝子を植物体に導入して形質転換された植物を利用する植物環境浄化技術が可能であると予測されている。重金属に対する抵抗性を向上させる植物遺伝子としては、AtATM3(ABC transporters of mitochondria)、CAX2(Calcium exchanger 2)、サイトクロムP4502E1、NtCBP4(Nicotiana tabacum calmodulin-binding protein)、GSHII(glutathione synthetase)、AtPcr1(plant cadmium resistance)、AtPDR12(pleiotropic drug resistance)またはMRTポリペプチド(metal-regulated transporter polypeptide)が知られている。AtATM3はABC-type輸送体で過発現形質転換植物がカドミウムと鉛に対する抵抗性が向上し、植物体内カドミウム含量を増加させると報告され(Kim et al.,Plant Physiol. 140:922-932、2006)、CAX2はカドミウム、マンガンのような重金属を植物体内に蓄積し(Hirschi KD et al., Plant Physiol. 124:125-134, 2000)、サイトクロムP4502E1はトリクロロエチレン(TCE)などの有機物質を植物内に受け入れて分解すると報告されている(Doty SL et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA97:6287-6291,2000)。NtCBP4は形質転換植物体でニッケルに対して抵抗性を示し(Arazi T et al.,Plant J.20:171-182,1999)、GSHIIはカドミウムを植物体内に蓄積し(Liang Zhu Y et al.,Plant Physiol.119:73-80,1999)、AtPcr1過発現植物は体内カドミウム含量を減少させる機作でカドミウムに対する抵抗性を示し(Song et al.,Plant Physiol.135:1027-1039,2004、韓国特許出願第10-2003-0058299号、米国特許出願10/907、694)、AtPDR12形質転換植物は植物に入ってきた鉛の量を減少させることによって鉛抵抗性を向上させ(Lee et al.,Plant Physiol.138:827-836、2005)、MRTポリペプチドは鉄、カドミウム、マンガン及び亜鉛のような重金属を土壌から除去するもの(米国特許第5,846,821号)として知られている。
【0006】
最近は植物の重金属に対する耐性及び蓄積性を効果的に増加させるために、植物遺伝子だけでなく酵母及びバクテリアから重金属に対する耐性や蓄積性に寄与する遺伝子を植物体に導入して植物の重金属に対する耐性及び蓄積性を変化させる方法が報告された。その例として、merB(organomercurial lyase)は有機水銀物質を分解し(Bizily SP et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA96:6808-6813,1999)、バクテリアのP-typeポンプであるZntA遺伝子を植物に過発現させてカドミウムと鉛に対する耐性が増加し、吸収量が減少した植物(Lee et al.,Plant Physiol.133:589-596、2003)を製造する方法(韓国特許第0515520号)と酵母のABC-type輸送体であるYcf1(yeast cadmium factor1)遺伝子を植物に発現させてカドミウムと鉛に対する耐性と蓄積性が増加した植物(Song et al.,Nat Biotechnol.21:914-919,2003)を製造する方法(国際特許PCT/KR02/01934)、そして酵母のMRP-typeABC輸送体を植物に発現させて形質転換植物を製造する方法が報告された(韓国特許第0480843号)。
【0007】
しかし、前記で列挙した重金属抵抗性を示す遺伝子で形質転換させた植物体は、重金属で汚染された土壌での成長が野生種に比べて改善されてはいるが、重金属の地上部蓄積性は大きく改善できなかった。環境浄化用植物は汚染物質に対して耐性を有するだけでなく、この汚染物質を地上部に移動させて汚染物質が蓄積できる特性を有することがさらに理想的である。植物の地下部よりは地上部を収穫して処理することがさらに安全で経済的であるためである。今まで知られた重金属抵抗性を示す遺伝子で形質転換された植物体は、重金属で汚染された土壌での成長が野生種に比べて多少改善された場合があるが、効果的に重金属を地下部で地上部に移動させて蓄積する植物はまだ開発されていない。
【0008】
植物は水を吸収する時に、環境に存在する多様な汚染物質を共に吸収する。したがって、植物が水をさらに多く吸収して蒸散できれば、汚染された土壌から汚染物質をさらに早くさらに多く植物体内に蓄積することができる。このような植物は野生種に比べてより速い時間内に環境の汚染度を低下させることができるので、環境浄化に所要される時間と経済的な費用が節減できる。
なお、全世界的に水不足が大きな問題となっているため、砂漠化が進められている地域も多い。これは農業と環境に大きな問題を招いている。したがって、水を少なく使用して乾燥した環境や塩濃度の高い環境でも耐えられる植物の開発が切実に必要であるのが実情である。特に、乾燥地域で経済的に環境浄化をしようとする場合には、汚染物質に対する耐性が向上しただけでなく、乾燥抵抗性も向上した植物が理想的である。反面、蒸散作用を下げることができる植物は乾燥した条件での生存に有利であるので、環境が非常に乾燥した地域での環境浄化や農業生産性に寄与することができる。
【0009】
環境浄化用植物の場合とは反対に、作物の場合には汚染物質の吸収を最少化する技術の開発が必要である。作物が重金属や他の汚染物質を吸収すると、それを消費する人と家畜の健康に悪影響を与えるためである。細胞から重金属を除去する遺伝子を作物に発現させることによって、重金属汚染からより安全な作物を開発することができる。また、細胞に重金属を蓄積させる遺伝子の発現を人為的に減少させたり、この遺伝子を変形して反対作用を起こすように発現させたりすると、このような形質転換植物は野生種に比べて重金属蓄積が減少し、この技術を安全な作物の開発に利用することができる。
【0010】
重金属抵抗性、塩抵抗性、乾燥抵抗性などを変化させる遺伝子はまた、環境復原(Rehabilitaton)に用いることができる。環境復原は人為的且つ自然的に破壊された自然を再び回復させ、生態系を再び構築して本来の状態に戻すことである。したがって、これは環境を快適にするだけでなく、自然資源を保存し、人間が他の生物種と共に生きていける拠り所を備えることである。復原方法としては汚染物質除去、耐性植物の植栽、絶滅した動物の再導入がある。このような環境復原の実際事例としては、ゴミ埋立地として使用された地域に自生植物と薬用植物を植栽して生息植物の種数を増加させ、住民生態教育場と休息空間に変えた大邱樹木園がある。生活汚水流入で水質が汚染して生態系がき損された貯水池を復元して自然生態公園に変えた光州雲川貯水池の事例もここに属する。ゴミ埋立地ではカドミウムが浸出水に出る場合が多く、廃鉱山地域は乾燥した場合が多い。したがって、重金属と乾燥に対する耐性の高い遺伝子はゴミ埋立地や廃鉱山の環境復原に有用である。干拓地は塩分の濃度が高いので、塩抵抗性遺伝子は干拓地の環境復原に用いることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、重金属に対して耐性を有したり、重金属蓄積性を変化させる遺伝子及び、塩や乾燥抵抗性を有したり、塩蓄積性を変化させる遺伝子を提供することにある。
また、本発明の第2の課題は、重金属に対して耐性や蓄積性を変化させる遺伝子を含む再組合ベクターを提供することにある。
また、本発明の第3の課題は、重金属に対する耐性や蓄積性が変化した形質転換体を提供することにある。
また、本発明の第4の課題は、重金属に対する耐性や蓄積性が変化した形質転換体の製造方法を提供することにある。
また、本発明の第5の課題は、重金属汚染地を環境親和的な空間に造成することができる方法を提供することにある。
また、本発明の第6の課題は、重金属含量が減少した安全な作物を開発する方法を提供することにある。
また、本発明の第7の課題は、塩や乾燥に対する抵抗性を向上させる遺伝子を含む再組合ベクターを提供することにある。
また、本発明の第8の課題は、塩や乾燥に対する抵抗性が向上した形質転換体を提供することにある。
また、本発明の第9の課題は、塩や乾燥に対する抵抗性が向上した形質転換体の製造方法を提供することにある。
また、本発明の第10の課題は、塩濃度の高い地域や乾燥した地域を環境親和的空間に造成することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために本発明は、類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列を含む重金属耐性と蓄積性を有する遺伝子を提供する。
【0013】
本発明はまた、植物で発現可能な転写及び翻訳調節因子によって調節されるように連結され、類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列または、この配列と相同性を有する配列を含む再組合ベクターを提供する。
【0014】
前記再組合ベクターは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列、GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列及び、これら配列と相同性を有する配列からなる群より選択される塩または乾燥抵抗性を有する遺伝子を追加的に含むことができる。
【0015】
本発明はまた、前記再組合ベクターに形質転換された形質転換体を提供する。
本発明はまた、前記再組合ベクターに形質転換された植物を提供する。
本発明はまた、前記再組合ベクターに各々形質転換された植物細胞を提供する。
【0016】
本発明はまた、(a)植物で発現可能な転写及び翻訳調節因子によって調節されるように連結され、類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列または、この配列と相同性を有する配列を含む発現カセットを製造し、(b)前記発現カセットを含む再組合ベクターを製造し、(c)前記再組合ベクターを植物細胞または植物組織に導入することを含む重金属耐性植物の製造方法を提供する。
【0017】
前記発現カセットは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列、GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列及び、これら配列と相同性を有する配列からなる群より選択される遺伝子を追加的に含むことができる。
【発明の効果】
【0018】
上述のように、本発明による重金属耐性を有する遺伝子で製造された形質転換体は、重金属で汚染された環境で成長することができるので、汚染地に環境親和的な公園を作ることで環境復原に利用でき、汚染地の土壌流失による2次汚染を防止することができ、野生種に比べて重金属を少量吸収する安全な作物を開発するのに用いることができる。また、前記重金属耐性遺伝子と塩または乾燥抵抗性を有する遺伝子が導入された形質転換植物は、重金属に対する耐性に優れているだけでなく、様々な汚染物質を地上部げ引き上げると予想され、環境浄化に寄与できる新品種の開発に用いることができる。本発明で提示したAtPDR8遺伝子は、重金属だけでなく塩と乾燥抵抗性も増加させるので、廃鉱山地域と他の重金属汚染地域の浄化と復原に利用できる。TaTM20とAtPDR8遺伝子は植物体内重金属含量を減少させるので、重金属吸収が減少した安全な作物の開発に利用することができる。AtPDR8やこれと相同性の高い遺伝子を過発現させたり、Rop2を抑制したりすると、塩や乾燥抵抗性が向上すると予想され、干拓地または乾燥地域の農業と環境に寄与できる新品種開発に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明で言及する”生体膜通過蛋白質”は、脂質二重層で構成される生体膜を貫通して位置する蛋白質のことである。前記生体膜通過蛋白質は類似の生体膜通過ドメインが4個ずつ5回繰り返される構造を有する蛋白質で、特に、重金属と塩の吸収及び排出に関与する。前記重金属は砒素、アンチモン、鉛、水銀、カドミウム、クロム、錫、亜鉛、バリウム、ビスマス、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、銅、バナジウムなどを含む。
【0020】
本発明で言及する”ABC輸送体(ATP−binding cassette transporters)”は、ATPを分解して出たエネルギーを使用して物質を運ぶ輸送体で、細胞内に栄養分を吸収したり、毒性物質を細胞外に運んだりする役割を果たす蛋白質のことである。
本発明で言及する”相同性”は、核酸(DNA)または蛋白質間の配列類似性(similarity)を意味する。
【0021】
本発明で言及される”発現抑制方法(RNAi)”は、相同性を有する塩基配列をヘアピン構造に作り、過発現させて当該遺伝子の発現を抑制することを意味する。RNAiは細胞内でウイルスの防御機作でウイルスのdsRNAを分解するための機作が作動し、その過程は次の通りである。1)Dicerという酵素がdsRNAを切り出して21−23塩基長さのsmall−interfering RNA(siRNA)を生成する。2)Dicerは切られたsiRNAがRNA−induced silencing complex(RISC)と結合できるように補助する。3)siRNAが結合されたRISCはsiRNAのアンチセンスメッセンジャーRNA(mRNA)を認識して切り出す。したがって、siRNAとアンチセンスであるmRNAが分解されるものである。このような原理を利用して、特定遺伝子、本発明の場合には特にAtPDR8の一部配列を利用してそれがdsRNAを生成できるようにデザインしたconstructを形質転換させ、AtPDR8の発現のみ減少したRNAi形質転換植物を作ることができる。つまり、RNAiはsiRNAがmRNAの特異な配列を認識し結合してmRNAを分解する機作を利用するgene silencing技術である。この時、siRNAはそのsiRNAと類似の配列を有する他の遺伝子のmRNA(この場合には、AtPDR8と相同性を有する他の遺伝子)にも結合して、分解させる。
【0022】
本発明で言及する”重金属抵抗性蛋白質”は、重金属の存在下で生命体の成長が抑制されないように媒介する蛋白質を意味する。
本発明で言及する”塩、乾燥抵抗性蛋白質”は、高濃度の塩や乾燥した条件下で生命体の成長が抑制されないように媒介する蛋白質を意味する。
本発明で言及される”形質転換植物”は、遺伝工学的に操作されたもので、外来DNA配列を含み、植物細胞、植物組織或いは植物体で発現可能に製作されて外来DNA配列を発現する。
本発明による重金属耐性と蓄積性を有する遺伝子は、類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列を含む。
【0023】
前記類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列は配列番号:1のTaTM20蛋白質の暗号化配列であるのが好ましい。また、前記相同性を有する配列は配列番号:1の配列と70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%乃至95%或いは90%乃至99%の相同性を有する配列である。
【0024】
本発明はまた、前記遺伝子またはこの遺伝子配列と相同性を有する配列が植物で発現可能な調節因子に連結された遺伝子に連結される発現カセットを提供する。
前記発現カセットは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列を含む遺伝子、GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列及び、これら配列と相同性を有する配列からなる群より選択される重金属、塩及び乾燥抵抗性及び蓄積性を変化させる遺伝子、または塩抵抗性や乾燥抵抗性を有する遺伝子を追加的に含むことができる。
【0025】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3のAtPDR8蛋白質の暗号化配列であるのが好ましい。また、前記相同性を有する配列は配列番号:3の配列と70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%乃至95%または95%乃至99%の相同性を有する配列である。
なお、前記発現カセットは植物の気孔運動を調節するGTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質(Rop2蛋白質)を暗号化する遺伝子をさらに含むことができる。前記Rop2蛋白質を暗号化する遺伝子は配列番号:5の配列と70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%乃至99%の相同性を有する配列である。
【0026】
本発明の一実施例による発現カセットは、プロモーター;TaTM20蛋白質を暗号化する遺伝子、TaTM20とAtPDR8蛋白質を暗号化する遺伝子及びTaTM20、AtPDR8及びRop2蛋白質を暗号化する遺伝子からなる群より選択される遺伝子及び、これと相同性を有する配列の遺伝子及び転写終結部位を含む。前記プロモーターとしては植物発現用プロモーターでCMV(Cauliflower Mosaic Virus)35Sプロモーター、CMV19Sプロモーター、アグロバクテリウムトゥメファシエンスTiプラスミド(Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid)のnos(nopaline synthase)プロモーター、ocs(octopine synthase)プロモーター及びmas(mannopine synthase)プロモーター、公知されたプロモーターがある。
【0027】
また、本発明の発現カセットはTaTM20、AtPDR8またはRop2蛋白質を暗号化する遺伝子の発現を確認したり、形質転換体を選別できるマーカをさらに含むことができる。標識遺伝子としてはカナマイシン、ヒグロマイシン、ゼンタマイシン及びブレオマイシンなどの抗生剤に対して耐性を示す遺伝子やGUS(β−glucuronidase)、CAT(chloramphenicol acetyltransferase)、ルシフェラーゼ(luciferase)またはGFP(green fluorescent protein)等を暗号化する遺伝子がある。前記マーカは発現カセットと共に植物に伝達され、特定の抗生剤を含む培地で培養することによって形質転換体の選別を可能にする。
【0028】
また、本発明は前記発現カセットを含む再組合ベクターを提供する。再組合ベクターはpGA1535/TaTM20とpCAMBIA1302/AtPDR8である。pGA1535/TaTM20はpGA1535に35Sプロモーター、TaTM20遺伝子及びノパリン合成酵素転写終結部位を含み、pCAMBIA1302/AtPDR8は35Sプロモーター、AtPDR8遺伝子及びノパリン合成酵素転写終結部位を含む。
【0029】
また、本発明は前記再組合ベクターを利用して形質転換された形質転換体を提供する。前記形質転換体は重金属を伝達する生体膜通過蛋白質を暗号化する配列、前記生体膜通過蛋白質とABC輸送体を暗号化する配列及び、前記生体膜通過蛋白質、ABC輸送体及び植物の気孔運動を調節する蛋白質を暗号化する配列を含み、前記配列は転写及び翻訳調節因子に連結され、前記因子によって調節されるように考案される。
【0030】
本発明の形質転換体は植物であり、好ましくは植物、植物細胞及び植物組織で、植物組織は植物種子を含む。前記植物としては草本及び木本植物で、顕花植物(flowering plants)、庭園植物(gardenp lants)、玉ねぎ、ニンジン、キュウリ、オリーブ、さつまいも、ジャガイモ、ハクサイ、大根、野菜、ブロッコリー、タバコ、ペチュニア、ひまわり、笠、芝、シロイヌナズナ 、アブラナ(Brassi cacampestris,B.napus)、笠(Brassica juncea)、シラカバ(Betula platyphylla)、ポプラ、雑種ポプラ及びオノオレカンバ(Betula schmidtii)が代表的である。前記植物は体細胞胚芽形成法(somatic embryogenesis)、細胞組織培養法(tissue culture)及び細胞株培養法(cell line culture)からなる群より選択される方法によって無性繁殖される植物であり得る。
形質転換体は公知の技術で製造することができ、アグロバクテリウムテュメペクシンス−媒介DNA遷移が代表的である。さらに好ましくは、電気衝撃、微細粒子注入方法または遺伝子銃(gene gun)からなる群より選択される方法で製造された再組合アグロバクテリウムを浸漬法で植物に導入することである。
【0031】
本発明はまた、(a)植物で発現可能な転写及び翻訳調節因子によって調節されるように連結され、類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列または、この配列と相同性を有する配列を含む発現カセットを製造し、(b)前記発現カセットを含む再組合ベクターを製造し、(c)前記再組合ベクターを植物細胞または植物組織に導入することを含む重金属耐性植物の製造方法を提供する。
【0032】
前記発現カセットは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列または、この配列と相同性を有する配列を含む遺伝子及びGTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列と、これら配列と相同性を有する配列からなる群より選択される重金属、塩及び乾燥抵抗性及び蓄積性を変化させる遺伝子または塩や乾燥抵抗性を有する遺伝子を追加的に含むことができる。
前記形質転換植物でTaTM20蛋白質(配列番号:2)またはこれら蛋白質と70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%乃至95%、最も好ましくは95%乃至99%の相同性を有する蛋白質を過発現させると、重金属に対する耐性が増加し、蓄積性が変化した形質転換体を得ることができ、AtPDR8蛋白質(配列番号:4)またはこれら蛋白質と70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%乃至95%、最も好ましくは95%乃至99%の相同性を有する蛋白質を過発現させると、重金属及び塩、乾燥ストレスに対する耐性が増加し、蓄積性が変化した形質転換体を得ることができる。
【0033】
また、前記形質転換植物でRop2蛋白質(配列番号:6)またはこれら蛋白質と70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%乃至99%の相同性を有する配列をRNAi方法で低発現したり不活性化して発現させると、正常条件では植物の気孔がよく開放されて蒸散作用が活発に進められ、この蒸散作用によって重金属を地上部へ移動させる形質転換体を得ることができ、乾燥条件では気孔を早く閉じることで乾燥抵抗性が向上した植物を得ることができる。
したがって、本発明による形質転換植物は、重金属を地下部から地上部へ効果的に移動させて蓄積することができる。本発明による形質転換植物は植物の気孔運動を調節する遺伝子を変形させて導入したり、発現水準を変化させることで水と共に重金属などの汚染物質を蒸散力によって地上部へ移動させることができ、乾燥抵抗性も向上させることができる。
【0034】
前記TaTM20とAtPDR8蛋白質を暗号化する遺伝子を植物原形質体に導入すると、植物の細胞膜で発現する。図1は20個の膜貫通ドメインを含むTaTM20の構造を示す図面(A)であり、3次元ドメインが互いに相互作用して集まっている形状を図示し(B)、TaTM20とプロテインキナーゼcフォスフォリレーションモチーフとの相同性を示す図面(C)である。
【0035】
したがって、ABC輸送体と生体膜通過蛋白質遺伝子で形質転換された形質転換体は、重金属で汚染された環境でも円滑に成長できるので、重金属の吸収量が低く、人体に無害で安全な作物を製造することができる。反対に、RNAiなどの低発現技術を利用する場合には、重金属の吸収を高めて土壌、大気、水質などから植物を利用した重金属抽出植物の製造が可能である。黄砂や自然災害などによって重金属が遠隔地から流入される場合もあるので、このような形質の作物が必要である。
【0036】
以下では本発明の実施例を記載する。下記実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例1:植物栽培条件
【0038】
野生種と形質転換されたシロイヌナズナ 及び小麦(Triticum aestivum L.cv.Atlas66)種子をエタノールとラックスを利用して表面殺菌し、4℃暗状態で2日間保管した後、1/2MS培地(Murashige and Skoog,1962)に致床した。培地は水平或いは垂直で2−3週間培養した。
【0039】
実施例2:小麦の根cDNAライブラリーでカドミウム抵抗性遺伝子同定
【0040】
カドミウム抵抗性遺伝子を小麦根cDNAライブラリーで同情するために、ycf1−null酵母に酢酸リチウム法を利用して挿入した後、機能的相補性を観察した。60μMの塩化カドミウム(CdCl2)が含まれている培地で育った細胞群体を選抜してプラスミド(plasmid)を同情し、その塩基配列を読取った後(配列番号:1)、これを再びycf1−null酵母に挿入してカドミウム耐性を再確認した。野生種酵母(wt)及びycf1−null酵母に空のベクター(EV)を入れたものと、ycf1−null酵母にTaTM20遺伝子を含むベクターを入れて培地に培養した時、空のベクターのみを入れた野生種及びycf1−null酵母よりTM20を入れた酵母がカドミウムを含有する培地で成長が優れていた(図5)。これはTM20が酵母でカドミウム耐性を向上させるということを示す。
【0041】
実施例3:N−末端とC−末端が除去されたTaTM20 constructの製作及び酵母におけるカドミウム耐性試験
【0042】
全てのN−末端とC−末端が除去されたTaTM20cDNAはPCR生産物の制限酵素切断によって生成された。ycf1−null酵母に各々の遺伝子を酢酸アセテート法によって挿入し、ウラシル(uracil)が欠乏した最少培地で選抜した。カドミウム抵抗性相補実験のために、各々の遺伝子を有しる酵母を1/2SG培地に30uMの塩化カドミウムを添加して摂氏30度で3日間培養して観察した。その結果、N−末端及びC−末端が少しずつ除去された遺伝子で形質転換された酵母のカドミウム耐性が、空のベクターのみを入れたものと類似するということが分かった(図6A)。これはTaTM20によって現れる酵母のカドミウム抵抗性はTM20の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された膜貫通ドメインが存在しなければならないということを意味する。
【0043】
実施例4:形質転換シロイヌナズナの製造
【0044】
TaTM20遺伝子をHindIII制限酵素を使用してpYES2:TaTM20遺伝子から植物発現ベクターに再組合した。遊離されたHindIII片は40塩基対の5'側の翻訳されていない部分と完全な2670塩基組のTaTM20遺伝子、109塩基対の3'側の翻訳されていない部分、そして翻訳終了コドンを含む。
【0045】
pGA1535が形質転換シロイヌナズナ の製造のための植物発現ベクターとして使用され、これはCaMV35Sプロモーターと複数のクローニング場所とノパリン合成終結部位(nopaline synthetase terminator)を有する。花芽浸漬法(Floral dipping,Clough and Bent,1988)を使用してpGA1535:TaTM20遺伝子を有するアグロバクテリウム(LBA4404)を使用してシロイヌナズナ を形質転換した。形質転換された種子は30ug/Lのカナマイシン抗生剤が含まれている1/2MS培地で選抜され、生存した植物から種子を採取した。3世代の同質接合種子が表現型分析のために使用された。
【0046】
AtPDR8遺伝子をシロイヌナズナ から作ったcDNAを鋳型.としてAtPDR8F−SB(5'−TCCCCCGGGGGCGCGGATCCGCGATGGATTACAATCCAAATCTTCC−3')プライマとAtPDR8R−PX(5'−GACACGTGCTCCGCTCGAGCGGTTATCTGGTCTGGAAGTTGAG−3')プライマを使用してPCRに増幅した後、T−vectorに入れ、制限酵素を使用してpCambia1302バイナリベクターに再対合した。pCambia1302ベクターは形質転換シロイヌナズナ の製造のための植物発現ベクターとして使用され、これはCaMV35Sプロモーターと複数のクローニング場所、ノパリン合成終結部位を有している。
【0047】
TaTM20と同様な方法でpCambia1302:AtPDR8を有するアグロバクテリウム(GV3101)を使用してシロイヌナズナ に形質転換し、形質転換された種子は30ug/Lのハイグロマイシンを含む1/2MS培地で選抜して生存した植物から種子を受けた。
【0048】
実施例5:カドミウム耐性検定
【0049】
野生種とTaTM20過発現シロイヌナズナ (TM20−1、TM20−2)が40または60μMの塩化カドミウムが含まれている1/2MS培地で3週間培養された後、収穫して重量と根長さを測定した。TaTM20を過発現する植物が40または60μMの塩化カドミウムが含まれている1/2MS培地で野生種に比べて成長が優れており(図8A、B)、低濃度の塩化カドミウム(15、25μM)が含まれている培地でもTaTM20を過発現する植物の生体量と根長さが野生種より優れていることが分かった(図8C、D)。これはTM20が植物でカドミウム耐性を向上させるということを示す。
野生種とAtPDR8形質転換シロイヌナズナ (過発現及び発現抑制植物)を30−50μMの塩化カドミウムが含まれている1/2MS培地に植え、2〜3週間立てて培養した後、収穫して植物の生体量と根長さを測定した。野生種とAtPDR8を過発現する植物(PDR8−1、−2、−3)を40μMの塩化カドミウム及び0.4mMの窒酸化鉛を含有する培地で共に培養した結果、AtPDR8過発現植物の生体量と根長さが野生種に比べて優れていることが分かった(図10)。また、AtPDR8発現を抑制植物(RNAi;8i−1、−2、−3)とAtPDR8欠乏突然変異個体(knock−out;ko−1andko−2)を野生種と共に塩化カドミウム及び窒酸化鉛を含有する培地で培養した結果、AtPDR8発現抑制植物とAtPDR8欠乏突然変異はカドミウムと鉛に対して敏感であり(図11A、B、E)、植物のクロロフィル含量と生体量が大きく減少することが分かった(図11C、D)。これはAtPDR8が植物でカドミウムと鉛に対する耐性を向上させるということを示す。
【0050】
実施例6:カドミウム耐性機作検定
【0051】
TaTM20とAtPDR8のカドミウム耐性機作がグルタチオンと関連があるかどうかを調べるために、グルタチオン合成阻害剤であるBSO(buthionine sulfoximine)を使用してカドミウム耐性を調査した。TaTM20の場合、カドミウムやBSOが入っていない培地とBSOのみを有する培地では空のベクターのみ入れた酵母と成長が類似し、カドミウムを含有する培地でTaTM20形質転換酵母のカドミウム抵抗性が大きく増加するということが分かった。そして、カドミウムとBSOと共に含む培地に培養した時には、TaTM20によって現れるカドミウム抵抗性が全く無くならず、維持されるということが分かった(図12)。これは従来多く知られたグルタチオンを媒介とするカドミウム抵抗性機作とは異なる機作でTaTM20が酵母のカドミウム抵抗性に寄与するということを意味する。
AtPDR8の場合には、形質転換植物が1/2MSやBSOのみを有する1/2MSでは野生種と成長が類似するが(図13A)、カドミウムを含む培地では過発現植物の成長は優れていて、発現抑制植物は敏感な表現型を示す(図13B)。BSOと共にカドミウムを処理した培地でAtPDR8形質転換植物と野生種間の成長差が無くならず、さらに大きくなるということが分かった(図13C、D)。この結果はAtPDR8によって現れるカドミウム抵抗性がグルタチオンを媒介としない新たな機作を通じて現れる可能性があることを意味する。
【0052】
実施例7:カドミウム含量測定
【0053】
TaTM20形質転換酵母のカドミウム含量を測定するために、酵母をウラシルのない合成ガラクトース培地(SG−ura;synthetic galactose−uracil)で培養した後、10μMの塩化カドミウムと1μMの放射性塩化カドミウムを処理し、各時間別に細胞を収穫してガンマ線測定器でカドミウム量を測定した。ycf−null酵母に空ベクターのみを入れたもの(167V)に比べてTaTM20を入れた酵母(167TM)の細胞内カドミウム量が低く(図14A)、カドミウム排出程度を測定した結果、TaTM20を入れた酵母がより速くカドミウムを細胞外部に排出するということが分かった(図14B)。また、形質転換酵母細胞内のカドミウム含量を原子吸光光度計(AAS)を使用して分析するために、酵母を20μMの塩化カドミウムが添加されたSG−Ura培地で育てた後、氷水で洗い、11Nの硝酸で細胞を溶かしてカドミウム含量を測定した。その結果、TaTM20で形質転換された酵母のカドミウム含量が空ベクターのみを入れたものに比べて低いことが分かった。これら結果はTaTM20が細胞内に入ったカドミウムを細胞外に排出して酵母のカドミウム抵抗性を増加させるということを意味する。
【0054】
AtPDR8形質転換植物体内カドミウム含量を測定するために、1/2MSで2週間立てて培養した後、100μMの塩化カドミウムを根に処理し、10時間培養した。地上部と根を各々分離して収穫した後、冷水で洗浄して乾燥した。乾燥された植物体は前記と同様な方法でAASを利用してカドミウム含量を測定した。AtPDR8を過発現する植物(PDR8−1)の地上部と根は野生種より少量のカドミウムを含み、AtPDR8発現を抑制する植物(8i−2)の地上部と根は多量のカドミウムが蓄積されているということが分かった(図15A)。また、カドミウム同位元素を使用して植物体内カドミウム含量を分析するために、1/2MSで10日間立てて培養した植物の根を放射性塩化カドミウムが含まれている培地に10時間培養して洗浄した後、地上部と根を分離してガンマ線測定器で体内カドミウム含量を分析した。この結果でも野生種に比べてAtPDR8過発現植物には地上部と根のカドミウム含量がさらに低くなり、AtPDR8発現抑制植物の地上部と根にはカドミウムがさらに多く蓄積されることが分かった。
【0055】
AtPDR8のカドミウム輸送能力を測定するために、AtPDR8形質転換植物の原形質体にカドミウム同位元素を吸収させ、細胞内カドミウム含量を測定した。原形質体と共にカドミウム同位元素を培養し、各時間帯別に原形質体を収穫して細胞内カドミウム含量を測定した結果、野生種植物(wt)から得られた原形質体に比べて過発現植物(PDR8−1)から得られた原形質体には少量のカドミウムが、そして発現抑制植物(8i−2)から得られた原形質体には多量のカドミウムが蓄積されることが分かった(図16A)。また、カドミウム排出能力を調べてみるために、原形質体とカドミウム同位元素を共に培養した後、細胞外のカドミウムを洗浄し、各時間帯別に細胞内に残っているカドミウムを測定した結果から、野生種に比べて過発現細胞はカドミウムをさらに速く、発現抑制細胞はさらに遅くカドミウムを排出するということが分かった(図16B)。これら結果は、AtPDR8が細胞内に入ってきたカドミウムを細胞外部に排出して植物のカドミウム抵抗性を増加させるということを意味する。
したがって、AtPDR8を過発現させた形質転換植物はカドミウム及び鉛を植物体外部に排出する耐性機作を持っていて体内重金属含量を大きく減少させた安全な作物を作るのに利用することができる。反対に、AtPDR8やそれと類似の遺伝子の発現を減少させた形質転換植物は、カドミウム及び鉛を植物体外部に排出する作用が減少して体内重金属含量を増加させた環境浄化用植物を作るのに利用することができる。
【0056】
実施例8:葉緑素含量測定
【0057】
カドミウム、鉛などの重金属による植物の毒性現象のうちの1つは葉の黄化現象である。したがって、このような重金属に対する植物の耐性程度は葉緑素含量分析から分かる。植物の葉緑素含量を測定するために、葉を収得して95%のエタノールで20分間80℃で抽出した。抽出物は664nmと648nmで吸光度を測定して葉緑素A及び葉緑素Bの含量を計算した(Oh SA,Park JH,Lee GI,Paek KH,Park SK,Nam HG(1997)Identification of three genetic locicontrolling leaf senescence in Arabidopsis thaliana.Plant J.12,527−35)。AtPDR8発現抑制形質転換植物(8i−1、8i−2、8i−3)と野生形植物を50μMの塩化カドミウムが添加された培地で3週間育てた後、葉緑素含量を測定した結果、AtPDR8発現抑制形質転換植物の葉緑素含量が野生型より低いことが分かった(図11C)。これはAtPDR8発現が植物のカドミウム抵抗性に寄与することを確認する結果である。
【0058】
実施例9:塩及び乾燥耐性及び含量検定
【0059】
AtPDR8形質転換植物の塩及び乾燥ストレスに対する耐性を試験するために、過発現植物、野生種及び発現抑制植物を培養して、植物体内塩含量を測定した結果、野生種に比べて過発現植物は塩をさらに少量、そして発現抑制植物はさらに多量の塩を含有することが分かった(図17A)。また、野生種及び過発現植物を100mMの塩化ナトリウムを含む1/2MS培地で3週間培養した結果、根長さと葉の色から、過発現植物が野生種に比べて塩耐性が増加したことが分かった(図17B、C)。そして、AtPDR8形質転換植物の乾燥ストレスに対する耐性を試験するために、土で4週間培養した植物に継続して水を供給する(+)か供給いない(−)条件で2週間培養したり(図17D)、土で3週間培養した植物に10日間水を供給せず、再び水を供給して4日間培養した植物の成長を観察した結果(図17F)、AtPDR8過発現植物は生体量が野生種より高い反面、発現抑制及び突然変異植物の生体量は低かった(図17E)。このような実験結果から、AtPDR8遺伝子を高い水準で発現する植物は、そうでない植物に比べて塩を体内に少なく蓄積して塩抵抗性と乾燥抵抗性が高いということが分かった。
【0060】
また、AtPDR8と非常に類似する塩基配列を有するAtPDR7が塩ストレスに対する耐性に関与するかどうかを調べるために、AtPDR7欠乏突然変異植物(PDR7k0−1、−2)の種子を1/2MS及び200mMの塩化ナトリウムを含む1/2MS培地に植えて3週間培養した結果、塩を処理していない条件(1/2MS)では野生種と成長に差がなかったが、過剰の塩を処理した条件ではAtPDR7遺伝子が欠乏した突然変異植物が野生種に比べて非常に敏感な表現型を示すことが分かった(図21)。AtPDR7は前記AtPDR8と塩基配列が80%程度の水準に同一な遺伝子で、これら遺伝子が各々欠乏した突然変異植物が塩に対して共通に敏感な表現型を示すので、万一このような程度の相同性を有する遺伝子を植物に高い水準で発現させると、野生種より塩に対する耐性が増加した植物を開発することができると予想される。
【0061】
実施例10:GFP::TaTM20及びGFP::AtPDR8のシロイヌナズナ 原形質体への導入
【0062】
TM/GFP−Fプライマ(5’−AAGAAGCTTATGGAGTGTGGTGGC−GTCTCCG−3')とTM/GFP−Rプライマ(5’−TAGAAGCTTAGAACTACACTACAGAGCTGCT−3')を使用してpYES2:TaTM20からPCR増幅させたcDNAを利用してGFP:TaTM20融合遺伝子を製造した。増幅された遺伝子が326−GFPベクターのHindIII場所に挿入されたGFP::TaTM20はCaMV35Sプロモーター調節下で発現する。また、AtPDR8の場合には、T−vectorに入っているAtPDR8遺伝子を制限酵素で切断して326GFP−3Gベクターに移し、GFP::AtPDR8を製造した。プラスミドはシロイヌナズナ 原形質体内にPEG媒介形質転換法によって導入された(Jin et al.,2001)。GFP融合蛋白質の発現は原形質体に形質転換後、16−24時間後に蛍光顕微鏡で観察した。また、発現した蛋白質の発現位置を確認するために、形質転換させたシロイヌナズナ 原形質体から細胞質、細胞膜蛋白質を各々分離してGFP抗体でウェスタンブロットを実施した。
前記の結果を図2と図3に示した。図2は植物原形質体で発現したGFP(緑色蛍光蛋白質)−TaTM20融合蛋白質の発現位置を示す写真で(A)、GFP−TaTM20蛋白質が原形質体の細胞膜に位置することを示し、発現位置をウェスタンブロットで確認した場合にも、GFP−TaTM20蛋白質が細胞質でなく膜部分に存在するということを確認した(B)。図3は植物原形質体で発現したGFP−AtPDR8融合蛋白質の発現位置を示す写真(A)と、発現局地性をウェスタンブロットで確認(B)したものである。その結果、GFP−AtPDR8蛋白質は原形質体の細胞膜に位置するということが分かる。
【0063】
実施例11:RNA同定
【0064】
植物のtotalRNAは20日栽培した小麦或いは2〜3週間栽培したシロイヌナズナ からトリゾル(Trizol)を使用して抽出した。植物を1/2MSに2〜3週間培養した後、液体質素を使用して均等に粉砕し、トリゾルを利用してtotalRNAを分離し、これをノーザンブロット、RT−PCRなどに用いた。
【0065】
実施例12:RT−PCR
【0066】
5μgのRNAを使用してcDNAをパワースクリップトRT(reverse transcription)−kit(BD Bioscience Clontech)とオリゴdTプライマを使用して合成した。2μlのcDNAからPCR反応を行い、各々TaTM20、AtPDR8、AtRop2に特異なプライマを使用した。対照区として小麦ではG3PDH(glycerolaldehyde−3−phosphate dehydrogenase)遺伝子を、シロイヌナズナ ではペタチューブリンとアクチを用いた。
TaTM20遺伝子の重金属による発現変化を知るために、小麦の根にカドミウムを処理した後、cDNAを合成し、これを鋳型.としてTaTM20RTFプライマ(5’−AAGGGTTGCTCCTCTTCGCGATCTTG−3')とTaTM20RTRプライマ(5’−GTACATGCCAGCACCGTATGGATTG−3')を使用してPCRを行った結果、カドミウムによって地上部(CdS)と、根(CdR)でTaTM20遺伝子の発現が増加するということを示している(図7A)。それだけでなく、リアルタイム−PCRを行ってカドミウムによってTaTM20の発現が増加することを確認した(図7B)。対照区としてTaG3PDHF(5’−CAACGCTAGCTGCACCACTAACT−3')プライマとTaG3PDHRプライマ(5’−ACTCCTCCTTGATAGCAGCCTT−3')を使用してG3PDH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)遺伝子の発現を確認した結果、この遺伝子はカドミウムによって変化がないということが分かった。
【0067】
AtPDR8遺伝子の発現変化を知るために、シロイヌナズナ の根にカドミウム、鉛及び銅を処理した後、cDNAを合成し、これを鋳型.としてAtPDR8−RTF(5’−CTCTTGATTGGTACAGTCTTCTG−3')プライマとAtPDR8RTR(5’−CCATAATGGTCCTCAATGTATTGC−3')プライマでPCRを行った結果、根でカドミウムと鉛、そして銅によってAtPDR8遺伝子の発現が大きく増加するということが分かった(図9B)。対照区として使用したチューブリン遺伝子の発現(Tub−F(5’−GCTGACGTTTTCTGTATTCC−3')、Tub−R(5’−AGGCTCTGTATTGCTGTGAT−3')プライマでPCRを行った結果、チューブリンの発現は重金属によって変わらないということが分かった。
【0068】
孔辺細胞におけるRop2遺伝子の発現を知るために、孔辺細胞と体細胞から各々cDNAを得て、これを鋳型.としてRop2−フォワーダープライマ(5’−CCGATCTTGCGGCAGAGATGGCGTCAAGG−3')とRop2−リバースプライマ(5’−CTTATCACAAGAACGCGCAACGGTTCTTATTC−3)を使用してPCRを行い、孔辺細胞でRop2遺伝子の発現が高いということを確認した(図18)。対照区としてactin2遺伝子の発現は孔辺細胞と体細胞で大きな差がないということが分かった(Actin2−forward、5’−GGCCGATGGTGAGGATATTCAGCCACTTG−3'、Actin2−reverse、5’−TCGATGGACCTGACTCATCGTACTCACTC−3')。
【0069】
実施例13:ノーザンブロットティング
【0070】
30μgのRNAをフォルムアルデヒドゲルで電気泳動した後、ナイロンメンブレインに移し、32P−dCTPで示された暗号配列に特異なPCR産物を利用して結合した。メンブレインを洗浄した後、フィルムに露出して遺伝子の発現程度を観察した。AtPDR8遺伝子に特異な塩基片を得るために、PDR8NFプライマ(5’−AGCCTTGCTTTGTTTCACAG−3')とPDR8NRプライマ(5’−CCCTACTCATTCTCCCCATTG−3')を使用してPCRに増幅した後、32Pに標識してAtPDR8遺伝子の発現をノーザンブロットで確認した結果、AtPDR8の発現が地上部と根でカドミウムと鉛、銅によって増加するということが分かった(図9A)。
【0071】
実施例14:ウェスタンブロットティング
【0072】
形質転換酵母とシロイヌナズナ から蛋白質を分離するために、抽出バッファー(50mMのHepes−KOH pH7.4、5mMのMgCl2、1mMのEDTA、10mMのDTT、0.7ug/mLのpepstainA、5ug/mLのaprotinin、20ug/mLのleupeptin、0.5mMのPhenylmethylsulfonyl fluoride)を入れてよく混合した後、12000rpmで5分間遠心分離した。上層液を得た後、再び100,000gで1時間遠心分離して細胞の膜部分と液状部分を分離した。10〜50μg程度の蛋白質をSDS−PAGEで分離した後、ニトロセルロース膜に移転させ、膜を7.5%の無脂肪牛乳を含む1xTBST(0.1%のTween20 in 1xTBS)溶液に1時間浸した。1xTBST溶液で5分間2回繰り返して洗浄した後、各々の蛋白質に特異な抗体と3時間常温で反応させた。その後、1xTBST溶液で15分間3回繰り返して洗浄し、sheep anti−mouse IgG conjugated horshradish peroxidaseと1時間反応させ、1xTBST溶液で10分ずつ3回洗浄した。ECL(Amersham pharmacia Biotech)溶液を使用して蛋白質の発現信号をx−rayフイルムで感知した。
GFP−TaTM20及びGFP−AtPDR8蛋白質を原形質体に導入した後、蛋白質を分離し、GFP抗体を使用してウェスタンブロットを行った結果、蛋白質が細胞質(cytosol、SまたはC)に位置せず、膜部位(membrane、M)に存在することが分かった(図2B、図3B)。
【0073】
実施例15:RNAi形質転換植物の製造
【0074】
AtPDR8の発現を抑制するRNAi植物を作るために、P8RI−XKプライマ(5’−CCGCTCGAGCGGGATGCCTTGCTTTGTTTCACAG−3')とP8RI−BXaプライマ(5’−GGGGTACCCCCCCTACTCATTCTCCCCATTG−3')でPCRした後、XhoI−KpnIとBamHI−XbaI制限酵素を使用してpHannibalベクターに挿入し、NotI制限酵素を使用してバイナリベクターであるpART27ベクターにクローニングして製造した。pART27−PDR8iベクターはアグロバクテリウムを利用してシロイヌナズナ に形質転換してAtPDR8RNAi形質転換植物を製造した。
【0075】
実施例16:プロモーター−GUS融合蛋白質を利用する遺伝子の発現組織結晶
【0076】
MS培地で2週間培養した植物を0.5mMのK4Fe(CN)6、0.5mMのK3Fe(CN)6、10mMのEDTA、0.1%のTritonX−100、500mg/mlのX−Gluc.を含む100mMのフォスフェートバッファーで24時間培養し、100%のエタノールに入れてクロロフィルを除去した後、光学顕微鏡で観察した。その結果、AtPDR8プロモーター−GUSは葉と根で全て発現し(図4A−D)、Rop2プロモーター−GUSは植物の孔辺細胞に多く発現するということが分かった(図18)。また、葉と根での発現をより詳しく観察するために染色した組織をマイクロトーム(Microtome)で切断して顕微鏡で観察した結果、AtPDR8プロモーター−GUS遺伝子の発現が特に外皮細胞(Epidermal cell)で強く発現するということが分かった(図4E−G)。
【0077】
実施例17:根から水と異なる物質を地上部へ移す蒸散作用のインディケーターである気孔運動の測定
【0078】
植物の葉の表皮層を剥離してスライドグラス上に置き、顕微鏡で観察しながら気孔の開放程度を測定し、最大値の半分に至るまでかかる時間(t1/2)を計算した。非活性化したRop2遺伝子(DN−Rop2)を発現させた植物の場合、気孔が野生種に比べて多く開かれ、速く開いたこと(t1/2値が小さい)が観察され、常に活性化した形態のRop2遺伝子(CA−Rop2)を発現させた植物の場合、気孔が遅く開かれ(t1/2値が大きい)、あまり開かれていないことが観察された(図19A)。また、この遺伝子の発現をなくした場合にも(Rop2−KO)、気孔を野生種よりさらに多く、さらに速く開くことを観察した(図19B)。したがって、この遺伝子やそれと類似した遺伝子をコーディングする蛋白質の量や活性を低下させると、野生種より気孔をさらに速く且つ多く開いて蒸散作用が増加した植物を作ることができる。汚染物質は主に蒸散作用の時に植物の地上部へ上がるので、この方法を用いて重金属を地上部へ多く上げて蓄積する植物を開発することができる。つまり、気孔をより大きく開いて蒸散作用を活発にして製造された形質転換植物を汚染地に植え、根から地上部への多様な汚染物質の移動を促進することができ、これは植物を利用する環境浄化に役に立つ。
【0079】
実施例18:干ばつに対する耐性のインディケーターであるABAによる気孔閉鎖運動の測定
【0080】
植物の葉にABAを処理した後、植物の葉の表皮層を剥離してスライドグラス上に置き、顕微鏡で観察しながら気孔の閉鎖程度を測定した。非活性化したRop2遺伝子(DN−Rop2)を発現させた植物の場合、気孔が野生種に比べて多く且つ早く閉じられることが観察され、常に活性化した形態のRop2遺伝子(CA−Rop2)を発現させた植物の場合、気孔が遅く閉じられ、閉じられる程度は低いことが観察された(図20)。したがって、この遺伝子やそれと類似した遺伝子をコーディングする蛋白質の量や活性を低下させると、野生種より気孔がさらに速く且つ多く閉じられる、干ばつに対して耐性を有する植物を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】20個の膜貫通ドメインの細胞膜における配置を示すTaTM20の構造(A)、複数の3次元ドメインが互いに相互作用して集まっている形状を示した図面(B)及び、前記TaTM20で繰り返される互いに類似の生体膜貫通ドメイン配列(黒い棒)とプロテインキナーゼcフォスフォリレーション(protein kinasec phosphorylation)モチーフとの相同性を示す図面(C)である。
【図2】TaTM20蛋白質が植物の細胞膜に存在するということを示す写真で、GFP(緑色蛍光蛋白質)−TaTM20融合蛋白質が植物の細胞膜に発現することを緑色蛍光を通じて分かり(A)、GFP抗体を使用してウェスタンブロットでこのGFP−TaTM20融合蛋白質の位置が細胞膜であることを再確認(B)する。
【図3】植物原形質体で発現したGFP−AtPDR8融合蛋白質が細胞膜に位置することを緑色蛍光を通じて示す写真(A)と、この融合蛋白質の位置をGFP抗体を使用してウェスタンブロットで確認(B)したものである。
【図4】シロイヌナズナ 植物でAtPDR8遺伝子の発現位置をGUS標識遺伝子を通じて分析したもので、AtPDR8遺伝子のプロモーターとGUSを融合させた遺伝子は根と幹に全て発現し、特に、外皮細胞(Epidermal cell)で強く発現することを示すものである。
【図5】酵母にTaTM20を過発現させると、カドミウム耐性が向上するということを示す写真である。
【図6】完全な大きさのTaTM20のみがカドミウム抵抗性に関与するということを証明したもので、N−末端とC−末端を除去した蛋白質が発現した酵母はカドミウム耐性が野生種と差がないことを示し(A)、(A)で示した遺伝子片が酵母で実際に発現すること(B)を示す。
【図7】カドミウムを処理すると、小麦の葉と根でTaTM20の発現が増加するということをRT−PCR(A)とリアルタイム−PCR(B)で分析した結果である。
【図8】TaTM20形質転換シロイヌナズナ がカドミウムに対する耐性が向上したことを示す図面で、形質転換体でTaTM20遺伝子の発現をRT−PCRに確認し(A)、TaTM20遺伝子を発現する形質転換体をカドミウムを含む培地で成長させた時、野生種に比べてカドミウム耐性が向上することを示す写真(B)と、生体重量と根の長さを測定した図表(C、D)である。
【図9】シロイヌナズナ にカドミウム、鉛または銅を処理した時、AtPDR8遺伝子の発現が増加することをノーザンブロット(A)とRT−PCR(B)で確認したものである。
【図10】AtPDR8過発現シロイヌナズナ 形質転換体がカドミウムと鉛に対する耐性が向上したことを示す図面で、AtPDR8過発現形質転換シロイヌナズナ でAtPDR8遺伝子の発現をRT−PCRに確認し(A)、これらをカドミウム及び鉛が含まれる培地で栽培した時の生長(B)、生体重量(C)、根の長さ(D)を示す。
【図11】AtPDR8発現が減少した形質転換シロイヌナズナ はカドミウムに非常に敏感であるということを示す図面で、AtPDR8−RNAiに形質転換された植物体のAtPDR8遺伝子発現程度をRT−PCRに確認し(A)、これら形質転換植物体をカドミウムが含まれている培地で培養した時の生長(B)、葉緑素含量(C)、生体重量(D)を示し、これらのカドミウムに対する敏感性を野生種とAtPDR8が完全に欠乏した植物体と比較した(E)。
【図12】TaTM20が過発現した酵母でグルタチオン(Glutathione)合成阻害剤であるBSOを処理し、細胞耐グルタチオンが減少した条件でもTaTM20によって増加したカドミウム耐性が維持されるということを示すものである。
【図13】AtPDR8の過発現植物(PDR8−1)、野生種(wt)、低発現植物体(8i−2)をグルタチオン合成阻害剤であるBSOとカドミウムを処理した条件で培養した時、AtPDR8によって変化したカドミウム耐性が維持されるということを生長(A、B、C)と生体重量及び根の長さ(D)を測定して示す結果である。
【図14】TaTM20形質転換酵母はカドミウムを少なく吸収し、排出は優れているということを示す図面で、酵母内カドミウム含量をカドミウム同位元素及び原子吸光光度計を使用して野生種とTaTM20形質転換酵母のカドミウム吸収(A、C)及び排出(B)程度を測定した結果(C)を示す。
【図15】AtPDR8は植物体内カドミウム含量を減少させるという図面で、過発現植物(PDR8−1)、野生種(wt)、低発現植物体(8i−2)内のカドミウム含量を原子吸光光度計(A)及びカドミウム同位元素(B)を使用して測定した結果を示す図表である。
【図16】AtPDR8が植物細胞からカドミウムの排出を向上させるという図面で、過発現植物(PDR8−1)、野生種(wt)、低発現植物体(8i−2)から分離した原形質体をカドミウム同位元素を含む培地に置いた時、細胞内カドミウム含量の変化を測定した結果を示す(A、B)。
【図17】AtPDR8が植物の塩抵抗性と乾燥抵抗性を向上させるということを示す図面で、過発現植物(PDR8−1)、野生種(wt)、低発現(8i−2)、欠乏突然変異(P8ko−1)植物を培養した時、植物体内の塩の含量を示す結果(A)と、過剰の塩が含まれている培地における過発現植物の生長形態(B)及び根の長さ(C)、そして乾燥ストレス条件(D、E、F)で培養した時の植物の生長形態(D、F)及び生体重量(E)を示す結果である。
【図18】シロイヌナズナ におけるRop2遺伝子が葉の孔辺細胞で強く発現するということを示す写真で、RT−PCRとRop2promoter::GUSを通じて分析した結果である。
【図19】突然変異Rop2遺伝子で形質転換されたり、Rop2遺伝子が発現しないシロイヌナズナ 植物の光による気孔開放運動を比較した図面で、活性型Rop2(CA−Rop2)を発現する植物は野生種(wt)に比べて気孔開放が遅くて少し開かれ、不活性型Rop2(DN−Rop2)を発現する植物はさらに早くてさらに多く開かれ(A)、Rop2を発現しない植物は気孔をさらに早くてさらに多く開くことを(B)示す結果である。
【図20】突然変異Rop2遺伝子で形質転換されたシロイヌナズナ 植物のABAによる気孔閉鎖運動を比較した図面で、活性型Rop2(CA−Rop2)を発現する植物は野生種(wt)に比べて気孔閉鎖が遅くて少し閉じられ、不活性型Rop2(DN−Rop2)を発現する植物はさらに早くてさらに多く閉じられることを示す図面である。
【図21】AtPDR7が塩ストレス抵抗性に関与するということを示す図面で、AtPDR7欠乏突然変異植物を過剰の塩が含まれている条件で培養した時、野生種に比べて生育が遅いということを示す結果である。
【技術分野】
【0001】
本発明は重金属や塩耐性または蓄積性を変化させることができる遺伝子及び、これら遺伝子を利用して製造される形質転換網に関し、より詳しくは重金属や塩に対する耐性や蓄積性を変化させる遺伝子及び、これら遺伝子と塩や乾燥抵抗性を向上させる遺伝子を含む再組合ベクター及び、この再組合ベクターを利用して製造する形質転換体及び重金属、塩、乾燥に対する耐性が優れていたり重金属を効果的に除去または蓄積することができる形質転換植物と重金属吸収が減少した形質転換植物、前記植物を利用した環境浄化方法及び安全な作物開発に関するものである。
【背景技術】
【0002】
重金属は主な環境汚染因子で、反応性酸素種(Reactive OxidationSpecies)の生成、DNA損傷及び細胞内の様々な蛋白質と酵素の非活性化を引き起こす。過去数十年間産業化が進められることに伴って重金属による環境汚染が急激に増加した。1990年初めには年平均放出量が、カドミウム22,000トン、銅954,000トン、鉛796,000トン、亜鉛1,372,000トンに至った(Alloway BJ&Ayres DC(1993)Principles of environmental pollution. Chapman and Hall, London)。また、重金属に汚染された土壌は植物の正常な成長を阻害し、穀物の汚染を引き起こして人間の健康を脅かしているのが実情である。
【0003】
したがって、全世界的に重金属を土壌から除去するための研究が進められている。一般的な方法は物理的または化学的な方法で、汚染された部分を直接除去或いは埋めたり、アルカリ溶液を利用して固定したりろ過したりする方法がこれに属する(Salt DE, Blaylock M,Kumar NPBA, Viatcheslav D, Ensley BD, et al.(1995)。Phytoremediation:a novel strategy for the removal of toxic metals from the environment using plants. Bio-Technology 13, 468-74;Raskin I, Smith RD, Salt DE.(1997)Phytoremediation of metals:using plants to remove pollutants from the environment. Curr. Opin. Biotechnol. 8,221-6)。しかし、このような方法は高費用で、莫大なエネルギーが所要されるという問題がある。
【0004】
これに反し、植物環境浄化技術(Phytoremediation)は植物を利用する環境浄化法で、重金属を除去するのに非常に効率的、経済的で環境親和的な方法であって、植物抽出(phytoextraction)、根ろ過(rhizofiltration)及び植物安定化(phytostabilization)の3種類の方法を含む。植物抽出は重金属が蓄積できる能力を持っている植物を利用して土壌から重金属を除去する方法であり、根ろ過は植物の根を利用して汚染された水質から汚染物質を除去する方法で、植物安定化は植物を利用して土壌にある毒性物質を非活性化する方法である(Salt DE et al.,Biotechnology 13(5):468-474、1995)。
【0005】
植物環境浄化技術の一例として、ラレアトリデンタタ(Larrea tridentata)植物を用いて銅、ニッケル及びカドミウムを浄化する方法(米国特許第5,927,005号)、ハクサイ科(Brassicaceae family)の植物を利用する方法(Baker et al.,New Phytol.127:61-68、1994)等が報告された。他の方法として、重金属に対する抵抗性を持たせる遺伝子を植物体に導入して形質転換された植物を利用する植物環境浄化技術が可能であると予測されている。重金属に対する抵抗性を向上させる植物遺伝子としては、AtATM3(ABC transporters of mitochondria)、CAX2(Calcium exchanger 2)、サイトクロムP4502E1、NtCBP4(Nicotiana tabacum calmodulin-binding protein)、GSHII(glutathione synthetase)、AtPcr1(plant cadmium resistance)、AtPDR12(pleiotropic drug resistance)またはMRTポリペプチド(metal-regulated transporter polypeptide)が知られている。AtATM3はABC-type輸送体で過発現形質転換植物がカドミウムと鉛に対する抵抗性が向上し、植物体内カドミウム含量を増加させると報告され(Kim et al.,Plant Physiol. 140:922-932、2006)、CAX2はカドミウム、マンガンのような重金属を植物体内に蓄積し(Hirschi KD et al., Plant Physiol. 124:125-134, 2000)、サイトクロムP4502E1はトリクロロエチレン(TCE)などの有機物質を植物内に受け入れて分解すると報告されている(Doty SL et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA97:6287-6291,2000)。NtCBP4は形質転換植物体でニッケルに対して抵抗性を示し(Arazi T et al.,Plant J.20:171-182,1999)、GSHIIはカドミウムを植物体内に蓄積し(Liang Zhu Y et al.,Plant Physiol.119:73-80,1999)、AtPcr1過発現植物は体内カドミウム含量を減少させる機作でカドミウムに対する抵抗性を示し(Song et al.,Plant Physiol.135:1027-1039,2004、韓国特許出願第10-2003-0058299号、米国特許出願10/907、694)、AtPDR12形質転換植物は植物に入ってきた鉛の量を減少させることによって鉛抵抗性を向上させ(Lee et al.,Plant Physiol.138:827-836、2005)、MRTポリペプチドは鉄、カドミウム、マンガン及び亜鉛のような重金属を土壌から除去するもの(米国特許第5,846,821号)として知られている。
【0006】
最近は植物の重金属に対する耐性及び蓄積性を効果的に増加させるために、植物遺伝子だけでなく酵母及びバクテリアから重金属に対する耐性や蓄積性に寄与する遺伝子を植物体に導入して植物の重金属に対する耐性及び蓄積性を変化させる方法が報告された。その例として、merB(organomercurial lyase)は有機水銀物質を分解し(Bizily SP et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA96:6808-6813,1999)、バクテリアのP-typeポンプであるZntA遺伝子を植物に過発現させてカドミウムと鉛に対する耐性が増加し、吸収量が減少した植物(Lee et al.,Plant Physiol.133:589-596、2003)を製造する方法(韓国特許第0515520号)と酵母のABC-type輸送体であるYcf1(yeast cadmium factor1)遺伝子を植物に発現させてカドミウムと鉛に対する耐性と蓄積性が増加した植物(Song et al.,Nat Biotechnol.21:914-919,2003)を製造する方法(国際特許PCT/KR02/01934)、そして酵母のMRP-typeABC輸送体を植物に発現させて形質転換植物を製造する方法が報告された(韓国特許第0480843号)。
【0007】
しかし、前記で列挙した重金属抵抗性を示す遺伝子で形質転換させた植物体は、重金属で汚染された土壌での成長が野生種に比べて改善されてはいるが、重金属の地上部蓄積性は大きく改善できなかった。環境浄化用植物は汚染物質に対して耐性を有するだけでなく、この汚染物質を地上部に移動させて汚染物質が蓄積できる特性を有することがさらに理想的である。植物の地下部よりは地上部を収穫して処理することがさらに安全で経済的であるためである。今まで知られた重金属抵抗性を示す遺伝子で形質転換された植物体は、重金属で汚染された土壌での成長が野生種に比べて多少改善された場合があるが、効果的に重金属を地下部で地上部に移動させて蓄積する植物はまだ開発されていない。
【0008】
植物は水を吸収する時に、環境に存在する多様な汚染物質を共に吸収する。したがって、植物が水をさらに多く吸収して蒸散できれば、汚染された土壌から汚染物質をさらに早くさらに多く植物体内に蓄積することができる。このような植物は野生種に比べてより速い時間内に環境の汚染度を低下させることができるので、環境浄化に所要される時間と経済的な費用が節減できる。
なお、全世界的に水不足が大きな問題となっているため、砂漠化が進められている地域も多い。これは農業と環境に大きな問題を招いている。したがって、水を少なく使用して乾燥した環境や塩濃度の高い環境でも耐えられる植物の開発が切実に必要であるのが実情である。特に、乾燥地域で経済的に環境浄化をしようとする場合には、汚染物質に対する耐性が向上しただけでなく、乾燥抵抗性も向上した植物が理想的である。反面、蒸散作用を下げることができる植物は乾燥した条件での生存に有利であるので、環境が非常に乾燥した地域での環境浄化や農業生産性に寄与することができる。
【0009】
環境浄化用植物の場合とは反対に、作物の場合には汚染物質の吸収を最少化する技術の開発が必要である。作物が重金属や他の汚染物質を吸収すると、それを消費する人と家畜の健康に悪影響を与えるためである。細胞から重金属を除去する遺伝子を作物に発現させることによって、重金属汚染からより安全な作物を開発することができる。また、細胞に重金属を蓄積させる遺伝子の発現を人為的に減少させたり、この遺伝子を変形して反対作用を起こすように発現させたりすると、このような形質転換植物は野生種に比べて重金属蓄積が減少し、この技術を安全な作物の開発に利用することができる。
【0010】
重金属抵抗性、塩抵抗性、乾燥抵抗性などを変化させる遺伝子はまた、環境復原(Rehabilitaton)に用いることができる。環境復原は人為的且つ自然的に破壊された自然を再び回復させ、生態系を再び構築して本来の状態に戻すことである。したがって、これは環境を快適にするだけでなく、自然資源を保存し、人間が他の生物種と共に生きていける拠り所を備えることである。復原方法としては汚染物質除去、耐性植物の植栽、絶滅した動物の再導入がある。このような環境復原の実際事例としては、ゴミ埋立地として使用された地域に自生植物と薬用植物を植栽して生息植物の種数を増加させ、住民生態教育場と休息空間に変えた大邱樹木園がある。生活汚水流入で水質が汚染して生態系がき損された貯水池を復元して自然生態公園に変えた光州雲川貯水池の事例もここに属する。ゴミ埋立地ではカドミウムが浸出水に出る場合が多く、廃鉱山地域は乾燥した場合が多い。したがって、重金属と乾燥に対する耐性の高い遺伝子はゴミ埋立地や廃鉱山の環境復原に有用である。干拓地は塩分の濃度が高いので、塩抵抗性遺伝子は干拓地の環境復原に用いることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、重金属に対して耐性を有したり、重金属蓄積性を変化させる遺伝子及び、塩や乾燥抵抗性を有したり、塩蓄積性を変化させる遺伝子を提供することにある。
また、本発明の第2の課題は、重金属に対して耐性や蓄積性を変化させる遺伝子を含む再組合ベクターを提供することにある。
また、本発明の第3の課題は、重金属に対する耐性や蓄積性が変化した形質転換体を提供することにある。
また、本発明の第4の課題は、重金属に対する耐性や蓄積性が変化した形質転換体の製造方法を提供することにある。
また、本発明の第5の課題は、重金属汚染地を環境親和的な空間に造成することができる方法を提供することにある。
また、本発明の第6の課題は、重金属含量が減少した安全な作物を開発する方法を提供することにある。
また、本発明の第7の課題は、塩や乾燥に対する抵抗性を向上させる遺伝子を含む再組合ベクターを提供することにある。
また、本発明の第8の課題は、塩や乾燥に対する抵抗性が向上した形質転換体を提供することにある。
また、本発明の第9の課題は、塩や乾燥に対する抵抗性が向上した形質転換体の製造方法を提供することにある。
また、本発明の第10の課題は、塩濃度の高い地域や乾燥した地域を環境親和的空間に造成することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために本発明は、類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列を含む重金属耐性と蓄積性を有する遺伝子を提供する。
【0013】
本発明はまた、植物で発現可能な転写及び翻訳調節因子によって調節されるように連結され、類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列または、この配列と相同性を有する配列を含む再組合ベクターを提供する。
【0014】
前記再組合ベクターは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列、GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列及び、これら配列と相同性を有する配列からなる群より選択される塩または乾燥抵抗性を有する遺伝子を追加的に含むことができる。
【0015】
本発明はまた、前記再組合ベクターに形質転換された形質転換体を提供する。
本発明はまた、前記再組合ベクターに形質転換された植物を提供する。
本発明はまた、前記再組合ベクターに各々形質転換された植物細胞を提供する。
【0016】
本発明はまた、(a)植物で発現可能な転写及び翻訳調節因子によって調節されるように連結され、類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列または、この配列と相同性を有する配列を含む発現カセットを製造し、(b)前記発現カセットを含む再組合ベクターを製造し、(c)前記再組合ベクターを植物細胞または植物組織に導入することを含む重金属耐性植物の製造方法を提供する。
【0017】
前記発現カセットは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列、GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列及び、これら配列と相同性を有する配列からなる群より選択される遺伝子を追加的に含むことができる。
【発明の効果】
【0018】
上述のように、本発明による重金属耐性を有する遺伝子で製造された形質転換体は、重金属で汚染された環境で成長することができるので、汚染地に環境親和的な公園を作ることで環境復原に利用でき、汚染地の土壌流失による2次汚染を防止することができ、野生種に比べて重金属を少量吸収する安全な作物を開発するのに用いることができる。また、前記重金属耐性遺伝子と塩または乾燥抵抗性を有する遺伝子が導入された形質転換植物は、重金属に対する耐性に優れているだけでなく、様々な汚染物質を地上部げ引き上げると予想され、環境浄化に寄与できる新品種の開発に用いることができる。本発明で提示したAtPDR8遺伝子は、重金属だけでなく塩と乾燥抵抗性も増加させるので、廃鉱山地域と他の重金属汚染地域の浄化と復原に利用できる。TaTM20とAtPDR8遺伝子は植物体内重金属含量を減少させるので、重金属吸収が減少した安全な作物の開発に利用することができる。AtPDR8やこれと相同性の高い遺伝子を過発現させたり、Rop2を抑制したりすると、塩や乾燥抵抗性が向上すると予想され、干拓地または乾燥地域の農業と環境に寄与できる新品種開発に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明で言及する”生体膜通過蛋白質”は、脂質二重層で構成される生体膜を貫通して位置する蛋白質のことである。前記生体膜通過蛋白質は類似の生体膜通過ドメインが4個ずつ5回繰り返される構造を有する蛋白質で、特に、重金属と塩の吸収及び排出に関与する。前記重金属は砒素、アンチモン、鉛、水銀、カドミウム、クロム、錫、亜鉛、バリウム、ビスマス、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、銅、バナジウムなどを含む。
【0020】
本発明で言及する”ABC輸送体(ATP−binding cassette transporters)”は、ATPを分解して出たエネルギーを使用して物質を運ぶ輸送体で、細胞内に栄養分を吸収したり、毒性物質を細胞外に運んだりする役割を果たす蛋白質のことである。
本発明で言及する”相同性”は、核酸(DNA)または蛋白質間の配列類似性(similarity)を意味する。
【0021】
本発明で言及される”発現抑制方法(RNAi)”は、相同性を有する塩基配列をヘアピン構造に作り、過発現させて当該遺伝子の発現を抑制することを意味する。RNAiは細胞内でウイルスの防御機作でウイルスのdsRNAを分解するための機作が作動し、その過程は次の通りである。1)Dicerという酵素がdsRNAを切り出して21−23塩基長さのsmall−interfering RNA(siRNA)を生成する。2)Dicerは切られたsiRNAがRNA−induced silencing complex(RISC)と結合できるように補助する。3)siRNAが結合されたRISCはsiRNAのアンチセンスメッセンジャーRNA(mRNA)を認識して切り出す。したがって、siRNAとアンチセンスであるmRNAが分解されるものである。このような原理を利用して、特定遺伝子、本発明の場合には特にAtPDR8の一部配列を利用してそれがdsRNAを生成できるようにデザインしたconstructを形質転換させ、AtPDR8の発現のみ減少したRNAi形質転換植物を作ることができる。つまり、RNAiはsiRNAがmRNAの特異な配列を認識し結合してmRNAを分解する機作を利用するgene silencing技術である。この時、siRNAはそのsiRNAと類似の配列を有する他の遺伝子のmRNA(この場合には、AtPDR8と相同性を有する他の遺伝子)にも結合して、分解させる。
【0022】
本発明で言及する”重金属抵抗性蛋白質”は、重金属の存在下で生命体の成長が抑制されないように媒介する蛋白質を意味する。
本発明で言及する”塩、乾燥抵抗性蛋白質”は、高濃度の塩や乾燥した条件下で生命体の成長が抑制されないように媒介する蛋白質を意味する。
本発明で言及される”形質転換植物”は、遺伝工学的に操作されたもので、外来DNA配列を含み、植物細胞、植物組織或いは植物体で発現可能に製作されて外来DNA配列を発現する。
本発明による重金属耐性と蓄積性を有する遺伝子は、類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列を含む。
【0023】
前記類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列は配列番号:1のTaTM20蛋白質の暗号化配列であるのが好ましい。また、前記相同性を有する配列は配列番号:1の配列と70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%乃至95%或いは90%乃至99%の相同性を有する配列である。
【0024】
本発明はまた、前記遺伝子またはこの遺伝子配列と相同性を有する配列が植物で発現可能な調節因子に連結された遺伝子に連結される発現カセットを提供する。
前記発現カセットは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列を含む遺伝子、GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列及び、これら配列と相同性を有する配列からなる群より選択される重金属、塩及び乾燥抵抗性及び蓄積性を変化させる遺伝子、または塩抵抗性や乾燥抵抗性を有する遺伝子を追加的に含むことができる。
【0025】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3のAtPDR8蛋白質の暗号化配列であるのが好ましい。また、前記相同性を有する配列は配列番号:3の配列と70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%乃至95%または95%乃至99%の相同性を有する配列である。
なお、前記発現カセットは植物の気孔運動を調節するGTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質(Rop2蛋白質)を暗号化する遺伝子をさらに含むことができる。前記Rop2蛋白質を暗号化する遺伝子は配列番号:5の配列と70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%乃至99%の相同性を有する配列である。
【0026】
本発明の一実施例による発現カセットは、プロモーター;TaTM20蛋白質を暗号化する遺伝子、TaTM20とAtPDR8蛋白質を暗号化する遺伝子及びTaTM20、AtPDR8及びRop2蛋白質を暗号化する遺伝子からなる群より選択される遺伝子及び、これと相同性を有する配列の遺伝子及び転写終結部位を含む。前記プロモーターとしては植物発現用プロモーターでCMV(Cauliflower Mosaic Virus)35Sプロモーター、CMV19Sプロモーター、アグロバクテリウムトゥメファシエンスTiプラスミド(Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid)のnos(nopaline synthase)プロモーター、ocs(octopine synthase)プロモーター及びmas(mannopine synthase)プロモーター、公知されたプロモーターがある。
【0027】
また、本発明の発現カセットはTaTM20、AtPDR8またはRop2蛋白質を暗号化する遺伝子の発現を確認したり、形質転換体を選別できるマーカをさらに含むことができる。標識遺伝子としてはカナマイシン、ヒグロマイシン、ゼンタマイシン及びブレオマイシンなどの抗生剤に対して耐性を示す遺伝子やGUS(β−glucuronidase)、CAT(chloramphenicol acetyltransferase)、ルシフェラーゼ(luciferase)またはGFP(green fluorescent protein)等を暗号化する遺伝子がある。前記マーカは発現カセットと共に植物に伝達され、特定の抗生剤を含む培地で培養することによって形質転換体の選別を可能にする。
【0028】
また、本発明は前記発現カセットを含む再組合ベクターを提供する。再組合ベクターはpGA1535/TaTM20とpCAMBIA1302/AtPDR8である。pGA1535/TaTM20はpGA1535に35Sプロモーター、TaTM20遺伝子及びノパリン合成酵素転写終結部位を含み、pCAMBIA1302/AtPDR8は35Sプロモーター、AtPDR8遺伝子及びノパリン合成酵素転写終結部位を含む。
【0029】
また、本発明は前記再組合ベクターを利用して形質転換された形質転換体を提供する。前記形質転換体は重金属を伝達する生体膜通過蛋白質を暗号化する配列、前記生体膜通過蛋白質とABC輸送体を暗号化する配列及び、前記生体膜通過蛋白質、ABC輸送体及び植物の気孔運動を調節する蛋白質を暗号化する配列を含み、前記配列は転写及び翻訳調節因子に連結され、前記因子によって調節されるように考案される。
【0030】
本発明の形質転換体は植物であり、好ましくは植物、植物細胞及び植物組織で、植物組織は植物種子を含む。前記植物としては草本及び木本植物で、顕花植物(flowering plants)、庭園植物(gardenp lants)、玉ねぎ、ニンジン、キュウリ、オリーブ、さつまいも、ジャガイモ、ハクサイ、大根、野菜、ブロッコリー、タバコ、ペチュニア、ひまわり、笠、芝、シロイヌナズナ 、アブラナ(Brassi cacampestris,B.napus)、笠(Brassica juncea)、シラカバ(Betula platyphylla)、ポプラ、雑種ポプラ及びオノオレカンバ(Betula schmidtii)が代表的である。前記植物は体細胞胚芽形成法(somatic embryogenesis)、細胞組織培養法(tissue culture)及び細胞株培養法(cell line culture)からなる群より選択される方法によって無性繁殖される植物であり得る。
形質転換体は公知の技術で製造することができ、アグロバクテリウムテュメペクシンス−媒介DNA遷移が代表的である。さらに好ましくは、電気衝撃、微細粒子注入方法または遺伝子銃(gene gun)からなる群より選択される方法で製造された再組合アグロバクテリウムを浸漬法で植物に導入することである。
【0031】
本発明はまた、(a)植物で発現可能な転写及び翻訳調節因子によって調節されるように連結され、類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列または、この配列と相同性を有する配列を含む発現カセットを製造し、(b)前記発現カセットを含む再組合ベクターを製造し、(c)前記再組合ベクターを植物細胞または植物組織に導入することを含む重金属耐性植物の製造方法を提供する。
【0032】
前記発現カセットは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列または、この配列と相同性を有する配列を含む遺伝子及びGTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列と、これら配列と相同性を有する配列からなる群より選択される重金属、塩及び乾燥抵抗性及び蓄積性を変化させる遺伝子または塩や乾燥抵抗性を有する遺伝子を追加的に含むことができる。
前記形質転換植物でTaTM20蛋白質(配列番号:2)またはこれら蛋白質と70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%乃至95%、最も好ましくは95%乃至99%の相同性を有する蛋白質を過発現させると、重金属に対する耐性が増加し、蓄積性が変化した形質転換体を得ることができ、AtPDR8蛋白質(配列番号:4)またはこれら蛋白質と70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%乃至95%、最も好ましくは95%乃至99%の相同性を有する蛋白質を過発現させると、重金属及び塩、乾燥ストレスに対する耐性が増加し、蓄積性が変化した形質転換体を得ることができる。
【0033】
また、前記形質転換植物でRop2蛋白質(配列番号:6)またはこれら蛋白質と70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%乃至99%の相同性を有する配列をRNAi方法で低発現したり不活性化して発現させると、正常条件では植物の気孔がよく開放されて蒸散作用が活発に進められ、この蒸散作用によって重金属を地上部へ移動させる形質転換体を得ることができ、乾燥条件では気孔を早く閉じることで乾燥抵抗性が向上した植物を得ることができる。
したがって、本発明による形質転換植物は、重金属を地下部から地上部へ効果的に移動させて蓄積することができる。本発明による形質転換植物は植物の気孔運動を調節する遺伝子を変形させて導入したり、発現水準を変化させることで水と共に重金属などの汚染物質を蒸散力によって地上部へ移動させることができ、乾燥抵抗性も向上させることができる。
【0034】
前記TaTM20とAtPDR8蛋白質を暗号化する遺伝子を植物原形質体に導入すると、植物の細胞膜で発現する。図1は20個の膜貫通ドメインを含むTaTM20の構造を示す図面(A)であり、3次元ドメインが互いに相互作用して集まっている形状を図示し(B)、TaTM20とプロテインキナーゼcフォスフォリレーションモチーフとの相同性を示す図面(C)である。
【0035】
したがって、ABC輸送体と生体膜通過蛋白質遺伝子で形質転換された形質転換体は、重金属で汚染された環境でも円滑に成長できるので、重金属の吸収量が低く、人体に無害で安全な作物を製造することができる。反対に、RNAiなどの低発現技術を利用する場合には、重金属の吸収を高めて土壌、大気、水質などから植物を利用した重金属抽出植物の製造が可能である。黄砂や自然災害などによって重金属が遠隔地から流入される場合もあるので、このような形質の作物が必要である。
【0036】
以下では本発明の実施例を記載する。下記実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例1:植物栽培条件
【0038】
野生種と形質転換されたシロイヌナズナ 及び小麦(Triticum aestivum L.cv.Atlas66)種子をエタノールとラックスを利用して表面殺菌し、4℃暗状態で2日間保管した後、1/2MS培地(Murashige and Skoog,1962)に致床した。培地は水平或いは垂直で2−3週間培養した。
【0039】
実施例2:小麦の根cDNAライブラリーでカドミウム抵抗性遺伝子同定
【0040】
カドミウム抵抗性遺伝子を小麦根cDNAライブラリーで同情するために、ycf1−null酵母に酢酸リチウム法を利用して挿入した後、機能的相補性を観察した。60μMの塩化カドミウム(CdCl2)が含まれている培地で育った細胞群体を選抜してプラスミド(plasmid)を同情し、その塩基配列を読取った後(配列番号:1)、これを再びycf1−null酵母に挿入してカドミウム耐性を再確認した。野生種酵母(wt)及びycf1−null酵母に空のベクター(EV)を入れたものと、ycf1−null酵母にTaTM20遺伝子を含むベクターを入れて培地に培養した時、空のベクターのみを入れた野生種及びycf1−null酵母よりTM20を入れた酵母がカドミウムを含有する培地で成長が優れていた(図5)。これはTM20が酵母でカドミウム耐性を向上させるということを示す。
【0041】
実施例3:N−末端とC−末端が除去されたTaTM20 constructの製作及び酵母におけるカドミウム耐性試験
【0042】
全てのN−末端とC−末端が除去されたTaTM20cDNAはPCR生産物の制限酵素切断によって生成された。ycf1−null酵母に各々の遺伝子を酢酸アセテート法によって挿入し、ウラシル(uracil)が欠乏した最少培地で選抜した。カドミウム抵抗性相補実験のために、各々の遺伝子を有しる酵母を1/2SG培地に30uMの塩化カドミウムを添加して摂氏30度で3日間培養して観察した。その結果、N−末端及びC−末端が少しずつ除去された遺伝子で形質転換された酵母のカドミウム耐性が、空のベクターのみを入れたものと類似するということが分かった(図6A)。これはTaTM20によって現れる酵母のカドミウム抵抗性はTM20の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された膜貫通ドメインが存在しなければならないということを意味する。
【0043】
実施例4:形質転換シロイヌナズナの製造
【0044】
TaTM20遺伝子をHindIII制限酵素を使用してpYES2:TaTM20遺伝子から植物発現ベクターに再組合した。遊離されたHindIII片は40塩基対の5'側の翻訳されていない部分と完全な2670塩基組のTaTM20遺伝子、109塩基対の3'側の翻訳されていない部分、そして翻訳終了コドンを含む。
【0045】
pGA1535が形質転換シロイヌナズナ の製造のための植物発現ベクターとして使用され、これはCaMV35Sプロモーターと複数のクローニング場所とノパリン合成終結部位(nopaline synthetase terminator)を有する。花芽浸漬法(Floral dipping,Clough and Bent,1988)を使用してpGA1535:TaTM20遺伝子を有するアグロバクテリウム(LBA4404)を使用してシロイヌナズナ を形質転換した。形質転換された種子は30ug/Lのカナマイシン抗生剤が含まれている1/2MS培地で選抜され、生存した植物から種子を採取した。3世代の同質接合種子が表現型分析のために使用された。
【0046】
AtPDR8遺伝子をシロイヌナズナ から作ったcDNAを鋳型.としてAtPDR8F−SB(5'−TCCCCCGGGGGCGCGGATCCGCGATGGATTACAATCCAAATCTTCC−3')プライマとAtPDR8R−PX(5'−GACACGTGCTCCGCTCGAGCGGTTATCTGGTCTGGAAGTTGAG−3')プライマを使用してPCRに増幅した後、T−vectorに入れ、制限酵素を使用してpCambia1302バイナリベクターに再対合した。pCambia1302ベクターは形質転換シロイヌナズナ の製造のための植物発現ベクターとして使用され、これはCaMV35Sプロモーターと複数のクローニング場所、ノパリン合成終結部位を有している。
【0047】
TaTM20と同様な方法でpCambia1302:AtPDR8を有するアグロバクテリウム(GV3101)を使用してシロイヌナズナ に形質転換し、形質転換された種子は30ug/Lのハイグロマイシンを含む1/2MS培地で選抜して生存した植物から種子を受けた。
【0048】
実施例5:カドミウム耐性検定
【0049】
野生種とTaTM20過発現シロイヌナズナ (TM20−1、TM20−2)が40または60μMの塩化カドミウムが含まれている1/2MS培地で3週間培養された後、収穫して重量と根長さを測定した。TaTM20を過発現する植物が40または60μMの塩化カドミウムが含まれている1/2MS培地で野生種に比べて成長が優れており(図8A、B)、低濃度の塩化カドミウム(15、25μM)が含まれている培地でもTaTM20を過発現する植物の生体量と根長さが野生種より優れていることが分かった(図8C、D)。これはTM20が植物でカドミウム耐性を向上させるということを示す。
野生種とAtPDR8形質転換シロイヌナズナ (過発現及び発現抑制植物)を30−50μMの塩化カドミウムが含まれている1/2MS培地に植え、2〜3週間立てて培養した後、収穫して植物の生体量と根長さを測定した。野生種とAtPDR8を過発現する植物(PDR8−1、−2、−3)を40μMの塩化カドミウム及び0.4mMの窒酸化鉛を含有する培地で共に培養した結果、AtPDR8過発現植物の生体量と根長さが野生種に比べて優れていることが分かった(図10)。また、AtPDR8発現を抑制植物(RNAi;8i−1、−2、−3)とAtPDR8欠乏突然変異個体(knock−out;ko−1andko−2)を野生種と共に塩化カドミウム及び窒酸化鉛を含有する培地で培養した結果、AtPDR8発現抑制植物とAtPDR8欠乏突然変異はカドミウムと鉛に対して敏感であり(図11A、B、E)、植物のクロロフィル含量と生体量が大きく減少することが分かった(図11C、D)。これはAtPDR8が植物でカドミウムと鉛に対する耐性を向上させるということを示す。
【0050】
実施例6:カドミウム耐性機作検定
【0051】
TaTM20とAtPDR8のカドミウム耐性機作がグルタチオンと関連があるかどうかを調べるために、グルタチオン合成阻害剤であるBSO(buthionine sulfoximine)を使用してカドミウム耐性を調査した。TaTM20の場合、カドミウムやBSOが入っていない培地とBSOのみを有する培地では空のベクターのみ入れた酵母と成長が類似し、カドミウムを含有する培地でTaTM20形質転換酵母のカドミウム抵抗性が大きく増加するということが分かった。そして、カドミウムとBSOと共に含む培地に培養した時には、TaTM20によって現れるカドミウム抵抗性が全く無くならず、維持されるということが分かった(図12)。これは従来多く知られたグルタチオンを媒介とするカドミウム抵抗性機作とは異なる機作でTaTM20が酵母のカドミウム抵抗性に寄与するということを意味する。
AtPDR8の場合には、形質転換植物が1/2MSやBSOのみを有する1/2MSでは野生種と成長が類似するが(図13A)、カドミウムを含む培地では過発現植物の成長は優れていて、発現抑制植物は敏感な表現型を示す(図13B)。BSOと共にカドミウムを処理した培地でAtPDR8形質転換植物と野生種間の成長差が無くならず、さらに大きくなるということが分かった(図13C、D)。この結果はAtPDR8によって現れるカドミウム抵抗性がグルタチオンを媒介としない新たな機作を通じて現れる可能性があることを意味する。
【0052】
実施例7:カドミウム含量測定
【0053】
TaTM20形質転換酵母のカドミウム含量を測定するために、酵母をウラシルのない合成ガラクトース培地(SG−ura;synthetic galactose−uracil)で培養した後、10μMの塩化カドミウムと1μMの放射性塩化カドミウムを処理し、各時間別に細胞を収穫してガンマ線測定器でカドミウム量を測定した。ycf−null酵母に空ベクターのみを入れたもの(167V)に比べてTaTM20を入れた酵母(167TM)の細胞内カドミウム量が低く(図14A)、カドミウム排出程度を測定した結果、TaTM20を入れた酵母がより速くカドミウムを細胞外部に排出するということが分かった(図14B)。また、形質転換酵母細胞内のカドミウム含量を原子吸光光度計(AAS)を使用して分析するために、酵母を20μMの塩化カドミウムが添加されたSG−Ura培地で育てた後、氷水で洗い、11Nの硝酸で細胞を溶かしてカドミウム含量を測定した。その結果、TaTM20で形質転換された酵母のカドミウム含量が空ベクターのみを入れたものに比べて低いことが分かった。これら結果はTaTM20が細胞内に入ったカドミウムを細胞外に排出して酵母のカドミウム抵抗性を増加させるということを意味する。
【0054】
AtPDR8形質転換植物体内カドミウム含量を測定するために、1/2MSで2週間立てて培養した後、100μMの塩化カドミウムを根に処理し、10時間培養した。地上部と根を各々分離して収穫した後、冷水で洗浄して乾燥した。乾燥された植物体は前記と同様な方法でAASを利用してカドミウム含量を測定した。AtPDR8を過発現する植物(PDR8−1)の地上部と根は野生種より少量のカドミウムを含み、AtPDR8発現を抑制する植物(8i−2)の地上部と根は多量のカドミウムが蓄積されているということが分かった(図15A)。また、カドミウム同位元素を使用して植物体内カドミウム含量を分析するために、1/2MSで10日間立てて培養した植物の根を放射性塩化カドミウムが含まれている培地に10時間培養して洗浄した後、地上部と根を分離してガンマ線測定器で体内カドミウム含量を分析した。この結果でも野生種に比べてAtPDR8過発現植物には地上部と根のカドミウム含量がさらに低くなり、AtPDR8発現抑制植物の地上部と根にはカドミウムがさらに多く蓄積されることが分かった。
【0055】
AtPDR8のカドミウム輸送能力を測定するために、AtPDR8形質転換植物の原形質体にカドミウム同位元素を吸収させ、細胞内カドミウム含量を測定した。原形質体と共にカドミウム同位元素を培養し、各時間帯別に原形質体を収穫して細胞内カドミウム含量を測定した結果、野生種植物(wt)から得られた原形質体に比べて過発現植物(PDR8−1)から得られた原形質体には少量のカドミウムが、そして発現抑制植物(8i−2)から得られた原形質体には多量のカドミウムが蓄積されることが分かった(図16A)。また、カドミウム排出能力を調べてみるために、原形質体とカドミウム同位元素を共に培養した後、細胞外のカドミウムを洗浄し、各時間帯別に細胞内に残っているカドミウムを測定した結果から、野生種に比べて過発現細胞はカドミウムをさらに速く、発現抑制細胞はさらに遅くカドミウムを排出するということが分かった(図16B)。これら結果は、AtPDR8が細胞内に入ってきたカドミウムを細胞外部に排出して植物のカドミウム抵抗性を増加させるということを意味する。
したがって、AtPDR8を過発現させた形質転換植物はカドミウム及び鉛を植物体外部に排出する耐性機作を持っていて体内重金属含量を大きく減少させた安全な作物を作るのに利用することができる。反対に、AtPDR8やそれと類似の遺伝子の発現を減少させた形質転換植物は、カドミウム及び鉛を植物体外部に排出する作用が減少して体内重金属含量を増加させた環境浄化用植物を作るのに利用することができる。
【0056】
実施例8:葉緑素含量測定
【0057】
カドミウム、鉛などの重金属による植物の毒性現象のうちの1つは葉の黄化現象である。したがって、このような重金属に対する植物の耐性程度は葉緑素含量分析から分かる。植物の葉緑素含量を測定するために、葉を収得して95%のエタノールで20分間80℃で抽出した。抽出物は664nmと648nmで吸光度を測定して葉緑素A及び葉緑素Bの含量を計算した(Oh SA,Park JH,Lee GI,Paek KH,Park SK,Nam HG(1997)Identification of three genetic locicontrolling leaf senescence in Arabidopsis thaliana.Plant J.12,527−35)。AtPDR8発現抑制形質転換植物(8i−1、8i−2、8i−3)と野生形植物を50μMの塩化カドミウムが添加された培地で3週間育てた後、葉緑素含量を測定した結果、AtPDR8発現抑制形質転換植物の葉緑素含量が野生型より低いことが分かった(図11C)。これはAtPDR8発現が植物のカドミウム抵抗性に寄与することを確認する結果である。
【0058】
実施例9:塩及び乾燥耐性及び含量検定
【0059】
AtPDR8形質転換植物の塩及び乾燥ストレスに対する耐性を試験するために、過発現植物、野生種及び発現抑制植物を培養して、植物体内塩含量を測定した結果、野生種に比べて過発現植物は塩をさらに少量、そして発現抑制植物はさらに多量の塩を含有することが分かった(図17A)。また、野生種及び過発現植物を100mMの塩化ナトリウムを含む1/2MS培地で3週間培養した結果、根長さと葉の色から、過発現植物が野生種に比べて塩耐性が増加したことが分かった(図17B、C)。そして、AtPDR8形質転換植物の乾燥ストレスに対する耐性を試験するために、土で4週間培養した植物に継続して水を供給する(+)か供給いない(−)条件で2週間培養したり(図17D)、土で3週間培養した植物に10日間水を供給せず、再び水を供給して4日間培養した植物の成長を観察した結果(図17F)、AtPDR8過発現植物は生体量が野生種より高い反面、発現抑制及び突然変異植物の生体量は低かった(図17E)。このような実験結果から、AtPDR8遺伝子を高い水準で発現する植物は、そうでない植物に比べて塩を体内に少なく蓄積して塩抵抗性と乾燥抵抗性が高いということが分かった。
【0060】
また、AtPDR8と非常に類似する塩基配列を有するAtPDR7が塩ストレスに対する耐性に関与するかどうかを調べるために、AtPDR7欠乏突然変異植物(PDR7k0−1、−2)の種子を1/2MS及び200mMの塩化ナトリウムを含む1/2MS培地に植えて3週間培養した結果、塩を処理していない条件(1/2MS)では野生種と成長に差がなかったが、過剰の塩を処理した条件ではAtPDR7遺伝子が欠乏した突然変異植物が野生種に比べて非常に敏感な表現型を示すことが分かった(図21)。AtPDR7は前記AtPDR8と塩基配列が80%程度の水準に同一な遺伝子で、これら遺伝子が各々欠乏した突然変異植物が塩に対して共通に敏感な表現型を示すので、万一このような程度の相同性を有する遺伝子を植物に高い水準で発現させると、野生種より塩に対する耐性が増加した植物を開発することができると予想される。
【0061】
実施例10:GFP::TaTM20及びGFP::AtPDR8のシロイヌナズナ 原形質体への導入
【0062】
TM/GFP−Fプライマ(5’−AAGAAGCTTATGGAGTGTGGTGGC−GTCTCCG−3')とTM/GFP−Rプライマ(5’−TAGAAGCTTAGAACTACACTACAGAGCTGCT−3')を使用してpYES2:TaTM20からPCR増幅させたcDNAを利用してGFP:TaTM20融合遺伝子を製造した。増幅された遺伝子が326−GFPベクターのHindIII場所に挿入されたGFP::TaTM20はCaMV35Sプロモーター調節下で発現する。また、AtPDR8の場合には、T−vectorに入っているAtPDR8遺伝子を制限酵素で切断して326GFP−3Gベクターに移し、GFP::AtPDR8を製造した。プラスミドはシロイヌナズナ 原形質体内にPEG媒介形質転換法によって導入された(Jin et al.,2001)。GFP融合蛋白質の発現は原形質体に形質転換後、16−24時間後に蛍光顕微鏡で観察した。また、発現した蛋白質の発現位置を確認するために、形質転換させたシロイヌナズナ 原形質体から細胞質、細胞膜蛋白質を各々分離してGFP抗体でウェスタンブロットを実施した。
前記の結果を図2と図3に示した。図2は植物原形質体で発現したGFP(緑色蛍光蛋白質)−TaTM20融合蛋白質の発現位置を示す写真で(A)、GFP−TaTM20蛋白質が原形質体の細胞膜に位置することを示し、発現位置をウェスタンブロットで確認した場合にも、GFP−TaTM20蛋白質が細胞質でなく膜部分に存在するということを確認した(B)。図3は植物原形質体で発現したGFP−AtPDR8融合蛋白質の発現位置を示す写真(A)と、発現局地性をウェスタンブロットで確認(B)したものである。その結果、GFP−AtPDR8蛋白質は原形質体の細胞膜に位置するということが分かる。
【0063】
実施例11:RNA同定
【0064】
植物のtotalRNAは20日栽培した小麦或いは2〜3週間栽培したシロイヌナズナ からトリゾル(Trizol)を使用して抽出した。植物を1/2MSに2〜3週間培養した後、液体質素を使用して均等に粉砕し、トリゾルを利用してtotalRNAを分離し、これをノーザンブロット、RT−PCRなどに用いた。
【0065】
実施例12:RT−PCR
【0066】
5μgのRNAを使用してcDNAをパワースクリップトRT(reverse transcription)−kit(BD Bioscience Clontech)とオリゴdTプライマを使用して合成した。2μlのcDNAからPCR反応を行い、各々TaTM20、AtPDR8、AtRop2に特異なプライマを使用した。対照区として小麦ではG3PDH(glycerolaldehyde−3−phosphate dehydrogenase)遺伝子を、シロイヌナズナ ではペタチューブリンとアクチを用いた。
TaTM20遺伝子の重金属による発現変化を知るために、小麦の根にカドミウムを処理した後、cDNAを合成し、これを鋳型.としてTaTM20RTFプライマ(5’−AAGGGTTGCTCCTCTTCGCGATCTTG−3')とTaTM20RTRプライマ(5’−GTACATGCCAGCACCGTATGGATTG−3')を使用してPCRを行った結果、カドミウムによって地上部(CdS)と、根(CdR)でTaTM20遺伝子の発現が増加するということを示している(図7A)。それだけでなく、リアルタイム−PCRを行ってカドミウムによってTaTM20の発現が増加することを確認した(図7B)。対照区としてTaG3PDHF(5’−CAACGCTAGCTGCACCACTAACT−3')プライマとTaG3PDHRプライマ(5’−ACTCCTCCTTGATAGCAGCCTT−3')を使用してG3PDH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)遺伝子の発現を確認した結果、この遺伝子はカドミウムによって変化がないということが分かった。
【0067】
AtPDR8遺伝子の発現変化を知るために、シロイヌナズナ の根にカドミウム、鉛及び銅を処理した後、cDNAを合成し、これを鋳型.としてAtPDR8−RTF(5’−CTCTTGATTGGTACAGTCTTCTG−3')プライマとAtPDR8RTR(5’−CCATAATGGTCCTCAATGTATTGC−3')プライマでPCRを行った結果、根でカドミウムと鉛、そして銅によってAtPDR8遺伝子の発現が大きく増加するということが分かった(図9B)。対照区として使用したチューブリン遺伝子の発現(Tub−F(5’−GCTGACGTTTTCTGTATTCC−3')、Tub−R(5’−AGGCTCTGTATTGCTGTGAT−3')プライマでPCRを行った結果、チューブリンの発現は重金属によって変わらないということが分かった。
【0068】
孔辺細胞におけるRop2遺伝子の発現を知るために、孔辺細胞と体細胞から各々cDNAを得て、これを鋳型.としてRop2−フォワーダープライマ(5’−CCGATCTTGCGGCAGAGATGGCGTCAAGG−3')とRop2−リバースプライマ(5’−CTTATCACAAGAACGCGCAACGGTTCTTATTC−3)を使用してPCRを行い、孔辺細胞でRop2遺伝子の発現が高いということを確認した(図18)。対照区としてactin2遺伝子の発現は孔辺細胞と体細胞で大きな差がないということが分かった(Actin2−forward、5’−GGCCGATGGTGAGGATATTCAGCCACTTG−3'、Actin2−reverse、5’−TCGATGGACCTGACTCATCGTACTCACTC−3')。
【0069】
実施例13:ノーザンブロットティング
【0070】
30μgのRNAをフォルムアルデヒドゲルで電気泳動した後、ナイロンメンブレインに移し、32P−dCTPで示された暗号配列に特異なPCR産物を利用して結合した。メンブレインを洗浄した後、フィルムに露出して遺伝子の発現程度を観察した。AtPDR8遺伝子に特異な塩基片を得るために、PDR8NFプライマ(5’−AGCCTTGCTTTGTTTCACAG−3')とPDR8NRプライマ(5’−CCCTACTCATTCTCCCCATTG−3')を使用してPCRに増幅した後、32Pに標識してAtPDR8遺伝子の発現をノーザンブロットで確認した結果、AtPDR8の発現が地上部と根でカドミウムと鉛、銅によって増加するということが分かった(図9A)。
【0071】
実施例14:ウェスタンブロットティング
【0072】
形質転換酵母とシロイヌナズナ から蛋白質を分離するために、抽出バッファー(50mMのHepes−KOH pH7.4、5mMのMgCl2、1mMのEDTA、10mMのDTT、0.7ug/mLのpepstainA、5ug/mLのaprotinin、20ug/mLのleupeptin、0.5mMのPhenylmethylsulfonyl fluoride)を入れてよく混合した後、12000rpmで5分間遠心分離した。上層液を得た後、再び100,000gで1時間遠心分離して細胞の膜部分と液状部分を分離した。10〜50μg程度の蛋白質をSDS−PAGEで分離した後、ニトロセルロース膜に移転させ、膜を7.5%の無脂肪牛乳を含む1xTBST(0.1%のTween20 in 1xTBS)溶液に1時間浸した。1xTBST溶液で5分間2回繰り返して洗浄した後、各々の蛋白質に特異な抗体と3時間常温で反応させた。その後、1xTBST溶液で15分間3回繰り返して洗浄し、sheep anti−mouse IgG conjugated horshradish peroxidaseと1時間反応させ、1xTBST溶液で10分ずつ3回洗浄した。ECL(Amersham pharmacia Biotech)溶液を使用して蛋白質の発現信号をx−rayフイルムで感知した。
GFP−TaTM20及びGFP−AtPDR8蛋白質を原形質体に導入した後、蛋白質を分離し、GFP抗体を使用してウェスタンブロットを行った結果、蛋白質が細胞質(cytosol、SまたはC)に位置せず、膜部位(membrane、M)に存在することが分かった(図2B、図3B)。
【0073】
実施例15:RNAi形質転換植物の製造
【0074】
AtPDR8の発現を抑制するRNAi植物を作るために、P8RI−XKプライマ(5’−CCGCTCGAGCGGGATGCCTTGCTTTGTTTCACAG−3')とP8RI−BXaプライマ(5’−GGGGTACCCCCCCTACTCATTCTCCCCATTG−3')でPCRした後、XhoI−KpnIとBamHI−XbaI制限酵素を使用してpHannibalベクターに挿入し、NotI制限酵素を使用してバイナリベクターであるpART27ベクターにクローニングして製造した。pART27−PDR8iベクターはアグロバクテリウムを利用してシロイヌナズナ に形質転換してAtPDR8RNAi形質転換植物を製造した。
【0075】
実施例16:プロモーター−GUS融合蛋白質を利用する遺伝子の発現組織結晶
【0076】
MS培地で2週間培養した植物を0.5mMのK4Fe(CN)6、0.5mMのK3Fe(CN)6、10mMのEDTA、0.1%のTritonX−100、500mg/mlのX−Gluc.を含む100mMのフォスフェートバッファーで24時間培養し、100%のエタノールに入れてクロロフィルを除去した後、光学顕微鏡で観察した。その結果、AtPDR8プロモーター−GUSは葉と根で全て発現し(図4A−D)、Rop2プロモーター−GUSは植物の孔辺細胞に多く発現するということが分かった(図18)。また、葉と根での発現をより詳しく観察するために染色した組織をマイクロトーム(Microtome)で切断して顕微鏡で観察した結果、AtPDR8プロモーター−GUS遺伝子の発現が特に外皮細胞(Epidermal cell)で強く発現するということが分かった(図4E−G)。
【0077】
実施例17:根から水と異なる物質を地上部へ移す蒸散作用のインディケーターである気孔運動の測定
【0078】
植物の葉の表皮層を剥離してスライドグラス上に置き、顕微鏡で観察しながら気孔の開放程度を測定し、最大値の半分に至るまでかかる時間(t1/2)を計算した。非活性化したRop2遺伝子(DN−Rop2)を発現させた植物の場合、気孔が野生種に比べて多く開かれ、速く開いたこと(t1/2値が小さい)が観察され、常に活性化した形態のRop2遺伝子(CA−Rop2)を発現させた植物の場合、気孔が遅く開かれ(t1/2値が大きい)、あまり開かれていないことが観察された(図19A)。また、この遺伝子の発現をなくした場合にも(Rop2−KO)、気孔を野生種よりさらに多く、さらに速く開くことを観察した(図19B)。したがって、この遺伝子やそれと類似した遺伝子をコーディングする蛋白質の量や活性を低下させると、野生種より気孔をさらに速く且つ多く開いて蒸散作用が増加した植物を作ることができる。汚染物質は主に蒸散作用の時に植物の地上部へ上がるので、この方法を用いて重金属を地上部へ多く上げて蓄積する植物を開発することができる。つまり、気孔をより大きく開いて蒸散作用を活発にして製造された形質転換植物を汚染地に植え、根から地上部への多様な汚染物質の移動を促進することができ、これは植物を利用する環境浄化に役に立つ。
【0079】
実施例18:干ばつに対する耐性のインディケーターであるABAによる気孔閉鎖運動の測定
【0080】
植物の葉にABAを処理した後、植物の葉の表皮層を剥離してスライドグラス上に置き、顕微鏡で観察しながら気孔の閉鎖程度を測定した。非活性化したRop2遺伝子(DN−Rop2)を発現させた植物の場合、気孔が野生種に比べて多く且つ早く閉じられることが観察され、常に活性化した形態のRop2遺伝子(CA−Rop2)を発現させた植物の場合、気孔が遅く閉じられ、閉じられる程度は低いことが観察された(図20)。したがって、この遺伝子やそれと類似した遺伝子をコーディングする蛋白質の量や活性を低下させると、野生種より気孔がさらに速く且つ多く閉じられる、干ばつに対して耐性を有する植物を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】20個の膜貫通ドメインの細胞膜における配置を示すTaTM20の構造(A)、複数の3次元ドメインが互いに相互作用して集まっている形状を示した図面(B)及び、前記TaTM20で繰り返される互いに類似の生体膜貫通ドメイン配列(黒い棒)とプロテインキナーゼcフォスフォリレーション(protein kinasec phosphorylation)モチーフとの相同性を示す図面(C)である。
【図2】TaTM20蛋白質が植物の細胞膜に存在するということを示す写真で、GFP(緑色蛍光蛋白質)−TaTM20融合蛋白質が植物の細胞膜に発現することを緑色蛍光を通じて分かり(A)、GFP抗体を使用してウェスタンブロットでこのGFP−TaTM20融合蛋白質の位置が細胞膜であることを再確認(B)する。
【図3】植物原形質体で発現したGFP−AtPDR8融合蛋白質が細胞膜に位置することを緑色蛍光を通じて示す写真(A)と、この融合蛋白質の位置をGFP抗体を使用してウェスタンブロットで確認(B)したものである。
【図4】シロイヌナズナ 植物でAtPDR8遺伝子の発現位置をGUS標識遺伝子を通じて分析したもので、AtPDR8遺伝子のプロモーターとGUSを融合させた遺伝子は根と幹に全て発現し、特に、外皮細胞(Epidermal cell)で強く発現することを示すものである。
【図5】酵母にTaTM20を過発現させると、カドミウム耐性が向上するということを示す写真である。
【図6】完全な大きさのTaTM20のみがカドミウム抵抗性に関与するということを証明したもので、N−末端とC−末端を除去した蛋白質が発現した酵母はカドミウム耐性が野生種と差がないことを示し(A)、(A)で示した遺伝子片が酵母で実際に発現すること(B)を示す。
【図7】カドミウムを処理すると、小麦の葉と根でTaTM20の発現が増加するということをRT−PCR(A)とリアルタイム−PCR(B)で分析した結果である。
【図8】TaTM20形質転換シロイヌナズナ がカドミウムに対する耐性が向上したことを示す図面で、形質転換体でTaTM20遺伝子の発現をRT−PCRに確認し(A)、TaTM20遺伝子を発現する形質転換体をカドミウムを含む培地で成長させた時、野生種に比べてカドミウム耐性が向上することを示す写真(B)と、生体重量と根の長さを測定した図表(C、D)である。
【図9】シロイヌナズナ にカドミウム、鉛または銅を処理した時、AtPDR8遺伝子の発現が増加することをノーザンブロット(A)とRT−PCR(B)で確認したものである。
【図10】AtPDR8過発現シロイヌナズナ 形質転換体がカドミウムと鉛に対する耐性が向上したことを示す図面で、AtPDR8過発現形質転換シロイヌナズナ でAtPDR8遺伝子の発現をRT−PCRに確認し(A)、これらをカドミウム及び鉛が含まれる培地で栽培した時の生長(B)、生体重量(C)、根の長さ(D)を示す。
【図11】AtPDR8発現が減少した形質転換シロイヌナズナ はカドミウムに非常に敏感であるということを示す図面で、AtPDR8−RNAiに形質転換された植物体のAtPDR8遺伝子発現程度をRT−PCRに確認し(A)、これら形質転換植物体をカドミウムが含まれている培地で培養した時の生長(B)、葉緑素含量(C)、生体重量(D)を示し、これらのカドミウムに対する敏感性を野生種とAtPDR8が完全に欠乏した植物体と比較した(E)。
【図12】TaTM20が過発現した酵母でグルタチオン(Glutathione)合成阻害剤であるBSOを処理し、細胞耐グルタチオンが減少した条件でもTaTM20によって増加したカドミウム耐性が維持されるということを示すものである。
【図13】AtPDR8の過発現植物(PDR8−1)、野生種(wt)、低発現植物体(8i−2)をグルタチオン合成阻害剤であるBSOとカドミウムを処理した条件で培養した時、AtPDR8によって変化したカドミウム耐性が維持されるということを生長(A、B、C)と生体重量及び根の長さ(D)を測定して示す結果である。
【図14】TaTM20形質転換酵母はカドミウムを少なく吸収し、排出は優れているということを示す図面で、酵母内カドミウム含量をカドミウム同位元素及び原子吸光光度計を使用して野生種とTaTM20形質転換酵母のカドミウム吸収(A、C)及び排出(B)程度を測定した結果(C)を示す。
【図15】AtPDR8は植物体内カドミウム含量を減少させるという図面で、過発現植物(PDR8−1)、野生種(wt)、低発現植物体(8i−2)内のカドミウム含量を原子吸光光度計(A)及びカドミウム同位元素(B)を使用して測定した結果を示す図表である。
【図16】AtPDR8が植物細胞からカドミウムの排出を向上させるという図面で、過発現植物(PDR8−1)、野生種(wt)、低発現植物体(8i−2)から分離した原形質体をカドミウム同位元素を含む培地に置いた時、細胞内カドミウム含量の変化を測定した結果を示す(A、B)。
【図17】AtPDR8が植物の塩抵抗性と乾燥抵抗性を向上させるということを示す図面で、過発現植物(PDR8−1)、野生種(wt)、低発現(8i−2)、欠乏突然変異(P8ko−1)植物を培養した時、植物体内の塩の含量を示す結果(A)と、過剰の塩が含まれている培地における過発現植物の生長形態(B)及び根の長さ(C)、そして乾燥ストレス条件(D、E、F)で培養した時の植物の生長形態(D、F)及び生体重量(E)を示す結果である。
【図18】シロイヌナズナ におけるRop2遺伝子が葉の孔辺細胞で強く発現するということを示す写真で、RT−PCRとRop2promoter::GUSを通じて分析した結果である。
【図19】突然変異Rop2遺伝子で形質転換されたり、Rop2遺伝子が発現しないシロイヌナズナ 植物の光による気孔開放運動を比較した図面で、活性型Rop2(CA−Rop2)を発現する植物は野生種(wt)に比べて気孔開放が遅くて少し開かれ、不活性型Rop2(DN−Rop2)を発現する植物はさらに早くてさらに多く開かれ(A)、Rop2を発現しない植物は気孔をさらに早くてさらに多く開くことを(B)示す結果である。
【図20】突然変異Rop2遺伝子で形質転換されたシロイヌナズナ 植物のABAによる気孔閉鎖運動を比較した図面で、活性型Rop2(CA−Rop2)を発現する植物は野生種(wt)に比べて気孔閉鎖が遅くて少し閉じられ、不活性型Rop2(DN−Rop2)を発現する植物はさらに早くてさらに多く閉じられることを示す図面である。
【図21】AtPDR7が塩ストレス抵抗性に関与するということを示す図面で、AtPDR7欠乏突然変異植物を過剰の塩が含まれている条件で培養した時、野生種に比べて生育が遅いということを示す結果である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列を含む重金属耐性と蓄積性を変化させる遺伝子。
【請求項2】
前記重金属は砒素、アンチモン、鉛、水銀、カドミウム、クロム、錫、亜鉛、バリウム、ビスマス、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、銅、バナジウム及び、これらの組み合わせからなる群より選択されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子。
【請求項3】
前記類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列は配列番号:1を有することを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子。
【請求項4】
前記類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列は配列番号:1と70%以上の相同性を有する配列であることを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子。
【請求項5】
前記類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列は配列番号:1と80%以上の相同性を有する配列であることを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子。
【請求項6】
前記類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列は配列番号:1と90%乃至95%の相同性を有する配列であることを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子。
【請求項7】
植物で発現可能な転写及び翻訳調節因子によって調節されるように連結される請求項1乃至6のうちのいずれか による遺伝子を含む再組合ベクター。
【請求項8】
前記再組合ベクターは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列を含む重金属、塩または乾燥抵抗性と蓄積性を変化させる遺伝子及びGTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列からなる群より選択される塩または乾燥抵抗性を有する遺伝子を追加的に含むものであることを特徴とする、請求項7に記載の再組合ベクター。
【請求項9】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3を有する遺伝子であることを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項10】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3と70%以上の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項11】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3と80%以上の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項12】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3と90%乃至95%の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項13】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3と95%乃至99%の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項14】
前記GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列は配列番号:5を有することを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項15】
前記GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列は、配列番号:5と70%以上の相同性を有する遺伝子を有することを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項16】
前記GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列は、配列番号:5と80%以上の相同性を有する遺伝子を有することを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項17】
前記GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列は、配列番号:5と90%乃至99%の相同性を有する遺伝子を有することを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項18】
発現可能な転写及び翻訳調節因子によって調節されるように連結される請求項1乃至7のうちのいずれかに記載の遺伝子を含む再組合ベクターに形質転換されることを特徴とする形質転換体。
【請求項19】
前記再組合ベクターは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列を含む重金属、塩または乾燥抵抗性と蓄積性を変化させる遺伝子及びGTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列からなる群より選択される塩または乾燥抵抗性を有する遺伝子を追加的に含むことを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項20】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3を有する遺伝子であることを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項21】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3と70%以上の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項22】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3と80%以上の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項23】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号3と90%乃至95%の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項24】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号3と95%乃至99%の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項25】
前記類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列は配列番号:1と95%乃至99%の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項26】
前記GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列は配列番号:5を有することを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項27】
前記GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列は配列番号:5と70%以上の相同性を有する遺伝子を有することを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項28】
前記GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列は配列番号:5と80%以上の相同性を有する遺伝子を有することを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項29】
前記GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列は配列番号:5と90%乃至99%の相同性を有する遺伝子を有することを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項30】
前記形質転換体は植物であることを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項31】
上記植物は玉ねぎ、ニンジン、キュウリ、オリーブ、さつまいも、ジャガイモ、ハクサイ、大根、野菜、ブロッコリー、タバコ、ペチュニア、ひまわり、笠、芝、シロイヌナズナ 、アブラナ、シラカバ、ポプラ、雑種ポプラ及びオノオレカンバからなる群より選択されるものであることを特徴とする、請求項30に記載の形質転換体。
【請求項32】
植物で発現可能な転写及び翻訳調節因子によって調節されるように連結される請求項1乃至7のいずれかに記載の遺伝子を含む再組合ベクターに形質転換された植物の一部。
【請求項33】
前記再組合ベクターは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列を含む重金属、塩または乾燥抵抗性と蓄積性を変化させる遺伝子及びGTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列からなる群より選択される塩または乾燥抵抗性を有する遺伝子を追加的に含むものであることを特徴とする、請求項32に記載の植物の一部。
【請求項34】
上記植物は玉ねぎ、ニンジン、キュウリ、オリーブ、さつまいも、ジャガイモ、ハクサイ、大根、野菜、ブロッコリー、タバコ、ペチュニア、ひまわり、笠、芝、シロイヌナズナ 、アブラナ、笠、シラカバ、ポプラ、雑種ポプラ及びオノオレカンバからなる群より選択されるものであることを特徴とする、請求項32に記載の植物の一部。
【請求項35】
植物で発現可能な転写及び翻訳調節因子によって調節されるように連結される請求項1乃至7のいずれかに記載の遺伝子を含む再組合ベクターに形質転換されることを特徴とする植物細胞。
【請求項36】
前記再組合ベクターは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列を含む重金属、塩または乾燥抵抗性と蓄積性を変化させる遺伝子及びGTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列からなる群より選択される塩または乾燥抵抗性を有する遺伝子を追加的に含むものであることを特徴とする、請求項35に記載の植物細胞。
【請求項37】
上記植物は玉ねぎ、ニンジン、キュウリ、オリーブ、さつまいも、ジャガイモ、ハクサイ、大根、野菜、ブロッコリー、タバコ、ペチュニア、ひまわり、笠、芝、シロイヌナズナ 、アブラナ、笠、タバコ、シラカバ、ポプラ、雑種ポプラ及びオノオレカンバからなる群より選択されるものであることを特徴とする、請求項35に記載の植物細胞。
【請求項38】
(a)植物で発現可能な転写及び翻訳調節因子によって調節されるように連結される請求項1乃至7のいずれかに記載の遺伝子を含む発現カセットを製造し、
(b)前記発現カセットを含む再組合ベクターを製造し、
(c)前記再組合ベクターを植物細胞または植物組織に導入することを含む重金属耐性または蓄積性が向上した環境浄化用植物、或いは重金属吸収が低下した安全な植物の製造方法。
【請求項39】
前記発現カセットは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列を含む重金属、塩または乾燥抵抗性と蓄積性を変化させる遺伝子及びGTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列からなる群より選択される塩または乾燥抵抗性を有する遺伝子を追加的に含むものであることを特徴とする、請求項38に記載の植物の製造方法。
【請求項1】
類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列を含む重金属耐性と蓄積性を変化させる遺伝子。
【請求項2】
前記重金属は砒素、アンチモン、鉛、水銀、カドミウム、クロム、錫、亜鉛、バリウム、ビスマス、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、銅、バナジウム及び、これらの組み合わせからなる群より選択されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子。
【請求項3】
前記類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列は配列番号:1を有することを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子。
【請求項4】
前記類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列は配列番号:1と70%以上の相同性を有する配列であることを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子。
【請求項5】
前記類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列は配列番号:1と80%以上の相同性を有する配列であることを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子。
【請求項6】
前記類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列は配列番号:1と90%乃至95%の相同性を有する配列であることを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子。
【請求項7】
植物で発現可能な転写及び翻訳調節因子によって調節されるように連結される請求項1乃至6のうちのいずれか による遺伝子を含む再組合ベクター。
【請求項8】
前記再組合ベクターは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列を含む重金属、塩または乾燥抵抗性と蓄積性を変化させる遺伝子及びGTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列からなる群より選択される塩または乾燥抵抗性を有する遺伝子を追加的に含むものであることを特徴とする、請求項7に記載の再組合ベクター。
【請求項9】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3を有する遺伝子であることを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項10】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3と70%以上の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項11】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3と80%以上の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項12】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3と90%乃至95%の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項13】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3と95%乃至99%の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項14】
前記GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列は配列番号:5を有することを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項15】
前記GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列は、配列番号:5と70%以上の相同性を有する遺伝子を有することを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項16】
前記GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列は、配列番号:5と80%以上の相同性を有する遺伝子を有することを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項17】
前記GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列は、配列番号:5と90%乃至99%の相同性を有する遺伝子を有することを特徴とする、請求項8に記載の再組合ベクター。
【請求項18】
発現可能な転写及び翻訳調節因子によって調節されるように連結される請求項1乃至7のうちのいずれかに記載の遺伝子を含む再組合ベクターに形質転換されることを特徴とする形質転換体。
【請求項19】
前記再組合ベクターは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列を含む重金属、塩または乾燥抵抗性と蓄積性を変化させる遺伝子及びGTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列からなる群より選択される塩または乾燥抵抗性を有する遺伝子を追加的に含むことを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項20】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3を有する遺伝子であることを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項21】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3と70%以上の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項22】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号:3と80%以上の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項23】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号3と90%乃至95%の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項24】
前記6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列は配列番号3と95%乃至99%の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項25】
前記類似の4個の生体膜通過ドメインが5回反復された生体膜通過蛋白質を暗号化する配列は配列番号:1と95%乃至99%の相同性を有する配列の遺伝子であることを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項26】
前記GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列は配列番号:5を有することを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項27】
前記GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列は配列番号:5と70%以上の相同性を有する遺伝子を有することを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項28】
前記GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列は配列番号:5と80%以上の相同性を有する遺伝子を有することを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項29】
前記GTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列は配列番号:5と90%乃至99%の相同性を有する遺伝子を有することを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項30】
前記形質転換体は植物であることを特徴とする、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項31】
上記植物は玉ねぎ、ニンジン、キュウリ、オリーブ、さつまいも、ジャガイモ、ハクサイ、大根、野菜、ブロッコリー、タバコ、ペチュニア、ひまわり、笠、芝、シロイヌナズナ 、アブラナ、シラカバ、ポプラ、雑種ポプラ及びオノオレカンバからなる群より選択されるものであることを特徴とする、請求項30に記載の形質転換体。
【請求項32】
植物で発現可能な転写及び翻訳調節因子によって調節されるように連結される請求項1乃至7のいずれかに記載の遺伝子を含む再組合ベクターに形質転換された植物の一部。
【請求項33】
前記再組合ベクターは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列を含む重金属、塩または乾燥抵抗性と蓄積性を変化させる遺伝子及びGTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列からなる群より選択される塩または乾燥抵抗性を有する遺伝子を追加的に含むものであることを特徴とする、請求項32に記載の植物の一部。
【請求項34】
上記植物は玉ねぎ、ニンジン、キュウリ、オリーブ、さつまいも、ジャガイモ、ハクサイ、大根、野菜、ブロッコリー、タバコ、ペチュニア、ひまわり、笠、芝、シロイヌナズナ 、アブラナ、笠、シラカバ、ポプラ、雑種ポプラ及びオノオレカンバからなる群より選択されるものであることを特徴とする、請求項32に記載の植物の一部。
【請求項35】
植物で発現可能な転写及び翻訳調節因子によって調節されるように連結される請求項1乃至7のいずれかに記載の遺伝子を含む再組合ベクターに形質転換されることを特徴とする植物細胞。
【請求項36】
前記再組合ベクターは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列を含む重金属、塩または乾燥抵抗性と蓄積性を変化させる遺伝子及びGTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列からなる群より選択される塩または乾燥抵抗性を有する遺伝子を追加的に含むものであることを特徴とする、請求項35に記載の植物細胞。
【請求項37】
上記植物は玉ねぎ、ニンジン、キュウリ、オリーブ、さつまいも、ジャガイモ、ハクサイ、大根、野菜、ブロッコリー、タバコ、ペチュニア、ひまわり、笠、芝、シロイヌナズナ 、アブラナ、笠、タバコ、シラカバ、ポプラ、雑種ポプラ及びオノオレカンバからなる群より選択されるものであることを特徴とする、請求項35に記載の植物細胞。
【請求項38】
(a)植物で発現可能な転写及び翻訳調節因子によって調節されるように連結される請求項1乃至7のいずれかに記載の遺伝子を含む発現カセットを製造し、
(b)前記発現カセットを含む再組合ベクターを製造し、
(c)前記再組合ベクターを植物細胞または植物組織に導入することを含む重金属耐性または蓄積性が向上した環境浄化用植物、或いは重金属吸収が低下した安全な植物の製造方法。
【請求項39】
前記発現カセットは6個の生体膜通過ドメインとATP結合ドメインが2回繰り返されるABC輸送体蛋白質を暗号化する配列を含む重金属、塩または乾燥抵抗性と蓄積性を変化させる遺伝子及びGTP結合ドメインと細胞質から細胞膜に位置を移ることができるCaaLドメイン(ゲラニルゲラニレーションモチーフ)を有する蛋白質を暗号化する配列からなる群より選択される塩または乾燥抵抗性を有する遺伝子を追加的に含むものであることを特徴とする、請求項38に記載の植物の製造方法。
【図14】
【図15】
【図16】
【図19】
【図20】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図17】
【図18】
【図21】
【図15】
【図16】
【図19】
【図20】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図17】
【図18】
【図21】
【公開番号】特開2008−131929(P2008−131929A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98489(P2007−98489)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(506376458)ポステック アカデミー−インダストリー ファンデーション (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(506376458)ポステック アカデミー−インダストリー ファンデーション (28)
【Fターム(参考)】
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