説明

重金属汚染土壌を利用した人工骨材の製造方法

【課題】 重金属で汚染された土壌または焼却灰を人工骨材として有効利用する方法であって、より簡易に、かつ重金属の環境への悪影響を有効に抑制することのできる方法を提供する。
【解決手段】 重金属で汚染された土壌または焼却灰を含む原料を1000℃〜1400℃の温度範囲で焼成する工程と、焼成して得た粒状物の表面に水硬性粉体を乾式散布する工程と、水硬性粉体が散布された粒状物に水分を与え、該水硬性粉体を養生硬化させる工程からなる、人工骨材の製造方法。水硬性粉体としては、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、アルミナセメントなど各種セメントを利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる建設発生土などを含む、重金属で汚染された土壌や、都市ごみ焼却炉から排出される焼却灰を人工骨材として環境に有害な影響を与えることなく有効利用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物の焼却処理施設の周辺や、工場跡地等において、重金属で汚染された土壌の存在が問題視されている。このような土壌(以下「汚染土壌」と称する)を処理する方法としては、重金属の溶出防止策を施して埋め戻す方法や、汚染土壌を周囲の被汚染土壌から遮断する方法がある。また、別の方法として、例えば特許文献1には、汚染土壌から重金属を除去した上で該汚染土壌を焼成し、人工骨材を得る方法が開示されている。すなわち、汚染土壌に、塩素を含む物質(例えば塩素を含む廃プラスチック)とを混合して加熱処理し、汚染土壌に含まれる重金属を揮発させて除去する。
【特許文献1】特開2003−212620号
【0003】
一方、重金属の溶出防止策としては、汚染土壌ではないが、重金属を含む焼却灰をペレット状に形成し、その表面をコーティングする方法が、特許文献2に開示されている。
【特許文献2】特開平6−144896号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、重金属を含む汚染土壌や焼却灰を人工骨材などの土工用資材として有効利用する方法であって、より簡易に、かつ重金属の溶出による環境への悪影響を有効に抑制することのできる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、重金属で汚染された土壌または焼却灰を含む原料を1000〜1400℃の温度範囲で焼成する工程と、焼成して得た塊状物の表面に水硬性粉体を乾式散布する工程と、水硬性粉体が散布された塊状物に水分を与え、該水硬性粉体を養生硬化させる工程から成ることを特徴とする、人工骨材の製造方法である(請求項1)。
【0006】
また、本発明は、重金属で汚染された土壌または焼却灰を含む原料を焼成して得たコア部分を有し、該コア部分の表面の開気孔が水和した水硬性組成物で充填された人工骨材である(請求項2)。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、重金属で汚染された土壌および焼却灰を人工骨材の原料として有効活用することができ、しかも該人工骨材の表面の開気孔の部分が水和した水硬性組成物で充填されているため、重金属が人工骨材から環境中に溶出することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、重金属で汚染された土壌または焼却灰を人工骨材の原料とする。具体的には、例えば、化学工業や冶金関連の工場跡地から掘削された土壌などが挙げられる。土壌自体の種類は限定されない。すなわち、粘土質、砂質、火山灰いずれでもよい。また、重金属の種類としては、鉛、亜鉛、カドミウム、水銀、クロムなどが対象となる。また、焼却灰としては、都市ごみ焼却炉から排出される焼却灰が典型的な例であるが、重金属を含む焼却灰であれば、これに限定されない。
【0009】
重金属で汚染された土壌または焼却灰は、1000〜1400℃で焼成することにより、焼結させる。重金属で汚染された土壌または焼却灰の焼成炉への供給は、粉体のままであっても構わないし粒状や塊状に成型して供給することもできる。焼結に適した温度は土壌または焼却灰の化学組成によって異なるが、一般には前記の温度範囲により焼結させることができる。適切な焼結温度は、あらかじめ対象の土壌または焼却灰を試験的に焼成して決定するのがよい。
【0010】
焼成に用いる焼成炉の種類は限定されないが、例えばバッチ式電気炉、外熱式または内熱式ロータリーキルンなどが挙げられる。電気炉を用いる場合は、あらかじめ、骨材として適した粒度になるよう、対象土壌や焼却灰を造粒する必要がある。一方ロータリーキルンでは、キルンの運転条件を適当に設定すれば、土壌や焼却灰がキルン内部で焼成されながら移動するうちに粒状に成型されるので、成型工程を省略することができ好都合である。
【0011】
次に、焼成して得た粒状物を常温まで冷却し、一時貯蔵タンクで保管する。貯蔵タンクからベルトコンベア上に定量切り出し、コンベア上を移動する間に粒状物の表面に水硬性粉体を乾式散布する。水硬性粉体の散布量としては、粒状物の表面の開気孔がこの水硬性粉体で充填されれば十分であり、過度な散布は後段の水和反応工程で粒状物同士が付着して固結する原因となる。続く加湿工程の前段で粒状物と過剰な水硬性粉体とを分離するためのふるい分け工程を設けることは好ましい。ふるい分けで回収された水硬性粉体は、再び散布材として利用することができる。
【0012】
ここで、使用する水硬性粉体としては、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、アルミナセメントなど各種セメントを利用することができる。中でも、入手が容易で、後述する養生の際の取扱いが容易なことから、ポルトランドセメントを用いるのが好ましい。
【0013】
前記のように水硬性粉体で粒状物の表面の開気孔を充填した後、水硬性粉体に水分を与え、該水硬性粉体を養生硬化する。水分を与える方法としては、例えば、ベルトコンベア上を移動する粒状物に、水硬性粉体が洗い流されない程度の量の水を散水させるようにして行う。水分を与えた後、水硬性粉体を養生するため、該粒状物を適当な温度および湿度の元で一定期間保存する。例えば、温度20℃、湿度90%RHに調整された恒温室に28日以上静置することにより、十分な養生を行うことができる。
【0014】
また、水硬性粉体で粒状物の表面を被覆する工程と水硬性粉体に水分を与える工程の順は逆であっても構わない。すなわち、焼成して得た粒状物を常温まで冷却し水分を与えて吸水させた後、水硬性粉体で粒状物の表面を被覆することによっても、本願発明の目的は達せられる。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施の例を説明する。
原料には都市ごみの焼却主灰および建設発生土を用いた。都市ごみの焼却主灰には金属片および粗大異物が含まれていたため、目開き40mmの篩を通じ、篩通過分のみを用いた。異物を除去した焼却灰200重量部(乾燥重量)と建設発生土900重量部(乾燥重量)とを気流混合し、時間1tの割合でロータリーキルンへ供給し、最高温度1350℃で焼成した。ロータリーキルンの内径および長さはそれぞれ1.5mおよび28mであり、重油焚きの内部加熱方式のものを使用した。
焼成して得た粒状物を常温まで冷却し、クラッシャーで粗破砕し篩工程を介して5mm〜20mmのサイズに整粒し、一時貯蔵タンクで保管した。引き続いて、貯蔵タンクからベルトコンベア上に定量切り出し、コンベア上を移動する間に粒状物の表面にポルトランドセメントを乾式散布し、そのままコンベアの後段部において散水した。
その後、天然の降雨の影響を受けないストックヤードで28日間自然養生して骨材とした。
【0016】
環境省告示第46号溶出試験の結果を、ポルトランドセメントの散布を行なわなかった比較例とともに表に示すが、本発明による骨材の重金属の溶出は十分に抑制された。
【0017】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属で汚染された土壌または焼却灰を含む原料を1000〜1400℃の温度範囲で焼成する工程と、焼成して得た塊状物の表面に水硬性粉体を乾式散布する工程と、水硬性粉体が散布された塊状物に水分を与え、該水硬性粉体を養生硬化させる工程から成ることを特徴とする、人工骨材の製造方法。
【請求項2】
重金属で汚染された土壌または焼却灰を含む原料を焼成して得たコア部分を有し、該コア部分の表面の開気孔が水和した水硬性組成物で充填された人工骨材。

【公開番号】特開2006−96624(P2006−96624A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285609(P2004−285609)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】