説明

野球バット自動溶接機用グリップエンド保持具

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、アルミニウム合金等の金属でつくられた野球バット本体とグリップエンドとを自動溶接機によって溶接するさいに、グリップエンドを保持するのに用いられる、野球バット自動溶接機用グリップエンド保持具に関する。
【0002】
【従来の技術】野球バット自動溶接機としては、例えば、グリップエンドと野球バット本体の先端部をそれぞれ保持具で保持しながら、グリップエンドの孔に野球バット本体の基端部を挿入して、一方の保持具に連結せられたエアシリンダ等によって両者を互いに押し付け、野球バット本体とグリップエンドとを前者の軸方向に回転させながら接合部分の溶接を行なうものがある(図4参照)。このような溶接は、溶接電流、溶接速度(回転速度)、溶接材料搬送速度、予熱時間、クレーター時間といった種々の条件を最適に設定した上で行なう必要がある。
【0003】従来のグリップエンド保持具(21)は、図5に示すように、野球バット自動溶接機に取り付けられる基板(22)と、基板(22)の中心部分に立上り状に設けられかつグリップエンドが嵌め入れられる上方凹所(24)を有する円柱部(23)とよりなるものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来のグリップエンド保持具(21)を用いて野球バットの自動溶接を行なう場合、次のような問題があった。即ち、グリップエンドが保持具(21)の凹所(24)に嵌め入れられるため、溶接機の連続運転時において同保持具(21)に熱が籠り易く、それによりグリップエンドに熱影響が及び、溶接条件が変化するため、そのままでは良好な溶接ができないことがあった。
【0005】また、グリップエンドの形状に応じた複雑な形状の凹所(24)を円柱部(23)に形成する必要があるため、製造コストが高くつき、しかも、溶接すべきグリップエンドの形状が少しでも変われば、全く別の保持具が必要となるため、不経済であった。
【0006】この発明の課題は、上記の問題点に鑑みて、溶接機の連続運転時においてもグリップエンドに熱影響が及び難く、したがって溶接条件を変化させることなく良好な溶接を継続的に行なうことを可能とし、また、製造コストが安く、経済的に使用することができ、さらには、グリップエンドに傷が生じるおそれのない野球バット自動溶接機用グリップエンド保持具を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明の野球バット自動溶接機用グリップエンド保持具は、上記の課題を達成するために、野球バット自動溶接機に取り付けられる基板と、上面でグリップエンドの底面を受けるように、基板に立てられた少なくとも3本の支柱の先端部に取り付けられるとともに、少なくとも1つの放熱用貫通孔を有する板状グリップエンド底面保持部材と、側部でグリップエンドの周面を受けるように基板に立てられた少なくとも3本の棒状グリップエンド周面保持部材とよりなる。
【0008】上記グリップエンド保持具によれば、グリップエンドとグリップエンド底面保持部材およびグリップエンド周面保持部材との接触面積が非常に小さく、しかも、両保持部材は、露出部分の表面積が大きく放熱し易いものであるうえ、グリップエンド底面保持部材は、少なくとも1つの放熱用貫通孔を有しているので、溶接機運転中にグリップエンドに対して熱影響を及ぼすことがほとんどなく、したがって、溶接条件を変更せずに良好な溶接を継続的に行なうことができる。また、支柱に取り付けられた板状のグリップエンド底面保持部材および棒状のグリップエンド周面保持部材を用いることによって保持具としての形状が単純化されており、したがって、前述の従来技術(図5参照)と比べて製造コストが安くつく。しかも、溶接すべきグリップエンドの形状が変わった場合、その外径が従前のものと同じであればそのままで使用することができるし、その外径が変わったときでも基板におけるグリップエンド周面保持部材の配置を変えることによって対応できるので、非常に経済的である。
【0009】さらに、グリップエンドの底面は板状のグリップエンド底面保持部材の上面で受けられるため、エアシリンダ等による加圧力によって同底面に凹み傷が発生するおそれもない。
【0010】ここで、グリップエンド底面保持部材用支柱およびグリップエンド周面保持部材は、通常は、例えばステンレス鋼棒等の中実棒で構成されるが、その他、中空棒であってもよく、さらには筒であってもよい。また、支柱およびグリップエンド周面保持部材の本数は、確実にグリップエンドを保持するために、少なくとも3本ずつとするのが好ましいが、それを越える本数であっても勿論よい。
【0011】グリップエンド底面保持部材は、好ましくは、熱伝導性材料、例えばアルミニウム(アルミニウム合金を含む)等によりつくられる。また、同部材は、熱の籠りを少なくするために、例えば、放熱用貫通孔の占める割合を大きくしたり、全体の厚みを薄くしたり、或いは切欠きを形成したりすること等によって、可能な限りその体積を小さくするのが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】次に、この発明の一実施形態を図1R>1〜図4を参照して説明する。
【0013】図1〜図3において、野球バット自動溶接機用グリップエンド保持具(1) は、野球バット自動溶接機(10)にボルト等によって取り付けられる基板(2) と、上面(5a)でグリップエンド(G) の底面(G1)を受けるように、基板(2) に立てられた3本のステンレス鋼棒製の支柱(3) の先端部(3a)に取り付けられたアルミニウム製の板状グリップエンド底面保持部材(5) と、側部(4a)でグリップエンド(G) の周面(G2)を受けるように基板(2) に立てられた3本のステンレス鋼棒製グリップエンド周面保持部材(4) とよりなる。
【0014】基板(2) の周縁部には、計4つのボルト挿通孔(2a)が円周方向に等間隔おきにあけられている。基板(2) の下面における周縁寄り部分には、径方向外向きの低い環状段差(2d)が設けられている。
【0015】グリップエンド底面保持部材用支柱(3) は横断面円形をなし、その寸法を例示すれば、直径約3〜4mm、高さ約25mmである。そして、各支柱(3) は、これらの下側約3分の1が、基板(2) の中心部において同一円周上に等間隔おきにあけられた3つの有底孔(2b)に、それぞれきつく嵌め込まれることにより、基板(2) に立てられている。
【0016】グリップエンド底面保持部材(5) は、全体の輪郭が平面よりみて略隅丸正三角形であって、その中央部に大きな円形の放熱用貫通孔(5b)を有するとともに、その周縁部の3つの隅部分にそれぞれ支柱先端部嵌入用有底孔(5c)を有している。同部材(5) の厚みは約3〜5mm、貫通孔(5b)の径は約19mmである。グリップエンド底面保持部材(5) は、その有底孔(5c)に支柱(3) の先端部(3b)がそれぞれきつく嵌め入れられることにより、同先端部(3a)に取り付けられている。
【0017】グリップエンド周面保持部材(4) は横断面円形をなし、その寸法を例示すれば、直径約3〜8mm、高さ約45mmであり、支柱(3) と比べて少なくとも高さの高いものが用いられる。そして、各グリップエンド周面保持部材(4) は、これらの下側約4分の1が、基板(2) の中心部からやや外側において同一円周上に等間隔おきにかつ平面よりみて上記有底孔(2b)と互いに円周方向に約60度ずれるようにあけられた3つの有底孔(2c)に、それぞれきつく嵌め込まれることにより、基板(2) に立てられている。
【0018】次に、上記構成よりなるグリップエンド保持具(1) の使用方法を、図4を参照して説明する。図4において、野球バット自動溶接機(10)は、高さの異なる一対の上向きアーム(11)(12)を備えており、高い方のアーム(11)の先端部に、野球バット本体先端部保持具(13)が、低い方のアーム(12)の先端部に、グリップエンド保持具(1) が、それぞれ同一直線上に並ぶ軸回りに回転可能に取り付けられている。野球バット本体先端部保持具(13)は、エアシリンダ(14)と連結せられており、このエアシリンダ(14)が進退駆動せられることによって、野球バット本体(B)とグリップエンド(G) とが相互に軸方向に押し付けられ、または離間せしめられるようになっている。そして、野球バット本体(B) の先端部を保持具(13)で、グリップエンド(G) を本発明による保持具(1) でそれぞれ保持しながら、エアシリンダ(14)を前進駆動させることにより、グリップエンド(G) の孔に野球バット本体(B) の基端部が挿入され、さらに両者が互いに軸方向に押し付けられる。この状態で、野球バット本体(B) とグリップエンド(G) とを回転駆動装置(図示略)によって両保持具(1,13)を結ぶ軸回りに回転させながら、接合部分の溶接を行なう。
【0019】上記溶接時において、グリップエンド保持具(1) は、グリップエンド底面保持部材(5) の上面(5a)でグリップエンド(G) の底面(G1)を受けるとともに、3本のグリップエンド周面保持部材(4) の側部(4a)でグリップエンド(G) の周面(G2)を受けることによって、グリップエンド(G) を確実に保持するものである。このさい、グリップエンド(G) の底面(G1)は、エアシリンダ(14)による加圧力によって、グリップエンド底面保持部材(5) に押し付けられるが、同保持部材(5) は板状のものであるため、グリップエンド(G) の底面(G1)に凹み傷が発生するおそれはない。
【0020】また、グリップエンド(G) とグリップエンド底面保持部材(5) およびグリップエンド周面保持部材(4) との接触面積が非常に小さく、両部材(4,5) は、露出部分の表面積が大きく放熱し易いものであるうえ、グリップエンド底面保持部材(5) の中央部には大きな放熱用貫通孔(5b)があけられていて熱がこもり難いので、溶接機運転中にグリップエンド(G) に対して熱影響を及ぼすことがほとんどない。したがって、溶接条件を変更することなく良好な溶接を継続的に行なうことができる。
【0021】さらに、上記グリップエンド保持具(1) によれば、溶接すべきグリップエンド(G) の形状が変わった場合でも、その外径が従前のものと同じであればそのままで使用することができるし、その外径が変わったときでも基板(2) におけるグリップエンド周面保持部材(4) の配置を変えることによって対応できるので、非常に経済的である。この場合において、外径の異なる複数のグリップエンド(G) に対応できるように、基板(2) に、各グリップエンド周面保持部材(4) を嵌め込むための有底孔(2c)を、予め複数組あけておくようにしてもよい。
【0022】
【発明の効果】この発明の野球バット自動溶接機用グリップエンド保持具によれば、グリップエンドとグリップエンド底面保持部材およびグリップエンド周面保持部材との接触面積が非常に小さく、しかも、両保持部材は、露出部分の表面積が大きく放熱し易いものであるうえ、グリップエンド底面保持部材は、少なくとも1つの放熱用貫通孔を有しているので、溶接機運転中にグリップエンドに対して熱影響を及ぼすことがほとんどなく、したがって、溶接条件を変更せずに良好な溶接を継続的に行なうことができる。
【0023】また、支柱に取り付けられた板状のグリップエンド底面保持部材および棒状のグリップエンド周面保持部材を用いることによって保持具としての形状が単純化されるので、製造コストが安くつく。
【0024】しかも、溶接すべきグリップエンドの形状が変わった場合、その外径が従前のものと同じであればそのままで使用することができるし、その外径が変わったときでも基板におけるグリップエンド周面保持部材の配置を変えることによって対応できるので、非常に経済的である。
【0025】さらに、グリップエンドの底面は板状のグリップエンド底面保持部材の上面で受けられるため、エアシリンダ等による加圧力によって同底面に凹み傷が発生するおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の野球バット自動溶接機用グリップエンド保持具の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】グリップエンド保持具の平面図である。
【図3】グリップエンド保持具の垂直断面図である。
【図4】グリップエンド保持具の使用状態を示すものであって、野球バット自動溶接機の一部概略斜視図である。
【図5】従来の野球バット自動溶接機用グリップエンド保持具を示す斜視図である。
【符号の説明】
(1) …グリップエンド保持具
(2) …基板
(3) …(グリップエンド底面保持部材の)支柱
(3a)…先端部
(4) …グリップエンド周面保持部材
(4a)…側部
(5) …クリップエンド底面保持部材
(5a)…上面
(5a)…放熱用貫通孔
(G) …グリップエンド
(G1)…底面
(G2)…周面
(10)…野球バット自動溶接機

【特許請求の範囲】
【請求項1】 野球バット自動溶接機(10)に取り付けられる基板(2) と、上面(5a)でグリップエンド(G) の底面(G1)を受けるように、基板(2) に立てられた少なくとも3本の支柱(3) の先端部(3a)に取り付けられるとともに、少なくとも1つの放熱用貫通孔(5b)を有する板状グリップエンド底面保持部材(5) と、側部(4a)でグリップエンド(G) の周面(G2)を受けるように基板(2) に立てられた少なくとも3本の棒状グリップエンド周面保持部材(4) とよりなる、野球バット自動溶接機用グリップエンド保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】第2920749号
【登録日】平成11年(1999)4月30日
【発行日】平成11年(1999)7月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−206998
【出願日】平成8年(1996)8月6日
【公開番号】特開平10−52795
【公開日】平成10年(1998)2月24日
【審査請求日】平成10年(1998)6月25日
【出願人】(000186843)昭和アルミニウム株式会社 (23)
【参考文献】
【文献】特開 平9−239590(JP,A)