説明

野菜・果物の風味を増強する調味料

【課題】食品の素材である野菜または果物の風味を増強する調味料、及び野菜または果物の風味を増強する方法を提供する。
【解決手段】水100重量部に、5’−ヌクレオチド含有酵母エキス35〜100重量部、グルタチオン含有酵母エキス5〜30重量部、野菜エキス2〜20重量部、及び単糖類0.05〜0.6重量部を添加した水溶液又は水懸濁液を加熱処理することにより得られる調味料を、飲食品に対して0.01〜0.05重量%含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の野菜または果物の風味を増強する調味料、および野菜または果物の風味を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、果実飲料は広く普及しており、その中でも低果汁の清涼飲料は大きな市場がある。しかしながら、低果汁の清涼飲料は、果汁を希釈した飲料の為、高果汁飲料に比べると味が単調で、人工的な風味をもつという欠点がある。
【0003】
そこで、低果汁飲料に対して、高果汁飲料のような風味を付与することができる素材が検討されてきた。
例えば、果実に含まれる渋味成分であるビセリン−2(例えば特許文献1)、ヘスペリジン配糖体またはヘスペリジン配糖体とヘスペリジンとの混合物(例えば特許文献2)、あるいはα−結合ガラクトオリゴ糖(例えば特許文献3)が、報告されている。
【0004】
また、特許文献4には、乳清を乳酸菌および酵母により発酵した乳清発酵液を添加すると果実飲料の果汁感が増すと報告されている。これは製法がやや煩雑であり、乳清発酵液は液体のまま用いられるものである。
【0005】
【特許文献1】特開2006−238829号公報
【特許文献2】特開平11−318379号公報
【特許文献3】特開2003−250486号公報
【特許文献4】特開平7−75521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、比較的容易な方法で得られる調味料であって、粉末調味料として飲食物に用いることができ、野菜または果物の風味を増強することができる調味料、およびその使用方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題の解決につき鋭意研究の結果、粉末調味料を用いながら野菜または果物の風味を増強する方法を見いだし、本発明を完成した。すなわち本発明は、
(1)水100重量部に、5’−ヌクレオチド含有酵母エキス35〜100重量部、グルタチオン含有酵母エキス5〜30重量部、野菜エキス2〜20重量部、及び単糖類0.05〜0.6重量部を添加した水溶液又は水懸濁液を加熱処理することにより得られる、野菜・果物風味を増強する調味料、
(2)上記(1)記載の調味料を食品に対して0.01〜0.05重量%含有させることを特徴とする、野菜・果物風味の増強方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、比較的容易な方法で得られる調味料であって、粉末調味料として飲食品に用いることができ、飲食品の素材である野菜または果物の風味を増強することができる調味料、およびその使用方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、5’−ヌクレオチド含有酵母エキス、グルタチオン含有酵母エキス、野菜エキス、及び単糖類を含有した水溶液又は水懸濁液を加熱処理するものである。
【0010】
本発明で用いられる5’−ヌクレオチド含有酵母エキスは、酵母を温熱水で抽出した抽出物、あるいは酵母にタンパク質分解酵素、細胞壁溶解酵素などを添加して得られた抽出物を、核酸分解酵素、必要に応じてアデニル酸分解酵素を作用させることにより得られる、5’−ヌクレオチド類、具体的には5’−イノシン酸ナトリウム、5’−グアニル酸ナトリウム、5’−ウリジル酸ナトリウム、5’−シチジル酸ナトリウム、5’−アデニル酸ナトリウム、を含有したもので、これら5’−ヌクレオチド類を合計で4重量%以上、好ましくは20重量%以上含有したものが望ましい。
【0011】
本発明で用いられるグルタチオン含有酵母エキスは、グルタチオン含有酵母を、温熱水で抽出する方法、タンパク質分解酵素、細胞壁溶解酵素などを添加して抽出する方法、酵母中の酵素を利用して自己消化により抽出する方法、等で得られる、グルタチオンを1重量%以上、好ましくは3重量%以上含有したものである。
【0012】
これら酵母エキスに用いられる酵母としては、食品あるいは食品添加物として用いられる酵母で、例えばパン酵母、ビール酵母、トルラ酵母などを挙げることができ、中でもトルラ酵母が好ましい。
【0013】
本発明で用いられる野菜エキスは、野菜から得られたエキスで、例えば、キャベツエキス、オニオンエキス、にんじんエキス、セロリエキス、ほうれん草エキスあるいはこれらの混合物等を例示することができるが、中でもオニオンエキスが特に好ましい。
【0014】
本発明で用いられる単糖類としては、還元性単糖類が好ましく、例えばキシロース、リボース、グルコース、フルクトース、アラビノース等を例示することができる。これらを単独で用いても2種以上を併せて用いてもよい。また、このような単糖類を含有する液糖を用いることもできる。
【0015】
調味料は、5’−ヌクレオチド含有酵母エキス、グルタチオン含有酵母エキス、野菜エキス、単糖類を混合、溶解した水溶液又は水懸濁液を加熱することにより製造される。
本発明において、他の成分として、食塩等無機塩類やデキストリンも添加することもできる。
【0016】
加熱反応は、水に各成分を添加し、70〜150℃、好ましくは90〜120℃、10分から2時間程度で十分である。加熱反応は密封系で実施することが望ましい。
各成分の添加量は任意であるが、水100重量部に対して、5’−ヌクレオチド含有酵母エキス35〜100重量部、グルタチオン含有酵母エキス5〜30重量部、野菜エキス2〜20重量部、単糖類0.05〜0.6重量部とする。単糖類がこれより多いと、すっきりした風味や素材を引き立てる効果が落ちる。
【0017】
加熱反応終了後、乾燥、例えばスプレードライヤー等で、粉末状として容易に取得することができる。なお、乾燥時に食塩、デキストリン等を添加して乾燥することができる。あるいはそのまま濃縮してペースト状とすることができる。
【0018】
本発明で得られる調味料は、広い分野に応用でき、特に清涼飲料、野菜・果汁飲料、ドレッシング、和洋菓子、その他広範な食品に用いることで、素材である野菜・果物の風味を増強させる効果がある。
添加量については、特に制限はなく、食品の種類等によっても異なるが、概ね食品に対して0.01〜0.05重量%程度添加することが望ましい。
【実施例】
【0019】
以下、実施例で、本発明を具体的に説明する。
実施例1
5'−ヌクレオチド含有酵母エキス(興人製、酵母エキスアロマイルド、5'−ヌクレオチド含有量36%)18重量部、グルタチオン含有酵母エキス(興人製、酵母エキスアロマイルドU−15、グルタチオン含有量15%)7重量部、アスコルビン酸0.2重量部、キシロース0.2重量部、オニオンパウダー2重量部、ガーリックパウダー0.6重量部、食塩4重量部、デキストリン32重量部を水36重量部に溶解し、95℃、40分加熱反応した。反応終了後、反応液をスプレードライヤーにて乾燥し、調味料を得た。
【0020】
比較例1
5'−ヌクレオチド含有酵母エキス(興人製、酵母エキスアロマイルド、5'−ヌクレオチド含有量36%)18重量部、グルタチオン含有酵母エキス(興人製、酵母エキスアロマイルドU−15、グルタチオン含有量15%)7重量部、アスコルビン酸0.2重量部、キシロース1.2重量部、オニオンパウダー2重量部、ガーリックパウダー0.6重量部、食塩4重量部、デキストリン32重量部を水35量部に溶解し、95℃、40分加熱反応した。反応終了後、反応液をスプレードライヤーにて乾燥し、調味料を得た。
【0021】
評価例1
レモンエード(フジスコ株式会社製)を蒸留水で5倍に希釈した清涼飲料に、実施例1、比較例1で得られた粉末状の調味料が喫飲時0.05%になるよう添加し、官能試験を行った。
【0022】
評価例1の官能試験は、パネラー10名を用い、対照区(調味料無添加)と比較して評価項目に対してそれぞれ下記の5段階数値で答えさせ、その平均値を表1に示した。
評価項目・・・(ア)レモンの風味
+2:対照区よりかなり強く感じる
+1:対照区よりやや強く感じる
0:対照区とほぼ同等に感じる
−1:対照区よりやや弱く感じる
−2:対照区よりかなり弱く感じる
評価項目・・・(イ)飲みやすさ
+2:対照区よりかなり飲みやすいと感じる
+1:対照区よりやや飲みやすいと感じる
0:対照区とほぼ同等に感じる
−1:対照区よりやや飲みにくいと感じる
−2:対照区よりかなり飲みにくいと感じる
評価項目・・・(ウ)清涼感
+2:対照区よりかなり良いと感じる
+1:対照区よりやや良いと感じる
0:対照区とほぼ同等だと感じる
−1:対照区よりやや悪いと感じる
−2:対照区よりかなり悪いと感じる
【0023】
【表1】

【0024】
評価例2
トマトジュース(カゴメ株式会社製)に、実施例1、比較例1で得られた粉末状の調味料が喫飲時0.05%になるよう添加し、官能試験を行った。
【0025】
評価例2の官能試験は、パネラー10名を用い、対照区(調味料無添加)と比較して評価項目に対してそれぞれ下記の5段階数値で答えさせ、その平均値を表2に示した。
評価項目・・・(ア)トマトの風味
+2:対照区よりかなり強く感じる
+1:対照区よりやや強く感じる
0:対照区とほぼ同等に感じる
−1:対照区よりやや弱く感じる
−2:対照区よりかなり弱く感じる
評価項目・・・(イ)飲みやすさ
+2:対照区よりかなり飲みやすいと感じる
+1:対照区よりやや飲みやすいと感じる
0:対照区とほぼ同等に感じる
−1:対照区よりやや飲みにくいと感じる
−2:対照区よりかなり飲みにくいと感じる
【0026】
【表2】

【0027】
表1、表2に示したとおり、実施例1の調味料を添加した飲料は、素材の野菜・果物の風味が引き立ち、かつ飲みやすいものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上説明してきたように、本発明の調味料は、粉末調味料として食品に用いることができ、その素材風味を増強することができる。本発明で得られる調味料は、広い分野に応用でき、特に清涼飲料、野菜・果汁飲料、ドレッシング、和洋菓子、その他広範な食品に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水100重量部に、5’−ヌクレオチド含有酵母エキス35〜100重量部、グルタチオン含有酵母エキス5〜30重量部、野菜エキス2〜20重量部、及び単糖類0.05〜0.6重量部を添加した水溶液又は水懸濁液を加熱処理することにより得られる、野菜・果物風味を増強する調味料。
【請求項2】
請求項1記載の調味料を食品に対して0.01〜0.05重量%含有させることを特徴とする、野菜・果物風味の増強方法。

【公開番号】特開2010−68726(P2010−68726A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237249(P2008−237249)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】