説明

野菜又は果実の鮮度保持方法

【課題】 野菜又は果実を摂取した人の健康被害を防ぐとともに、野菜又は果実の鮮度保持期間をより延ばすことができる野菜又は果実の鮮度保持方法を提供する
【解決手段】 野菜又は果実を水洗いし、この水洗いした野菜又は果実を、焼成カルシウムの水溶液である保鮮処理液中に分間浸漬し、野菜又は果実の表面菌を除去すると共に野菜又は果実自体のアク成分が抜けやすい状態にする。次に、保鮮処理液に浸漬している野菜又は果実を取り出して水等で洗浄し、野菜又は果実表面に付着した保鮮処理液を除去する。次に、野菜又は果実をカットし、アク抜き用液に浸漬する。そして、カット野菜又は果実のアク成分が分解された後、カット野菜又は果実を水切りし、不透過性のある袋又は容器に収容する。このとき、この袋又は容器内に生鮮ガスを充填し、袋又は容器内の空気をガス置換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜又は果実の鮮度保持方法に関し、特に、未加工の野菜又は果実やカット野菜又は果実の鮮度保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットの生鮮食品売り場等を訪れると、野菜、果実、肉、魚介類等の各種生鮮食品が店頭に並んでいる。これらの生鮮食品のうち、野菜又は果実は、その野菜又は果実を丸ごとパッケージしたものや、廃棄する部分をあらかじめ除去・洗浄し刻んで可食部のみとしたカット野菜又はカット果実等のかたちで販売されている。
これらの野菜又は果実は、冷凍保存が困難であるという理由もあって、棚に陳列して数日間経過すると鮮度が落ちて、野菜又は果実本来の美味しさを失ったり、変色したりするという問題が常につきまとう。特に、カット野菜又はカット果実は、その切り口が変色しやすく、丸ごとの未加工の野菜又は果実よりも早く傷んでしまう。
【0003】
このような野菜又は果実特有の問題を解決するために、従来は、野菜又は果実を保鮮液に浸漬したり、保鮮ガスとともに包装し保冷したりして、鮮度を保つようにしている。
【0004】
このような野菜や果実等の保鮮方法の1つとしては、特許文献1が開示するところのカット野菜の鮮度保持方法が提案されている。
この特許文献1における鮮度保持方法は、カット野菜を保鮮用の塩化カルシウム溶液に浸漬し、所定時間後取り出し、炭酸ガスや窒素ガス等を混合した保鮮ガスとともにラップ包装し、保冷保存することにより、カット野菜の鮮度を従来よりも長い期間保持できるようにするものである。
【特許文献1】特開平11−103
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、その特許文献1に開示されているカット野菜の鮮度保持方法には、以下のような2つの問題点がある。
1つ目は、この特許文献1の鮮度保持方法では、一旦カットした野菜に対して保鮮液で保鮮処理を施しているという点である。このため、保鮮液で保鮮処理を行っても、予定よりも野菜の傷みが進んでしまう可能性がある。
2つ目は、保鮮液として、塩化カルシウム溶液を用いているという点である。この保鮮液は天然由来のものではないため、食品である野菜に使用すると、人体の健康に何らかの影響が出る虞がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、野菜又は果実を摂取した人の健康被害を防ぐとともに、野菜又は果実の鮮度保持期間をより延ばすことができる野菜又は果実の鮮度保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、本発明は、野菜又は果実の鮮度を長期間保持させるための方法であって、野菜又は果実を天然由来の貝殻焼成カルシウム水溶液に浸漬する浸漬工程と、浸漬工程により浸漬した野菜又は果実を取り出し、野菜又は果実を丸ごと又は野菜又は果実をカットしたものを、保鮮用のガスとともに袋又は容器に密閉して収容する収容工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明によれば、その保鮮対象が葉菜である場合、貝殻焼成カルシウム水溶液の濃度を0.05〜0.15重量%とし、浸漬時の温度を0〜15℃とし、浸漬時間を5〜15分間とすることを特徴とする。
【0009】
また、本発明によれば、その保鮮対象が根菜である場合、貝殻焼成カルシウム水溶液の濃度を0.10〜0.15重量%とし、浸漬時の温度を0〜15℃とし、浸漬時間を10〜20分間とすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明によれば、その保鮮対象がイチゴである場合、貝殻焼成カルシウム水溶液の濃度を0.01〜0.05重量%とし、浸漬時の温度を15〜20℃とし、浸漬時間を0.5〜1分間とすることを特徴とする。
【0011】
また、本発明によれば、その保鮮対象がイチゴを除く果菜である場合、貝殻焼成カルシウム水溶液の濃度を0.05〜0.10重量%とし、浸漬時の温度を15〜25℃とし、浸漬時間を1〜5分間とすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明によれば、その保鮮対象が落葉性果樹の果実である場合、貝殻焼成カルシウム水溶液の濃度を0.15〜0.20重量%とし、浸漬時の温度を15〜20℃とし、浸漬時間を10〜15分間とすることを特徴とする。
【0013】
また、本発明によれば、その保鮮対象が熱帯果樹の果実である場合、貝殻焼成カルシウム水溶液の濃度を0.1〜0.15重量%とし、浸漬時の温度を15〜20℃とし、浸漬時間を10〜15分間とすることを特徴とする。
【0014】
また、本発明によれば、その貝殻焼成カルシウムの主成分は、酸化カルシウムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明における野菜又は果実の鮮度保持方法は、野菜又は果実を天然由来の貝殻焼成カルシウム水溶液に浸漬し、その浸漬工程により浸漬した野菜又は果実を取り出し、野菜又は果実を丸ごと又は野菜又は果実をカットしたものを、保鮮用のガスとともに袋又は容器に密閉して収容するので、その野菜又は果実を摂取する人の健康被害が発生することなく、野菜又は果実の鮮度を長期間保持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(1)カット野菜又は果実の鮮度保持方法
図1は、本発明の実施形態におけるカット野菜又は果実の鮮度保持方法の処理の流れを示すフローチャートである。
以下、この図に沿って、本実施形態におけるカット野菜又は果実の鮮度保持方法の処理について詳細に説明する。
なお、以下、本明細書における%表示は、特記しない限り、重量%を意味するものとする。
【0017】
まず、まだカットしていない野菜又は果実そのものを水洗いし、この水洗いした野菜又は果実を、焼成カルシウムの水溶液である保鮮処理液中に5分〜30分間浸漬し、野菜又は果実の表面菌を除去すると共に野菜又は果実自体のアク成分(シュウ酸、アルカロイド、タンニン等の健康に害を及ぼす成分)が抜けやすい状態にする(ステップS101)。
【0018】
次に、保鮮処理液に浸漬している野菜又は果実を取り出して水等で洗浄し、野菜又は果実表面に付着した保鮮処理液を除去する(ステップS102)。
なお、根菜(ゴボウ等)等の外表皮にある程度の厚みがあるような野菜又は果実の場合には、その外表皮を削ぎ落とし、除去する方法が好ましい。すなわち、これは、肉質をほとんど変質させることなく、軽い機械的外力により外表皮のみを除去し、野菜又は果実そのものをほとんどそのままに残すものである。
【0019】
次に、野菜又は果実を、野菜又は果実切断機で千切り、欄切り又は袈裟切り等でカットし(ステップS103)、このカットした野菜又は果実をアク抜き用液に浸漬する(ステップS104)。
このアク抜き用液は、pHを7以上に調整された水又は食塩水である。カット野菜又はカット果実をこのアク抜き用液に1分〜10分間程度浸漬することにより、野菜又は果実の肉質に変化を与えず、アクのみを分解することができる。
【0020】
そして、カット野菜又はカット果実のアク成分が分解された後、カット野菜又はカット果実を水切りし、自動包装機により不透過性のある袋又は容器に収容する。このとき、自動包装機は、この袋又は容器内に生鮮ガスを充填し、袋又は容器内の空気をガス置換する(ステップS105)。
このように、自動包装機は、不透過性の袋及び容器内にカット野菜又はカット果実を入れ、ガス置換作業を行うことにより酸素を遮断しゴボウの鮮度保持効果を高める働きをする。
なお、この保鮮ガスは、窒素ガス、炭酸ガス又はこれらの混合ガスであってもよい。
【0021】
以上のようにして、袋又は容器内に保鮮ガスとともに密閉して収容されたカット野菜又はカット果実は、通常のカット野菜又はカット果実と比較して長期間鮮度を保持することができる。使用時には、袋又は容器からカット野菜又はカット果実を取り出し、そのまま調理に使用することが出来る。
【0022】
(2)保鮮処理液の生成方法
なお、前述の保鮮処理液は、牡蠣、ホタテ又はホッキ貝等を1100℃以上の高温で焼成することにより得られる天然由来の焼成カルシウム(主成分は酸化カルシウム)を純水又は純水氷に溶解させたものである。この保鮮処理液は、pH12以上のアルカリ溶液であり、水の酸化還元電位を下げるので、この保鮮処理液に野菜又は果実等の食材を浸漬させることにより、食材を殺菌し、さらに酸化を抑えることにより食材の鮮度を長時間保つことができるようになっている。
その焼成カルシウムは、このように水溶液(保鮮処理液)にすることで安定させた状態で保存することができる。このとき、保鮮処理液の温度を5℃〜15℃で保存することにより、pH及び溶液の水温を安定させることができる。
【0023】
(3)保鮮処理液の使用条件
前述したように、野菜又は果実を、所定の水温・濃度の保鮮処理液に、所定時間浸漬することにより、野菜又は果実のアク成分を除去するとともに、殺菌し野菜又は果実の鮮度を長期間保持できるようになる。
以下、この野菜又は果実の保鮮処理を行うときの保鮮処理液の温度、濃度及び浸漬時間といった各条件を変えて、各野菜別(葉菜、根菜、果菜)又は果実別(落葉性果樹の果実、熱帯果樹の果実)にその保鮮効果の有無について示す。
【0024】
(a)葉菜(レタス又はホウレン草)
まず、処理対象を野菜の1種である葉菜とし、この葉菜を代表するものとしてレタス又はホウレン草をサンプルとして用いたときの保鮮効果の結果を示す。
【0025】
保鮮処理液の温度を10℃、浸漬時間を10分に固定し、保鮮処理液の濃度を変えたときのレタス又はホウレン草の保鮮効果の結果を以下の表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
表1に示すように、レタス又はホウレン草については、0.05〜0.15%の濃度の保鮮処理液に浸漬したとき、十分な鮮度の保持期間(7日間程度)が得られた。
【0028】
次に、保鮮処理液の温度を10℃、濃度を0.15%に固定し、浸漬時間を変えたときのレタス又はホウレン草の保鮮効果の結果を以下の表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
表2に示すように、レタス又はホウレン草については、保鮮処理液に5〜15分間浸漬したとき、特に、10分間浸漬したときに十分な鮮度の保持期間(7日間程度)が得られた。
【0031】
次に、保鮮処理液の濃度を0.15%、浸漬時間を10分に固定し、保鮮処理液の温度を変えたときのレタス又はホウレン草の保鮮効果の結果を以下の表3に示す。
【0032】
【表3】

【0033】
表3に示すように、レタス又はホウレン草については、0〜15℃の保鮮処理液に浸漬したときに十分な鮮度の保持期間(7日間程度)が得られた。
【0034】
(b)根菜(ゴボウ又はレンコン)
次に、処理対象を野菜の1種である根菜とし、この根菜を代表するものとしてゴボウ又はレンコンをサンプルとして用いたときの保鮮効果の結果を示す。
【0035】
保鮮処理液の温度を10℃、浸漬時間を20分に固定し、保鮮処理液の濃度を変えたときのゴボウ又はレンコンの保鮮効果の結果を以下の表4に示す。
【0036】
【表4】

【0037】
表4に示すように、ゴボウ又はレンコンについては、0.10〜0.15%の濃度の保鮮処理液に浸漬したとき、十分な鮮度の保持期間(7日間程度)が得られた。
【0038】
次に、保鮮処理液の温度を10℃、濃度を0.15%に固定し、浸漬時間を変えたときのゴボウ又はレンコンの保鮮効果の結果を以下の表5に示す。
【0039】
【表5】

【0040】
表5に示すように、ゴボウ又はレンコンについては、保鮮処理液に10〜20分間浸漬したときに十分な鮮度の保持期間(7日間程度)が得られた。
【0041】
次に、保鮮処理液の濃度を0.15%、浸漬時間を20分に固定し、保鮮処理液の温度を変えたときのゴボウ又はレンコンの保鮮効果の結果を以下の表6に示す。
【0042】
【表6】

【0043】
表6に示すように、ゴボウ又はレンコンについては、0〜15℃の保鮮処理液に浸漬したときに十分な鮮度の保持期間(7日間程度)が得られた。
【0044】
(c)果菜(ナス、キュウリ又はイチゴ)
次に、処理対象を野菜の1種である果菜とし、この果菜をイチゴとイチゴ以外のものに分けて、本実施形態における鮮度保持方法による保鮮効果について説明する。
【0045】
まず、その果菜のうちイチゴを処理対象のサンプルとしたときの保鮮効果の結果を示す。
【0046】
保鮮処理液の温度を20℃、浸漬時間を1分に固定し、保鮮処理液の濃度を変えたときのイチゴの保鮮効果の結果を以下の表7に示す。
【0047】
【表7】

【0048】
表7に示すように、イチゴについては、0.01〜0.05%の濃度の保鮮処理液に浸漬したとき、十分な鮮度の保持期間(14日間程度)が得られた。
【0049】
次に、保鮮処理液の温度を20℃、濃度を0.05%に固定し、浸漬時間を変えたときのイチゴの保鮮効果の結果を以下の表8に示す。
【0050】
【表8】

【0051】
表8に示すように、イチゴについては、保鮮処理液に0.5〜1分間浸漬したときに十分な鮮度の保持期間(14日間程度)が得られた。
【0052】
次に、保鮮処理液の濃度を0.05%、浸漬時間を1分に固定し、保鮮処理液の温度を変えたときのイチゴの保鮮効果の結果を以下の表9に示す。
【0053】
【表9】

【0054】
表9に示すように、イチゴについては、15〜25℃の保鮮処理液に浸漬したときに十分な鮮度の保持期間(14日間程度)が得られた。
【0055】
次に、イチゴ以外の果菜を代表するものとしてナス又はキュウリをあげ、このナス又はキュウリを処理対象のサンプルとしたときの保鮮効果の結果を示す。
【0056】
保鮮処理液の温度を20℃、浸漬時間を5分に固定し、保鮮処理液の濃度を変えたときのナス又はキュウリの保鮮効果の結果を以下の表10に示す。
【0057】
【表10】

【0058】
表10に示すように、ナス又はキュウリについては、0.05〜0.10%の濃度の保鮮処理液に浸漬したとき、十分な鮮度の保持期間(7日間程度)が得られた。
【0059】
次に、保鮮処理液の温度を20℃、濃度を0.10%に固定し、浸漬時間を変えたときのナス又はキュウリの保鮮効果の結果を以下の表11に示す。
【0060】
【表11】

【0061】
表11に示すように、ナス又はキュウリについては、保鮮処理液に1〜5分間浸漬したときに十分な鮮度の保持期間(7日間程度)が得られた。
【0062】
次に、保鮮処理液の濃度を0.10%、浸漬時間を3分に固定し、保鮮処理液の温度を変えたときのナス又はキュウリの保鮮効果の結果を以下の表12に示す。
【0063】
【表12】

【0064】
表12に示すように、ナス又はキュウリについては、15〜25℃の保鮮処理液に浸漬したときに十分な鮮度の保持期間(7日間程度)が得られた。
【0065】
(d)落葉性果実(柿又はナシ)
次に、処理対象を果実の1種である落葉性果樹の果実とし、この落葉性果実を代表するものとして柿又はナシをサンプルとして用いたときの保鮮効果の結果を示す。
【0066】
保鮮処理液の温度を20℃、浸漬時間を10分に固定し、保鮮処理液の濃度を変えたときの柿又はナシの保鮮効果の結果を以下の表13に示す。
【0067】
【表13】

【0068】
表13に示すように、柿又はナシについては、0.15〜0.2%の濃度の保鮮処理液に浸漬したとき、十分な鮮度の保持期間(7日間程度)が得られた。
【0069】
次に、保鮮処理液の温度を20℃、濃度を0.15%に固定し、浸漬時間を変えたときの柿又はナシの保鮮効果の結果を以下の表14に示す。
【0070】
【表14】

【0071】
表14に示すように、柿又はナシについては、保鮮処理液に10〜15分間浸漬したときに十分な鮮度の保持期間(7日間程度)が得られた。
【0072】
次に、保鮮処理液の濃度を0.05%、浸漬時間を10分に固定し、保鮮処理液の温度を変えたときの柿又はナシの保鮮効果の結果を以下の表15に示す。
【0073】
【表15】

【0074】
表15に示すように、柿又はナシについては、15〜25℃の保鮮処理液に浸漬したときに十分な鮮度の保持期間(7日間程度)が得られた。
【0075】
(e)熱帯果樹(アボカド)
次に、処理対象を果実の1種である熱帯果樹の果実とし、この熱帯果実を代表するものとしてアボカドをサンプルとして用いたときの保鮮効果の結果を示す。
【0076】
保鮮処理液の温度を20℃、浸漬時間を10分に固定し、保鮮処理液の濃度を変えたときのアボカドの保鮮効果の結果を以下の表16に示す。
【0077】
【表16】

【0078】
表16に示すように、アボカドについては、0.1〜0.15%の濃度の保鮮処理液に浸漬したとき、十分な鮮度の保持期間(21日間程度)が得られた。
【0079】
次に、保鮮処理液の温度を20℃、濃度を0.1%に固定し、浸漬時間を変えたときのアボカドの保鮮効果の結果を以下の表17に示す。
【0080】
【表17】

【0081】
表17に示すように、アボカドについては、保鮮処理液に10〜15分間浸漬したときに十分な鮮度の保持期間(21日間程度)が得られた。
【0082】
次に、保鮮処理液の濃度を0.1%、浸漬時間を10分に固定し、保鮮処理液の温度を変えたときのアボカドの保鮮効果の結果を以下の表18に示す。
【0083】
【表18】

【0084】
表18に示すように、アボカドについては、15〜25℃の保鮮処理液に浸漬したときに十分な鮮度の保持期間(21日間程度)が得られた。
なお、アボカドは、カットしたものを前述のように保鮮処理し、トレイ状の容器(好ましくは真空パック)に詰めて保存してもよいし、すりおろしてペースト状にしたものをチューブ状又はトレイ状の容器に詰めて保存するようにしてもよい。
【0085】
(4)実施形態のまとめ
以上説明したように、本実施の形態によれば、保鮮処理液に野菜又は果実を浸漬することにより、野菜又は果実からアク成分を除去するとともに、野菜又は果実を殺菌処理するので、野菜又は果実の色、見た目をきれいに仕上げ、味も引き立ち保存性を向上させることが可能となる。
また、その後、アク抜き用液に野菜又は果実を浸漬することにより、さらにアク成分を除去することができ、より良好な味の野菜又は果実が得られる。
【0086】
また、本実施の形態では、野菜又は果実のアク抜き及び殺菌処理を行う保鮮液として、天然の貝殻由来の貝殻焼成カルシウム水溶液を用いるので、人体に悪影響を与える可能性を大幅に減少させることが可能となる。
【0087】
また、本実施の形態によれば、野菜又は果実をカット加工する前に保鮮液に浸漬するので、カット後に浸漬する場合と比べて、その野菜又は果実の鮮度を長期間保持することが可能となる。
【0088】
なお、本実施の形態では、例としてカット野菜又は果実の鮮度保持方法について説明したが、保鮮処理液に浸漬した後、カットせずにそのまま処理を進めてもよいことは言うまでもない。
【0089】
また、本実施の形態における野菜又は果実の鮮度保持方法は、葉菜、根菜、果菜等のあらゆる野菜、又は落葉性果樹、柑橘類、常緑性果樹(柑橘類を除く)、熱帯果樹等のあらゆる果実に適用可能である。
例えば、葉菜としては、レタス、サニーレタス、ホウレン草、キャベツ、小松菜、高菜、チンゲン菜、白菜、ニラ、長ネギ、アスパラ、ブロッコリー、カリフラワー、もやし等が適用可能である。
また、根菜としては、ゴボウ、レンコン、玉ネギ、ニンジン、大根、かぶ、じゃがいも、サトイモ、さつまいも、山芋、やまといも等が適用可能である。
また、果菜としては、ナス、キュウリ、トマト、かぼちゃ、ピーマン、とうもろこし、おくら、いんげん、パプリカ、イチゴ、メロン等が適用可能である。
また、落葉性果樹の果実としては、ナシ、柿、イチジク、ブルーベリー、キウイフルーツ、ブドウ等が適用可能である。
また、柑橘類の果樹としては、オレンジ、グレープフルーツ、デコポン、ナツミカン、ハッサク、ポンカン、ミカン、レモン等が適用可能である。
また、常緑性果樹の果実としては、オリーブ等が適用可能である。
また、熱帯果樹の果実としては、アボカド、グアバ、ドラゴンフルーツ、ドリアン、パイナップル、パッションフルーツ、バナナ、パパイヤ、マンゴー等が適用可能である。
【0090】
なお、上記の実施形態は本発明の好適な実施の一例であり、本発明の実施例は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能となる。
【実施例1】
【0091】
次に、前述の野菜又は果実の鮮度保持方法を具体的に用いたときの実施例について説明する。
まず、実施例1では、一例として、根菜の一種であるゴボウに対して鮮度保持処理を行う。
【0092】
まず、純粋10リットルに天然由来の貝殻焼成カルシウムを15g(0.15%)を入れて混合し、水温約10℃、pH12以上の保鮮処理液を生成する。焼成カルシウムが完全に溶解し、反応が収まるまで、5分〜10分間程度静置する。
【0093】
次に、水洗浄したゴボウを保鮮処理液中に20分浸漬し、一般性菌、大腸菌郡、大腸菌を除去する。そして、除菌処理をしたゴボウを保鮮処理液から取り出し、ゴボウ表面に付着した保鮮処理液が乾燥するまで約10分自然放置後、軽い機械的外力により外表皮を除去し、袈裟切りにする。
次に、この袈裟切りにしたゴボウをアク抜き用液中に1分〜5分間程度浸漬して表面及び切断面よりアク成分を除去した後に水切りする。そして、この水切りしたゴボウを保鮮ガスとともに不透過性の袋又は容器に密閉して収容する。
【0094】
以上説明したように、本実施例では、純水に天然由来の貝殻焼成カルシウムを加えて保鮮処理液を生成し、この保鮮処理液中に、ゴボウを浸漬し殺菌及びアク抜きし、ゴボウをそのまま調理できる状態に切断して、不透過性の袋等に保鮮ガスを充填して収容することにより、人体に悪影響を与えることなく、食材の鮮度を長時間保つことができるようになった。
このとき、保鮮ガスとして、窒素ガス、炭酸ガス又はこれらの混合ガスを用いることにより、次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合のように人体に有害な塩素ガスを発生させることもなく、鮮度保持も出来、健康面で安全なゴボウを提供することが可能となった。
【0095】
また、保鮮ガスで処理することにより、単に袋等で包装したときに比べて、ゴボウを白色に脱色することができた。
【0096】
また、本実施例では、天然由来の貝殻を高温で燃焼させて生成した貝殻焼成カルシウムから保鮮処理液を生成したので、野菜又は果実摂取時の健康被害を防ぐことが可能となった。
【実施例2】
【0097】
次に、実施例2では、一例として、葉菜の一種であるレタス(サニーレタス)に対して鮮度保持処理を行う。
【0098】
まず、純粋10リットルに天然由来の貝殻焼成カルシウムを15g(0.15%)を入れて混合し、水温約10℃、pH12以上の保鮮処理液を生成する。焼成カルシウムが完全に溶解し、反応が収まるまで、5分〜10分間程度静置する。
【0099】
次に、水洗浄したレタスを丸ごと保鮮処理液中に5分〜10分浸漬し、一般性菌、大腸菌郡、大腸菌を除去する。
次に、除菌処理をしたレタスを保鮮処理液から取り出し、レタス表面に付着した保鮮処理液が乾燥するまで約10分自然放置後、水(好ましくは電解水)で洗い流す。
そして、この水洗いしたレタスを目的に応じてカットし、保鮮ガスとともに不透過性の袋又は容器に密閉して収容する。
【0100】
以上説明したように、本実施例では、純水に天然由来の貝殻焼成カルシウムを加えて保鮮処理液を生成し、この保鮮処理液中に、レタスを浸漬し殺菌及びアク抜きし、レタスをそのまま調理できる状態に切断して、不透過性の袋等に保鮮ガスを充填して収容することにより、人体に悪影響を与えることなく、食材の鮮度を長時間保つことができるようになった。
このとき、保鮮ガスとして、窒素ガス、炭酸ガス又はこれらの混合ガスを用いることにより、次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合のように人体に有害な塩素ガスを発生させることもなく、鮮度保持も出来、健康面で安全なレタスを提供することが可能となった。
【0101】
また、本実施例では、天然由来の貝殻を高温で燃焼させて生成した貝殻焼成カルシウムから保鮮処理液を生成したので、野菜又は果実摂取時の健康被害を防ぐことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施形態におけるカット野菜又は果実の鮮度保持方法の処理の流れを示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜又は果実の鮮度を長期間保持させるための方法であって、
野菜又は果実を天然由来の貝殻焼成カルシウム水溶液に浸漬する浸漬工程と、
前記浸漬工程により浸漬した野菜又は果実を取り出し、該野菜又は果実を丸ごと又は該野菜又は果実をカットしたものを、保鮮用のガスとともに袋又は容器に密閉して収容する収容工程と、
を有することを特徴とする野菜又は果実の鮮度保持方法。
【請求項2】
保鮮対象が葉菜である場合、
前記貝殻焼成カルシウム水溶液の濃度を0.05〜0.15重量%とし、浸漬時の温度を0〜15℃とし、浸漬時間を5〜15分間とすることを特徴とする請求項1記載の野菜又は果実の鮮度保持方法。
【請求項3】
保鮮対象が根菜である場合、
前記貝殻焼成カルシウム水溶液の濃度を0.10〜0.15重量%とし、浸漬時の温度を0〜15℃とし、浸漬時間を10〜20分間とすることを特徴とする請求項1記載の野菜又は果実の鮮度保持方法。
【請求項4】
保鮮対象がイチゴである場合、
前記貝殻焼成カルシウム水溶液の濃度を0.01〜0.05重量%とし、浸漬時の温度を15〜20℃とし、浸漬時間を0.5〜1分間とすることを特徴とする請求項1記載の野菜又は果実の鮮度保持方法。
【請求項5】
保鮮対象がイチゴを除く果菜である場合、
前記貝殻焼成カルシウム水溶液の濃度を0.05〜0.10重量%とし、浸漬時の温度を15〜25℃とし、浸漬時間を1〜5分間とすることを特徴とする請求項1記載の野菜又は果実の鮮度保持方法。
【請求項6】
保鮮対象が落葉性果樹の果実である場合、
前記貝殻焼成カルシウム水溶液の濃度を0.15〜0.20重量%とし、浸漬時の温度を15〜20℃とし、浸漬時間を10〜15分間とすることを特徴とする請求項1記載の野菜又は果実の鮮度保持方法。
【請求項7】
保鮮対象が熱帯果樹の果実である場合、
前記貝殻焼成カルシウム水溶液の濃度を0.1〜0.15重量%とし、浸漬時の温度を15〜20℃とし、浸漬時間を10〜15分間とすることを特徴とする請求項1記載の野菜又は果実の鮮度保持方法。
【請求項8】
前記貝殻焼成カルシウムの主成分は、酸化カルシウムであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の野菜又は果実の鮮度保持方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−35854(P2008−35854A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325488(P2006−325488)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(504050655)
【出願人】(506243367)
【Fターム(参考)】