説明

野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物及び鮮度維持・鮮度回復方法

【課題】鮮度に問題が生じた野菜類及び果実類の鮮度を再び回復させ、維持することができる野菜類及び果実類用鮮度回復剤組成物及び野菜類及び果実類用鮮度回復方法を提供する。
【解決手段】野菜類及び果実類用鮮度回復剤組成物は、焼成コーラルサンドと焼成ドロマイトとを含有する。この野菜類及び果実類用鮮度回復剤組成物を用いた野菜類及び果実類の鮮度回復方法は、5〜30℃の水に野菜類及び果実類用鮮度回復剤組成物を投入し混合することにより、pH12.0以上の野菜類及び果実類用鮮度回復処理液を調整し、その処理液に野菜類及び果実類を接触させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物及びそれを用いた野菜類及び果実類の鮮度維持・鮮度回復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国民生活のあらゆる場面において、国民全般の健康、安全志向の高まりに伴い、各種生鮮食品の鮮度や安全性に注目が集まっており、中でも、野菜類や果実類の鮮度や安全性に消費者はいっそう敏感となっている。このため、一般小売店、量販店、仲卸業者、外食、中食業者では、野菜類や果実類の安全性の確保と鮮度維持のために、野菜類や果実類の表面の残留農薬や雑菌を除くべく、店頭に陳列する前に予めそれらを水道水や次亜塩素酸ナトリウム水溶液で洗浄したり、雑菌類の繁殖を抑制し、野菜類や果実類の乾燥を抑制するためにショーケースで冷蔵しながらそれらを陳列したり、更には営業時間後、翌日の営業開始時間まで大きな保冷庫にそれらを保存したりすることを行っている。
【0003】
しかし、野菜類や果実類を単純に水道水で洗浄しただけでは、冷蔵ショーケースや保冷庫を使用したとしても、それらが、例えばレタス、ホウレン草、メロン、ブドウ、ブラックベリー等が、乾燥や雑菌の繁殖等により鮮度が期待したよりも早く劣化しまうという問題があった。また、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用した場合、次亜塩素酸ナトリウム自体に毒性があるため、洗浄処理の際に人体に対する悪影響が懸念されるのみならず、除菌・抗菌効果が十分とはいえず、更に、洗浄した野菜類や果実類にそれらの美味しさを損なう次亜塩素酸臭が残存することが懸念される。
【0004】
このような問題を解決する方法の一つとして、貝殻や珊瑚等に由来する焼成カルシウム、多価アルコール、多価アルコール脂肪酸エステル及びエチルアルコールを含有する食品用殺菌剤を水に混合して得たアルカリ性処理液に、野菜類を浸漬することが提案されている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−272434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、生鮮食品を扱う一般小売店及び量販店等において、特許文献1の技術を野菜類や果実類に適用してその鮮度保持を行う場合には、鮮度保持期間をできるだけ伸長させるために、鮮度のよい野菜類や果実類を使用することが前提となっている。一方、このような鮮度保持処理の実施の有無に拘わらず、鮮度の落ちた野菜類や果実類は、一般小売店、量販店及び外食、中食など業務用使用に納入される前の段階で廃棄処分されているのが現状である。従って、良好な鮮度の野菜類や果実類については、その鮮度をより長く保持できるようにし、且つ鮮度に問題が生じた野菜類や果実類については、鮮度を再び回復させることが求められている。
【0007】
本発明は、以上の従来の技術の課題を解決しようとするものであり、野菜類及び果実類の鮮度を保持することができ、しかも鮮度に問題が生じた野菜類及び果実類の鮮度を再び回復させ維持することができる野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物及び鮮度維持・鮮度回復方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、粉末状の焼成コーラルサンドと焼成ドロマイトとを含有する組成物を水に混合して得たアルカリ性の処理液に、良好な鮮度を維持させたい野菜類や果実類を、あるいは鮮度の落ちた野菜類及び果実類を接触させることにより、良好な鮮度の野菜類及び果実類の鮮度を維持でき、また鮮度が落ちた野菜類及び果実類の鮮度を回復させ維持できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、焼成コーラルサンドと焼成ドロマイトとを含有する野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、上述の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物を、5〜30℃の水に投入し混合することにより、pH12.0以上の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復処理液を調整し、その鮮度維持・鮮度回復処理液に野菜類もしくは果実類を接触させることを特徴とする野菜類及び果実類の鮮度維持・鮮度回復方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物は、焼成コーラルサンドと焼成ドロマイトとを含有しているので、それを用いて得た野菜類及び果実類の鮮度維持・鮮度回復処理液に、新鮮な野菜類や果実類を接触(例えば、浸漬、噴霧)させることにより、良好な鮮度を維持することができ、また、鮮度に問題が生じた野菜類や果実類を接触(浸漬、噴霧)させることにより、野菜類や果実類の劣化した鮮度を再び回復させ維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の野菜類及び果実類用鮮度持・鮮度回復剤組成物は、焼成コーラルサンドと焼成ドロマイトとを含有する。この組成物の水溶液で野菜類及び果実類の鮮度維持・鮮度回復が可能となる理由は、この組成物の水溶液が強アルカリ性であるため野菜類及び果実類の表面の雑菌に対し除菌、抗菌効果を示し、表面の灰汁成分(シュウ酸、アルカロイド、タンニン等)を溶出除去することができ、また、この組成物の水溶液の酸化還元電位が低下するので野菜類及び果実類の酸化が抑制されると考えられるからである。それに加えて、野菜類及び果実類の細胞にカルシウムやマグネシウムが補給されるためであると考えられる。
【0013】
本発明において使用する焼成コーラルサンドとは、沖縄本島周辺海域で採取された風化造礁珊瑚の焼成物であり、酸化カルシウムを50〜92質量%含有するものである。焼成前の風化造礁珊瑚の含有元素は、例えば、以下の表1に示すものである(原子吸光分析、炎光光度法、重量法、ICP定量分析法、吸光光度法、イオンクロマトグラフ法、適定法等により測定可能)。












【0014】
【表1】

【0015】
なお、コーラルサンドの焼成は、通常、大気下、1300℃以下で12時間以下という条件で行う。なお、焼成温度が低すぎる場合、pH値の維持特性が損なわれることが懸念され、温度が高すぎる場合には、製造コストが上がるばかりで、特性に反映されない。
【0016】
焼成コーラルサンドの形態は好ましくは粉状であり、その粒度が大きすぎると水への溶解速度が低くなるので、その平均粒径は好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0017】
本発明の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物における焼成コーラルサンドの配合量は、その水溶液を12.0以上のpH値に維持するという観点から、好ましくは5〜95質量%、より好ましくは10〜50質量%である。
【0018】
本発明において使用する焼成ドロマイトとは、沖縄県内で採掘された、主成分が石灰石(炭酸カルシウム)と菱苦土石(炭酸マグネシウム)との中間的な組成(Ca・Mg(Co))を持つ鉱物(苦灰石、白雲石と称される)の焼成物であり、酸化カルシウム48〜65質量%、酸化マグネシウム25〜34質量%を含有するものである。焼成前のドロマイトの含有元素は、例えば以下の表2に示すものである(原子吸光分析、炎光光度法、重量法、ICP定量分析法、吸光光度法、イオンクロマトグラフ法、適定法、ECD付ガスクロマトグラフ等により測定可能)。
【0019】
【表2】

【0020】
なお、ドロマイトの焼成温度は、通常、大気下、1300℃以下で12時間以下という条件で行う。なお、焼成温度が低すぎる場合、pH値の維持特性が損なわれることが懸念され、温度が高すぎる場合には、製造コストが上がるばかりで、特性に反映されない。
【0021】
焼成ドロマイトの形態は好ましくは粉状であり、その粒度が大きすぎると水への溶解速度が低くなるので、その平均粒径は好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0022】
本発明の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物における焼成ドロマイトの配合量は、その水溶液を12.0以上のpH値に維持するという観点から、好ましくは5〜95質量%、より好ましくは50〜90質量%である。
【0023】
本発明の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物は、上述した焼成コーラルサンドと焼成ドロマイトとを、所定の割合で、好ましくは粉状の状態で混合することにより、あるいは粗粒を混合した後に公知の粉砕装置等により粉砕混合することにより調製することができる。
【0024】
なお、本発明の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物で鮮度維持もしくは鮮度回復の対象となる野菜類及び果実類としては、キャベツ、白菜、レタス、サニーレタス、セロリ、小松菜、ホウレン草、ブロッコリー、カリフラワー、春菊、花菜(オータムポエムなど)等の葉菜類;蕪、大根、にんじん、ゴボウ等の根菜類;サツマイモ、ジャガイモ、とろろ芋等の芋類;ピーマン、ししとう、キュウリ、オクラ、メロン、イチゴ等の果菜類;枝豆、そら豆等の豆類を例示することができる。また、果実類としては、落葉性果樹に包含される仁果類(梨、リンゴ等)、核果類(杏、サクランボ、桃等)、その他(かき、ブドウ、ラズベリー等);常緑性果樹(除柑橘類)に包含されるビワ等;熱帯果樹に包含されるパパイヤ、マンゴ等が挙げられる。これらの中でも、特に顕著な効果が期待できるのは葉菜類(ホウレン草、キャベツ、レタス等)並びに果菜類(メロン、キュウリ、オクラ等)である。
【0025】
本発明の対象となるこれらの野菜類及び果実類は、ホール野菜やホール果実の状態でもよく、カット野菜やカット果実の状態でもよい。
【0026】
次に、本発明の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物を用いた野菜類及び果実類の鮮度維持・鮮度回復方法について説明する。
【0027】
先ず、本発明の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物を、水に対し投入し混合することにより、野菜類及び果実類の鮮度維持・鮮度回復処理液を調製する。
【0028】
水としては、水道水、飲料用地下水、イオン交換水などを使用することができる。また、使用する水の温度は5〜30℃、好ましくは5〜10℃のものを使用する。これは、水温が低すぎると冷却コストが過大となり、高すぎると野菜類や果実類の鮮度の劣化を促進させるおそれがあるからである。
【0029】
野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物の水への投入量は、得られるべき野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復処理液のpHが12.0以上となる量である。具体的には、水100質量部に対し野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物を、好ましくは0.05〜0.30質量部、より好ましくは0.15〜0.25質量部で投入する。これは、少なすぎるとpHを12.0以上にし難く、過剰に導入してもpHの上昇に寄与しないからである。
【0030】
前述したように、得られるべき野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復処理液のpHは、12.0以上であることが必要であり、好ましくはpH12.4以上である。pHが12.0以上でなければ、除菌力及び抗菌力を期待できないからである。なお、pHの上限は、水酸化カルシウムの飽和水溶液のpHとなるから約pH13.0が上限と推測できる。
【0031】
なお、この野菜類及び果実類用鮮度回復処理液のpHは、水へ投入混合後凡そ3分後にはpH12.0以上、好ましくは12.4以上となり、そのpHが少なくとも約72時間程度は持続する。
【0032】
次に、得られた野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復処理液に、野菜類や果実類(ホールのものでもカットされたものでもよい)を接触させる。これにより、野菜類及び果実類の表面の除菌、抗菌処理を行うことができ、接触させるべき野菜類や果実類がもともと良好な鮮度を有する場合、それらの鮮度を長く維持することができる。また、接触させるべき野菜類や果実類の鮮度が低下している場合には、野菜類や果実類の鮮度回復維持を実現することができる。ここで、接触の態様としては、例えば、浸漬、噴霧という態様が挙げられる。浸漬の時間は、野菜類や果実類の収穫後の経過時間と気候温度、汚れ具合、野菜類等の種類、野菜類等の脱水状況等で異なるが、通常15分以下である。また、噴霧の場合には、野菜類等の表面全体が野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復処理液で濡れるようにすることが必要であり、収穫時の切断面と表面全体に噴霧する。
【0033】
また、野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復処理液に、野菜類や果実類を接触させた後、必要に応じて清水でそれらを洗浄してもよい。
【0034】
なお、野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復処理液に野菜類や果実類を接触させることにより、副次的にカルシウムやマグネシウム等のミネラル分をそれらに供給することができ、その点で野菜類及び果実類のミネラル栄養価を向上させることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0036】
実施例1
図1の平均粒子径9.1μmの焼成コーラルサンド粉末(コーラルバイオテック社)と、図2の平均粒子径9.5μmの焼成ドロマイト(コーラルバイオテック社)とを10:90の質量比率で混合することにより、野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物を調製した。
【0037】
得られた野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物を20℃の水道水100リットル中に0.20質量%となるように投入し、羽根付攪拌機で撹拌し、野菜類及び果実類用鮮度回復処理液を得た。得られた処理液の5分後、24時間後、48時間後、72時間後のpHを、pH計(HM−30G、東亜ディーケーケー社)を用いて測定した。得られた結果を表3に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
表3の結果から、実施例1の野菜類及び果実類用鮮度回復剤組成物から調製した野菜類及び果実類用鮮度回復処理液は、調製直後からpHが12.4を超えており、しかも72時間経過してもそのpHが維持されており、殺菌効果が長期に持続するものであることがわかる。
【0040】
<細菌の消長試験>
実施例1の野菜類及び果実類用鮮度回復処理液及び滅菌精製水のそれぞれ(試験液)について、試験菌としての大腸菌(Escherichia Coli ATCC 43895(血清型O157:H7、ベロ毒素I型及びII型産出菌)の消長を以下に説明するように試験評価した。まず、試験菌を、NA培地(普通寒天培地(栄研化学)))で35℃、16〜20時間培養したものを滅菌生理食塩水に浮遊させ、菌数が約10/mlとなるように調製したものを菌液として使用した。この菌液1mlを、予め20℃に保温した処理液に混合し、20℃で20、30又は40分保存後に、その混合物1mlをSCDLP培地(日本製薬)で10倍に希釈した。得られた希釈液について、SA培地(標準寒天培地、栄研化学)を用いた混釈平板培養法(35℃、2日間培養)により生菌数を測定した。得られた結果を表4に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
表4から、本発明の野菜類及び果実類用鮮度回復剤組成物は、良好な滅菌・殺菌効果を有することが解る。
【0043】
<ホウレン草の鮮度回復試験>
収穫直後のホウレン草を、温度20℃の暗恒温槽に72時間放置し、その鮮度を低下させた(葉が萎びた状態)。鮮度が低下したホウレン草を、10℃の野菜類及び果実用用鮮度維持・鮮度回復処理液50リットルに10分間浸漬した後、処理液から引き上げ、別途収穫した直後のホウレン草と目視対比した。加えて、保冷庫(温度5℃)に入れ、鮮度の保持期間を評価した。対比は以下の評価基準で行った。また、対照例として、野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復処理液に代えて水道水を使用する以外は同様にホウレン草の鮮度回復試験を行った。得られた結果を表5に示す。
【0044】
○: 収穫直後の新鮮なホウレン草とほぼ同じ鮮度に回復し、その状態が6日間保持できた場合
△: 収穫直後の新鮮なホウレン草とほぼ同じ鮮度に回復したが、その状態が2日間しか保持できなかった場合
×: 収穫直後の新鮮なホウレン草とほぼ同じ鮮度に回復しなかった場合
【0045】
【表5】

【0046】
表5の結果から、実施例1で調製した野菜類及び果実類用鮮度回復処理液で処理したホウレン草は鮮度回復維持効果に優れていたことが解る。それに対し、対照例の場合には、鮮度回復維持効果が劣っていたことが解る。
【0047】
実施例2
収穫直後のレタスを、温度20℃の暗恒温槽に72時間放置し、その鮮度を低下させた(葉が萎びた状態)。鮮度が低下したレタスを、10℃の実施例1で調製した野菜類及び果実類用鮮度回復処理液50リットルに10分間浸漬した後、処理液から引き上げ、別途収穫した直後のレタスと目視対比した。加えて、保冷庫(温度5℃)に入れ、鮮度の保持期間を評価した。その結果、収穫直後の新鮮なレタスとほぼ同じ鮮度に回復し、その状態が6日間保持できた。
【0048】
また、野菜類及び果実類用鮮度回復処理前のレタスと処理後のレタスのカルシウム及びマグネシウムの含有量をICP発光分析装置(日本食品分析センター)を用いて測定した。その結果を表6に示す。
【0049】
【表6】

【0050】
表6から解るように、野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復処理によりカルシウムとマグネシウムがほぼ2倍に強化されたことがわかる。
【0051】
実施例3
収穫直後のマスクメロンを、温度20℃の暗恒温槽に72時間放置し、その鮮度を低下させた(圧力を掛けると収縮する状態)。鮮度が低下したマスクメロンを10℃の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復処理液50リットルに10分間浸漬した後、処理液から引き上げ、別途収穫した直後のマスクメロンと目視対比した。加えて、保冷庫(温度5℃)に入れ、鮮度の保持期間を評価した。その結果収穫直後の新鮮なマスクメロンとほぼ同じ鮮度と張りに回復し、その状態が10日間保持できた。
【0052】
実施例4
新鮮なレタスをカットしたものを、10℃に冷却された実施例1で調製した野菜類及び果実類用鮮度回復処理液に10分間浸漬し、保冷庫(温度5℃)に入れ、鮮度の保持期間を評価した。一定時間経過する毎に、新鮮な材料を用いて別途調製した直後のカットレタスと目視対比した。その結果、水道水に10分間浸漬したものが半日〜1日しか鮮度を保てなかったのに比べ、本実施例のカットレタスの鮮度は5日間保持できた。
【0053】
また、10℃に冷却された実施例1で調製した野菜類及び果実類用鮮度回復処理液に10分間浸漬した直後のカットレタスについて食品細菌検査を行った。その結果、一般生菌数は300CFU/g(食品衛生法準拠)であり、大腸菌群は陰性(食品衛生検査指針準拠)であり、大腸菌も陰性(食品衛生法、微生物検査必携準拠)であった。従って、本発明の野菜類及び果実類用鮮度回復処理液が非常に優れた殺菌、抗菌作用を有することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物は、焼成コーラルサンドと焼成ドロマイトとを含有している。このため、本発明の組成物を用いて得た野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復処理液は、野菜類や果実類の表面に対し、良好な除菌・抗菌効果を示す。従って、この野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復処理液に、鮮度に問題が生じた野菜類及び果実類と接触(浸漬、噴霧等)させることにより、野菜類及び果実類の劣化した鮮度を再び回復させ保持することができる。また、鮮度のよい野菜類及び果実類に接触させれば、鮮度をより長く維持することができる。よって、本発明は、野菜類及び果実類の鮮度維持、並びに鮮度回復とその維持に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例において使用した焼成コーラルサンドの粒径分布測定結果図である。
【図2】実施例において使用した焼成ドロマイトの粒径分布測定結果図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成コーラルサンドと焼成ドロマイトとを含有する野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物。
【請求項2】
焼成コーラルサンド5〜95質量%と焼成ドロマイト5〜95質量%とを含有する請求項1記載の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物。
【請求項3】
焼成コーラルサンドが、沖縄産コーラルサンド焼成物である請求項1又は2記載の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物。
【請求項4】
焼成ドロマイトが、沖縄産ドロマイト焼成物である請求項1又は2記載の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物。
【請求項5】
焼成コーラルサンド及び焼成ドロマイトの平均粒子径がそれぞれ20μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物。
【請求項6】
野菜類及び果実類が、葉菜類、根菜類、芋類、果菜類、豆類、落葉性果樹果実、常緑性果樹果実(除柑橘類)及び熱帯果樹果実から選択されるものである請求項1〜5のいずれかに記載の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復剤組成物を、5〜30℃の水に投入し混合することにより、pH12.0以上の野菜類及び果実類用鮮度維持・鮮度回復処理液を調整し、その鮮度維持・鮮度回復処理液に野菜類もしくは果実類を接触させることを特徴とする野菜類及び果実類の鮮度維持・鮮度回復方法。
【請求項8】
鮮度維持・鮮度回復処理液に野菜類もしくは果実類を接触させることで、野菜類及び果実類の表面の除菌、抗菌処理を行う野菜類及び果実類の鮮度維持・鮮度回復方法。

【図1】
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【図2】
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