金型セット、加工板の製造方法、及び、製品板の製造方法
【課題】プッシュバックされた多数のプリント回路板を含む実装用基板を製造する場合であっても、金型構造の複雑化、プレス圧力の増大、金型の耐久性の低下を生じることのない金型セット、これを用いた加工板の製造方法、及び製品板の製造方法を提供すること。
【解決手段】プッシュバック手段を分散して配置したN個1組の母板加工用金型からなる金型セットを用いて、同一のプリント配線母板に対し、プリント配線母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工及びプリント配線母板を反転方向送りしながらプレス加工を行うN回の反転方向プレス加工の合計2N回のプレス加工を行うことにより、プリント配線母板から、プッシュバックされたプリント回路板が枠部に仮止めされた実装用基板を製造する。
【解決手段】プッシュバック手段を分散して配置したN個1組の母板加工用金型からなる金型セットを用いて、同一のプリント配線母板に対し、プリント配線母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工及びプリント配線母板を反転方向送りしながらプレス加工を行うN回の反転方向プレス加工の合計2N回のプレス加工を行うことにより、プリント配線母板から、プッシュバックされたプリント回路板が枠部に仮止めされた実装用基板を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型セット、加工板の製造方法、及び、製品板の製造方法に関し、さらに詳しくは、プリント回路板がプッシュバック法により枠部に仮止めされた実装用基板などの各種加工板を製造するためのN個1組の母板加工用金型からなる金型セット、このような金型セットを用いた加工板の製造方法、及び、このような方法により得られる加工板から製品板(プリント回路板)を得る製品板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化に伴い、電子機器に用いられるプリント回路板に対しても小型化、異形化の要求が増大している。一方、プリント回路板に電子部品を装着するためのチップマウンターや自動挿入機などの電子部品自動装着機(以下、これを「自装機」という。)は、搬送の関係から、ワークの大きさに上限と下限がある。また、自装機に使用するワークの外形は、実質的に長方形であること、すなわち、少なくとも一つの辺が直線で、これに直交する辺の少なくとも1つが直線であることが要求される。
【0003】
そこで、小型、かつ異形のプリント回路板上に自装機を用いて電子部品を装着する場合には、まず、プリント配線母板に複数のプリント回路板を作り込み、Vカット法、プッシュバック法、ミシン目法等を用いて、プリント回路板がもとのプリント配線母板に仮止めされた状態とし、次いで、プリント配線母板の外形を自装機で搬送可能な大きさ、形状を有する基板(実装用基板)に切断する方法が用いられている。
【0004】
この内、Vカット法は、プリント配線母板上に印刷されたプリント回路の境界線に沿ってV字形、U字型等の凹溝(Vカット)を入れ、プリント回路上に電子部品を実装した後、Vカットに沿って破断させる方法である。従って、Vカット法は、その外形が直線的であるプリント回路板に対してのみ適用可能である。
また、ミシン目法は、プリント回路板の境界線に沿って、多数の小孔をあけ、小孔に沿って破断させる方法である。ミシン目法は、破断後の境界線に凹凸が残るので、外形の寸法精度が要求されないプリント回路板に対してのみ適用可能である。なお、ミシン目に代えて、プリント回路板の境界線に沿って不連続な長孔を離散的に形成し、幅の狭い連結部で枠部に仮止めする方法も知られている。
【0005】
一方、プッシュバック法は、上型及び下型でプリント配線母板を狭持しながら、所定の形状を有する刃物を用いてプリント回路板を打ち抜き、次いで、打ち抜かれたプリント回路板を元の穴にはめ込む方法である。プッシュバック法は、外形の寸法精度が高く、かつ、プリント回路板の形状に制約はないので、特に、異形のプリント回路板に電子部品を自動装着する場合に有効な方法である。
【0006】
プッシュバック法を用いたプリント配線母板の加工は、一般に、
(1) 電気回路が印刷されたプリント配線母板にプッシュバック用の基準穴を形成し、
(2) プッシュバック用金型を用いて、プリント回路板のプッシュバック加工、及び、必要に応じて部品穴等の穿孔を行い、
(3) 外形切断用金型を用いてプリント配線母板の外形を切断し、所定個数のプリント回路板を含む実装用基板を母板から切り出す、
ことにより行われている。
【0007】
しかしながら、プッシュバック加工は、一般に、プリント配線母板に強いせん断力が作用するため、反りが発生しやすい。プッシュバック加工と外形切断は、従来、別個の金型を用いて行うのが一般的であったが、母板に対してプッシュバック加工のみを連続して行うと母板に大きな反りが発生し、外形切断が困難になるという問題があった。また、プッシュバック加工用の金型と外形切断用の金型が必要となり、高コスト化を招くという問題があった。さらに、製造された実装用基板に反りが発生し、あるいは、相対的に大きな残留応力があると、枠部からプリント回路板を取り外すのが困難になるという問題があった。
【0008】
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、プリント配線母板の搬送方向に対して上流側に配置され、前記プリント配線母板からプリント回路板を打ち抜き、打ち抜かれた前記プリント回路板を元の穴にはめ込むためのプッシュバック手段と、前記プリント配線母板の搬送方向に対して下流側に配置され、プッシュバックされた1又は2以上の前記プリント回路板を含む実装用基板を前記プリント配線母板から切り出すための外形切断手段とを備えたプリント配線母板加工用金型が開示されている。
同文献には、プッシュバック手段によりプッシュバックされた領域が外形切断手段により逐次切り離されるので、プリント配線母板の反りの影響を大きく受けることなく容易に外形切断が行える点、及び、1つの金型でプッシュバック加工と外形切断加工とを行うことができるので、金型コストを低減できる点が記載されている。
【0009】
また、特許文献2には、プリント配線母板からプリント回路板を打ち抜き、打ち抜かれた前記プリント回路板を元の穴にはめ込むためのプッシュバック手段と、打ち抜かれた前記プリント回路板の少なくとも一方の側方に、前記プリント配線母板の搬送方向に対して平行な縦スリット素片を順次形成することによって、加工板の基準辺となる連続した縦スリットを形成するための縦スリット形成手段とを備えたプリント配線母板加工用金型が開示されている。
同文献には、
(1)プッシュバックされたプリント回路板の少なくとも一方の側方には、連続した縦スリットが形成されるので、従来の方法に比して、外形切断が簡略化される点、
(2)横スリット形成手段をさらに備えている場合には、プリント配線母板の搬送方向に並んだ各プリント回路板の間には、縦スリットと直交する不連続な横スリットが形成されるので、プッシュバック加工終了後に、所定の位置に形成された横スリットの連結部分を破断させるだけで、プッシュバックされた所定個数のプリント回路板を含む加工板が得られる点、及び、
(3)外形切断用の別個の金型又は外形切断工程が不要化又は簡略化されるので、金型コストを大幅に削減でき、作業性も向上する点、
が記載されている。
【0010】
さらに、特許文献3には、
(1)母板を順方向送りしたときに第1の製品板のプッシュバック加工を行い、かつ、母板を反転方向送りしたときに新たに第2の製品板のプッシュバック加工を行うようにプッシュバック手段が設けられ、
(2)母板を順方向送りしたときに縦スリット素片が連通せず、かつ、母板を反転方向送りしたときに縦スリット素片が連通して連続した縦スリットとなるように縦スリット素片形成手段が設けられた母板加工用金型が開示されている。
同文献には、このような母板加工用金型を用いることにより、プレス能力の小さい小型のプレス機械を用いて、多数の製品板が組み込まれた大面積の加工板を製造することが可能となる点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−233996号公報
【特許文献2】特開2003−089097号公報
【特許文献3】特許第4341929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
実装用基板に組み込まれたプリント回路板に電子部品を自動実装する場合、実装用基板に組み込まれるプリント回路板の数が多くなるほど、実装効率は向上する。しかしながら、多数のプリント回路板が組み込まれた実装用基板を製造するためには、実装用基板内に多数のプリント回路板を作り込むことが可能な金型が必要になる。そのため、実装用基板に組み込まれるプリント回路板の数が多くなるほど、金型の構造が複雑化し、必要な部品点数も多くなるという問題がある。
また、実装用基板に組み込まれるプリント回路板の数が多くなるほど、実装用基板の面積が大きくなり、これに応じて金型も大型化する。そのため、加工に必要なプレス圧力も大きくなり、より大型のプレス機械が必要になるという問題がある。特に、プリント回路板のプッシュバック加工を行う際には、打ち抜かれたプリント回路板を元の穴にはめ戻すための弾性部材の付勢力に抗してプリント回路板の打ち抜きを行う必要があるため、プッシュバック加工が行なわれる面積が大きくなるほど、より大きなプレス機械が必要となる。
さらに、実装用基板に多数のプリント回路板を組み込むためには、それに応じて、金型内に種々の加工を施すための機構を組み込む必要がある。しかしながら、限られた領域内に多数の機構を組み込むと、金型の強度が低下し、耐久性が低下する場合がある。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、多数の製品板(例えば、プリント回路板)がプッシュバック加工さらた加工板(例えば、実装用基板)を製造する場合であっても、金型構造が複雑化したり、あるいは、必要な部品点数を増加させることのない金型セット、これを用いた加工板の製造方法、及び、このような加工板から製品板を製造する製品板の製造方法を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、多数の製品板がプッシュバック加工された加工板を製造する場合であっても、加工に必要なプレス圧力を増大させることのない金型セット、これを用いた加工板の製造方法、及び、このような加工板から製品板を製造する製品板の製造方法を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、多数の製品板がプッシュバック加工された加工板を製造することが可能であり、しかも耐久性に優れた金型セット、これを用いた加工板の製造方法、及び、このような加工板から製品板を製造する製品板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明に係る第1の金型セットは、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記金型セットは、N個(N≧2)の母板加工用金型からなり、前記各母板加工用金型を用いて同一の母板に対し、前記母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工及び前記母板を反転方向送りしながらプレス加工を行うN回の反転方向プレス加工の合計2N回のプレス加工を行うことにより、前記母板から、プッシュバックされた製品板が枠部に仮止めされた加工板を製造するために用いられる。
(2)N個の前記各母板加工用金型は、それぞれ、前記母板から前記製品板を打ち抜き、打ち抜かれた前記製品板を元の穴にはめ込むための少なくとも1個のプッシュバック手段を備え、
i番目(1≦i≦N)の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段は、j番目(1≦j≦N、j≠i)の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段によりプッシュバック加工される部分とは異なる部分において、前記母板から新たな前記製品板のプッシュバック加工を行うことができるように配置されている。
(3)i番目の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段は、それぞれ、
(a)前記母板を順方向送りした時に、前記加工板となる領域内の一部において第1の製品板のプッシュバックを行うことができ、かつ、
(b)前記母板を順方向送りした後、さらに前記母板を反転方向送りした時に、前記加工板となる領域内の前記第1の製品板とは異なる部分において新たに第2の製品板のプッシュバックを行うことができる
ように配置されている。
(4)前記金型セットは、N個の前記母板加工用金型のいずれか1以上に、
前記母板の少なくとも一方の側端部に、前記母板の搬送方向に対して平行な縦スリット素片を形成するための縦スリット素片形成手段、及び、
前記母板の搬送方向に対して垂直な横スリット素片を形成するための横スリット素片形成手段
の内の何れか一方を備えている。
(5)前記縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記縦スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して平行な辺となる連続した縦スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置され、
前記横スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記横スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して垂直な辺となる連続した横スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
【0015】
本発明に係る第1の加工板の製造方法は、本発明に係る第1の金型セットに備えられるN個の母板加工用金型を用いて同一の母板に対し、前記母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工及び前記母板を反転方向送りしながらプレス加工を行うN回の反転方向プレス加工の合計2N回のプレス加工を行うことにより、前記母板から、プッシュバックされた製品板が枠部に仮止めされた加工板を製造するプレス工程を備えている。
本発明に係る第1の製品板の製造方法は、本発明に係る第1の加工板の製造方法により得られた加工板から製品板を分離することを要旨とする。
【0016】
本発明に係る第2の金型セットは、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記金型セットは、N個(N≧2)の母板加工用金型からなり、前記各母板加工用金型を用いて同一の母板に対し、前記母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工を行うことにより、前記母板から、プッシュバックされた製品板が枠部に仮止めされた加工板を製造するために用いられる。
(2)N個の前記各母板加工用金型は、それぞれ、前記母板から前記製品板を打ち抜き、打ち抜かれた前記製品板を元の穴にはめ込むための少なくとも1個のプッシュバック手段を備え、
i番目(1≦i≦N)の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段は、j番目(1≦j≦N、j≠i)の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段によりプッシュバック加工される部分とは異なる部分において、前記母板から新たな前記製品板のプッシュバック加工を行うことができるように配置されている。
(3)前記金型セットは、N個の前記母板加工用金型のいずれか1以上に、
前記母板の少なくとも一方の側端部に、前記母板の搬送方向に対して平行な縦スリット素片を形成するための縦スリット素片形成手段、及び、
前記母板の搬送方向に対して垂直な横スリット素片を形成するための横スリット素片形成手段
の内の何れか一方を備えている。
(4)前記縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記縦スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して平行な辺となる連続した縦スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置され、
前記横スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記横スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して垂直な辺となる連続した横スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
【0017】
本発明に係る第2の加工板の製造方法は、本発明に係る第2の金型セットに備えられるN個の母板加工用金型を用いて同一の母板に対し、前記母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工を行うことにより、前記母板から、プッシュバックされた製品板が枠部に仮止めされた加工板を製造するプレス工程を備えている。
本発明に係る第2の製品板の製造方法は、本発明に係る第2の加工板の製造方法により得られた加工板から製品板を分離することを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
1個の加工板に作り込まれる製品板のプッシュバック加工を行うためのプッシュバック手段ををN個の母板加工用金型に分散して配置し、N回の順方向プレス加工により個々の製品板のプッシュバック加工を行わせると、1回のプレス加工によりすべての製品板のプッシュバック加工を行う場合に比べて、プレス圧力を約1/Nに下げることができる。
同様に、1個の加工板に作り込まれる製品板のプッシュバック加工を行うためのプッシュバック手段をN個の母板加工用金型に分散して配置し、N回の順方向プレス加工及びN回の反転方向プレス加工により個々の製品板のプッシュバック加工を行わせると、1回のプレス加工によりすべての製品板のプッシュバック加工を行う場合に比べて、プレス圧力を約1/2Nに下げることができる。そのため、母板の搬送に支障を来さない限りにおいて、プレス能力の制約を全く受けることなく、多数の製品板がプッシュバックされた極めて大型の加工板を製造することができる。
さらに、これと同時に、縦スリット素片形成手段及び/又は横スリット素片形成手段をN個の母板加工用金型に分散して配置すると、最終プレス加工が終了した時点で、加工板の搬送方向に対して平行な辺、及び/又は、垂直な辺も同時に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、それぞれ、本発明に係る金型セットの第1具体例を構成する第1母板加工用金型の下型の平面図、及び、第2母板加工用金型の下型の平面図である。
【図2】図1(a)に示す第1母板加工用金型を用いたプリント配線母板の順方向プレス加工の工程図である。
【図3】図2に示す工程図の続きである。
【図4】図1(a)に示す第1母板加工用金型を用いたプリント配線母板の反転方向プレス加工の工程図である。
【図5】図1(b)に示す第2母板加工用金型を用いたプリント配線母板の順方向プレス加工の工程図である。
【図6】図5に示す工程図の続きである。
【図7】図1(b)に示す第2母板加工用金型を用いたプリント配線母板の反転方向プレス加工の工程図である。
【0020】
【図8】図8(a)、図8(b)及び図8(c)は、それぞれ、本発明に係る金型セットの第2具体例を構成する第1母板加工用金型の下型の平面図、第2母板加工用金型の下型の平面図、及び、第3母板加工用金型の下型の平面図である。
【図9】図8(a)に示す第1母板加工用金型を用いたプリント配線母板の順方向プレス加工の工程図である。
【図10】図8(b)に示す第2母板加工用金型を用いたプリント配線母板の順方向プレス加工の工程図である。
【図11】図8(c)に示す第3母板加工用金型を用いたプリント配線母板の順方向プレス加工の工程図である。
【図12】図8(a)に示す第1母板加工用金型を用いたプリント配線母板の反転方向プレス加工の工程図である。
【図13】図8(b)に示す第2母板加工用金型を用いたプリント配線母板の反転方向プレス加工の工程図である。
【図14】図8(c)に示す第3母板加工用金型を用いたプリント配線母板の反転方向プレス加工の工程図である。
【0021】
【図15】図15(a)及び図15(b)は、それぞれ、本発明に係る金型セットの第3具体例を構成する第1母板加工用金型の下型の平面図、及び、第2母板加工用金型の下型の平面図である。
【図16】図15(a)に示す第1母板加工用金型を用いたプリント配線母板の順方向プレス加工の工程図である。
【図17】図15(a)に示す第1母板加工用金型を用いたプリント配線母板の反転方向プレス加工の工程図である。
【図18】図15(b)に示す第1母板加工用金型を用いたプリント配線母板の順方向プレス加工の工程図である。
【図19】図15(b)に示す第1母板加工用金型を用いたプリント配線母板の反転方向プレス加工の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、プリント配線母板からプリント回路板を含む実装用基板を製造するためのN個1組の母板加工用金型からなる金型セット、及び、このような金型セットを用いた実装用基板の製造方法について説明するが、本発明は、プリント配線母板以外の「母板」、実装用基板以外の「加工板」、プリント回路板以外の「製品板」についても適用することができる。
【0023】
[1. 金型セット(1)]
[1.1. 基本構成]
本発明の第1の実施の形態に係る金型セットは、以下の構成を備えたている。
[1.1.1. 金型の個数]
金型セットは、N個(N≧2)の母板加工用金型からなり、各母板加工用金型を用いて同一のプリント配線母板に対し、N回の順方向プレス加工及びN回の反転方向プレス加工の合計2N回のプレス加工を行うためのものである。2N回のプレス加工を行うことにより、プリント配線母板から実装用基板を製造することができる。
【0024】
母板加工用金型の個数Nは、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。一般に、母板加工用金型の個数Nが多くなるほど、金型制作費及び金型交換の工数は増大するが、複雑な加工を分散して行うことができるので、金型構造を単純化することができ、1プレス当たりのプレス圧力を下げることができる。
【0025】
「順方向プレス加工」とは、プリント配線母板をある1つの方向(順方向)に搬送しながらn回(n≧1)のプレス加工を行うことをいう。
「反転方向プレス加工」とは、プリント配線母板を順方向とは180°異なる方向(反転方向)に搬送しながらn'回(n'≧1)のプレス加工を行うことを言う。
「1回の順方向(又は、反転方向)プレス加工」とは、プリント配線母板を順方向(又は、反転方向)にステップ送りしながら複数回のプレスを行う場合には、順方向(又は、反転方向)にステップ送りしながら行う一連(複数回)のプレス加工をいう。プリント配線母板の大きさによっては、1回の順方向(又は、反転方向)プレス加工において、1回だけプレス加工が行われる場合もある。
【0026】
本発明に係る金型セットにより製造される実装用基板は、プッシュバックされたプリント回路板が枠部に仮止めされたものである。プリント配線母板から複数個の実装用基板が製造される場合、個々の実装用基板は、金型セットの構成(後述する縦スリット素片形成手段、横スリット素片形成手段及び中間縦スリット素片形成手段の長さや配置)に応じて互いに分離している場合と、いずれかの部分を介して連結している場合とがある。
金型セットにより製造された複数個の実装用基板がいずれかの部分を介して連結している場合、金型セットによる加工が終了した後、他の手段(例えば、汎用のシャーリング装置、切断専用のプレス金型など)を用いて連結部を切断すれば良い。
また、プリント配線母板から複数個の実装用基板が製造される場合において、金型セットの構成(後述する横スリット素片形成手段及び中間縦スリット素片形成手段の長さや配置)によっては、最終プレスが行われる前に個々の実装用基板が分離する場合がある。加工途中で個々の実装用基板が分離しても、順方向プレス及び反転方向プレスは可能であるので、本発明においては、最終プレス前に実装用基板が分離した場合であっても、便宜上、最終プレス前の実装用基板を「プリント配線母板」という。
【0027】
[1.1.2. プッシュバック手段]
N個の各母板加工用金型は、それぞれ、プリント配線母板からプリント回路板を打ち抜き、打ち抜かれたプリント回路板を元の穴にはめ込むための少なくとも1個のプッシュバック手段を備えている。すなわち、本発明に係る金型セットは、1個の実装用基板に作り込まれるプリント回路板のプッシュバック加工をN個の母板加工用金型に分散させて行わせている。この点が、従来の金型とは異なる。
そのため、i番目(1≦i≦N)の母板加工用金型に設けられたプッシュバック手段は、j番目(1≦j≦N、j≠i)の母板加工用金型に設けられたプッシュバック手段によりプッシュバック加工される部分とは異なる部分において、プリント配線母板から新たなプリント回路板のプッシュバック加工を行うことができるように配置される。
各プッシュバック手段は、各母板加工用金型で行われるプッシュバック加工の位置及び/又は大きさが異なるように配置されていれば良い。すなわち、各プッシュバック手段は、プリント配線母板の未加工部分(空白部分)において新たにプッシュバック加工するものでも良く、あるいは、他の金型でプッシュバック加工が行われた部分と同一ではないが、重なる部分においてプッシュバック加工するものでも良い。
【0028】
さらに、本実施の形態に係る金型セットは、各母板加工用金型毎に、それぞれ、1回の順方向プレス及び1回の反転方向プレスを行わせる。そのため、i番目の各母板加工用金型に設けられたプッシュバック手段は、それぞれ、
(a)プリント配線母板を順方向送りした時に、実装用基板となる領域内の一部において第1のプリント回路板のプッシュバックを行うことができ、かつ、
(b)プリント配線母板を順方向送りした後、さらにプリント配線母板を反転方向送りした時に、実装用基板となる領域内の第1のプリント回路板とは異なる部分において新たに第2のプリント回路板のプッシュバックを行うことができる
ように配置されている。
「異なる部分」とは、上述したように未加工部分(空白部分)又は同一ではないが、重なる部分をいう。
【0029】
[1.1.3. 縦スリット素片形成手段、横スリット素片形成手段]
本実施の形態に係る金型セットは、N個の母板加工用金型のいずれか1以上に、縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段の何れか一方、又は、双方を備えている。
「縦スリット素片形成手段」とは、プリント配線母板の少なくとも一方の側端部に、プリント配線母板の搬送方向に対して平行な縦スリット素片を形成するための手段をいう。縦スリット素片(又は、連続した縦スリット)は、プリント配線母板の片側にのみ形成しても良く、あるいは、両側に形成しても良い。
「横スリット素片形成手段」とは、プリント配線母板の搬送方向に対して垂直な横スリット素片を形成するための手段をいう。
【0030】
縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)を行うことにより縦スリット素片が互いに連通し、実装用基板の基準辺(搬送方向に対して平行な辺)となる連続した縦スリットとなるように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されている。
同様に、横スリット素片形成手段は、同一又は異なる母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)を行うことにより横スリット素片が互いに連通し、実装用基板の基準辺(搬送方向に対して垂直な辺)となる連続した横スリットとなるように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されている。
【0031】
プリント配線母板から、その搬送方向に沿って1列に並んだ複数個の実装用基板を切り出す場合において、N個の母板加工用金型のいずれか1以上に縦スリット素片形成手段のみが設けられているときには、複数個の実装用基板が搬送方向に対して垂直な辺を介して一体的に繋がった集合体(中間製品)が得られる。この場合、N回の順方向プレス加工及びN回の反転方向プレス加工が終了した後、連結部を他の手段で切断すれば良い。
また、N個の母板加工用金型のいずれか1以上に横スリット素片形成手段のみが設けられている場合において、これによって形成される連続した横スリットがプリント配線母板の両端に達しているときには、最後の順方向プレス加工又は反転方向プレス加工が行われる前に、実装用基板同士が分離する場合がある。このような場合であっても後続するプレス加工は可能である。しかしながら、最終プレス加工前のプリント配線母板の搬送を容易化するためには、連続した横スリットがプリント配線母板の両端に達しないように(すなわち、母板の側端部を介して各実装用基板が連結した状態となるように)、横スリット素片形成手段を配置するのが好ましい。横スリット素片形成手段のみを備えた金型セットを用いてプレス加工を行った場合、N回の順方向プレス加工及びN回の反転方向プレス加工が終了した後、実装用基板の搬送方向に対して平行な辺を他の手段で形成すれば良い。
【0032】
また、プリント配線母板から、その搬送方向に沿って1列に並んだ複数個の実装用基板を切り出す場合において、N個の母板加工用金型のいずれか1以上に、縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段の双方が設けられている場合、プリント配線母板の搬送を容易化するためには、最終プレスが行われる前は各実装用基板がいずれかの部分を介して一体的に繋がっており、かつ、最終プレスが行われるときに実装用基板がプリント配線母板から逐次切り離されるように、縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段を配置するのが好ましい。
すなわち、縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段は、
(a)(2N−1)回目のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)が終了した時点において、縦スリット素片及び横スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、プリント配線母板内にあるすべての実装用基板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)2N回目のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)時において、連通していなかった縦スリット素片及び/又は横スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した縦スリット及び/又は横スリットとなり、これによって一体的に連結していた実装用基板がプリント配線母板から逐次切り離される
ように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されているのが好ましい。
【0033】
[1.1.4. 中間縦スリット素片形成手段]
本実施の形態に係る金型セットは、N個の母板加工用金型のいずれか1以上に、縦スリット素片形成手段及び/又は横スリット素片形成手段に加えて、さらに中間縦スリット素片形成手段を備えていても良い。
「中間縦スリット素片形成手段」とは、プリント配線母板の中間部に、プリント配線母板の搬送方向に対して平行な中間縦スリット素片を形成するための手段をいう。「中間部」とは、必ずしもプリント配線母板の中心線を意味するものではなく、中間縦スリットは、プリント配線母板の中心線から左右にずれていても良い。
中間縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)を行うことにより中間縦スリット素片が互いに連通し、実装用基板の基準辺(搬送方向に対して平行な辺)となる連続した中間縦スリットとなるように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されている。
【0034】
プリント配線母板の横幅は、搬送方向に沿って実装用基板を1列に並べることができる幅であっても良く、あるいは、搬送方向に沿って実装用基板を2列以上並べることができる幅であっても良い。搬送方向に沿って実装用基板が2列以上並んでいる場合、実装用基板の各列間の連結部は、他の手段を用いて分離しても良い。しかしながら、中間縦スリット素片形成手段を用いて、プリント回路板のプッシュバックと同時に実装用基板の各列間の連結部を切断すると、他の手段を用いた実装用基板の分離工程が不要になる。
【0035】
プリント配線母板の搬送方向に沿って実装用基板が2列以上に並んでいる場合において、中間縦スリット素片形成手段を設けると、中間縦スリットが横スリットに連通し、最終プレスが行われる前に、個々の実装用基板が分離する場合がある。個々の実装用基板が分離しても引き続き順方向プレス及び反転方向プレスを行うことは可能であるが、プリント配線母板の搬送が煩雑となる。
そのため、縦スリット素片形成手段及び/又は横スリット素片形成手段に加えて中間縦スリット素片形成手段を備えている場合には、縦スリット素片形成手段、横スリット素片形成手段、及び、中間縦スリット素片形成手段は、
(a)(2N−1)回目のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)が終了した時点において、縦スリット素片、横スリット素片及び中間縦スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、プリント配線母板内にあるすべての実装用基板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)2N回目のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)時において、連通していなかった縦スリット素片、横スリット素片及び/又は中間縦スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した縦スリット、横スリット及び/又は中間縦スリットとなり、これによって一体的に連結していた実装用基板がプリント配線母板から逐次切り離される
ように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されているのが好ましい。
【0036】
[1.2. 金型セット(1)の第1具体例]
[1.2.1. 第1具体例の構成]
図1に、本実施の形態に係る金型セットの第1の具体例を示す。図1において、金型セット10は、第1母板加工用金型(図1(a)にその下型20aのみを示す)と、第2母板加工用金型(図2(b)に、その下型20bのみを示す)の2個1組の金型からなる。
金型セット10は、基本的には、特許文献3に記載の金型を搬送方向に対して上流側と下流側に二分割し、合計6個のプッシュバック手段を、第1母板加工用金型と、第2母板加工用金型にそれぞれ3個ずつ分散させて配置したものである。また、金型セット10は、第1母板加工用金型を用いた順方向プレス及び反転方向プレス、並びに、第2母板加工用金型を用いた順方向プレス及び反転方向プレスの合計4回のプレス加工により、実装用基板を製造するためのものである。
【0037】
第1母板加工用金型の下型20aは、プリント回路板をプッシュバックするための合計3個の下型ストリッパー22a、22b、22cが埋設されている。下型ストリッパー22a〜22cは、図示しない付勢手段により上方向に付勢されている。また、図示しない上型には、下型ストリッパー22a〜22cに対応する位置に、これらを下方向に押圧するためのパンチが設けられている。
下型ストリッパー22a〜22cは、それぞれ、
(a)プリント配線母板を順方向送りした時に、実装用基板となる領域内の一部において第1のプリント回路板のプッシュバックを行うことができ、かつ、
(b)プリント配線母板を順方向送りした後、さらにプリント配線母板を反転方向送りした時に、実装用基板となる領域内の空白部分において新たに第2のプリント回路板のプッシュバックを行うことができる
ように配置されている。
【0038】
同様に、第2母板加工用金型の下型20bは、プリント回路板をプッシュバックするための合計3個の下型ストリッパー22d、22e、22fが埋設されている。下型ストリッパー22d〜22fは、図示しない付勢手段により上方向に付勢されている。また、図示しない上型には、下型ストリッパー22d〜22fに対応する位置に、これらを下方向に押圧するためのパンチが設けられている。
下型ストリッパー22d〜22fは、それぞれ、
(a)プリント配線母板を順方向送りした時に、実装用基板となる領域内の一部において第1のプリント回路板のプッシュバックを行うことができ、かつ、
(b)プリント配線母板を順方向送りした後、さらにプリント配線母板を反転方向送りした時に、実装用基板となる領域内の空白部分において新たに第2のプリント回路板のプッシュバックを行うことができる
ように配置されている。
【0039】
さらに、第1母板加工用金型の下型20aに設けられた下型ストリッパー22a〜22cと、第2母板加工用金型の下型20bに設けられた下型ストリッパー22d〜22fとは、互いに異なる部分(空白部分)において、プリント配線母板から新たなプリント回路板のプッシュバック加工を行うことができるように配置されている。
すなわち、下型ストリッパー22a〜22cは、第1母板加工用金型を用いて順方向プレス及び反転方向プレスを行ったときに、プリント回路板が千鳥状にプッシュバックされるように配置されている。
同様に、下型ストリッパー22d〜22fは、第2母板加工用金型を用いて順方向プレス及び反転方向プレスを行ったときに、第1母板加工用金型によりプッシュバック加工が行われなかった部分(空白部分)において、新たにプリント回路板が千鳥状にプッシュバックされるように配置されている。
【0040】
第1母板加工用金型の下型20aには、複数の貫通孔形成ピン誘導穴24…が設けられている。図示しない上型には、貫通孔形成ピン誘導穴24…に対応する位置に、それぞれ、貫通孔を打ち抜くための貫通孔形成ピンが設けられている。下型20aの貫通孔形成ピン誘導穴24…は、下型20bの下型ストリッパー22d〜22fによりプッシュバックされるプリント回路板に貫通孔を形成するためのものである。これらの貫通孔形成ピン誘導穴24…は、必要に応じて設けることができる。
同様に、第2母板加工用金型の下型20bには、複数の貫通孔形成ピン誘導穴24…が設けられている。図示しない上型には、貫通孔形成ピン誘導穴24…に対応する位置に、それぞれ、貫通孔を打ち抜くための貫通孔形成ピンが設けられている。下型20bの貫通孔形成ピン誘導穴24…は、下型20aの下型ストリッパー22a〜22cによりプッシュバックされるプリント回路板に貫通孔を形成するためのものである。これらの貫通孔形成ピン誘導穴24…は、必要に応じて設けることができる。
【0041】
第1母板加工用金型の下型20aの搬送方向に対して左側には、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a、26bが設けられ、搬送方向に対して右側には、縦スリット素片形成ピン誘導穴26cが設けられている。図示しない上型には、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26cに対応する位置に、それぞれ、縦スリット素片形成ピンが設けられている。
縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26cは、これらで形成される縦スリット素片が順方向プレスの際には完全に連通せず、かつ、順方向プレスを行った後、さらに反転方向プレスを行ったときに、互いに連通して連続した縦スリットとなるように、その長さ及び配置が定められている。また、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26cは、連続した縦スリットの上下端がプリント配線母板の上下端に達し、左右端の細長い端材が母板から完全に切り離されるように、その長さ及び位置が定められている。
【0042】
第2母板加工用金型の下型20bの搬送方向に対して上流側には、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bが設けられている。図示しない上型には、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bに対応する位置に、それぞれ、横スリット素片形成ピンが設けられている。
横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bは、これらで形成される横スリット素片が順方向プレスの際には互いに連通せず、かつ、順方向プレスを行った後、さらに反転方向プレスを行ったときに、互いに連通して連続した横スリットとなるように、その長さ及び配置が定められている。また、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bは、連続した横スリットの両端が縦スリットには連通するが、プリント配線母板の両端に達しないように、その長さ及び位置が定められている。
【0043】
さらに、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26c及び横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bは、それぞれ、
(a)(2N−1)回目(3回目)のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)が終了した時点において、縦スリット素片及び横スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、プリント配線内にあるすべての実装用基板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)2N回目(4回目)のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)時において、連通していなかった縦スリット素片及び/又は横スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した縦スリット及び/又は横スリットとなり、これによって一体的に連結していた実装用基板がプリント配線母板から逐次切り離される
ように、その長さ及び配置が定められている。
【0044】
第1母板加工用金型の下型20aの左側中央には、実装用基板の左右辺に応力緩和のためのスリットを形成するためのスリット形成ピン誘導穴32が設けられている。図示しない上型には、スリット形成ピン誘導穴32に対応する位置に、スリットを打ち抜くためのスリット形成ピンが設けられている。
同様に、第2母板加工用金型の下型20bの左側上下には、実装用基板の上下辺に応力緩和のためのスリットを形成するためのスリット形成ピン誘導穴34a、34bが設けられている。図示しない上型には、スリット形成ピン誘導穴34a、34bに対応する位置に、スリットを打ち抜くためのスリット形成ピンが設けられている。
なお、図1(b)に示す例において、スリット形成ピン誘導穴34bは、実装用基板の上下片に応力緩和のためのスリットを形成する機能だけでなく、プリント配線母板の外周部に切り込みを入れ、実装用基板を切り出した後のプリント配線母板の端材を細分化させる機能も奏するように、その長さ及び配置が定められている。
【0045】
さらに、第1母板加工用金型の下型20aには、プリント配線母板の位置決めに用いられる位置決めピン36a、36b、36c、36dが立設されている。
同様に、第2母板加工用金型の下型20bには、プリント配線母板の位置決めに用いられる位置決めピン36e、36f、36g、36h、36i、36jが立設されている。
位置決めピン36e〜36hは、第1母板加工用金型の下型20aに設けられた位置決めピン36a〜36dに対応する位置に設けられる。位置決めピン36i、36jは、プリント配線母板の最先端部分に連続した横スリットを形成するためのプレス加工を行う際に用いられる。図1(b)中、位置決めピン36e−36i間の距離が、プリント配線母板をステップ送りする際の搬送距離となる。
【0046】
[1.2.2. 第1具体例を用いた実装用基板の製造方法]
図2〜図7に、図1に示す金型セット10を用いたプリント配線母板のプレス加工の工程図を示す。
まず、図2に示すように、第1母板加工用金型の下型20aの上面にプリント配線母板100を載せる。プリント配線母板100には、予め位置決めピン36a〜36jに対応する位置に、基準穴102…が形成されている。プリント配線母板100の位置決めは、下型20aの上面に設けられた位置決めピン36a〜36dを基準穴102…に挿入することにより行われる。
この状態で、第1母板加工用金型を用いた順方向プレスの1回目のプレス加工を行うと、下型ストリッパー22a〜22c及び図示しないパンチによりプリント回路板のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、貫通孔形成ピン誘導穴24…及び貫通孔形成ピン(図示せず)による貫通孔の打ち抜き、縦スリット素片形成ピン26a〜26c及び縦スリット素片形成ピン(図示せず)による縦スリット素片の打ち抜き、並びに、スリット形成ピン誘導穴32及びスリット形成ピン(図示せず)によるスリットの打ち抜きが行われる。
【0047】
以下、プリント配線母板100をステップ送りしながら順方向プレスを行う。図3に、第1母板加工用金型(下型20a)を用いた順方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
順方向プレスの最終プレス加工前のプリント配線母板100には、それ以前のプッシュバック加工で打ち抜かれたプリント回路板104a…、104b…、104c…が元の穴にはめ込まれた状態になっている。これと同時に、プリント配線母板100には、貫通孔106…、縦スリット素片108a〜108c、及び、スリット110…が形成されている。また、この時、縦スリット素片形成ピン26aで形成される縦スリット素片108aと縦スリット素片形成ピン26bで形成される縦スリット素片108bの一部が連通し、長い縦スリット素片108a+108bとなる。
この状態で、第1母板加工用金型を用いた順方向プレスの最終(3回目)プレス加工を行うと、最後のプリント回路板104a〜104cのプッシュバック加工、貫通孔106…の打ち抜き、縦スリット素片108a〜108cの打ち抜き、及び、スリット110…の打ち抜きが行われる。
【0048】
次に、プリント配線母板100を180°回転させ、プリント配線母板100をステップ送りしながら第1母板加工用金型を用いた反転方向プレスを行う。図4に、第1母板加工用金型(下型20a)を用いた反転方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
下型ストリッパー22a〜22cは、反転方向の際には順方向プレスとは異なる位置でプッシュバック加工が行われるように配置されている。そのため、順方向プレス及び反転方向プレスが終了したときには、プリント回路板104a〜104cが千鳥状にプッシュバック加工された状態となる。
これと同時に、プリント配線母板100には、貫通孔106…及びスリット110…が新たに形成される。
【0049】
さらに、プリント配線母板100の左側では、順方向プレスで形成された縦スリット素片108c間が、反転方向プレスの際に形成される縦スリット素片(108a+108b)により切断され、連続した縦スリット108c+(108a+108b)となる。
同様に、プリント配線母板100の右側では、順方向プレスで形成された縦スリット素片(108a+108b)間が、反転方向プレスの際に形成される縦スリット素片108cにより切断され、連続した縦スリット(108a+108b)+108cとなる。その結果、プリント配線母板100の両端から細長い端材100a、100bが分離する。
【0050】
次に、プリント配線母板100を再度180°回転させ、第2母板加工用金型を用いた順方向プレスを行う。
まず、図5に示すように、第2母板加工用金型の下型20bの上面にプリント配線母板100を載せる。この時、位置決めピン36i、36jをプリント配線母板100の最先端にある基準穴に挿入する。なお、図5においては、見やすくするために、第1母板加工用金型でプッシュバックされたプリント回路板にハッチングを施してある。図6〜7も同様である。
この状態で1回目のプレスを行うと、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28b及び横スリット素片形成ピン(図示せず)により、プリント配線母板100の最先端に横スリット素片が形成される。
【0051】
以下、プリント配線母板100をステップ送りしながら順方向プレスを行う。図6に、第2母板加工用金型(下型20b)を用いた順方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
下型ストリッパー22d〜22fは、第1母板加工用金型の下型ストリッパー22a〜22cとは異なる位置でプッシュバック加工が行われるように配置されている。そのため、順方向プレスが終了したときには、第1母板加工用金型で加工されていない領域において、プリント回路板104d…、104e…、104f…が新たにプッシュバック加工される。
これと同時に、プリント配線母板100には、貫通孔106…、及び、スリット112a…、112b…が新たに形成される。
さらに、プリント配線母板100には、横スリット素片114a…、114b…が新たに形成される。しかも、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26c及び横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bの長さ及び配置が最適化されているので、この時点では、個々の実装用基板が分離せず、一体化した状態になっている。
【0052】
最後に、プリント配線母板100を再度180°回転させ、プリント配線母板100をステップ送りしながら第2母板加工用金型を用いて反転方向プレスを行う。図7に、第2母板加工用金型(下型20b)を用いた反転方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
下型ストリッパー22d〜22fは、反転方向プレスの際に順方向プレスとは異なる位置でプッシュバック加工が行われるように配置されている。そのため、順方向プレス及び反転方向プレスが終了したときには、第1母板加工用金型で加工されていない領域において、プリント回路板104d〜104fが新たに千鳥状にプッシュバックされる。
これと同時に、プリント配線母板100には、貫通孔106…、及び、スリット112a…、112b…が新たに形成される。
さらに、プリント配線母板100には、横スリット素片114a…、114b…が新たに形成される。しかも、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26c及び横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bの長さ及び配置が最適化されているので、個々のプレス加工毎に、実装用基板140…がプリント配線母板100から逐次切り離される。また、プリント配線母板100の上下端から端材100c、100dが切り離される。
【0053】
以上の方法により、プッシュバックされたプリント回路板104a〜104fが枠部に仮止めされた実装用基板140…が得られる。得られた実装用基板140…は、自動実装工程に送られ、表面に各種の電子部品が実装される。自動実装終了後、枠部を破断させることによって枠部とプリント回路板を分離し、分離したプリント回路板を各種の電子機器に組み込むことができる。
【0054】
[1.2.3. 第1具体例の作用]
打ち抜き加工は、プリント配線母板をせん断させるための荷重(せん断荷重)のみで加工することができる。一方、プッシュバック加工は、打ち抜かれたプリント回路板を弾性部材の付勢力によって元の穴にはめ戻すため、せん断荷重に加えて、弾性部材の付勢力に抗してストリッパーを押し下げるための荷重も必要となる。そのため、プリント回路板がプッシュバックされた実装用基板を製造する場合において、プッシュバックされるプリント回路板の個数や面積が大きくなるほど、より容量の大きなプレス機械が必要となる。
これに対し、プッシュバック手段をN個の金型に分散して配置し、かつ、N回の順方向プレス加工及びN回の反転方向プレス加工により個々のプリント回路板のプッシュバック加工を行わせると、1回のプレス加工によりすべてのプリント回路板のプッシュバック加工を行う場合に比べて、プレス圧力を約1/2Nに下げることができる。そのため、母板の搬送に支障を来さない限りにおいて、プレス能力の制約を全く受けることなく、多数のプリント回路板がプッシュバックされた極めて大型の実装用基板を製造することができる。また、大型の実装用基板を製造するために、新たに設備投資する必要もない。
【0055】
さらに、これと同時に、縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段をN個の母板加工用金型に分散して配置すると、2回以上の順方向プレス又は反転方向プレスが終了した時点で、実装用基板の搬送方向に対して平行な辺、及び、垂直な辺も同時に形成することができる。
また、縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段の長さや配置を最適化すると、最終プレス加工が行われる前は個々の実装用基板がいずれかの部分で結合した状態となり、最終プレス加工時には個々の実装用基板を逐次切り離すことができる。そのため、加工途中における母板の搬送が極めて容易化する。
【0056】
さらに、プリント回路板のプッシュバック加工、並びに、縦スリット素片及び横スリット素片の形成が1回のプレスで行われるように、そのための手段を1個の金型に配置することもできる。しかしながら、このような複数の加工を1回のプレスで行わせるためには、金型に各種の貫通孔を密集して形成する必要がある。貫通孔が密集すると、貫通孔間の壁の厚さが薄くなり、金型強度が著しく低下する。
これに対し、各種の加工手段をN個の金型に分散配置させると、金型製作コストは上昇するが、金型に各種の貫通孔を密集して形成する必要がなくなる。そのため、金型の耐久性を低下させることなく、複雑な加工が可能となる。
【0057】
なお、図2〜図7には、(1)第1母板加工用金型を用いた順方向プレス、(2)第1母板加工用金型を用いた反転方向プレス、(3)第2母板加工用金型を用いた順方向プレス、(4)第2母板加工用金型を用いた反転方向プレス、の順に加工する例を示したが、これらの順序を入れ替えても、同様の効果が得られる。
また、例えば、図1に示す金型セット10において、縦スリット素片形成手段又は横スリット素片形成手段の何れか一方を省略すると、連続した横スリット又は連続した縦スリットのみを備えた実装用基板の集合体が得られる。
【0058】
[1.3. 金型セット(1)の第2具体例]
[1.3.1. 第2具体例の構成]
図8に、本実施の形態に係る金型セットの第2の具体例を示す。図8において、金型セット10aは、第1母板加工用金型(図8(a)に、その下型20aのみを示す)と、第2母板加工用金型(図8(b)に、その下型20bのみを示す)と、第3母板加工用金型(図8(c)に、その下型20cのみを示す)の3個1組の金型からなる。なお、図8中、図1に対応する部分には、図1と同様の符号を付してある。
金型セット10aは、基本的には、特許文献3に記載の金型を搬送方向に対して左、中、右に三分割し、合計6個のプッシュバック手段を、第1〜第3母板加工用金型にそれぞれ2個ずつ分散させて配置したものである。
また、金型セット10aは、第1〜第3母板加工用金型を用いた順方向プレス及び反転方向プレスの合計6回のプレス加工により、実装用基板を製造するためのものである。
【0059】
第1〜第3母板加工用金型及び図示しない上型は、それぞれ、プリント配線母板の搬送方向に対して上流側が第1加工領域12に、また、搬送方向に対して下流側が第2加工領域14になっている。
「第1加工領域12」とは、プリント配線母板の搬送方向に対して上流側に配置された、実装用基板と同等以上の面積を有する加工領域をいう。
「第2加工領域14」とは、プリント配線母板の搬送方向に対して下流側に配置された、実装用基板と同等以上の面積を有する加工領域をいう。
実装用基板内に作り込まれるプリント回路板の形状、配置、加工方法等によっては、実装用基板1個分の加工領域のみを備えた金型(例えば、図1に記載した金型)でも本発明に係る方法を実施することができる。しかしながら、第1〜第3母板加工用金型の加工領域を第1加工領域12と第2加工領域14に分割し、第1加工領域12と第2加工領域14の双方においてプリント配線母板の加工を逐次行うようにすると、第1加工領域12と第2加工領域14の間で機能を分担させることができる。そのため、金型の構造を著しく複雑化させたり、耐久性を低下させることなく、プリント配線母板に対して複雑な加工を行うことが可能となる。
【0060】
第1母板加工用金型の下型20aの第1加工領域12には、プリント回路板をプッシュバックするための下型ストリッパー22dが埋設され、第2加工領域14には、下型ストリッパー22aが埋設されている。
同様に、第2母板加工用金型の下型20bの第1加工領域12には、プリント回路板をプッシュバックするための下型ストリッパー22eが埋設され、第2加工領域14には、下型ストリッパー22bが埋設されている。
同様に、第3母板加工用金型の下型20cの第1加工領域12には、プリント回路板をプッシュバック加工するための下型ストリッパー22fが埋設され、第2加工領域14には、下型ストリッパー22cが埋設されている。
【0061】
下型ストリッパー22a〜22fは、それぞれ、
(a)プリント配線母板を順方向送りした時に、実装用基板となる領域内の一部において第1のプリント回路板のプッシュバックを行うことができ、かつ、
(b)プリント配線母板を順方向送りした後、さらにプリント配線母板を反転方向送りした時に、実装用基板板となる領域内の空白部分において新たに第2のプリント回路板のプッシュバックを行うことができる
ように配置されている。
【0062】
さらに、第1母板加工用金型の下型20aに設けられた下型ストリッパー22a、22d、第2母板加工用金型の下型20bに設けられた下型ストリッパー22b、22e、及び、第3母板加工用金型の下型20cに設けられた下型ストリッパー22c、22fは、互いに異なる部分(空白部分)において、プリント配線母板から新たなプリント回路板のプッシュバック加工を行うことができるように配置されている。
【0063】
下型20a〜20cには、それぞれ、複数の貫通孔形成ピン誘導穴24…が設けられている。下型20aの第1加工領域12に設けられた貫通孔形成ピン誘導穴24…は、第2加工領域14の下型ストリッパー22aでプッシュバックされるプリント回路板に貫通孔を形成するためのものである。同様に、下型20aの第2加工領域14に設けられた貫通孔形成ピン誘導穴24…は、第1加工領域12の下型ストリッパー22dでプッシュバックされるプリント回路板に貫通孔を形成するためのものである。これらの貫通孔形成ピン誘導穴24…は、必要に応じて設けることができる。
これらの点は、下型20b、20cに設けられた貫通孔形成ピン誘導穴24…も同様である。
【0064】
第1母板加工用金型の下型20aの搬送方向に対して左側には、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a、26bが設けられている。また、第2母板加工用金型の下型20bの搬送方向に対して右側には、縦スリット素片形成ピン誘導穴26c、26dが設けられている。
下型20aに設けられた縦スリット素片形成ピン誘導穴26a、26bは、順方向プレスの際にこれらで形成される縦スリット素片が連通するが、連続した縦スリットとならないようにその長さ及び配置が定められている。この点は、下型20bに設けられた縦スリット素片形成ピン誘導穴26c、26dも同様である。
また、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26dは、下型20a(又は、下型20b)で順方向プレスした後、下型20b(又は、下型20a)で反転方向プレスを行うと、縦スリット素片が完全に連通し、連続した縦スリットとなるようにその長さ及び配置が定められている。
さらに、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26dは、連続した縦スリットの両端がプリント配線母板の上下端を貫通しないように、その長さ及び配置が定められている。
【0065】
第3母板加工用金型の下型20cの第1加工領域12と第2加工領域14との境界線上には、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bが設けられている。
横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bは、これらで形成される横スリット素片が順方向プレスの際には互いに連通せず、かつ、順方向プレスを行った後、さらに反転方向プレスを行ったときに、互いに連通して連続した横スリットとなるようにその長さ及び配置が定めれている。
また、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bは、連続した横スリットの両端が縦スリットには連通するが、プリント配線母板の両端に達しないようにその長さ及び位置が定められている。
【0066】
さらに、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26d及び横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bは、それぞれ、
(a)(2N−1)回目(5回目)のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)が終了した時点において、縦スリット素片及び横スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、プリント配線内にあるすべての実装用基板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)2N回目(6回目)のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)時において、連通していなかった縦スリット素片及び/又は横スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した縦スリット及び/又は横スリットとなり、これによって一体的に連結していた実装用基板がプリント配線母板から逐次切り離される
ようにその長さ及び配置が定められている。
【0067】
第2母板加工用金型の下型20bの左側には、実装用基板の左右辺に応力緩和のためのスリットを形成するためのスリット形成ピン誘導穴32が設けられている。
同様に、第1母板加工用金型の下型20aの左側には、実装用基板の上下辺に応力緩和のためのスリットを形成するためのスリット形成ピン誘導穴34a、34bが設けられている。
なお、図8(a)に示す例において、スリット形成ピン誘導穴34a、34bは、実装用基板の上下片に応力緩和のためのスリットを形成することができ、かつ、プリント配線母板の外周部を切断しないように(すなわち、すべてのプレス加工が終了したときに、四角い端材が残るように)、その長さ及び配置が定められている。
【0068】
さらに、下型20aの第2加工領域14には、プリント配線母板の位置決めに用いられる位置決めピン36a、36b、36c、36dが立設されている。また、下型20aの第1加工領域12には、位置決めピン36a〜36dに対応する位置に、位置決めピン36e、36f、36g、36hが立設されている。
同様に、下型20b、20cにも、それぞれ、下型20aに対応する位置に、位置決めピン36a〜36hが立設されている。
図8中、位置決めピン36b−36f間の距離が、プリント配線母板をステップ送りする際の搬送距離となる。
その他の点は、第1具体例と同様であるので、説明を省略する。
【0069】
[1.3.2. 第2具体例を用いた実装用基板の製造方法]
図9〜図14に、図8に示す金型セット10aを用いたプリント配線母板のプレス加工の工程図を示す。
まず、プリント配線母板100をステップ送りしながら、第1母板加工用金型を用いて順方向プレスを行う。図9に、第1母板加工用金型(下型20a)を用いた順方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
第1母板加工用金型を用いて順方向プレスを行うと、下型ストリッパー22a、22dによりプリント回路板104a…、104d…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a、26bにより縦スリット素片108a…、108b…の打ち抜きが行われる。直前のプレスで形成された縦スリット素片108bは、新たに形成される縦スリット素片108aと繋がることにより、長さが搬送方向に延長された縦スリット素片108a+108bとなる。さらに、これらと同時に、貫通孔106…の打ち抜き、及び、スリット112a…、112b…の打ち抜きが行われる。
【0070】
次に、プリント配線母板100をステップ送りしながら第2母板加工用金型を用いた順方向プレスを行う。図10に、第2母板加工用金型(下型20b)を用いた順方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
第2母板加工用金型を用いて順方向プレスを行うと、下型ストリッパー22b、22eにより新たなプリント回路板104b…、104e…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、縦スリット素片形成ピン誘導穴26c、26dにより縦スリット素片108c…、108d…の打ち抜きが行われる。直前のプレスで形成された縦スリット素片108dは、新たに形成される縦スリット素片108cと繋がることにより、長さが搬送方向に延長された縦スリット素片108c+108dとなる。さらに、これらと同時に、貫通孔106…の打ち抜き、及び、スリット110…の打ち抜きが行われる。打ち抜かれたスリット110の左端は、縦スリット素片108a+108bと連通する。
【0071】
次に、プリント配線母板100をステップ送りしながら第3母板加工用金型を用いた順方向プレスを行う。図11に、第3母板加工用金型(下型20c)を用いた順方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
第3母板加工用金型を用いて順方向プレスを行うと、下型ストリッパー22c、22fにより新たなプリント回路板104c…、104f…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bにより、横スリット素片1114a…、114b…の打ち抜きが行われる。この時、打ち抜かれた横スリット素片114bの右端は、縦スリット素片180c+108dと連通する。さらに、これらと同時に、貫通孔106…の打ち抜きが行われる。
【0072】
次に、プリント配線母板100を180°回転させ、プリント配線母板100をステップ送りしながら第1母板加工用金型を用いた反転方向プレスを行う。図12に、第1母板加工用金型(下型20a)を用いた反転方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。なお、図12においては、見やすくするために、3回の順方向プレスにより形成されたプリント回路板にハッチングを施してある。この点は、図13及び図14も同様である。
第1母板加工用金型を用いて反転方向プレスを行うと、空白部分において、下型ストリッパー22a、22dにより新たなプリント回路板104a…、104d…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、順方向プレスで形成された縦スリット素片108c+108dの間が縦スリット素片形成ピン誘導穴26a、26bで打ち抜かれ、連続した縦スリット(108c+108d)+(108a+108b)となる。さらに、これと同時に、貫通孔106…の打ち抜き、及び、スリット112a…、112b…の打ち抜きが新たに行われ、スリット112a…、112b…が横スリット素片114bに連通する。
【0073】
次に、プリント配線母板100をステップ送りしながら第2母板加工用金型を用いた反転方向プレスを行う。図13に、第2母板加工用金型(下型20b)を用いた反転方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
第2母板加工用金型を用いて反転方向プレスを行うと、空白部分において、下型ストリッパー22b、22eにより、新たなプリント回路板104b…、104e…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、順方向プレスで形成された縦スリット素片108a+108bの間が縦スリット素片形成ピン誘導穴26c、26dで打ち抜かれ、連続した縦スリット(108a+108b)+(108c+108d)となる。さらに、これと同時に、貫通孔106…の打ち抜き、及び、スリット110…の打ち抜きが行われ、スリット110…が縦スリット(108c+108d)+(108a+108b)に連通する。
しかも、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26d及び横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bの長さ及び配置が最適化されているので、この時点では、個々の実装用基板が分離せず、一体化した状態になっている。
【0074】
最後に、プリント配線母板100をステップ送りしながら第3母板加工用金型を用いて反転方向プレスを行う。図14に、第3母板加工用金型(下型20c)を用いた反転方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
第3母板加工用金型を用いて反転方向プレスを行うと、下型ストリッパー22c、22fにより、新たなプリント回路板104c…、104f…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、順方向プレスで形成された横スリット素片114aと横スリット素片114bの間が横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bで打ち抜かれ、連続した横スリット114a+114bとなる。さらに、これと同時に、貫通孔106…の打ち抜きが行われる。
しかも、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26d及び横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bの長さ及び配置が最適化されているので、個々のプレス加工毎に、実装用基板140…がプリント配線母板100から逐次切り離される。さらに、すべての実装用基板140が切り出された後は、連続した四角い端材100eが残る。
【0075】
以上の方法により、プッシュバックされたプリント回路板104a〜104fが枠部に仮止めされた実装用基板140…が得られる。得られた実装用基板140…は、自動実装工程に送られ、表面に各種の電子部品が実装される。自動実装終了後、枠部を破断させることによって枠部とプリント回路板を分離し、分離したプリント回路板を各種の電子機器に組み込むことができる。
【0076】
[1.3.3. 第2具体例の作用]
プッシュバック手段をN個の金型に分散して配置し、かつ、N回の順方向プレス加工及びN回の反転方向プレス加工により個々のプリント回路板のプッシュバック加工を行わせると、1回のプレス加工によりすべてのプリント回路板のプッシュバック加工を行う場合に比べて、プレス圧力を約1/2Nに下げることができる。そのため、母板の搬送に支障を来さない限りにおいて、プレス能力の制約を全く受けることなく、多数のプリント回路板がプッシュバックされた極めて大型の実装用基板を製造することができる。
【0077】
さらに、これと同時に、縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段をN個の母板加工用金型に分散して配置すると、最終プレス加工が終了した時点で、実装用基板の搬送方向に対して平行な辺、及び、垂直な辺も同時に形成することができる。
また、縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段の長さや配置を最適化すると、最終プレス加工が行われる前は個々の実装用基板がいずれかの部分で結合した状態となり、最終プレス加工時には個々の実装用基板を逐次切り離すことができる。そのため、加工途中における母板の搬送が極めて容易化する。
【0078】
さらに、各種の加工手段をN個の金型に分散配置させると、金型製作コストは上昇するが、金型に各種の貫通孔を密集して形成する必要がなくなる。そのため、金型の耐久性を低下させることなく、複雑な加工が可能となる。
【0079】
なお、図9〜図14には、
(1)第1母板加工用金型を用いた順方向プレス、
(2)第2母板加工用金型を用いた順方向プレス、
(3)第3母板加工用金型を用いた順方向プレス、
(4)第1母板加工用金型を用いた反転方向プレス、
(5)第2母板加工用金型を用いた反転方向プレス、
(6)第3母板加工用金型を用いた反転方向プレス、
の順に加工する例を示したが、これらの順序を入れ替えても、同様の効果が得られる。
また、例えば、図8に示す金型セット10aにおいて、縦スリット素片形成手段又は横スリット素片形成手段の何れか一方を省略すると、連続した横スリット又は連続した縦スリットのみを備えた実装用基板の集合体が得られる。
【0080】
[1.4. 金型セット(1)の第3具体例]
[1.4.1. 第3具体例の構成]
図15に、本実施の形態に係る金型セットの第3具体例を示す。図15において、金型セット10bは、第1母板加工用金型(図15(a)にその下型20aのみを示す)と、第2母板加工用金型(図15(b)に、その下型20bのみを示す)の2個1組の金型からなる。なお、図15中、図1に対応する部分には、図1と同様の符号を付してある。
金型セット10bは、基本的には、特許文献3に記載の金型のプッシュバック手段を千鳥状に二分割し、合計6個のプッシュバック手段を、第1〜第2母板加工用金型にそれぞれ3個ずつ分散させて配置したものである。
また、金型セット10bは、第1〜第2母板加工用金型を用いた順方向プレス及び反転方向プレスの合計4回のプレス加工により、実装用基板を製造するためのものである。
【0081】
第1〜第2母板加工用金型及び図示しない上型は、それぞれ、プリント配線母板の搬送方向に対して上流側が第1加工領域12に、また、搬送方向に対して下流側が第2加工領域14になっている。
第1母板加工用金型の下型20aの第1加工領域12には、プリント回路板をプッシュバックするための下型ストリッパー22eが埋設され、第2加工領域14には下型ストリッパー22a、22cが埋設されている。
同様に、第2母板加工用金型20bの第1加工領域12には、プリント回路板をプッシュバックするための下型ストリッパー22d、22fが埋設され、第2加工領域14には下型ストリッパー22bが埋設されている。
【0082】
下型ストリッパー22a〜22fは、それぞれ、
(a)プリント配線母板を順方向送りした時に、実装用基板となる領域内の一部において第1のプリント回路板のプッシュバックを行うことができ、かつ、
(b)プリント配線母板を順方向送りした後、さらにプリント配線母板を反転方向送りした時に、実装用基板となる領域内の空白部分において新たに第2のプリント回路板のプッシュバックを行うことができる
ように配置されている。
【0083】
さらに、第1母板加工用金型の下型20aに設けられた下型ストリッパー22a、22c、22e、及び、第2母板加工用金型の下型20bに設けられた下型ストリッパー22b、22d、22fは、互いに異なる部分(空白部分)において、プリント配線母板から新たなプリント回路板のプッシュバック加工を行うことができるように配置されている。
【0084】
下型20a、20bには、それぞれ、複数の貫通孔形成ピン誘導穴24…が設けられている。第1母板加工用金型の下型20a(第2母板加工用金型の下型20b)に設けられた貫通孔形成ピン誘導穴24…は、それぞれ、第2母板加工用金型の下型20b(第1母板加工用金型の下型20a)でプッシュバックされるプリント回路板に貫通孔を形成するためのものである。これらの貫通孔形成ピン誘導穴24…は、必要に応じて設けることができる。
【0085】
下型20aの第2加工領域14の搬送方向に対して左側には、縦スリット素片形成ピン誘導穴26aが設けられている。また、下型20bの第2加工領域14の搬送方向に対して右側には、縦スリット素片形成ピン誘導穴26bが設けられている。
下型20aに設けられた縦スリット素片形成ピン誘導穴26aと、下型20bに設けられた縦スリット素片形成ピン誘導穴26bは、下型20a(又は、下型20b)で順方向プレスした後、下型20b(又は、下型20a)で反転方向プレスを行うと、縦スリット素片が完全に貫通し、連続した縦スリットとなるようにその長さ及び配置が定められている。
さらに、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a、26bは、連続した縦スリットの両端がプリント配線母板の上下端を貫通しないように、その長さ及び配置が定められている。
【0086】
第1母板加工用金型の下型20aの第1加工領域12と第2加工領域14の境界線上には、横スリット素片形成ピン誘導穴28bが設けられている。
同様に、第2母板加工用金型の下型20bの第1加工領域12と第2加工領域14の境界線上には、横スリット素片形成ピン誘導穴28aが設けられている。
横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bは、第1〜第2母板加工用金型を用いた順方向プレス及び反転方向プレスを行ったときに、互いに連通して連続した横スリットとなるようにその長さ及び配置が定めれている。
また、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bは、連続した横スリットの両端が縦スリットには連通するが、プリント配線母板の両端に達しないようにその長さ及び配置が定められている。
【0087】
第2母板加工用金型の下型20bの第2加工領域14には、中間縦スリット素片形成ピン誘導穴30が設けられている。
中間縦スリット素片形成ピン誘導穴30は、これによって打ち抜かれる中間縦スリット素片が第2母板加工用金型を用いた順方向プレスの際には互いに連通しないが、さらに反転方向プレスを行ったときに互いに連通して連続した中間縦スリットとなるように、その長さ及び配置が定められている。
また、中間縦スリット素片形成ピン誘導穴30は、連続した中間縦スリットの両端が横スリットには連通するが、プリント配線母板の上下端に達しないように、その長さ及び配置が定められている。
【0088】
さらに、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a、26b、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28b、及び、中間縦スリット素片形成ピン誘導穴30は、それぞれ、
(a)(2N−1)回目(3回目)のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)が終了した時点において、縦スリット素片、横スリット素片及び中間縦スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、プリント配線内にあるすべての実装用基板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)2N回目(4回目)のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)時において、連通していなかった縦スリット素片、横スリット素片及び/又は中間縦スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した縦スリット、横スリット、及び/又は中間縦スリットとなり、これによって一体的に連結していた実装用基板がプリント配線母板から逐次切り離される
ようにその長さ及び配置が定められている。
【0089】
第1母板加工用金型の下型20aの右側上には、実装用基板の左右辺に応力緩和のためのスリットを形成するためのスリット形成ピン誘導穴32が設けられている。
同様に、第2母板加工用金型の下型20bの左側上下には、それぞれ、実装用基板の上下辺に応力緩和のためのスリットを形成するためのスリット形成ピン誘導穴34a、34bが設けられている。
なお、図15(a)に示す例において、スリット形成ピン誘導穴34a、34bは、実装用基板の上下片に応力緩和のためのスリットを形成することができ、かつ、プリント配線母板の外周部を切断しないように、その長さ及び配置が定められている。
【0090】
さらに、下型20aの第2加工領域14には、プリント配線母板の位置決めに用いられる位置決めピン36a、36b、36c、36dが立設されている。また、下型20aの第1加工領域12には、位置決めピン36a〜36dに対応する位置に、位置決めピン36e、36f、36g、36hが立設されている。
同様に、下型20bにも、それぞれ、下型20aに対応する位置に、位置決めピン36a〜36hが立設されている。
図15中、位置決めピン36b−36f間の距離が、プリント配線母板をステップ送りする際の搬送距離となる。
その他の点は、第1具体例及び第2具体例と同様であるので、説明を省略する。
【0091】
[1.4.2. 第3具体例を用いた実装用基板の製造方法]
図16〜図19に、図15に示す金型セット10bを用いたプリント配線母板のプレス加工の工程図を示す。
まず、プリント配線母板100をステップ送りしながら、第1母板加工用金型を用いて順方向プレスを行う。図16に、第1母板加工用金型(下型20a)を用いた順方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
第1母板加工用金型を用いて順方向プレスを行うと、下型ストリッパー22a、22c、22eにより、新たにプリント回路板104a…、104c…、104e…のプッシュバック加工が行われる。また、これと同時に、縦スリット素片形成ピン誘導穴26aによる縦スリット素片108aの打ち抜き、及び、横スリット素片形成ピン誘導穴28bによる横スリット素片114bの打ち抜きが行われる。さらに、これと同時に、貫通孔106…の打ち抜き、及び、スリット110…の打ち抜きが行われる。
【0092】
次に、プリント配線母板100を180°回転させ、プリント配線母板100をステップ送りしながら第1母板加工用金型を用いた反転方向プレスを行う。図17に、第1母板加工用金型(下型20a)を用いた反転方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
第1母板加工用金型を用いて反転方向プレスを行うと、下型ストリッパー22a、22c、22eにより、新たなプリント回路板104a…、104c…、104e…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、縦スリット素片108a…及び横スリット素片114b…の新たな打ち抜きが行われる。この時、直前のプレスで打ち抜かれた縦スリット素片108a(又は、横スリット素片114b)と新たに打ち抜かれる横スリット素片114b(又は、縦スリット素片108a)が連結する。また、これと同時に、貫通孔106…の打ち抜き、及び、スリット110…の打ち抜きが行われる。新たに打ち抜かれたスリット110…の右端は、縦スリット素片108a…と連通する。
【0093】
次に、プリント配線母板100を再度180°回転させ、プリント配線母板100をステップ送りしながら第2母板加工用金型を用いた順方向プレスを行う。図18に、第2母板加工用金型(下型20a)を用いた順方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。なお、図18においては、見やすくするために、第1母板加工用金型でプッシュバックされたプリント回路板にハッチングを施してある。この点は、図19も同様である。
第2母板加工用金型を用いて順方向プレスを行うと、下型ストリッパー22b、22d、22fにより、新たなプリント回路板104b…、104d…、104f…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、縦スリット素片形成ピン誘導穴26bにより縦スリット素片108bが打ち抜かれ、横スリット素片形成ピン誘導穴28aにより横スリット素片114aが打ち抜かれ、中間縦スリット素片形成ピン誘導穴30により、中間縦スリット素片116が打ち抜かれる。この時、プリント配線母板100の右端においては、既に打ち抜かれた縦スリット素片108aと新たに打ち抜かれる縦スリット素片108bとが連通し、連続した縦スリット108a+108bとなる。また、プリント配線母板100の左側半分においては、既に打ち抜かれた横スリット素片114bと新たに打ち抜かれる横スリット素片114aが連通し、長さが延長された横スリット素片114a+114bとなる。さらに、新たに打ち抜かれた中間縦スリット116の一端が横スリット素片114a+114bに連通する。
また、これと同時に、貫通孔106…の打ち抜き、及び、スリット112a…、112b…の打ち抜きが行われる。
しかも、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a、26b、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28b、及び、中間縦スリット素片形成ピン誘導穴30の長さ及び配置が最適化されているので、この時点では、個々の実装用基板が分離せず、一体化した状態になっている。
【0094】
最後に、プリント配線母板100を再度180°回転させ、プリント配線母板100をステップ送りしながら第2母板加工用金型を用いた反転方向プレスを行う。図19に、第2母板加工用金型(下型20b)を用いた反転方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
第2母板加工用金型を用いて反転方向プレスを行うと、下型ストリッパー22b、22d、22fにより新たなプリント回路板104b…、104d…、104f…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、縦スリット素片108b…、横スリット素片114a…、及び、中間縦スリット116…が新たに打ち抜かれる。さらに、これと同時に、貫通孔106…の打ち抜き、及び、スリット112a…、112b…の打ち抜きが行われる。
しかも、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26b、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28b、及び、中間縦スリット素片30の長さ及び配置が最適化されているので、個々のプレス加工毎に、2列に並んだ実装用基板140a…がプリント配線母板100から逐次切り離される。さらに、すべての実装用基板140a…が切り出された後は、連続した四角い端材100eが残る。
【0095】
以上の方法により、プッシュバックされたプリント回路板104a〜104fが枠部に仮止めされた実装用基板140a…が得られる。得られた実装用基板140a…は、自動実装工程に送られ、表面に各種の電子部品が実装される。自動実装終了後、枠部を破断させることによって枠部とプリント回路板を分離し、分離したプリント回路板を各種の電子機器に組み込むことができる。
【0096】
[1.4.3. 第3具体例の作用]
プッシュバック手段をN個の金型に分散して配置し、かつ、N回の順方向プレス加工及びN回の反転方向プレス加工により個々のプリント回路板のプッシュバック加工を行わせると、1回のプレス加工によりすべてのプリント回路板のプッシュバック加工を行う場合に比べて、プレス圧力を約1/2Nに下げることができる。そのため、母板の搬送に支障を来さない限りにおいて、プレス能力の制約を全く受けることなく、多数のプリント回路板がプッシュバックされた極めて大型の実装用基板を製造することができる。
【0097】
さらに、これと同時に、縦スリット素片形成手段、横スリット素片形成手段及び中間縦スリット素片形成手段をN個の母板加工用金型に分散して配置すると、複数回の順方向プレス加工又は反転方向プレス加工が終了した時点で、実装用基板の搬送方向に対して平行な辺、垂直な辺、及び、中間の辺も同時に形成することができる。
また、縦スリット素片形成手段、横スリット素片形成手段、及び、中間縦スリット素片形成手段の長さや配置を最適化すると、最終プレス加工が行われる前は個々の実装用基板がいずれかの部分で結合した状態となり、最終プレス加工時には個々の実装用基板を逐次切り離すことができる。そのため、加工途中における母板の搬送が極めて容易化する。
【0098】
さらに、各種の加工手段をN個の金型に分散配置させると、金型製作コストは上昇するが、金型に各種の貫通孔を密集して形成する必要がなくなる。そのため、金型の耐久性を低下させることなく、複雑な加工が可能となる。
【0099】
なお、図16〜図19には、(1)第1母板加工用金型を用いた順方向プレス、(2)第1母板加工用金型を用いた反転方向プレス、(3)第2母板加工用金型を用いた順方向プレス、(4)第2母板加工用金型を用いた反転方向プレス、の順に加工する例を示したが、これらの順序を入れ替えても、同様の効果が得られる。
また、例えば、図15に示す金型セット10bにおいて、縦スリット素片形成手段又は横スリット素片形成手段の何れか一方を省略すると、連続した横スリット又は連続した縦スリットと、連続した中間縦スリットとを備えた実装用基板の集合体が得られる。
【0100】
[2. 金型セット(2)]
[2.1. 基本構成]
本発明の第2の実施の形態に係る金型セットは、以下の構成を備えている。
(1)金型セットは、N個(N≧2)の母板加工用金型からなり、各母板加工用金型を用いて同一のプリント配線母板に対し、プリント配線母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工を行うことにより、プリント配線母板から、プッシュバックされたプリント回路板が枠部に仮止めされた実装用板を製造するために用いられる。
(2)N個の各母板加工用金型は、それぞれ、プリント配線母板からプリント回路板を打ち抜き、打ち抜かれたプリント回路板を元の穴にはめ込むための少なくとも1個のプッシュバック手段を備え、
i番目(1≦i≦N)の母板加工用金型に設けられたプッシュバック手段は、j番目(1≦j≦N、j≠i)の母板加工用金型に設けられたプッシュバック手段によりプッシュバック加工される部分とは異なる部分において、プリント配線母板から新たなプリント回路板のプッシュバック加工を行うことができるように配置されている。
(3)金型セットは、N個の母板加工用金型のいずれか1以上に、
プリント配線母板の少なくとも一方の側端部に、プリント配線母板の搬送方向に対して平行な縦スリット素片を形成するための縦スリット素片形成手段、及び、
プリント配線母板の搬送方向に対して垂直な横スリット素片を形成するための横スリット素片形成手段
の内の何れか一方を備えている。
(4)縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)を行うことにより縦スリット素片が互いに連通し、実装用基板の基準辺(搬送方向に対して平行な辺)となる連続した縦スリットとなるように、同一又は異なる母板加工用金型に配置され、
横スリット素片形成手段は、同一又は異なる母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)を行うことにより横スリット素片が互いに連通し、実装用基板の基準辺(搬送方向に対して垂直な辺)となる連続した横スリットとなるように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されている。
【0101】
本実施の形態に係る金型セットは、以下の構成をさらに備えていても良い。
(3’)金型セットは、N個の母板加工用金型のいずれか1以上に、縦スリット素片形成手段、及び、横スリット素片形成手段の双方を備えている。
(5)縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段は、
(a)(N−1)回目のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)が終了した時点において、縦スリット素片及び横スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、プリント配線母板内にあるすべての実装用基板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)N回目のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)時において、連通していなかった縦スリット素片及び/又は横スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した縦スリット及び/又は横スリットとなり、これによって一体的に連結していた実装用基板がプリント配線母板から逐次切り離される
ように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されている。
【0102】
本実施の形態に係る金型セットは、以下の構成をさらに備えていても良い。
(6)金型セットは、N個の母板加工用金型のいずれか1以上に、プリント配線母板の中間部に、プリント配線母板の搬送方向に対して平行な中間縦スリット素片を形成するための中間縦スリット素片形成手段を備え、
中間縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)を行うことにより中間縦スリット素片が互いに連通し、実装用基板の基準辺(搬送方向に対して平行な辺)となる連続した中間縦スリットとなるように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されている。
(5’)縦スリット素片形成手段、横スリット素片形成手段、及び、中間縦スリット素片形成手段は、
(a)(N−1)回目のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)が終了した時点において、縦スリット素片、横スリット素片及び中間縦スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、プリント配線母板内にあるすべての実装用基板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)N回目のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)時において、連通していなかった縦スリット素片、横スリット素片及び/又は中間縦スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した縦スリット、横スリット及び/又は中間縦スリットとなり、これによって一体的に連結していた実装用基板がプリント配線母板から逐次切り離される
ように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されている。
【0103】
本実施の形態に係る金型セットは、プッシュバック手段やその他の加工手段をN個の母板加工用金型に分散して配置している点は第1の実施の形態と同様であるが、プリント配線母板の反転方向プレスを行わず、順方向プレスのみを行う。この点が第1の実施の形態と異なる。その他の点については第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0104】
[2.2. 具体例]
例えば、図1に示す金型セット10を用いて順方向プレスのみを行うと、第1母板加工用金型(下型20a)及び第2母板加工用金型(下型20b)により、それぞれ、所定の位置にプリント回路板のプッシュバック加工を行うことができる。
一方、図1に示す金型セット10の場合、順方向プレスのみでは縦スリット素片が互いに連通しない。そのため、下型20aに設けられた縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26cと同様の縦スリット素片形成ピン誘導穴を、配置を逆転させた形で第2母板加工用金型の下型20bに設けると、2回の順方向プレスで連続した縦スリットを形成することができる。
同様に、図1に示す金型セット10の場合、順方向プレスのみでは横スリット素片が互いに連通しない。そのため、下型20bに設けられた横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bと同様の横スリット素片形成ピン誘導穴を、配置を逆転させた形で第1母板加工用金型の下型20aに設けると、2回の順方向プレスで連続した横スリットを形成することができる。
【0105】
これらの点は、図8に示す金型セット10a、及び、図15に示す金型セット10bも同様であり、縦スリット素片形成手段、横スリット素片形成手段、又は、中間縦スリット素片形成手段を最適に配置すると、N回の順方向プレスのみによって、連続した縦スリット及び/又は横スリット、並びに、これらの一方又は双方に加えて中間縦スリットを形成することができる。
【0106】
以上の方法により、プッシュバックされたプリント回路板が枠部に仮止めされた実装用基板が得られる。得られた実装用基板は、自動実装工程に送られ、表面に各種の電子部品が実装される。自動実装終了後、枠部を破断させることによって枠部とプリント回路板を分離し、分離したプリント回路板を各種の電子機器に組み込むことができる。
【0107】
[2.3. 金型セット(2)の作用]
プッシュバック手段をN個の金型に分散して配置し、かつ、N回の順方向プレス加工により個々のプリント回路板のプッシュバック加工を行わせると、1回のプレス加工によりすべてのプリント回路板のプッシュバック加工を行う場合に比べて、プレス圧力を約1/Nに下げることができる。そのため、母板の搬送に支障を来さない限りにおいて、プレス能力の制約を全く受けることなく、多数のプリント回路板がプッシュバックされた極めて大型の実装用基板を製造することができる。
【0108】
さらに、これと同時に、縦スリット素片形成手段及び/又は横スリット素片形成手段、あるいはこれらに加えて中間縦スリット素片形成手段をN個の母板加工用金型に分散して配置すると、複数回のプレス加工が終了した時点で、実装用基板の搬送方向に対して平行な辺、垂直な辺、及び/又は、中間の辺も同時に形成することができる。
また、縦スリット素片形成手段及び/又は横スリット素片形成手段、あるいは、これらに加えて中間縦スリット素片形成手段の長さや配置を最適化すると、最終プレス加工が行われる前は個々の実装用基板がいずれかの部分で結合した状態となり、最終プレス加工時には個々の実装用基板を逐次切り離すことができる。そのため、加工途中における母板の搬送が極めて容易化する。
【0109】
さらに、各種の加工手段をN個の金型に分散配置させると、金型製作コストは上昇するが、金型に各種の貫通孔を密集して形成する必要がなくなる。そのため、金型の耐久性を低下させることなく、複雑な加工が可能となる。
【0110】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明に係る金型セットは、プリント回路板がプッシュバック法により枠部に仮止めされた実装用基板などの各種加工板を製造するための金型セットとして用いることができる。
また、本発明に係る加工板の製造方法及び製品板の製造方法は、このような金型セットを用いた実装用基板の製造方法、及び、このような方法により得られる実装用基板から枠部を分離し、プリント回路板を得る方法として用いることができる。
【符号の説明】
【0112】
10 金型セット
20a 下型(第1母板加工用金型)
22a〜22c 下型ストリッパー(プッシュバック手段)
26a〜26c 縦スリット素片形成ピン誘導穴(縦スリット素片形成手段)
20b 下型(第2母板加工用金型)
22d〜22f 下型ストリッパー(プッシュバック手段)
28a、28b 横スリット素片形成ピン誘導穴(横スリット素片形成手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型セット、加工板の製造方法、及び、製品板の製造方法に関し、さらに詳しくは、プリント回路板がプッシュバック法により枠部に仮止めされた実装用基板などの各種加工板を製造するためのN個1組の母板加工用金型からなる金型セット、このような金型セットを用いた加工板の製造方法、及び、このような方法により得られる加工板から製品板(プリント回路板)を得る製品板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化に伴い、電子機器に用いられるプリント回路板に対しても小型化、異形化の要求が増大している。一方、プリント回路板に電子部品を装着するためのチップマウンターや自動挿入機などの電子部品自動装着機(以下、これを「自装機」という。)は、搬送の関係から、ワークの大きさに上限と下限がある。また、自装機に使用するワークの外形は、実質的に長方形であること、すなわち、少なくとも一つの辺が直線で、これに直交する辺の少なくとも1つが直線であることが要求される。
【0003】
そこで、小型、かつ異形のプリント回路板上に自装機を用いて電子部品を装着する場合には、まず、プリント配線母板に複数のプリント回路板を作り込み、Vカット法、プッシュバック法、ミシン目法等を用いて、プリント回路板がもとのプリント配線母板に仮止めされた状態とし、次いで、プリント配線母板の外形を自装機で搬送可能な大きさ、形状を有する基板(実装用基板)に切断する方法が用いられている。
【0004】
この内、Vカット法は、プリント配線母板上に印刷されたプリント回路の境界線に沿ってV字形、U字型等の凹溝(Vカット)を入れ、プリント回路上に電子部品を実装した後、Vカットに沿って破断させる方法である。従って、Vカット法は、その外形が直線的であるプリント回路板に対してのみ適用可能である。
また、ミシン目法は、プリント回路板の境界線に沿って、多数の小孔をあけ、小孔に沿って破断させる方法である。ミシン目法は、破断後の境界線に凹凸が残るので、外形の寸法精度が要求されないプリント回路板に対してのみ適用可能である。なお、ミシン目に代えて、プリント回路板の境界線に沿って不連続な長孔を離散的に形成し、幅の狭い連結部で枠部に仮止めする方法も知られている。
【0005】
一方、プッシュバック法は、上型及び下型でプリント配線母板を狭持しながら、所定の形状を有する刃物を用いてプリント回路板を打ち抜き、次いで、打ち抜かれたプリント回路板を元の穴にはめ込む方法である。プッシュバック法は、外形の寸法精度が高く、かつ、プリント回路板の形状に制約はないので、特に、異形のプリント回路板に電子部品を自動装着する場合に有効な方法である。
【0006】
プッシュバック法を用いたプリント配線母板の加工は、一般に、
(1) 電気回路が印刷されたプリント配線母板にプッシュバック用の基準穴を形成し、
(2) プッシュバック用金型を用いて、プリント回路板のプッシュバック加工、及び、必要に応じて部品穴等の穿孔を行い、
(3) 外形切断用金型を用いてプリント配線母板の外形を切断し、所定個数のプリント回路板を含む実装用基板を母板から切り出す、
ことにより行われている。
【0007】
しかしながら、プッシュバック加工は、一般に、プリント配線母板に強いせん断力が作用するため、反りが発生しやすい。プッシュバック加工と外形切断は、従来、別個の金型を用いて行うのが一般的であったが、母板に対してプッシュバック加工のみを連続して行うと母板に大きな反りが発生し、外形切断が困難になるという問題があった。また、プッシュバック加工用の金型と外形切断用の金型が必要となり、高コスト化を招くという問題があった。さらに、製造された実装用基板に反りが発生し、あるいは、相対的に大きな残留応力があると、枠部からプリント回路板を取り外すのが困難になるという問題があった。
【0008】
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、プリント配線母板の搬送方向に対して上流側に配置され、前記プリント配線母板からプリント回路板を打ち抜き、打ち抜かれた前記プリント回路板を元の穴にはめ込むためのプッシュバック手段と、前記プリント配線母板の搬送方向に対して下流側に配置され、プッシュバックされた1又は2以上の前記プリント回路板を含む実装用基板を前記プリント配線母板から切り出すための外形切断手段とを備えたプリント配線母板加工用金型が開示されている。
同文献には、プッシュバック手段によりプッシュバックされた領域が外形切断手段により逐次切り離されるので、プリント配線母板の反りの影響を大きく受けることなく容易に外形切断が行える点、及び、1つの金型でプッシュバック加工と外形切断加工とを行うことができるので、金型コストを低減できる点が記載されている。
【0009】
また、特許文献2には、プリント配線母板からプリント回路板を打ち抜き、打ち抜かれた前記プリント回路板を元の穴にはめ込むためのプッシュバック手段と、打ち抜かれた前記プリント回路板の少なくとも一方の側方に、前記プリント配線母板の搬送方向に対して平行な縦スリット素片を順次形成することによって、加工板の基準辺となる連続した縦スリットを形成するための縦スリット形成手段とを備えたプリント配線母板加工用金型が開示されている。
同文献には、
(1)プッシュバックされたプリント回路板の少なくとも一方の側方には、連続した縦スリットが形成されるので、従来の方法に比して、外形切断が簡略化される点、
(2)横スリット形成手段をさらに備えている場合には、プリント配線母板の搬送方向に並んだ各プリント回路板の間には、縦スリットと直交する不連続な横スリットが形成されるので、プッシュバック加工終了後に、所定の位置に形成された横スリットの連結部分を破断させるだけで、プッシュバックされた所定個数のプリント回路板を含む加工板が得られる点、及び、
(3)外形切断用の別個の金型又は外形切断工程が不要化又は簡略化されるので、金型コストを大幅に削減でき、作業性も向上する点、
が記載されている。
【0010】
さらに、特許文献3には、
(1)母板を順方向送りしたときに第1の製品板のプッシュバック加工を行い、かつ、母板を反転方向送りしたときに新たに第2の製品板のプッシュバック加工を行うようにプッシュバック手段が設けられ、
(2)母板を順方向送りしたときに縦スリット素片が連通せず、かつ、母板を反転方向送りしたときに縦スリット素片が連通して連続した縦スリットとなるように縦スリット素片形成手段が設けられた母板加工用金型が開示されている。
同文献には、このような母板加工用金型を用いることにより、プレス能力の小さい小型のプレス機械を用いて、多数の製品板が組み込まれた大面積の加工板を製造することが可能となる点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−233996号公報
【特許文献2】特開2003−089097号公報
【特許文献3】特許第4341929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
実装用基板に組み込まれたプリント回路板に電子部品を自動実装する場合、実装用基板に組み込まれるプリント回路板の数が多くなるほど、実装効率は向上する。しかしながら、多数のプリント回路板が組み込まれた実装用基板を製造するためには、実装用基板内に多数のプリント回路板を作り込むことが可能な金型が必要になる。そのため、実装用基板に組み込まれるプリント回路板の数が多くなるほど、金型の構造が複雑化し、必要な部品点数も多くなるという問題がある。
また、実装用基板に組み込まれるプリント回路板の数が多くなるほど、実装用基板の面積が大きくなり、これに応じて金型も大型化する。そのため、加工に必要なプレス圧力も大きくなり、より大型のプレス機械が必要になるという問題がある。特に、プリント回路板のプッシュバック加工を行う際には、打ち抜かれたプリント回路板を元の穴にはめ戻すための弾性部材の付勢力に抗してプリント回路板の打ち抜きを行う必要があるため、プッシュバック加工が行なわれる面積が大きくなるほど、より大きなプレス機械が必要となる。
さらに、実装用基板に多数のプリント回路板を組み込むためには、それに応じて、金型内に種々の加工を施すための機構を組み込む必要がある。しかしながら、限られた領域内に多数の機構を組み込むと、金型の強度が低下し、耐久性が低下する場合がある。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、多数の製品板(例えば、プリント回路板)がプッシュバック加工さらた加工板(例えば、実装用基板)を製造する場合であっても、金型構造が複雑化したり、あるいは、必要な部品点数を増加させることのない金型セット、これを用いた加工板の製造方法、及び、このような加工板から製品板を製造する製品板の製造方法を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、多数の製品板がプッシュバック加工された加工板を製造する場合であっても、加工に必要なプレス圧力を増大させることのない金型セット、これを用いた加工板の製造方法、及び、このような加工板から製品板を製造する製品板の製造方法を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、多数の製品板がプッシュバック加工された加工板を製造することが可能であり、しかも耐久性に優れた金型セット、これを用いた加工板の製造方法、及び、このような加工板から製品板を製造する製品板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明に係る第1の金型セットは、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記金型セットは、N個(N≧2)の母板加工用金型からなり、前記各母板加工用金型を用いて同一の母板に対し、前記母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工及び前記母板を反転方向送りしながらプレス加工を行うN回の反転方向プレス加工の合計2N回のプレス加工を行うことにより、前記母板から、プッシュバックされた製品板が枠部に仮止めされた加工板を製造するために用いられる。
(2)N個の前記各母板加工用金型は、それぞれ、前記母板から前記製品板を打ち抜き、打ち抜かれた前記製品板を元の穴にはめ込むための少なくとも1個のプッシュバック手段を備え、
i番目(1≦i≦N)の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段は、j番目(1≦j≦N、j≠i)の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段によりプッシュバック加工される部分とは異なる部分において、前記母板から新たな前記製品板のプッシュバック加工を行うことができるように配置されている。
(3)i番目の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段は、それぞれ、
(a)前記母板を順方向送りした時に、前記加工板となる領域内の一部において第1の製品板のプッシュバックを行うことができ、かつ、
(b)前記母板を順方向送りした後、さらに前記母板を反転方向送りした時に、前記加工板となる領域内の前記第1の製品板とは異なる部分において新たに第2の製品板のプッシュバックを行うことができる
ように配置されている。
(4)前記金型セットは、N個の前記母板加工用金型のいずれか1以上に、
前記母板の少なくとも一方の側端部に、前記母板の搬送方向に対して平行な縦スリット素片を形成するための縦スリット素片形成手段、及び、
前記母板の搬送方向に対して垂直な横スリット素片を形成するための横スリット素片形成手段
の内の何れか一方を備えている。
(5)前記縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記縦スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して平行な辺となる連続した縦スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置され、
前記横スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記横スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して垂直な辺となる連続した横スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
【0015】
本発明に係る第1の加工板の製造方法は、本発明に係る第1の金型セットに備えられるN個の母板加工用金型を用いて同一の母板に対し、前記母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工及び前記母板を反転方向送りしながらプレス加工を行うN回の反転方向プレス加工の合計2N回のプレス加工を行うことにより、前記母板から、プッシュバックされた製品板が枠部に仮止めされた加工板を製造するプレス工程を備えている。
本発明に係る第1の製品板の製造方法は、本発明に係る第1の加工板の製造方法により得られた加工板から製品板を分離することを要旨とする。
【0016】
本発明に係る第2の金型セットは、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記金型セットは、N個(N≧2)の母板加工用金型からなり、前記各母板加工用金型を用いて同一の母板に対し、前記母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工を行うことにより、前記母板から、プッシュバックされた製品板が枠部に仮止めされた加工板を製造するために用いられる。
(2)N個の前記各母板加工用金型は、それぞれ、前記母板から前記製品板を打ち抜き、打ち抜かれた前記製品板を元の穴にはめ込むための少なくとも1個のプッシュバック手段を備え、
i番目(1≦i≦N)の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段は、j番目(1≦j≦N、j≠i)の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段によりプッシュバック加工される部分とは異なる部分において、前記母板から新たな前記製品板のプッシュバック加工を行うことができるように配置されている。
(3)前記金型セットは、N個の前記母板加工用金型のいずれか1以上に、
前記母板の少なくとも一方の側端部に、前記母板の搬送方向に対して平行な縦スリット素片を形成するための縦スリット素片形成手段、及び、
前記母板の搬送方向に対して垂直な横スリット素片を形成するための横スリット素片形成手段
の内の何れか一方を備えている。
(4)前記縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記縦スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して平行な辺となる連続した縦スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置され、
前記横スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記横スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して垂直な辺となる連続した横スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
【0017】
本発明に係る第2の加工板の製造方法は、本発明に係る第2の金型セットに備えられるN個の母板加工用金型を用いて同一の母板に対し、前記母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工を行うことにより、前記母板から、プッシュバックされた製品板が枠部に仮止めされた加工板を製造するプレス工程を備えている。
本発明に係る第2の製品板の製造方法は、本発明に係る第2の加工板の製造方法により得られた加工板から製品板を分離することを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
1個の加工板に作り込まれる製品板のプッシュバック加工を行うためのプッシュバック手段ををN個の母板加工用金型に分散して配置し、N回の順方向プレス加工により個々の製品板のプッシュバック加工を行わせると、1回のプレス加工によりすべての製品板のプッシュバック加工を行う場合に比べて、プレス圧力を約1/Nに下げることができる。
同様に、1個の加工板に作り込まれる製品板のプッシュバック加工を行うためのプッシュバック手段をN個の母板加工用金型に分散して配置し、N回の順方向プレス加工及びN回の反転方向プレス加工により個々の製品板のプッシュバック加工を行わせると、1回のプレス加工によりすべての製品板のプッシュバック加工を行う場合に比べて、プレス圧力を約1/2Nに下げることができる。そのため、母板の搬送に支障を来さない限りにおいて、プレス能力の制約を全く受けることなく、多数の製品板がプッシュバックされた極めて大型の加工板を製造することができる。
さらに、これと同時に、縦スリット素片形成手段及び/又は横スリット素片形成手段をN個の母板加工用金型に分散して配置すると、最終プレス加工が終了した時点で、加工板の搬送方向に対して平行な辺、及び/又は、垂直な辺も同時に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、それぞれ、本発明に係る金型セットの第1具体例を構成する第1母板加工用金型の下型の平面図、及び、第2母板加工用金型の下型の平面図である。
【図2】図1(a)に示す第1母板加工用金型を用いたプリント配線母板の順方向プレス加工の工程図である。
【図3】図2に示す工程図の続きである。
【図4】図1(a)に示す第1母板加工用金型を用いたプリント配線母板の反転方向プレス加工の工程図である。
【図5】図1(b)に示す第2母板加工用金型を用いたプリント配線母板の順方向プレス加工の工程図である。
【図6】図5に示す工程図の続きである。
【図7】図1(b)に示す第2母板加工用金型を用いたプリント配線母板の反転方向プレス加工の工程図である。
【0020】
【図8】図8(a)、図8(b)及び図8(c)は、それぞれ、本発明に係る金型セットの第2具体例を構成する第1母板加工用金型の下型の平面図、第2母板加工用金型の下型の平面図、及び、第3母板加工用金型の下型の平面図である。
【図9】図8(a)に示す第1母板加工用金型を用いたプリント配線母板の順方向プレス加工の工程図である。
【図10】図8(b)に示す第2母板加工用金型を用いたプリント配線母板の順方向プレス加工の工程図である。
【図11】図8(c)に示す第3母板加工用金型を用いたプリント配線母板の順方向プレス加工の工程図である。
【図12】図8(a)に示す第1母板加工用金型を用いたプリント配線母板の反転方向プレス加工の工程図である。
【図13】図8(b)に示す第2母板加工用金型を用いたプリント配線母板の反転方向プレス加工の工程図である。
【図14】図8(c)に示す第3母板加工用金型を用いたプリント配線母板の反転方向プレス加工の工程図である。
【0021】
【図15】図15(a)及び図15(b)は、それぞれ、本発明に係る金型セットの第3具体例を構成する第1母板加工用金型の下型の平面図、及び、第2母板加工用金型の下型の平面図である。
【図16】図15(a)に示す第1母板加工用金型を用いたプリント配線母板の順方向プレス加工の工程図である。
【図17】図15(a)に示す第1母板加工用金型を用いたプリント配線母板の反転方向プレス加工の工程図である。
【図18】図15(b)に示す第1母板加工用金型を用いたプリント配線母板の順方向プレス加工の工程図である。
【図19】図15(b)に示す第1母板加工用金型を用いたプリント配線母板の反転方向プレス加工の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、プリント配線母板からプリント回路板を含む実装用基板を製造するためのN個1組の母板加工用金型からなる金型セット、及び、このような金型セットを用いた実装用基板の製造方法について説明するが、本発明は、プリント配線母板以外の「母板」、実装用基板以外の「加工板」、プリント回路板以外の「製品板」についても適用することができる。
【0023】
[1. 金型セット(1)]
[1.1. 基本構成]
本発明の第1の実施の形態に係る金型セットは、以下の構成を備えたている。
[1.1.1. 金型の個数]
金型セットは、N個(N≧2)の母板加工用金型からなり、各母板加工用金型を用いて同一のプリント配線母板に対し、N回の順方向プレス加工及びN回の反転方向プレス加工の合計2N回のプレス加工を行うためのものである。2N回のプレス加工を行うことにより、プリント配線母板から実装用基板を製造することができる。
【0024】
母板加工用金型の個数Nは、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。一般に、母板加工用金型の個数Nが多くなるほど、金型制作費及び金型交換の工数は増大するが、複雑な加工を分散して行うことができるので、金型構造を単純化することができ、1プレス当たりのプレス圧力を下げることができる。
【0025】
「順方向プレス加工」とは、プリント配線母板をある1つの方向(順方向)に搬送しながらn回(n≧1)のプレス加工を行うことをいう。
「反転方向プレス加工」とは、プリント配線母板を順方向とは180°異なる方向(反転方向)に搬送しながらn'回(n'≧1)のプレス加工を行うことを言う。
「1回の順方向(又は、反転方向)プレス加工」とは、プリント配線母板を順方向(又は、反転方向)にステップ送りしながら複数回のプレスを行う場合には、順方向(又は、反転方向)にステップ送りしながら行う一連(複数回)のプレス加工をいう。プリント配線母板の大きさによっては、1回の順方向(又は、反転方向)プレス加工において、1回だけプレス加工が行われる場合もある。
【0026】
本発明に係る金型セットにより製造される実装用基板は、プッシュバックされたプリント回路板が枠部に仮止めされたものである。プリント配線母板から複数個の実装用基板が製造される場合、個々の実装用基板は、金型セットの構成(後述する縦スリット素片形成手段、横スリット素片形成手段及び中間縦スリット素片形成手段の長さや配置)に応じて互いに分離している場合と、いずれかの部分を介して連結している場合とがある。
金型セットにより製造された複数個の実装用基板がいずれかの部分を介して連結している場合、金型セットによる加工が終了した後、他の手段(例えば、汎用のシャーリング装置、切断専用のプレス金型など)を用いて連結部を切断すれば良い。
また、プリント配線母板から複数個の実装用基板が製造される場合において、金型セットの構成(後述する横スリット素片形成手段及び中間縦スリット素片形成手段の長さや配置)によっては、最終プレスが行われる前に個々の実装用基板が分離する場合がある。加工途中で個々の実装用基板が分離しても、順方向プレス及び反転方向プレスは可能であるので、本発明においては、最終プレス前に実装用基板が分離した場合であっても、便宜上、最終プレス前の実装用基板を「プリント配線母板」という。
【0027】
[1.1.2. プッシュバック手段]
N個の各母板加工用金型は、それぞれ、プリント配線母板からプリント回路板を打ち抜き、打ち抜かれたプリント回路板を元の穴にはめ込むための少なくとも1個のプッシュバック手段を備えている。すなわち、本発明に係る金型セットは、1個の実装用基板に作り込まれるプリント回路板のプッシュバック加工をN個の母板加工用金型に分散させて行わせている。この点が、従来の金型とは異なる。
そのため、i番目(1≦i≦N)の母板加工用金型に設けられたプッシュバック手段は、j番目(1≦j≦N、j≠i)の母板加工用金型に設けられたプッシュバック手段によりプッシュバック加工される部分とは異なる部分において、プリント配線母板から新たなプリント回路板のプッシュバック加工を行うことができるように配置される。
各プッシュバック手段は、各母板加工用金型で行われるプッシュバック加工の位置及び/又は大きさが異なるように配置されていれば良い。すなわち、各プッシュバック手段は、プリント配線母板の未加工部分(空白部分)において新たにプッシュバック加工するものでも良く、あるいは、他の金型でプッシュバック加工が行われた部分と同一ではないが、重なる部分においてプッシュバック加工するものでも良い。
【0028】
さらに、本実施の形態に係る金型セットは、各母板加工用金型毎に、それぞれ、1回の順方向プレス及び1回の反転方向プレスを行わせる。そのため、i番目の各母板加工用金型に設けられたプッシュバック手段は、それぞれ、
(a)プリント配線母板を順方向送りした時に、実装用基板となる領域内の一部において第1のプリント回路板のプッシュバックを行うことができ、かつ、
(b)プリント配線母板を順方向送りした後、さらにプリント配線母板を反転方向送りした時に、実装用基板となる領域内の第1のプリント回路板とは異なる部分において新たに第2のプリント回路板のプッシュバックを行うことができる
ように配置されている。
「異なる部分」とは、上述したように未加工部分(空白部分)又は同一ではないが、重なる部分をいう。
【0029】
[1.1.3. 縦スリット素片形成手段、横スリット素片形成手段]
本実施の形態に係る金型セットは、N個の母板加工用金型のいずれか1以上に、縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段の何れか一方、又は、双方を備えている。
「縦スリット素片形成手段」とは、プリント配線母板の少なくとも一方の側端部に、プリント配線母板の搬送方向に対して平行な縦スリット素片を形成するための手段をいう。縦スリット素片(又は、連続した縦スリット)は、プリント配線母板の片側にのみ形成しても良く、あるいは、両側に形成しても良い。
「横スリット素片形成手段」とは、プリント配線母板の搬送方向に対して垂直な横スリット素片を形成するための手段をいう。
【0030】
縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)を行うことにより縦スリット素片が互いに連通し、実装用基板の基準辺(搬送方向に対して平行な辺)となる連続した縦スリットとなるように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されている。
同様に、横スリット素片形成手段は、同一又は異なる母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)を行うことにより横スリット素片が互いに連通し、実装用基板の基準辺(搬送方向に対して垂直な辺)となる連続した横スリットとなるように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されている。
【0031】
プリント配線母板から、その搬送方向に沿って1列に並んだ複数個の実装用基板を切り出す場合において、N個の母板加工用金型のいずれか1以上に縦スリット素片形成手段のみが設けられているときには、複数個の実装用基板が搬送方向に対して垂直な辺を介して一体的に繋がった集合体(中間製品)が得られる。この場合、N回の順方向プレス加工及びN回の反転方向プレス加工が終了した後、連結部を他の手段で切断すれば良い。
また、N個の母板加工用金型のいずれか1以上に横スリット素片形成手段のみが設けられている場合において、これによって形成される連続した横スリットがプリント配線母板の両端に達しているときには、最後の順方向プレス加工又は反転方向プレス加工が行われる前に、実装用基板同士が分離する場合がある。このような場合であっても後続するプレス加工は可能である。しかしながら、最終プレス加工前のプリント配線母板の搬送を容易化するためには、連続した横スリットがプリント配線母板の両端に達しないように(すなわち、母板の側端部を介して各実装用基板が連結した状態となるように)、横スリット素片形成手段を配置するのが好ましい。横スリット素片形成手段のみを備えた金型セットを用いてプレス加工を行った場合、N回の順方向プレス加工及びN回の反転方向プレス加工が終了した後、実装用基板の搬送方向に対して平行な辺を他の手段で形成すれば良い。
【0032】
また、プリント配線母板から、その搬送方向に沿って1列に並んだ複数個の実装用基板を切り出す場合において、N個の母板加工用金型のいずれか1以上に、縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段の双方が設けられている場合、プリント配線母板の搬送を容易化するためには、最終プレスが行われる前は各実装用基板がいずれかの部分を介して一体的に繋がっており、かつ、最終プレスが行われるときに実装用基板がプリント配線母板から逐次切り離されるように、縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段を配置するのが好ましい。
すなわち、縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段は、
(a)(2N−1)回目のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)が終了した時点において、縦スリット素片及び横スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、プリント配線母板内にあるすべての実装用基板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)2N回目のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)時において、連通していなかった縦スリット素片及び/又は横スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した縦スリット及び/又は横スリットとなり、これによって一体的に連結していた実装用基板がプリント配線母板から逐次切り離される
ように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されているのが好ましい。
【0033】
[1.1.4. 中間縦スリット素片形成手段]
本実施の形態に係る金型セットは、N個の母板加工用金型のいずれか1以上に、縦スリット素片形成手段及び/又は横スリット素片形成手段に加えて、さらに中間縦スリット素片形成手段を備えていても良い。
「中間縦スリット素片形成手段」とは、プリント配線母板の中間部に、プリント配線母板の搬送方向に対して平行な中間縦スリット素片を形成するための手段をいう。「中間部」とは、必ずしもプリント配線母板の中心線を意味するものではなく、中間縦スリットは、プリント配線母板の中心線から左右にずれていても良い。
中間縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)を行うことにより中間縦スリット素片が互いに連通し、実装用基板の基準辺(搬送方向に対して平行な辺)となる連続した中間縦スリットとなるように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されている。
【0034】
プリント配線母板の横幅は、搬送方向に沿って実装用基板を1列に並べることができる幅であっても良く、あるいは、搬送方向に沿って実装用基板を2列以上並べることができる幅であっても良い。搬送方向に沿って実装用基板が2列以上並んでいる場合、実装用基板の各列間の連結部は、他の手段を用いて分離しても良い。しかしながら、中間縦スリット素片形成手段を用いて、プリント回路板のプッシュバックと同時に実装用基板の各列間の連結部を切断すると、他の手段を用いた実装用基板の分離工程が不要になる。
【0035】
プリント配線母板の搬送方向に沿って実装用基板が2列以上に並んでいる場合において、中間縦スリット素片形成手段を設けると、中間縦スリットが横スリットに連通し、最終プレスが行われる前に、個々の実装用基板が分離する場合がある。個々の実装用基板が分離しても引き続き順方向プレス及び反転方向プレスを行うことは可能であるが、プリント配線母板の搬送が煩雑となる。
そのため、縦スリット素片形成手段及び/又は横スリット素片形成手段に加えて中間縦スリット素片形成手段を備えている場合には、縦スリット素片形成手段、横スリット素片形成手段、及び、中間縦スリット素片形成手段は、
(a)(2N−1)回目のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)が終了した時点において、縦スリット素片、横スリット素片及び中間縦スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、プリント配線母板内にあるすべての実装用基板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)2N回目のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)時において、連通していなかった縦スリット素片、横スリット素片及び/又は中間縦スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した縦スリット、横スリット及び/又は中間縦スリットとなり、これによって一体的に連結していた実装用基板がプリント配線母板から逐次切り離される
ように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されているのが好ましい。
【0036】
[1.2. 金型セット(1)の第1具体例]
[1.2.1. 第1具体例の構成]
図1に、本実施の形態に係る金型セットの第1の具体例を示す。図1において、金型セット10は、第1母板加工用金型(図1(a)にその下型20aのみを示す)と、第2母板加工用金型(図2(b)に、その下型20bのみを示す)の2個1組の金型からなる。
金型セット10は、基本的には、特許文献3に記載の金型を搬送方向に対して上流側と下流側に二分割し、合計6個のプッシュバック手段を、第1母板加工用金型と、第2母板加工用金型にそれぞれ3個ずつ分散させて配置したものである。また、金型セット10は、第1母板加工用金型を用いた順方向プレス及び反転方向プレス、並びに、第2母板加工用金型を用いた順方向プレス及び反転方向プレスの合計4回のプレス加工により、実装用基板を製造するためのものである。
【0037】
第1母板加工用金型の下型20aは、プリント回路板をプッシュバックするための合計3個の下型ストリッパー22a、22b、22cが埋設されている。下型ストリッパー22a〜22cは、図示しない付勢手段により上方向に付勢されている。また、図示しない上型には、下型ストリッパー22a〜22cに対応する位置に、これらを下方向に押圧するためのパンチが設けられている。
下型ストリッパー22a〜22cは、それぞれ、
(a)プリント配線母板を順方向送りした時に、実装用基板となる領域内の一部において第1のプリント回路板のプッシュバックを行うことができ、かつ、
(b)プリント配線母板を順方向送りした後、さらにプリント配線母板を反転方向送りした時に、実装用基板となる領域内の空白部分において新たに第2のプリント回路板のプッシュバックを行うことができる
ように配置されている。
【0038】
同様に、第2母板加工用金型の下型20bは、プリント回路板をプッシュバックするための合計3個の下型ストリッパー22d、22e、22fが埋設されている。下型ストリッパー22d〜22fは、図示しない付勢手段により上方向に付勢されている。また、図示しない上型には、下型ストリッパー22d〜22fに対応する位置に、これらを下方向に押圧するためのパンチが設けられている。
下型ストリッパー22d〜22fは、それぞれ、
(a)プリント配線母板を順方向送りした時に、実装用基板となる領域内の一部において第1のプリント回路板のプッシュバックを行うことができ、かつ、
(b)プリント配線母板を順方向送りした後、さらにプリント配線母板を反転方向送りした時に、実装用基板となる領域内の空白部分において新たに第2のプリント回路板のプッシュバックを行うことができる
ように配置されている。
【0039】
さらに、第1母板加工用金型の下型20aに設けられた下型ストリッパー22a〜22cと、第2母板加工用金型の下型20bに設けられた下型ストリッパー22d〜22fとは、互いに異なる部分(空白部分)において、プリント配線母板から新たなプリント回路板のプッシュバック加工を行うことができるように配置されている。
すなわち、下型ストリッパー22a〜22cは、第1母板加工用金型を用いて順方向プレス及び反転方向プレスを行ったときに、プリント回路板が千鳥状にプッシュバックされるように配置されている。
同様に、下型ストリッパー22d〜22fは、第2母板加工用金型を用いて順方向プレス及び反転方向プレスを行ったときに、第1母板加工用金型によりプッシュバック加工が行われなかった部分(空白部分)において、新たにプリント回路板が千鳥状にプッシュバックされるように配置されている。
【0040】
第1母板加工用金型の下型20aには、複数の貫通孔形成ピン誘導穴24…が設けられている。図示しない上型には、貫通孔形成ピン誘導穴24…に対応する位置に、それぞれ、貫通孔を打ち抜くための貫通孔形成ピンが設けられている。下型20aの貫通孔形成ピン誘導穴24…は、下型20bの下型ストリッパー22d〜22fによりプッシュバックされるプリント回路板に貫通孔を形成するためのものである。これらの貫通孔形成ピン誘導穴24…は、必要に応じて設けることができる。
同様に、第2母板加工用金型の下型20bには、複数の貫通孔形成ピン誘導穴24…が設けられている。図示しない上型には、貫通孔形成ピン誘導穴24…に対応する位置に、それぞれ、貫通孔を打ち抜くための貫通孔形成ピンが設けられている。下型20bの貫通孔形成ピン誘導穴24…は、下型20aの下型ストリッパー22a〜22cによりプッシュバックされるプリント回路板に貫通孔を形成するためのものである。これらの貫通孔形成ピン誘導穴24…は、必要に応じて設けることができる。
【0041】
第1母板加工用金型の下型20aの搬送方向に対して左側には、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a、26bが設けられ、搬送方向に対して右側には、縦スリット素片形成ピン誘導穴26cが設けられている。図示しない上型には、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26cに対応する位置に、それぞれ、縦スリット素片形成ピンが設けられている。
縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26cは、これらで形成される縦スリット素片が順方向プレスの際には完全に連通せず、かつ、順方向プレスを行った後、さらに反転方向プレスを行ったときに、互いに連通して連続した縦スリットとなるように、その長さ及び配置が定められている。また、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26cは、連続した縦スリットの上下端がプリント配線母板の上下端に達し、左右端の細長い端材が母板から完全に切り離されるように、その長さ及び位置が定められている。
【0042】
第2母板加工用金型の下型20bの搬送方向に対して上流側には、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bが設けられている。図示しない上型には、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bに対応する位置に、それぞれ、横スリット素片形成ピンが設けられている。
横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bは、これらで形成される横スリット素片が順方向プレスの際には互いに連通せず、かつ、順方向プレスを行った後、さらに反転方向プレスを行ったときに、互いに連通して連続した横スリットとなるように、その長さ及び配置が定められている。また、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bは、連続した横スリットの両端が縦スリットには連通するが、プリント配線母板の両端に達しないように、その長さ及び位置が定められている。
【0043】
さらに、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26c及び横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bは、それぞれ、
(a)(2N−1)回目(3回目)のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)が終了した時点において、縦スリット素片及び横スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、プリント配線内にあるすべての実装用基板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)2N回目(4回目)のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)時において、連通していなかった縦スリット素片及び/又は横スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した縦スリット及び/又は横スリットとなり、これによって一体的に連結していた実装用基板がプリント配線母板から逐次切り離される
ように、その長さ及び配置が定められている。
【0044】
第1母板加工用金型の下型20aの左側中央には、実装用基板の左右辺に応力緩和のためのスリットを形成するためのスリット形成ピン誘導穴32が設けられている。図示しない上型には、スリット形成ピン誘導穴32に対応する位置に、スリットを打ち抜くためのスリット形成ピンが設けられている。
同様に、第2母板加工用金型の下型20bの左側上下には、実装用基板の上下辺に応力緩和のためのスリットを形成するためのスリット形成ピン誘導穴34a、34bが設けられている。図示しない上型には、スリット形成ピン誘導穴34a、34bに対応する位置に、スリットを打ち抜くためのスリット形成ピンが設けられている。
なお、図1(b)に示す例において、スリット形成ピン誘導穴34bは、実装用基板の上下片に応力緩和のためのスリットを形成する機能だけでなく、プリント配線母板の外周部に切り込みを入れ、実装用基板を切り出した後のプリント配線母板の端材を細分化させる機能も奏するように、その長さ及び配置が定められている。
【0045】
さらに、第1母板加工用金型の下型20aには、プリント配線母板の位置決めに用いられる位置決めピン36a、36b、36c、36dが立設されている。
同様に、第2母板加工用金型の下型20bには、プリント配線母板の位置決めに用いられる位置決めピン36e、36f、36g、36h、36i、36jが立設されている。
位置決めピン36e〜36hは、第1母板加工用金型の下型20aに設けられた位置決めピン36a〜36dに対応する位置に設けられる。位置決めピン36i、36jは、プリント配線母板の最先端部分に連続した横スリットを形成するためのプレス加工を行う際に用いられる。図1(b)中、位置決めピン36e−36i間の距離が、プリント配線母板をステップ送りする際の搬送距離となる。
【0046】
[1.2.2. 第1具体例を用いた実装用基板の製造方法]
図2〜図7に、図1に示す金型セット10を用いたプリント配線母板のプレス加工の工程図を示す。
まず、図2に示すように、第1母板加工用金型の下型20aの上面にプリント配線母板100を載せる。プリント配線母板100には、予め位置決めピン36a〜36jに対応する位置に、基準穴102…が形成されている。プリント配線母板100の位置決めは、下型20aの上面に設けられた位置決めピン36a〜36dを基準穴102…に挿入することにより行われる。
この状態で、第1母板加工用金型を用いた順方向プレスの1回目のプレス加工を行うと、下型ストリッパー22a〜22c及び図示しないパンチによりプリント回路板のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、貫通孔形成ピン誘導穴24…及び貫通孔形成ピン(図示せず)による貫通孔の打ち抜き、縦スリット素片形成ピン26a〜26c及び縦スリット素片形成ピン(図示せず)による縦スリット素片の打ち抜き、並びに、スリット形成ピン誘導穴32及びスリット形成ピン(図示せず)によるスリットの打ち抜きが行われる。
【0047】
以下、プリント配線母板100をステップ送りしながら順方向プレスを行う。図3に、第1母板加工用金型(下型20a)を用いた順方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
順方向プレスの最終プレス加工前のプリント配線母板100には、それ以前のプッシュバック加工で打ち抜かれたプリント回路板104a…、104b…、104c…が元の穴にはめ込まれた状態になっている。これと同時に、プリント配線母板100には、貫通孔106…、縦スリット素片108a〜108c、及び、スリット110…が形成されている。また、この時、縦スリット素片形成ピン26aで形成される縦スリット素片108aと縦スリット素片形成ピン26bで形成される縦スリット素片108bの一部が連通し、長い縦スリット素片108a+108bとなる。
この状態で、第1母板加工用金型を用いた順方向プレスの最終(3回目)プレス加工を行うと、最後のプリント回路板104a〜104cのプッシュバック加工、貫通孔106…の打ち抜き、縦スリット素片108a〜108cの打ち抜き、及び、スリット110…の打ち抜きが行われる。
【0048】
次に、プリント配線母板100を180°回転させ、プリント配線母板100をステップ送りしながら第1母板加工用金型を用いた反転方向プレスを行う。図4に、第1母板加工用金型(下型20a)を用いた反転方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
下型ストリッパー22a〜22cは、反転方向の際には順方向プレスとは異なる位置でプッシュバック加工が行われるように配置されている。そのため、順方向プレス及び反転方向プレスが終了したときには、プリント回路板104a〜104cが千鳥状にプッシュバック加工された状態となる。
これと同時に、プリント配線母板100には、貫通孔106…及びスリット110…が新たに形成される。
【0049】
さらに、プリント配線母板100の左側では、順方向プレスで形成された縦スリット素片108c間が、反転方向プレスの際に形成される縦スリット素片(108a+108b)により切断され、連続した縦スリット108c+(108a+108b)となる。
同様に、プリント配線母板100の右側では、順方向プレスで形成された縦スリット素片(108a+108b)間が、反転方向プレスの際に形成される縦スリット素片108cにより切断され、連続した縦スリット(108a+108b)+108cとなる。その結果、プリント配線母板100の両端から細長い端材100a、100bが分離する。
【0050】
次に、プリント配線母板100を再度180°回転させ、第2母板加工用金型を用いた順方向プレスを行う。
まず、図5に示すように、第2母板加工用金型の下型20bの上面にプリント配線母板100を載せる。この時、位置決めピン36i、36jをプリント配線母板100の最先端にある基準穴に挿入する。なお、図5においては、見やすくするために、第1母板加工用金型でプッシュバックされたプリント回路板にハッチングを施してある。図6〜7も同様である。
この状態で1回目のプレスを行うと、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28b及び横スリット素片形成ピン(図示せず)により、プリント配線母板100の最先端に横スリット素片が形成される。
【0051】
以下、プリント配線母板100をステップ送りしながら順方向プレスを行う。図6に、第2母板加工用金型(下型20b)を用いた順方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
下型ストリッパー22d〜22fは、第1母板加工用金型の下型ストリッパー22a〜22cとは異なる位置でプッシュバック加工が行われるように配置されている。そのため、順方向プレスが終了したときには、第1母板加工用金型で加工されていない領域において、プリント回路板104d…、104e…、104f…が新たにプッシュバック加工される。
これと同時に、プリント配線母板100には、貫通孔106…、及び、スリット112a…、112b…が新たに形成される。
さらに、プリント配線母板100には、横スリット素片114a…、114b…が新たに形成される。しかも、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26c及び横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bの長さ及び配置が最適化されているので、この時点では、個々の実装用基板が分離せず、一体化した状態になっている。
【0052】
最後に、プリント配線母板100を再度180°回転させ、プリント配線母板100をステップ送りしながら第2母板加工用金型を用いて反転方向プレスを行う。図7に、第2母板加工用金型(下型20b)を用いた反転方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
下型ストリッパー22d〜22fは、反転方向プレスの際に順方向プレスとは異なる位置でプッシュバック加工が行われるように配置されている。そのため、順方向プレス及び反転方向プレスが終了したときには、第1母板加工用金型で加工されていない領域において、プリント回路板104d〜104fが新たに千鳥状にプッシュバックされる。
これと同時に、プリント配線母板100には、貫通孔106…、及び、スリット112a…、112b…が新たに形成される。
さらに、プリント配線母板100には、横スリット素片114a…、114b…が新たに形成される。しかも、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26c及び横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bの長さ及び配置が最適化されているので、個々のプレス加工毎に、実装用基板140…がプリント配線母板100から逐次切り離される。また、プリント配線母板100の上下端から端材100c、100dが切り離される。
【0053】
以上の方法により、プッシュバックされたプリント回路板104a〜104fが枠部に仮止めされた実装用基板140…が得られる。得られた実装用基板140…は、自動実装工程に送られ、表面に各種の電子部品が実装される。自動実装終了後、枠部を破断させることによって枠部とプリント回路板を分離し、分離したプリント回路板を各種の電子機器に組み込むことができる。
【0054】
[1.2.3. 第1具体例の作用]
打ち抜き加工は、プリント配線母板をせん断させるための荷重(せん断荷重)のみで加工することができる。一方、プッシュバック加工は、打ち抜かれたプリント回路板を弾性部材の付勢力によって元の穴にはめ戻すため、せん断荷重に加えて、弾性部材の付勢力に抗してストリッパーを押し下げるための荷重も必要となる。そのため、プリント回路板がプッシュバックされた実装用基板を製造する場合において、プッシュバックされるプリント回路板の個数や面積が大きくなるほど、より容量の大きなプレス機械が必要となる。
これに対し、プッシュバック手段をN個の金型に分散して配置し、かつ、N回の順方向プレス加工及びN回の反転方向プレス加工により個々のプリント回路板のプッシュバック加工を行わせると、1回のプレス加工によりすべてのプリント回路板のプッシュバック加工を行う場合に比べて、プレス圧力を約1/2Nに下げることができる。そのため、母板の搬送に支障を来さない限りにおいて、プレス能力の制約を全く受けることなく、多数のプリント回路板がプッシュバックされた極めて大型の実装用基板を製造することができる。また、大型の実装用基板を製造するために、新たに設備投資する必要もない。
【0055】
さらに、これと同時に、縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段をN個の母板加工用金型に分散して配置すると、2回以上の順方向プレス又は反転方向プレスが終了した時点で、実装用基板の搬送方向に対して平行な辺、及び、垂直な辺も同時に形成することができる。
また、縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段の長さや配置を最適化すると、最終プレス加工が行われる前は個々の実装用基板がいずれかの部分で結合した状態となり、最終プレス加工時には個々の実装用基板を逐次切り離すことができる。そのため、加工途中における母板の搬送が極めて容易化する。
【0056】
さらに、プリント回路板のプッシュバック加工、並びに、縦スリット素片及び横スリット素片の形成が1回のプレスで行われるように、そのための手段を1個の金型に配置することもできる。しかしながら、このような複数の加工を1回のプレスで行わせるためには、金型に各種の貫通孔を密集して形成する必要がある。貫通孔が密集すると、貫通孔間の壁の厚さが薄くなり、金型強度が著しく低下する。
これに対し、各種の加工手段をN個の金型に分散配置させると、金型製作コストは上昇するが、金型に各種の貫通孔を密集して形成する必要がなくなる。そのため、金型の耐久性を低下させることなく、複雑な加工が可能となる。
【0057】
なお、図2〜図7には、(1)第1母板加工用金型を用いた順方向プレス、(2)第1母板加工用金型を用いた反転方向プレス、(3)第2母板加工用金型を用いた順方向プレス、(4)第2母板加工用金型を用いた反転方向プレス、の順に加工する例を示したが、これらの順序を入れ替えても、同様の効果が得られる。
また、例えば、図1に示す金型セット10において、縦スリット素片形成手段又は横スリット素片形成手段の何れか一方を省略すると、連続した横スリット又は連続した縦スリットのみを備えた実装用基板の集合体が得られる。
【0058】
[1.3. 金型セット(1)の第2具体例]
[1.3.1. 第2具体例の構成]
図8に、本実施の形態に係る金型セットの第2の具体例を示す。図8において、金型セット10aは、第1母板加工用金型(図8(a)に、その下型20aのみを示す)と、第2母板加工用金型(図8(b)に、その下型20bのみを示す)と、第3母板加工用金型(図8(c)に、その下型20cのみを示す)の3個1組の金型からなる。なお、図8中、図1に対応する部分には、図1と同様の符号を付してある。
金型セット10aは、基本的には、特許文献3に記載の金型を搬送方向に対して左、中、右に三分割し、合計6個のプッシュバック手段を、第1〜第3母板加工用金型にそれぞれ2個ずつ分散させて配置したものである。
また、金型セット10aは、第1〜第3母板加工用金型を用いた順方向プレス及び反転方向プレスの合計6回のプレス加工により、実装用基板を製造するためのものである。
【0059】
第1〜第3母板加工用金型及び図示しない上型は、それぞれ、プリント配線母板の搬送方向に対して上流側が第1加工領域12に、また、搬送方向に対して下流側が第2加工領域14になっている。
「第1加工領域12」とは、プリント配線母板の搬送方向に対して上流側に配置された、実装用基板と同等以上の面積を有する加工領域をいう。
「第2加工領域14」とは、プリント配線母板の搬送方向に対して下流側に配置された、実装用基板と同等以上の面積を有する加工領域をいう。
実装用基板内に作り込まれるプリント回路板の形状、配置、加工方法等によっては、実装用基板1個分の加工領域のみを備えた金型(例えば、図1に記載した金型)でも本発明に係る方法を実施することができる。しかしながら、第1〜第3母板加工用金型の加工領域を第1加工領域12と第2加工領域14に分割し、第1加工領域12と第2加工領域14の双方においてプリント配線母板の加工を逐次行うようにすると、第1加工領域12と第2加工領域14の間で機能を分担させることができる。そのため、金型の構造を著しく複雑化させたり、耐久性を低下させることなく、プリント配線母板に対して複雑な加工を行うことが可能となる。
【0060】
第1母板加工用金型の下型20aの第1加工領域12には、プリント回路板をプッシュバックするための下型ストリッパー22dが埋設され、第2加工領域14には、下型ストリッパー22aが埋設されている。
同様に、第2母板加工用金型の下型20bの第1加工領域12には、プリント回路板をプッシュバックするための下型ストリッパー22eが埋設され、第2加工領域14には、下型ストリッパー22bが埋設されている。
同様に、第3母板加工用金型の下型20cの第1加工領域12には、プリント回路板をプッシュバック加工するための下型ストリッパー22fが埋設され、第2加工領域14には、下型ストリッパー22cが埋設されている。
【0061】
下型ストリッパー22a〜22fは、それぞれ、
(a)プリント配線母板を順方向送りした時に、実装用基板となる領域内の一部において第1のプリント回路板のプッシュバックを行うことができ、かつ、
(b)プリント配線母板を順方向送りした後、さらにプリント配線母板を反転方向送りした時に、実装用基板板となる領域内の空白部分において新たに第2のプリント回路板のプッシュバックを行うことができる
ように配置されている。
【0062】
さらに、第1母板加工用金型の下型20aに設けられた下型ストリッパー22a、22d、第2母板加工用金型の下型20bに設けられた下型ストリッパー22b、22e、及び、第3母板加工用金型の下型20cに設けられた下型ストリッパー22c、22fは、互いに異なる部分(空白部分)において、プリント配線母板から新たなプリント回路板のプッシュバック加工を行うことができるように配置されている。
【0063】
下型20a〜20cには、それぞれ、複数の貫通孔形成ピン誘導穴24…が設けられている。下型20aの第1加工領域12に設けられた貫通孔形成ピン誘導穴24…は、第2加工領域14の下型ストリッパー22aでプッシュバックされるプリント回路板に貫通孔を形成するためのものである。同様に、下型20aの第2加工領域14に設けられた貫通孔形成ピン誘導穴24…は、第1加工領域12の下型ストリッパー22dでプッシュバックされるプリント回路板に貫通孔を形成するためのものである。これらの貫通孔形成ピン誘導穴24…は、必要に応じて設けることができる。
これらの点は、下型20b、20cに設けられた貫通孔形成ピン誘導穴24…も同様である。
【0064】
第1母板加工用金型の下型20aの搬送方向に対して左側には、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a、26bが設けられている。また、第2母板加工用金型の下型20bの搬送方向に対して右側には、縦スリット素片形成ピン誘導穴26c、26dが設けられている。
下型20aに設けられた縦スリット素片形成ピン誘導穴26a、26bは、順方向プレスの際にこれらで形成される縦スリット素片が連通するが、連続した縦スリットとならないようにその長さ及び配置が定められている。この点は、下型20bに設けられた縦スリット素片形成ピン誘導穴26c、26dも同様である。
また、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26dは、下型20a(又は、下型20b)で順方向プレスした後、下型20b(又は、下型20a)で反転方向プレスを行うと、縦スリット素片が完全に連通し、連続した縦スリットとなるようにその長さ及び配置が定められている。
さらに、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26dは、連続した縦スリットの両端がプリント配線母板の上下端を貫通しないように、その長さ及び配置が定められている。
【0065】
第3母板加工用金型の下型20cの第1加工領域12と第2加工領域14との境界線上には、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bが設けられている。
横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bは、これらで形成される横スリット素片が順方向プレスの際には互いに連通せず、かつ、順方向プレスを行った後、さらに反転方向プレスを行ったときに、互いに連通して連続した横スリットとなるようにその長さ及び配置が定めれている。
また、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bは、連続した横スリットの両端が縦スリットには連通するが、プリント配線母板の両端に達しないようにその長さ及び位置が定められている。
【0066】
さらに、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26d及び横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bは、それぞれ、
(a)(2N−1)回目(5回目)のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)が終了した時点において、縦スリット素片及び横スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、プリント配線内にあるすべての実装用基板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)2N回目(6回目)のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)時において、連通していなかった縦スリット素片及び/又は横スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した縦スリット及び/又は横スリットとなり、これによって一体的に連結していた実装用基板がプリント配線母板から逐次切り離される
ようにその長さ及び配置が定められている。
【0067】
第2母板加工用金型の下型20bの左側には、実装用基板の左右辺に応力緩和のためのスリットを形成するためのスリット形成ピン誘導穴32が設けられている。
同様に、第1母板加工用金型の下型20aの左側には、実装用基板の上下辺に応力緩和のためのスリットを形成するためのスリット形成ピン誘導穴34a、34bが設けられている。
なお、図8(a)に示す例において、スリット形成ピン誘導穴34a、34bは、実装用基板の上下片に応力緩和のためのスリットを形成することができ、かつ、プリント配線母板の外周部を切断しないように(すなわち、すべてのプレス加工が終了したときに、四角い端材が残るように)、その長さ及び配置が定められている。
【0068】
さらに、下型20aの第2加工領域14には、プリント配線母板の位置決めに用いられる位置決めピン36a、36b、36c、36dが立設されている。また、下型20aの第1加工領域12には、位置決めピン36a〜36dに対応する位置に、位置決めピン36e、36f、36g、36hが立設されている。
同様に、下型20b、20cにも、それぞれ、下型20aに対応する位置に、位置決めピン36a〜36hが立設されている。
図8中、位置決めピン36b−36f間の距離が、プリント配線母板をステップ送りする際の搬送距離となる。
その他の点は、第1具体例と同様であるので、説明を省略する。
【0069】
[1.3.2. 第2具体例を用いた実装用基板の製造方法]
図9〜図14に、図8に示す金型セット10aを用いたプリント配線母板のプレス加工の工程図を示す。
まず、プリント配線母板100をステップ送りしながら、第1母板加工用金型を用いて順方向プレスを行う。図9に、第1母板加工用金型(下型20a)を用いた順方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
第1母板加工用金型を用いて順方向プレスを行うと、下型ストリッパー22a、22dによりプリント回路板104a…、104d…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a、26bにより縦スリット素片108a…、108b…の打ち抜きが行われる。直前のプレスで形成された縦スリット素片108bは、新たに形成される縦スリット素片108aと繋がることにより、長さが搬送方向に延長された縦スリット素片108a+108bとなる。さらに、これらと同時に、貫通孔106…の打ち抜き、及び、スリット112a…、112b…の打ち抜きが行われる。
【0070】
次に、プリント配線母板100をステップ送りしながら第2母板加工用金型を用いた順方向プレスを行う。図10に、第2母板加工用金型(下型20b)を用いた順方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
第2母板加工用金型を用いて順方向プレスを行うと、下型ストリッパー22b、22eにより新たなプリント回路板104b…、104e…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、縦スリット素片形成ピン誘導穴26c、26dにより縦スリット素片108c…、108d…の打ち抜きが行われる。直前のプレスで形成された縦スリット素片108dは、新たに形成される縦スリット素片108cと繋がることにより、長さが搬送方向に延長された縦スリット素片108c+108dとなる。さらに、これらと同時に、貫通孔106…の打ち抜き、及び、スリット110…の打ち抜きが行われる。打ち抜かれたスリット110の左端は、縦スリット素片108a+108bと連通する。
【0071】
次に、プリント配線母板100をステップ送りしながら第3母板加工用金型を用いた順方向プレスを行う。図11に、第3母板加工用金型(下型20c)を用いた順方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
第3母板加工用金型を用いて順方向プレスを行うと、下型ストリッパー22c、22fにより新たなプリント回路板104c…、104f…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bにより、横スリット素片1114a…、114b…の打ち抜きが行われる。この時、打ち抜かれた横スリット素片114bの右端は、縦スリット素片180c+108dと連通する。さらに、これらと同時に、貫通孔106…の打ち抜きが行われる。
【0072】
次に、プリント配線母板100を180°回転させ、プリント配線母板100をステップ送りしながら第1母板加工用金型を用いた反転方向プレスを行う。図12に、第1母板加工用金型(下型20a)を用いた反転方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。なお、図12においては、見やすくするために、3回の順方向プレスにより形成されたプリント回路板にハッチングを施してある。この点は、図13及び図14も同様である。
第1母板加工用金型を用いて反転方向プレスを行うと、空白部分において、下型ストリッパー22a、22dにより新たなプリント回路板104a…、104d…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、順方向プレスで形成された縦スリット素片108c+108dの間が縦スリット素片形成ピン誘導穴26a、26bで打ち抜かれ、連続した縦スリット(108c+108d)+(108a+108b)となる。さらに、これと同時に、貫通孔106…の打ち抜き、及び、スリット112a…、112b…の打ち抜きが新たに行われ、スリット112a…、112b…が横スリット素片114bに連通する。
【0073】
次に、プリント配線母板100をステップ送りしながら第2母板加工用金型を用いた反転方向プレスを行う。図13に、第2母板加工用金型(下型20b)を用いた反転方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
第2母板加工用金型を用いて反転方向プレスを行うと、空白部分において、下型ストリッパー22b、22eにより、新たなプリント回路板104b…、104e…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、順方向プレスで形成された縦スリット素片108a+108bの間が縦スリット素片形成ピン誘導穴26c、26dで打ち抜かれ、連続した縦スリット(108a+108b)+(108c+108d)となる。さらに、これと同時に、貫通孔106…の打ち抜き、及び、スリット110…の打ち抜きが行われ、スリット110…が縦スリット(108c+108d)+(108a+108b)に連通する。
しかも、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26d及び横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bの長さ及び配置が最適化されているので、この時点では、個々の実装用基板が分離せず、一体化した状態になっている。
【0074】
最後に、プリント配線母板100をステップ送りしながら第3母板加工用金型を用いて反転方向プレスを行う。図14に、第3母板加工用金型(下型20c)を用いた反転方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
第3母板加工用金型を用いて反転方向プレスを行うと、下型ストリッパー22c、22fにより、新たなプリント回路板104c…、104f…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、順方向プレスで形成された横スリット素片114aと横スリット素片114bの間が横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bで打ち抜かれ、連続した横スリット114a+114bとなる。さらに、これと同時に、貫通孔106…の打ち抜きが行われる。
しかも、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26d及び横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bの長さ及び配置が最適化されているので、個々のプレス加工毎に、実装用基板140…がプリント配線母板100から逐次切り離される。さらに、すべての実装用基板140が切り出された後は、連続した四角い端材100eが残る。
【0075】
以上の方法により、プッシュバックされたプリント回路板104a〜104fが枠部に仮止めされた実装用基板140…が得られる。得られた実装用基板140…は、自動実装工程に送られ、表面に各種の電子部品が実装される。自動実装終了後、枠部を破断させることによって枠部とプリント回路板を分離し、分離したプリント回路板を各種の電子機器に組み込むことができる。
【0076】
[1.3.3. 第2具体例の作用]
プッシュバック手段をN個の金型に分散して配置し、かつ、N回の順方向プレス加工及びN回の反転方向プレス加工により個々のプリント回路板のプッシュバック加工を行わせると、1回のプレス加工によりすべてのプリント回路板のプッシュバック加工を行う場合に比べて、プレス圧力を約1/2Nに下げることができる。そのため、母板の搬送に支障を来さない限りにおいて、プレス能力の制約を全く受けることなく、多数のプリント回路板がプッシュバックされた極めて大型の実装用基板を製造することができる。
【0077】
さらに、これと同時に、縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段をN個の母板加工用金型に分散して配置すると、最終プレス加工が終了した時点で、実装用基板の搬送方向に対して平行な辺、及び、垂直な辺も同時に形成することができる。
また、縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段の長さや配置を最適化すると、最終プレス加工が行われる前は個々の実装用基板がいずれかの部分で結合した状態となり、最終プレス加工時には個々の実装用基板を逐次切り離すことができる。そのため、加工途中における母板の搬送が極めて容易化する。
【0078】
さらに、各種の加工手段をN個の金型に分散配置させると、金型製作コストは上昇するが、金型に各種の貫通孔を密集して形成する必要がなくなる。そのため、金型の耐久性を低下させることなく、複雑な加工が可能となる。
【0079】
なお、図9〜図14には、
(1)第1母板加工用金型を用いた順方向プレス、
(2)第2母板加工用金型を用いた順方向プレス、
(3)第3母板加工用金型を用いた順方向プレス、
(4)第1母板加工用金型を用いた反転方向プレス、
(5)第2母板加工用金型を用いた反転方向プレス、
(6)第3母板加工用金型を用いた反転方向プレス、
の順に加工する例を示したが、これらの順序を入れ替えても、同様の効果が得られる。
また、例えば、図8に示す金型セット10aにおいて、縦スリット素片形成手段又は横スリット素片形成手段の何れか一方を省略すると、連続した横スリット又は連続した縦スリットのみを備えた実装用基板の集合体が得られる。
【0080】
[1.4. 金型セット(1)の第3具体例]
[1.4.1. 第3具体例の構成]
図15に、本実施の形態に係る金型セットの第3具体例を示す。図15において、金型セット10bは、第1母板加工用金型(図15(a)にその下型20aのみを示す)と、第2母板加工用金型(図15(b)に、その下型20bのみを示す)の2個1組の金型からなる。なお、図15中、図1に対応する部分には、図1と同様の符号を付してある。
金型セット10bは、基本的には、特許文献3に記載の金型のプッシュバック手段を千鳥状に二分割し、合計6個のプッシュバック手段を、第1〜第2母板加工用金型にそれぞれ3個ずつ分散させて配置したものである。
また、金型セット10bは、第1〜第2母板加工用金型を用いた順方向プレス及び反転方向プレスの合計4回のプレス加工により、実装用基板を製造するためのものである。
【0081】
第1〜第2母板加工用金型及び図示しない上型は、それぞれ、プリント配線母板の搬送方向に対して上流側が第1加工領域12に、また、搬送方向に対して下流側が第2加工領域14になっている。
第1母板加工用金型の下型20aの第1加工領域12には、プリント回路板をプッシュバックするための下型ストリッパー22eが埋設され、第2加工領域14には下型ストリッパー22a、22cが埋設されている。
同様に、第2母板加工用金型20bの第1加工領域12には、プリント回路板をプッシュバックするための下型ストリッパー22d、22fが埋設され、第2加工領域14には下型ストリッパー22bが埋設されている。
【0082】
下型ストリッパー22a〜22fは、それぞれ、
(a)プリント配線母板を順方向送りした時に、実装用基板となる領域内の一部において第1のプリント回路板のプッシュバックを行うことができ、かつ、
(b)プリント配線母板を順方向送りした後、さらにプリント配線母板を反転方向送りした時に、実装用基板となる領域内の空白部分において新たに第2のプリント回路板のプッシュバックを行うことができる
ように配置されている。
【0083】
さらに、第1母板加工用金型の下型20aに設けられた下型ストリッパー22a、22c、22e、及び、第2母板加工用金型の下型20bに設けられた下型ストリッパー22b、22d、22fは、互いに異なる部分(空白部分)において、プリント配線母板から新たなプリント回路板のプッシュバック加工を行うことができるように配置されている。
【0084】
下型20a、20bには、それぞれ、複数の貫通孔形成ピン誘導穴24…が設けられている。第1母板加工用金型の下型20a(第2母板加工用金型の下型20b)に設けられた貫通孔形成ピン誘導穴24…は、それぞれ、第2母板加工用金型の下型20b(第1母板加工用金型の下型20a)でプッシュバックされるプリント回路板に貫通孔を形成するためのものである。これらの貫通孔形成ピン誘導穴24…は、必要に応じて設けることができる。
【0085】
下型20aの第2加工領域14の搬送方向に対して左側には、縦スリット素片形成ピン誘導穴26aが設けられている。また、下型20bの第2加工領域14の搬送方向に対して右側には、縦スリット素片形成ピン誘導穴26bが設けられている。
下型20aに設けられた縦スリット素片形成ピン誘導穴26aと、下型20bに設けられた縦スリット素片形成ピン誘導穴26bは、下型20a(又は、下型20b)で順方向プレスした後、下型20b(又は、下型20a)で反転方向プレスを行うと、縦スリット素片が完全に貫通し、連続した縦スリットとなるようにその長さ及び配置が定められている。
さらに、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a、26bは、連続した縦スリットの両端がプリント配線母板の上下端を貫通しないように、その長さ及び配置が定められている。
【0086】
第1母板加工用金型の下型20aの第1加工領域12と第2加工領域14の境界線上には、横スリット素片形成ピン誘導穴28bが設けられている。
同様に、第2母板加工用金型の下型20bの第1加工領域12と第2加工領域14の境界線上には、横スリット素片形成ピン誘導穴28aが設けられている。
横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bは、第1〜第2母板加工用金型を用いた順方向プレス及び反転方向プレスを行ったときに、互いに連通して連続した横スリットとなるようにその長さ及び配置が定めれている。
また、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bは、連続した横スリットの両端が縦スリットには連通するが、プリント配線母板の両端に達しないようにその長さ及び配置が定められている。
【0087】
第2母板加工用金型の下型20bの第2加工領域14には、中間縦スリット素片形成ピン誘導穴30が設けられている。
中間縦スリット素片形成ピン誘導穴30は、これによって打ち抜かれる中間縦スリット素片が第2母板加工用金型を用いた順方向プレスの際には互いに連通しないが、さらに反転方向プレスを行ったときに互いに連通して連続した中間縦スリットとなるように、その長さ及び配置が定められている。
また、中間縦スリット素片形成ピン誘導穴30は、連続した中間縦スリットの両端が横スリットには連通するが、プリント配線母板の上下端に達しないように、その長さ及び配置が定められている。
【0088】
さらに、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a、26b、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28b、及び、中間縦スリット素片形成ピン誘導穴30は、それぞれ、
(a)(2N−1)回目(3回目)のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)が終了した時点において、縦スリット素片、横スリット素片及び中間縦スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、プリント配線内にあるすべての実装用基板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)2N回目(4回目)のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)時において、連通していなかった縦スリット素片、横スリット素片及び/又は中間縦スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した縦スリット、横スリット、及び/又は中間縦スリットとなり、これによって一体的に連結していた実装用基板がプリント配線母板から逐次切り離される
ようにその長さ及び配置が定められている。
【0089】
第1母板加工用金型の下型20aの右側上には、実装用基板の左右辺に応力緩和のためのスリットを形成するためのスリット形成ピン誘導穴32が設けられている。
同様に、第2母板加工用金型の下型20bの左側上下には、それぞれ、実装用基板の上下辺に応力緩和のためのスリットを形成するためのスリット形成ピン誘導穴34a、34bが設けられている。
なお、図15(a)に示す例において、スリット形成ピン誘導穴34a、34bは、実装用基板の上下片に応力緩和のためのスリットを形成することができ、かつ、プリント配線母板の外周部を切断しないように、その長さ及び配置が定められている。
【0090】
さらに、下型20aの第2加工領域14には、プリント配線母板の位置決めに用いられる位置決めピン36a、36b、36c、36dが立設されている。また、下型20aの第1加工領域12には、位置決めピン36a〜36dに対応する位置に、位置決めピン36e、36f、36g、36hが立設されている。
同様に、下型20bにも、それぞれ、下型20aに対応する位置に、位置決めピン36a〜36hが立設されている。
図15中、位置決めピン36b−36f間の距離が、プリント配線母板をステップ送りする際の搬送距離となる。
その他の点は、第1具体例及び第2具体例と同様であるので、説明を省略する。
【0091】
[1.4.2. 第3具体例を用いた実装用基板の製造方法]
図16〜図19に、図15に示す金型セット10bを用いたプリント配線母板のプレス加工の工程図を示す。
まず、プリント配線母板100をステップ送りしながら、第1母板加工用金型を用いて順方向プレスを行う。図16に、第1母板加工用金型(下型20a)を用いた順方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
第1母板加工用金型を用いて順方向プレスを行うと、下型ストリッパー22a、22c、22eにより、新たにプリント回路板104a…、104c…、104e…のプッシュバック加工が行われる。また、これと同時に、縦スリット素片形成ピン誘導穴26aによる縦スリット素片108aの打ち抜き、及び、横スリット素片形成ピン誘導穴28bによる横スリット素片114bの打ち抜きが行われる。さらに、これと同時に、貫通孔106…の打ち抜き、及び、スリット110…の打ち抜きが行われる。
【0092】
次に、プリント配線母板100を180°回転させ、プリント配線母板100をステップ送りしながら第1母板加工用金型を用いた反転方向プレスを行う。図17に、第1母板加工用金型(下型20a)を用いた反転方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
第1母板加工用金型を用いて反転方向プレスを行うと、下型ストリッパー22a、22c、22eにより、新たなプリント回路板104a…、104c…、104e…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、縦スリット素片108a…及び横スリット素片114b…の新たな打ち抜きが行われる。この時、直前のプレスで打ち抜かれた縦スリット素片108a(又は、横スリット素片114b)と新たに打ち抜かれる横スリット素片114b(又は、縦スリット素片108a)が連結する。また、これと同時に、貫通孔106…の打ち抜き、及び、スリット110…の打ち抜きが行われる。新たに打ち抜かれたスリット110…の右端は、縦スリット素片108a…と連通する。
【0093】
次に、プリント配線母板100を再度180°回転させ、プリント配線母板100をステップ送りしながら第2母板加工用金型を用いた順方向プレスを行う。図18に、第2母板加工用金型(下型20a)を用いた順方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。なお、図18においては、見やすくするために、第1母板加工用金型でプッシュバックされたプリント回路板にハッチングを施してある。この点は、図19も同様である。
第2母板加工用金型を用いて順方向プレスを行うと、下型ストリッパー22b、22d、22fにより、新たなプリント回路板104b…、104d…、104f…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、縦スリット素片形成ピン誘導穴26bにより縦スリット素片108bが打ち抜かれ、横スリット素片形成ピン誘導穴28aにより横スリット素片114aが打ち抜かれ、中間縦スリット素片形成ピン誘導穴30により、中間縦スリット素片116が打ち抜かれる。この時、プリント配線母板100の右端においては、既に打ち抜かれた縦スリット素片108aと新たに打ち抜かれる縦スリット素片108bとが連通し、連続した縦スリット108a+108bとなる。また、プリント配線母板100の左側半分においては、既に打ち抜かれた横スリット素片114bと新たに打ち抜かれる横スリット素片114aが連通し、長さが延長された横スリット素片114a+114bとなる。さらに、新たに打ち抜かれた中間縦スリット116の一端が横スリット素片114a+114bに連通する。
また、これと同時に、貫通孔106…の打ち抜き、及び、スリット112a…、112b…の打ち抜きが行われる。
しかも、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a、26b、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28b、及び、中間縦スリット素片形成ピン誘導穴30の長さ及び配置が最適化されているので、この時点では、個々の実装用基板が分離せず、一体化した状態になっている。
【0094】
最後に、プリント配線母板100を再度180°回転させ、プリント配線母板100をステップ送りしながら第2母板加工用金型を用いた反転方向プレスを行う。図19に、第2母板加工用金型(下型20b)を用いた反転方向プレスの最終プレス加工前の状態を示す。
第2母板加工用金型を用いて反転方向プレスを行うと、下型ストリッパー22b、22d、22fにより新たなプリント回路板104b…、104d…、104f…のプッシュバック加工が行われる。これと同時に、縦スリット素片108b…、横スリット素片114a…、及び、中間縦スリット116…が新たに打ち抜かれる。さらに、これと同時に、貫通孔106…の打ち抜き、及び、スリット112a…、112b…の打ち抜きが行われる。
しかも、縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26b、横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28b、及び、中間縦スリット素片30の長さ及び配置が最適化されているので、個々のプレス加工毎に、2列に並んだ実装用基板140a…がプリント配線母板100から逐次切り離される。さらに、すべての実装用基板140a…が切り出された後は、連続した四角い端材100eが残る。
【0095】
以上の方法により、プッシュバックされたプリント回路板104a〜104fが枠部に仮止めされた実装用基板140a…が得られる。得られた実装用基板140a…は、自動実装工程に送られ、表面に各種の電子部品が実装される。自動実装終了後、枠部を破断させることによって枠部とプリント回路板を分離し、分離したプリント回路板を各種の電子機器に組み込むことができる。
【0096】
[1.4.3. 第3具体例の作用]
プッシュバック手段をN個の金型に分散して配置し、かつ、N回の順方向プレス加工及びN回の反転方向プレス加工により個々のプリント回路板のプッシュバック加工を行わせると、1回のプレス加工によりすべてのプリント回路板のプッシュバック加工を行う場合に比べて、プレス圧力を約1/2Nに下げることができる。そのため、母板の搬送に支障を来さない限りにおいて、プレス能力の制約を全く受けることなく、多数のプリント回路板がプッシュバックされた極めて大型の実装用基板を製造することができる。
【0097】
さらに、これと同時に、縦スリット素片形成手段、横スリット素片形成手段及び中間縦スリット素片形成手段をN個の母板加工用金型に分散して配置すると、複数回の順方向プレス加工又は反転方向プレス加工が終了した時点で、実装用基板の搬送方向に対して平行な辺、垂直な辺、及び、中間の辺も同時に形成することができる。
また、縦スリット素片形成手段、横スリット素片形成手段、及び、中間縦スリット素片形成手段の長さや配置を最適化すると、最終プレス加工が行われる前は個々の実装用基板がいずれかの部分で結合した状態となり、最終プレス加工時には個々の実装用基板を逐次切り離すことができる。そのため、加工途中における母板の搬送が極めて容易化する。
【0098】
さらに、各種の加工手段をN個の金型に分散配置させると、金型製作コストは上昇するが、金型に各種の貫通孔を密集して形成する必要がなくなる。そのため、金型の耐久性を低下させることなく、複雑な加工が可能となる。
【0099】
なお、図16〜図19には、(1)第1母板加工用金型を用いた順方向プレス、(2)第1母板加工用金型を用いた反転方向プレス、(3)第2母板加工用金型を用いた順方向プレス、(4)第2母板加工用金型を用いた反転方向プレス、の順に加工する例を示したが、これらの順序を入れ替えても、同様の効果が得られる。
また、例えば、図15に示す金型セット10bにおいて、縦スリット素片形成手段又は横スリット素片形成手段の何れか一方を省略すると、連続した横スリット又は連続した縦スリットと、連続した中間縦スリットとを備えた実装用基板の集合体が得られる。
【0100】
[2. 金型セット(2)]
[2.1. 基本構成]
本発明の第2の実施の形態に係る金型セットは、以下の構成を備えている。
(1)金型セットは、N個(N≧2)の母板加工用金型からなり、各母板加工用金型を用いて同一のプリント配線母板に対し、プリント配線母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工を行うことにより、プリント配線母板から、プッシュバックされたプリント回路板が枠部に仮止めされた実装用板を製造するために用いられる。
(2)N個の各母板加工用金型は、それぞれ、プリント配線母板からプリント回路板を打ち抜き、打ち抜かれたプリント回路板を元の穴にはめ込むための少なくとも1個のプッシュバック手段を備え、
i番目(1≦i≦N)の母板加工用金型に設けられたプッシュバック手段は、j番目(1≦j≦N、j≠i)の母板加工用金型に設けられたプッシュバック手段によりプッシュバック加工される部分とは異なる部分において、プリント配線母板から新たなプリント回路板のプッシュバック加工を行うことができるように配置されている。
(3)金型セットは、N個の母板加工用金型のいずれか1以上に、
プリント配線母板の少なくとも一方の側端部に、プリント配線母板の搬送方向に対して平行な縦スリット素片を形成するための縦スリット素片形成手段、及び、
プリント配線母板の搬送方向に対して垂直な横スリット素片を形成するための横スリット素片形成手段
の内の何れか一方を備えている。
(4)縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)を行うことにより縦スリット素片が互いに連通し、実装用基板の基準辺(搬送方向に対して平行な辺)となる連続した縦スリットとなるように、同一又は異なる母板加工用金型に配置され、
横スリット素片形成手段は、同一又は異なる母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)を行うことにより横スリット素片が互いに連通し、実装用基板の基準辺(搬送方向に対して垂直な辺)となる連続した横スリットとなるように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されている。
【0101】
本実施の形態に係る金型セットは、以下の構成をさらに備えていても良い。
(3’)金型セットは、N個の母板加工用金型のいずれか1以上に、縦スリット素片形成手段、及び、横スリット素片形成手段の双方を備えている。
(5)縦スリット素片形成手段及び横スリット素片形成手段は、
(a)(N−1)回目のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)が終了した時点において、縦スリット素片及び横スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、プリント配線母板内にあるすべての実装用基板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)N回目のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)時において、連通していなかった縦スリット素片及び/又は横スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した縦スリット及び/又は横スリットとなり、これによって一体的に連結していた実装用基板がプリント配線母板から逐次切り離される
ように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されている。
【0102】
本実施の形態に係る金型セットは、以下の構成をさらに備えていても良い。
(6)金型セットは、N個の母板加工用金型のいずれか1以上に、プリント配線母板の中間部に、プリント配線母板の搬送方向に対して平行な中間縦スリット素片を形成するための中間縦スリット素片形成手段を備え、
中間縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)を行うことにより中間縦スリット素片が互いに連通し、実装用基板の基準辺(搬送方向に対して平行な辺)となる連続した中間縦スリットとなるように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されている。
(5’)縦スリット素片形成手段、横スリット素片形成手段、及び、中間縦スリット素片形成手段は、
(a)(N−1)回目のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)が終了した時点において、縦スリット素片、横スリット素片及び中間縦スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、プリント配線母板内にあるすべての実装用基板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)N回目のプレス加工(順方向プレス加工又は反転方向プレス加工)時において、連通していなかった縦スリット素片、横スリット素片及び/又は中間縦スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した縦スリット、横スリット及び/又は中間縦スリットとなり、これによって一体的に連結していた実装用基板がプリント配線母板から逐次切り離される
ように、同一又は異なる母板加工用金型に配置されている。
【0103】
本実施の形態に係る金型セットは、プッシュバック手段やその他の加工手段をN個の母板加工用金型に分散して配置している点は第1の実施の形態と同様であるが、プリント配線母板の反転方向プレスを行わず、順方向プレスのみを行う。この点が第1の実施の形態と異なる。その他の点については第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0104】
[2.2. 具体例]
例えば、図1に示す金型セット10を用いて順方向プレスのみを行うと、第1母板加工用金型(下型20a)及び第2母板加工用金型(下型20b)により、それぞれ、所定の位置にプリント回路板のプッシュバック加工を行うことができる。
一方、図1に示す金型セット10の場合、順方向プレスのみでは縦スリット素片が互いに連通しない。そのため、下型20aに設けられた縦スリット素片形成ピン誘導穴26a〜26cと同様の縦スリット素片形成ピン誘導穴を、配置を逆転させた形で第2母板加工用金型の下型20bに設けると、2回の順方向プレスで連続した縦スリットを形成することができる。
同様に、図1に示す金型セット10の場合、順方向プレスのみでは横スリット素片が互いに連通しない。そのため、下型20bに設けられた横スリット素片形成ピン誘導穴28a、28bと同様の横スリット素片形成ピン誘導穴を、配置を逆転させた形で第1母板加工用金型の下型20aに設けると、2回の順方向プレスで連続した横スリットを形成することができる。
【0105】
これらの点は、図8に示す金型セット10a、及び、図15に示す金型セット10bも同様であり、縦スリット素片形成手段、横スリット素片形成手段、又は、中間縦スリット素片形成手段を最適に配置すると、N回の順方向プレスのみによって、連続した縦スリット及び/又は横スリット、並びに、これらの一方又は双方に加えて中間縦スリットを形成することができる。
【0106】
以上の方法により、プッシュバックされたプリント回路板が枠部に仮止めされた実装用基板が得られる。得られた実装用基板は、自動実装工程に送られ、表面に各種の電子部品が実装される。自動実装終了後、枠部を破断させることによって枠部とプリント回路板を分離し、分離したプリント回路板を各種の電子機器に組み込むことができる。
【0107】
[2.3. 金型セット(2)の作用]
プッシュバック手段をN個の金型に分散して配置し、かつ、N回の順方向プレス加工により個々のプリント回路板のプッシュバック加工を行わせると、1回のプレス加工によりすべてのプリント回路板のプッシュバック加工を行う場合に比べて、プレス圧力を約1/Nに下げることができる。そのため、母板の搬送に支障を来さない限りにおいて、プレス能力の制約を全く受けることなく、多数のプリント回路板がプッシュバックされた極めて大型の実装用基板を製造することができる。
【0108】
さらに、これと同時に、縦スリット素片形成手段及び/又は横スリット素片形成手段、あるいはこれらに加えて中間縦スリット素片形成手段をN個の母板加工用金型に分散して配置すると、複数回のプレス加工が終了した時点で、実装用基板の搬送方向に対して平行な辺、垂直な辺、及び/又は、中間の辺も同時に形成することができる。
また、縦スリット素片形成手段及び/又は横スリット素片形成手段、あるいは、これらに加えて中間縦スリット素片形成手段の長さや配置を最適化すると、最終プレス加工が行われる前は個々の実装用基板がいずれかの部分で結合した状態となり、最終プレス加工時には個々の実装用基板を逐次切り離すことができる。そのため、加工途中における母板の搬送が極めて容易化する。
【0109】
さらに、各種の加工手段をN個の金型に分散配置させると、金型製作コストは上昇するが、金型に各種の貫通孔を密集して形成する必要がなくなる。そのため、金型の耐久性を低下させることなく、複雑な加工が可能となる。
【0110】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明に係る金型セットは、プリント回路板がプッシュバック法により枠部に仮止めされた実装用基板などの各種加工板を製造するための金型セットとして用いることができる。
また、本発明に係る加工板の製造方法及び製品板の製造方法は、このような金型セットを用いた実装用基板の製造方法、及び、このような方法により得られる実装用基板から枠部を分離し、プリント回路板を得る方法として用いることができる。
【符号の説明】
【0112】
10 金型セット
20a 下型(第1母板加工用金型)
22a〜22c 下型ストリッパー(プッシュバック手段)
26a〜26c 縦スリット素片形成ピン誘導穴(縦スリット素片形成手段)
20b 下型(第2母板加工用金型)
22d〜22f 下型ストリッパー(プッシュバック手段)
28a、28b 横スリット素片形成ピン誘導穴(横スリット素片形成手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成を備えた金型セット。
(1)前記金型セットは、N個(N≧2)の母板加工用金型からなり、前記各母板加工用金型を用いて同一の母板に対し、前記母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工及び前記母板を反転方向送りしながらプレス加工を行うN回の反転方向プレス加工の合計2N回のプレス加工を行うことにより、前記母板から、プッシュバックされた製品板が枠部に仮止めされた加工板を製造するために用いられる。
(2)N個の前記各母板加工用金型は、それぞれ、前記母板から前記製品板を打ち抜き、打ち抜かれた前記製品板を元の穴にはめ込むための少なくとも1個のプッシュバック手段を備え、
i番目(1≦i≦N)の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段は、j番目(1≦j≦N、j≠i)の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段によりプッシュバック加工される部分とは異なる部分において、前記母板から新たな前記製品板のプッシュバック加工を行うことができるように配置されている。
(3)i番目の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段は、それぞれ、
(a)前記母板を順方向送りした時に、前記加工板となる領域内の一部において第1の製品板のプッシュバックを行うことができ、かつ、
(b)前記母板を順方向送りした後、さらに前記母板を反転方向送りした時に、前記加工板となる領域内の前記第1の製品板とは異なる部分において新たに第2の製品板のプッシュバックを行うことができる
ように配置されている。
(4)前記金型セットは、N個の前記母板加工用金型のいずれか1以上に、
前記母板の少なくとも一方の側端部に、前記母板の搬送方向に対して平行な縦スリット素片を形成するための縦スリット素片形成手段、及び、
前記母板の搬送方向に対して垂直な横スリット素片を形成するための横スリット素片形成手段
の内の何れか一方を備えている。
(5)前記縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記縦スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して平行な辺となる連続した縦スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置され、
前記横スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記横スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して垂直な辺となる連続した横スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
【請求項2】
以下の構成をさらに備えた請求項1に記載の金型セット。
(4’)前記金型セットは、N個の前記母板加工用金型のいずれか1以上に、前記縦スリット素片形成手段、及び、前記横スリット素片形成手段の双方を備えている。
(6)前記縦スリット素片形成手段及び前記横スリット素片形成手段は、
(a)(2N−1)回目のプレス加工が終了した時点において、前記縦スリット素片及び前記横スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、前記母板内にあるすべての前記加工板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)2N回目のプレス加工時において、連通していなかった前記縦スリット素片及び/又は前記横スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した前記縦スリット及び/又は前記横スリットとなり、これによって一体的に連結していた前記加工板が前記母板から逐次切り離される
ように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
【請求項3】
以下の構成をさらに備えた請求項1又は2に記載の金型セット。
(7)前記金型セットは、N個の前記母板加工用金型のいずれか1以上に、前記母板の中間部に、前記母板の搬送方向に対して平行な中間縦スリット素片を形成するための中間縦スリット素片形成手段を備え、
前記中間縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記中間縦スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して平行な辺となる連続した中間縦スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
(6’)前記縦スリット素片形成手段、前記横スリット素片形成手段、及び、前記中間縦スリット素片形成手段は、
(a)(2N−1)回目のプレス加工が終了した時点において、前記縦スリット素片、前記横スリット素片及び前記中間縦スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、前記母板内にあるすべての前記加工板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)2N回目のプレス加工時において、連通していなかった前記縦スリット素片、前記横スリット素片及び/又は前記中間縦スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した前記縦スリット、前記横スリット及び/又は前記中間縦スリットとなり、これによって一体的に連結していた前記加工板が前記母板から逐次切り離される
ように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の金型セットに備えられるN個の母板加工用金型を用いて同一の母板に対し、前記母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工及び前記母板を反転方向送りしながらプレス加工を行うN回の反転方向プレス加工の合計2N回のプレス加工を行うことにより、前記母板から、プッシュバックされた製品板が枠部に仮止めされた加工板を製造するプレス工程を備えた加工板の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法により得られた加工板から製品板を分離する製品板の製造方法。
【請求項6】
以下の構成を備えた金型セット。
(1)前記金型セットは、N個(N≧2)の母板加工用金型からなり、前記各母板加工用金型を用いて同一の母板に対し、前記母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工を行うことにより、前記母板から、プッシュバックされた製品板が枠部に仮止めされた加工板を製造するために用いられる。
(2)N個の前記各母板加工用金型は、それぞれ、前記母板から前記製品板を打ち抜き、打ち抜かれた前記製品板を元の穴にはめ込むための少なくとも1個のプッシュバック手段を備え、
i番目(1≦i≦N)の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段は、j番目(1≦j≦N、j≠i)の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段によりプッシュバック加工される部分とは異なる部分において、前記母板から新たな前記製品板のプッシュバック加工を行うことができるように配置されている。
(3)前記金型セットは、N個の前記母板加工用金型のいずれか1以上に、
前記母板の少なくとも一方の側端部に、前記母板の搬送方向に対して平行な縦スリット素片を形成するための縦スリット素片形成手段、及び、
前記母板の搬送方向に対して垂直な横スリット素片を形成するための横スリット素片形成手段
の内の何れか一方を備えている。
(4)前記縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記縦スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して平行な辺となる連続した縦スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置され、
前記横スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記横スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して垂直な辺となる連続した横スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
【請求項7】
以下の構成をさらに備えた請求項6に記載の金型セット。
(3’)前記金型セットは、N個の前記母板加工用金型のいずれか1以上に、前記縦スリット素片形成手段、及び、前記横スリット素片形成手段の双方を備えている。
(5)前記縦スリット素片形成手段及び前記横スリット素片形成手段は、
(a)(N−1)回目のプレス加工が終了した時点において、前記縦スリット素片及び前記横スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、前記母板内にあるすべての前記加工板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)N回目のプレス加工時において、連通していなかった前記縦スリット素片及び/又は前記横スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した前記縦スリット及び/又は前記横スリットとなり、これによって一体的に連結していた前記加工板が前記母板から逐次切り離される
ように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
【請求項8】
以下の構成をさらに備えた請求項6又は7に記載の金型セット。
(6)前記金型セットは、N個の前記母板加工用金型のいずれか1以上に、前記母板の中間部に、前記母板の搬送方向に対して平行な中間縦スリット素片を形成するための中間縦スリット素片形成手段を備え、
前記中間縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記中間縦スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して平行な辺となる連続した中間縦スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
(5’)前記縦スリット素片形成手段、前記横スリット素片形成手段、及び、前記中間縦スリット素片形成手段は、
(a)(N−1)回目のプレス加工が終了した時点において、前記縦スリット素片、前記横スリット素片及び前記中間縦スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、前記母板内にあるすべての前記加工板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)N回目のプレス加工時において、連通していなかった前記縦スリット素片、前記横スリット素片及び/又は前記中間縦スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した前記縦スリット、前記横スリット及び/又は前記中間縦スリットとなり、これによって一体的に連結していた前記加工板が前記母板から逐次切り離される
ように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
【請求項9】
請求項6から8までのいずれかに記載の金型セットに備えられるN個の母板加工用金型を用いて同一の母板に対し、前記母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工を行うことにより、前記母板から、プッシュバックされた製品板が枠部に仮止めされた加工板を製造するプレス工程を備えた加工板の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法により得られた加工板から製品板を分離する製品板の製造方法。
【請求項1】
以下の構成を備えた金型セット。
(1)前記金型セットは、N個(N≧2)の母板加工用金型からなり、前記各母板加工用金型を用いて同一の母板に対し、前記母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工及び前記母板を反転方向送りしながらプレス加工を行うN回の反転方向プレス加工の合計2N回のプレス加工を行うことにより、前記母板から、プッシュバックされた製品板が枠部に仮止めされた加工板を製造するために用いられる。
(2)N個の前記各母板加工用金型は、それぞれ、前記母板から前記製品板を打ち抜き、打ち抜かれた前記製品板を元の穴にはめ込むための少なくとも1個のプッシュバック手段を備え、
i番目(1≦i≦N)の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段は、j番目(1≦j≦N、j≠i)の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段によりプッシュバック加工される部分とは異なる部分において、前記母板から新たな前記製品板のプッシュバック加工を行うことができるように配置されている。
(3)i番目の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段は、それぞれ、
(a)前記母板を順方向送りした時に、前記加工板となる領域内の一部において第1の製品板のプッシュバックを行うことができ、かつ、
(b)前記母板を順方向送りした後、さらに前記母板を反転方向送りした時に、前記加工板となる領域内の前記第1の製品板とは異なる部分において新たに第2の製品板のプッシュバックを行うことができる
ように配置されている。
(4)前記金型セットは、N個の前記母板加工用金型のいずれか1以上に、
前記母板の少なくとも一方の側端部に、前記母板の搬送方向に対して平行な縦スリット素片を形成するための縦スリット素片形成手段、及び、
前記母板の搬送方向に対して垂直な横スリット素片を形成するための横スリット素片形成手段
の内の何れか一方を備えている。
(5)前記縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記縦スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して平行な辺となる連続した縦スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置され、
前記横スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記横スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して垂直な辺となる連続した横スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
【請求項2】
以下の構成をさらに備えた請求項1に記載の金型セット。
(4’)前記金型セットは、N個の前記母板加工用金型のいずれか1以上に、前記縦スリット素片形成手段、及び、前記横スリット素片形成手段の双方を備えている。
(6)前記縦スリット素片形成手段及び前記横スリット素片形成手段は、
(a)(2N−1)回目のプレス加工が終了した時点において、前記縦スリット素片及び前記横スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、前記母板内にあるすべての前記加工板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)2N回目のプレス加工時において、連通していなかった前記縦スリット素片及び/又は前記横スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した前記縦スリット及び/又は前記横スリットとなり、これによって一体的に連結していた前記加工板が前記母板から逐次切り離される
ように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
【請求項3】
以下の構成をさらに備えた請求項1又は2に記載の金型セット。
(7)前記金型セットは、N個の前記母板加工用金型のいずれか1以上に、前記母板の中間部に、前記母板の搬送方向に対して平行な中間縦スリット素片を形成するための中間縦スリット素片形成手段を備え、
前記中間縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記中間縦スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して平行な辺となる連続した中間縦スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
(6’)前記縦スリット素片形成手段、前記横スリット素片形成手段、及び、前記中間縦スリット素片形成手段は、
(a)(2N−1)回目のプレス加工が終了した時点において、前記縦スリット素片、前記横スリット素片及び前記中間縦スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、前記母板内にあるすべての前記加工板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)2N回目のプレス加工時において、連通していなかった前記縦スリット素片、前記横スリット素片及び/又は前記中間縦スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した前記縦スリット、前記横スリット及び/又は前記中間縦スリットとなり、これによって一体的に連結していた前記加工板が前記母板から逐次切り離される
ように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の金型セットに備えられるN個の母板加工用金型を用いて同一の母板に対し、前記母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工及び前記母板を反転方向送りしながらプレス加工を行うN回の反転方向プレス加工の合計2N回のプレス加工を行うことにより、前記母板から、プッシュバックされた製品板が枠部に仮止めされた加工板を製造するプレス工程を備えた加工板の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法により得られた加工板から製品板を分離する製品板の製造方法。
【請求項6】
以下の構成を備えた金型セット。
(1)前記金型セットは、N個(N≧2)の母板加工用金型からなり、前記各母板加工用金型を用いて同一の母板に対し、前記母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工を行うことにより、前記母板から、プッシュバックされた製品板が枠部に仮止めされた加工板を製造するために用いられる。
(2)N個の前記各母板加工用金型は、それぞれ、前記母板から前記製品板を打ち抜き、打ち抜かれた前記製品板を元の穴にはめ込むための少なくとも1個のプッシュバック手段を備え、
i番目(1≦i≦N)の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段は、j番目(1≦j≦N、j≠i)の前記母板加工用金型に設けられた前記プッシュバック手段によりプッシュバック加工される部分とは異なる部分において、前記母板から新たな前記製品板のプッシュバック加工を行うことができるように配置されている。
(3)前記金型セットは、N個の前記母板加工用金型のいずれか1以上に、
前記母板の少なくとも一方の側端部に、前記母板の搬送方向に対して平行な縦スリット素片を形成するための縦スリット素片形成手段、及び、
前記母板の搬送方向に対して垂直な横スリット素片を形成するための横スリット素片形成手段
の内の何れか一方を備えている。
(4)前記縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記縦スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して平行な辺となる連続した縦スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置され、
前記横スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記横スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して垂直な辺となる連続した横スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
【請求項7】
以下の構成をさらに備えた請求項6に記載の金型セット。
(3’)前記金型セットは、N個の前記母板加工用金型のいずれか1以上に、前記縦スリット素片形成手段、及び、前記横スリット素片形成手段の双方を備えている。
(5)前記縦スリット素片形成手段及び前記横スリット素片形成手段は、
(a)(N−1)回目のプレス加工が終了した時点において、前記縦スリット素片及び前記横スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、前記母板内にあるすべての前記加工板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)N回目のプレス加工時において、連通していなかった前記縦スリット素片及び/又は前記横スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した前記縦スリット及び/又は前記横スリットとなり、これによって一体的に連結していた前記加工板が前記母板から逐次切り離される
ように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
【請求項8】
以下の構成をさらに備えた請求項6又は7に記載の金型セット。
(6)前記金型セットは、N個の前記母板加工用金型のいずれか1以上に、前記母板の中間部に、前記母板の搬送方向に対して平行な中間縦スリット素片を形成するための中間縦スリット素片形成手段を備え、
前記中間縦スリット素片形成手段は、同一又は異なる前記母板加工用金型を用いて2回以上のプレス加工を行うことにより前記中間縦スリット素片が互いに連通し、前記加工板の搬送方向に対して平行な辺となる連続した中間縦スリットとなるように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
(5’)前記縦スリット素片形成手段、前記横スリット素片形成手段、及び、前記中間縦スリット素片形成手段は、
(a)(N−1)回目のプレス加工が終了した時点において、前記縦スリット素片、前記横スリット素片及び前記中間縦スリット素片の内の少なくとも1つが互いに連通せず、前記母板内にあるすべての前記加工板がいずれかの部分を介して一体的に連結した状態になり、かつ、
(b)N回目のプレス加工時において、連通していなかった前記縦スリット素片、前記横スリット素片及び/又は前記中間縦スリット素片が互いに連通して、それぞれ、連続した前記縦スリット、前記横スリット及び/又は前記中間縦スリットとなり、これによって一体的に連結していた前記加工板が前記母板から逐次切り離される
ように、同一又は異なる前記母板加工用金型に配置されている。
【請求項9】
請求項6から8までのいずれかに記載の金型セットに備えられるN個の母板加工用金型を用いて同一の母板に対し、前記母板を順方向送りしながらプレス加工を行うN回の順方向プレス加工を行うことにより、前記母板から、プッシュバックされた製品板が枠部に仮止めされた加工板を製造するプレス工程を備えた加工板の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法により得られた加工板から製品板を分離する製品板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−258899(P2011−258899A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134500(P2010−134500)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(500055670)太平電子工業有限会社 (18)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(500055670)太平電子工業有限会社 (18)
【Fターム(参考)】
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