説明

金属−酸素結合を有する分散質の製造方法および分散質

本発明は、種々の金属に適用でき凝集せずに安定して分散している金属−酸素結合を有する分散質を製造する方法を提供することを目的とし、それは、1種または2種以上のアルコキシアルコールを含む有機溶媒中で、1種または2種以上の金属化合物に、該金属化合物の総モル数に対して1/2倍モル以上2倍モル未満の水を用いて加水分解することで得られ、該分散質を用いることで低温度で製造される金属酸化物薄膜、および均質な有機−無機複合体が得られる。

【発明の詳細な説明】
技術分野:
本発明は、有機溶媒中凝集せずに安定に分散している金属−酸素結合を有する分散質の製造方法に関する。
背景技術:
金属酸化物ゾルは、金属酸化物膜の形成用材料、有機−無機複合体の無機成分等として有用であり、いくつかの製造方法が知られている。例えば、特開2001−233604号公報には、アルコキシアルコールを含む有機溶剤中で、金属アルコキシドまたは金属アルコキシドと金属塩の混合物に、これらの総モル数に対して0.1から10、好ましくは3〜10の水により加水分解する塗布液の製造方法が記載されている。
発明の開示:
しかしながら、特開2001−233604号公報記載の方法で2倍モル以上の水により加水分解した塗布液は条件により、特に加熱すると必ずしも安定に存在しない。本発明は、種々の金属に適用でき凝集せずに安定して分散している金属−酸素結合を有する分散質を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、1種または2種以上のアルコキシアルコールを含む有機溶媒中で、1種または2種以上の金属化合物に、該金属化合物の総モル数に対して1/2倍モル以上2倍モル未満の水を添加することにより種種の金属に適用でき凝集せずに安定して透明で均質に分散している金属−酸素結合を有する分散質を製造する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下である。
(1)1種または2種以上のアルコキシアルコールを含む有機溶媒中で、1種または2種以上の金属化合物に、該金属化合物の総モル数に対して1/2倍モル以上2倍モル未満の水を添加することを特徴とする金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
(2)金属化合物が少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属化合物であることを特徴とする(1)に記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
(3)金属化合物が、金属アルコキシドであることを特徴とする(1)〜(2)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
(4)水を添加した後、該金属化合物の加水分解開始温度以上に昇温する工程を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
(5)昇温温度が溶媒の還流温度であることを特徴とする(4)に記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
(6)水を添加する温度に、該金属化合物の加水分解開始温度以下の温度を含むことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
(7)加水分解を開始する温度以下の温度が、−50〜−100℃の温度範囲であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
(8)金属化合物が、式(I)
RaMXb …(I)
(式中、Mは、金属原子を表し、Xは加水分解性基を表し、Rは、金属原子と酸素原子を介して結合を形成できる官能基を有してもよい有機基を表し、a+b=mであり、bは1〜mのいずれかの整数を表し、mは金属原子の原子価を表す。)で表せる化合物であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
(9)金属−酸素結合を有する分散質を含む溶液が、光学的に透明であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
(10)溶液中で分散した状態での平均粒径が1〜20nmの範囲であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
(11)粒径分布が0〜50nmの範囲の単分散であることを特徴とする(1)〜(10)記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
(12)金属が、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン、鉛、マグネシウム、ランタン、タンタル、バリウムからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
(13)(1)〜(12)のいずれかに記載の方法で製造された分散質。
(14)(13)記載の分散質を含む溶液を塗布または吹き付けにより成膜されたことを特徴とする金属酸化物膜。
本発明における分散質は、凝集せずに安定に分散していることを特徴とする。この場合、分散質とは、分散系中に分散している微細粒子ことをいい、具体的には、コロイド粒子等を例示することができる。
本発明における凝集せずに安定に分散している状態とは、溶媒中、金属−酸素結合を有する分散質が、凝結して不均質に分離していない状態を表し、好ましくは透明で均質な状態を表す。この場合、透明とは、可視光における透過率が高い状態をいい、具体的には、分散質の濃度を酸化物換算で0.5重量%とし、石英セルの光路長を1cmとし、対象試料を有機溶媒とし、光の波長を550nmとする条件で測定した分光透過率で表して好ましくは80〜100%の透過率を表す状態をいう。また、本発明の分散質の粒子径は特に限定されないが、可視光における高い透過率を得るためには、その粒子径を1〜100nmの範囲とするのが好ましく、1〜50nm、さらには1〜10nmの範囲とするのが好ましい。
溶媒として使用されるアルコキシアルコールとしては、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシプロパノール、3−エトキシプロパノール、3−プロポキシプロパノール、4−メトキシブタノール、4−エトキシブタノール、4−プロポキシブタノール等の炭素数1〜4アルコキシ−炭素数1〜4アルキルアルコールが挙げられるが、これらのものに特に限定されない。また、これらのアルコキシアルコールは、単独であるいは2種以上のものを組み合わせて使用される。好ましくは、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノールまたは1−メトキシ−2−プロパノール、さらに好ましくは2−メトキシエタノールが溶媒として使用される。
本発明では、反応性に影響を与えない範囲でアルコキシアルコールと相溶する他の有機溶媒を加えることができるが、通常はアルコキシアルコールが主成分となる。また、反応後にアルコキシアルコールを含む反応液から有機溶媒を留去して高濃度の状態にし、有機溶媒を再度添加しても均質で透明な分散液となる。この有機溶媒としては、金属化合物の種類によるが、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等の塩素系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、また特開平9−208438号公報に記載されている二酸化チタン分散体の分散媒に用いられているメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン等を例示することができ、これらの溶媒は1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
本発明に用いられる金属化合物としては、式(I)で表される化合物を例示することができる。
RaMXb …(I)
式(I)中、Mは、金属原子を表し本発明に用いられる金属原子として具体的には、周期律表の第2周期から第6周期までのアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素および第3B族元素、周期律表の第3周期から第6周期までの第4B族元素および第5B族元素、遷移金属元素、ならびにランタノイド元素からなる群より選ばれた元素の1種または2種以上の金属の組合せを例示することができる。特に、金属が、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン、鉛、マグネシウム、ランタン、タンタル、バリウムの場合が好ましい。また、本発明の製造方法によれば、一般的な有機溶媒に溶解しにくいマグネシウム、ランタン、タンタル、バリウムでも製造できる。
式(I)中、Xは、加水分解性基を表し、具体的には、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシルオキシ基、ハロゲン原子、イソシアネート基、アミノ基、またはアミド基等を例示することができ、bが1〜mのいずれかの整数を表し、同一または相異なっていてもよく、特に、水酸基、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、またはイソシアネート基が好ましい。
式(I)中、Rは、金属原子と酸素原子を介して結合を形成できる官能基を有してもよい有機基を表し、具体的には、1価炭化水素基、置換基を有する1価炭化水素基、1価ハロゲン化炭化水素基、置換基を有する1価ハロゲン化炭化水素基、連結基を含む1価炭化水素基、または、連結基を含む1価ハロゲン化炭化水素基を表し、式(I)中のaが1〜bのいずれかの整数を表し、aが2以上の場合には同一、または相異なっていてもよい。金属原子と酸素原子を介して結合を形成できる官能基としては、具体的には、水酸基、活性ハロゲン原子、カルボキシル基、エステル基等を例示することができる。
Rが1価炭化水素基である場合、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルケニル基、またはアリール基が好ましい。Rが1価ハロゲン化炭化水素基である場合、該基とは炭化水素基中の水素原子の1個以上がハロゲン原子に置換された基をいい、アルキル基中の水素原子の2個以上がハロゲン原子に置換された基が好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
Rが置換基を有する1価炭化水素基である場合、1価炭化水素基の水素原子が置換基に置換された基をいい、Rが置換基を有する1価ハロゲン化炭化水素基である場合、1価ハロゲン化炭化水素基中の水素原子またはハロゲン原子が置換基に置換された基をいう。これらの基中の置換基としては、カルボキシル基、アミド基、イミド基、エステル基、または水酸基等が挙げられる。また、これらの基中の置換基の数は1〜3個が好ましい。
また、Rが連結基を含む1価炭化水素基、または、連結基を含む1価ハロゲン化炭化水素基である場合、1価炭化水素基または1価ハロゲン化炭化水素の炭素−炭素結合間に連結基を含む基、または、1価炭化水素基または1価ハロゲン化炭化水素基の金属原子に結合する末端に連結基が結合した基が挙げられる。連結基としては、−O−、−S−、−COO−または−CONR−(Rは水素原子またはアルキル基)等が好ましい。
式(I)で表される金属化合物として特に金属アルコキシドであるのが好ましく、具体的には、Si(OCH、Si(OC、Si(i−OC、Si(t−OCなどのケイ素アルコキサイド、Ti(OCH、Ti(OC、Ti(i−OC、Ti(OCなどのチタンアルコキサイド、Zr(OCH、Zr(OC、Zr(OC、Zr(OCなどのジルコニウムアルコキサイド、Al(OCH、Al(OC、Al(i−OC、Al(OCなどのアルミニウムアルコキサイド、Ge(OCなどのゲルマニウムアルコキサイド、In(OCH、In(OC、In(i−OC、In(OCなどのインジウムアルコキサイド、Sn(OCH、Sn(OC、Sn(i−OC、Sn(OCなどのスズアルコキサイド、Ta(OCH、Ta(OC、Ta(i−OC、Ta(OCなどのタンタルアルコキサイド、W(OCH、W(OC、W(i−OC、W(OCなどのタングステンアルコキサイド、Zn(OCなどの亜鉛アルコキサイド、Pb(OCなどの鉛アルコキサイド、La(OCH、La(OC、La(i−OC、La(OCなどのランタンアルコキサイド、Ba(OCなどのバリウムアルコキサイドが挙げられる。また上記例示の金属アルコキサイドの部分加水分解物も本発明で用いる金属アルコキサイドに含まれる。また、前記元素2種以上の金属アルコキシド間での反応により得られた複合アルコキシド、あるいは、1種もしくは2種以上の金属アルコキシドと1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られた複合アルコキシドであってもよい。さらには、これらを組み合わせて使用することも可能である。
2種以上の金属アルコキシド間での反応により得られる複合アルコキシドとして具体的には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコキシドと遷移金属のアルコキシドとの反応により得られた複合アルコキシドや、第3B族元素の組合せにより得られる錯塩としての複合アルコキシドを例示することができ、より具体的には、BaTi(OR′)、SrTi(OR′)、BaZr(OR′)、SrZr(OR′)、LiNb(OR′)、LiTa(OR′)、および、これらの組合せ、LiVO(OR′)、MgAl(OR′)等を例示することができる。また、(R′O)SiOAl(OR″)、(R′O)SiOTi(OR″)、(R′O)SiOZr(OR″)、(R′O)SiOB(OR″)、(R′O)SiONb(OR″)、(R′O)SiOTa(OR″)等のシリコンアルコキシドとの反応物やその縮重合物をさらに例示することができる。ここで、R′およびR″は、アルキル基を示す。また、1種もしくは2種以上の金属アルコキシドと1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシドとして、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩などの金属塩とアルコキシドとの反応により得られる化合物を例示することができる。
金属アルコキシドのアルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、含有酸化物濃度、有機物の脱離の容易さ、入手の容易さ等から、炭素数1〜4がより好ましい。アルコキシ基の代わりに、より加水分解を容易なアセトキシ基等のアシルオキシ基を用いることもできる。
以上ように例示した金属化合物を、1種または2種以上のアルコキシアルコールを含む有機溶媒中で、金属化合物に対し0.5倍モル〜2倍モル未満の水を用いる方法により、有機溶媒中で凝集せずに安定に分散可能な金属−酸素結合を有する分散質を製造することができる。
本発明で用いる水としては、中性であれば特に制限されないが蒸留水、イオン交換水を用いるのが好ましく、特に電気電導度が2μs/cm以下のイオン交換水が好ましい。その量は、上記規定した範囲であれば特に制限されず、目的とする性質を有する分散質によって任意に選択することができる。
金属化合物に水を添加する方法は、金属化合物のアルコキシアルコールを含む有機溶媒溶液に有機溶媒で希釈した水を添加する方法、水が懸濁または溶解した有機溶媒中に、金属アルコキシドのアルコキシアルコールを含む有機溶媒を添加する方法、いずれの方法でも行うことができるが、水を後から添加する方法が好ましい。また、水の添加は1回で行なってもよく複数回に分けて行なってもよい。
金属化合物の有機溶媒中の濃度は、急激な発熱を抑制し、撹拌が可能な流動性を有する範囲であれば特に限定されないが、通常、5〜30重量%が好ましい。
金属化合物への水の添加温度は特に制限されないが、加水分解開始温度以下が好ましく、−50℃〜−100℃がより好ましい。この場合加水分解開始温度とは、該金属化合物と水が接触した際に、加水分解が進行する最下限温度を示す。加水分解開始温度の測定方法は、特に制限されないが、具体的には、特開平1−230407号公報に記載されている方法、低温状態からの昇温HNMRを測定することにより該金属化合物の加水分解性基のシグナル変化を測定する方法等を例示することができる。また、水を該金属化合物に所定温度で添加する場合には、同様の所定温度の水または水を含む有機溶媒溶液を、添加するのが好ましい。
水を添加後、必要に応じて一定時間熟成した後、室温から用いた溶媒の還流温度に昇温することもできる。この分散液を用いると、有機物含有量の少ないゲル膜、ゲルファイバー、バルクゲルなどが得られ、加熱処理などによりそれらのゲルから有機物を脱離させたときに、得られた成形体における微細組織の破壊や残留気孔量を低減させることができる。
本発明は、上述して様にして調整された溶媒中で金属化合物を水で処理して得られる金属−酸素結合有する分散質を含む溶液中の該分散質の金属酸化物換算重量濃度が、処理前の金属化合物の金属酸化物換算重量濃度に対して1.2倍以上さらには1.4倍以上であっても、溶媒中に安定に分散していることを特徴とする。これは、有機溶媒中に金属−酸素結合有する分散質が高濃度に分散した溶液を、さらに、室温以上、好ましくは80℃以下で有機溶媒を留去してさらに高濃度の状態においても、分散質粒子が凝結しないことを意味し、有機溶媒を再度添加しても、均質で透明な分散液となる。また、高濃度の状態とは、溶媒がない状態を含み、その時の状態は、金属によって、固体状態、液体状態、ゲル化状態のいずれかの状態、またはこれらの混合状態を取りうる。
本発明の分散質は十分安定であるが分散安定化剤を加えることもできる。分散安定化剤とは、分散質を分散媒中になるべく安定に分散させるために添加させる成分をいい、解膠剤、保護コロイド、界面活性剤等の凝結防止剤等を示す。このような作用を有する化合物として、具体的には、キレート性の化合物を例示することができ、分子骨格中に少なくとも1個のカルボキシル基が含まれており、金属に対して強いキレート効果を有するものが好ましく、このような化合物として、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の多価カルボン酸、またはヒドロキシカルボン酸等を例示することができ、さらに、ピロ燐酸、トリポリ燐酸等を例示することができる。また、同じく金属原子に対して強いキレート能力を有する多座配位子化合物として、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオン等を例示することができる。また、その他、脂肪族アミン系、ハイドロステアリン酸系、ポリエステルアミンとして、スルパース3000、9000、17000、20000、24000(以上、ゼネカ社製)、Disperbyk−161、−162、−163、−164(以上、ビックケミー社製)等を例示することができ、特開平9−208438号公報、特開平2000−53421号公報等に記載されているジメチルポリシロキサン・メチル(ポリシロキシアルキレン)シロキサン共重合体、トリメチルシロキシケイ酸、カルボキシ変性シリコーンオイル、アミン変性シリコーン等のシリコーン化合物等を例示することができる。
以上述べたようにして調製された金属−酸素結合を有する分散質、及び/または前記分散質を出発物質とする無機ポリマーから、金属酸化物薄膜及び有機−無機複合体を製造することができる。
金属酸化物薄膜の製造方法については、前記分散質を含む溶液を、塗布後、200℃以下の温度で乾燥する。前記分散質を含む溶液中の分散質の濃度は、塗布方法、目的とする膜厚によっても異なるが、基板上に塗布可能な濃度であれば特に制限されず、具体的には、酸化物に換算した重量で5〜50重量%の範囲が好ましい。溶液に用いる溶媒としては、前記分散質を分散させるのに用いた溶媒と同様の溶媒を例示することができ、特に前記分散質を分散させるのに用いた溶媒と同一の溶媒を用いるのが好ましいが、分散質の分散性に影響を与えない溶媒であれば、異なる溶媒を用いることもできる。
前記分散質を含む溶液には、必要に応じて他の成分を添加することができる。他の成分としては、具体的には、水ガラス、コロイダルシリカ、ポリオルガノシロキサンなどのケイ素化合物、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウムなどのリン酸塩、重リン酸塩、セメント、石灰、セッコウ、ほうろう用フリット、グラスライニング用うわぐすり、プラスターなどの無機系結着剤、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂などの有機系結着剤などが挙げられ、これらの結着剤を単一または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、接着強度の観点から無機系結着剤、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマーが好ましい。セメントとしては、例えば早強セメント、普通セメント、中庸熱セメント、耐硫酸塩セメント、ホワイト(白色)セメント、油井セメント、地熱井セメントなどのポルトランドセメント、フライアッシュセメント、高硫酸塩セメント、シリカセメント、高炉セメントなどの混合セメント、アルミナセメントなどを用いることができる。プラスターとしては、例えばセッコウプラスター、石灰プラスター、ドロマイトプラスターなどを用いることができる。フッ素系ポリマーとしては、例えばポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化三フッ化エチレン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ四フッ化エチレン−六フッ化プロピレンコポリマー、エチレン−ポリ四フッ化エチレンコポリマー、エチレン−塩化三フッ化エチレンコポリマー、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマーなどの結晶性フッ素樹脂、パーフルオロシクロポリマー、ビニルエーテル−フルオロオレフィンコポリマー、ビニルエステル−フルオロオレフィンコポリマーなどの非晶質フッ素樹脂、各種のフッ素系ゴムなどを用いることができる。特に、ビニルエーテル−フルオロオレフィンコポリマー、ビニルエステル−フルオロオレフィンコポリマーを主成分としたフッ素系ポリマーが分解・劣化が少なく、また、取扱が容易であるため好ましい。シリコン系ポリマーとしては、直鎖シリコン樹脂、アクリル変性シリコン樹脂、アクリル−シリコン樹脂、エポキシ−シリコン樹脂等のシリコン変性樹脂、各種のシリコン系ゴムなどを用いることができる。
前記分散質と上記例示した他の成分の比率は、重量%で、5〜98%、好ましくは20〜98%、より好ましくは50〜98%、もっとも好ましくは70〜98%である。前記分散質を含む溶液には、必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、架橋剤、分散剤、充填剤などを配合させることができる。架橋剤としては、イソシアネート系、メラミン系などの通常の架橋剤を、分散剤としては、カップリング剤などを使用することができる。
基体に前記分散質を含む溶液を塗布する方法として具体的には、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法等の公知の方法がいずれも使用することができる。大量生産を安価に行うためには、ロールコートが好ましい。特に、バーを用いる方法、ギーサーを用いる方法は好ましい方法である。また、パターニングを塗布時にできるという点で、スクリーン印刷法やオフセット印刷法も好ましい。塗布量は、得られる薄膜の用途によって異なるが、一般的には溶媒以外の有効成分塗量として0.1〜10ml/m2である。より好ましくは、0.2〜7ml/mであり、さらに好ましくは0.4〜5ml/mである。
基体としては、セラミックス、ガラスなどの無機材質の物品、プラスチック、ゴム、木、紙などの有機材質の物品、アルミニウムなどの金属、鋼などの合金などの金属材質の物品を用いることができる。基体の大きさや形には特に制限されず、平板、立体物、フィルム等いずれも使用することができる。また、塗装した物品でも用いることができる。なかでもプラスチックのフィルムが好ましく、例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ニトロセルロース、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリエチレン被覆紙、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリフッ化ビニリデン、テフロン(登録商標)などを用いることができる。また、これらの支持体には温度や湿度の変化によって寸法が変化する、いわゆる寸度安定性を向上する目的で、ポリ塩化ビニリデン系ポリマーを含む防水層を設けてもよい。さらに、ガスバリアーの目的で、有機及び/又は無機化合物の薄膜を設けてもよい。有機薄膜の例としてはポリビニルアルコール、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)等があげられ、無機化合物の例としては、シリカ、アルミナ、タルク、バーミキュライト、カオリナイト、雲母、合成雲母等が挙げられる。また、その他諸機能のため基板中に各種有機及び/又は無機添加物が加えられていてもよい。
塗布された被膜は、溶媒を留去するとともに必要に応じて加熱処理を行なうことができる。塗布後の加熱は、200℃以下の低温で行うことができ、好ましくは、20℃〜100℃、さらに好ましくは、30℃〜80℃で行うことができる。加熱時間は、特に限定されるものではないが、通常1分〜120時間の間で適宜行われる。
本発明において、金属化合物を含有する塗布液に、成膜後に生成すると思われる金属酸化物微粒子種結晶が添加されていることが好ましい。金属酸化物微粒子種結晶の添加割合は、好ましくは、前記分散質からゾルが生成した場合のゾル重量の10wt%〜90wt%であり、特に好ましくは10wt%〜80wt%である。後に述べるように、本発明においては、光照射により金属酸化物が結晶化する場合があるが、この場合は、種結晶が添加されていることにより、金属酸化物の結晶化がさらに促進する。種結晶の大きさは任意であるが、透過率の観点から球換算で0.1μm以下が好ましい。
加える種結晶は目的とする金属酸化物そのものでなくても、結晶形が同じ、及び/又は格子定数が近い値をとるものなど、ヘテロエピタキシャルに都合の良いものを使用することもできる。例えば,ITO薄膜を作成する場合、酸化インジウムを種結晶として用いることができる。
上述の種結晶は、市販品を用いても、合成したものを用いてもよい。金属酸化物薄膜がITOの場合、市販品では三菱マテリアル製、住友金属鉱山製のものなどを用いることができる。合成法については、ゾル−ゲル法、水熱合成の他通常の焼結などが挙げられる。ゾル−ゲル法については、「ゾル−ゲル法の科学,作花済夫、アグネ承風社、1988」,「ゾル−ゲル法による薄膜コーティング技術、技術情報協会編、1994」や「ゾル−ゲル法の現状と展望、山根正之監修、技術情報サービス懇談会[ATIS]ゾル−ゲル法リポート刊行会、1992」などに詳しく記述されている。
本発明の薄膜形成方法においては、塗布膜の加熱時及び/又は加熱後に、光照射するのが好ましい。塗布被膜に紫外光もしくは可視光を照射する光源は、150nm〜700nmの波長の光を発生する限りにおいてどんなものを用いてもよい。例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、ナトリウムランプなどが挙げられる。好ましくは、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプである。また、フォトマスクを併用することによって透明導電性パターンが形成できる。また、レーザー発振装置を使用することもできる。レーザー発振装置としては、エキシマレーザー、アルゴンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、半導体レーザー、YAGレーザー、炭酸ガスレーザー、色素レーザー等が挙げられる。レーザー光を用いた場合、照射部分以外は金属酸化物と成らないので、塗布時にスクリーン印刷等を用いることなくパターン形成ができる。また、シンクロトロン放射光を利用することもできる。これらの装置は、照射したい波長を考慮して選ぶことができる。前記分散質を含む塗布液の反応を行った場合、金属酸化物の生成ともに、金属水酸化物も残るが、この金属−OH結合の吸収を考慮して、400nm以下の紫外光含む光を発生する装置を用いるとよい。更に、脱水反応が進行して、メタロキサンネットワークが形成した場合、金属−O−金属結合の吸収は,金属−OH結合より短波長であるが、金属−O−金属結合を活性化することができる波長の光照射によって、金属酸化物の結晶化が促進する。照射時間は、特に限定されるものではないが、通常1分〜120時間の間で適宜行われる。
本発明において、光照射プロセスでの雰囲気は自由であるが、ある程度の還元雰囲気で行うことは好ましい。ある程度の還元雰囲気下では酸素欠陥の増大によるキャリアー密度の増大及び/又は粒界への酸素分子の吸着が抑制されたものと考えられる。
一方、光照射によって分解する高沸点低分子量溶媒を使用してもよい。このような例としてイソホロン,酢酸ベンジルが挙げられる。
また、前記分散質を含有する溶液に、添加できるものとして、光照射を行う場合は、光崩壊製樹脂なども用いることができる。例えば,ポリメチルビニルケトン、ポリビニルフェニルケトン、ポリスルホン、p−ジアゾジフェニルアミン・パラホルムアルデヒド重縮合物等のジアゾニウム塩類、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸イソブチルエステルなどのキノンジアジド類、ポリメチルメタクリレート、ポリフェニルメチルシラン、ポリメチルイソプロペニルケトンなどが挙げられる。上記樹脂の場合、金属アルコキシドもしくは金属塩の合計100重量部あたり0〜1000重量部の割合で使用することが望ましい。
さらに、光照射を行う場合に、照射光波長と金属アルコキシド、金属塩及び/又はこれらのキレート化合物の吸収波長が異なる場合に、金属アルコキシド及び/又は金属塩を含有する液に他の添加物として光増感剤を加えるとよい。
本発明の分散質は、特に、酸、塩基、及び/又は分散安定剤を用いなくても、有機溶媒中に安定に分散している微細粒子であり、透明性も高いことから、種々公知のポリマーと有機−無機複合体を形成することができる。
公知ポリマーとしては、アクリル系樹脂、ポリ(チオ)ウレタン系樹脂、ジエチルグリコールビスアクリルカーボネートを主成分とする樹脂、エピチオ基含有化合物から得られる樹脂等を挙げることができる。具体的には以下に例示することができる。
アクリル系樹脂としては、次に記すモノマーを原料とし、これを重合したものが挙げられる。単官能メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸アダマンチル等が挙げられ、また多官能メタクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレンジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。また単官能アクリル酸エステルとして、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸イソボルニル等が挙げられ、多官能アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。さらに、上述のアクリル又はメタクリル化合物と共重合可能なモノマーとして、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、p−クロルメチルスチレン、ジビニルベンゼン等の核置換スチレンやα−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、N−置換マレイミドなどがあり、これらと上述のアクリル又はメタクリル化合物との共重合体も、アクリル系樹脂に該当する。
また、ラジカルまたはカチオン重合可能な有機モノマーが好ましく、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合および尿素結合から選ばれる少なくとも1種の結合を含有する有機モノマーが特に好ましい。このような有機モノマーのうち、ラジカル重合可能な有機モノマーの具体例としては、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、(メタ)アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、(メタ)ウレタンアクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレートとイソシアネートとの付加体などが挙げられる。ここで(メタ)アクリルアミドとは、メタクリルアミドとアクリルアミドの両者を、また(メタ)アクリレートとは、メタクリレートとアクリレートの両者を示す。
一方、上記有機モノマーのうち、カチオン重合可能なモノマーとしては、重合官能基としてエポキシ環、ビニルエーテル結合、オルトスピロ環を有する化合物が挙げられる。また上記必須有機モノマーとともに、任意有機モノマーを、得られるポリマーの改質のために用いてもよく、この種の任意有機モノマーは、アミド結合、ウレタン結合、尿素結合を有していてもいなくてもよい。但し、この任意有機モノマーは、その重合様式(ラジカル重合、カチオン重合)が上記必須モノマーと同一でなければならない。
このような任意有機モノマーの具体例としては、必須モノマーがラジカル重合性モノマーの場合、メチル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5,2,1,0]デカニル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3,3,3−トリフロロエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、必須モノマーがカチオン重合性モノマーの場合、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
ポリ(チオ)ウレタン系樹脂とは、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物またはポリヒドロキシ化合物との反応により得られるポリチオウレタンまたはポリウレタン系樹脂のことをいう。
ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されず、その具体例としては、以下のものを挙げることができる。
(i)水添2,6−トリレンジイソシアネート、水添メタおよびパラフェニレンジイソシアネート、水添2,4−トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添メタキシリレンジイソシアネート、水添パラキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート化合物、
(ii)メタおよびパラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、メタおよびパラキシリレンジイソシアネート、メタおよびパラテトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタリンジイソシアネート、1,5−ナフタリンジイソシアネートなどの芳香環を有するイソシアネート化合物(好ましいものは2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、メタテトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタリンジイソシアネートなど)、
(iii)ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュウレット反応生成物、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネートトリフェニルメタントリイソシアネートなどの脂環、芳香環を有していないイソシアネート化合物、
(iv)ジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアナート、2,2’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアナート、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアナート、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド−6,6’−ジイソシアナート、4,4’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアナート、3,3’−ジメトキシジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアナート、4,4’−ジメトキシジフェニルジスルフィド−3,3’−ジイソシアナート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、ベンジリデンスルホン−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルメタンスルホン−4,4’−ジイソシアナート、4−メチルジフェニルメタンスルホン−2,4’−ジイソシアナート、4,4’−ジメトキシジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアナトジベンジルスルホン、4,4’−ジメチルジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、4,4’−ジ−tert−ブチルジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、4,4’−ジメトキシベンゼンエチレンジスルホン−3,3’−ジイソシアナート、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニル−4’−イソシアナトフェノールエステル、4−メトキシ−3−イソシアナトベンゼンスルホニル−4’−イソシアナトフェノールエステル、4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニルアニリド−3’−メチル−4’−イソシアナート、ジベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−4,4’−ジイソシアナート、4,4’−ジメトキシベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−3,3’−ジイソシアナート、4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニルアニリド−4−メチル−3’−イソシアナート、チオフェン−2,5−ジイソシアナート、チオフェン−2,5−ジイソシアナトメチル、1,4−ジチアン−2,5−ジイソシアナート、1,4−ジチアン−2,5−ジイソシアナトメチル、1,4−ジチアン−2,3−ジイソシアナトメチル、1,4−ジチアン−2−イソシアナトメチル−5−イソシアナトプロピル、1,3−ジチオラン−4,5−ジイソシアナート、1,3−ジチオラン−4,5−ジイソシアナトメチル、1,3−ジチオラン−2−メチル−4,5−ジイソシアナトメチル、1,3−ジチオラン−2,2−ジイソシアナトエチル、テトラヒドロチオフェン−2,5−ジイソシアナート、テトラヒドロチオフェン−2,5−ジイソシアナトメチル、テトラヒドロチオフェン−2,5−ジイソシアナトエチル、テトラヒドロチオフェン−3,4−ジイソシアナトメチル等の硫黄含有イソシアネート化合物。
ポリチオール化合物としては以下のものを挙げることができる。
(i)メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプトコハク酸(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン等の脂肪族チオール、
(ii)1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,4,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、2,2′−ジメルカプトビフェニル、4,4′−ジメルカプトビフェニル、4,4′−ジメルカプトビベンジル、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオール、2,4−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、4,5−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、9,10−アントラセンジメタンチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等の芳香族チオール、
(iii)2,5−ジクロロベンゼン−1,3−ジチオール、1,3−ジ(p−クロロフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、3,4,5−トリブロム−1,2−ジメルカプトベンゼン、2,3,4,6−テトラクロル−1,5−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン等の塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換芳香族チオール、
(iv)1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン等、及びこれらの核アルキル化物等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する芳香族チオール、
(v)ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピル)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−(3−メルカプトプロピル)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、2−メルカプトエチルチオ−1,3−プロパンジチオール、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィド等、及びこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4′−チオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4′−ジチオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジプロピオン酸(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、4−メルカプトメチル−3,6−ジチアオクタン−1,8−ジチオール、ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、ビス(1,3−ジメルカプト−2−プロピル)スルフィド等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する脂肪族チオール、(vi)3,4−チオフェンジチオール、テトラヒドロチオフェン−2,5−ジメルカプトメチル、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する複素環化合物。
ポリヒドロキシ化合物としては以下のものが挙げられる。
(i)エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、1,2−メチルグルコサイド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、ビシクロ〔4,3,0〕−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカンジオール、スピロ〔3,4〕オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、等の脂肪族ポリオール、(ii)ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、テトラブロムビスフェノールA等の芳香族ポリオール、
(iii)上記(i)または(ii)のポリヒドロキシ化合物とエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとの付加反応生成物、(iv)ビス−〔4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル〕スルフィド、ビス−〔4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕スルフィド、ビス−〔4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル〕スルフィド、ビス−〔4−(4−ヒドロキシシクロヘキシロキシ)フェニル〕スルフィド、ビス−〔2−メチル−4−(ヒドロキシエトキシ)−6−ブチルフェニル〕スルフィドおよびこれらの化合物に水酸基当たり平均3分子以下のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが付加された化合物、ジ−(2−ヒドロキシエチル)スルフィド、1,2−ビス−(2−ヒドロキシエチルメルカプト)エタン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ジオール、ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)スルフィド、テトラキス(4−ヒドロキシ−2−チアブチル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(商品名ビスフェノールS)、テトラブロモビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4′−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオエチル)−シクロヘキサンなどの硫黄原子を含有したポリオール。
ポリ(チオ)ウレタン樹脂中、レンズ基材として使用されるものは従来より知られており、これを開示をしている具体的な公知刊行物例として、例えば、特開昭58−127914号公報、特開昭57−136601号公報、特開平01−163012号公報、特開平03−236386号公報、特開平03−281312号公報、特開平04−159275号公報、特開平05−148340号公報、特開平06−065193号公報、特開平06−256459号公報、特開平06−313801号公報、特開平06−192250号公報、特開平07−063902号公報、特開平07−104101号公報、特開平07−118263号公報、特開平07−118390号公報、特開平07−316250号公報、特開昭60−199016号公報、特開昭60−217229号公報、特開昭62−236818号公報、特開昭62−255901号公報、特開昭62−267316号公報、特開昭63−130615号公報、特開昭63−130614号公報、特開昭63−046213号公報、特開昭63−245421号公報、特開昭63−265201号公報、特開平01−090167号公報、特開平01−090168号公報、特開平01−090169号公報、特開平01−090170号公報、特開平01−096208号公報、特開平01−152019号公報、特開平01−045611号公報、特開平01−213601号公報、特開平01−026622号公報、特開平01−054021号公報、特開平01−311118号公報、特開平01−295201号公報、特開平01−302202号公報、特開平02−153302号公報、特開平01−295202号公報、特開平02−802号公報、特開平02−036216号公報、特開平02−058517号公報、特開平02−167330号公報、特開平02−270859号公報、特開平03−84031号公報、特開平03−084021号公報、特開平03−124722号公報、特開平04−78801号公報、特開平04−117353号公報、特開平04−117354号公報、特開平04−256558号公報、特開平05−78441号公報、特開平05−273401号公報、特開平05−093801号公報、特開平05−080201号公報、特開平05−297201号公報、特開平05−320301号公報、特開平05−208950号公報、特開平06−072989号公報、特開平06−256342号公報、特開平06−122748号公報、特開平07−165859号公報、特開平07−118357号公報、特開平07−242722号公報、特開平07−247335号公報、特開平07−252341号公報、特開平08−73732号公報、特開平08−092345号公報、特開平07−228659号公報、特開平08−3267号公報、特開平07−252207号公報、特開平07−324118号公報、特開平09−208651号公報などが挙げられる。これらの公報に開示されているポリイソシアネート化合物、ポリチオール化合物、ポリヒドロキシ化合物は、本発明でいうポリ(チオ)ウレタン樹脂を製造するための原料モノマーに該当することはいうまでもない。
ジエチレングリコールビスアリルカーボネートを主成分とする樹脂としては、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートの単独重合体、及びジエチレングリコールビスアリルカーボネートと、共重合可能なモノマーとを反応させてなる共重合体が挙げられる。
ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと共重合可能なモノマーとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸アダマンチル等の単官能メタクリル酸エステルが挙げられ、また、多官能メタクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン等が挙げられる。また、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸イソボルニル、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン等のアクリル酸エステル、さらに、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、p−クロルメチルスチレン、ジビニルベンゼン等の核置換スチレンやα−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、N−置換マレイミド、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート等が挙げられる。
ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと他のモノマーとの共重合体は知られており、その例として、特開昭54−41965号公報、特開昭51−125487号公報、特再平01−503809号公報などに記載されたものが挙げられる。
エピチオ基含有化合物から得られる樹脂とは、エピチオ基を有するモノマーまたは該モノマーを含むモノマー混合物を原料とし、これを重合してなる樹脂をいい、エピチオ基を有するモノマーの具体例としては、以下のものが挙げられる。(i)1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕スルフィドなどの脂環族骨格を有するエピスルフィド化合物、(ii)1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフィン、4,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ビフェニルなどの芳香族骨格を有するエピスルフィド化合物、
(iii)2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオエチルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)−1,4−ジチアン、2,3,5−トリ(β−エピチオプロピルチオエチル)−1,4−ジチアンなどのジチアン環骨格を有するエピスルフィド化合物、
(iv)2−(2−β−エピチオプロピルチオエチルチオ)−1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕−3−(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、テトラキス(β−エピチオプロピルチオメチル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィドなどの脂肪族骨格を有するエピチオ化合物。
また、エピチオ基含有化合物から得られる樹脂のうち、プラスチックレンズ基材として用いられるものは従来知られており、その具体例としては、特開平09−071580号公報、特開平09−110979号公報、特開平09−255781号公報、特開平03−081320号公報、特開平11−140070号公報、特開平11−183702号公報、特開平11−189592号公報、特開平11−180977号公報、特再平01−810575号公報等に記載されたものが挙げられる。
また、他の例として、分子内に(チオ)ウレタン構造を有するラジカル重合体を例示することができ、具体的には、分子中に少なくとも2個のメルカプト基を有する炭素数3〜6の直鎖状アルカン化合物と分子中に少なくとも1個のイソシアネート基および少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させることにより得られるモノマーを用いたラジカル重合体を例示することができる。なお、(メタ)アクリロイル基はアクリロイル基とメタクリロイル基の両方を意味する。
以上のようなチオウレタン結合をもつラジカル重合性化合物の原料の1つである分子中に少なくとも2個のメルカプト基を有する炭素数3〜6の直鎖状アルカン化合物の例としては、1,2,3−トリメルカプトプロパン、1,2,3−トリメルカプトブタン、1,2,4−トリメルカプトブタン、1,2,3,4−テトラメルカプトブタン、1,2,3−トリメルカプトペンタン、1,2,4−トリメルカプトペンタン、1,2,3,4−テトラメルカプトペンタン、1,2,3−トリメルカプトヘキサン、1,2,4−トリメルカプトヘキサン、1,2,5−トリメルカプトヘキサン、2,3,4−トリメルカプトヘキサン、2,3,5−トリメルカプトヘキサン、3,4,5−トリメルカプトヘキサン、1,2,3,4−テトラメルカプトヘキサン、1,2,3,5−テトラメルカプトヘキサン、1,2,4,5−テトラメルカプトヘキサン、2,3,4,5−テトラメルカプトヘキサン、1,2,3,4,5−ペンタメルカプトヘキサンを挙げることができるが、これらの中で特に得られる光学材料の性能および入手の容易さなどの点から、1,2,3−トリメルカプトプロパンが好ましい。
もう1つの原料である少なくとも分子中に1個のイソシアネート基と少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の例としては、アクリロイルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、2−イソシアナトプロピルアクリレート、2−イソシアナトプロピルメタクリレートなどが挙げられるが、これらの中で、特に得られる光学材料の性能および入手の容易さなどの点から、2−イソシアナトエチルメタクリレートが好ましい。上で例示したものは、1個のイソシアネート基と1個の(メタ)アクリロイル基を有するものであるが、2個以上のイソシアネート基を有するものでもよく、また2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものでもよい。
また、上記有機−無機複合体を光学材料として用いる場合はその物性を適宜改良するために、前記重合性化合物以外に、例えば、ラジカル重合可能な有機モノマーを用いた場合には、ラジカル重合基を有し、かつ上記化合物と共重合可能なラジカル重合性化合物を1種もしくは2種以上含んでいてもよく、このラジカル重合性化合物としては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンジグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルクリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールビスグリシジル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、2,5−ビス(2−チア−3−ブテニル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス((メタ)アクリロイルチオメチル)−1,4−ジチアンなどが挙げられ、特に好ましくは、2,5−ビス(2−チア−3−ブテニル)−1,4−ジチアンが挙げられる。なお、上記(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートの両方を意味し、(メタ)アクリロキシ基は、アクリロキシ基とメタクリロキシ基の両方を意味する。
重合反応は、有機モノマーがラジカルまたはカチオン重合可能な有機モノマーの場合、公知のラジカルまたはカチオン重合開始剤を、また、有機モノマーが、重付加、または重縮合可能な有機モノマーの場合、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン、4,4′−トリメチレンビス(1−メチルピペリジン)、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン等のアミン化合物、またはジメチルスズジクロライド、ジメチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズマレエートポリマー、ジブチルスズジリシノレート、ジブチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジブチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチルスズジクロライド、ジオクチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエートポリマー、ジオクチルスズビス(ブチルマレエート)、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジリシノレート、ジオクチルスズジオレエート、ジオクチルスズジ(6−ヒドロキシ)カプロエート、ジオクチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジドデシルスズジリシノレート、オレイン酸銅、アセチルアセトン酸銅、アセチルアセトン酸鉄、ナフテン酸鉄、乳酸鉄、クエン酸鉄、グルコン酸鉄、オクタン酸カリウム、チタン酸2−エチルヘキシル等の有機金属化合物を添加して重合を行う。前記重付加、または重縮合反応の触媒中、特に、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジラウレートが好ましく、またこれらの触媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光ラジカル重合を行う場合は、反応性向上のために、ベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、アシルフォスフィンオキサイド等の公知の増感剤を添加することもできる。
前記重合反応は、溶液重合、またはバルク重合いずれでも行うことができ、有機成分、無機成分の混合物を、加熱または光照射を行うことにより重合行うことができる。
有機−無機複合体の製造方法としては、
(i)有機ポリマー、金属アルコキシド等から調整された金属−酸素結合を有する分散質を有機溶媒中、またはバルクで混合し、成形加工する方法、
(ii)有機溶媒中、金属アルコキシド等から金属−酸素結合を有する分散質を調整し、有機モノマーを添加し、溶液重合、またはバルク重合を行い成形加工する方法、
(iii)有機溶媒中、金属アルコキシド等と有機モノマーを混合し、水を添加して加水分解を行い有機モノマーと金属−酸素結合を有する分散質の混合物を調整し、溶液重合、またはバルク重合を行い成形加工する方法、
(iv)有機ポリマーと金属アルコキシド等を有機溶媒中に混合し、水を添加して加水分解を行い、成形加工する方法、
等を例示するができ、特に(ii)、または(iii)の方法が好ましい。
また、(iii)の方法において、有機ポリマーとして重縮合物を用いる場合、水に対して不安定なモノマーは、金属−酸素結合を有する分散質を調整した後添加するのが好ましい。
本発明の有機−無機複合体は、高屈折率、高い可視光透過率を有することから、光学材料として用いるのが好ましい。該光学材料には、吸光特性を改良するために紫外線吸収剤、色素や顔料等を、耐候性を改良するために、酸化防止剤、着色防止剤等を、成形加工性を改良するために、離型剤等を、所望により適宜加えることができる。ここで、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系等が、色素や顔料としては、例えばアントラキノン系やアゾ系等が挙げられる。酸化防止剤や着色防止剤としては、例えばモノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系、硫黄系、リン系等が、離型剤としては、例えばフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、酸性リン酸エステル、高級脂肪酸等が挙げられる。
本発明の光学材料の製造方法について、例えば、前記酸素−金属結合を有する分散質、前記有機モノマー、該モノマーと共重合可能なモノマー及び添加剤や触媒を含有する均一混合物を、例えば、ラジカル重合性のモノマーであれば、公知の注型重合法、すなわち紫外線を透過するガラス製または樹脂製のモールドと樹脂製のガスケットを組み合わせた型の中に注入し、紫外線を照射して硬化させ、重付加、重縮合性モノマーであれば、加熱して硬化させる。この際、成形後の樹脂の取り出しを容易にするためにあらかじめモールドを離型処理したり、前記均一混合液中に離型剤を含有させてもよい。さらに紫外線照射後、重合を完結させたり、材料内部に発生する応力を緩和させるために、加熱することも好ましく行われる。この際の加熱温度及び時間は、紫外線照射エネルギー量等により異なるが、一般にはそれぞれ30〜150℃、0.2〜24時間である。また、加熱による注型重合の場合、例えば初期温度は5〜40℃と比較的低温の範囲が好ましく、10〜70時間かけて徐々に昇温し、100〜130℃の高温にするのが好ましい。また、既に有機ポリマーの製造が終了している前記(1)または(4)のような製造方法によって得られた光学材料については、溶液を型でキャスチング等することにより、成形することができる。このようにして得られた本発明の光学材料は、通常1.60以上の屈折率を有している。また、本発明の光学材料は通常の分散染料を用い、水もしくは有機溶媒中で容易に染色が可能であるが、この際さらに染色を容易にするために、キャリアーを加えたり加熱してもよい。
本発明はまた、このようにして得られた光学材料からなる光学製品をも提供するものであり、この光学製品としては特に制限はなく、例えば眼鏡レンズをはじめとする光学プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、記録媒体用基板、フィルター、さらにはグラス、花瓶などを挙げることができるが、これらの中で、光学プラスチックレンズ、特に眼鏡レンズに好適に用いられる。
また、本発明の光学材料は、注型重合することなく、レンズまたはガラス等の表面に塗布し、必要に応じて光照射等の操作を行うことで硬化させ、表面を保護するハードコート膜、反射を防止する多層反射防止膜の原料として用いることもできる。塗布方法は特に限定されないが、ディップコート、スピンコート、フローコート、ローラ塗り、刷毛塗り等いずれの方法も採用することができる。
以下実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
発明を実施するための最良の形態:
【実施例1】
ジルコニウムテトラn−ブトキシド(日本曹達(株)製TBZR:純度87%、酸化ジルコニウム換算濃度27.9重量%)17.87gを四つ口フラスコ中で2−メトキシエタノール溶液59.11gに溶解して、窒素ガス置換した後に、エタノール/ドライアイスバス中で−70℃に冷却した。別にイオン交換水1.10g(HO/Zr=1.5モル比)を2−メトキシエタノール21.93gに混合後、−70(−60℃に冷却した状態で、上記四つ口フラスコ中へ攪拌しながら滴下して、加水分解を行った。滴下中は、フラスコ内の液温を−70(−60℃に維持した。滴下終了後、1時間冷却しながら攪拌後、室温まで攪拌しながらゆっくり昇温した。この溶液を120℃で還流を行い無色透明な100gの酸化ジルコニウム換算濃度5重量%の前駆体ゾル液を得た。この溶液の光透過率(400nm)は91%であった。
次に、この前駆体ゾル液をロータリーエバポレーターでバス温度60度で減圧濃縮した。この結果、酸化ジルコニウム換算濃度41重量%の無色透明な高濃度前駆体ゾル液が12.2g得られた。結果をまとめて表1に示す。
【実施例2】
出発原料にタンタルペンタエトキシドを用いて、HO/Ta=1.875モル比にする以外は実施例1と同様にして無色透明な酸化タンタル換算濃度5重量%の前駆体ゾル液を得た。この前駆体ゾル液の粒度分布は粒径5nmの単分散であった。結果をまとめて表1に示す。
【実施例3〜6】
実施例1と同様にして出発原料、添加水量を変えて製造した例をまとめて表1に示す。

【実施例7】
実施例1で調製したジルコニウム前駆体ゾル液を固形状になるまでの減圧濃縮した。得られた白色の塩は、2−メトキシエタノール、トルエン、THF、キシレンまたはイソアミルアルコールを添加すると均質で透明な分散液となった。
【実施例8】
実施例2で調製したタンタル濃縮前駆体ゾル液(酸化物重量換算濃度51%)2.0gを2−メトキシエタノール5.8gで希釈し濃度13%にした。この溶液をガラス基板上(5cm×5cm)に2g滴下して、室温、3000rpmの回転数で30秒間の条件で製膜した。続いて、塗布膜を100度の温度で乾燥させた後、400度で30分間加熱処理した。これにより膜厚260nmの透明膜が得られた。標準白色光を使用してヘイズ率等を測定したところ、ヘイズ率 H 0.79、全透過率 T 89.42%、直線透過率 P 88.71%(ガラス基板:ヘイズ率 H 0.07、全透過率 T 92.01%、直線透過率 P 91.95%)であった。
比較例1
実施例1と同様の操作で、ジルコニウムに対して添加水量を2.0及び4.0(HO/Mモル比)にして加水分解を行った。添加水量が2.0(HO/Mモル比)の場合、加水分解後の溶液は透明性を保っていたが、還流を施すと白濁した。一方、添加水量が4.0(HO/Mモル比)の時は、加水分解後の溶液は既に白濁し、還流を施すと白色潤質ゲルを生じた。このゲルは2−メトキシエタノール、トルエン、THF、キシレンまたはイソアミルアルコールを添加しても均質で透明な分散液とはならなかった。
比較例2
実施例2と同様の操作で、タンタルに対して添加水量を2.5(HO/Mモル比)にして加水分解を行った。加水分解後の溶液には濁り生じ、還流を施すと薄黄色の潤質ゲルに変化した。このゲルは2−メトキシエタノール、トルエン、THF、キシレンまたはイソアミルアルコールを添加しても均質で透明な分散液とはならなかった。
【実施例9】
ジルコニウムテトラnブトキシド(日本曹達(株)製TBZR:純度87%、酸化ジルコニウム換算濃度27.9重量%)17.87gを、四つ口フラスコ中で2−メトキシエタノール溶液59.11gに溶解し窒素ガス置換した。別にイオン交換水1.10g(HO/Zr=1.5モル比)を2−メトキシエタノール21.93gに混合後、室温で上記四つ口フラスコ中へ攪拌しながら滴下して、加水分解を行った。滴下終了後、この溶液を120℃で還流を行い無色透明な100gの酸化ジルコニウム換算濃度5重量%の前駆体ゾル液を得た。この溶液の光透過率(400nm)は96%であった。
この前駆体ゾル液をロータリーエバポレーターでバス温度60度で減圧濃縮した。この結果、酸化ジルコニウム換算濃度41重量%の黄色透明な高濃度前駆体ゾル液が12.2g得られた。
比較例3
実施例9と同様の操作でジルコニウムの加水分解を行った。添加水量は2.0と4.0(H2O/Zrモル比)で行い、各々2−メトキシエタノールとの混合液(重量比 1:19=H2O:2−メトキシエタノール)にした。添加水量が2.0(HO/Zrモル比)の場合、加水分解後の溶液は透明性を保っていたが、還流を施すと白濁した。一方、添加水量が4.0(HO/Zrモル比)の時は、加水分解後の溶液は既に白濁し、還流を施すと白色潤質ゲルを生じた。このゲルは2−メトキシエタノール、トルエン、THF、キシレンまたはイソアミルアルコールを添加しても均質で透明な分散液とはならなかった。
産業上の利用可能性:
以上述べたように、本発明によれば安定して均一で透明な金属−酸素結合を有する分散質を製造することができる。この分散質からは有機−無機複合体、金属酸化物膜を製造することができ、これらは光学材料等として広く利用することができるので本発明の産業上の利用価値は高いといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または2種以上のアルコキシアルコールを含む有機溶媒中で、1種または2種以上の金属化合物に、該金属化合物の総モル数に対して1/2倍モル以上2倍モル未満の水を添加することを特徴とする金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
【請求項2】
金属化合物が少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属化合物であることを特徴とする請求項1に記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
【請求項3】
金属化合物が、金属アルコキシドであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
【請求項4】
水を添加した後、該金属化合物の加水分解開始温度以上に昇温する工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
【請求項5】
昇温した温度が溶媒の還流温度であることを特徴とする請求項4に記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
【請求項6】
水を添加する温度に、該金属化合物の加水分解開始温度以下の温度を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
【請求項7】
加水分解を開始する温度以下の温度が、−50〜−100℃の温度範囲であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
【請求項8】
金属化合物が、式(I)
RaMXb …(I)
(式中、Mは、金属原子を表し、Xは加水分解性基を表し、Rは、金属原子と酸素原子を介して結合を形成できる官能基を有してもよい有機基を表し、a+b=mであり、bは1〜mのいずれかの整数を表し、mは金属原子の原子価を表す。)で表せる化合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
【請求項9】
金属−酸素結合を有する分散質を含む溶液が、光学的に透明であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
【請求項10】
溶液中で分散した状態での平均粒径が1〜20nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
【請求項11】
粒径分布が0〜50nmの範囲の単分散であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
【請求項12】
金属が、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン、鉛、マグネシウム、ランタン、タンタル、バリウムからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の方法で製造された分散質。
【請求項14】
請求項13記載の分散質を含む溶液を塗布または吹き付けにより成膜されたことを特徴とする金属酸化物膜。

【国際公開番号】WO2004/067447
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504757(P2005−504757)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000882
【国際出願日】平成16年1月30日(2004.1.30)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】