説明

金属ろ材を用いた濃縮装置

【課題】 ケーキの回収率を高め、洗浄水も少なくて済み、目詰まりの少ない、剥離性の良い金属ろ材を用いた濃縮装置を提供する。
【解決手段】 ろ材面を貫通する微細孔のパンチングベルト(3)で無端ベルトを構成し、パンチングベルト(3)の所定の走行区間に近接して、ろ材面を貫通する微細孔の加圧パンチングベルト(8)を配設し、加圧パンチングベルトを昇降自在な隙間調整装置(15)に連結し、下部可変駆動機(4)と上部可変駆動機(9)を配設して、パンチングベルト(3)と加圧パンチングベルト(8)を差速回転可能としたもので、対象処理液にあった隙間設定と差速回転が行われ、従来の重力濃縮に加え、加圧力とせん断力が加えられ、固液分離が促進されて濃度の高い濃縮汚泥と、汚泥処理量を増加させることができる。微細孔がろ材面を貫通するので、目詰まりせず、洗浄効果も良好で洗浄水量が低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水汚泥、浄水汚泥、或いは産業排水汚泥に凝集剤を添加して、この凝集汚泥からろ液を分離して濃縮効果を高める濃縮装置の改良に関し、特に、ろ材面に汚泥などの絡み付きがなく、剥離性も良好で、洗浄水量を低減できる金属ろ材を用いた濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルト型濃縮装置は、有機質を含有する難脱水性の汚泥の濃縮装置として、効率の良よい処理が行なわれている。ベルト型濃縮装置は駆動ローラーと従動ローラーに無端ベルトが掛け回してあり、構造が簡単で、所要動力の少ない省力型脱水機である。無端ベルトを金属ベルトで構成し、複数の金属線材で表裏方向に多層状に形成する金属ベルトを用いた濃縮装置は、例えば、特許文献1に記載してあるように公知である。
【特許文献1】特開2002−326006号公報(段落番号0018乃至段落番号0020、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の濃縮装置によるスラリーの脱水は、極めて緩やかに走行し、負荷変動に対する許容能力が大きいため、難脱水性の汚泥に対しても、効率の良い処理が行なわれる。濃縮装置は運転操作と保守点検が容易であり、煩雑な点検、調整を必要としないシンプルな構造となっており、高速回転機構を持たないため、騒音と振動がない等の多くの利点を有している。
【0004】
上記のような利点があるが、濃縮装置は重力濃縮のため濃縮程度に限界があり、無端ベルトの長さも長くなる。従来の濃縮装置に使用するろ布や金属線材を織り込んだ金属ろ材は、その表面に微細な凹凸と、その内部に屈曲したろ液通路があり、ここに汚泥が滞留して繊維質が絡み付き、或いは、洗浄水に含まれる鉄、マンガン、カルシューム等が析出する。スクレーパだけでこれらを完全に剥離することは不可能であり、大量の洗浄水が必要となる。目詰まりした金属ろ材は、作業環境の悪い機体から取外せば、高圧ジェッター洗浄と薬品洗浄で不純物除去は可能であるが、洗浄排水処理設備が必要となる。この発明は、洗浄水も少なくて済み、目詰まりの少ない、剥離性の良い金属ろ材を用いた濃縮装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る金属ろ材を用いた濃縮装置は、金属性の無端ベルトを複数のロールに掛け回し、水平状に張設した無端ベルトの一端に汚泥を供給してろ液を分離しながら走行させ、他端から濃縮した汚泥を排出する濃縮装置において、ろ材面を貫通する微細孔のパンチングベルトで無端ベルトを構成し、パンチングベルトの所定の走行区間に近接して、ろ材面を貫通する微細孔の加圧パンチングベルトを配設したもので、ろ布や金属線材のベルトのような織り目がなく、汚泥が滞留し、繊維質が絡み付つくことが無く、剥離性は良好である。微細孔がろ材面を貫通するので、目詰まりせず、洗浄効果も良好で洗浄水量が低減できる。金属ろ材であるスチールベルトは耐磨耗性があり、耐久期間が長くなる。
【0006】
加圧パンチングベルトを昇降自在な隙間調整装置に連結し、パンチングベルトと加圧パンチングベルトの入口側と出口側の隙間を任意に調整可能としたもので、対象処理液に応じてパンチングベルトと加圧パンチングベルトの隙間を任意に調整することができる。対象処理液にあった隙間設定で、加圧力が加えられ、濃度の高い濃縮汚泥と汚泥処理量を増加させることができる。そして、パンチングベルトと加圧パンチングベルトを掛け回した駆動ロールに下部可変駆動機と上部可変駆動機を配設し、パンチングベルトと加圧パンチングベルトを差速回転可能としたもので、パンチングベルトと加圧パンチングベルトの速度を任意に設定でき、差速回転により剪断力が加えられ、濃縮効果が高められる。極めて緩やかに走行しながら凝集汚泥間の水分を分離させるので、難脱水性の汚泥に対しても、効率の良い処理が行なえる。
ろ過性の良い汚泥にあっては、加圧パンチングベルトの代わりに、金属、ゴム、或いは、合成樹脂の無孔ベルトとしてもよいもので、押圧する濃縮汚泥の加圧力を増加することができる。
【発明の効果】
【0007】
この発明の金属ろ材を用いた濃縮装置は上記のように構成してあり、パンチングベルトと加圧パンチングベルトを任意に差速回転可能とし、昇降自在な加圧パンチングベルトとしたので、対象処理液にあった隙間設定と差速回転が可能となり、従来の重力濃縮に加え、加圧力とせん断力が得られ、固液分離が促進されて濃度の高い濃縮汚泥と、汚泥処理量を増加させることができる。パンチングベルトと上部パンチングベルトは、従来の表面に微細な凹凸や屈曲したろ液通路がなく、ケーキの回収率が高くなり、ケーキを洗い流す洗浄水量も少なくなる。スチールベルトは耐久期間が長くなり、作業環境の悪い濃縮装置からスチールベルトを取外す、交換作業を不用とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明に係る金属ろ材を用いた濃縮装置を図面に基づき詳述すると、図1は濃縮装置の側面図であって、機枠に配設した駆動ロール1と従動ロール2に厚みが0.1〜1.0mmのパンチングベルト3が無端状に掛け回してある。厚みの薄いパンチングベルト3は、可撓性が増加して濃縮装置への装着が容易となる。パンチングベルト3はパンチングメタルで構成してあり、厚み方向に貫通する微細孔がろ材面に開口してある。パンチングメタルはろ布や金属線材のベルトのような織り目がなく、汚泥が滞留し、或いは繊維質が絡み付つくことが無く、剥離性が良好となる。駆動ロール1に下部可変駆動機4が連動連結してあり、パンチングベルト3の走行速度を調節可能としてある。パンチングベルト3の無端状に張設した下部の反転位置に一対のテンションロール5、5が配設してあり、パンチングベルト3の張力を保つようにしてある。
【0009】
図1に示すように、パンチングベルト3の上方の機枠に配設した上部駆動ロール6と上部従動ロール7に、厚みが0.1〜1.0mmの加圧パンチングベルト8が無端状に掛け回してあり、パンチングベルト3の水平状後方部の所定の走行区間に加圧パンチングベルト8が近接してある。加圧パンチングベルト8もろ材面に厚み方向に貫通する微細孔が開口するパンチングメタルで構成してあるので、その微細孔に汚泥が滞留することも、或いは繊維質が絡み付つくことも無い。上部駆動ロール6に上部可変駆動機9が連動連結してあり、加圧パンチングベルト8の走行速度を調節可能としてある。加圧パンチングベルト8の反転上部の裏面に上部テンションロール10が配設してあり、加圧パンチングベルト8の張力を保つようにしてある。対象処理液の汚泥性状に応じて、パンチングベルト3と加圧パンチングベルト8の速度を任意に設定でき、差速運転により剪断力が加えられ濃縮効果が高められる。
【0010】
図2は濃縮装置の加圧部分の要部側面図であって、パンチングベルト3の両側部に機枠に配設したサポートフレーム11が並設してあり、サポートフレーム11に複数のサポートロール12・・・が軸支してある。汚泥を濃縮するパンチングベルト3の水平部を複数のサポートロール12・・・で支架してあり、パンチングベルト3に供給した汚泥を水平状に支持させる。加圧パンチングベルト8の両側部に機枠に配設したプレスフレーム13が並設してあり、プレスフレーム13に複数のプレスロール14・・・が軸支してある。濃縮汚泥に接触する加圧パンチングベルト8の水平部の裏面をプレスロール14で押圧して加圧濃縮する。
【0011】
図2に示すように、パンチングベルト3を支架するサポートロール12のサポートフレーム11と、加圧パンチングベルト8を押圧するプレスロール14のプレスフレーム13の間に隙間調整装置15・・・が配設してある。隙間調整装置15は、サポートフレーム12の前後の側端部に枢着して回動自在に立設した調節杆16と、調節杆16に螺合してプレスフレーム13の前後の側端部に嵌着した調節ナット17とから構成してある。サポートフレーム12に枢着した調節杆16を回転させて、パンチングベルト3と加圧パンチングベルト8の入口側と出口側の隙間を対象処理液に応じて任意に調整する。
【0012】
パンチングベルト3の水平部の始端側に汚泥シュート18が配設してあり、パンチングベルト3の一端に汚泥を供給してろ液を分離し、他端から濃縮した汚泥を排出する。対象処理液に適した隙間設定と差速回転が行われるので、従来の重力濃縮に加え、加圧力と剪断力が加えられ、濃度の高い濃縮汚泥と汚泥処理量を増加させることができ、厚み方向に貫通する微細孔がろ材面に開口してあるのでケーキの回収率も高くなる。濃縮装置は、極めて緩やかに走行しながら汚泥に加圧力と剪断力を与え、凝集汚泥間の水分を分離させるので、難脱水性の汚泥に対しても、効率の良い処理が行なえる。
【0013】
図1に示すように、駆動ロール1と上部駆動ロール6に巻き掛けたパンチングベルト3と加圧パンチングベルト8の反転位置にスクレーパ19、20が当接してあり、ろ液を分離した濃縮汚泥は、パンチングベルト3に載置するケーキと加圧パンチングベルト8に付着したケーキをスクレーパ19、20で剥離する。その走行後段のパンチングベルト3と加圧パンチングベルト8のろ過面にも洗浄ノズル21と上部洗浄ノズル22が対設してある。パンチングベルト3と加圧パンチングベルト8を構成するパンチングメタルの微細孔がろ材面を貫通するので、目詰まりし難く、洗浄効果も良好であり、洗浄水量が低減できる。耐磨耗性がある金属ろ材のパンチングベルト3と加圧パンチングベルト8は耐久期間が長く、作業環境の悪い濃縮装置からスチールベルトを取外す交換作業を不用とする。なお、ろ過性の良い汚泥にあっては、加圧パンチングベルトの代わりに、金属、ゴム、或いは、合成樹脂の無孔ベルトとしてもよいもので、押圧する濃縮汚泥の加圧力を増加することができる。そして、パンチングベルト3と加圧パンチングベルト8の両端部に可撓性のシールベルト(図示せず)を貼着すれば、濃縮汚泥のはみ出しを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
この発明に係る金属ろ材を用いた濃縮装置は、パンチングベルトと加圧パンチングベルトをパンチングメタルで構成し、パンチングベルトと加圧パンチングベルトを任意に差速回転可能として、加圧パンチングベルトに隙間調節装置を配設したので、対象処理液にあった隙間設定と差速回転が行われ、従来の重力濃縮に加え、加圧力と剪断力が加えられ、固液分離が促進されて濃度の高い濃縮汚泥と、汚泥処理量を増加させることができる。ろ過面を貫通する微細孔がケーキの回収率を高め、ケーキを洗い流す洗浄水量も少なくて済む。スチールベルトは耐久期間が長いので、作業環境の悪い濃縮装置からスチールベルトを取外す、交換作業を不用とするものである。したがって、難脱水性の有機汚泥や微細無機質を含有する下水汚泥、浄水汚泥、或いは産業排水を加圧脱水する濃縮装置に適するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明に係る金属ろ材を用いた濃縮装置の側面図である。
【図2】同じく、濃縮装置の加圧部分の要部側面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 駆動ロール
3 パンチングベルト
4 下部可変駆動機
6 上部駆動ロール
8 加圧パンチングベルト
9 上部可変駆動機
15 隙間調整装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属性の無端ベルトを複数のロールに掛け回し、水平状に張設した無端ベルトの一端に汚泥を供給してろ液を分離しながら走行させ、他端から濃縮した汚泥を排出する濃縮装置において、ろ材面を貫通する微細孔のパンチングベルト(3)で無端ベルトを構成し、パンチングベルト(3)の所定の走行区間に近接して、ろ材面を貫通する微細孔の加圧パンチングベルト(8)を配設したことを特徴とする金属ろ材を用いた濃縮装置。
【請求項2】
上記加圧パンチングベルト(8)を昇降自在な隙間調整装置(15)に連結し、パンチングベルト(3)と加圧パンチングベルト(8)の入口側と出口側の隙間を任意に調整可能としたことを特徴とする請求項1に記載の金属ろ材を用いた濃縮装置。
【請求項3】
上記パンチングベルト(3)と加圧パンチングベルト(8)を掛け回した駆動ロール(1)と上部駆動ロール(6)に下部可変駆動機(4)と上部可変駆動機(9)を配設し、パンチングベルト(3)と加圧パンチングベルト(8)を差速回転可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載の金属ろ材を用いた濃縮装置。
【請求項4】
上記加圧パンチングベルト(8)の代わりに、金属、ゴム、或いは、合成樹脂の無孔ベルトとしたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の金属ろ材を用いた濃縮装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−26455(P2006−26455A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204209(P2004−204209)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【Fターム(参考)】