説明

金属ナノワイヤーの製造方法

【課題】単一の金属ナノワイヤーが容易に得られる製造方法を提供する。
【解決手段】金属塩、還元剤及び極性ポリマーを、下記式(1)で表される化合物の存在下で反応させることを含む、金属ナノワイヤーの製造方法。
【化1】


(式中、環Aは、環内に窒素カチオンを有する6員以上の環を表し、X-はアニオンを表し、R1は水素原子又は置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノワイヤーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ナノワイヤーは、高導電性を有するため、電極の分野で利用されている。この金属ナノワイヤーの製造方法としては、例えば、硝酸銀、エチレングリコール及び1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチルスルフェートを用いた銀ナノワイヤーの製造方法が報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/058941号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の製造方法で得られる銀ナノワイヤーは、複数が束状に集合したものであり、単一の銀ナノワイヤー(銀ナノワイヤーの複数が、束状に集合していないもの)を得ることは、困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、単一の金属ナノワイヤーが容易に得られる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、本発明をなすに至った。
【0007】
即ち、本発明は、金属塩、還元剤及び極性ポリマーを、下記式(1)で表される化合物の存在下で反応させることを含む、金属ナノワイヤーの製造方法を提供する。
【0008】
【化1】

(式中、環Aは、環内に窒素カチオンを有する6員以上の環を表し、X-はアニオンを表し、R1は水素原子又は置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、単一の金属ナノワイヤーを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1で得られた単一の銀ナノワイヤーの走査型電子顕微鏡像(倍率:5,000倍)による写真である。
【図2】実施例2で得られた単一の銀ナノワイヤーのデジタルマイクロスコープ(倍率:2,000倍)による写真である。
【図3】比較例1で得られた銀ナノ材料の走査型電子顕微鏡像(倍率:5,000倍)による写真である。
【図4】比較例2で得られた銀ナノ材料の走査型電子顕微鏡像(倍率:5,000倍)による写真である。
【図5】実施例3で得られた単一の銀ナノワイヤーのデジタルマイクロスコープ(倍率:2,000倍)による写真である。
【図6】実施例4で得られた単一の銀ナノワイヤーの生物顕微鏡(倍率:1,000倍)による写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の金属ナノワイヤーの製造方法は、金属塩、還元剤及び極性ポリマーを、下記式(1)で表される化合物の存在下で反応させることを含む、金属ナノワイヤーの製造方法である。
【0012】
【化2】

(式中、環Aは、環内に窒素カチオンを有する6員以上の環を表し、X-はアニオンを表し、R1は水素原子又は置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表す。)
【0013】
・金属ナノワイヤー
本明細書において、「金属ナノワイヤー」とは、本発明の製造方法により得られる生成物(通常、混合物である。)中に存在する、ナノ単位の径(最も短い径が1000nm以下)を有するワイヤー状の個体を意味する。金属ナノワイヤーは、電子顕微鏡(走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」と言う。)及び透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」と言う。))又は光学顕微鏡(例えば、金属顕微鏡、生物顕微鏡、実体顕微鏡、偏光顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザー顕微鏡、マイクロスコープ等。)による写真から、目視で確認することができる。
【0014】
金属ナノワイヤーの最も短い径は、通常、1nm以上であり、導電性が良好となるので、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、30nm以上が更に好ましい。
金属ナノワイヤーの最も長い径は、通常、1000nmを超えるが、導電性が良好となるので、好ましくは1300nm以上であり、より好ましくは1600nm以上であり、更に好ましくは2000nm以上であり、特に好ましくは2500nm以上であり、とりわけ好ましくは3000nm以上である。金属ナノワイヤーの最も長い径は、通常、1cm以下であり、好ましくは1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは0.3mm以下であり、特に好ましくは0.1mm以下である。
【0015】
金属ナノワイヤーの最も長い径と最も短い径の比率(以下、「アスペクト比」と言う。)は、通常、1.5以上であり、導電性が向上するので、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、更に好ましくは20以上であり、特に好ましくは100以上であり、とりわけ好ましくは300以上である。
【0016】
金属ナノワイヤーのアスペクト比は、通常、1×107以下であり、分散性が良好となるので、好ましくは1×106以下であり、より好ましくは1×105以下であり、更に好ましくは1×104以下であり、特に好ましくは1×103以下である。
【0017】
金属ナノワイヤーのアスペクト比は、上限と下限とを併せて記載すると、好ましくは20〜105であり、より好ましくは100〜104である。
【0018】
アスペクト比は、前述のように、金属ナノワイヤー等の金属ナノ材料において、最も長い径と最も短い径との比率(最も長い径/最も短い径)を意味し、このアスペクト比に分布がある場合には算術平均値である。金属ナノワイヤー等の金属ナノ材料のアスペクト比は、前述の電子顕微鏡又は光学顕微鏡による写真を用いて特定することができる。
つまり、アスペクト比は、例えば、金属ナノワイヤーの長さ(最も長い径)の、直径(最も短い径)に対する比である。
【0019】
金属ナノワイヤーを構成する金属としては、金属としての安定性が良好となるので、遷移金属が好ましく、周期表第11族金属がより好ましく、銀が更に好ましい。
【0020】
本発明の製造方法で得られた金属ナノワイヤーは、工業用触媒等の触媒(例えば、高表面積触媒、低温焼結性電極)、導電膜、配線、塗布型電極等の電極の分野で有用である。
【0021】
・金属ナノワイヤーの製造方法
前記式(1)中、X-で表されるアニオンとしては、例えば、ハロゲンアニオン(F-、Cl-、Br-、I-)、(C253PF3-、[(CF3SO22N]-、CF3SO3-、[(CN)2N]-、[(CN)3C]-、SCN-、C25OSO3-、C49OSO3-、C613OSO3-、C817OSO3-、HSO4-、[B(C242]-、(CH32PO4-、(C252PO4-、CH3SO3-、CF3CO2-、CH364SO3-、BF4-、PF6-、C49SO3-、OH-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、CN-、NO3-、H2PO4-及びCF3OSO3-が挙げられ、
-、Cl-、Br-、I-、(C253PF3-、[(CF3SO22N]-、CF3SO3-、[(CN)2N]-、[(CN)3C]-、SCN-、C25OSO3-、C49OSO3-、C613OSO3-、C817OSO3-、HSO4-、[B(C242]-、(CH32PO4-、(C252PO4-、CH3SO3-、CF3CO2-、CH364SO3-、BF4-、PF6-及びC49SO3-が好ましく、
ハロゲンアニオン、(C253PF3-、[(CF3SO22N]-、CF3SO3-、[(CN)2N]-、C25OSO3-、BF4-、PF6-及びC49SO3-がより好ましく、ハロゲンアニオンが更に好ましく、
Cl-及びBr-が特に好ましく、Cl-がとりわけ好ましい。
【0022】
前記式(1)中、R1で表される1価の炭化水素基としては、
例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基及びアリールアルキニル基が挙げられ、
好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基及びアリールアルキニル基であり、
より好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基及びアリールアルケニル基であり、
更に好ましくは、アルキル基、アルケニル基及びアリールアルキル基であり、
特に好ましくはアルキル基である。
【0023】
前記アルキル基は、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。アルキル基の炭素数は、通常、1〜50であり、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基及びラウリル基が挙げられる。前記アルキル基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基及びパーフルオロオクチル基が挙げられる。
【0024】
前記アルケニル基は、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。アルケニル基の炭素数は、通常、2〜50であり、2〜20が好ましい。前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基及び2−ドデセニル基が挙げられる。
【0025】
前記アルキニル基は、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。アルキニル基の炭素数は、通常、2〜50であり、2〜20が好ましい。前記アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、3−ブチニル基、4−ペンチニル基及び5−ヘキシニル基が挙げられる。
【0026】
前記アリール基は、芳香族炭化水素化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団であり、縮合環を持つものや、独立したベンゼン環及び縮合環から選ばれる2個以上の環が直接又はビニレン基等を介して結合したものも含む。アリール基の炭素数は、通常、6〜60であり、6〜48が好ましい。なお、該炭素数には、後述の置換基の炭素数は含まれない。
アリール基としては、例えば、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(「C1〜C12アルコキシ」は、アルコキシ部分の炭素数が1〜12であることを示す。以下、同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基(「C1〜C12アルキル」は、アルキル部分の炭素数が1〜12であることを示す。以下、同様である。)、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基及び9−アントラセニル基が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基が好ましい。前記アリール基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で置換されたアリール基としては、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。
1〜C12アルコキシフェニル基としては、例えば、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基、イソプロピルオキシフェニル基、ブトキシフェニル基、イソブトキシフェニル基、sec−ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基、ペンチルオキシフェニル基、ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、ヘプチルオキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基、2−エチルヘキシルオキシフェニル基、ノニルオキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェニル基及びラウリルオキシフェニル基が挙げられる。
1〜C12アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、メシチル基、メチルエチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、イソアミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基及びドデシルフェニル基が挙げられる。
【0027】
前記アリールアルキル基は、前記アリール基と前記アルキル基とが結合したものである。アリールアルキル基の炭素数は、通常、7〜60であり、7〜30が好ましい。なお、該炭素数には、後述の置換基の炭素数は含まれない。
アリールアルキル基としては、例えば、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基及び2−ナフチル−C1〜C12アルキル基が挙げられる。
【0028】
前記アリールアルケニル基は、前記アリール基とアルケニル基とが結合したものである。アリールアルケニル基の炭素数は、通常、8〜60であり、8〜30が好ましい。なお、該炭素数には、後述の置換基の炭素数は含まれない。
アリールアルケニル基としては、例えば、フェニル−C2〜C12アルケニル基(「C2〜C12アルケニル」は、アルケニル部分の炭素数が2〜12であることを示す。以下、同様である。)、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルケニル基及び2−ナフチル−C2〜C12アルケニル基が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基及びC2〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基が好ましい。
【0029】
前記アリールアルキニル基は、前記アリール基とアルキニル基とが結合したものである。アリールアルキニル基の炭素数は、通常、8〜60であり、8〜30が好ましい。なお、該炭素数には、後述の置換基の炭素数は含まれない。
アリールアルキニル基としては、例えば、フェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルキニル基及び2−ナフチル−C2〜C12アルキニル基が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基及びC1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基が好ましい。
【0030】
1で表される1価の炭化水素基に含まれる水素原子の一部又は全部は、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等の置換基で置換されていてもよい。なお、置換基が複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。ここで、「1価の複素環基」とは、複素環式化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団を意味する。
【0031】
前記置換基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、酸イミド基、シアノ基及びニトロ基が好ましく、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基、置換アミノ基、アシル基及びアシルオキシ基がより好ましい。以下、より好ましい置換基を説明する。
【0032】
前記置換基であるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。アルコキシ基の炭素数は、通常、1〜20であり、1〜10が好ましい。前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基及びラウリルオキシ基が挙げられる。前記アルコキシ基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で置換されたアルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基、及び、2−メトキシエチルオキシ基が挙げられる。
【0033】
前記置換基であるアリールオキシ基の炭素数は、通常、6〜60であり、6〜48が好ましい。前記アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基及びペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられる。
1〜C12アルコキシフェノキシ基としては、例えば、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、プロピルオキシフェノキシ基、イソプロピルオキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、イソブトキシフェノキシ基、sec−ブトキシフェノキシ基、tert−ブトキシフェノキシ基、ペンチルオキシフェノキシ基、ヘキシルオキシフェノキシ基、シクロヘキシルオキシフェノキシ基、ヘプチルオキシフェノキシ基、オクチルオキシフェノキシ基、2−エチルヘキシルオキシフェノキシ基、ノニルオキシフェノキシ基、デシルオキシフェノキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェノキシ基及びラウリルオキシフェノキシ基が挙げられる。
1〜C12アルキルフェノキシ基としては、例えば、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、イソブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基及びドデシルフェノキシ基が挙げられる。
【0034】
前記置換基であるアリールアルコキシ基は、前記置換基であるアリール基と前記置換基であるアルコキシ基とが結合したものである。アリールアルコキシ基の炭素数は、通常、7〜60であり、7〜30が好ましい。前記アリールアルコキシ基としては、例えば、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基、及び、2−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基が挙げられる。
【0035】
前記置換基である置換アミノ基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基からなる群から選択される1種以上の基で置換されたアミノ基が挙げられる。置換アミノ基の炭素数は、通常、1〜60であり、2〜48が好ましい。
置換基である置換アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基、フェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基及び2−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基が挙げられる。
【0036】
前記置換基であるアシル基の炭素数は、通常、2〜20であり、2〜18が好ましい。
置換基であるアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基及びペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。
【0037】
前記置換基であるアシルオキシ基の炭素数は、通常、2〜20であり、2〜18が好ましい。
置換基であるアシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基及びペンタフルオロベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0038】
前記式(1)中、R1は、
好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基及びアリールアルキニル基であり、
より好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基及びアリールアルケニル基であり、
更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基及びアリールアルキル基であり、
特に好ましくは、水素原子及びアルキル基であり、
とりわけ好ましくは、水素原子及び炭素数1〜6の直鎖状のアルキル基である。
【0039】
前記式(1)中、環Aで表される「環内に窒素カチオンを有する6員以上の環」としては、環内に窒素カチオンを有する6員環が好ましく、下記式で表される環がより好ましい。なお、下記式で表される環は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、後述するR2の置換又は非置換の1価の炭化水素基が挙げられる。
【0040】
【化3】

【0041】
前記式(1)で表される化合物は、反応における溶媒への溶解性が良好となるので、下記式(b−1)、(b−2)、(b−3)、(b−4)又は(b−5)(以下、「式(b−1)〜(b−5)」等と言う。)で表される化合物であることが好ましい。
【0042】
【化4】

(式中、X-及びR1は前記と同様の意味を有し、R2は、水素原子又は置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表し、隣接位の原子に結合するR1とR2又は隣接位の原子に結合する2個のR2は、一緒になって環を形成してもよく、R2が複数個ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【0043】
前記式(b−1)〜(b−5)中、R2で表される置換若しくは非置換の1価の炭化水素基は、前記R1で表される置換若しくは非置換の1価の炭化水素基と同様である。
2は、好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基又はアリールアルキニル基であり、
より好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基又はアリールアルケニル基であり、
更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリールアルキル基であり、
特に好ましくは、水素原子又はアルキル基である。
【0044】
前記式(1)で表される化合物としては、例えば、以下の式(c−1)〜(c−16)、式(d−1)〜(d−4)及び式(e−1)〜(e−11)で表される化合物が挙げられ、合成が容易であるので、以下の式(c−1)〜(c−16)及び式(e−1)〜(e−11)で表される化合物が好ましく、以下の式(c−1)〜(c−16)及び式(e−1)〜(e−3)で表される化合物がより好ましく、以下の式(c−1)〜(c−16)で表される化合物が更に好ましい。
【0045】
【化5】

【0046】
【化6】

【0047】
【化7】

【0048】
本発明の製造方法において、前記式(1)で表される化合物は、一種のみ用いても二種以上を併用してもよい。
【0049】
前記金属塩は、通常、下記式(2)で表される。
m+aX'n−b (2)
(式中、Mm+は、正の電荷を有する金属イオンを表す。X'n−はアニオンを表す。a及びbは、それぞれ独立に、1以上の整数である。Mm+が複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。X'n−が複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0050】
前記式(2)中、a及びbは、それぞれ独立に、好ましくは1〜3の整数であり、とり好ましくは1又は2である。但し、a及びbは、前記式(2)で表される化合物の全体としての電荷の偏りがない組み合わせである。
【0051】
前記式(2)中、Mは金属種を表し、mは1以上の整数を表す。
m+で表される正の電荷を有する金属イオンとしては、例えば、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、鉄、コバルト、銅、鉛、錫等のイオンが挙げられ、
銀イオン、金イオン、白金イオン、銅イオンが好ましく、銀イオン、金イオン、銅イオン(好ましくは、Cu2+)がより好ましく、銀イオンが更に好ましい。
【0052】
前記式(2)中、nは1以上の整数を表す。X'n−で表されるアニオンとしては、例えば、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、CN-、NO3-、NO2-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、HSO4-、SCN-、BF4-、PF6-、R3-(ここで、R3は置換又は非置換の1価の炭化水素基を表す。)、R4COO-(ここで、R4は置換又は非置換の1価の炭化水素基を表す。)、R5SO3-(ここで、R5は置換又は非置換の1価の炭化水素基を表す。)、R6OCO2-(ここで、R6は置換又は非置換の1価の炭化水素基を表す。)、CO32-、S2-、SO42-、PO43-及びO2-が挙げられ、
好ましくは、Cl-、Br-、I-、NO3-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、R3-、R4COO-、R5SO3-、R6CO3-、CO32-、SO42-及びPO43-であり、
より好ましくは、Cl-、NO3-、ClO4-、R4COO-、R5SO3-、R6CO3-、CO32-及びPO43-であり、
特に好ましくは、Cl-、NO3-、ClO4-、R4COO-、CO32-及びSO42-である。
【0053】
3〜R6で表される置換又は非置換の1価の炭化水素基としては、前記R1及びR2で表される置換又は非置換の1価の炭化水素基と同様である。
【0054】
前記式(2)で表される金属塩としては、銀塩が好ましく、
この銀塩としては、例えば、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、硫化銀、酸化銀、硝酸銀、次亜塩素酸銀、亜塩素酸銀、塩素酸銀、過塩素酸銀、酢酸銀、硫酸銀、炭酸銀、リン酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀及びトリフルオロメタンスルホン酸銀が挙げられ、
銀塩の還元性溶媒に対する溶解性が良好であるので、硝酸銀、過塩素酸銀、酢酸銀、硫酸銀、炭酸銀、リン酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀及びトリフルオロメタンスルホン酸銀が好ましく、
硝酸銀、過塩素酸銀、酢酸銀、炭酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀及びトリフルオロメタンスルホン酸銀がより好ましく、
硝酸銀、酢酸銀及び炭酸銀が更に好ましく、硝酸銀が特に好ましい。
【0055】
本発明の製造方法において、前記金属塩は、一種のみ用いても二種以上を併用してもよい。
【0056】
本発明の製造方法において、前記式(1)で表される化合物の添加量は、前記金属塩1モルに対して、通常、0.0001〜1モルであり、好ましくは0.001〜0.1モルであり、より好ましくは0.001〜0.02モルである。アスペクト比の好ましい金属ナノワイヤーがより得られやすいためである。
【0057】
前記極性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド及びこれらの誘導体が挙げられ、
好ましくは、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、及び、ポリエチレンオキシドであり、より好ましくは、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン及びポリエチレンオキシドであり、
更に好ましくは、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド及びポリエチレンイミンであり、特に好ましくは、ポリビニルピロリドンである。
【0058】
前記極性ポリマーのポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常、300〜10,000,000であり、溶解性が良好となるので、好ましくは500〜1,000,000であり、より好ましくは1,000〜500,000であり、特に好ましくは3,000〜500,000である。
【0059】
本発明の製造方法において、前記極性ポリマーの添加量は、前記金属塩1モルに対して、通常、0.001〜1000モルであり、好ましくは0.01〜100モルであり、より好ましくは0.1〜10モルであり、特に好ましくは1〜5モルである。アスペクト比の好ましい金属ナノワイヤーがより得られやすいためである。
【0060】
本発明の製造方法において、前記極性ポリマーは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0061】
前記還元剤としては、例えば、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸、シュウ酸、1,2−ベンゼンジオール、1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール及び水素ガスのほか、1,2−エタンジオール(即ち、エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,3−ヘキサントリオール、ベンジルアルコール等のアルコール系還元性溶媒が挙げられ、
好ましくは上記のアルコール系還元性溶媒であり、
より好ましくは1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール及び1,3−プロパンジオールであり、特に好ましくは1,2−エタンジオールである。
【0062】
本発明の製造方法において、前記還元剤は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0063】
本発明の製造方法において、前記還元剤の添加量は、金属塩を還元させるのに必要な量以上であればよい。
還元剤がアルコール系還元性溶媒以外の場合、前記金属塩1モルに対して、通常、0.1モル以上であり、好ましくは1モル以上であり、
還元剤がアルコール系還元性溶媒の場合、上限は、前記金属塩1モルに対して、通常、1000Lであり、好ましくは300Lであり、より好ましくは100Lであり、特に好ましくは50Lであり、下限は、前記金属塩1モルに対して、通常、10mLである。
【0064】
本発明の製造方法において、ハロゲン化水素や、前記アルコール系還元性溶媒以外の溶媒を更に加えてもよい。
【0065】
前記ハロゲン化水素としては、例えば、フッ化水素、塩化水素、臭化水素及びヨウ化水素が挙げられ、金属塩との親和性が優れるので、塩化水素が好ましい。
【0066】
前記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ジエチルエーテル、アセトニトリル及びN−メチルピロリドンが挙げられる。
【0067】
本発明の製造方法における反応温度は、通常、30〜200℃であり、好ましくは60〜190℃であり、より好ましくは100〜190℃であり、更に好ましくは110〜170℃である。
【0068】
本発明の製造方法における反応時間は、通常、5分以上であり、好ましくは10分以上であり、より好ましくは20分以上であり、特に好ましくは30分以上であるが、上限は、通常、300分である。反応時間が30〜300分であると、得られる金属ナノワイヤーの収率が良好となる傾向がある。
【0069】
本発明の製造方法において、前記アルコール系還元性溶媒以外の溶媒を用いる場合、該溶媒の量は、前記金属塩1モルに対して、1mL以上が好ましく、10mL以上がより好ましく、50mL以上が更に好ましく、150mL以上が特に好ましく、200mL以上がとりわけ好ましい。これらの溶媒の量であると、金属塩を溶解し易く、その結果、一度に大量の金属ナノワイヤーが製造可能である。
【0070】
本発明の製造方法において、金属塩、還元剤、極性ポリマー及び前記式(1)で表される化合物(以下、これらを「原料」と言うことがある。)は、如何なる順番で混合又は添加(以下、単に「混合」と言うことがある。)し反応させてもよい。
例えば、原料を一度に全て混合して反応させてもよく、原料の中の一部分を先に混合し、一定時間の経過後に残りの原料を混合して反応させてもよい。
【0071】
本発明の製造方法において、原料は如何なる方法で混合して反応させてもよく、
例えば、一部又は全ての原料を溶媒に溶解させてから反応容器中で混合して反応させてもよいし、原料を反応容器に入れた後に溶媒を加えて溶解させて反応させてもよい。
なお、極性ポリマーの溶解性が低い場合には、極性ポリマーを溶媒に溶解させてから金属塩と混合することが好ましい。
【0072】
本発明の製造方法において、前記反応温度にするために、通常、加熱を行うが、そのタイミングは、原料を全て添加してから加熱してもよいし、原料を添加する前から加熱してもよいし、原料の一部を添加してから加熱してもよい。
【0073】
本発明の製造方法は、前記反応後、生成物を精製して純度の高い金属ナノワイヤーを得る精製工程を有していてもよい。この精製工程は、例えば、遠心分離、上澄み除去、再分散、ろ過、限外ろ過、洗浄、加熱、乾燥等により行うことができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0075】
<実施例1>
500mLフラスコに、2.08g(18.75mmol)のポリビニルピロリドン(以下、「PVP」と言う。)(ポリスチレン換算の重量平均分子量:55000)、25.0mg(0.146mmol)の1−ブチルピリジニウム塩化物、及び、200mLのエチレングリコールを加え、PVPが溶けるまで攪拌を行った。次いで、そこに、2.12g(12.50mmol)の硝酸銀を加え、50mLのエチレングリコールでフラスコ壁面に付着した硝酸銀をフラスコ内に流し込んだ。次いで、このフラスコを、165℃のオイルバスに浸漬し、120分間攪拌したところ、銀ナノワイヤーの分散液が得られた。 この分散液を室温まで冷却した後、溶媒を乾燥させることにより、未精製の銀ナノワイヤーが得られた。
この未精製の銀ナノワイヤーをSEM(日本電子社製、商品名:JSM-5500、観察の際に試料台の角度は0°(水平)であり、撮影箇所は任意の場所であり、試料作成時に配列させる操作はしていない。)による写真から目視で確認したところ、未精製の銀ナノワイヤーからランダムに選択した100個の中で、短軸が1000nm以下であり、かつ、アスペクト比が1.5以上である銀ナノワイヤーは91個であり、いずれも単一の銀ナノワイヤーであった。
【0076】
<実施例2>
実施例1において、1−ブチルピリジニウム塩化物の使用量を25.0mg(0.146mmol)から4.3mg(0.025mmol)に変えた以外は、実施例1と同様にして反応を行ったところ、未精製の銀ナノワイヤーが得られた。
この未精製の銀ナノワイヤーをデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、商品名:VHX-1000、撮影箇所は任意の場所であり、試料作製時に配列させる操作はしていない。)による写真から目視で確認したところ、未精製の銀ナノワイヤーからランダムに選択した100個の中で、短軸が1000nm以下であり、かつ、アスペクト比が1.5以上である銀ナノワイヤーは90個であり、いずれも単一の銀ナノワイヤーであった。
【0077】
<実施例3>
実施例1において、1−ブチルピリジニウム塩化物の使用量を25.0mg(0.146mmol)から2.0mg(0.0125mmol)に変えた以外は、実施例1と同様にして反応を行ったところ、未精製の銀ナノワイヤーが得られた。
実施例2と同様にして、銀ナノワイヤーを確認したところ、未精製の銀ナノワイヤーからランダムに選択した100個の中で、短軸が1000nm以下であり、かつ、アスペクト比が1.5以上である銀ナノワイヤーは96個であり、いずれも単一の銀ナノワイヤーであった。
【0078】
<実施例4>
500mLフラスコに、4.17g(37.5mmol)のPVP(ポリスチレン換算の重量平均分子量:55000)、42.9mg(0.25mmol)の1−ヘキシルピリジニウム塩化物、及び、200mLのエチレングリコールを加え、PVPが溶けるまで攪拌を行った。次いで、そこに、4.25g(25.0mmol)の硝酸銀を加え、50mLのエチレングリコールでフラスコ壁面に付着した硝酸銀をフラスコ内に流し込んだ。次いで、このフラスコを、150℃のオイルバスに浸漬し、120分間攪拌したところ、銀ナノワイヤーの分散液が得られた。この分散液を室温まで冷却した後、溶媒を乾燥させることにより、未精製の銀ナノワイヤーが得られた。
この未精製の銀ナノワイヤーをデジタルカメラ(カールツァイスマイクロイメージング株式会社製、商品名:AxioCam ERc 5s)を取り付けた生物顕微鏡(島津理化製、商品名:BA310、撮影箇所は任意の場所であり、試料作成時に配列させる操作はしていない。)による写真から目視で確認したところ、未精製の銀ナノワイヤーからランダムに選択した100個の中で、短軸が1000nm以下であり、かつ、アスペクト比が1.5以上である銀ナノワイヤーは55個であり、いずれも単一の銀ナノワイヤーであった。
【0079】
<比較例1>
実施例1において、1−ブチルピリジニウム塩化物を用いなかった以外は、実施例1と同様にして反応を行ったところ、銀ナノ材料が得られた。
実施例1と同様にして、銀ナノ材料を確認したところ、銀ナノ材料からランダムに選択した100個の中で、本明細書の定義(最も短い径が1000nm以下である、ワイヤー状の個体)を満たす銀ナノワイヤーは0個であった。
【0080】
<比較例2>
実施例1において、1−ブチルピリジニウム塩化物に代えて、31.3mg(0.125mmol)の1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチルスルフェートを用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行ったところ、銀ナノ材料が得られた。
実施例1と同様にして、銀ナノ材料を確認したところ、銀ナノ材料からランダムに選択した100個の中で、本明細書の定義(最も短い径が1000nm以下である、ワイヤー状の個体)を満たす銀ナノワイヤーは0個であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属塩、還元剤及び極性ポリマーを、下記式(1)で表される化合物の存在下で反応させることを含む、金属ナノワイヤーの製造方法。
【化1】

(式中、環Aは、環内に窒素カチオンを有する6員以上の環を表し、X-はアニオンを表し、R1は水素原子又は置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物が、下記式(b−1)、(b−2)、(b−3)、(b−4)又は(b−5)で表される化合物である、請求項1に記載の金属ナノワイヤーの製造方法。
【化2】

(式中、X-及びR1は前記と同様の意味を有し、R2は、水素原子又は置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表し、隣接位の原子に結合するR1とR2又は隣接位の原子に結合する2個のR2は、一緒になって環を形成してもよく、R2が複数個ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記式(1)、(b−1)、(b−2)、(b−3)、(b−4)及び(b−5)中、X-がハロゲンアニオンである、請求項1又は2に記載の金属ナノワイヤーの製造方法。
【請求項4】
前記金属塩及び前記金属ナノワイヤーにおける金属が銀である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤーの製造方法。
【請求項5】
前記式(1)で表される化合物の添加量が、前記金属塩1モルに対して0.0001〜1モルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−136772(P2012−136772A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−266520(P2011−266520)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】