説明

金属ハロゲン化物灯

MoVからなる引き込み線がPCA部材(Al23)と、特殊なAlおよびMoを含有する付着層を介して結合されている、セラミック放電容器(10)を有する金属ハロゲン化物灯。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の金属ハロゲン化物灯に関する。この場合には、殊に一般照明に使用される、セラミック放電容器を有するランプが重要である。
【0002】
従来の技術
米国特許第6590342号明細書Bの記載から、金属ハロゲン化物灯は、既に公知である。引き込み線は、ガラスロウによりプラグ中で密閉されている。このプラグ中でモリブデンアルミニド、Mo3Al、からなる層は、熱膨張係数によりいっそう良好に適合させるために、引き込み線上に施こされる。別の金属間成分も前記層のために提案されている。
【0003】
この引き込み線は、内側部分がモリブデンからなるピンである。この場合、前記層は、特に充填物のハロゲンに対する耐性を示すという付加的な目的も有する。
【0004】
発明の開示
本発明の課題は、引き込み線の密閉をできるだけ持続するように形成させ、引き込み線と周囲との改善された付着力を達成することである。
【0005】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の構成により解決される。従属請求項には殊に有利な実施形態が示されている。
【0006】
セラミック放電容器を有する高圧放電灯のための閉鎖技術は、これまで未だ申し分のない解決策がなかった。閉鎖のためには、今や、MoV合金からなる引き込み線が管またはピンとして直接にAl23からなる放電容器の端部中に差し込まれている。この場合には、今や、MoとAl23の含量を有するサーメットからなるプラグはもはや不要である。
【0007】
好ましくは、引き込み線として管が使用される。それというのも、管は、ピンよりも弾性的な性質を有するからである。本質的なことは、引き込み線がMoV部材を有することであり、この場合この引き込み線は、なおも別の部材、例えば外側部材としてのニオブ部材または別の材料からなるコア断片を有することができる。MoV部材は、アルミニウム拡散処理法(Alitierungsprozess)により処理される。引続き、この系は、PCAからなる生成形体の開いた端部中に直接に差し込まれる。PCA部材は、プラグであるかまたは透明なAl23等からなる放電容器の直接の端部であり、場合によっては成分MoおよびAl23からなるサーメット部材であってもよい。
【0008】
これとは異なり、ガラスロウを使用する従来技術の場合には、モリブデン引き込み線、殊に管とプラグまたは放電容器の端部との境界面結合は、不満足なものであった。それというのも、不活性のモリブデンは、ガラスロウとの反応を生じないからである。それによって、モリブデン引き込み線とガラスロウとの間には、単に劣悪な付着作用を有する物理的結合が存在する。従って、動作状態とスイッチオフされたランプとの不断の温度交換において、亀裂形成が生じ、この亀裂は、最終的に非緻密さ、ひいてはランプの故障をまねく。
【0009】
本発明によれば、この位置で今やガラスロウまたは溶融セラミックが不要となっている。PCA部材、殊にセラミック放電容器の端部に対する引き込み線のよりいっそう良好な付着作用は、場合によってはサーメットプラグが不要のままに、引き込み線の表面の活性化に基づく特殊な付着層によって達成される。アルミニウム拡散処理法(Alitierungsprozess)、アルミニウムコーティング法とも呼称される、により、アルミニウムは、殊に気相によりモリブデン−バナジウム合金からなる引き込み線の表面中に反応的に移動される。この場合には、最初に高度にAlを含有する層、以下、簡単に(MoV)3Al8層と呼称される、が形成される。これは、温度および時間に依存する拡散処理法で行なわれる。そのためには、殊にMoV管は、Al含有粉末床混合物中に置かれ、800〜1200℃の温度で保護ガス雰囲気中で灼熱される。この場合、引き込み線の表面中には、外側でAl富有のAlxMoyz相、Al8Mo3相に類似、からなる勾配組織が生じ、この相には、さらに内側のAl貧有相AlwMoyz相、Mo3Alに類似、が引き続き、この相は、さらに内側で最終的には小管のMoV組織に移行する。この場合、指数wは、明らかにxより小さい。この表面に隣接した外側相からのアルミニウムは、生成形体の収縮が約10〜30%程度の大きさで達成されるような、但し、このことは、引き込み線を一時的に密閉するものとし、生成形体の直接の焼結の際に直接の焼結の際の熱処理の結果として、それぞれ主にAl23(PCA)からなるPCA部材、即ちプラグまたは有利に放電容器の端部の酸素との反応を生じ、それによってプラグまたは放電容器の端部と引き込み線との固定結合を得ることができる状態にある。この場合、付着層は、部分的または完全にMo、VおよびAl23からなるサーメットに変換される。
【0010】
原理的に、この種の密閉は、引き込み線のMoV部材とMoおよびAl23からなるサーメットプラグとの系のために使用することができ、この場合には、熱膨張係数の適合のために、純粋なAl23プラグの場合以外にMo:Vの割合を選択することができるが、しかし、以下、全ての前記変法のためには、PCA部材の概念が使用される。
【0011】
こうして、MoV含有引き込み線または引き込み線のMoV部材とPCA部材、殊にプラグ、または放電容器の端部との密閉は、決定的に改善される。付着相手が直接に放電容器の端部であることは、好ましく、それというのも、この場合には、完全にガラスロウ不含で簡単で確実な結合が可能になり、この結合は、付加的な付着層を有する直接の焼結を組み合わせることによって確実な密閉を可能にするからである。
【0012】
特に有利には、直接の焼結工程中に不活性ガス、例えばアルゴンおよび/または窒素N2からなる保護ガラスが使用され、この保護ガスは、特殊な実施態様において、酸素O220〜200ppmの僅かな含量を含有する。この含量は、付着層中での反応を改善する。従って、前記処理の実施に応じて、付着層は、部分的かまたは多少とも完全にMo、VおよびAl23からなるサーメットからなり、この場合勾配組織を有する最初に存在するMoxAlyzの含量は、そのままであることができる。
【0013】
合金化されていない純粋なMo管を引き込み線として使用する場合には、異なる熱膨張係数のために焼結処理後に良好な付着力にも拘わらず亀裂形成を生じるので、Moの代わりにMoV合金が引き込み線の密閉範囲内で使用される。この合金は、熱膨張係数が約8×10*-6-1であるように調節されている。それによって、この係数は、所謂PCA、即ちポリセラミック系Al23に理想的に適合している。しかし、合金は、Mo含量を上昇させることによってサーメットプラグへの適合が可能になるように生じさせることもできる。
【0014】
MoVは、純粋なMoと同様に良好にアルミニウム拡散処理することができる。この場合、合金のAl含分は、十分に良好に反応し、付着能を有する層を実現させることができる。このアルミニウム拡散処理は、時間および温度に依存し、したがって最初に付着層中でAl富有相およびAl貧有相を有する勾配組織が形成される。
【0015】
モリブデン−バナジウム合金(MoV)中のバナジウム含量は、純粋なPCAに適合して50質量%未満である。好ましくは、バナジウムの含量は、20〜40質量%範囲内にある。それというのも、この場合には、相対的な膨張差は、十分に小さく維持することができるからである。MoとAl23とからなるサーメットに適合させる場合には、バナジウム含量は、明らかに少なく、例えば8〜25質量%の範囲内にあり、それというのもバナジウムの熱膨張係数は、9.6×10*-6-1程度の大きさであるからである。これとは異なり、モリブデンの熱膨張係数は、明らかに小さく、例えば5.7×10*-6-1である。
【0016】
良好な付着力は、引き込み線の基本材料のMo含量からセラミック中への勾配構造として形成される、金属間組織の予め移行する形成によって達成される。それによって、これまで亀裂の源を引き込み線/セラミックの境界面に有していた亀裂の形成は、明らかに減少される。
【0017】
MoV含有引き込み線の管寸法は、例えば欧州特許出願公開第528428号明細書の記載と同様に常用されていてよい。好ましくは、殊に引き込み線は、0.5〜3mmの直径を有する管である。肉厚は、例えば100〜300μmである。
【0018】
外側でMoVからなる引き込み線上に存在するかまたは該線上に主に存在する"(MoV)3Al8"層は、典型的に1700〜1900℃の直接焼結工程の高い温度でセラミックの表面上の酸素と反応し、したがってこの層中でAlは、Al23に変換され、この場合には、元来の(MoV)3Al8からAl貧有の相になる。この場合に生じる前記サーメットMo−Al23は、特に良好な付着力を保証する噛み合わされた層を形成する。サーメットプラグ中での反応は、特にAl23からなる大きな粒子の表面上で終結し、この場合この表面上でAlは、極めて反応性である。
【0019】
反応性の酸素を形成させるための処理は、殊に不活性ガス−酸素混合物からなる保護ガスを使用しながら直接焼結中に促進され、この場合には、微少量の酸素だけは、不活性ガス、有利にアルゴンおよび/または窒素に添加されてよい。この酸素は、20〜200ppm、殊に最大100ppmの部分圧の程度の大きさである。よりいっそう多量の酸素を添加する場合には、モリブデンは、表面上で酸化され、MoO2またはMoO3に変わる。この物質は、易揮発性であり、付着力の改善のためには不適当である。
【0020】
図面
次に、複数の実施例に基づき本発明について詳しく説明する。
【0021】
有利な実施態様の説明
図1には、硬質ガラスまたは石英ガラスからなるガラス球1を有する金属ハロゲン化物灯が略示されており、このガラス球は、長手軸線を有し、片側が皿形溶融部2によって閉鎖されている。この皿形溶融部2で2本の電流供給線が外向きに(目視不可能)導かれている。これらの電流供給線は、ソケット5中で終わっている。このガラス球中には、2つの側で密閉された、金属ハロゲン化物からなる充填物を有する、Al23(PCA)からなるセラミック放電容器10が軸線方向に嵌め込まれている。放電容器10は、円筒形であることもできるし、内部が球形でも楕円形であってもよく、毛管端部21を備えている。
【0022】
放電容器中には、電極3が突入し、この電極は、MoVからなる引き込み線上に固定されている。この引き込み線は、有利に管であるが、しかし、ピンであってもよい。殊に、引き込み線は、2つに分割されていてもよく、引き込み線の前方端部だけは、MoVからなる。
【0023】
希ガスの群からの発火能を有するガスは、放電容器中に存在する。更に、放電容器中には、自体公知であるような金属ハロゲン化物の混合物、例えばNaTlおよびDyの沃化物ならびに場合によっては水銀が存在している。Caもハロゲン化物として使用されてよい。
【0024】
図2には、MoV管とAl23プラグとの結合の詳細部分が略示されている。この場合には、基本材料11としてのバナジウム30質量%を有するモリブデン−バナジウム合金からなる引き込み線6が示されており、この引き込み線の表面上には、高いAl含量を有するAlxMoyzからなる薄手の第1の層12が形成されている。この層は、アルミニウム拡散処理法によって形成される。反応条件を適当に選択しながら、アルミニウムは、引き込み線のよりいっそう深い層中に拡散進入し、したがってAlxMoyzからなる1つ以上の薄手の層13が生じ、この層13は、微少含量のAlを含有し、薄手の第1の層とMoVからなる基本体との間に形成されている。この連続層は、アルミニウムをMoV管の表面中にアルミニウムを拡散させることによって達成される。アルミニウム拡散処理は、700〜1200℃で数時間程度の大きさである時間に亘って行なわれる。処理の実施に応じて、6回までの分析により検出可能な異なる層が生じ、これらの層は、多少とも連続的に互いの中へ移行しうる。典型的な例は、第1の層に対するAl0.710.21Mo0.17、第2の層に対するAl0.660.07Mo0.27、第3の層に対するAl0.400.34Mo0.26および第4の層に対するAl0.220.31Mo0.47の規格x+y+z=1を有するAlxMoyzのための平均的な経験式を有する4つの層である。
【0025】
更に、アルミニウム拡散処理されたMoV管は、生のプラグ中に差し込まれ、直接に焼結される。AlxMoyzからなる、引き込み線の表面上に存在する層からのアルミニウムは、直接の焼結の際にAl23からのプラグ14の酸素含量と反応し、したがってプラグの表面上で基体15上には薄手の付着層20が形成される。この付着層は、MoV管の金属間AlxMoyz相を部分的または完全に変換することによって生じ、こうして持続的な化学結合が得られる。金属間相からなる層12、13は、一緒になって新規の付着層20を形成し、この付着層は、部分的にか、主にか、または完全にMoとAl23とからなるサーメットからなる。
【0026】
実際に、この場合には、平滑な境界面は、形成されず、次第に勾配を形成し、この場合には、前記の層は、流れるように互いの中へ移行する。殊に、同じ濃度の境界面は、突然に変動し、したがって図3に略示されているように狭い噛み合わせが生じる。
【0027】
図3は、MoV管が直接にセラミック放電容器の端部21中に直接に差し込まれているような別の実施例を示す。このMoV管は、図2の記載と同様に直接の焼結によって保持されている。この場合、引き込み線は、MoV管11として図示されており、このMoV管には、外向きに端部21が新しい種類の付着層20により結合されている。この場合、噛み合わせは、寸法通りには図示されていない。
【0028】
この場合、引き込み線は、完全にモリブデン−バナジウム合金から構成されている必要はない。この引き込み線は、密閉すべき部材中で部分的にMoVからなることで十分である。例えば、引き込み線の後方の部材は、自体公知であるようにニオブからなることができるか、またはMoV部材は、同様に自体公知であるように別の材料からなるコアを有することができる。
【0029】
引き込み線が直接に焼結されているPCA部材は、例えばプラグ、または放電容器の端部、または別の中間部材であることができる。PCAは、自体公知であるようにポリセラミックAl23を表わす。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】金属ハロゲン化物灯を部分的に断面図で示す略図。
【図2】結合機構を示す略図。
【図3】図1からの詳細部を示す略図。
【符号の説明】
【0031】
1 ガラス球、 2 皿形溶融部、 3 電極、 5 ソケット、 6 引き込み線、 10 セラミック放電容器、 11 基本材料、 12 薄手の第1の層、 13 薄手の層、 20 付着層、 21 毛管端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al23(PCA)からなる光透過性セラミック放電容器を含む金属ハロゲン化物灯であって、引き込み線が放電容器の端部の開口を通って放電容器中に突入し、それぞれの引き込み線が少なくとも部分的にモリブデン−バナジウム合金から完成されており、以下、MoV部材と呼称する、かつ電極を有し、引き込み線が開口中で密閉されている上記金属ハロゲン化物灯において、引き込み線のMoV部材が同時にAlおよびMoを含有する付着層によりPCA部材で密閉されていることを特徴とする、金属ハロゲン化物灯。
【請求項2】
付着層の一部分が勾配を有する金属間相AlxMoyzから形成されている、請求項1記載の金属ハロゲン化物灯。
【請求項3】
引き込み線が管である、請求項1記載の金属ハロゲン化物灯。
【請求項4】
引き込み線が、プラグであるかまたは直接に放電容器の端部であるPCA部材と、有利に直接の焼結を使用して結合されている、請求項1記載の金属ハロゲン化物灯。
【請求項5】
付着層が部分的または完全に、Mo、VおよびAl23を含有するサーメットから形成されている、請求項1記載の金属ハロゲン化物灯。
【請求項6】
請求項1記載の金属ハロゲン化物灯の製造法において、PCA部材と引き込み線のMoV部材との結合を次の工程:(a)アルミニウム拡散処理法によりAlをMoV部材の表面中に拡散させる工程;(b)アルミニウム拡散処理されたMoV部材を生のPCA部材中に差し込む工程;(c)場合によっては殊に最大で200ppmの微少含量の酸素を有する保護ガスの供給下に熱処理を行ないながら直接に焼結させ、付着層がアルミニウム拡散処理の範囲内で形成される工程によって達成させることを特徴とする、請求項1記載の金属ハロゲン化物灯の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−518792(P2009−518792A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543775(P2008−543775)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069038
【国際公開番号】WO2007/065819
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(504458493)オスラム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (168)
【氏名又は名称原語表記】Osram Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, D−81543 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】