説明

金属ベース回路基板および発光素子

【課題】常温で折り曲げ加工が可能であり、折り曲げ時においてもクラックなどの不良が発生しない金属ベース回路基板を提供する。
【解決手段】金属基板11と、金属基板11上に積層された絶縁層12と、絶縁層12上に局所的に積層された回路形成用の導電箔13と、導電箔13と絶縁層12との露出面の一部に積層された白色膜14と、を有してなる金属ベース回路基板である。白色膜14は、熱硬化性のシリコーン樹脂を含み、白色膜14の常温での引張り伸び率が10%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ベース回路基板および発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
金属基板上に絶縁層を設け、その上に導電箔を形成し、さらに導電箔と絶縁層の露出面に白色膜を設けた金属ベース回路基板は、熱放散性、電気絶縁性、光反射性を有していることからLEDのような発熱性電子部品を実装する回路基板として用いられている(特許文献1)。
【0003】
近年では、LEDを取り付けたプリント配線板を折り曲げて使用されることがある。しかし、エポキシ樹脂材料に熱伝導性の無機フィラーを充填させた絶縁層やアクリル樹脂、エポキシ樹脂などに白色の無機フィラーを充填させた白色膜は脆性であり、折り曲げ加工すると折り曲げ部でクラックなどの不良が発生するという問題がある。
【0004】
特許文献2では、金属基板を折り曲げ部で折り曲げて先端部とこの先端部に交差する脚部とを一体に設け、少なくとも前記先端部の絶縁層表面に、電子部品を取り付けるためのプリントされた配線板部を備え、前記折り曲げ部の全長に沿って、前記絶縁層を分断した絶縁層分断部を設けることで折り曲げ加工をしている。しかし、このような加工をする場合、予め基板に加工を加える工程が必要となってしまう上に、回路パターンの自由度が制限されてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2008/143076号公報
【特許文献2】特開2010−129984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、常温で折り曲げ加工が可能であり、折り曲げ時においてもクラックなどの不良が発生しない金属ベース回路基板および発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金属ベース回路基板は、金属基板と、前記金属基板上に積層された絶縁層と、前記絶縁層上に局所的に積層された回路形成用の導電箔と、前記導電箔と前記絶縁層との露出面の一部に積層された白色膜と、を有してなる金属ベース回路基板であって、前記白色膜が、熱硬化性のシリコーン樹脂を含み、前記白色膜の常温での引張り伸び率が10%以上である。
なお、「常温」とは、JIS Z 8703に規定された20℃±15℃(5〜35℃)の温度範囲を意味する。
前記導電箔は、導電材料を圧延して形成されたものであってもよい。
前記絶縁層が液晶ポリエステルを含んでもよい。
本発明の発光素子は、本発明の金属ベース回路基板を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、常温で折り曲げ加工が可能であり、折り曲げ時においてもクラックなどの不良が発生しない金属ベース回路基板および発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】金属ベース回路基板を備えた発光素子の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、金属ベース回路基板を備えた発光素子の一実施形態を示す断面図である。
発光素子1は、金属ベース回路基板10と、金属ベース回路基板10上に半田などの接合部材15を介して実装された複数の光源20と、を備えている。
【0011】
金属ベース回路基板10は、金属基板11と、金属基板11上に積層された絶縁層12と、絶縁層12上に局所的に積層された回路形成用の導電箔13と、導電箔13と絶縁層12との露出面の一部に積層された白色膜14と、を備えている。
【0012】
金属基板11は、光源20で発生した熱を放熱する放熱部材として機能する。絶縁層12は、光源20で発生した熱を金属基板11に効率よく伝えるために、層厚方向の熱伝導率の高いものが利用される。導電箔13は、配線部や電極部の形状にパターニングされており、絶縁層12上の一部に局所的に配置された構成となっている。白色膜13は、導電箔13の光源20が実装される部分(電極部など)を除いて導電箔13の略全面を覆っている。光源20から金属基板11側に向けて放射された光は、白色膜11によって金属基板11とは反対側に反射される。これにより、光源20から放射された光を概ね全て一方向(金属基板11とは反対側)に供給することができる。
【0013】
光源20は、導電箔13から供給された電荷によって発光する発光体である。光源20としては、例えば、LEDチップをパッケージ化したLEDパッケージが用いられるが、光源20はこれに限定されない。例えば、LEDチップを直接金属ベース回路基板10上に実装するタイプのもの(Chip On Board; COB)でもよい。LEDパッケージの形態も砲弾型、表面実装型(Surface Mount Device; SMD)などの種々の形態を採用することができ、その形態は特に限定されない。光源20の構成や、光源20の金属ベース回路基板10への実装方法も、公知のものを採用することができ、特に限定されない。
【0014】
上述の発光素子1は、金属ベース回路基板10の端部を折り曲げて他の部材に取り付けられる。そのため、金属ベース回路基板10には、折り曲げに対する高い耐久性が求められる。また、光源20からの熱を効率よく外部に放熱するために、金属ベース回路基板10は、高い放熱性を備えていることが好ましい。以下、金属ベース回路基板10の好適な構成について、詳細に説明する。
【0015】
(金属基板)
金属基板としては、熱伝導率60W/mK以上の金属板が用いられる。かかる金属基板を構成する金属材料としては、銅、アルミニウム、鉄、ステンレスあるいはこれらの合金などが用いられる。金属基板の厚みとしては、0.1mm〜2mmとすることが好ましい。
【0016】
(導電箔)
導電箔としては、銅、アルミニウム、ニッケル及びこれらの合金が好ましく、その厚みは、10〜140μmとすることが好ましい。140μmを超えると屈曲性が低下するだけでなく厚みが増し小型化や薄型化が難しくなる。導電箔は、金属などの導電材料を圧延して形成したもの、すなわち、複数のロールを回転させ、その間に導電材料を通すことにより薄膜状に加工したものを用いることが好ましい。圧延して形成された導電箔は、折り曲げに対してクラックが生じにくいため、金属ベース回路基板を折り曲げて利用する場合に好適である。導電箔としては、例えば、圧延銅箔が利用できる。
【0017】
(絶縁層)
絶縁層の厚さは、30μm以上150μm以下が好ましく、30μm未満では絶縁性が低く、150μmを超えると熱放散性が低下するだけでなく厚みが増し小型化や薄型化が難しくなる。
【0018】
絶縁層としては、熱伝導率が高い熱可塑性樹脂である液晶ポリエステルを用いることが好ましい。絶縁層としては、通常、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられるが、液晶ポリエステルは、これらの樹脂に比べて特に層厚方向の熱伝導率を高くすることができることから、金属基板への放熱性を良好にできるという点で好適である。
【0019】
(液晶ポリエステル)
本実施形態で用いる液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0020】
液晶ポリエステルの典型的な例としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合(重縮合)させてなるもの、複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合させてなるもの、及びポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを重合させてなるものが挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
【0021】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
【0022】
液晶ポリエステルは、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)と、を有することがより好ましい。
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−X−Ar−Y−
(Arは、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar及びArは、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(−NH−)を表す。Ar、Ar又はArで表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar−Z−Ar
(Ar及びArは、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
【0023】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは1〜10である。前記アリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは6〜20である。前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar、Ar又はArで表される前記基毎に、それぞれ独立に、好ましくは2個以下であり、より好ましくは1個以下である。
【0024】
前記アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基及び2−エチルヘキシリデン基が挙げられ、その炭素数は好ましくは1〜10である。
【0025】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Arがp−フェニレン基であるもの(p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びArが2,6−ナフチレン基であるもの(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0026】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Arがp−フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Arがm−フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが2,6−ナフチレン基であるもの(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、及びArがジフェニルエ−テル−4,4’−ジイル基であるもの(ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0027】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Arがp−フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びArが4,4’−ビフェニリレン基であるもの(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
【0028】
繰返し単位(1)の含有量は、全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは30モル%以上80モル%以下、さらに好ましくは30モル%以上60モル%以下、よりさらに好ましくは30モル%以上40モル%以下である。
【0029】
同様に、繰返し単位(2)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%以上35モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上35モル%以下、よりさらに好ましくは30モル%以上35モル%以下である。
【0030】
同様に、繰返し単位(3)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%以上35モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上35モル%以下、よりさらに好ましくは30モル%以上35モル%以下である。
【0031】
これらは、繰返し単位(1)の含有量が多いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶媒に対する溶解性が低くなり易い。
【0032】
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、好ましくは0.9/1〜1/0.9、より好ましくは0.95/1〜1/0.95、さらに好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0033】
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
【0034】
液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、XとYとのいずれか一方または両方がイミノ基であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位と、芳香族ジアミンに由来する繰返し単位と、のいずれか一方または両方を有することが、溶媒に対する溶解性が優れるので、好ましく、繰返し単位(3)として、XとYとのいずれか一方または両方がイミノ基であるもののみを有することが、より好ましい。
【0035】
液晶ポリエステルは、それを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下に行ってもよく、この触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、1−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0036】
液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、好ましくは250℃以上、より好ましくは250℃以上350℃以下、さらに好ましくは260℃以上330℃以下である。流動開始温度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり高いと、溶媒に対する溶解性が低くなり易かったり、液状組成物の粘度が高くなり易かったりする。
【0037】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0038】
(無機フィラー)
絶縁層に含有される無機充填剤としては、30W/mK以上の熱伝導率と絶縁性に優れたものを選ぶことが好ましい。アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの粒子が好ましい。
【0039】
粒子の形状は、液晶ポリエステル樹脂の中で無機充填剤の粒子が密に充填しやすいことから、球状が好ましい。球状でない場合には、無機充填剤を微粉末にした後、パウダースプレー法により略球状に成形したものが好ましい。
【0040】
無機充填剤は樹脂との密着性や分散性を向上させるために、表面処理剤で無機充填剤粒子の表面を処理することが望ましい。表面処理剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムやジルコニウム系のカップリング剤、長鎖脂肪酸、イソシアナート化合物、エポキシ基やメトキシシリル基、アミノ基、水酸基などを含んだ極性高分子や反応性高分子などが好ましい。
【0041】
(白色膜)
白色膜としては、420nmから800nmの可視光領域に対して70%以上の反射率を有することが好ましく、80%以上の反射率を有することが更に好ましい。本明細書において「白色膜」とは、460nm、525nmおよび620nmの各波長の光の反射率がいずれも80%以上である膜をいうものとする。このような白色膜として、白色のソルダーレジストが好ましく使用できる。
【0042】
白色のソルダーレジストとしては、熱硬化性のシリコーン樹脂を含み、常温での引張り伸び率が4%以上であるものが好ましく、より好ましくは常温での引張り伸び率が10%以上であるものが好ましい。引張り伸び率が高い白色のソルダーレジストを用いることで、曲げ加工時においてもクラックなどの不良の発生を防ぐことが出来る。また、必要に応じて熱硬化型のエポキシ樹脂、紫外線硬化型のアクリル樹脂などと併用することができる。
【0043】
白色ソルダーレジストに含まれる白色顔料としては、アナターゼ型又はルチル型の酸化チタンの粒子が好ましい。二酸化チタンは単独で用いることも可能であるし、酸化亜鉛、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム等に代表される他の白色顔料と併用することができる。
【0044】
酸化チタンの含有量としては、白色膜自体の反射率、耐久性、引張り伸び率という観点から、白色膜中の30〜60質量%であることが好ましい。これより少ない場合、反射率が低く、多い場合、耐久性が悪くなることや引張り伸び率の低下による曲げ加工時のクラック発生を生じる。
【実施例】
【0045】
<液晶ポリエステルの製造>
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、1976g(10.5モル)の2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸と、1474g(9.75モル)の4−ヒドロキシアセトアニリドと、1620g(9.75モル)のイソフタル酸と、2374g(23.25モル)の無水酢酸とを仕込んだ。反応器内の雰囲気を窒素ガスで十分に置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温させ、この温度で3時間に亘って還流させた。
【0046】
その後、留出した副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、170分かけて300℃まで昇温させ、トルクの上昇が認められた時点を反応終了と見做して、内容物を取り出した。取り出した内容物を室温まで冷却し、粉砕機で粉砕することにより、比較的低分子量の液晶ポリエステルの粉末を得た。
【0047】
得られた粉末の流動開始温度を島津製作所フローテスタCFT−500によって測定したところ、235℃であった。また、この液晶ポリエステル粉末を、窒素雰囲気において223℃で3時間に亘って加熱処理して、固相重合を生じさせた。固相重合後の液晶ポリエステルの流動開始温度は270℃であった。
【0048】
<液晶ポリエステル溶液の調製>
上述した方法によって得られた2200gの液晶ポリエステルを、7800gのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に加え、100℃で2時間に亘って加熱して液晶ポリエステル溶液を得た。この溶液の粘度は400cPであった。なお、この粘度は、B型粘度計(東機産業製、「TVL−20型」、ロータNo.21(回転数:5rpm))を用いて、23℃で測定した値である。
【0049】
<液晶ポリエステル付き銅箔の製造>
得られた液晶ポリエステル溶液を厚さが70μmの銅箔上に厚さが300μmとなるように塗布した。続いて、これを100℃で20分間乾燥させた後、300℃で3時間熱処理した。これにより、表面に銅箔が形成された液晶ポリエステルフィルムを得た。
【0050】
<金属ベース回路基板の製造>
その後、熱伝導率140W/(m・K)、厚さ1.0mmのアルミニウム合金板上に、上述の液晶ポリエステルフィルムを積層した。このとき、液晶ポリエステルフィルムの表面(銅箔が形成されていない面)が、アルミニウム合金板の表面と接するようにした。そして、圧力200kg/cm、温度340℃で20分間の加熱処理を行なうことにより、これらアルミニウム合金板と液晶ポリエステルフィルムとを熱接着した。得られた積層板について、所定の位置をエッチングレジストでマスクして銅箔をエッチングした後、エッチングレジストを除去して回路銅箔を形成し、金属ベース回路基板とした。
【0051】
さらに、金属ベース回路基板上に高反射率の白色膜を形成するために、種々白色ソルダーレジスト層を塗布し、熱及び紫外線で硬化した。このとき、光源が実装される部分(銅箔の電極部などとしてパターニングされた部分)には白色膜を形成しない。
【0052】
[実施例1]
白色ソルダーレジストとして、朝日ラバー社製、「SWR−PK−01」を用いた。SWR−PK−01は、ポリアルキルアルケニルシロキサン、ポリアルキル水素シロキサンに硬化触媒として白金化合物、白色無機充填材として二酸化チタン、水酸化アルミニウムを添加したものであり、40μmとなるように塗膜を形成した後、150℃で1時間熱硬化することによって白色膜を得た。
【0053】
[実施例2]
白色ソルダーレジストとして、シリコーン樹脂 EG−6301A、B(東レ・ダウコーニング社製)各5g、酸化チタン CR−58(石原産業社製)20g、メチルエチルケトン(Aldrich社製)10gを攪拌脱泡機により混合分散したものを用い、溶媒乾燥後の膜厚が40μmとなるように塗膜を形成した後、150℃で1時間熱硬化することによって白色膜を得た。
【0054】
[比較例1]
白色ソルダーレジストとして、太陽インキ社製、「PSR−9000FLX05W」を用いた。PSR−9000FLX05Wは、アクリレート樹脂に光重合開始剤、白色無機充填材として酸化チタン、水酸化アルミニウムを添加したものであり、塗膜形成後、紫外線照射により光硬化することによって白色膜を得た。
【0055】
[比較例2]
白色ソルダーレジストとして、太陽インキ社製、「PSR−4000LEW3」を用いた。PSR−4000LEW3は、アクリレート樹脂に光重合開始剤、白色無機充填材として酸化チタン、水酸化アルミニウムを添加したものであり、塗膜形成後、紫外線照射により光硬化することによって白色膜を得た。
【0056】
[比較例3]
白色ソルダーレジストとして、シリコーン樹脂 SCR−1011A、B(信越化学工業社製)各5g、酸化チタン CR−58(石原産業社製)20g、メチルエチルケトン(Aldrich社製)15gを攪拌脱泡機により混合分散したものを用い、溶媒乾燥後の膜厚が40μmとなるように塗膜を形成した後、150℃で1時間熱硬化することによって白色膜を得た。
【0057】
・ 反射率
予め脱脂処理を行なった50mm×50mm×1mmtのアルミ板表面に厚さ50μmとなるように上記各実施例及び比較例の組成物を塗布し、熱風循環式乾燥炉にて80℃で30分乾燥させた。その後、シリコーン樹脂は150℃で1時間熱硬化し、アクリル樹脂は水銀ショートアークランプにて積算露光量500 mJ/cmの条件で紫外線照射することで光硬化した。その後、第二塩化鉄水溶液で銅箔をエッチングで除去し、水洗することで評価サンプルを得た。
【0058】
上記の評価サンプルを用い、JIS K7105−1981の全光線反射率測定法A(標準白色板:硫酸バリウム)に準拠して、自記分光光度計((株)日立製作所製「U−3500」)を用いて波長460nm、525nm、620nmの光線に対する拡散反射率の測定を行った。なお、この拡散反射率は硫酸バリウムの標準白色板の拡散反射率を100%としたときの相対値である。
【0059】
・ 引張り伸び率(引張破壊伸び)
予め脱脂処理を行なった厚み18μmの銅箔上に、上記各実施例及び比較例の組成物を塗布し、熱風循環式乾燥炉にて80℃で30分乾燥させた。その後、シリコーン樹脂は150℃で1時間熱硬化し、アクリル樹脂は水銀ショートアークランプにて積算露光量500 mJ/cm2の条件で紫外線照射することで光硬化した。その後、第二塩化鉄水溶液で銅箔をエッチングで除去し、水洗することで評価サンプルを得た。
【0060】
上記の評価サンプルの引張り伸び率(引張破壊伸び)をJIS C2151(1990年)に記載の引張り伸び率の試験方法に基づき測定した。なお、引張り伸び率の測定は、常温(25℃)下で行い、試験装置として定速緊張形引張試験機を使用し、引張速度は5mm/分とした。評価サンプルの厚み(白色膜の膜厚)は40μmである。
【0061】
・ 絶縁層の密着力
絶縁層の密着力の試験として、絶縁層上の銅箔をエッチング加工することにより幅10mmのパターンを形成し、この銅箔のパターンを垂直方向に50mm/分の速度で引き剥がす際の強度(絶縁層/銅箔間のTピール強度)を測定した。
【0062】
・ 常温(25℃)下で90°折り曲げた時のクラックの有無
常温下で90°折り曲げた状態でのクラック発生の有無は、曲率半径を1mmとして90°折り曲げを行なった後の絶縁層、導電箔、白色膜を光学顕微鏡で10倍に拡大し目視で観察することにより行なった。
【0063】
・ 常温(25℃)下で90°折り曲げた状態での絶縁破壊電圧
常温下で90°折り曲げた状態での絶縁破壊電圧の測定は、銅箔としてφ20mmの円形パターンを形成した金属ベース回路基板の当該φ20mmの円形パターンが含まれるように曲率半径1mmで当該円形パターンの中心を通る折り曲げ線に沿って金属ベース回路基板を90°折り曲げた状態でJIS C 2110に規定された段階昇圧法により、円形パターンと金属基板との間の絶縁破壊電圧を測定した。
【0064】
表1は、実施例1,2および比較例1,2,3の評価結果である。
【0065】
【表1】

【0066】
表1に示すように、実施例1,2においては、白色膜の引張り伸び率が10%以上となっており、比較例1,2,3の4%未満に比べて非常に大きな引張り伸び率となっている。比較例1,2,3では、常温下で90°折り曲げたときにクラックが発生したのに対し、実施例1,2では、常温下で90°折り曲げたときにもクラックが発生しておらず、高い耐久性を有するものとなっている。また、実施例1,2においては、反射率や絶縁層の密着力、常温下で90°折り曲げた状態での絶縁破壊電圧のいずれにおいても高い特性を有しており、折り曲げて用いる用途において適した構成となっている。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、金属ベース回路基板および発光素子に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1…発光素子、10…金属ベース回路基板、11…金属基板、12…絶縁層、13…導電箔、14…白色膜、20…光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板と、前記金属基板上に積層された絶縁層と、前記絶縁層上に局所的に積層された回路形成用の導電箔と、前記導電箔と前記絶縁層との露出面の一部に積層された白色膜と、を有してなる金属ベース回路基板であって、
前記白色膜が、熱硬化性のシリコーン樹脂を含み、前記白色膜の常温での引張り伸び率が10%以上である金属ベース回路基板。
【請求項2】
前記導電箔は、導電材料を圧延して形成されたものである請求項1に記載の金属ベース回路基板。
【請求項3】
前記絶縁層が液晶ポリエステルを含む請求項1に記載の金属ベース回路基板。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の金属ベース回路基板を備えている発光素子。

【図1】
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