説明

金属元素でドープされたチタン酸化物を含む基材表面処理用溶液又は分散液、前記液を用いる基材表面処理方法、及び前記方法を用いて得られる表面処理材料

【課題】材料、特に屋外で使用される材料の表面に撥水性又は吸水防止性、及び優れた防汚性を付与するための表面処理剤、及びその表面処理剤で表面処理された材料を提供する。
【解決手段】撥水剤又は吸水防止剤、好ましくは、シラン系、シリコネート系、シリコーン系、シリコーン及びシラン複合系、及び/又はフッソ系の撥水剤又は吸水防止剤、並びに、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素でドープされたチタン酸化物、好ましくはアモルファス型酸化チタン又は少なくとも一部がペルオキソ化されたアモルファス型酸化チタン、を含有する溶液又は分散液を用いて、基材表面上及び/又は基材表層中に、撥水剤又は吸水防止剤、並びに、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素でドープされたチタン酸化物を含有する層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた吸水防止性及び防汚性を有する表面処理材料を製造するために用いる処理溶液、その処理溶液を用いた基材の表面処理方法、並びにその表面方法を用いて得られる表面処理材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば建築物などに用いられ、屋外において使用される各種材料は、大気中及び雨水中に含まれる各種汚染物質、コケ及びカビなどの生物、並びに微生物などによってその表面が汚染されることにより、材料の美観が時間の経過とともに損なわれるという問題がある。実際に、ビルディングなどの建築物においては外観の美しさを保つために定期的な表面洗浄がかかせない。
【0003】
また、鉄筋及び/又は鉄骨含有コンクリート製建材においては、雨水のコンクリートへの浸透によって鉄筋及び鉄骨に錆が発生し、錆による鉄材の体積膨張によってコンクリートに亀裂が入るなどの問題もあった。さらにコンクリート自身、雨水に含まれる酸性物質が引き起こす中性化による強度低下の問題もある。また、大理石製建材にも同様に酸性物質による劣化の問題がある。
【0004】
これらの問題を解決するため、シリコーン系化合物などの撥水性物質及び/又は防かび剤及び/又は抗菌剤を屋外用建材などの材料表面に塗布することにより、材料中への水分の侵入防止、並びに建材表面における汚染物質の付着及びコケなどの材料表面での繁殖を抑制することが試みられてきた。しかし、材料表面に撥水性物質を塗布した場合でも、疎水性の汚染物質の堆積による表面汚染などによる材料表面の汚染を充分防止することはできていない。
【0005】
また、近年、材料表面の汚染防止方法として、材料表面に光触媒層を形成する方法が用いられている。例えば、基材表面に形成された珪酸アルカリ金属化合物からなる撥水層の上にさらにアナターゼ型過酸化チタンなどの光触媒層を形成する方法(例えば、特許文献1参照)、及び基材表面に形成されたアルコキシシリル基及び水酸基を有するアクリル樹脂を含有するプライマー層の上にさらに光触媒層を形成させる方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。また、本発明者は、優れた活性をもつ防汚チタニア層を形成させるための材料としてチタニア−金属複合体を提案している(特許文献3参照)。
【0006】
さらに、屋外において建築物などに用いられる材料には、上述のとおり吸水防止性及び防汚性に優れていることとあわせて、材料の意匠性を高めるために表面が着色でき、かつその色彩が長期にわたって変化しないことも求められている。
【特許文献1】特開2000−135442号公報
【特許文献2】特開2002−138243号公報
【特許文献3】国際公開第2004/04173号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した材料表面の汚染防止方法のうち、基材表面に珪酸アルカリ金属化合物からなる撥水層の上にさらに光触媒を形成する方法(上記特許文献1参照)においては、珪酸アルカリ金属化合物の作用によって光触媒層が加水分解される場合があり、さらに珪酸アルカリ金属化合物を着色することは困難だった。
【0008】
基材表面に形成されたアルコキシシリル基及び水酸基を有するアクリル樹脂を含有するプライマー層の上にさらに光触媒層を形成させる方法(上記特許文献2参照)においては、アクリル樹脂を着色することは比較的容易であるが、アクリル樹脂自身が光触媒の作用によって分解し劣化してしまう問題があった。
【0009】
本発明は建築・土木工作物用途などの屋外で用いられる基材の表面に、吸水防止性及び防汚性に優れ、しかも容易に着色できる表面層を形成するための材料、並びに、その材料を用いて基材の表面処理をする方法、さらにその方法を用いて表面処理され、優れた吸水防止性及び防汚性を有するとともに、所望により着色することが容易な表面層を有する表面処理材料を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明において基材の表面処理に用いる材料は、撥水剤又は吸水防止剤、並びに、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素でドープされたチタン酸化物を含有することを特徴とする溶液又は分散液である。
【0011】
さらに、上記溶液又は分散液に用いる撥水剤又は吸水防止剤は、シラン系、シリコネート系、シリコーン系、シリコーン及びシラン複合系、及び/又はフッソ系の撥水剤又は吸水防止剤であり、且つ前記金属元素でドープされたチタン酸化物がアモルファス型酸化チタン又は少なくとも一部がペルオキソ化されたアモルファス型酸化チタンであることが好ましい。
【0012】
さらに、上記溶液又は分散液は所望により、さらに、ノニオン性分散剤、アニオン性分散剤、両性分散剤、酸価が50〜250の水溶性樹脂性分散剤、及び酸価が50〜250のエマルジョン樹脂性分散剤からなる群から選択される1種以上の分散剤、顔料並びに水からなる水性顔料分散体を含有することができる。
【0013】
さらに、上記溶液又は分散液は所望により、さらに有機樹脂バインダーを含有することができる。
【0014】
本発明の基材の表面処理方法は、上記いずれかの溶液又は分散液を基材に適用することによって、上記撥水剤又は吸水防止剤、並びに、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素でドープされたチタン酸化物を含有する層を、上記基材表面上及び/又は基材表層中に形成することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の表面処理材料は、上記表面処理方法を用いて製造され、撥水剤又は吸水防止剤、並びに、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素でドープされたチタン酸化物を含有する層が基材表面上及び/又は基材表層中に形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明者は、上記特定の金属元素でドープしたチタン酸化物とともに撥水剤又は吸水防止剤を含有する溶液又は分散液を用いて、基材の表面上又は表面層に前記チタン酸化物、及び撥水剤又は吸水防止剤を含有する層を形成することにより、基材表面が汚染されにくく、かつ基材への吸水が防止でき、しかも基材表面に着色を施すことが容易であるために基材表面の意匠性を高めることができることを見いだし、本発明を完成させたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明においては、撥水剤又は吸水防止剤、並びに上記特定の金属元素でドープしたチタン酸化物を含有する溶液又は分散液を基材の表面に適用し、基材表面上及び/又は基材表層中に、前記撥水剤又は吸水防止剤、及び前記チタン酸化物を含む層を形成させる。基材がガラス、金属などの非多孔質の場合は、上記層は基材表面上に形成され、基材がコンクリートなどの多孔質の場合は上記溶液又は分散液が基材表面から内部に若干浸透するために、一般に上記層は基材表層上及び基材表層中に形成される。本発明が対象とする基材は特に限定されるものではない。非多孔質の基材としては、上述したガラス、金属の他に、石材、プラスチック、ゴム、シーリング材、釉薬有タイルを挙げることができる。多孔質基材としては、上述したコンクリートの他に、木材、モルタル、多孔質石材、せっ器質タイルなどを挙げることができる。本発明が対象とする基材はコンクリートが特に好ましい。
【0018】
本発明の基材の表面処理剤は、撥水剤又は吸水防止剤と、上記特定金属元素でドープしたチタン酸化物とを必須成分として含む。以下、特定金属元素でドープしたチタン酸化物について説明し、次に撥水剤又は吸水防止剤について説明する。
【0019】
本発明に用いる、上記特定金属元素でドープしたチタン酸化物(以下、「特定金属ドープチタン酸化物」とも記す)を含有する溶液又は分散液としては、国際特許出願公開WO2004/041723号パンフレットに開示されているものを用いることができる。さらに具体的には、本明細書中において、上記溶液又は分散液に含まれる特定金属ドープチタン酸化物とは、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも一種の金属又はその化合物と、チタン酸化物又は少なくとも一部がペルオキソ化されたチタン酸化物とを含む化合物とを含有するものをいう。この少なくとも一部がペルオキソ化されたチタン酸化物のベース化合物となるチタン化合物としては、TiO、TiO、TiO、及びTiO/nHOなどの各種チタン酸化物及び水酸化チタンを過酸化物と反応させたものが挙げられる。さらに、チタン酸化物の結晶系はアモルファス型、アナターゼ型、ブルッカイト型、及びルチル型のいずれか、又はそれらの混合型でもよいが、特に、造膜性及び基材への密着性に優れていることからアモルファス型が好ましい。
【0020】
特定金属ドープチタン酸化物を含む溶液又は分散液を製造する方法としては以下の方法が挙げられる。
(製造法1)
4価チタン化合物、例えば四塩化チタンとアンモニアなどの塩基を反応させて、水酸化チタンを合成する。次に、得られた水酸化チタンを、酸化剤を用いて酸化してペルオキソ化し、少なくとも一部がペルオキソ化されたアモルファス型酸化チタン超微細粒子を合成する(以下、少なくとも一部がペルオキソ化された酸化チタンをペルオキソ化酸化チタンとも記す)。以上の反応は水性媒体中で行うことが好ましい。得られたペルオキソ化アモルファス型酸化チタンは、所望により、加熱によってペルオキソ化アナターゼ型酸化チタンに転移させることもできる。本発明においては、上記のとおり、特にアモルファス型酸化チタンを用いることが好ましい。このペルオキソ化酸化チタンの製造工程中のいずれかの段階において、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、又はそれらの化合物、から選択される少なくとも一種を反応混合物に添加することにより、少なくとも一部がペルオキソ化された特定金属ドープチタン酸化物を得ることができる。
【0021】
水酸化チタンをペルオキソ化するための酸化剤はチタンのペルオキソ化物、すなわち過酸化チタン、を製造できる酸化剤であればよく、特定の酸化剤に限定されないが、特に過酸化水素が好ましい。本発明においては、過酸化水素は30〜40重量%濃度のものを用いることが特に好ましい。さらに、水酸化チタンのペルオキソ化を行う場合、水酸化チタンを含む溶液をあらかじめ冷却しておくことが好ましく、その場合の温度は1〜5℃が好ましい。
【0022】
上記製造法1を図1に基づいて説明する。図1は製造法1の一つの態様の概略を示した図である。まず、図1に例示したように、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛の化合物の少なくとも一種の存在下で、四塩化チタン水溶液及びアンモニア水溶液を混合し、四塩化チタン及び他の金属化合物を加水分解することによって、チタン及び他の金属の水酸化物を得る。この場合の反応混合液に含まれる各原料の濃度及び反応混合液の温度は、所望の反応生成物が得られる範囲であればよく、特に限定されないが、分散液の安定性が良好であることから各原料濃度が低く且つ反応温度は常温であることが好ましい。この反応は中和反応であり、反応混合液のpHは最終的に約7に調整することが好ましく、pHの調整は例えば添加するアンモニア水溶液の量を調整することによって行うことができる。この場合、チタン以外の金属化合物は、アンモニア水溶液を添加して行う中和反応の開始前及び/又は中和反応の途中で添加することができる。
【0023】
上記中和反応によって得られる金属水酸化物混合物を溶液から分離し、純水で洗浄し、次に冷却する。冷却温度は5℃前後が好ましいが、特に限定されない。次に、金属水酸化物混合物の水性分散液を過酸化水素でペルオキソ化する。この反応により、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素でドープされ、かつ、少なくとも一部がペルオキソ化されたアモルファス型のチタン酸化物微細粒子を含有する溶液又は分散液が得られる。得られた分散液はさらに限外濾過することによって超微粒子を含む分散液を得ることができる。
【0024】
(製造法2)
四価チタン化合物、例えば四塩化チタンを、酸化剤を用いて先にペルオキソ化し、次に塩基、例えばアンモニア、を用いて中和反応を行い、少なくとも一部がペルオキソ化されたアモルファス型の酸化チタン(すなわちアモルファス型過酸化チタン)の超微細粒子を合成する。この反応は水性媒体中で行うことが好ましい。さらに所望により加熱処理することによってアモルファス型過酸化チタンをアナターゼ型過酸化チタンに転移させることもできる。上記ペルオキソ化工程及び上記中和反応のいずれかの工程において、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、又はそれらの化合物から選択される少なくとも一種を混合することによって、本発明の特定金属ドープチタン酸化物を含む溶液又は分散液が得られる。
【0025】
(製造法3)
銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、又はそれらの化合物から選択される少なくとも一種の存在下、四価チタン化合物、例えば四塩化チタンに、過酸化水素などの酸化剤とアンモニアなどの塩基を同時に作用させることによって、金属化合物及び四価チタン化合物の加水分解とチタン化合物のペルオキソ化を同時に行い、本発明の特定金属ドープチタン酸化物を含む溶液又は分散液が得られる。この場合も所望により、加熱処理することによってアモルファス型過酸化チタンをアナターゼ型過酸化チタンに転移させることもできる。
【0026】
上記製造法1〜3で用いる四価チタン化合物としては、塩基と反応させた場合にオルトチタン酸(HTiO)といわれる水酸化チタンを生成できるものであればよい。このような四価チタン化合物としては、例えば、四塩化チタン、硫酸チタン、硝酸チタン、リン酸チタンなどの水溶性チタン無機塩、並びにシュウ酸チタンなどの水溶性チタン有機酸塩が挙げられる。これらの化合物のなかでは、水溶性に優れ、かつ得られる特定金属ドープチタン酸化物に含まれる不要な不純物含有量を低くできることから、四塩化チタンが好ましい。
【0027】
上記製造法1〜3において、塩基と反応させるときの四価チタン化合物の濃度は、生成する水酸化チタンがゲルを形成できる濃度であればよく、特に制限されないが、未反応物の残留を避けるため、比較的希薄溶液であることが好ましい。具体的には、溶液中の四価チタン化合物の濃度が、5〜0.01質量%であることが好ましく、0.9〜0.3質量%であることがさらに好ましい。この濃度範囲で四価チタン化合物と塩基を反応させることによって、良好な分散性を有する水酸化チタン分散液又はゲルを得ることができる。
【0028】
上記製造法1〜3において用いる塩基は、用いる四価チタン化合物から水酸化チタンゲルを生成できるものであれば良く、特に限定されない。塩基としては、アンモニア、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、及び苛性カリが例示できるが、アンモニアが特に好ましい。上記塩基は通常溶液、例えば水溶液として、上記四価チタン化合物溶液又は分散液に添加する。この場合、塩基溶液の濃度は、水酸化チタンゲルが形成されることができればよく、特に限定されないが、比較的希薄溶液であることが好ましく、具体的には、用いる塩基溶液の濃度は、好ましくは10〜0.01質量%であり、さらに好ましくは1.0〜0.1質量%である。塩基溶液としてアンモニア水を用いる場合、過剰なアンモニウムイオンの残留を避けるため、アンモニア濃度は10〜0.01質量%が好ましく、1.0〜0.1質量%がさらに好ましい。
【0029】
上記製造法1〜3において用いる、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、又は亜鉛の化合物としては、それぞれ以下のもの:
Ni化合物:Ni(OH)、NiCl
Co化合物:Co(OH)NO、Co(OH)、CoSO、CoCl
Cu化合物:Cu(OH)、Cu(NO、CoSO、CoCl、Cu(CHCOO)
Mn化合物:MnNO、MnSO、MnCl
Fe化合物:Fe(OH)、Fe(OH)、FeCl
Zn化合物:Zn(NO、ZnSO、ZnCl
が例示できる。
【0030】
上記製造法1〜3によって得られる本発明の特定金属ドープチタン酸化物の溶液又は分散液の固形分濃度(液中に含まれるチタン化合物及び特定金属化合物の合計濃度)は、安定性が良好な溶液又は分散液を得るために、0.05〜15質量%が好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。さらに、上記溶液又は分散液中に含まれるチタンと他の特定金属のモル比は、それらの溶液又は分散液を用いて表面処理した基材の防汚性能等が良好になることから、1:0.01〜1:0.5が好ましく、1:0.03〜1:0.1がさらに好ましい。
【0031】
(製造法4:ゾル−ゲル法による製造法)
チタンアルコキシド、水、アルコールなどの溶媒、及び酸又は塩基触媒を含む溶液を混合撹拌し、チタンアルコキシドを加水分解して超微粒子のチタン酸化物のゾル溶液を調製する。この加水分解反応を行う前、反応中、反応後のいずれかに、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、又はそれらの化合物から選択される少なくとも一種を上記溶液又はゾル溶液に添加することによって、本発明の特定金属ドープチタン酸化物を含む溶液又は分散液が得られる。
【0032】
上記製造法4に用いるチタンアルコキシドとしては、一般式:Ti(OR’)(式中、R’はアルキル基である)で表される化合物、又は一般式中の1つ又は2つのOR’基がカルボキシル基又はβ−ジカルボニル含有基で置換された化合物、又はこれらの混合物、が好ましい。上記チタンアルコキシドとしては、例えば、Ti(O−isoC、Ti(O−nC、Ti(O−CHCH(C)C、Ti(O−C1735、Ti(O−isoC[CO(CH)CHCOCH、Ti(O−nC[OCN(COH)、Ti(OH)[OCH(CH)COOH]、Ti(OCHCH(C)CH(OH)C、及びTi(O−nC(OCOC1735が挙げられる。
【0033】
上記製造法4のゾルゲル法は、金属酸化物の合成法として公知であり、本発明の特定金属ドープチタン酸化物を製造する場合にも、通常用いられる方法及び酸若しくは塩基などの必要な化合物を用いて実施することができる。
また、ゾルゲル法で本発明の特定金属ドープチタン酸化物を製造する場合に用いる、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、又は亜鉛の化合物は上記製造法1〜3で用いられる化合物と同じである。さらに、ゾルゲル法によって調製される本発明の特定金属ドープチタン酸化物の溶液又は分散液の好ましい固形分濃度(液中に含まれるチタン化合物及び特定金属化合物の合計濃度)、及び溶液又は分散液中に含まれるチタンと他の特定金属の好ましいモル比は、製造法1〜3で説明したそれらの濃度及びモル比と同じである。
【0034】
そのほか、本発明の特定金属ドープチタン酸化物は、特開2000−159786号明細書に記載された「有機チタンペロキシ化合物」と上記特定金属化合物とを水に混合溶解させ、得られた溶液を濃縮してゲル化させる方法でも製造することができる。また、特開2001−10816号明細書に記載された「チタン錯体」とチタン以外の「金属錯体」からなる水溶性混合物を出発原料として調製することも可能である。
【0035】
(撥水剤又は吸水防止剤)
本発明の基材表面処理用溶液又は分散液は、上記特定金属ドープチタン酸化物とともに、撥水剤又は吸水防止剤を含むことを特徴とする。本発明に用いる撥水剤又は吸水防止剤としては、シラン系、シリコネート系、シリコーン系、シリコーン及びシラン複合系、又はフッ素系の撥水剤又は吸水防止剤が好ましい。このような材料は、非多孔質の基材表面に適用される場合には撥水剤とよばれ、また、多孔質の基材表面に適用される場合には基材への吸水を防止できることから吸水防止剤とよばれる。
【0036】
本発明に用いるシラン系、シリコネート系、シリコーン系、及びシリコーン及びシラン複合系の撥水剤又は吸水防止剤とは、基材表面に適用した後、撥水剤又は吸水防止剤の化学成分が基材と反応して化学結合を生じることができるか、又は化学成分どうしが架橋することによって、ある程度耐久性に優れた膜を形成できる材料をいう。このような材料は撥水性又は吸水防止性を速やかに発現し、基材に対する撥水性又は吸水防止性が長期にわたり維持され、且つ耐候性に優れるので有利である。
【0037】
シラン系、シリコネート系、シリコーン系、シリコーン及びシラン複合系、及びフッ素系の撥水剤又は吸水防止剤は種々のものが知られており、本発明においてはいずれのものを用いることもでき、さらに2種以上を併用することもできる。本発明においては、シラン系、シリコネート系、シリコーン系、又はシリコーン及びシラン複合系の撥水剤又は吸水防止剤を用いることが好ましい。これらのなかでも、本発明に用いる撥水剤又は吸水防止剤として特に好ましいものとしては、加水分解性シラン、水、及び界面活性剤からなるシラン系撥水剤又は吸水防止剤、さらにこれに加水分解性シランの加水分解物及び/又は部分加水分解物並びに各種のオルガノポリシロキサンから選択される化合物を含むシリコーン及びシラン複合系撥水剤又は吸水防止剤、並びに、オルガノシリコネートのアルカリ金属塩の水溶液からなるシリコネート系撥水剤又は吸水防止剤が挙げられる。
【0038】
上記シラン系撥水剤又は吸水防止剤に用いる加水分解性シランとしては各種のものが知られているが、例えば、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、及びトリアルキルアルコキシシランが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を用いることができる。上記界面活性剤は特に限定されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0039】
上記シリコーン及びシラン複合系撥水剤又は吸水防止剤としては、上記加水分解性シラン、界面活性剤、及び上記加水分解性シランの加水分解物及び/又は部分加水分解物を含んでなるもの、並びに、上記加水分解性シラン、界面活性剤、及び各種のオルガノポリシロキサンから選択される化合物を含んでなるもの、が挙げられる。上記各種のオルガノポリシロキサンとしては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基、アルケノキシ基、アミノ基、アミド基、アセトキシ基、及びケトオキシム基などから選ばれる加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンを用いることができる。
【0040】
このシリコーン及びシラン複合系撥水剤又は吸水防止剤の具体例としては、特開昭62−197369号公報又は特開平6−313167号公報に開示されている組成物が挙げられる。本発明に用いる特に好ましいシラン系撥水剤又は吸水防止剤は水性組成物であって、(A)一般式RSi(OR4−a(式中Rは炭素原子数が1〜20の同種又は異種の一価炭化水素基であり、Rは炭素原子数が1〜3の一価炭化水素基であり、aは1又は2である。)で表されるオルガノアルコキシシラン 100重量部、(B)ケイ素原子に結合した式:−R−Si(R(OR3−b(式中、Rは炭素原子数が1〜3の一価炭化水素基であり、Rは二価炭化水素基であり、Rは同種又は異種の一価炭化水素基であり、bは0、1、又は2である)で表される有機基を分子中に少なくとも1つ有するオルガノシロキサン 1〜200重量部、(C)アニオン性界面活性剤、及び(D)水、からなるものである。
【0041】
上記(A)成分のオルガノアルコキシシランのRとしては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、n−へキシル基、ヘプチル基、2−エチルへキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;フルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロペンチル基、ジフルオロモノクロルプロピル基などの置換アルキル基が挙げられる。これらのうち特に炭素数4〜10のアルキル基が好ましい。炭素数が4以上であることにより撥水剤としての撥水性を高めることができ、炭素数を10以下にすることにより多孔質基材への浸透性を高めることができる。上記オルガノアルコキシシランのRとしては、具体的にはメチル基、エチル基、及びプロピル基が挙げられる。オルガノアルコキシシランは1種又は2種以上を混合して用いることができる。この(A)成分は、多孔質の基材として例えば無機質基材(具体的にはコンクリートなどの建材)表面に適用すると、基材内部に浸透し、基材と化学結合することによって基材表層中に撥水層を形成することができる。
【0042】
上記(B)成分のオルガノシロキサンに結合する上記有機基における置換基の態様は以下のとおりである。Rは上記(A)成分のRと同様である。Rは二価の炭化水素基であり、具体的にはエチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びイソブチレン基などのアルキレン基が挙げられる。Rは、同種又は異種の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基;フェニル基、ナフチル基、トリル基などのアリール基;2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基などのアラルキル基;3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化アルキル基が挙げられる。bは好ましくは0又は1である。上記有機基はオルガノシロキサンの分子鎖末端のみ、側鎖のみ、又はこれら両者に存在することができる。上記構造式で表される有機基以外に(B)成分のオルガノシロキサンが有する有機基としては同種又は異種の一価炭化水素基が好ましいものとして挙げられ、特にメチル基及び炭素数が4以上のアルキル基を有することが好ましい。この(B)成分のオルガノシロキサンは直線状、分岐状、及び/又は環状であることができ、特に直線状であることが好ましい。さらに(B)成分は単独重合体、ブロック共重合体、及びランダム共重合体のいずれでもよい。
【0043】
上記式(B)成分としては例えば以下の式:
【0044】
【化1】

【0045】
(式中、mは0以上の数であり、nは1以上の数であり、m+nは1〜50の数である。)で表されるオルガノシロキサンが挙げられる。式中のm+nを1〜50とすることにより多孔質基材内部への浸透性を高めることができる。上記(A)成分100重量部に対して、本(B)成分は1〜200重量部、さらに好ましくは10〜100重量部の範囲で用いることが好ましい。(B)成分の使用量を1重量部以上にすることにより混合物の貯蔵安定性を高めることができ、200重量部以下にすることによって上記(A)成分の含有量を高くして多孔質基材に適用した場合に形成される表面層による撥水性を高めることができる。
【0046】
上記(C)成分のアニオン性界面活性剤は、上記(A)及び(B)成分を乳化させるための成分である。好ましいアニオン性界面活性剤としては、オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、セチルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸;高級アルコール硫酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル;及びアルキルナフチルスルホン酸、から選ばれる酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、またはアミン塩が挙げられる。
【0047】
上記(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して(C)成分は0.1〜50重量部の範囲で用いることが好ましく、0.1〜10重量部の範囲で用いることがさらに好ましい。上記(D)成分の水は、上記(A)成分と(B)成分の合計量が(A)〜(D)全体の合計量の5〜60重量%となるような量で用いることが好ましい。これらの混合物を乳化することによって得られる水性の撥水剤又は吸水防止剤は、本発明に用いる撥水剤又は吸水防止剤して特に好ましい。この好ましい撥水剤又は吸水防止剤として市販されているものとして、ドライシールS(商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)が挙げられる。
【0048】
上記シリコネート系撥水剤又は吸水防止剤としては、公知のものが使用可能であるが、ナトリウムメチルシリコネート水溶液、ナトリウムプロピルシリコネート水溶液、カリウムメチルシリコネート水溶液、及びカリウムプロピルシリコネート水溶液などのアルキルシリコネートのアルカリ金属塩の水溶液;並びに特開平5−214251号公報に記載されたアルカリ金属アミノオルガノ官能性シリコネート水溶液が挙げられる。このようなシリコネート系撥水剤又は吸水防止剤として市販されているものには、ドライシールC、及びドライシールE(いずれも商品名:東レ・ダウコーニング社製)がある。
【0049】
また、シリコーン系撥水剤又は吸水防止剤としては、特開昭58−118853号公報又は特開昭60−96650号公報に記載された、アニオン的に安定化されているヒドロキシル基含有ジオルガノポリシロキサン、コロイドシリカ、及び硬化触媒からなるシリコーンエマルジョン、または特開平7−150045号公報に記載された、イオン的あるいは非イオン的に安定化されたアルコキシ基含有ジオルガノポリシロキサン、及びチタン触媒からなるシリコーンエマルジョンなどの、水分の除去によって室温で硬化しエラストマー状の硬化物を与える室温硬化性水性シリコーンエマルジョン組成物;特開昭55−48245号公報に記載された、
(イ) 平均単位式R’SiO(4−l−k)/2(OH)(式中R’は置換又は非置換の一価炭化水素基であり、lは0.80〜1.80の数であり、kは本化合物中におけるケイ素原子に結合した水酸基の占める比率が0.01質量%以上となるような値を示す。)で示されるオルガノポリシロキサン樹脂;
(ロ) 一般式HO−(RSiO)−H(式中、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基であり、qは2以上の整数である。)で示されるα,ω−ジヒドロキシジオルガノポリシロキサン;及び
(ハ) 一般式RSiX4−c(式中cは0、1または2であり、Xは加水分解性基である)で示されるケイ素化合物またはその部分加水分解縮合物、
からなることを特徴とする室温硬化性シリコーン樹脂組成物、ならびに特開平6−73291号公報に記載された、
(A) SiO4/2単位またはRSiO3/2単位を含有し、分子中のケイ素原子結合水酸基またはケイ素原子結合アルコキシ基の含有量が0.1質量%以上であるオルガノポリシロキサン;
(B) 一般式HO(RSiO)H(式中、Rは一価炭化水素基であり、pは2以上の整数である。)で示されるジオルガノポリシロキサン;
(C) 一般式RNO(R10SiO)NR(式中、RおよびR10は一価炭化水素基であり、rは1以上の整数である。)で表されるアミノキシ基含有有機珪素化合物;
(D) 界面活性剤;及び
(E) 水、
からなることを特徴とするシリコーン水性エマルジョン樹脂組成物などの、水酸基またはアルコキシ基などの加水分解性基を有するシリコーンレジン、ヒドロキシシリル基含有ジオルガノポリシロキサンおよび加水分解性基含有シランまたは加水分解性基(但し水酸基を除く。)含有オルガノポリシロキサンからなる室温硬化型シリコーンレジン系撥水剤又は吸水防止剤が挙げられる。
【0050】
また、本発明に用いるフッ素系撥水剤又は吸水防止剤とは、パーフルオロアルキル基含有化合物などの含フッ素化合物又は含フッ素化合物含有組成物である。なお、基材表面への吸着性が高い含フッ素化合物を選択した場合は、基材表面に適用した後、撥水剤又は吸水防止剤の化学成分が基材と反応して化学結合を生じたり、又は化学成分どうしが架橋したりする必要はかならずしもない。
【0051】
このようなフッ素系撥水剤又は吸水防止剤として用いることができる含フッ素化合物は、分子中にパーフルオロアルキル基を含有する分子量1,000〜20,000のものが好ましく、具体的には、パーフルオロスルホン酸塩、パーフルオロスルホン酸アンモニウム塩、パーフルオロカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキルリン酸エステル、及びパーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。中でも、基材表面への吸着性に優れることから、パーフルオロアルキルリン酸エステル、及びパーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましい。このような材料としては、サーフロンS−112、及びサーフロンS−121(共に商品名、セイミケミカル株式会社製)などが市販されている。
【0052】
その他のフッ素系撥水剤又は吸水防止剤としては、フッ素原子を含有するオレフィンの2種以上からなる共重合体、フッ素原子を含有するオレフィンと炭化水素モノマーとの共重合体、およびフッ素原子を含有するオレフィンの2種以上からなる共重合体と熱可塑性アクリル樹脂との混合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のフッ素樹脂と界面活性剤からなるフッ素樹脂エマルジョン、並びに硬化剤(特開平5−124880号公報、特開平5−117578号公報、特開平5−179191号公報参照)および/又は上記シラン系撥水剤又は吸水防止剤からなる組成物が挙げられる(特開2000−121543号公報、特開2003−26461号公報参照)。このフッ素樹脂エマルジョンとしては、市販されているものを使用することができ、ダイキン工業(株)よりゼッフルシリーズとして、旭硝子(株)よりルミフロンシリーズとして購入可能である。上記硬化剤としては、メラミン系硬化剤、アミン系硬化剤、多価イソシアネート系硬化剤、及びブロック多価イソシアネート系硬化剤が好ましく使用される。中でも、常温硬化し現場施工が可能となる点から多価イソシアネート系硬化剤が好ましい。
【0053】
本発明の第一の目的は、上述のとおり、優れた撥水性又は吸水防止性、及び防汚性を基材表面に付与するために、基材表面を処理するために用いる溶液又は分散液(以下、単に基材表面処理液とも記す)を提供しようとするものである。そして、その基材表面処理液は、上記撥水剤又は吸水防止剤と上記特定金属ドープチタン酸化物とを含む溶液又は分散液である。この溶液又は分散液は、上述した特定金属ドープチタン酸化物を含む溶液又は分散液と、上記の撥水剤又は吸水防止剤とを混合することにより得られる。
【0054】
本発明の基材表面処理液には、さらに所望により基材表面の意匠性を高めるための水性顔料分散体を添加することができる。本発明に用いる顔料は特に限定されず、無機系顔料及び有機系顔料を用いることができ、これらの片方を用いることも又は両者を併用することもできる。顔料及び/又は染料を添加した本発明の基材表面処理液を用いて基材表面又は基材表層中に形成した層においては、有機系顔料及び/又は染料を用いた場合であっても驚くべきことに染料及び/又は顔料の褪色を抑制できるという効果があることを発見した。
【0055】
上記水性顔料分散体は、顔料を均一かつ安定に水中に分散したものであればよく、それ以外に特に制限はない。水性顔料分散体は、公知の方法に従って、分散機を使用し、分散剤を用いて顔料を水中に分散したものを用いることができる。
【0056】
上記顔料のうち、無機顔料としては、金属酸化物系、複合酸化物系、クロム酸塩系、硫化物系、リン酸塩系、及び金属錯塩系の顔料、カーボンブラック、金属粉、示温顔料、蓄光顔料、真珠顔料、塩基性顔料、鉛白等が挙げられる。また有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、キナクリドン系、インジゴ系、ジオキサジン系、ペリレン系、ペリノン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、金属錯塩系、キノフタロン系、及びジケトピロロピロール系顔料、アルカリブルー、アニリンブラック、蛍光顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独であるいは二種類以上を併用して用いることができる。
【0057】
顔料を水中に分散して水性顔料分散体を得る場合に用いる分散剤としては、ノニオン性分散剤、アニオン性分散剤、両性分散剤、酸価が50〜250の水溶性樹脂性分散剤、及び酸価が50〜250のエマルジョン樹脂性分散剤が挙げられる。これらの分散剤は単独で、あるいは二種類以上を併用して用いることができる。
【0058】
上記ノニオン性分散剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0059】
上記アニオン分散剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル塩、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル塩、グリセロールボレイド脂肪酸エステル塩、及びトリポリリン酸ソーダ等が挙げられる。中でも、上記トリポリリン酸ソーダと上記その他のアニオン分散剤との混合物を配合することが、水性顔料分散体の安定性向上に有効であるので好ましい。
【0060】
上記両性分散剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、及びレシチン等が挙げられる。
【0061】
上記酸価が50〜250の水溶性樹脂性分散剤としては、アクリル樹脂、アクリルスチレン樹脂、及びスチレンマレイン酸樹脂等が挙げられ、酸価が50〜250のエマルジョン樹脂性分散剤としては、アクリルエマルジョン樹脂、及びアクリルスチレンエマルジョン樹脂等が挙げられる。
【0062】
上記分散剤は、顔料100質量部に対して0.1〜100質量部の範囲で用いることが好ましく、0.1〜60質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0063】
上記水性顔料分散体には、上記顔料、上記分散剤、及び水のほか、さらに必要に応じて水溶性溶剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤、及び防腐剤等から選択される材料を一種又は二種以上含有させることができる。
【0064】
上記基材表面処理液には、所望により基材表面に塗膜を形成しやすくするためのバインダー樹脂をさらに添加することもできる。バインダー樹脂は上記基材表面処理液に直接配合してもよく、上記水性顔料分散体に予め配合してもよい。このようなバインダー樹脂としては、天然樹脂や各種の合成樹脂系のエマルジョンが例示される。天然樹脂系のバインダー樹脂としては、ロジン、セラック、カゼイン、セルロース誘導体、及び澱粉が例示される。合成樹脂系のエマルジョンとしては、ポリ酢酸ビニル;エチレン・酢酸ビニル共重合体;酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合体;酢酸ビニル・アクリル酸共重合体;エチレン・アクリル酸共重合体;ポリビニルアルコール;アクリル樹脂;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルからなるアクリル酸エステル樹脂;スチレン・アクリル酸エステル共重合体;メタクリル酸エステル樹脂;アクリル酸メタクリル酸共重合体;シリコーン変性アクリル樹脂;エポキシ樹脂;フッ素樹脂;ポリウレタン樹脂、およびこれらの混合物または共重合体等からなるエマルジョンが例示される。特に得られる塗膜の耐久性が優れることから、アクリル酸エステル樹脂またはメタクリル酸エステル樹脂のエマルジョンが好ましく、特に好ましくはアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを主成分とするアクリルシリコン系のエマルジョンが好ましい。さらにバインダー樹脂の酸価は50未満であることが好ましく、さらに好ましくは30未満、特に好ましくは10以下である。好ましいバインダー樹脂として市販されているものとして、ポリゾールA−609L(商品名、昭和高分子株式会社製のアクリル酸エステル樹脂のエマルジョン)、ポリゾールAP−3900(商品名、昭和高分子株式会社製のアクリルシリコン系のエマルジョン)が挙げられる。
【0065】
上記基材表面処理液には、さらに所望により、レベリング剤、シランカップリング剤などの添加剤を加えることができる。
【0066】
レベリング剤としてはシリコーンオイルが好ましく、各種のものを使用することができる。なかでも、ポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましい。具体的には、分子鎖末端あるいは側鎖に、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合ブロック、ポリエチレンオキサイド−ポリブチレンオキサイド共重合ブロック、ポリプロピレンオキサイド−ポリブチレンオキサイド共重合ブロック等の構造を有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。その中でも、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドまたはポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合ブロックがアルキレン基を介してケイ素原子に結合したオルガノポリシロキサンが好ましい。このようなポリエーテル変性シリコーンオイルは公知の方法で製造することができ、例えば、特開平9−165318号公報に記載の方法により製造することができる。このようなポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、TSF4445、TSF4446(いずれも商品名)(以上、GE東芝シリコーン株式会社製)、KF−352,KF−353(いずれも商品名)(以上、信越化学工業製)、SH3746(商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)がある。
【0067】
また、アミノ基、エポキシ基、又はメタクリロキシ基を有するシラン化合物、いわゆるシランカップリング剤を配合することも可能である。このカップリング剤は、金属ドープチタン酸化物含有層の硬度や隣接する層との密着性を向上させることを可能とする。他にも、シリコーンゴム、シリコーンパウダー、及びシリコーンレジン等から選択される材料を本発明の基材表面処理液に配合してもよい。
【0068】
したがって、本発明の基材表面処理液として、以下の態様:
(1)上記特定金属ドープチタン酸化物及びシラン系撥水剤又は吸水防止剤を含む液;
(2)上記(1)にさらに顔料及び/又は染料を含む液;
(3)上記特定金属ドープチタン酸化物及びシリコネート系撥水剤又は吸水防止剤を含む液;
(4)上記(3)にさらに顔料及び/又は染料を含む液;
(5)上記特定金属ドープチタン酸化物及びシリコーン及びシラン複合系撥水剤又は吸水防止剤を含む液;
(6)上記(5)にさらに顔料及び/又は染料を含む液;
(7)上記特定金属ドープチタン酸化物及びシリコーン系撥水剤又は吸水防止剤を含む液;
(8)上記(7)にさらに顔料及び/又は染料を含む液;
(9)上記(2)、(4)、(6)及び(8)にさらにバインダー樹脂を含む液;
(10)上記特定金属ドープチタン酸化物及びフッ素系撥水剤又は吸水防止剤を含む液;及び
(11)上記(10)にさらに顔料及び/又は染料、並びにバインダー樹脂を含む液、
がある。これらいずれかの液(溶液又は分散液)を基材表面に適用し、基材表面を処理する。基材への適用方法としては、刷毛塗り、ローラーコート、及びスプレーコートなどの公知の方法を用いることができる。基材表面に本発明の処理液を適用した後は、乾燥させることによって基材表面上及び/又は基材表層中に撥水性又は吸水防止性、並びに防汚性に優れた層を形成することができ、これによって基材表面の汚染を低減でき、多孔質基材の場合は基材内部への水の侵入を防止することができる。
【0069】
以下具体例に基づき本発明を説明する。
(参考例1:銅ドープアモルファス型チタン酸化物の調製)
純水500mlに97%CuCl・2HO(塩化第二銅、日本化学産業株式会社製)0.463gを完全に溶解した溶液に、更に50%四塩化チタン溶液(住友シチックス株式会社製)10gを添加し、純水を加えて総体積を1000mlとした。
上記溶液に25%アンモニア水(高杉製薬株式会社製)を純水で10倍に希釈したアンモニア水を滴下して加えてpH7.0に調整することにより、水酸化銅及び水酸化チタンの混合物を沈殿させた。
上記沈殿物の上澄み液の導電率が0.8mS/m以下になるまで、純水を用いて繰り返し沈殿物を洗浄した。水酸化銅及び水酸化チタンが合計で0.85質量%含まれる水性分散液が340g得られた。
次に、上記水性分散液を1〜5℃に冷却しながら、35質量%濃度の過酸化水素水(タイキ薬品工業株式会社製)25gを加え、さらに16時間撹拌した。これにより、透明緑色液として、0.9質量%濃度の銅ドープアモルファス型過酸化チタンを含む分散液365gを得た。
【0070】
(参考例2:亜鉛ドープアモルファス型チタン酸化物の調製)
純水500mlに97%ZnCl(塩化亜鉛)0.3359gを完全に溶解した溶液に、更に50%四塩化チタン溶液(住友シチックス株式会社製)10gを添加し、純水を加えて総体積を1000mlとした。
上記溶液に25%アンモニア水(高杉製薬株式会社製)を純水で10倍に希釈したアンモニア水を滴下して加えてpH7.0に調整することにより、水酸化亜鉛及び水酸化チタンの混合物を沈殿させた。
上記沈殿物の上澄み液の導電率が0.713mS/m(目標値は0.8mS/m以下)になるまで、純水を用いて繰り返し沈殿物を洗浄した。水酸化銅及び水酸化チタンが合計で0.48質量%含まれる水性分散液が409g得られた。
次に、上記水性分散液を1〜5℃に冷却しながら、35質量%濃度の過酸化水素水(タイキ薬品工業株式会社製)25gを加え、さらに16時間撹拌した。これにより、黄褐色の透明な液として、亜鉛ドープアモルファス型過酸化チタンを含む水溶液434gが得られた。
【0071】
(参考例3:吸水防止剤Sの調製)
n−へキシルトリエトキシシラン20重量部、下記式:
【0072】
【化2】

【0073】
で表される、粘度が21cSのオルガノシロキサン10重量部、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム0.5重量部、オレイン酸ナトリウム0.05重量部、及びイオン交換水69.45重量部を混合した。この混合液をホモジナイザーに入れ、300kg/cmの圧力で2回ホモジナイザー内を通過させて、pH6.9の乳白色の吸水防止剤Sを得た。
【0074】
(参考例4:吸水防止剤Cの調製)
メチルトリメトキシシラン350質量部に、水酸化ナトリウムの50質量%水溶液200質量部をゆっくりと加えた。この混合物に蒸留水450質量部を加えた後、生成したメタノールを蒸留により除去し、さらに蒸留水を加えて固形分量を調整して30質量%のナトリウムメチルシリコネートを含有する吸水防止剤Cを得た。
【0075】
(実施例1)
上記参考例1で調製した0.85質量%濃度の銅ドープアモルファス型過酸化チタン分散液と、上記参考例3で調製した吸水防止剤Sを体積比4:1で混合し、撹拌して、基材表面処理液1を得た。
【0076】
(実施例2)
上記参考例1で調製した0.85質量%濃度の銅ドープアモルファス型過酸化チタン分散液と、上記参考例4で調製した吸水防止剤Cを体積比6:1で混合し、撹拌して、基材表面処理液2を得た。
【0077】
(実施例3)
上記実施例1で調製した基材表面処理液1(85質量部)に、顔料である酸化チタン含有水性顔料分散体(酸化チタン65質量部、酸価が195のアクリルスチレン樹脂19.5質量部、水15.5質量部)(8質量部)、バインダー樹脂としてアクリル酸エステル樹脂のエマルジョンであるポリゾールA−609L(商品名)(昭和高分子株式会社製)(10質量部)を混合し、撹拌して、基材表面処理液3を得た。
【0078】
(実施例4)
上記実施例3と同様にして顔料及びバインダー樹脂を含む基材表面処理液4を得た。ただし、この場合、上記実施例3で用いた基材表面処理液1に代えて上記実施例2で調製した基材表面処理液2を用いた。
【0079】
(実施例5)
上記参考例2で調製した亜鉛ドープアモルファス型過酸化チタンを含む分散液と、上記参考例3で調製した吸水防止剤Sを体積比4:1で混合し、撹拌して、基材表面処理液5を得た。
【0080】
〔評価試験〕
上記基材表面処理液1〜5を実施例として用い、上記参考例1で調製した銅ドープアモルファス型過酸化チタン分散液を比較液1とし、上記参考例3及び4で調製した吸水防止剤S及びCをそれぞれ比較液2及び3として以下の評価試験を行った。
【0081】
(評価試験1)
基材として市販のPCコンクリート舗石ブロック(300mm×300mm×50mm)を用いた。上記基材表面処理液1〜5及び比較液1〜3を一種類ずつ、それぞれ舗石ブロックの表面の1/2に刷毛塗りしてから常温乾燥して評価用サンプルを作製した。評価用材料は、基材表面処理液又は比較液を塗布した面を上にして、75度に傾斜させて南面に向けて屋外曝露した。曝露は佐賀県藤津郡で行い、曝露は2004年4月から2004年12月まで行った。
【0082】
曝露後の評価用サンプル表面を目視で観察して各サンプルの防汚性能を評価した。また、曝露後の評価用サンプル表面に噴霧器を用いて純水を充分に散布し、約10分間放置後、各サンプルを切断し、その断面におけるサンプル表面から内部への水の浸透度を目視で観察して、各評価用サンプルの吸水防止性能を評価した。評価結果は以下の基準に基づいて決定し、得られた結果を表1にまとめた。
【0083】
防汚性能:防汚性能は、屋外曝露に供しなかったPCコンクリート舗石ブロックの試験結果を基準として、
◎は、評価用サンプルとの間に差が見られなかったことを示す。○は、評価用サンプルにわずかな変色が認められたが、汚れの付着は認められなかったことを示す。△は、評価用サンプルに変色及びわずかな汚れの付着が認められたことを示す。×は、評価用サンプルに変色が認められ、汚れの付着が著しかったことを示す。ここで「変色」とは、PCコンクリート舗石ブロックの表面が屋外曝露中に吸水及び乾燥を繰り返すことで、当初青みがかった灰色であった表面が劣化してやや赤みがかった白色(ベージュ色〜クリーム色)を呈することを意味する。
吸水防止性能:◎は、評価用サンプルの表面から内部に水の侵入が全く認められなかったことを示す。○は、評価用サンプルの極表層部にわずかな水の侵入が認められたことを示す。×は、評価用サンプルの表面から内部に明らかな水の侵入が認められたことを示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表1に示した結果から、吸水防止剤又は撥水剤、及び銅又は亜鉛ドープ酸化チタンを含む表面処理液で基材を処理した場合、吸水防止性能および防汚性能が基材に同時に付与されることがわかる。
【0086】
(実施例6:赤インク褪色試験)
上記基材表面処理液で表面処理した基材上に有機染料で着色し、光酸化による有機染料の褪色率を測定した。試験は以下のように行った。
【0087】
基材として、100mm×100mmの白色陶器質タイル(ダントー(株)社製)を用いた。評価は以下の7通りのサンプルについて行った。
(1)基材の表面処理なし
(2)B56(サステイナブル・テクノロジー(株)製、光触媒)による基材の表面処理あり
(3)上記参考例1の銅ドープアモルファス型チタン酸化物分散液100質量部に対してレベリング剤としてSH3746M(商品名、東レ・ダウコーニング社製)を0.1質量部加えた液で基材の表面を処理したもの
(4)上記参考例1の銅ドープアモルファス型チタン酸化物分散液で基材表面を処理したもの
(5)上記参考例3の吸水防止剤Sで基材表面を処理したもの
(6)上記実施例1の基材表面処理液1で基材表面を処理したもの
(7)上記実施例3の基材表面処理液3で基材表面を処理したもの
【0088】
上記基材の表面処理は、スプレーガン(明治機械(株)製)を使用して、基材表面に各処理液を15g/cm〜20g/cm吹きつけ塗装し、さらに乾燥後、恒温恒湿庫で80℃に15分間加熱することによって行った。
【0089】
次に表面処理した基材(上記(1)〜(7))上に、パイロット社製赤インクのエタノール10倍希釈液を1回当たり0.001g/100cmの量で7回、スプレーを用いて吹き付けてから乾燥し、以下の方法を用いて評価した。
【0090】
(評価方法)
赤インクで表面を着色した上記表面処理基材サンプル(1)〜(7)を直線上に並べ、20Wのブラックライト(東芝ライテック(株)製)をサンプルの上に配置し、赤インクで着色したサンプル面に紫外線を照射した。紫外線量は1100μW/cmだった。色差計(ミノルタ(株)製、CR−200)を使用して、サンプル表面上の赤インクの褪色率を経時的に測定した。
【0091】
赤インクの褪色率(%)は以下の式を用いて計算により求めた。
【0092】
【数1】

【0093】
得られた褪色率の結果を表2に示した。表には試験後の紫外線照射時間及びサンプル表面の赤インクの褪色率を数値(%)で示した。表中の褪色率の数値が大きいほど赤インクの褪色が顕著であることを示す。
【0094】
【表2】

【0095】
表に示した結果から、サンプル(1)〜(5)と比較して、サンプル(6)及び(7)は赤インクの褪色率が低く、紫外線による赤インク色素の劣化の程度が低いことがわかる。
【0096】
(実施例7)
上記参考例1で調製した0.85質量%濃度の銅ドープアモルファス型酸化チタン分散液32.1質量部、上記参考例3で調製した吸水防止剤S 7.6質量部、顔料であるモノアゾレッド系有機顔料含有水性顔料分散体(ピグメントレッド17 25質量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル HLB 14.1 7.5質量部、水 67.5質量部)1.2質量部、バインダー樹脂としてアクリル酸エステル樹脂のエマルジョンであるポリゾールA−609L(商品名)(昭和高分子株式会社製)(10質量部)を混合し、撹拌して、基材表面処理液6を得た。
【0097】
(比較例4)
参考例1で調製した0.85質量%濃度の銅ドープアモルファス型過酸化チタン分散液32.1質量部の代わりに純水32.1質量部を使用したほかは実施例7と同様にして、基材表面処理液7を得た。
【0098】
(比較例5)
参考例3で調製した吸水防止剤S7.6質量部の代わりに純水7.6質量部を使用したほかは実施例8と同様にして、基材表面処理液8を得た。
【0099】
(評価試験3)
基材として、100mm×100mmの白色陶器質タイル(ダントー(株)社製)を用いた。上記基材表面処理液6〜8をタイル表面に刷毛塗りしてから常温乾燥して評価用サンプルを作製した。評価用材料は、基材表面処理液を塗布した面の一部をマスキングして未照射部を設けた後、スガ試験機株式会社のWEL−SUN−HCH・B型のサンシャインウエザーメーター(ブラックパネル温度63℃)を用いて600時間の促進耐候試験を行った。
【0100】
促進耐候試験後の評価用サンプル表面をマクベスカラーアイCE−7000Aの分光光度計を用い、マスキングした未照射部を標準として照射部の色差を測定した。得られた結果を表3にまとめた。
【0101】
【表3】

【0102】
表3に示した結果から、撥水防止剤又は吸水防止剤、銅ドープ酸化チタン、および顔料を含む基材表面処理液で基材を処理した場合は、銅ドープ酸化チタン、および顔料を含む基材表面処理液で基材を処理した場合、および顔料のみを含む基材表面処理液で基材を処理した場合と比較して、紫外線による基材表面処理液に含まれる顔料の褪色が低減されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の特定金属ドープチタン酸化物の製造方法の一態様の概略を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水剤又は吸水防止剤、並びに、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素でドープされたチタン酸化物を含有することを特徴とする溶液又は分散液。
【請求項2】
前記撥水剤又は吸水防止剤が、シラン系、シリコネート系、シリコーン系、シリコーン及びシラン複合系、及び/又はフッ素系の撥水剤又は吸水防止剤であり、且つ前記金属元素でドープされたチタン酸化物がアモルファス型酸化チタン又は少なくとも一部がペルオキソ化されたアモルファス型酸化チタンである、請求項1記載の溶液又は分散液。
【請求項3】
さらにノニオン性分散剤、アニオン性分散剤、両性分散剤、及び樹脂性分散剤からなる群から選択される1種以上の分散剤、顔料並びに水からなる水性顔料分散体を含有する、請求項1又は2に記載の溶液又は分散液。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶液又は分散液を基材に適用することによって、前記撥水剤又は吸水防止剤、並びに、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素でドープされたチタン酸化物を含有する層を、前記基材表面上及び/又は基材表層中に形成することを特徴とする、基材の表面処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の表面処理方法を用いて製造され、撥水剤又は吸水防止剤、並びに、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素でドープされたチタン酸化物を含有する層が基材表面上及び/又は基材表層中に形成されていることを特徴とする表面処理材料。

【図1】
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【公開番号】特開2006−321993(P2006−321993A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118002(P2006−118002)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(501016054)サスティナブル・テクノロジー株式会社 (12)
【出願人】(591229440)住化カラー株式会社 (22)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】