金属切断システム及び方法
【課題】バリ及び/又は非対称縁部を生じない電解切断システム及び方法を提供する。
【解決手段】 システムの電解切断工具(80)は、加工物(82)の第1の側部から離れた第1のギャップ(99)に位置する第1のカソード(84)と、加工物(82)の第2の側部から離れた第2のギャップ(101)に位置し、第1のカソード(84)と反対側に位置する第2のカソード(86)とを備える。電解切断工具(80)は、第1のカソード(84)と加工物(82)との間の第1のギャップ(99)を通って第1の電解質を流す第1の電解質通路(226)と、第2のカソード(86)と加工物(82)との間の第2のギャップ(101)を通って第2の電解質を流す第2の電解質通路(226)と、第1のギャップ(99)及び第2のギャップ(101)に通電して第1及び第2の側部の両側から加工物(82)を通して電解溶解させる電源(144)とを備える。
【解決手段】 システムの電解切断工具(80)は、加工物(82)の第1の側部から離れた第1のギャップ(99)に位置する第1のカソード(84)と、加工物(82)の第2の側部から離れた第2のギャップ(101)に位置し、第1のカソード(84)と反対側に位置する第2のカソード(86)とを備える。電解切断工具(80)は、第1のカソード(84)と加工物(82)との間の第1のギャップ(99)を通って第1の電解質を流す第1の電解質通路(226)と、第2のカソード(86)と加工物(82)との間の第2のギャップ(101)を通って第2の電解質を流す第2の電解質通路(226)と、第1のギャップ(99)及び第2のギャップ(101)に通電して第1及び第2の側部の両側から加工物(82)を通して電解溶解させる電源(144)とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、金属切断に関し、より詳細には、電解切断に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械は、精油所、石油化学プラント、天然ガス処理プラントその他の産業で用いることができる。例えば、蒸気タービンは、加圧蒸気からの熱エネルギーを回転運動に変換することができる。蒸気の大気への漏れ又は蒸気タービンのあるセクションから別のセクションへの漏れの低減に資するために、蒸気タービン内の種々の場所にシールを配置することができる。シールの幾つかのタイプは、蒸気漏れの低減を助けるため、蒸気タービンの回転要素を中心として円周方向に配置される薄い金属プレートを含むことができる。金属プレートは、金属シールのロールその他のタイプの薄い金属から切断することができる。金属シートを切断するために複数の方法を用いることができる。特定の方法の選択は、切断速度、精度、バリの形成、並びに機械及び製造コストなど、様々な考慮事項によって決めることができる。残念なことに、既存の方法は、こうした面で1以上の欠点を有しており、過剰なバリ及び/又は非対称縁部を生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7419164号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明の幾つかの実施形態について要約する。これらの実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲を限定するものではなく、本発明の可能な形態を簡単にまとめたものである。実際、本発明は、以下に記載する実施形態と同様のものだけでなく、異なる様々な実施形態を包含する。
【0005】
第1の実施形態では、システムは、電解切断工具を含む。該電解切断工具は、加工物の第1の側部から離れた第1のギャップに位置するように構成される第1のカソードと、加工物の第2の側部から離れた第2のギャップに位置するように構成され、第1のカソードと互いに反対側に位置する第2のカソードとを備える。第1及び第2のカソードは、互いに反対側に位置する。電解切断工具はまた、第1のカソードと加工物との間の第1のギャップを通って第1の電解質を流すように構成された第1の電解質通路と、第2のカソードと加工物との間の第2のギャップを通って第2の電解質を流すように構成された第2の電解質通路と、第1のギャップ及び第2のギャップを通って電流を流し、第1の側部及び第2の側部の両方から加工物を通して電解溶解させるように構成された電源とを含む。
【0006】
第2の実施形態では、方法は、第1のカソードと加工物の第1の側部との間の第1のギャップにわたる第1の電解質通路を通って第1の電解質を流す段階と、第2のカソードと加工物の第2の側部との間の第2のギャップを通って第2の電解質を流す段階とを含む。第1及び第2のカソードは、互いに反対側に位置する。本方法はまた、第1のギャップ及び第2のギャップを通って電流を流し、第1及び第2の側部の両方から加工物を通して電解溶解させる段階を含む。
【0007】
第3の実施形態では、システムは、回転機械と、該回転機械において円周方向配列で配置された複数のコンプライアントプレートシールとを含む。各コンプライアントプレートシールは、金属シートを通る中心平面に対して対称的な電解質ピンチ切断部を有する金属シートを含む。
【0008】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点については、図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができるであろう。図面を通して、同様の部材には同様の符号を付した。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に係るコンプライアントプレートシールを備えた蒸気タービンの側断面図。
【図2】一実施形態に係るコンプライアントプレートシールの部分斜視図。
【図3】一実施形態に係る電解切断システムの斜視図。
【図4】一実施形態に係る電解切断システムによって生成されるコンプライアントプレートシール部材の正面図。
【図5】電解質が加工物に平行に流れる電解切断システムの一実施形態の切り欠き斜視図。
【図6】加工物が絶縁クランプにより保持される電解切断システムの一実施形態の切り欠き斜視図。
【図7】絶縁クランプが加工物の所望の縁部を得るように成形される電解切断システムの一実施形態の切り欠き斜視図。
【図8】加工物が中間絶縁層を有する金属クランプにより保持される電解切断システムの一実施形態の切り欠き斜視図。
【図9】加工物の所望の縁部を得るためにカソードが移動可能な電解切断システムの一実施形態の切り欠き斜視図。
【図10】電解質がある角度で加工物に配向される電解切断システムの一実施形態の断面図。
【図11】切断後に加工物の一部がスクらプロセスとして取り除かれる電解切断システムの一実施形態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の1以上の特定の実施形態について説明する。これらの実施形態を簡潔に説明するため、現実の実施に際してのあらゆる特徴について本明細書に記載しないこともある。実施化に向けての開発に際して、あらゆるエンジニアリング又は設計プロジェクトの場合と同様に、実施毎に異なる開発者の特定の目標(システム及び業務に関連した制約に従うことなど)を達成すべく、実施に特有の多くの決定を行う必要があることは明らかであろう。さらに、かかる開発努力は複雑で時間を要することもあるが、本明細書の開示内容に接した当業者にとっては日常的な設計、組立及び製造にすぎないことも明らかである。
【0011】
本発明の様々な実施形態の構成要素について紹介する際、単数形で記載したものは、その構成要素が1以上存在することを意味する。「含む」、「備える」及び「有する」という用語は内包的なものであり、記載した構成要素以外の追加の要素が存在していてもよいことを意味する。
【0012】
以下で検討するように、開示される実施形態は、種々の加工物、プレート、ほぼ平坦な構造体、ほぼ湾曲した構造体、又は均一な厚みの他の何れかの構造体など、種々の加工物を電解ピンチ切断するシステム及び方法を提供する。詳細には、電解ピンチ切断技法は、電解質の流れを加工物の両側に加え、これにより加工物を両側から溶解させて、該加工物をより対称的に、均一に、及び滑らかに切り通すようにする。コンプライアントプレートシールは、開示される実施形態により電解ピンチ切断することができる加工物の1つの実施例である。コンプライアントプレートシールは、圧縮機、タービン、又はポンプなどの回転機械の回転部材と静止要素との間の軸方向の漏れを阻止するように構成することができる。各コンプライアントプレートシールは、リーフとも呼ばれ、単一の金属シートとすることができ、多数のコンプライアントプレートシールを回転要素の周りで円周状に積み重ねることができる。コンプライアントプレートシールの群は、設置及び取り外しを容易にするためにパック状態で配置することができる。コンプライアントプレートシールは、回転要素に対して軸方向に漏れする可能性がある流体(例えば、ガス又は液体)に対する障壁を形成するのを助ける。加えて、コンプライアントプレートシールは、半径方向で移動及び/又は撓むことができ、従って、回転要素が移動している間の漏れの低減を助けることができる。
【0013】
幾つかの実施形態では、コンプライアントプレートシールのパックは、1000個のシール、5000個のシール、又は更に10000個のシールを含むことができる。各コンプライアントプレートシールの厚みは、約2.5〜2500μm、10〜1500μm、又は25〜250μmとすることができる。しかしながら、コンプライアントプレートシールの数、幾何形状、及び構成は、適用毎に変わる可能性がある。コンプライアントプレートシールは、回転機械内に特定の幾何形状を収容するために様々な形状に切断することができる。加えて、ある切断プロセスに起因して浮き出した縁部又は付着して残る金属の小要素であるバリが存在しないコンプライアントプレートシールの縁部を切断プロセスが生成することが望ましいとすることができる。バリ無し縁部は、回転要素への可能性のある損傷を阻止するのを助け、回転機械へのデブリの導入を低減し、及び/又は積み重なったコンプライアントプレートシールの整然と並んだ可撓性のパックを生成するのを助けることができる。次に、デバリングと呼ばれる処理により、バリを除去することができるが、これは、コンプライアントプレートシールの製造において追加のステップ及びコストを導入することになる。
【0014】
現在開示されている実施形態は、パンチング、レーザ切断、水ジェット切断、及びフォトエッチングなど、他の切断方法の欠点を避けるために、電解ピンチ切断又は単なる電解切断を利用して金属シートを切断している。例えば、電解切断は、パンチング及びレーザ切断とは異なり、バリの無い縁部をもたらす。加えて、電解切断は、水ジェット切断及びフォトエッチングよりも迅速とすることができる。更に、電解切断は、パンチングのように工具摩耗が無く精密で繰り返し可能な切断を提供することができる。更にまた、電解切断は、レーザ切断又はフォトエッチングよりも安価とすることができる。最後に、電解質は加工物の両側に加えられるので、電解切断は、加工物の片側から切断する方法が実施することができない対称的で均一な切断を提供することができる。電解切断は、コンプライアントプレートシール用に金属シートを切断するのに理想的に適している。
【0015】
図1は、一実施形態に係る電解ピンチ切断で製造されるコンプライアントプレートシールを備えた蒸気タービン10の側断面図である。蒸気タービンは、高圧セクション12及び中圧セクション14を含む。蒸気タービンはまた、外側ケーシング16を含む。外側ケーシングの中央セクション18は、高圧蒸気入口20を含むことができ、ここを通る高圧蒸気を蒸気タービン10の高圧セクション12が受け取ることができる。同様に、外側ケーシングの中央セクション18は、中圧蒸気入口22を含むことができ、ここを通る中圧蒸気を蒸気タービン10の中圧セクション14が受け取ることができる。
【0016】
作動中、高圧蒸気入口20は、高圧タービン段24を通して高圧蒸気を受け取り且つ配送して、ブレードを駆動し、蒸気タービン10の共通回転シャフトの回転を引き起こす。高圧蒸気は、高圧蒸気出口26を介して蒸気タービン10の高圧セクション12から流出する。流出する高圧蒸気は、蒸気タービン10の中圧セクション14で用いることができる。
【0017】
中圧蒸気入口22は、中圧タービン段28を通して中圧蒸気を受け取り且つ配送して、ブレードを駆動し、蒸気タービン10の共通シャフトの回転を引き起こす。中圧蒸気は、中圧蒸気出口30を介して蒸気タービン10の中圧セクション14から流出する。流出する中圧蒸気は、蒸気タービン10の低圧セクションに配向することができる。
【0018】
蒸気タービン10は、複数のシャフトパッキング位置を含むことができ、該位置は一般に、蒸気タービン10のセクションからの蒸気の漏れを最小限にするのに利用される。コンプライアントプレートシールの特定の実施形態は、これらのシャフトパッキング位置の何れかに設置することができる。例えば、3つのこのような位置は、高圧パッキング位置32、中間ケーシングパッキング位置34、及び中圧パッキング位置36を含むことができる。一般に、高圧パッキング位置32は、蒸気タービン10の高圧セクション12の高圧蒸気出口26付近に位置付けられ、高圧セクション12からの高圧蒸気漏れ量を低減することができる。同様に、中圧パッキング位置36は、蒸気タービン10の中圧セクション14の中圧蒸気出口30付近に位置付けられ、中圧セクション14からの中圧蒸気漏れ量を低減することができる。中間ケーシングパッキング位置34は、蒸気タービン10の中央セクション18付近に位置付けられ、高圧セクション12から中圧セクション14への高圧蒸気漏れ量を低減することができる。他のシャフトパッキング位置は、蒸気タービン10の低圧セクションと関連付けることができる。
【0019】
幾つかの実施形態では、コンプライアントプレートシールは、上述以外の蒸気タービン10の位置に設置してもよい。例えば、コンプライアントプレートシールは、蒸気タービン10の段間位置のバケット先端又はシャフトシール位置にて用いることができる。加えて、コンプライアントプレートシールは、パッキングリングで用いることができ、パッキングヘッド又はステータ構造において直接用いることができる。コンプライアントプレートシールは、ノズル組立体、ダイアフラム、又はシングレットもしくはブリングレット(blinglet)組立体に設置することができる。更に、コンプライアントプレートシールは、ガスタービンエンジン、ハイドロタービン、圧縮機、ポンプその他の何れかのタイプの回転機械において用いることができる。以下で検討するように、コンプライアントプレートシールの各々は、種々の開口及び/又は縁部の電解ピンチ切断によって製造される。プレートの両側から材料が電解溶解した結果として得られたプレートは、より均一で、対称性のある滑らかな切断を有する。
【0020】
蒸気タービン10のシャフトパッキング位置の1つを詳細に参照すると、図2は、一実施形態に係る電解ピンチ切断されたコンプライアントプレートシールパック50の部分斜視図である。図示の実施形態では、半径方向は軸線52で示され、軸方向は軸線54で示される。回転要素56は、軸線54の周りを矢印58の方向に回転する。ステータ60は、回転要素56を円周方向に囲み、蒸気タービン10の作動中に回転要素56に対して静止状態を保つ。ステータ60には、1以上のコンプライアントプレートシール62が取り付けられる。コンプライアントプレートシール62の一方の端部は、溶接、ボルト締めその他の好適なファスナーによって接合面64でステータ60に取り付けることができる。上記で詳細に検討したように、コンプライアントプレートシール62は、極めて薄くすることができるが、図2では明確にするために遙かに厚く示している。設置及び取り外しを容易にするために、コンプライアントプレートシール62は、約1000〜50000個のシール、2500〜25000個のシール、又は5000〜50000個のシールからなるパックで構成することができる。従って、多数の個別のコンプライアントプレートシール62ではなく、コンプライアントプレートシール62の2〜10パックなど、より少ない数のパックを設置することができる。コンプライアントプレートシール62は、半径方向軸線52から角度66でステータ60に結合され、これにより、コンプライアントプレートシール62が半径方向に動き、蒸気タービン10の作動中に回転要素56の移動に対応できるようになる。例えば、角度66は、約0〜90度、5〜75度、10〜60度、又は15〜30度の間の範囲にわたることができる。加えて、コンプライアントプレートシール62は薄いので、半径方向に撓むこともできる。更に、コンプライアントプレートシール62は、ギャップ68がコンプライアントプレートシール62の先端と回転要素56の表面との間に存在するように配列される。換言すると、作動中にコンプライアントプレートシール62の先端は、通常は回転要素56に接触しない。例えば、ギャップ68は、約50〜300μm、100〜250μm、又は150〜200μmとすることができる。
【0021】
図2の図示の実施形態では、コンプライアントプレートシール62はT字型であり、T字の垂直部分から一部分(例えば、開口又はスロット)が取り除かれている。コンプライアントプレートシール62の取り除き部分は、垂直部材70に一致し、ステータ60に結合される環状リングとして構成することができる。垂直部材70は、コンプライアントプレートシール62に軸方向54で安定性を提供することができる。還元すると、垂直部材70は、軸方向蒸気圧力に起因して軸方向54のコンプライアントプレートシール62の撓み又は曲げを低減するのを助ける。加えて、垂直部材70は、軸方向蒸気漏れに対する障壁として機能することができる。他の実施形態では、コンプライアントプレートシール62は、異なる形状及び/又は異なる構成にすることができ、ステータ60は、コンプライアントプレートシール62に安定性をもたらすために、追加の垂直部材70及び/その他の構造を有することができる。例えば、コンプライアントプレートシール62は、追加の取り除き部分を有し、追加の垂直部材70に一致することができる。
【0022】
上記のことを考慮して、図3は、コンプライアントプレートシール62その他の何れかのシール本体、シール構造、プレートタイプ構図、或いは均一な厚みの他の何れかの構造を作製するのに用いることができる電解切断システム80の一実施形態の斜視図である。電解切断システム80はまた、電解切断工具とも呼ばれる場合がある。図示の実施形態では、加工物82は、限定ではないが、ステンレス鋼その他のコバルト又はニッケルベースの合金鋼の薄板とすることができる。金属の個々のシートは、電解切断システム80に導入することができ、金属シートの連続ロールは、電解切断システム80を介して一度に1つのセグメントに展開され移動することができる。上側カソード84は、加工物82の一方側に構成され、下側カソード86は、加工物82の反対側に構成される。上側及び下側カソード84及び86は、限定ではないが、ステンレス、銅、黄銅、グラファイト、又は銅−タングステンなどの導電性材料から作ることができる。加えて、上側及び下側カソード84及び86は、加工物82から切断されることになるコンプライアントプレートシール62の所望の形状で構成することができる。図示の実施形態では、上側及び下側カソード84及び86は、電解切断プロセス中に加工物82に対して静止状態を保つことができる。しかしながら、幾つかの実施形態では、上側及び下側カソード84及び86は、以下に詳細に説明するように加工物82に近接して移動することができる。接続部90において正極88が加工物82に結合される。同様に、負極92は、接続部94にて上側カソード84に結合され、接続部96において下側カソード86に結合される。正極88及び負極92は、直流(DC)、パルスDC、又は交流(AC)を電解切断システム80に送給する電源に含めることができる。正極88及び負極92を通る電流量は、電解切断されることになる加工物82の面積の関数である。正極88及び負極92に送給される電圧電位は、約1〜75V、5〜50V、又は10〜30Vとすることができる。しかしながら、電圧及び電流は、加工物材料及び幾何形状に応じて変わることができる。
【0023】
上述の構造に加え、電解質は、経路98で示されるように上側カソード84に向かって流れ、上側カソード84と下側カソード86との間の上側ギャップ99に配向される。上側ギャップ99を通過した後、電解質は、経路102で示されるように加工物82から離れて流れる。同様に、電解質は、経路100で示されるように下側カソード86に向かって流れ、下側カソード86と加工物82との間の下側ギャップ101に配向される。続いて、電解質は、経路104で示されるように加工物82から離れて流れる。電解質の実施例は、限定ではないが、水溶性塩化ナトリウム及び水溶性硝酸ナトリウムを含む。加工物の両側で同じ電解質を用いることができ、或いは、幾つかの実施形態では、電解質は異なっていてもよい。電流が上側ギャップ99又は下側ギャップ101において電解質を通過すると、加工物82からの金属は、金属水酸化物に電界溶解され、経路102又は104により示されるように、電解質によって加工物82から洗い流される。金属が電界溶解されたときに水素の泡も生成され、この水素の泡は金属水酸化物と共に洗い流される。従って、金属は、上側カソード84及び下側カソード86の縁部付近の加工物82の上側及び下側表面から漸次的に溶解される。自明であろうが、加工物82の両側に対する電界切断(又は金属の溶解)は、切断速度を増大させ、切断の対称性及び均一性を高め、切断部に沿った望ましくない表面の凹凸を低減する。
【0024】
電界切断(又は電界溶解とも呼ばれる)中、上側カソード84と下側カソード86との間の上側及び下側ギャップ99及び101がそれぞれ維持され、上側カソード84及び下側カソード86は加工物82とは接触しない。上側カソード84又は下側カソード86と加工物82との間の接触が生じた場合、結果として生じる短絡に起因して電解切断が中断されることになる。加工物82の両側から十分な金属が電界溶解すると、加工物に開口が形成され、結果として上側カソード84と下側カソード86の形状に電解切断部が生じる。電解切断は、所望の金属量が取り除かれるまで継続し、要する時間は約20秒、10秒、又は3秒にも満たない。しかしながら、切断時間は、加工物の材料及び厚み、電源、電解質、並びに他の要因に応じて変わる可能性がある。電源が接続解除されると、電界切断が停止し、加工物82を取り出すことができる。上側カソード84及び下側カソード86の1つだけを用いて電解切断を行うことができるが、上側カソード84及び下側カソード86の両方を用いることにより、ほぼ同じ速度で加工物82の両側から金属が溶解し、以下で検討するように対照的縁部が得られる結果となる。加えて、以下でより詳細に検討するように、加工物82に対して保護層を用いて、特定部分が電解切断されるのを防ぐことができる。
【0025】
図4は、図3に示すもののような電解切断システム80の一実施形態を用いて生成されるコンプライアントプレートシール62の正面図を示す。コンプライアントプレートシール62は、軸線122の周りに対称とすることができる。他の実施形態では、コンプライアントプレートシール62は、対称的でなくてもよく、又は不規則な形状であってもよい。図示の実施形態では、コンプライアントプレートシール62の外側部分124は、電解切断プロセスにより溶解されない金属シートを含む。加えて、コンプライアントプレートシール62は、電解溶解し、従って、コンプライアントプレートシール62内に開口、孔、又はスロットのように見える内側部分126を含むことができる。内側部分126は、直線又は湾曲した側部を有して構成することができ、該内側部分126は、方形、楕円、三角形、矩形その他の規則的もしくは不規則的形状など、好適な形状で構成することができる。コンプライアントプレートシール62の上側部分128は、ステータ60への結合を可能にするよう、コンプライアントプレートシール62の残りの部分よりも幅広に及び/又は異なる形状にすることができる。コンプライアントプレートシール62の先端130は、回転要素56に向けることができ、コンプライアントプレートシール62の他の縁部全てと共にバリが存在しない。換言すると、図4に示す縁部全てはバリが存在しない。図示の実施形態では、コンプライアントプレートシール62の高さは約3cmとすることができ、幅は約2cmとすることができる。他の実施形態では、コンプライアントプレートシール62は、異なる寸法を有して異なる形状で構成することができ、及び/又は特定の用途に合わせて内側部分126を有さない場合もある。更にまた、電解切断システム80により生成される切断部は、カソード及び/又は保護層の形状に応じて直線又は曲線にすることができる。
【0026】
次に、電解切断システムの種々の構成を参照すると、図5は、電解質の平行流路を備えた電解切断システム140の一実施形態の部分斜視図である。図3に示すものと共通する要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態では、軸線141は、加工物82を通る平面に平行な向きにされ、軸線142は、加工物82を通る平面に垂直な向きにされる。電源144において正極88及び負極92を構成することができる。上側保護層146は、加工物82の上側表面の一部を覆い、下側保護層148は、加工物82の下側表面の一部を覆う。上側及び下側保護層146及び148は、限定ではないが、プラスチックその他の絶縁材料を含むことができる非導電性材料から作られ、限定ではないが、接着、クランプその他のファスナーなどの方法を用いて加工物82に固定される。上側及び下側保護層146及び148により覆われない加工物82の部分は、切り溝150と呼ばれる。切り溝150の幅152は、約15〜800μm、20〜600μm、又は25〜400μmとすることができる。上側及び下側保護層146及び148は共に非導電性であるので、加工物82の覆われた部分が電解溶解されるのを防ぐ。従って、切り溝150だけが電解溶解され、これが加工物82を通る切断部を形成する。保護層を用いることにより、上側及び下側カソード84及び86は、コンプライアントプレートシール62に対する所望のパターンのような正確な形状にする必要はない。
【0027】
加えて、図3に示す電解切断システム80と同様に、上側及び下側カソード84及び86は、加工物82の両側に面し、切り溝150に隣接する対称縁部の生成を助ける。建言すると、軸線141上の加工物の縁部の一部は、軸線141の下の加工物の縁部の一部と対称である。図5に示すように、加工物82の縁部は、丸みがあり、切り溝150に隣接した軸線141の周りに対称である。対称縁部は、金属が加工物82の両側から電解溶解されることに起因して、及び/又はほぼ同じ量の金属が各側部から電解溶解されることに起因して生じることができる。例えば、上側及び下側カソード84及び86がほぼ同じ電流量及び同じ電解質で同時に使用される場合、加工物82の両側からの金属は、ほぼ同じ速度で電解溶解することができ、その結果、軸線141の周りの切り溝150に隣接する対称縁部が得られる。或いは、上側カソード84が特定の時間長の一定の電流で使用され、下側カソード86が後でほぼ同じ時間長のほぼ同じ電流で使用される場合、切り溝150に隣接する結果として得られる縁部もまた軸線141の周りに対称とすることができる。しかしながら、両側からの同時に起こる電解切断は、切断の対称性、均一性、円滑性、及び全体品質を実質的に改善することができる。丸みのある対称縁部を備えた加工物82は、バリ無しである可能性が高い。
【0028】
電解切断システム140と図3に示す電解切断システム80との1つの相違点は、経路98及び100で示すように電解質通路を通って加工物82及び軸線141の表面に平行な方向で電解質が流れることである。更に、加工物82は、電解切断中に自重を支持するのに十分に剛性があるものとすることができる。幾つかの実施形態では、上側及び下側保護層146及び148は、加工物82を支持するのを助けるのに十分に剛性があるものとすることができる。他の実施形態では、非導電性スペーサは、上側カソード84及び上側及び下側保護層146との間のスペーサ、及び下側カソード86と下側保護層148との間のスペーサ内に配置することができる。スペーサは、電解切断プロセス中の上側カソード84及び加工物82の重量を支持するのを助けることができる。従って、スペーサは、電解質が流れる経路を維持するのを助けることができる。例えば、上側カソード84と加工物82(又は下側カソード86と加工物82)との間のスペーサは、約50〜1000μm、100〜750μm、又は200〜500μmとすることができる。電解切断プロセスが完了した後、加工物82は、上側及び下側カソード84及び86の中間から取り外すことができる。この時点で、上側及び下側保護層146及び148を加工物82から取り外すことができる。
【0029】
図6は、電気絶縁クランプを使用する電解切断システム160の一実施形態の部分斜視図を示す。上記の図に示すものと共通する要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態では、上側及び下側インシュレータ162及び164は、加工物82の両側で構成される。上側及び下側インシュレータ162及び164は非導電性であり、そのため、電界切断されない加工物82の部分を保護する。従って、図5に示すような別個の保護層は、図6の実施形態では使用されない。加えて、上側及び下側インシュレータ162及び164は、電解切断中に加工物82に対する支持を提供することができる。上側及び下側インシュレータ162及び164に使用できる材料の実施例には、限定ではないが、G−10グレードファイバーグラスその他のエンジニアリングプラスチックが含まれる。支持体166は、強度及び支持を付加するために上側及び下側インシュレータ162及び164に一体化することができる。支持体166は、限定ではないが、鋼鉄その他の材料のような材料から作ることができる。支持体166は導電性とすることができるが、負極92に結合され、上側及び下側カソード84及び86間に位置付けられないので、電解溶解されない可能性がある。従って、上側及び下側絶縁体162及び164並びに支持体166は共に、加工物82を所定位置に保持するためのクランプとして機能する。
【0030】
上側及び下側インシュレータ162及び164の利点は、これらが加工物82に固定されず、従って、電解切断後に加工物82から取り除く必要がない点である。更に、図6の電解切断システム160と図5の電解切断システム140との間の2つの相違点は、カソードの形状と電解質経路である。図6の図示の実施形態では、上側及び下側カソード84及び86が加工物82に向けられた先鋭な先端163及び165を有する。先端163及び165は、図6に示すようにテーパー、楔形、又はV字形にすることができ、又は先端163及び165は、狭い突出部又は湾曲形状とすることができる。上側及び下側カソード84及び86の先鋭先端163及び165は、上側及び下側カソード84及び86の先端163及び165により定められる狭い区域に切断が集中するので、より迅速且つより精密に電解切断を行うことが可能になる。更に、電解質は、経路98及び100で示されるように電解質経路を通って加工物82の表面にほとんど垂直に配向され、経路102及び104で示されるように電解質経路を通って加工物82の表面にほとんど垂直に流出する。従って、電解質の完全な経路は、上側及び下側カソード84及び86の周りでほぼU字形経路又はV字形経路に続く。加えて、図6の図示の実施形態では、上側及び下側カソード84及び86と、上側及び下側インシュレータ162及び164との間に生成される電解質通路は、加工物82に近接して狭くなる。このような狭い電解質通路は、加工物82の近傍で電流密度及び電解質流量を大きくすることができる。例えば、電解質流量は、約5m/s超、10m/s超、又は20m/s超とすることができる。上述の実施形態と同様に、図6の電解質切断は、対称的切断を可能にするために加工物82の両側から行われる。
【0031】
図7は、成形絶縁クランプを備えた電解切断システム180の一実施形態の部分斜視図を示す。上記の図に示すものと共通する要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態では、上側及び下側インシュレータ162及び164は、切り溝150に向かって内向きに延びる突出部182で成形される。例えば、突出部182は、平坦又は湾曲した平面の何れかを備えた加工物82の軸線141に対して角度を付けることができ、該突出部182は、加工物82に向かって好適な角度で電解質流を誘導するようになる。突出部182は更に、電解質通路を定め、切断部の幾何形状を定めるようにして、切り溝150に電解質を配向するのを助けることができる。例えば、突出部182の角度を増減し、加工物82の両側での切断部の形状を制御(例えば、曲率)することができる。加えて、突出部182は、切り溝150の縁部を更に丸みを付けて対称的であるようにすることができる。図7の電解切断システム180と図6の電解切断システム160との間の1つの相違点は、上側及び下側カソード84及び86が先鋭な先端を持たない点である。図7に示すような、上側及び下側カソード84及び86の幅広の又は非先鋭な先端は、
加工物82の大きな区域が電解溶解されることになる上側及び下側カソード84及び86間に位置するので、幅広の切り溝150を切断するときには有用とすることができる。電解切断システム180の他の態様は、上記で検討したのと同様である。
【0032】
金属クランプを備えた電解切断システム190の一実施形態の部分斜視図が図8に示される。上記の図に示すものと共通する要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態では、上側及び下側金属支持体192及び194は、加工物82を所定位置に保持するためのクランプとして使用される。上側及び下側金属支持体192及び194のそれぞれの表面上には、上側コーティング196及び下側コーティング198が設けられ、上側及び下側金属支持体192及び194が加工物82に対して電解溶解又は電気的に短絡されないようにする。上側コーティング196及び下側コーティング198は、非導電性材料から作られ、限定ではないが、ポリマー、セラミックその他の絶縁材料を含むことができる。非導電性層196及び198は、恒久的コーティングとすることができるが、層196及び198は除去可能な非導電性シート、保護層、又は加工物82から支持体192及び194を電気的に絶縁する他の実施であってもよい。上側及び下側金属支持体192及び194は、電解質の信頼性を高め、より持続性のあるものにするために、他の非金属材料よりもより強度があり、より剛直で、及び/又はより頑強とすることができる。電解切断システム190の1つの態様は、上記で検討したものと同様である。
【0033】
図9は、移動可能なカソードを備えた電解切断システム210の一実施形態の部分斜視図を示す。上記の図に示すものと共通する要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態では、上側及び下側カソード84及び86は、加工物82の付近で互いに向かって移動するように構成される。上側及び下側カソード84及び86のこの移動は、切り溝150の最初の部分が溶解した後、又は切断プロセスが開始されて直ちに実施することができる。何れの場合においても、カソード84及び86は、加工物82に向かって一定速で又は可変速で移動することができる。加えて、カソード84及び86は、同じ速度又は異なる速度で加工物82に向かって移動することができる。この移動速度は、切断速度、並びに切断特性(例えば、対称性、非対称性、角度、湾曲、その他)を制御するのに用いることができる。互いに接触すると、上側及び下側カソード84及び86は本質的に単一のカソードを形成する。続いて、切り溝150の残りの部分を電解溶解することができる。このプロセスは、上側コーティング196及び下側コーティング198付近の加工物82の一部をより迅速に溶解して、良好な近接縁部仕上げにするのを助けるために、切り溝150が幅広にされるときに用いることができる。加えて、このプロセスは、金属の電解溶解時にカソード84及び86と加工物82の表面との間に好適なギャップを維持できるように加工物82が比較的肉厚であるときに役立つことができる。上側及び下側カソード84及び86が接触する前に、電解質は、経路98及び100に沿って加工物82に向かって流れ、経路102及び104に沿って加工物82から離れるように流れる。
上側及び下側カソード84及び86が接触した後に、2つの別個の電解質通路が加工物82の両側にはもはや存在しないので、経路100及び102の方向が反転(実線矢印で示す)することにより、経路100及び102は破線で示される。代わりに、接触する上側及び下側カソード84及び86の片側に2つの電極通路が存在する。電解切断システム210の他の態様は、上記で検討したものと同様である。
【0034】
図10は、加工物に対してある角度で電解質が流れる、電解切断システムの一実施形態の断面を示す。上記の図に示すものと共通する要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態では、上側及び下側カソード84及び86は、加工物82に面する先端163及び165を除いて、絶縁構造22に配置される。上側及び下側カソード84及び86の幅224は、より小さな切り溝150を電解切断できるように、約50〜500μm、100〜400μm、又は200〜300μmとすることができる。上側及び下側カソード84及び86の狭い幅224は、より集束した電解をもたらし、高速電解切断が可能となる。加えて、上側及び下側金属支持体192及び194は、切り溝150から離れた表面を除いて、絶縁構造222内に配置される。上側及び下側金属支持体192及び194は、加工物82と正極88との間で直接接続するのではなく、正極88に接続することができる。上側及び下側金属支持体192及び194は全て電気的に導電性であり、互いに接触しているので電気的導通性が維持される。スペーサ228は、絶縁構造222と上側及び下側金属支持体192及び194との間の電解質通路の幅を維持する。加えて、スペーサ228は、絶縁された上側及び下側カソード84及び86から上側及び下側金属支持体192及び194へ圧縮力を伝達する。圧縮力は、加工物82を所定値にクランプするのを助ける。スペーサ228は、金属、プラスチックその他の絶縁材料のような、導電性又は非導電性材料から作ることができる。スペーサ228は、上側及び下側カソード84及び86又は上側及び下側金属支持体192及び194を囲む絶縁構造体222の何れかに結合することができる。加えて、電解質通路226にホースを接続し、切り溝150に電解質を供給することができる。
【0035】
図10の図示の実施形態では、電解質通路226の幅は、電解質が切り溝150に近くなるにつれて狭く又は縮小している。電解質通路226のこのような構成により、電解質流量を切り溝150に接近するにつれて増大させることが可能になる。更に、電解質通路226は、軸線141からある角度230の向きにされる。従って、通路226は、加工物82の各側部でV字形にすることができる。角度230は、特にカソード先端163及び165付近で流体通路226を通って流れる電解質の乱流低減に寄与することができる。角度230は、約0〜90度、15〜75度、30〜60度、又は40〜50度とすることができる。乱流は、電解質の渦流及び流れ剥離を引き起こし、結果として縁部の不均一化又は電解質切断の遅延をもたらす可能性がある。従って、図示の電解質通路226は、より迅速で精密な電解質切断を達成することができる。図示の実施形態では、電解質は、経路98及び100で示すように角度230にて電解質通路226に流入し、経路102及び104で示すように同じ角度230で電解質通路226から流出する。他の実施形態では、入口及び出口電解質通路230の角度は互いに異なることができる。電解切断システム220の1つの態様は、上記で検討したものと同様である。
【0036】
図11は、スクラップを伴う電解切断システム240の断面を示す。上記の図に示すものと共通する要素は、同じ参照符号で表記されている。幾つかの電解切断システム240において、金属シートの片側は、コンプライアントプレートシール62として使用され、他方の側はスクラップとして廃棄される。従って、電解切断システム240のより簡単な構造を用いて、コンプライアントプレートシール62を生成することができる。図示の実施形態では、軸線142の左側に対する金属シートの一部が加工物82である。軸線142の右側に対する金属シートの一部はスクラップ242である。電解質は、経路98及び100で示す角度230で電解質通路226に流入する。しかしながら、切り溝150においては、電解質の上側及び下側経路98及び100は、経路102及び104で示すように、転回して軸線141に平行に移動する。軸線142の左側に対する電解切断システム240の構成は、バリ無しで、加工物82の対称的切断を可能にする。切り溝150が電解溶解されると、スクらプロセス242を電解切断システム240から取り除くことができる。電解切断システム220の他の態様は、上記のものと同様である。
【0037】
本明細書では、本発明を最良の形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、本発明を当業者が実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に自明な他の例も包含する。かかる他の例は、特許請求の範囲の文言上の差のない構成要素を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と実質的な差のない均等な構成要素を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0038】
10:蒸気タービン
12:高圧セクション
14:中圧セクション
16:外側ケーシング
18:中央セクション
20:高圧蒸気入口
22:中圧蒸気入口
24:高圧タービン段
26:高圧蒸気出口
28:中圧タービン段
30:中圧蒸気出口
32:高圧パッキング位置
34:中間ケーシングパッキング位置
36:中圧パッキング位置
50:コンプライアントプレートシールパック
52:半径方向軸線
54:軸方向軸線
56:回転要素
58:回転方向矢印
60:ステータ
62:コンプライアントプレートシール
64:接合面
66:コンプライアントプレートシールの角度
68:ギャップ
70:垂直部材
80:電解切断システム
82:加工物
84:上側カソード
86:下側カソード
88:正極
90:正の接続部
92:負極
94:上側負の接続部
96:下側負の接続部
98:上側入口経路
99:上側ギャップ
100:下側入口経路
101:下側ギャップ
102:上側出口経路
104:下側出口経路
122:軸線
124:外側部分
126:内側部分
128:上側部分
130:先端
140:電解質の平行流路を備えた電解切断システム
141:加工物を通る平面に平行な軸線
142:加工物を通る平面に垂直な軸線
144:電源
146:上側保護層
148:下側保護層
150:切り溝
152:切り溝の幅
154:カソードと加工物との間のスペース
160:電気的絶縁クランプを用いる電解切断システム
162:上側インシュレータ
163:上側カソードの先鋭な先端
164:下側インシュレータ
165:下側カソードの先鋭な先端
166:支持体
180:成形絶縁クランプを備えた電解切断システム
182:突出部
190:金属クランプを備えた電解切断システム
192:上側金属支持体
194:下側金属支持体
196:上側コーティング
198:下側コーティング
210:移動可能なカソードを備えた電解切断システム
220:電解質が加工物に対してある角度で流れる電解切断システム
222:絶縁構造体
224:カソードの幅
226:電解質通路
228:スペース
230:電解質通路の角度
240:スクラップを伴う電解切断システム
242:スクラップ
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、金属切断に関し、より詳細には、電解切断に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械は、精油所、石油化学プラント、天然ガス処理プラントその他の産業で用いることができる。例えば、蒸気タービンは、加圧蒸気からの熱エネルギーを回転運動に変換することができる。蒸気の大気への漏れ又は蒸気タービンのあるセクションから別のセクションへの漏れの低減に資するために、蒸気タービン内の種々の場所にシールを配置することができる。シールの幾つかのタイプは、蒸気漏れの低減を助けるため、蒸気タービンの回転要素を中心として円周方向に配置される薄い金属プレートを含むことができる。金属プレートは、金属シールのロールその他のタイプの薄い金属から切断することができる。金属シートを切断するために複数の方法を用いることができる。特定の方法の選択は、切断速度、精度、バリの形成、並びに機械及び製造コストなど、様々な考慮事項によって決めることができる。残念なことに、既存の方法は、こうした面で1以上の欠点を有しており、過剰なバリ及び/又は非対称縁部を生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7419164号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明の幾つかの実施形態について要約する。これらの実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲を限定するものではなく、本発明の可能な形態を簡単にまとめたものである。実際、本発明は、以下に記載する実施形態と同様のものだけでなく、異なる様々な実施形態を包含する。
【0005】
第1の実施形態では、システムは、電解切断工具を含む。該電解切断工具は、加工物の第1の側部から離れた第1のギャップに位置するように構成される第1のカソードと、加工物の第2の側部から離れた第2のギャップに位置するように構成され、第1のカソードと互いに反対側に位置する第2のカソードとを備える。第1及び第2のカソードは、互いに反対側に位置する。電解切断工具はまた、第1のカソードと加工物との間の第1のギャップを通って第1の電解質を流すように構成された第1の電解質通路と、第2のカソードと加工物との間の第2のギャップを通って第2の電解質を流すように構成された第2の電解質通路と、第1のギャップ及び第2のギャップを通って電流を流し、第1の側部及び第2の側部の両方から加工物を通して電解溶解させるように構成された電源とを含む。
【0006】
第2の実施形態では、方法は、第1のカソードと加工物の第1の側部との間の第1のギャップにわたる第1の電解質通路を通って第1の電解質を流す段階と、第2のカソードと加工物の第2の側部との間の第2のギャップを通って第2の電解質を流す段階とを含む。第1及び第2のカソードは、互いに反対側に位置する。本方法はまた、第1のギャップ及び第2のギャップを通って電流を流し、第1及び第2の側部の両方から加工物を通して電解溶解させる段階を含む。
【0007】
第3の実施形態では、システムは、回転機械と、該回転機械において円周方向配列で配置された複数のコンプライアントプレートシールとを含む。各コンプライアントプレートシールは、金属シートを通る中心平面に対して対称的な電解質ピンチ切断部を有する金属シートを含む。
【0008】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点については、図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができるであろう。図面を通して、同様の部材には同様の符号を付した。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に係るコンプライアントプレートシールを備えた蒸気タービンの側断面図。
【図2】一実施形態に係るコンプライアントプレートシールの部分斜視図。
【図3】一実施形態に係る電解切断システムの斜視図。
【図4】一実施形態に係る電解切断システムによって生成されるコンプライアントプレートシール部材の正面図。
【図5】電解質が加工物に平行に流れる電解切断システムの一実施形態の切り欠き斜視図。
【図6】加工物が絶縁クランプにより保持される電解切断システムの一実施形態の切り欠き斜視図。
【図7】絶縁クランプが加工物の所望の縁部を得るように成形される電解切断システムの一実施形態の切り欠き斜視図。
【図8】加工物が中間絶縁層を有する金属クランプにより保持される電解切断システムの一実施形態の切り欠き斜視図。
【図9】加工物の所望の縁部を得るためにカソードが移動可能な電解切断システムの一実施形態の切り欠き斜視図。
【図10】電解質がある角度で加工物に配向される電解切断システムの一実施形態の断面図。
【図11】切断後に加工物の一部がスクらプロセスとして取り除かれる電解切断システムの一実施形態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の1以上の特定の実施形態について説明する。これらの実施形態を簡潔に説明するため、現実の実施に際してのあらゆる特徴について本明細書に記載しないこともある。実施化に向けての開発に際して、あらゆるエンジニアリング又は設計プロジェクトの場合と同様に、実施毎に異なる開発者の特定の目標(システム及び業務に関連した制約に従うことなど)を達成すべく、実施に特有の多くの決定を行う必要があることは明らかであろう。さらに、かかる開発努力は複雑で時間を要することもあるが、本明細書の開示内容に接した当業者にとっては日常的な設計、組立及び製造にすぎないことも明らかである。
【0011】
本発明の様々な実施形態の構成要素について紹介する際、単数形で記載したものは、その構成要素が1以上存在することを意味する。「含む」、「備える」及び「有する」という用語は内包的なものであり、記載した構成要素以外の追加の要素が存在していてもよいことを意味する。
【0012】
以下で検討するように、開示される実施形態は、種々の加工物、プレート、ほぼ平坦な構造体、ほぼ湾曲した構造体、又は均一な厚みの他の何れかの構造体など、種々の加工物を電解ピンチ切断するシステム及び方法を提供する。詳細には、電解ピンチ切断技法は、電解質の流れを加工物の両側に加え、これにより加工物を両側から溶解させて、該加工物をより対称的に、均一に、及び滑らかに切り通すようにする。コンプライアントプレートシールは、開示される実施形態により電解ピンチ切断することができる加工物の1つの実施例である。コンプライアントプレートシールは、圧縮機、タービン、又はポンプなどの回転機械の回転部材と静止要素との間の軸方向の漏れを阻止するように構成することができる。各コンプライアントプレートシールは、リーフとも呼ばれ、単一の金属シートとすることができ、多数のコンプライアントプレートシールを回転要素の周りで円周状に積み重ねることができる。コンプライアントプレートシールの群は、設置及び取り外しを容易にするためにパック状態で配置することができる。コンプライアントプレートシールは、回転要素に対して軸方向に漏れする可能性がある流体(例えば、ガス又は液体)に対する障壁を形成するのを助ける。加えて、コンプライアントプレートシールは、半径方向で移動及び/又は撓むことができ、従って、回転要素が移動している間の漏れの低減を助けることができる。
【0013】
幾つかの実施形態では、コンプライアントプレートシールのパックは、1000個のシール、5000個のシール、又は更に10000個のシールを含むことができる。各コンプライアントプレートシールの厚みは、約2.5〜2500μm、10〜1500μm、又は25〜250μmとすることができる。しかしながら、コンプライアントプレートシールの数、幾何形状、及び構成は、適用毎に変わる可能性がある。コンプライアントプレートシールは、回転機械内に特定の幾何形状を収容するために様々な形状に切断することができる。加えて、ある切断プロセスに起因して浮き出した縁部又は付着して残る金属の小要素であるバリが存在しないコンプライアントプレートシールの縁部を切断プロセスが生成することが望ましいとすることができる。バリ無し縁部は、回転要素への可能性のある損傷を阻止するのを助け、回転機械へのデブリの導入を低減し、及び/又は積み重なったコンプライアントプレートシールの整然と並んだ可撓性のパックを生成するのを助けることができる。次に、デバリングと呼ばれる処理により、バリを除去することができるが、これは、コンプライアントプレートシールの製造において追加のステップ及びコストを導入することになる。
【0014】
現在開示されている実施形態は、パンチング、レーザ切断、水ジェット切断、及びフォトエッチングなど、他の切断方法の欠点を避けるために、電解ピンチ切断又は単なる電解切断を利用して金属シートを切断している。例えば、電解切断は、パンチング及びレーザ切断とは異なり、バリの無い縁部をもたらす。加えて、電解切断は、水ジェット切断及びフォトエッチングよりも迅速とすることができる。更に、電解切断は、パンチングのように工具摩耗が無く精密で繰り返し可能な切断を提供することができる。更にまた、電解切断は、レーザ切断又はフォトエッチングよりも安価とすることができる。最後に、電解質は加工物の両側に加えられるので、電解切断は、加工物の片側から切断する方法が実施することができない対称的で均一な切断を提供することができる。電解切断は、コンプライアントプレートシール用に金属シートを切断するのに理想的に適している。
【0015】
図1は、一実施形態に係る電解ピンチ切断で製造されるコンプライアントプレートシールを備えた蒸気タービン10の側断面図である。蒸気タービンは、高圧セクション12及び中圧セクション14を含む。蒸気タービンはまた、外側ケーシング16を含む。外側ケーシングの中央セクション18は、高圧蒸気入口20を含むことができ、ここを通る高圧蒸気を蒸気タービン10の高圧セクション12が受け取ることができる。同様に、外側ケーシングの中央セクション18は、中圧蒸気入口22を含むことができ、ここを通る中圧蒸気を蒸気タービン10の中圧セクション14が受け取ることができる。
【0016】
作動中、高圧蒸気入口20は、高圧タービン段24を通して高圧蒸気を受け取り且つ配送して、ブレードを駆動し、蒸気タービン10の共通回転シャフトの回転を引き起こす。高圧蒸気は、高圧蒸気出口26を介して蒸気タービン10の高圧セクション12から流出する。流出する高圧蒸気は、蒸気タービン10の中圧セクション14で用いることができる。
【0017】
中圧蒸気入口22は、中圧タービン段28を通して中圧蒸気を受け取り且つ配送して、ブレードを駆動し、蒸気タービン10の共通シャフトの回転を引き起こす。中圧蒸気は、中圧蒸気出口30を介して蒸気タービン10の中圧セクション14から流出する。流出する中圧蒸気は、蒸気タービン10の低圧セクションに配向することができる。
【0018】
蒸気タービン10は、複数のシャフトパッキング位置を含むことができ、該位置は一般に、蒸気タービン10のセクションからの蒸気の漏れを最小限にするのに利用される。コンプライアントプレートシールの特定の実施形態は、これらのシャフトパッキング位置の何れかに設置することができる。例えば、3つのこのような位置は、高圧パッキング位置32、中間ケーシングパッキング位置34、及び中圧パッキング位置36を含むことができる。一般に、高圧パッキング位置32は、蒸気タービン10の高圧セクション12の高圧蒸気出口26付近に位置付けられ、高圧セクション12からの高圧蒸気漏れ量を低減することができる。同様に、中圧パッキング位置36は、蒸気タービン10の中圧セクション14の中圧蒸気出口30付近に位置付けられ、中圧セクション14からの中圧蒸気漏れ量を低減することができる。中間ケーシングパッキング位置34は、蒸気タービン10の中央セクション18付近に位置付けられ、高圧セクション12から中圧セクション14への高圧蒸気漏れ量を低減することができる。他のシャフトパッキング位置は、蒸気タービン10の低圧セクションと関連付けることができる。
【0019】
幾つかの実施形態では、コンプライアントプレートシールは、上述以外の蒸気タービン10の位置に設置してもよい。例えば、コンプライアントプレートシールは、蒸気タービン10の段間位置のバケット先端又はシャフトシール位置にて用いることができる。加えて、コンプライアントプレートシールは、パッキングリングで用いることができ、パッキングヘッド又はステータ構造において直接用いることができる。コンプライアントプレートシールは、ノズル組立体、ダイアフラム、又はシングレットもしくはブリングレット(blinglet)組立体に設置することができる。更に、コンプライアントプレートシールは、ガスタービンエンジン、ハイドロタービン、圧縮機、ポンプその他の何れかのタイプの回転機械において用いることができる。以下で検討するように、コンプライアントプレートシールの各々は、種々の開口及び/又は縁部の電解ピンチ切断によって製造される。プレートの両側から材料が電解溶解した結果として得られたプレートは、より均一で、対称性のある滑らかな切断を有する。
【0020】
蒸気タービン10のシャフトパッキング位置の1つを詳細に参照すると、図2は、一実施形態に係る電解ピンチ切断されたコンプライアントプレートシールパック50の部分斜視図である。図示の実施形態では、半径方向は軸線52で示され、軸方向は軸線54で示される。回転要素56は、軸線54の周りを矢印58の方向に回転する。ステータ60は、回転要素56を円周方向に囲み、蒸気タービン10の作動中に回転要素56に対して静止状態を保つ。ステータ60には、1以上のコンプライアントプレートシール62が取り付けられる。コンプライアントプレートシール62の一方の端部は、溶接、ボルト締めその他の好適なファスナーによって接合面64でステータ60に取り付けることができる。上記で詳細に検討したように、コンプライアントプレートシール62は、極めて薄くすることができるが、図2では明確にするために遙かに厚く示している。設置及び取り外しを容易にするために、コンプライアントプレートシール62は、約1000〜50000個のシール、2500〜25000個のシール、又は5000〜50000個のシールからなるパックで構成することができる。従って、多数の個別のコンプライアントプレートシール62ではなく、コンプライアントプレートシール62の2〜10パックなど、より少ない数のパックを設置することができる。コンプライアントプレートシール62は、半径方向軸線52から角度66でステータ60に結合され、これにより、コンプライアントプレートシール62が半径方向に動き、蒸気タービン10の作動中に回転要素56の移動に対応できるようになる。例えば、角度66は、約0〜90度、5〜75度、10〜60度、又は15〜30度の間の範囲にわたることができる。加えて、コンプライアントプレートシール62は薄いので、半径方向に撓むこともできる。更に、コンプライアントプレートシール62は、ギャップ68がコンプライアントプレートシール62の先端と回転要素56の表面との間に存在するように配列される。換言すると、作動中にコンプライアントプレートシール62の先端は、通常は回転要素56に接触しない。例えば、ギャップ68は、約50〜300μm、100〜250μm、又は150〜200μmとすることができる。
【0021】
図2の図示の実施形態では、コンプライアントプレートシール62はT字型であり、T字の垂直部分から一部分(例えば、開口又はスロット)が取り除かれている。コンプライアントプレートシール62の取り除き部分は、垂直部材70に一致し、ステータ60に結合される環状リングとして構成することができる。垂直部材70は、コンプライアントプレートシール62に軸方向54で安定性を提供することができる。還元すると、垂直部材70は、軸方向蒸気圧力に起因して軸方向54のコンプライアントプレートシール62の撓み又は曲げを低減するのを助ける。加えて、垂直部材70は、軸方向蒸気漏れに対する障壁として機能することができる。他の実施形態では、コンプライアントプレートシール62は、異なる形状及び/又は異なる構成にすることができ、ステータ60は、コンプライアントプレートシール62に安定性をもたらすために、追加の垂直部材70及び/その他の構造を有することができる。例えば、コンプライアントプレートシール62は、追加の取り除き部分を有し、追加の垂直部材70に一致することができる。
【0022】
上記のことを考慮して、図3は、コンプライアントプレートシール62その他の何れかのシール本体、シール構造、プレートタイプ構図、或いは均一な厚みの他の何れかの構造を作製するのに用いることができる電解切断システム80の一実施形態の斜視図である。電解切断システム80はまた、電解切断工具とも呼ばれる場合がある。図示の実施形態では、加工物82は、限定ではないが、ステンレス鋼その他のコバルト又はニッケルベースの合金鋼の薄板とすることができる。金属の個々のシートは、電解切断システム80に導入することができ、金属シートの連続ロールは、電解切断システム80を介して一度に1つのセグメントに展開され移動することができる。上側カソード84は、加工物82の一方側に構成され、下側カソード86は、加工物82の反対側に構成される。上側及び下側カソード84及び86は、限定ではないが、ステンレス、銅、黄銅、グラファイト、又は銅−タングステンなどの導電性材料から作ることができる。加えて、上側及び下側カソード84及び86は、加工物82から切断されることになるコンプライアントプレートシール62の所望の形状で構成することができる。図示の実施形態では、上側及び下側カソード84及び86は、電解切断プロセス中に加工物82に対して静止状態を保つことができる。しかしながら、幾つかの実施形態では、上側及び下側カソード84及び86は、以下に詳細に説明するように加工物82に近接して移動することができる。接続部90において正極88が加工物82に結合される。同様に、負極92は、接続部94にて上側カソード84に結合され、接続部96において下側カソード86に結合される。正極88及び負極92は、直流(DC)、パルスDC、又は交流(AC)を電解切断システム80に送給する電源に含めることができる。正極88及び負極92を通る電流量は、電解切断されることになる加工物82の面積の関数である。正極88及び負極92に送給される電圧電位は、約1〜75V、5〜50V、又は10〜30Vとすることができる。しかしながら、電圧及び電流は、加工物材料及び幾何形状に応じて変わることができる。
【0023】
上述の構造に加え、電解質は、経路98で示されるように上側カソード84に向かって流れ、上側カソード84と下側カソード86との間の上側ギャップ99に配向される。上側ギャップ99を通過した後、電解質は、経路102で示されるように加工物82から離れて流れる。同様に、電解質は、経路100で示されるように下側カソード86に向かって流れ、下側カソード86と加工物82との間の下側ギャップ101に配向される。続いて、電解質は、経路104で示されるように加工物82から離れて流れる。電解質の実施例は、限定ではないが、水溶性塩化ナトリウム及び水溶性硝酸ナトリウムを含む。加工物の両側で同じ電解質を用いることができ、或いは、幾つかの実施形態では、電解質は異なっていてもよい。電流が上側ギャップ99又は下側ギャップ101において電解質を通過すると、加工物82からの金属は、金属水酸化物に電界溶解され、経路102又は104により示されるように、電解質によって加工物82から洗い流される。金属が電界溶解されたときに水素の泡も生成され、この水素の泡は金属水酸化物と共に洗い流される。従って、金属は、上側カソード84及び下側カソード86の縁部付近の加工物82の上側及び下側表面から漸次的に溶解される。自明であろうが、加工物82の両側に対する電界切断(又は金属の溶解)は、切断速度を増大させ、切断の対称性及び均一性を高め、切断部に沿った望ましくない表面の凹凸を低減する。
【0024】
電界切断(又は電界溶解とも呼ばれる)中、上側カソード84と下側カソード86との間の上側及び下側ギャップ99及び101がそれぞれ維持され、上側カソード84及び下側カソード86は加工物82とは接触しない。上側カソード84又は下側カソード86と加工物82との間の接触が生じた場合、結果として生じる短絡に起因して電解切断が中断されることになる。加工物82の両側から十分な金属が電界溶解すると、加工物に開口が形成され、結果として上側カソード84と下側カソード86の形状に電解切断部が生じる。電解切断は、所望の金属量が取り除かれるまで継続し、要する時間は約20秒、10秒、又は3秒にも満たない。しかしながら、切断時間は、加工物の材料及び厚み、電源、電解質、並びに他の要因に応じて変わる可能性がある。電源が接続解除されると、電界切断が停止し、加工物82を取り出すことができる。上側カソード84及び下側カソード86の1つだけを用いて電解切断を行うことができるが、上側カソード84及び下側カソード86の両方を用いることにより、ほぼ同じ速度で加工物82の両側から金属が溶解し、以下で検討するように対照的縁部が得られる結果となる。加えて、以下でより詳細に検討するように、加工物82に対して保護層を用いて、特定部分が電解切断されるのを防ぐことができる。
【0025】
図4は、図3に示すもののような電解切断システム80の一実施形態を用いて生成されるコンプライアントプレートシール62の正面図を示す。コンプライアントプレートシール62は、軸線122の周りに対称とすることができる。他の実施形態では、コンプライアントプレートシール62は、対称的でなくてもよく、又は不規則な形状であってもよい。図示の実施形態では、コンプライアントプレートシール62の外側部分124は、電解切断プロセスにより溶解されない金属シートを含む。加えて、コンプライアントプレートシール62は、電解溶解し、従って、コンプライアントプレートシール62内に開口、孔、又はスロットのように見える内側部分126を含むことができる。内側部分126は、直線又は湾曲した側部を有して構成することができ、該内側部分126は、方形、楕円、三角形、矩形その他の規則的もしくは不規則的形状など、好適な形状で構成することができる。コンプライアントプレートシール62の上側部分128は、ステータ60への結合を可能にするよう、コンプライアントプレートシール62の残りの部分よりも幅広に及び/又は異なる形状にすることができる。コンプライアントプレートシール62の先端130は、回転要素56に向けることができ、コンプライアントプレートシール62の他の縁部全てと共にバリが存在しない。換言すると、図4に示す縁部全てはバリが存在しない。図示の実施形態では、コンプライアントプレートシール62の高さは約3cmとすることができ、幅は約2cmとすることができる。他の実施形態では、コンプライアントプレートシール62は、異なる寸法を有して異なる形状で構成することができ、及び/又は特定の用途に合わせて内側部分126を有さない場合もある。更にまた、電解切断システム80により生成される切断部は、カソード及び/又は保護層の形状に応じて直線又は曲線にすることができる。
【0026】
次に、電解切断システムの種々の構成を参照すると、図5は、電解質の平行流路を備えた電解切断システム140の一実施形態の部分斜視図である。図3に示すものと共通する要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態では、軸線141は、加工物82を通る平面に平行な向きにされ、軸線142は、加工物82を通る平面に垂直な向きにされる。電源144において正極88及び負極92を構成することができる。上側保護層146は、加工物82の上側表面の一部を覆い、下側保護層148は、加工物82の下側表面の一部を覆う。上側及び下側保護層146及び148は、限定ではないが、プラスチックその他の絶縁材料を含むことができる非導電性材料から作られ、限定ではないが、接着、クランプその他のファスナーなどの方法を用いて加工物82に固定される。上側及び下側保護層146及び148により覆われない加工物82の部分は、切り溝150と呼ばれる。切り溝150の幅152は、約15〜800μm、20〜600μm、又は25〜400μmとすることができる。上側及び下側保護層146及び148は共に非導電性であるので、加工物82の覆われた部分が電解溶解されるのを防ぐ。従って、切り溝150だけが電解溶解され、これが加工物82を通る切断部を形成する。保護層を用いることにより、上側及び下側カソード84及び86は、コンプライアントプレートシール62に対する所望のパターンのような正確な形状にする必要はない。
【0027】
加えて、図3に示す電解切断システム80と同様に、上側及び下側カソード84及び86は、加工物82の両側に面し、切り溝150に隣接する対称縁部の生成を助ける。建言すると、軸線141上の加工物の縁部の一部は、軸線141の下の加工物の縁部の一部と対称である。図5に示すように、加工物82の縁部は、丸みがあり、切り溝150に隣接した軸線141の周りに対称である。対称縁部は、金属が加工物82の両側から電解溶解されることに起因して、及び/又はほぼ同じ量の金属が各側部から電解溶解されることに起因して生じることができる。例えば、上側及び下側カソード84及び86がほぼ同じ電流量及び同じ電解質で同時に使用される場合、加工物82の両側からの金属は、ほぼ同じ速度で電解溶解することができ、その結果、軸線141の周りの切り溝150に隣接する対称縁部が得られる。或いは、上側カソード84が特定の時間長の一定の電流で使用され、下側カソード86が後でほぼ同じ時間長のほぼ同じ電流で使用される場合、切り溝150に隣接する結果として得られる縁部もまた軸線141の周りに対称とすることができる。しかしながら、両側からの同時に起こる電解切断は、切断の対称性、均一性、円滑性、及び全体品質を実質的に改善することができる。丸みのある対称縁部を備えた加工物82は、バリ無しである可能性が高い。
【0028】
電解切断システム140と図3に示す電解切断システム80との1つの相違点は、経路98及び100で示すように電解質通路を通って加工物82及び軸線141の表面に平行な方向で電解質が流れることである。更に、加工物82は、電解切断中に自重を支持するのに十分に剛性があるものとすることができる。幾つかの実施形態では、上側及び下側保護層146及び148は、加工物82を支持するのを助けるのに十分に剛性があるものとすることができる。他の実施形態では、非導電性スペーサは、上側カソード84及び上側及び下側保護層146との間のスペーサ、及び下側カソード86と下側保護層148との間のスペーサ内に配置することができる。スペーサは、電解切断プロセス中の上側カソード84及び加工物82の重量を支持するのを助けることができる。従って、スペーサは、電解質が流れる経路を維持するのを助けることができる。例えば、上側カソード84と加工物82(又は下側カソード86と加工物82)との間のスペーサは、約50〜1000μm、100〜750μm、又は200〜500μmとすることができる。電解切断プロセスが完了した後、加工物82は、上側及び下側カソード84及び86の中間から取り外すことができる。この時点で、上側及び下側保護層146及び148を加工物82から取り外すことができる。
【0029】
図6は、電気絶縁クランプを使用する電解切断システム160の一実施形態の部分斜視図を示す。上記の図に示すものと共通する要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態では、上側及び下側インシュレータ162及び164は、加工物82の両側で構成される。上側及び下側インシュレータ162及び164は非導電性であり、そのため、電界切断されない加工物82の部分を保護する。従って、図5に示すような別個の保護層は、図6の実施形態では使用されない。加えて、上側及び下側インシュレータ162及び164は、電解切断中に加工物82に対する支持を提供することができる。上側及び下側インシュレータ162及び164に使用できる材料の実施例には、限定ではないが、G−10グレードファイバーグラスその他のエンジニアリングプラスチックが含まれる。支持体166は、強度及び支持を付加するために上側及び下側インシュレータ162及び164に一体化することができる。支持体166は、限定ではないが、鋼鉄その他の材料のような材料から作ることができる。支持体166は導電性とすることができるが、負極92に結合され、上側及び下側カソード84及び86間に位置付けられないので、電解溶解されない可能性がある。従って、上側及び下側絶縁体162及び164並びに支持体166は共に、加工物82を所定位置に保持するためのクランプとして機能する。
【0030】
上側及び下側インシュレータ162及び164の利点は、これらが加工物82に固定されず、従って、電解切断後に加工物82から取り除く必要がない点である。更に、図6の電解切断システム160と図5の電解切断システム140との間の2つの相違点は、カソードの形状と電解質経路である。図6の図示の実施形態では、上側及び下側カソード84及び86が加工物82に向けられた先鋭な先端163及び165を有する。先端163及び165は、図6に示すようにテーパー、楔形、又はV字形にすることができ、又は先端163及び165は、狭い突出部又は湾曲形状とすることができる。上側及び下側カソード84及び86の先鋭先端163及び165は、上側及び下側カソード84及び86の先端163及び165により定められる狭い区域に切断が集中するので、より迅速且つより精密に電解切断を行うことが可能になる。更に、電解質は、経路98及び100で示されるように電解質経路を通って加工物82の表面にほとんど垂直に配向され、経路102及び104で示されるように電解質経路を通って加工物82の表面にほとんど垂直に流出する。従って、電解質の完全な経路は、上側及び下側カソード84及び86の周りでほぼU字形経路又はV字形経路に続く。加えて、図6の図示の実施形態では、上側及び下側カソード84及び86と、上側及び下側インシュレータ162及び164との間に生成される電解質通路は、加工物82に近接して狭くなる。このような狭い電解質通路は、加工物82の近傍で電流密度及び電解質流量を大きくすることができる。例えば、電解質流量は、約5m/s超、10m/s超、又は20m/s超とすることができる。上述の実施形態と同様に、図6の電解質切断は、対称的切断を可能にするために加工物82の両側から行われる。
【0031】
図7は、成形絶縁クランプを備えた電解切断システム180の一実施形態の部分斜視図を示す。上記の図に示すものと共通する要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態では、上側及び下側インシュレータ162及び164は、切り溝150に向かって内向きに延びる突出部182で成形される。例えば、突出部182は、平坦又は湾曲した平面の何れかを備えた加工物82の軸線141に対して角度を付けることができ、該突出部182は、加工物82に向かって好適な角度で電解質流を誘導するようになる。突出部182は更に、電解質通路を定め、切断部の幾何形状を定めるようにして、切り溝150に電解質を配向するのを助けることができる。例えば、突出部182の角度を増減し、加工物82の両側での切断部の形状を制御(例えば、曲率)することができる。加えて、突出部182は、切り溝150の縁部を更に丸みを付けて対称的であるようにすることができる。図7の電解切断システム180と図6の電解切断システム160との間の1つの相違点は、上側及び下側カソード84及び86が先鋭な先端を持たない点である。図7に示すような、上側及び下側カソード84及び86の幅広の又は非先鋭な先端は、
加工物82の大きな区域が電解溶解されることになる上側及び下側カソード84及び86間に位置するので、幅広の切り溝150を切断するときには有用とすることができる。電解切断システム180の他の態様は、上記で検討したのと同様である。
【0032】
金属クランプを備えた電解切断システム190の一実施形態の部分斜視図が図8に示される。上記の図に示すものと共通する要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態では、上側及び下側金属支持体192及び194は、加工物82を所定位置に保持するためのクランプとして使用される。上側及び下側金属支持体192及び194のそれぞれの表面上には、上側コーティング196及び下側コーティング198が設けられ、上側及び下側金属支持体192及び194が加工物82に対して電解溶解又は電気的に短絡されないようにする。上側コーティング196及び下側コーティング198は、非導電性材料から作られ、限定ではないが、ポリマー、セラミックその他の絶縁材料を含むことができる。非導電性層196及び198は、恒久的コーティングとすることができるが、層196及び198は除去可能な非導電性シート、保護層、又は加工物82から支持体192及び194を電気的に絶縁する他の実施であってもよい。上側及び下側金属支持体192及び194は、電解質の信頼性を高め、より持続性のあるものにするために、他の非金属材料よりもより強度があり、より剛直で、及び/又はより頑強とすることができる。電解切断システム190の1つの態様は、上記で検討したものと同様である。
【0033】
図9は、移動可能なカソードを備えた電解切断システム210の一実施形態の部分斜視図を示す。上記の図に示すものと共通する要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態では、上側及び下側カソード84及び86は、加工物82の付近で互いに向かって移動するように構成される。上側及び下側カソード84及び86のこの移動は、切り溝150の最初の部分が溶解した後、又は切断プロセスが開始されて直ちに実施することができる。何れの場合においても、カソード84及び86は、加工物82に向かって一定速で又は可変速で移動することができる。加えて、カソード84及び86は、同じ速度又は異なる速度で加工物82に向かって移動することができる。この移動速度は、切断速度、並びに切断特性(例えば、対称性、非対称性、角度、湾曲、その他)を制御するのに用いることができる。互いに接触すると、上側及び下側カソード84及び86は本質的に単一のカソードを形成する。続いて、切り溝150の残りの部分を電解溶解することができる。このプロセスは、上側コーティング196及び下側コーティング198付近の加工物82の一部をより迅速に溶解して、良好な近接縁部仕上げにするのを助けるために、切り溝150が幅広にされるときに用いることができる。加えて、このプロセスは、金属の電解溶解時にカソード84及び86と加工物82の表面との間に好適なギャップを維持できるように加工物82が比較的肉厚であるときに役立つことができる。上側及び下側カソード84及び86が接触する前に、電解質は、経路98及び100に沿って加工物82に向かって流れ、経路102及び104に沿って加工物82から離れるように流れる。
上側及び下側カソード84及び86が接触した後に、2つの別個の電解質通路が加工物82の両側にはもはや存在しないので、経路100及び102の方向が反転(実線矢印で示す)することにより、経路100及び102は破線で示される。代わりに、接触する上側及び下側カソード84及び86の片側に2つの電極通路が存在する。電解切断システム210の他の態様は、上記で検討したものと同様である。
【0034】
図10は、加工物に対してある角度で電解質が流れる、電解切断システムの一実施形態の断面を示す。上記の図に示すものと共通する要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態では、上側及び下側カソード84及び86は、加工物82に面する先端163及び165を除いて、絶縁構造22に配置される。上側及び下側カソード84及び86の幅224は、より小さな切り溝150を電解切断できるように、約50〜500μm、100〜400μm、又は200〜300μmとすることができる。上側及び下側カソード84及び86の狭い幅224は、より集束した電解をもたらし、高速電解切断が可能となる。加えて、上側及び下側金属支持体192及び194は、切り溝150から離れた表面を除いて、絶縁構造222内に配置される。上側及び下側金属支持体192及び194は、加工物82と正極88との間で直接接続するのではなく、正極88に接続することができる。上側及び下側金属支持体192及び194は全て電気的に導電性であり、互いに接触しているので電気的導通性が維持される。スペーサ228は、絶縁構造222と上側及び下側金属支持体192及び194との間の電解質通路の幅を維持する。加えて、スペーサ228は、絶縁された上側及び下側カソード84及び86から上側及び下側金属支持体192及び194へ圧縮力を伝達する。圧縮力は、加工物82を所定値にクランプするのを助ける。スペーサ228は、金属、プラスチックその他の絶縁材料のような、導電性又は非導電性材料から作ることができる。スペーサ228は、上側及び下側カソード84及び86又は上側及び下側金属支持体192及び194を囲む絶縁構造体222の何れかに結合することができる。加えて、電解質通路226にホースを接続し、切り溝150に電解質を供給することができる。
【0035】
図10の図示の実施形態では、電解質通路226の幅は、電解質が切り溝150に近くなるにつれて狭く又は縮小している。電解質通路226のこのような構成により、電解質流量を切り溝150に接近するにつれて増大させることが可能になる。更に、電解質通路226は、軸線141からある角度230の向きにされる。従って、通路226は、加工物82の各側部でV字形にすることができる。角度230は、特にカソード先端163及び165付近で流体通路226を通って流れる電解質の乱流低減に寄与することができる。角度230は、約0〜90度、15〜75度、30〜60度、又は40〜50度とすることができる。乱流は、電解質の渦流及び流れ剥離を引き起こし、結果として縁部の不均一化又は電解質切断の遅延をもたらす可能性がある。従って、図示の電解質通路226は、より迅速で精密な電解質切断を達成することができる。図示の実施形態では、電解質は、経路98及び100で示すように角度230にて電解質通路226に流入し、経路102及び104で示すように同じ角度230で電解質通路226から流出する。他の実施形態では、入口及び出口電解質通路230の角度は互いに異なることができる。電解切断システム220の1つの態様は、上記で検討したものと同様である。
【0036】
図11は、スクラップを伴う電解切断システム240の断面を示す。上記の図に示すものと共通する要素は、同じ参照符号で表記されている。幾つかの電解切断システム240において、金属シートの片側は、コンプライアントプレートシール62として使用され、他方の側はスクラップとして廃棄される。従って、電解切断システム240のより簡単な構造を用いて、コンプライアントプレートシール62を生成することができる。図示の実施形態では、軸線142の左側に対する金属シートの一部が加工物82である。軸線142の右側に対する金属シートの一部はスクラップ242である。電解質は、経路98及び100で示す角度230で電解質通路226に流入する。しかしながら、切り溝150においては、電解質の上側及び下側経路98及び100は、経路102及び104で示すように、転回して軸線141に平行に移動する。軸線142の左側に対する電解切断システム240の構成は、バリ無しで、加工物82の対称的切断を可能にする。切り溝150が電解溶解されると、スクらプロセス242を電解切断システム240から取り除くことができる。電解切断システム220の他の態様は、上記のものと同様である。
【0037】
本明細書では、本発明を最良の形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、本発明を当業者が実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に自明な他の例も包含する。かかる他の例は、特許請求の範囲の文言上の差のない構成要素を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と実質的な差のない均等な構成要素を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0038】
10:蒸気タービン
12:高圧セクション
14:中圧セクション
16:外側ケーシング
18:中央セクション
20:高圧蒸気入口
22:中圧蒸気入口
24:高圧タービン段
26:高圧蒸気出口
28:中圧タービン段
30:中圧蒸気出口
32:高圧パッキング位置
34:中間ケーシングパッキング位置
36:中圧パッキング位置
50:コンプライアントプレートシールパック
52:半径方向軸線
54:軸方向軸線
56:回転要素
58:回転方向矢印
60:ステータ
62:コンプライアントプレートシール
64:接合面
66:コンプライアントプレートシールの角度
68:ギャップ
70:垂直部材
80:電解切断システム
82:加工物
84:上側カソード
86:下側カソード
88:正極
90:正の接続部
92:負極
94:上側負の接続部
96:下側負の接続部
98:上側入口経路
99:上側ギャップ
100:下側入口経路
101:下側ギャップ
102:上側出口経路
104:下側出口経路
122:軸線
124:外側部分
126:内側部分
128:上側部分
130:先端
140:電解質の平行流路を備えた電解切断システム
141:加工物を通る平面に平行な軸線
142:加工物を通る平面に垂直な軸線
144:電源
146:上側保護層
148:下側保護層
150:切り溝
152:切り溝の幅
154:カソードと加工物との間のスペース
160:電気的絶縁クランプを用いる電解切断システム
162:上側インシュレータ
163:上側カソードの先鋭な先端
164:下側インシュレータ
165:下側カソードの先鋭な先端
166:支持体
180:成形絶縁クランプを備えた電解切断システム
182:突出部
190:金属クランプを備えた電解切断システム
192:上側金属支持体
194:下側金属支持体
196:上側コーティング
198:下側コーティング
210:移動可能なカソードを備えた電解切断システム
220:電解質が加工物に対してある角度で流れる電解切断システム
222:絶縁構造体
224:カソードの幅
226:電解質通路
228:スペース
230:電解質通路の角度
240:スクラップを伴う電解切断システム
242:スクラップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解切断工具(80)を備えるシステムであって、上記電解切断工具(80)が、
加工物(82)の第1の側部から離れた第1のギャップ(99)に位置するように構成される第1のカソード(84)と、
前記加工物(82)の第2の側部から離れた第2のギャップ(101)に位置するように構成され、第1のカソード(84)と互いに反対側に位置する第2のカソード(86)と、
第1のカソード(84)と前記加工物(82)との間の第1のギャップ(99)を通って第1の電解質を流すように構成された第1の電解質通路(226)と、
第2のカソード(86)と前記加工物(82)との間の第2のギャップ(101)を通って第2の電解質を流すように構成された第2の電解質通路(226)と、
第1のギャップ(99)及び第2のギャップ(101)を通って電流を流し、第1の側部及び第2の側部の両方から前記加工物(82)を通して電解溶解させるように構成された電源(144)と
を備えている、システム。
【請求項2】
前記電解切断工具(80)がシール切断工具であり、前記加工物(82)がシール本体(62)である、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
第1のカソード(84)が第1の絶縁構造(222)内に配置され、第2のカソード(86)が第2の絶縁構造(222)内に配置される、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
第1の電解質通路(226)が、第1のギャップ(99)に向かう向きにされた第1の内向き経路(98)と、第1のギャップ(99)から離れる向きにされた第1の外向き経路(102)とを含み、第2の電解質通路(226)が、第2のギャップ(101)に向かう向きにされた第2の内向き経路(100)と、第2のギャップ(101)から離れる向きにされた第2の外向き経路(104)とを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
第1の内向き経路(98)及び第1の外向き経路(102)が、前記加工物(82)の第1の側部にほぼ平行であり、第2の内向き経路(100)及び第2の外向き経路(104)が、前記加工物(82)の第2の側部にほぼ平行である、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
第1の内向き経路(98)及び第1の外向き経路(102)が、前記加工物(82)の第1の側部に対して第1の角度(230)で配置され、第2の内向き経路(100)及び第2の外向き経路(104)が、前記加工物(82)の第2の側部に対して第2の角度(230)で配置され、第1及び第2の角度(230)が0度超90度以下である、請求項4記載のシステム。
【請求項7】
第1の内向き経路(98)、第1の外向き経路(102)、第2の内向き経路(100)、又は第2の外向き経路(104)のうちの第1のものが、前記加工物(82)の第1及び第2の側部に平行であり、第1の内向き経路(98)、第1の外向き経路(102)、第2の内向き経路(100)、又は第2の外向き経路(104)のうちの第2のものが、前記加工物(82)の第1及び第2の側部に非平行である、請求項4記載のシステム。
【請求項8】
第1のカソード(84)が、第1のギャップ(99)を低減するよう第1の表面に向かって移動するように構成され、第2のカソード(86)が、第2のギャップ(101)を低減するよう第2の表面に向かって移動するように構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
第1のギャップ(99)において第1の被覆されていない部分(150)を除いて、前記加工物(82)の第1の側部を覆うように構成された第1の保護層(146)と、第2のギャップ(101)において第2の被覆されていない部分(150)を除いて、前記加工物(82)の第2の側部を覆うように構成された第2の保護層(148)と、
を備える、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
第1の保護層(146)が第1のクランプ(192)を含み、第2の保護層(148)が第2のクランプ(194)を含み、第1及び第2のクランプ(192、194)が、前記加工物(82)を保持するように互いに向かって移動するように構成される、請求項9記載のシステム。
【請求項1】
電解切断工具(80)を備えるシステムであって、上記電解切断工具(80)が、
加工物(82)の第1の側部から離れた第1のギャップ(99)に位置するように構成される第1のカソード(84)と、
前記加工物(82)の第2の側部から離れた第2のギャップ(101)に位置するように構成され、第1のカソード(84)と互いに反対側に位置する第2のカソード(86)と、
第1のカソード(84)と前記加工物(82)との間の第1のギャップ(99)を通って第1の電解質を流すように構成された第1の電解質通路(226)と、
第2のカソード(86)と前記加工物(82)との間の第2のギャップ(101)を通って第2の電解質を流すように構成された第2の電解質通路(226)と、
第1のギャップ(99)及び第2のギャップ(101)を通って電流を流し、第1の側部及び第2の側部の両方から前記加工物(82)を通して電解溶解させるように構成された電源(144)と
を備えている、システム。
【請求項2】
前記電解切断工具(80)がシール切断工具であり、前記加工物(82)がシール本体(62)である、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
第1のカソード(84)が第1の絶縁構造(222)内に配置され、第2のカソード(86)が第2の絶縁構造(222)内に配置される、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
第1の電解質通路(226)が、第1のギャップ(99)に向かう向きにされた第1の内向き経路(98)と、第1のギャップ(99)から離れる向きにされた第1の外向き経路(102)とを含み、第2の電解質通路(226)が、第2のギャップ(101)に向かう向きにされた第2の内向き経路(100)と、第2のギャップ(101)から離れる向きにされた第2の外向き経路(104)とを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
第1の内向き経路(98)及び第1の外向き経路(102)が、前記加工物(82)の第1の側部にほぼ平行であり、第2の内向き経路(100)及び第2の外向き経路(104)が、前記加工物(82)の第2の側部にほぼ平行である、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
第1の内向き経路(98)及び第1の外向き経路(102)が、前記加工物(82)の第1の側部に対して第1の角度(230)で配置され、第2の内向き経路(100)及び第2の外向き経路(104)が、前記加工物(82)の第2の側部に対して第2の角度(230)で配置され、第1及び第2の角度(230)が0度超90度以下である、請求項4記載のシステム。
【請求項7】
第1の内向き経路(98)、第1の外向き経路(102)、第2の内向き経路(100)、又は第2の外向き経路(104)のうちの第1のものが、前記加工物(82)の第1及び第2の側部に平行であり、第1の内向き経路(98)、第1の外向き経路(102)、第2の内向き経路(100)、又は第2の外向き経路(104)のうちの第2のものが、前記加工物(82)の第1及び第2の側部に非平行である、請求項4記載のシステム。
【請求項8】
第1のカソード(84)が、第1のギャップ(99)を低減するよう第1の表面に向かって移動するように構成され、第2のカソード(86)が、第2のギャップ(101)を低減するよう第2の表面に向かって移動するように構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
第1のギャップ(99)において第1の被覆されていない部分(150)を除いて、前記加工物(82)の第1の側部を覆うように構成された第1の保護層(146)と、第2のギャップ(101)において第2の被覆されていない部分(150)を除いて、前記加工物(82)の第2の側部を覆うように構成された第2の保護層(148)と、
を備える、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
第1の保護層(146)が第1のクランプ(192)を含み、第2の保護層(148)が第2のクランプ(194)を含み、第1及び第2のクランプ(192、194)が、前記加工物(82)を保持するように互いに向かって移動するように構成される、請求項9記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−245617(P2011−245617A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115328(P2011−115328)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】
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