説明

金属化プラスチック成形品の製造方法および該成形品の使用

【課題】
金属光沢および他の通常の装飾効果を有するプラスチック成形品を、技術的に単純な様式で製造することができる方法を提供する。
【解決手段】
(a)20〜150nm厚さの金属層を、50〜750μm厚さの半透明プラスチックフィルムに適用する工程、(c)5〜50μm厚さの接着層を、フィルムの金属化した面の上に適用する工程、(f)得られた生成物を形状化する工程、(g)形状化した生成物に半透明の熱可塑性プラスチックを裏面射出成形する工程、および(b)最後に、(a)の金属化フィルム上の金属層を、レーザーによって部分的に除去する工程を含んでなるプラスチック成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化プラスチック成形品の製造方法およびこの方法で製造された成形品の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の装飾(例えば、手書き語句または模様、ロゴ)に加えて金属光沢を有するプラスチック成形品は、予め二次加工した金属化フィルムにプリントし、次いでこれを形状化し、これにプラスチックを裏面射出成形することによって製造される。別法によれば、初めに半透明プラスチックフィルムにプリントし、次いで金属化する。その後にこれらを形状化し、所望により、保護層を金属層に適用する。これらの方法は、例えば、車用のプラスチック部品(例えばハブカバーなど)を製造するために実施される。これらは、このように製造した部品が金属層のゆえに半透明ではなく、従って、透過光法をこれらの部品に使用することができないという欠点を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の課題は、金属光沢および他の通常の装飾効果を有するプラスチック成形品を、技術的に単純な様式で製造することを可能にする方法を提供することである。このように製造された部品は、透過光技術の使用が可能なものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、本発明の方法によって解決された。
本発明の対象は、プラスチック成形品の製造方法であって、以下の工程を含んでなる方法である:
(a)20〜150nm厚さの金属層を、50〜750μm厚さの半透明プラスチックフィルムに適用する工程、
(c)5〜50μm厚さの接着層を、フィルムの金属化した面の上に適用する工程、
(f)得られた生成物を形状化する工程、
(g)形状化した生成物に半透明の熱可塑性プラスチックを裏面射出成形する工程、および
(b)最後に、(a)の金属化フィルム上の金属層を、レーザーによって部分的に除去する工程。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の方法において、金属層を半透明プラスチックフィルムに適用する。この金属層は、いわゆるPVD(物理的蒸着)法またはCVD(化学的蒸着)法によって適用するのが好ましい。別法によれば、この層を、トランスファー金属化[例えば、Joachim Nentwig、Kunststoff-Folien 2000、Carl Hanser Verlag、Munich、Viennaを参照]によって適用するのが好ましいこともある。使用する金属は、通常はアルミニウム、クロム、銀、ニッケルおよび金である。
【0006】
金属層を、プラスチックフィルムの所望の場所/領域から除去する。これは、レーザービームによって行うのが好ましい[例えば、Gottfried W.Ehrenstein、Stefan Stampfer、3D-spritzgegossene Formteile mit strukturiertem Leiterbild、Spritzgiessen 2000 - Internationale Jahrestagung (組織化された印刷回路パターンを有する3D射出成形部品、射出成形2000−年次国際会議)、VDI-Verlag、2000を参照]。別法によれば、金属層を、例えばエッチングによって部分的に除去することができる。金属層の部分的除去のためにレーザーを使用するときには、工程(b)[金属層の部分的除去]を、工程(g)の後に行うのが好ましいこともある。同様に、金属層のレーザービーム除去を、工程(c)、(d)、(e)または(f)の後に行うことができる。層の厚さは、通常はナノメートルの範囲内である。レーザービームがあたった場所で、金属層がビームによって除去され、これによって、光が光透過技術によって通過することができる領域が創製される(これが所望であるとき)。
【0007】
接着層は、スクリーン印刷によってフィルムの金属化した面に適用するのが好ましい。別法によれば、これを、ドクターナイフまたはスプレーによって適用することができる。また、その機能は金属層を保護することである。例えば「Adhesion-Kleben und Dichten」[Dr G Festel、Dr A Pross、Dr H Stepanski、Dr H Blankeheim、Dr R Witkowski、Friedrich Vieweg & Sohn Verlagsgesellschaft mbH、Wiesbaden]に記載されているように、熱活性化されるポリウレタン接着剤を使用するのが好ましい。
【0008】
所望により、プリントしたかまたはプリントしていない半透明プラスチックフィルムを接着層の上に積層する。別法によれば、着色したフィルムを使用することもできる。このようなフィルムは、金属層の光沢の損失を防止または減少させることができる。光沢の損失は、高温での裏面射出成形中に起こりうる。積層は、フィルムの軟化点以下の温度で行うのが好ましい。
【0009】
次いで所望により、装飾層を適用する。これは、スクリーン印刷によって行うのが好ましい。しかし、別法によれば、オフセット、グラビア、トランスファーまたはデジタル印刷によって適用することもできる。この目的に使用するインクは、半透明であるべきである。
【0010】
次いで形状化を行う。例えば独国特許出願公開DE-A-3844584に記載されているように、いわゆる「高圧成形」法を使用するのが好ましい。好ましくは、フィルムをその軟化温度以下で形状化して、金属層の光沢が悪影響を受けないようにする。
【0011】
他の方法は機械的形状化および油圧成形である。部品の幾何が許すときには(例えば、平らな部品がわずかに曲がっているのみであるとき)、裏面射出成形中の熱可塑性プラスチックの圧力によって形状化を行うことができ、これによって追加の形状化工程を省くことができる。この形状化工程の後に、突出している残余片を、好ましくは打抜きによって除去することができる。別法によれば、これらを、レーザービーム切断、水噴射切断またはフライス削りによって除去することができる。
最後に、この部品に半透明の熱可塑性プラスチックを裏面射出成形する。
【0012】
本発明の方法によって製造されたプラスチック成形品は、特に自動車分野およびエレクトロニクス分野における鍵、スイッチおよび装備品として、特に自動車外装分野における装備ストリップとして、特にランプおよびヘッドライトのためのレフレクターとして、特に電話および移動電話のためのキーボードおよびケーシングとして、特に家庭電化製品のためのシールドおよび鍵として、広告パネルとして、および包装用品として、さらに識別カードの製造のために使用される。
【実施例】
【0013】
(a)アルミニウムによるポリカーボネートフィルム(Makrofol DE1-1C、175μm、Bayer AG)の金属化
フィルムを予備プラズマ処理にかけて、フィルムへの金属層の接着を高めた。アルミニウムを、PVD法(直接金属化)によって80nmの厚さで適用した。金属化を、Heraeus-Leibold金属化プラントにおいて行った。
(b)レーザーによるAl層の選択した領域の除去
Al層の精密除去を、Rofin Sinarの「Marker Power Line 60」レーザープラントを用いて行った。
試行の設定:
レーザー媒体: Nd YAG
能力: 60ワット
電流: 8.5A
波長: 1064nm
パルス周波数: 4.1kHz
供給速度: 200mm/秒
【0014】
(c)接着層の適用
Proellにより製造された接着剤「Aquapress ME」を、スクリーン印刷によって適用した。印刷を3回行った。使用したポリエステル布スクリーンは、100糸/cmを有していた。印刷したフィルムを乾燥したときに、接着層の厚さは20μmであった。
(d)追加のフィルム
100μm厚さのポリカーボネートフィルム(Makrofol DE1-4、175μm、Bayer AG)を、(c)の生成物の上に積層した。積層を、フィルム温度90℃および適用圧力4バールで行った。
(e)装飾層
Proellにより製造された半透明「Noriphan HTR」インク系を、スクリーン印刷によって適用した。印刷を1回行った。ポリエステル製の布スクリーンは、100糸/cmを有していた。印刷したフィルムを乾燥したときに、インク層の厚さは6μmであった。
【0015】
(f)(e)の生成物を高圧成形によって形状化し、突出している残余片を切除した。生成物温度は約80℃であり、モールド温度は約75℃であった。
(g)(f)の形状化生成物に、Makrolon 2400(ポリカーボネート、Bayer AG)を裏面射出成形した。材料温度は290℃であり、モールド温度は60℃であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック成形品の製造方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(a)20〜150nm厚さの金属層を、50〜750μm厚さの半透明プラスチックフィルムに適用する工程、
(c)5〜50μm厚さの接着層を、フィルムの金属化した面の上に適用する工程、
(f)得られた生成物を形状化する工程、
(g)形状化した生成物に半透明の熱可塑性プラスチックを裏面射出成形する工程、および
(b)最後に、(a)の金属化フィルム上の金属層を、レーザーによって部分的に除去する工程。
【請求項2】
工程(c)または工程(f)の後に、(d)50〜750μm厚さのプリントしたかまたはプリントしていない半透明プラスチックフィルムを、(c)の接着層の上に積層する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)、工程(d)または工程(f)の後に、(e)3〜40μm厚さの装飾層を、(c)の層または(d)のフィルムに適用する工程、をさらに含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1の方法に従って製造した成形品から製造した、鍵、スイッチ、装備品、装備ストリップ、レフレクター、キーボード、ケーシング、シールド、広告パネルおよび包装用品からなる群から選択される物品。

【公開番号】特開2010−158909(P2010−158909A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98620(P2010−98620)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【分割の表示】特願2003−576168(P2003−576168)の分割
【原出願日】平成15年3月7日(2003.3.7)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】