説明

金属板の挿入方法、挿入装置及び組立品の製造方法

【課題】弾性があるため所定形状に曲げ加工をした後も一部復元して形状ばらつきがある金属板を、位置決めして他部品に自動挿入する方法を提供する。
【解決手段】所定形状に曲げ加工された金属板2を、成形品の溝内へ、以下の工程を経て挿入する。(1)金属板2を、金属板にその両側から近接して来る一対のチャック爪3で把持してチャックし、当該チャックは前記所定形状を保持するために必要とする複数箇所で行う。(2)前記で保持された金属板2を、金属板を挟んでその一方の側は成形品の溝相当位置に位置決め固定され他方の側は前記一方の側に近接して来るこれら2種で一対のチャック爪4,4’で把持してチャックし、当該チャックは前記所定形状を保持するために必要とする複数箇所で行う。(3)前記チャック後に(1)のチャックを解放する。(4)その後、(2)のチャックで所定形状を保持した金属板を成形品の溝内へ挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定形状に曲げ加工され弾性を有する金属板を、溝付き成形品の前記所定形状と対応する形状の溝内へ挿入する挿入方法に関する。また、前記方法の実施に使用する挿入装置に関する。さらに、前記方法の実施により製造される組立品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性があるため所定形状に曲げ加工をした後もスプリングバックにより一部復元して外形形状にばらつきがある部品を、成形品等の前記所定形状と対応する形状の溝内に挿入する場合、自動化が難しく、手作業により行われることが多い。この対策として、例えば、特許文献1に示す位置決め供給装置を用いる方法が開示されている。この方法は、位置決め供給装置として、ループ状部品を所定位置に位置決めするストッパと、このストッパに位置決めされたループ状部品のリードと係合する係合溝を有しループ状部品を両側からチャッキングする一対のチャックと、このチャックを支持しチャッキングされたループ状部品をチャックとともに前記自動挿入機に供給する挿入機構とを備えたものを使用する。ループ状部品をストッパに位置決め整位し、次に、チャッキングされたループ状部品をチャックとともに自動挿入機のチャック機構に供給する。そして、自動挿入機のチャック機構によりループ状部品をプリント基板等に挿入するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−234599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される方法では、位置決め供給装置でループ状部品を位置決め整位した後、自動挿入機のチャック機構に供給しており、位置決め供給装置及び自動挿入機のそれぞれのチャックの加工精度や位置関係がループ状部品のプリント基板等への挿入成功率に大きく影響する。このため、前記チャックの加工精度や位置関係を充分に確保しなければならないという問題がある。
【0005】
また、チャッキングされたループ状部品をチャックとともに自動挿入機のチャック機構に供給しており、前記チャックが位置決め供給装置に戻るまでの間は、次のループ状部品を予め位置決め整位しておくことができない。このため、位置決め整位から自動挿入までのサイクルタイムが制約されるという問題がある。この対策として、前記チャックを複数準備する方法が考えられるが、この場合、先に述べたように、複数のチャックについて、加工精度や位置関係を充分に確保しなければならない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、弾性があるため所定形状に曲げ加工をした後もスプリングバックにより一部復元して外形形状にばらつきがある金属板に対して、簡単な設備で、位置決め整位から自動挿入までのサイクルタイムを短縮できる挿入方法を提供することである。また、前記方法に使用することができる挿入装置を提供することである。さらに、前記方法の実施により成形品を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る方法は、所定形状に曲げ加工され弾性を有する金属板を、溝付き成形品の前記所定形状と対応する形状の溝内へ挿入する方法であって、以下の工程を経ることを特徴とする(請求項1)。
(1)所定形状に曲げ加工され弾性を有する金属板を、金属板にその両側から近接して来る一対のチャック爪で把持してチャックし、当該チャックを少なくとも前記所定形状を保持するために必要とする複数箇所で行う一次チャック工程、
(2)工程(1)により所定形状に保持された金属板を、金属板を挟んでその一方の側は溝付き成形品の溝相当位置に位置決め固定され他方の側は前記一方の側に近接して来るこれら2種で一対のチャック爪で把持してチャックし、当該チャックを少なくとも前記所定形状を保持するために必要とする複数箇所で行う二次チャック工程、
(3)工程(2)の二次チャック後に一次チャックを解放する工程、
(4)二次チャックにより所定形状を保持した金属板を溝付き成形品の溝内へ挿入する工程。
【0008】
金属板の曲げ加工が屈曲形状である場合、金属板には屈曲箇所を避けた位置に突起を設けて当該突起を把持してチャックすることが好ましい(請求項2)。
【0009】
また、本発明に係る装置は、前記方法の実施に使用する挿入装置であって、相対する双方が互いに近接し離間する一対のチャック爪を有するチャックを複数箇所に備えた一次チャック機構と、相対する一方が固定され他方が前記一方に近接し離間するこれら2種で一対のチャック爪を有するチャックを複数箇所に備えた二次チャック機構とを備え、一次チャック機構と二次チャック機構が以下のように制御されることを特徴とする(請求項3)。
(1)一次チャック機構は、所定形状に曲げ加工されて各チャックの一対のチャック爪の間に位置する金属板を、両側から金属板に向かって近接して来るチャック爪で把持してチャックし、金属板を所定形状に保持する。
(2)二次チャック機構は、各チャックの固定された一方のチャック爪を溝付き成形品の溝相当位置へ位置決め制御して固定し、一次チャック機構により保持されている金属板を、前記一方のチャック爪と当該チャック爪に向かって近接して来る他方のチャック爪とで把持してチャックし、金属板を所定形状に保持する。
(3)前記(2)の後、一次チャック機構が、金属板の保持を解放する。
(4)前記(3)の後、二次チャック機構が、金属板を溝付き成形品の溝内へ挿入する。
さらに、本発明に係る組立品の製造方法は、前記方法の実施により製造されることを特徴とする(請求項4)。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る挿入方法は、所定形状に曲げ加工され弾性を有する金属板を、金属板の両側から近接して来る一対のチャック爪で把持してチャックする一次チャック工程により、金属板を所定形状に保持し凡その位置決めを行うことができる。その後、金属板を、溝付き成形品の溝相当位置に位置決め固定された一方のチャック爪とこのチャック爪に向かって近接して来る他方のチャック爪とで把持してチャックする二次チャック工程により精度よく位置決め整位するようにしている。従って、一次チャック工程及び二次チャック工程それぞれのチャックの加工精度や位置関係を考慮しなくてもよい。また、位置決め整位のための治具等も準備しなくてもよい。
【0011】
また、二次チャック工程により精度よく位置決め整位した金属板を、所定形状に保持したまま、溝付き成形品の溝内へ挿入するようにしたので、二次チャック工程で自動挿入操作を行っている間に、一次チャック工程で所定形状保持と位置決め操作を行うことができ、位置決め整位から自動挿入までのサイクルタイムを短縮することができる。
【0012】
本発明に係る挿入装置及び組立品の製造方法は、前記方法の実施により、簡単な設備で、位置決め整位から自動挿入までのサイクルタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る挿入方法の工程を示す説明図である。
【図2】本発明に係る挿入方法の概要を示す説明図である。
【図3】本発明に係る挿入方法における金属板の実施の形態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る挿入方法における溝付き成形品の実施の形態を示す平面図である。
【図5】本発明に係る挿入方法における成形品の実施の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る挿入方法の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
本発明は、例えば、図2に示すように、屈曲形状に曲げ加工された帯状の金属板2を、溝付き成形品5の屈曲する溝6に挿入する場合に適用される。また、図3に示すように、屈曲形状に曲げ加工された帯状の金属板2を所定間隔で複数個配列し、これを、図4に示すような多角形の溝付き成形品5の屈曲する複数の溝6のそれぞれに挿入する場合に適用される。金属板2に設けた突起1が、金属板2のチャック爪による把持部分として利用される。
【0015】
図1は、本発明に係る挿入方法の工程を示す説明図であり、(a1)(b1)(c1)(d1)は、金属板2に設けた突起1周辺(図2(a)のC部)の正面図、(a2)(b2)(c2)(d2)は、それぞれ、(a1)(b1)(c1)(d1)のA−A断面図、(b3)(c3)(d3)は、それぞれ、(b1)(c1)(d1)のB−B断面図である。
これらの図において、3は、突起1を把持する一次チャック機構のチャック爪である。また、4は、二次チャック機構における位置決め固定された一方のチャック爪であり、4’はチャック爪4に向かって近接して来る他方のチャック爪である。
【0016】
<一次チャック工程>
まず、図1(a2)に示すように、金属板2の突起1を、金属板2の両側から金属板2に向かって近接して来るチャック爪3で把持してチャックする。当該チャックは、屈曲形状に曲げ加工した金属板2の少なくともその所定形状を保持するために必要とする複数箇所で行う。突起1は、例えば、図2、図3に示すように、金属板2の屈曲箇所を避けた複数位置に設けて当該突起1をチャック爪3で把持してチャックする。突起1の位置は、特に限定されるものではないが、金属板2の長さ方向に対して両端部近傍もしくは金属板2の長さ方向に対して均等に配置することが好ましい。
一次チャック工程は、屈曲形状に曲げ加工した金属板2の所定形状を保持し、凡その位置決めを行うものである。
【0017】
<二次チャック工程>
図1(b2)に示すように、この実施の形態では、一次チャック工程により突起1をチャック爪3で把持してチャックした箇所は、金属板2の突起1の厚さ方向中心が、所定の中心位置0より図面上では上側に多少変位した状態にある。場合によっては、金属板2の突起1の厚さ方向中心が、所定の中心位置0より図面上で下側に変位した状態もあり得る。これは、曲げ加工した金属板2が加工後にスプリングバックにより一部形状復元し、金属板の形状にばらつきがあるからである。一次チャック工程は、このような形状ばらつきがあることを前提に実施される。
二次チャック工程は、上記説明した状態で、図1(b3)に示すように、予め溝付き成形品の溝相当位置に位置決め固定されたチャック爪4とこれに向かって近接して来るチャック爪4’とで突起1を把持しチャックする。この二次チャック工程においても、一次チャック工程と同じ突起1を把持しチャックしているが、両者でチャックの高さ位置を重ならないように変えている。チャック爪4と4’で把持しチャックした箇所は、金属板2の突起1の厚さ方向中心が、所定の中心位置0になるように位置決めされる。
図1(c2)(c3)に示すように、突起1をチャック爪3で把持してチャックした箇所とチャック爪4と4’で把持しチャックした箇所では、突起1の厚さ方向中心位置が若干ずれることになるが、突起1の弾性変形内であれば、許容される。
【0018】
<一次チャック開放工程>
次に、チャック3を開放すると、図1(d2)(d3)に示すように、チャック3を開放した箇所とチャック爪4と4’で把持しチャックしている箇所の突起1の厚さ方向中心が、所定の中心位置0に精度よく位置決めされる。
【0019】
<挿入工程>
そして、チャック爪4と4’で突起1を把持しチャックしたままの金属板2を、図2に示すように、溝付き成形品5の対応する所定形状の溝6内へ挿入する。なお、図2は、本発明に係る挿入方法の概要を示す説明図であり、(a)は、金属板2を溝付き成形品5の溝6内へ挿入する工程の説明図、(b)は、金属板2を溝付き成形品5の溝6内へ挿入したときの断面図を示す。
【0020】
本発明にて用いる金属板は、外形形状が、例えば、帯状のもの等であり、特に限定されるものではない。1箇所以上屈曲して曲げ加工された金属板、円弧状等滑らかな曲線に曲げ加工された金属板は、加工後の外形形状のばらつきが大きくなり、溝付き成形品の溝内へ挿入することが難しい。しかしながら、本発明に係る挿入方法では、このような場合においても、溝付き成形品の溝内へ容易に挿入することができる。
【0021】
一次チャック工程及び二次チャック工程において、上記のように、チャック爪で把持する所定の位置に突起1を有していることが好ましい。突起1の数は、複数(2以上)とする。また、突起1を有する位置は、特に限定されるものではないが、屈曲箇所を避けて、金属板2の長さ方向に対して両端部近傍もしくは金属板2の長さ方向に対して均等に配置することが好ましい。
【0022】
金属板2の厚みは、特に限定されるものではないが、1mm以下のものは、外形形状のばらつきが大きくなり、溝付き成形品の溝内へ挿入することが難しい。しかしながら、本発明に係る挿入方法では、このような場合においても、溝付き成形品の溝内へ容易に挿入することができる。
【0023】
なお、所定形状に曲げ加工され弾性を有する金属板は、曲げ加工後の外形形状のばらつきが大きいものであり、金属板の所定形状の基準位置に対する標準偏差が、溝付き成形品の溝内へ挿入した金属板と溝壁面とのクリアランスを超えるようなものである。
【0024】
また、上記金属板の構成として、図3に示すように、金属板を複数本準備し、これらを所定間隔で複数個配列してインサート部品とし射出成形した一次成形品7としてもよい。この場合、一次成形品の成形時に各金属板に位置ずれが生じ、外形形状のばらつきが非常に大きくなり、溝付き成形品の溝内へ挿入することが難しい。しかしながら、本発明に係る挿入方法では、このような状態の場合においても、溝付き成形品の溝内へ容易に挿入することができる。
【0025】
一次チャック工程で用いる一次チャック機構は、相対する双方が互いに近接し離間する一対のチャック爪を有するチャックを複数箇所に備えるものである。チャックは、金属板に形成した複数の突起1を把持できる位置に配置する。例えば、エアーシリンダで駆動され、突起1を把持するチャック爪3は板状であり、表面には把持力を増すための溝加工等を適宜施すが、なくてもよい。本実施の形態では平らな面のままとした。
【0026】
一次チャック工程においてチャック爪3で突起1を把持する力(チャック力)は、二次チャック工程においてチャック爪4と4’で突起1を把持する力(チャック力)に負けてチャック爪3と突起1の間でスリップが起こらないだけの大きさとする。一対のチャック爪3で突起1を把持したとき、突起1と金属板2が同一平面状にある前提で、突起1の厚みの中心位置が溝付き成形品の溝位置中心の設定値に来るように、チャック位置(一対のチャック爪3を閉じた時の合わせ面中心)を決めることが好ましい。
【0027】
二次チャック工程で用いる二次チャック機構は、相対する一方が固定され他方が前記一方に近接し離間するこれら2種で一対のチャック爪を有するチャックを複数箇所に備えるものである。二次チャック機構におけるチャックは、金属板に形成した複数の突起1を把持できる位置に配置する。具体的には、一次チャック機構におけるチャックが把持するのと同じ突起1を把持するものであり、二次チャック機構におけるチャックと一次チャック機構におけるチャックは、所定間隔を空けて配置することが好ましい。一次チャック機構におけるチャックと二次チャック機構におけるチャックの間隔が小さいと、お互いのチャック同志が衝突する可能性があるので、間隔は1mm以上あることが好ましい。また、間隔が1mm以上であれば、一次チャック機構におけるチャックで把持された箇所と二次チャック機構におけるチャックで把持された箇所で、突起1の厚さ方向中心位置が若干ずれていても、突起1は一時的に弾性変形するだけで塑性変形することはない。
【0028】
二次チャック機構におけるチャックは、例えば、エアーシリンダで駆動され、突起1を把持するチャック爪4,4’は板状であり、表面には把持力を増すための溝加工等を適宜施すが、なくてもよい。本実施の形態では平らな面のままとした。
【0029】
二次チャック工程においてチャック爪4,4’で突起1を把持する力(チャック力)は、金属板を溝付き成形品の溝内へ挿入する力(挿入力)に負けてチャック爪4,4’と突起1の間でスリップが起こらないだけの大きさとする。一対のチャック爪4,4’で突起1を把持したとき、突起1と金属板2が同一平面状にある前提で、突起1の厚みの中心位置が溝付き成形品の溝位置中心の測定値に来るように、チャック位置(一対のチャック爪4,4’を閉じた時の合わせ面中心)を決める。このようにして、溝付き成形品の溝寸法を予め記憶させた制御装置により、突起1の厚さ方向中心位置が、図1に示す所定の中心位置0に位置決めされる。
【0030】
溝付き成形品は、所定形状に曲げ加工された金属板に対応する溝を所定の位置に有するものであり、その材質や形状は、特に限定されるものではない。
【0031】
上記の実施の形態において、所定形状に曲げ加工された金属板を、この金属板厚みよりも幅広で前記所定形状に対応する溝を設けた治具の当該溝に収容して金属板を凡その所定形状に整えた上で、一次チャック工程を実施することもできる。前記治具に設けた溝の幅は、一次チャック機構の一対のチャック爪3が開いた状態での一対のチャック爪3の離間距離より小さくすることが好ましい。また、前記治具に設けた溝の深さは、突起1が溝の上縁から露出していればよく、特に限定されるものではない。このように、金属板を凡その所定形状に整える工程を追加することにより、金属板の外形形状のばらつきが非常に大きい場合においても、本発明に係る挿入方法を実施することが容易となる。
【実施例】
【0032】
実施例1
所定の屈曲形状に曲げ加工された金属板として、図3に示す構造のものを準備した。これは、3種類の所定の屈曲形状に曲げ加工された金属板2を準備し、これを所定間隔で配列してインサート部品とし、その一部に樹脂を射出成形して一次成形品7の状態としたものである。各金属板2の材質は、銅合金板(幅:5mm、厚さ:0.8mm、材質:DSC−3N−H)で、長尺材から打ち抜きプレス加工で成形加工されている。外形形状の基準位置(設計値)は、後述する溝付き成形品の溝内へ挿入できる形状としているが、屈曲部及び突起1部分の基準位置(設計値)に対するばらつき(標準偏差)は、屈曲部で0.16〜0.3mm、突起1部分で0.3〜0.6mmであった。本実施例の場合、金属板の基準位置に対する標準偏差が、溝付き成形品の溝内へ挿入した金属板と溝壁面とのクリアランス(0.4mm)を超えており、外形形状のばらつきが大きいものである。なお、突起1は、各金属板2に2箇所形成してあり、その大きさは、幅:4.5mm、高さ14mmである。それぞれの突起1は、金属板1と平らな同一平面状にある。
【0033】
溝付き成形品5として、図4(平面図)、図5(断面図)に示す構造のものを準備した。材質は、芳香族ポリアミドで、射出成形による成形品である。外形形状は、1辺:108.8mmの正六角形(高さ:9mm)であり、外形形状と相似形状の3本の溝(幅:1.2mm、深さ:7.5mm)が形成されている。なお、外壁及び各溝の壁間は、1mmである。
【0034】
まず、本発明に係る挿入方法を実施する前に、金属板2を、この金属板2厚みよりも幅広で金属板2の所定形状に対応する溝を設けた治具の当該溝に収容して金属板2を凡その所定形状に整える。この溝の幅は4mmであり、後述する一次チャック機構の一対のチャック爪3が開いた状態での一対のチャック爪3の離間距離(5mm)より小さくしてある。また、溝の深さは、3mmであり、突起1が溝の上縁から突出して露出している。この工程を追加することにより、金属板の外形形状のばらつきが非常に大きい場合においても、本発明に係る挿入方法を実施することが容易となる。
【0035】
かかる状態で、第一チャック工程を実施した。この工程は、図1に基づいて説明した工程である。本実施例の場合、一次チャック機構及び二次チャック機構は、3種類の金属板の突起1に対応してチャックを6箇所に配置している。突起1を把持する一次チャック機構のチャック爪3と二次チャック機構のチャック爪4,4’とは、突起1ごとに、間隔を平行に1mm空けて配置した。
【0036】
一次チャック機構のチャックの駆動は、エアーシリンダを使用した。突起1を把持するチャック爪3は、板状(幅4mm、高さ6mm、厚さ10mm)である。把持する力(チャック力)は、19Nとし、二次チャック機構のチャック爪4,4’で把持する力(チャック力)に負けて一対のチャック爪3と突起1との間にスリップが起こらないだけの力を付与した。
【0037】
一次チャック機構のチャックは、突起1の厚みの中心位置が溝付き成形品の溝位置中心の設定値に来るように、チャック位置(一対のチャック爪3を閉じた時の合わせ面中心)を決めた。
【0038】
二次チャック機構のチャックの駆動は、エアーシリンダを使用し、チャック4’がチャック4に対して近接し離間する。突起1を把持するチャック爪4,4’は、板状(幅4mm、高さ6mm、厚さ10mm)である。二次チャック機構のチャック爪4,4’で把持する力(チャック力)は、27Nとし、金属板を溝付き成形品の溝内へ挿入する力(挿入力)に負けてチャック爪4,4’と突起1との間にスリップが起こらないだけの力を付与した。
【0039】
二次チャック機構のチャックは、突起1の厚みの中心位置が溝付き成形品の溝位置中心の測定値に来るように、チャック位置(チャック爪4,4’を閉じた時の合わせ面中心)を決めた。このようにして、溝付き成形品の溝寸法を予め記憶させた制御装置により、図1に示す所定の中心位置0に位置決めされる。
【0040】
なお、本実施例の場合、溝付き成形品の溝位置中心の測定は、下記の方法で行った。
溝付き成形品の溝位置中心の測定方法:溝付き成形品の中心を通るX−Y軸をつくり、その中心を座標原点とし、溝付き成形品の溝の辺と角度の部分の内周位置、外周位置を三次元測定器にて座標原点からの寸法として測定し、(外周寸法−内周寸法)÷2を溝位置中心とした。なおn数は20個である。
【0041】
上記の方法により、一次成形品7の成形時に各金属板に位置ずれが生じ、外形形状のばらつきが非常に大きくなる場合においても、溝付き成形品の溝内へ容易に挿入することができることを確認した。
【符号の説明】
【0042】
1…突起、2…金属板、3…一次チャック機構のチャック爪、4,4’…二次チャック機構のチャック爪、5…溝付き成形品、6…溝、7…一次成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状に曲げ加工され弾性を有する金属板を、溝付き成形品の前記所定形状と対応する形状の溝内へ挿入する方法であって、以下の工程を経ることを特徴とする金属板の挿入方法。
(1)所定形状に曲げ加工され弾性を有する金属板を、金属板にその両側から近接して来る一対のチャック爪で把持してチャックし、当該チャックを少なくとも前記所定形状を保持するために必要とする複数箇所で行う一次チャック工程
(2)工程(1)により所定形状に保持された金属板を、金属板を挟んでその一方の側は溝付き成形品の溝相当位置に位置決め固定され他方の側は前記一方の側に近接して来るこれら2種で一対のチャック爪で把持してチャックし、当該チャックを少なくとも前記所定形状を保持するために必要とする複数箇所で行う二次チャック工程
(3)工程(2)の二次チャック後に一次チャックを解放する工程
(4)二次チャックにより所定形状を保持した金属板を溝付き成形品の溝内へ挿入する工程
【請求項2】
金属板の曲げ加工が屈曲形状であり、金属板には屈曲箇所を避けた位置に突起を設けて当該突起を把持してチャックすることを特徴とする請求項1記載の金属板の挿入方法。
【請求項3】
相対する双方が互いに近接し離間する一対のチャック爪を有するチャックを複数箇所に備えた一次チャック機構と、相対する一方が固定され他方が前記一方に近接し離間するこれら2種で一対のチャック爪を有するチャックを複数箇所に備えた二次チャック機構とを備え、一次チャック機構と二次チャック機構が以下のように制御されることを特徴とする金属板の挿入装置。
(1)一次チャック機構は、所定形状に曲げ加工されて各チャックの一対のチャック爪の間に位置する金属板を、両側から金属板に向かって近接して来るチャック爪で把持してチャックし、金属板を所定形状に保持する。
(2)二次チャック機構は、各チャックの固定された一方のチャック爪を溝付き成形品の溝相当位置へ位置決め制御して固定し、一次チャック機構により保持されている金属板を、前記一方のチャック爪と当該チャック爪に向かって近接して来る他方のチャック爪とで把持してチャックし、金属板を所定形状に保持する。
(3)前記(2)の後、一次チャック機構が、金属板の保持を解放する。
(4)前記(3)の後、二次チャック機構が、金属板を溝付き成形品の溝内へ挿入する。
【請求項4】
所定形状に曲げ加工され弾性を有する金属板を、溝付き成形品の溝内へ挿入する組立品の製造方法であって、請求項1又は2記載の方法の実施により製造されることを特徴とする組立品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−274370(P2010−274370A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129188(P2009−129188)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【出願人】(390017617)新神戸プラテックス株式会社 (9)
【Fターム(参考)】