説明

金属板インサート樹脂成形品

【課題】金属板をインサート物として樹脂を射出成形し、金属板の両面の一部を樹脂で覆った樹脂成形品において、金属板と樹脂の密着性を高めることである。
【解決手段】金属板を1インサート物として樹脂を射出成形し、金属板1の両面の一部を樹脂2で覆った樹脂成形品において、射出成形時にウェルドが発生する箇所に対応させて金属板1に貫通穴4を設ける。射出成形時には貫通穴4に樹脂を充填し、金属板1を両面から覆う樹脂2を前記貫通穴4において連結した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板をインサート物として樹脂を射出成形し、金属板の両面の一部を樹脂で覆った構造の樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
上記樹脂成形品として、断面L字形に折り曲げた金属板をインサート物としたものがある。例えば、図2に示すように、断面L字形の金属板1の外側底面と立上り面の一部、ならびに内側立上り面の一部を樹脂2で覆った構造である。(類似の構造として、例えば特許文献1)
【特許文献1】特許第3339300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の樹脂成形品においては、金属板と金属板を覆っている樹脂の密着性が十分でない場合があった。このような場合に、樹脂成形品から露出している金属板の一端が流動性材料に接触していると、流動性材料が金属板と樹脂の界面に侵入し、金属板の他端にまで這い上がることがあった。
本発明が解決しようとする課題は、金属板をインサート物として樹脂を射出成形し、金属板の両面の一部を樹脂で覆った樹脂成形品において、金属板と樹脂の密着性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明に係る金属板インサート樹脂成形品は、金属板をインサート物として樹脂を射出成形し、金属板の両面の一部を樹脂で覆った構成を対象とする。このような構成において、射出成形時にウェルドが発生する箇所に一致させて金属板に設けた貫通穴に樹脂を充填して、前記金属板を両面から覆う樹脂を前記貫通穴において連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
インサート物としての金属板と射出成形した樹脂との密着性について検討したところ、ウェルドが発生する箇所において特に密着性が悪いことが判明した。ウェルドが発生する箇所では、射出した樹脂の流れに乱れを生じており、その結果、冷却時の樹脂の収縮率も一様ではなく、金属板と樹脂の密着性が不十分になるものと推測される。
【0006】
本発明においては、ウェルドが発生する箇所に一致させて金属板に貫通穴を設け、そこに充填した樹脂により、金属板を覆う両面の樹脂を前記貫通穴において連結している。従って、樹脂が収縮するとき、金属板を覆う両面の樹脂は貫通穴に充填された樹脂によって金属板に強く引き付けられるような作用を受け、樹脂の冷却時の収縮が不均一になるウェルド発生箇所において良好な密着性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施例
図1,2に示すように、断面形状L字形の金属板1(銅製の端子)をインサート物としてポリフェニレンサルファイド(PPS)の射出成形を実施した。断面L字形の金属板1の外側面底面と立上り部の一部、ならびに内側面立上り部の一部を樹脂2で覆う構造の樹脂成形品である。樹脂を射出するゲート位置3は、図1に示すように、断面L字形の金属板1の外側面底面であり、その幅方向両端の二箇所とした。この場合、金属板1の立上り部の幅方向中央にウェルドが発生することになる。
【0008】
このウェルド発生箇所に対応させて、金属板1にΦ2mmの貫通穴4をあけておき、この貫通穴4に充填された樹脂で金属板1を覆う両面の樹脂2を連結する構造とした。金属板1の厚みは1mm、金属板1を覆う樹脂2の厚みは2mmとした。
【0009】
比較例
上記実施例において、貫通穴4’をウェルド発生箇所から外した位置(中央から幅方向寸法の1/4の寸法だけ側方へ移動)に設け、それ以外は実施例と同様とした。
【0010】
従来例
実施例において、貫通穴を設けない構造とした。
【0011】
上記実施例、比較例、従来例の樹脂成形品について、金属板と樹脂の密着性を次のように評価した。
露出している金属板の一端を粘性流体に接触させ、常温にて24h放置し、金属板の他端への粘性流体の這い上がりの有無を目視にて確認した。その結果を表1に示す。
【0012】
【表1】

【0013】
上記各例の対比から、ウェルド発生箇所に対応させて、金属板に貫通穴を設けておくことにより、はじめて密着性を高める効果があることが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】金属板インサート樹脂成形品のインサート部分の正面図である。
【図2】図1のA−A’線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1:金属板
2:樹脂
3:ゲート位置
4:貫通穴
4’:貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板をインサート物として樹脂を射出成形し、金属板の両面の一部を樹脂で覆った樹脂成形品であって、
射出成形時にウェルドが発生する箇所に一致させて金属板に設けた貫通穴に樹脂を充填して、前記金属板を両面から覆う樹脂を前記貫通穴において連結したことを特徴とする金属板インサート樹脂成形品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−110924(P2006−110924A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302444(P2004−302444)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【出願人】(390017617)新神戸プラテックス株式会社 (9)
【Fターム(参考)】