説明

金属板裏打ちタイル及びその製造方法

【課題】高温環境下におかれても凹反りが防止される金属板裏打ちタイルと、その製造方法を提供する。
【解決手段】陶磁器質タイル2の裏面に金属板3を接着剤4で接着してなる金属板裏打ちタイルにおいて、常温において凸反りしていることを特徴とする金属板裏打ちタイル1。陶磁器質タイル2の裏面に熔融状態のホットメルト型接着剤4を塗布した後、金属板3を張り合わせ、次いで冷却して陶磁器質タイル2と金属板3とを接着すると共に、金属板2の冷却収縮によって金属板裏打ちタイル1を凸反りさせることを特徴とする金属板裏打ちタイルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイルの裏面に金属板を接着剤で接着した金属板裏打ちタイルと、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陶磁器質のタイルは、衝撃が加えられると割れるおそれがある。陶磁器質タイルの割れ防止のために、陶磁器質タイルの裏面に金属板を接着することが知られている(特許文献1)。特許文献1の第3頁左上欄には、3×450×450mmの陶磁器質タイルの裏面にウレタン系接着剤によって厚み0.16mm、0.35mm又は0.6mmの普通鋼板を貼着した金属板裏打ちタイルが記載されている。
【0003】
特許文献2には、弾力性を高めた金属板裏打ちタイルとして、針状結晶鉱物を原料の一部として配合した大形平板焼結体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−215759
【特許文献2】特許2998072
【特許文献3】特開2009−221669
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように金属板で裏打ちしたタイルは、曲げ強度が高く、耐衝撃性にも優れる。このような特性は、特にタイルが大形で且つ薄い場合に好適である。ところが、大形で薄いタイルは反り易いため、金属板裏打ちタイルが高温環境下におかれた場合(例えば床暖房で加温されたときや、日光の直射を長時間受けた場合)、金属板が熱膨張して伸長し、金属板裏打ちタイルが凹反りし、端部の跳ね上がりにより施工時に接着不良を生じたり、また使用時に美観が損なわれたり、歩行等の障害になったりするおそれがある。
【0006】
本発明は、高温環境下におかれても凹反りが防止される金属板裏打ちタイルと、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の金属板裏打ちタイルは、陶磁器質タイルの裏面に金属板を接着剤で接着してなる金属板裏打ちタイルにおいて、常温において凸反りしていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の金属板裏打ちタイルは、請求項1において、該金属板裏打ちタイルの対角線長さをLとし、常温における凸反り量をhとした場合、Lが500〜2300mmであり、h/L×100%が0.1〜2%であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の金属板裏打ちタイルの製造方法は、請求項1又は2の金属板裏打ちタイルを製造する方法であって、前記陶磁器質タイルの裏面に溶融状態のホットメルト型接着剤を塗布した後、金属板を張り合わせ、次いで冷却して陶磁器質タイルと金属板とを接着すると共に、金属板の冷却収縮によって金属板裏打ちタイルを凸反りさせることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の金属板裏打ちタイルは、常温において凸反りしているので、金属板裏打ちタイルが高温環境下におかれて金属板が熱膨張により伸長しても、金属板裏打ちタイルの凹反りが防止される。
【0011】
本発明の金属板裏打ちタイルは、対角線長さLが500〜2300mmの大形の金属板裏打ちタイルに適用する場合に好適である。また、凸反り量hとLとの比が0.1〜2%程度であると、高温環境下での凹反りが確実に防止され、また施工対象面への貼り付け施工も容易となる。
【0012】
本発明の金属板裏打ちタイルの製造方法では、ホットメルト型接着剤の熱によって金属板を加温して伸長させ、その冷却時の収縮力を利用して金属板裏打ちタイルに凸反りを生じさせるので、凸反りした金属板裏打ちタイルを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る金属板裏打ちタイルの模式的な断面図である。
【図2】実施の形態に係る金属板裏打ちタイルの一部の拡大断面図である。
【図3】実施の形態に係る金属板裏打ちタイルの製造方法を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0015】
本発明の金属板裏打ちタイル1は、図2の通り、陶磁器質のタイル2の裏面に接着剤4によって金属板3を接着したものである。
【0016】
タイル2は長方形であってもよく、正方形であってもよく、他の形状であってもよい。長方形の場合、長辺の長さは450〜2000mm特に600〜1500mm程度が好適であり、短辺の長さは300〜1000mm特に300〜500mm程度が好適であり、厚さtは3〜20mm特に4〜10mm程度が好適である。正方形の場合、一辺の長さが450〜1000mm特に500〜900mm程度であることが好ましく、好ましい厚さは長方形の場合と同様である。
【0017】
タイル2の材質は、陶磁器質であればよく、表面が施釉されていてもよく、施釉されていなくてもよい。なお、タイルとしては弾力性に富む材質のものが好適であり、具体的には前記特許文献2に記載の大形板状焼結体が好適である。この特許文献2の大形板状焼結体は、「針状結晶鉱物であるβ−CaO・SiO2を無水換算で30〜70[重量%]と、粘土及び滑石を含む一般陶磁器質物を無水換算で70〜30[重量%]とが均質に含有され、前記針状結晶鉱物が同一方向に均一に配向整列され必要な形状に成形され、1000〜1250[℃]の温度範囲で焼結されていることを特徴とする針状結晶鉱物が同一方向に配向整列された組織をもつ大形平板状焼結体。」である。
【0018】
金属板3としては、普通鋼、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金などよりなるものが好適であり、その厚さtは0.2〜1mm特に0.25〜0.5mm程度が好適である。
【0019】
金属板の寸法は、タイル2と同一であることが好ましいが、それよりも若干小さくてもよい。また、金属板裏打ちタイル1の隣接する辺においても、金属板3がタイル2の辺縁から若干(例えば3〜15mm特に5〜10mm程度)はみ出し、残りの2辺において金属板3がタイル2の辺縁から、このはみ出し量と同一長さかそれよりもごくわずかに長く後退していてもよい。
【0020】
この金属板裏打ちタイル1を製造する場合、タイル2と金属板3とを接着する接着剤としてはホットメルト型接着剤、特に反応性ホットメルト型接着剤が用いられる。反応性ホットメルト接着剤としては特に制限はなく、例えば、結晶性の高いポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂を骨格とするイソシアネート基末端のウレタンプレポリマーを主成分とする一般的なウレタン系反応性ホットメルト接着剤や、シリコーン系反応性ホットメルト接着剤を用いることができる。ホットメルト型接着剤としては、融点が80〜150℃特に80〜120℃程度であり、硬化点が40〜80℃特に50〜60℃程度であるものが好ましい。ホットメルト型接着剤の塗布量は、接着後の接着剤層の厚さが0.1〜0.5mm特に0.1〜0.3mm程度となる量が好ましい。
【0021】
この金属板裏打ちタイル1を製造するには、図3の通り、タイル2の裏面に熔融状態のホットメルト型接着剤4を塗布し、次いで金属板3を張り合わせ、冷却(例えば放冷)する。この冷却により、ホットメルト型接着剤4が硬化し、タイル2と金属板3とが接着される。また熔融状態のホットメルト型接着剤4に金属板3を張り合わせたときにホットメルト型接着剤4の熱によって金属板3が熱膨張して伸長し、その後、冷却により金属板3が収縮する。この金属板3の収縮により、図1の通り、金属板裏打ちタイル1に凸反りが形成される。
【0022】
図1の通り、金属板裏打ちタイル1の対角線長さをLとし、金属板裏打ちタイル1の凸反り量(板央部における変形量)をhとした場合、h/L×100%が0.1〜2%特に0.3〜1.5%程度であることが好ましい。なお、図1のFは水平面を示している。
【0023】
このように構成された金属板裏打ちタイル1は、常温において凸反りしているので、高温環境下におかれて金属板3が熱膨張して伸長した場合でも、凹反りすることがない。このため、金属板裏打ちタイル1の辺縁が下地から離反して美観が損なわれたり、床面に施工された場合の歩行障害などが防止される。また、この金属板裏打ちタイル1は、タイル2が金属板3で裏打ちされているので、曲げ強度が高く、耐衝撃性にも優れる。タイル2として、上記特許文献2の大形板状焼結体を用いた場合には、タイル2が弾力性に富んだものとなり、金属板裏打ちタイル1の耐衝撃性がさらに向上する。
【実施例】
【0024】
実施例1
タイル2として、特許文献2の実施例に記載の方法によって製造した300×600×4mm程度の大形板状焼結体を用いた。即ち、特許文献2の表1の通り、珪灰石(米国産)50%、滑石10%、粘土10%を調合し、水を外割りで20%加えて混練し、平板状に成形した後、乾燥し、1150℃で焼成した。このタイルの給水率は12.5%、曲げ剛性は565kg/cm、弾性係数は35×10kg/cmであった。金属板3としては厚さ0.35mmのガルバリウム鋼板を用いた。ホットメルト型接着剤としては融点が90℃、硬化点が50℃のウレタン系反応性ホットメルト接着剤を用い、その塗布量は硬化後の接着層の厚さが0.2mmとなる量とした。
【0025】
このホットメルト型接着剤を90℃に加熱して熔融状態とし、タイル2の裏面に塗布した後、金属板3を重ね合わせた。室温(25℃)まで放冷することにより、h/Lが0.5%の金属板裏打ちタイルが得られた。
【0026】
この金属板裏打ちタイルを平坦な水平面上に置き、上方から荷重をかけると、弾性変形して水平状となった。この状態で40℃まで部屋温度及び床の温度を上昇させたが、金属板裏打ちタイル1に凹反りは生じなかった。
【符号の説明】
【0027】
1 金属板裏打ちタイル
2 タイル
3 金属板
4 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陶磁器質タイルの裏面に金属板を接着剤で接着してなる金属板裏打ちタイルにおいて、常温において凸反りしていることを特徴とする金属板裏打ちタイル。
【請求項2】
請求項1において、該金属板裏打ちタイルの対角線長さをLとし、常温における凸反り量をhとした場合、Lが500〜2300mmであり、h/L×100%が0.1〜2%であることを特徴とする金属板裏打ちタイル。
【請求項3】
請求項1又は2の金属板裏打ちタイルを製造する方法であって、前記陶磁器質タイルの裏面に熔融状態のホットメルト型接着剤を塗布した後、金属板を張り合わせ、次いで冷却して陶磁器質タイルと金属板とを接着すると共に、金属板の冷却収縮によって金属板裏打ちタイルを凸反りさせることを特徴とする金属板裏打ちタイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−188876(P2012−188876A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54147(P2011−54147)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】