金属板製造装置及び金属板製造方法
【課題】ロールを用いた連続鋳造によって単層の金属板又は複層のクラッド金属板を省工程で安価に製造できる金属板製造装置及び金属板製造方法を提供する。
【解決手段】冷却用の第1ロール1と金属溶湯を貯めるための第1プール3Aとを備えており、第1プールは第1ロールの表面11と第1ロールの回転方向前方に位置する第1スクレイパー5Aと第1ロールの回転方向後方に位置する後部材31と両サイド部材32とで囲まれており、第1スクレイパーは先端部51Aと第1ロールの表面との間の距離HAが変わり得るように可動に設けられており、第1ロールは第1プール内の第1金属溶湯を冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層を形成しながら第1金属層を伴って回転するようになっており、第1スクレイパーは第1ロールの回転に伴って移動する第1金属層の半凝固状態表面に第1スクレイパーの先端部が一定の力で面的に常時当接するように付勢されている
【解決手段】冷却用の第1ロール1と金属溶湯を貯めるための第1プール3Aとを備えており、第1プールは第1ロールの表面11と第1ロールの回転方向前方に位置する第1スクレイパー5Aと第1ロールの回転方向後方に位置する後部材31と両サイド部材32とで囲まれており、第1スクレイパーは先端部51Aと第1ロールの表面との間の距離HAが変わり得るように可動に設けられており、第1ロールは第1プール内の第1金属溶湯を冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層を形成しながら第1金属層を伴って回転するようになっており、第1スクレイパーは第1ロールの回転に伴って移動する第1金属層の半凝固状態表面に第1スクレイパーの先端部が一定の力で面的に常時当接するように付勢されている
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールを用いた連続鋳造によって、単層の金属板又は複層のクラッド金属板を製造する、金属板製造装置及び金属板製造方法に、関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の産業界においては、CO2排出量の削減が強く求められている。そこで、自動車業界においては、車両の軽量化などを図るために、アルミニウム合金薄板やアルミニウム合金クラッド板を使用することが、提案されている。
【0003】
アルミニウム合金薄板を作製する方法としては、DC鋳造を用いる方法や、それよりも安価に作製する方法として双ロール法が、よく知られているが、双ロール法よりも安価に作製する方法としては、非特許文献1に示されているような単ロール法が知られている。
【0004】
また、アルミニウム合金クラッド板を作製する方法としては、アルミニウム合金薄板を作製した後に圧延して接合を行う接合法、及び、非特許文献2、特許文献1、2に示されているような双ロール法が、知られている。上記接合法においては、アルミニウム合金薄板を作製するために、DC鋳造によって作製した厚さ600mm程度のスラブを、面削処理、熱処理、熱間圧延処理、及び冷間圧延処理するための、設備及び工程が必要であり、また、アルミニウム合金薄板を接合するために、脱脂処理、エッジの溶接処理、及び熱間圧延処理するための、設備及び工程が必要である。したがって、上記接合法によって得られたクラッド板は、高価である。これに対して、双ロール法は、省工程で且つ簡素な装置で実行できるので、安価にクラッド板を作製できるという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−142763号公報
【特許文献2】特開2009−125794号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】羽賀俊雄、外3名、「メルトドラッグ法によるAl‐12%Si合金板の性状に及ぼす溶湯とロールの接触状態」、軽金属 第48巻 第12号、1998年、P613−617
【非特許文献2】T.Haga、外3名、「Clad strip casting by a twin roll caster」、Archives of Materials Science and Engineering、Volume37、Issue2、2009年6月、P117−124
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1の単ロール法では、連続して生産していると、ロールにより形成された金属層の表面に、塊状の盛り上がった部分が発生するために、得られたアルミニウム合金薄板の板厚が不均一である、という不具合がある。
【0008】
更に、ロール法では、溶湯としてマグネシウムを含有するアルミニウム合金を用いた場合、溶湯が凝固収縮を起こしやすく、凝固収縮が起こると結晶粒間に隙間ができるため、鋳巣が発生する。上記単ロール法では、形成された金属層の自由凝固面に鋳巣が発生しやすい、という不具合がある。ところで、自由凝固面とは、ロール表面に直接触れないで凝固した面のことを言う。
【0009】
上記特許文献1、2の双ロール法では、金属溶湯同士が混ざらないようにする目的で仕切り板を設けているが、その仕切り板の先端縁とロールとの距離が固定されているために、溶湯漏が発生しやすく、また、金属溶湯がロール表面で過大に凝固した場合には、凝固した層がロール表面と上記先端縁との間隙に詰まり、装置が停止してしまう、という問題がある。しかも、自由凝固面が平滑にならないために、得られたクラッド板の接合界面が平坦ではなく、金属層間で混合や反応が起こるために、接合界面が不明瞭であり、それ故に、できた金属板の物性が安定しない、という不具合がある。
【0010】
更に、上記双ロール法では、特許文献1の請求項1に記載のように、接合する前に、高融点側の金属溶湯の凝固殻形成を予め完了させておく必要がある。また、融点が低い材料の注湯温度が、融点が高い材料の液相線温度より高いことを、必須の条件としている。しかし、融点が低い材料の金属溶湯がガスを吸収しないで健全性を保つためには、及び、融点の低い材料が急冷凝固されて微細な組織を形成するためには、融点が低い材料の注湯温度は、融点が高い材料の液相線温度より低い、且つ、その材料の液相線より高くとも液相線に近い、温度であることが望ましく、その場合、融点が高い材料の金属溶湯への、及び、ロールへの、熱負荷も、小さくなる。このため、融点が低い材料の注湯温度を、融点が高い材料の液相線温度より低くした場合においても、接合できる方法が、望まれている。
【0011】
また、非特許文献2の双ロール法では、2層のクラッド合金板を製造する装置において、「scriber」と称する可動式仕切り板を用いて、高融点側の金属溶湯が、低融点側の溶湯プールへ漏れないようにする方法が、示されている。しかしながら、可動式仕切り板が平面プレートで構成されており、その先端縁は、ロール表面に形成された金属層に対して、主として線接触しているために、金属層を押し付ける付勢力の調節が難しい。それ故、この可動式仕切り板では、自由凝固面の半凝固状態部分をすべて掻き取って、凝固層のみを引き出すことは、可能であるが、半凝固状態部分の、流動性の高い部分のみを掻き取り、流動性の低い部分を凝固層の上に残して、半凝固状態部分の固相率を調節することは、困難である。更に、付勢力が弱い場合には、溶湯漏れが発生し、付勢力が強い場合には、凝固物がロール表面と可動式仕切り板の先端縁との間隙に詰まり、装置が停止してしまう、という問題がある。
【0012】
ところで、非特許文献2に示されている、上記2層クラッド合金板製装置に、上記可動式仕切り板を、更にもう一枚追加すると、本発明の第6実施形態で示すような、内側に低融点の金属材料を用い、外側に、それより高融点の材料を用いる、3層クラッド合金板製装置を構成できるが、上記問題が、3層クラッド合金板の製造過程においても、同様に発生する。また、可動式仕切り板で金属層の半凝固状態部分をすべて掻き取って、金属層の表面を固相状態にしてから接合すると、融点が低い第2金属溶湯の注湯温度を、融点が高い第1金属及び第3金属の液相線温度よりも高くしないと、接合界面に隙間ができる、という不具合がある。しかし、第2金属溶湯の注湯温度が高いと、第2金属溶湯がガスを吸収し、できた金属板に細かい気泡となって残るために、物性が劣化しやすい。また、第2金属溶湯が急冷凝固されないため、微細な組織を形成することができない。それ故、できた金属板の延性が劣る。更には、両ロールへの熱負荷が大きくなるため、装置の冷却機能への負担も大きくなるという不具合がある。
【0013】
本発明は、ロールを用いた連続鋳造によって、単層の金属板又は複層のクラッド金属板を製造する、金属板製造装置及び金属板製造方法において、上記した諸問題を解消することを目的とし、単層の金属板又は複層のクラッド金属板を、省工程で、安価に、製造できる、金属板製造装置及び金属板製造方法を、提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ロールを用いた連続鋳造によって、単層の金属板又は複層のクラッド金属板を製造する、金属板製造装置において、冷却能を有する第1ロールと、第1金属溶湯を貯めるための第1プールと、を備えており、第1プールは、第1ロールの表面と、第1ロールの回転方向前方に位置する第1前プレートと、第1ロールの回転方向後方に位置する後部材と、両サイド部材と、で囲まれており、第1前プレートは、先端部を有し、前記先端部と第1ロールの表面との間の距離が変わり得るように、可動に設けられており、第1ロールは、第1プール内の第1金属溶湯を冷却して第1ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層を形成しながら第1金属層を伴って回転するようになっており、第1前プレートは、第1ロールの回転に伴って移動する第1金属層の半凝固状態表面に、第1前プレートの先端部が一定の力で面的に常時当接するように付勢されている、ことを特徴としている。
【0015】
ところで、金属溶湯は、ロールで冷却することにより、次第に、液相状態から固相状態へと変化する。液相状態とは、液体の状態を言い、固相状態とは、完全凝固した固体の状態を言う。半凝固状態とは、液相と固相とが混合して、同時に存在する状態であり、液相状態と固相状態との間の状態を言う。固相率とは、半凝固状態における固相の割合を言う。固相率が低いほど、半凝固状態が液相状態に近いために、流動性が高く、固相率が高いほど、半凝固状態が固相状態に近いために、流動性が低いことを意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の金属板製造装置によれば、第1前プレートの先端部が第1金属層の半凝固状態表面に一定の力で面的に当接し続けるので、鋳巣や組成の偏りが発生しやすい第1金属層の半凝固状態表面を掻き取りながら均し、それ故、第1金属層を一定の厚さに調整できる。したがって、本発明の装置によれば、鋳巣や偏析がなく、表面が平滑であり、且つ、板厚分布が略均一な、単層の金属板を、得ることができる。ちなみに、掻き取られた半凝固物は、金属溶湯の熱で再度溶解されるので、第1前プレートの先端部と第1ロールとの間隙に詰まることはない。
【0017】
更に、上述したように、第1前プレートによって、第1金属層の表面を平滑化できるので、その表面に第2金属層を形成した場合に、接合界面が良好なクラッド金属板を得ることができる。
【0018】
しかも、第1前プレートへの付勢力を調節することによって、第1金属層の半凝固状態部分の固相率を調節して、第1金属層の半凝固状態表面を、流動性が低い半凝固状態にしておくことにより、融点が低い第2金属溶湯の注湯温度を、融点が高い第1金属液相線温度より低くした場合においても、金属溶等同士が混合や反応をせずに接合界面が明瞭で、且つ、接合界面に隙間が発生せずに接合界面の密着性の高い、良好なクラッド金属板を得ることができる。これにより、融点が低い第2金属溶湯を、融点が高い材料の液相線温度より低い、且つ、第2金属の液相線より高くとも液相線に近い、温度でも、注湯できるため、第2金属溶湯がガスを吸収しないで健全性を保ち、且つ、第2金属溶湯が急冷凝固されて微細な組織を形成するので、できた金属板の延性が優れている。この場合、融点が高い第1金属溶湯への、及び、ロールへの、熱負荷も、小さくなる。よって、装置の冷却機能への負担を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の金属板製造装置の第1実施形態を示す正面断面概略図である。
【図2】図1のII矢視部分図である。
【図3】第1スクレイパーの一部断面部分図である。
【図4】第1実施形態の作動を示す正面断面概略図である。
【図5】本発明の金属板製造装置の第2実施形態を示す正面断面概略図である。
【図6】第2実施形態の作動を示す正面断面概略図である。
【図7】本発明の金属板製造装置の第3実施形態を示す正面断面概略図である。
【図8】第3実施形態の作動を示す正面断面概略図である。
【図9】本発明の金属板製造装置の第4実施形態を示す正面断面概略図である。
【図10】第4実施形態の作動を示す正面断面概略図である。
【図11】本発明の金属板製造装置の第5実施形態の作動を示す正面断面概略図である。
【図12】本発明の金属板製造装置の第6実施形態の作動を示す正面断面概略図である。
【図13】本発明の金属板製造装置の第7実施形態の作動を示す正面断面概略図である。
【図14】第2実施例で得られたクラッド金属板の断面を示す、図面に代わる写真である。
【図15】第2実施例と比較するために作製されたクラッド金属板の断面を示す、図面に代わる写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明の金属板製造装置の第1実施形態を示す正面断面概略図である。この装置10Aは、1種の金属溶湯から単層の金属板を製造するための装置であり、単ロール法を採用している。
【0021】
装置10Aは、第1ロール1及び第1プール3Aを備えている。
【0022】
第1ロール1は、その表面11に接触した金属溶湯を冷却しながら回転するようになっており、すなわち、第1ロール1は、その表面11に半凝固状態乃至凝固状態の金属層を形成しながらその金属層を伴って回転し、回転しながらその金属層を完全凝固させるようになっている。第1ロール1は、その表面11に接触した金属溶湯を冷却するための冷却機構(図示せず)を有している。その冷却機構としては、冷却水がロール内部を循環することにより冷却機能を発揮する「水冷式」を採用しているが、他の機構を採用してもかまわない。また、第1ロール1の外部に冷却機構を備えていれば、第1ロール1の内部に冷却機構を有していなくてもよい。
【0023】
第1プール3Aは、金属溶湯を貯めることができるように、第1ロール1の表面11と、第1ロール1の回転方向(矢印R1方向)前方に位置する第1前プレート(以下「第1スクレイパー」と称する)5Aと、第1ロール1の回転方向後方に位置する後部材31と、両サイド部材32と、で囲まれている。
【0024】
後部材31は、製作が安価で設置が簡単なため、ここでは、プレートで構成されているが、第1プール3Aの後壁を構成できるならば、他の部材でもよい。後部材31の先端縁311は、第1プール3A内に貯められた金属溶湯が後方へ漏れるのを防止できる距離まで、第1ロール1の表面11に近接している。後部材31の先端縁311は、第1ロール1の回転を許容する限りにおいて、第1ロール1の表面11に当接してもよいが、回転する第1ロール1との摩擦によって互いに摩耗しないようにするには、第1ロール1の表面11に当接していない方が好ましい。
【0025】
図2は、図1のII矢視部分図である。両サイド部材32は、ここでは、プレートで構成されているが、第1プール3Aの両側壁を構成できるならば、他の部材でもよい。また、両サイド部材32は、図1に示した位置に固定されていなくてもよい。具体的には、第1ロール1の端に、円盤又はリング状の両サイド部材32を、第1ロール1の鍔となるように取り付けてもよい。サイド部材32は、図1に示されるように、第1スクレイパー5Aと後部材31との間に空間を確保できる長さSを、有している。サイド部材32の内面321は、第1プール3A内に貯めた金属溶湯が第1ロール1の両側に漏れるのを防止できる距離まで、第1ロール1の側面12に近接している。サイド部材32の内面321は、第1ロール1の回転を許容する限りにおいて、第1ロール1の側面12に当接してもよいが、回転する第1ロール1との摩擦によって互いに摩耗しないようにするには、第1ロール1の側面12に当接していない方が好ましい。
【0026】
そして、第1スクレイパー5Aは、第1プール3Aの前壁を構成するように、プレートを加工して設けられている。第1スクレイパー5Aは、図1の断面図に示したように、ここでは、断面が、折り曲げ形態を有しているが、直線又は円弧状の形態を有していてもよい。第1スクレイパー5Aは、その先端が鈍角に折れ曲がっており、折れ曲がった箇所から先端が、先端部51Aになっている。そして、第1スクレイパー5Aは、先端部51Aと第1ロール1の表面11との間の距離HAが変わり得るように、可動に設けられている。具体的には、第1スクレイパー5Aは、基端部52Aにて、水平軸521A回り(矢印Y方向)に回動自在に支持されており、これにより、距離HAが可変となっている。また、第1スクレイパー5Aは、距離HAが小さくなる方向(矢印Y1方向)に回動するように、常時付勢されている。具体的には、第1スクレイパー5Aの基端部52Aには、紐61Aを介して所定重量の錘6Aが連結されており、第1スクレイパー5Aは、錘6Aによって、矢印Y1方向に回動するように、常時、一定の力で引っ張られている。これにより、第1スクレイパー5Aの先端部51Aは、第1ロール1の表面11に向かって、常時、一定の力で付勢されている。なお、この一定の力とは、第1プール3Aに注湯される金属溶湯の半凝固状態における硬さに相当する力であり、金属層の半凝固状態表面の固相率の低い部分を掻き取りながら金属層を平坦に均す程度の力である。第1スクレイパー5Aに対する付勢は、距離HAが変わっても、常時、一定の力で付勢できるので、且つ、装置を簡易に構成できるので、錘の力で行うのが好ましいが、同様の効果が得られるのであれば、油圧など、他の機構を採用してもよい。
【0027】
第1スクレイパー5Aの先端部51Aは、第1ロール上の半凝固状態乃至凝固状態の金属層に接するが、この金属層はロール面と平行であるため、先端部51Aが、この金属層に、線接触ではなく、面接触するためには、第1ロール1と先端部51Aの裏面(ロール側の面)とのなす角度は30度未満であることが必要であり、より好ましくは角度が0、すなわち平行である。また、先端部51Aの長さは、5mm以上30mm以下がよく、10mm以上20mm以下が好ましい。これは、先端部51Aの長さが短すぎれば、面接触の効果が弱くなり、長すぎれば、伸びた先端部の上に凝固物が堆積する恐れがあるためである。また、先端部の裏面は、平面が好ましいが、平面性を実質的に損なわない範囲で曲率半径の大きな凸面になっていてもよい。
【0028】
図3は、第1スクレイパー5Aの一部断面部分図である。第1スクレイパー5Aは、芯材531の表面が2種類の保護材料532、533で二重に覆われた構成を、採用している。芯材531には、鋼板を採用しているが、材質を特に限定するものではなく、他の金属の板を採用してもよい。芯材531の表面には、金属溶湯と反応しないために、また、スクレイパーからの熱伝導により金属溶湯の温度低下を防ぐために、保護材料が平面性を損なわない範囲の厚さで付設されている。保護材料532、533には、シリカ、アルミナシリカなどのクロスシートが使用できる。
【0029】
次に、上記構成の装置10Aの作動について、図4を参照しながら、説明する。なお、図4では、両サイド部材32の図示を省略している。
【0030】
まず、第1プール3Aに第1金属溶湯4Aを注湯しながら(第1注湯工程)、装置10Aを起動させる。そうすると、第1ロール1が、所定速度で回転するとともに、冷却機能が作動する。これにより、第1ロール1が、その表面11に接触している第1プール3A内の第1金属溶湯4Aを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層41を形成しながら第1金属層41を伴って回転する(第1冷却工程)。なお、第1金属層41は、第1ロール1の表面11側から、凝固状態へと変化していく。また、後部材31の下端縁311から第1スクレイパー5Aの先端部51Aまでの円周距離L1(図1)は、半凝固状態表面を有する第1金属層41が形成され得る距離に、設定されている。そして、第1ロール1は、第1金属層41が、第1スクレイパー5Aの先端部51Aと第1ロール1の表面11との間を通過した後、すなわち、第1スクレイパー5Aを越えた後は、回転しながら第1金属層41を更に冷却して完全凝固させる。こうして、第1金属溶湯4Aが完全凝固してなる金属板40Aが、得られる。
【0031】
ところで、半凝固状態表面を有する第1金属層41が第1スクレイパー5Aを越える時には、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが第1金属層41の表面に一定の力で面的に当接し続ける(第1スクレイピング工程)。すなわち、第1スクレイパー5Aの先端部51Aは、第1金属層41の厚さに追従する。これにより、第1金属層41の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第1金属層41が一定の厚さに調整される。
【0032】
したがって、装置10Aによれば、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが第1金属層41の半凝固状態表面に一定の力で面的に当接し続けるので、鋳巣や組成の偏りが発生しやすい第1金属層41の半凝固状態表面を掻き取るとともに、第1金属層41を一定の厚さに調整できる。したがって、本発明の装置によれば、鋳巣や偏析がなく、表面が平滑であり、且つ、板厚分布が略均一な、単層の金属板40Aを、得ることができる。
【0033】
特に、溶湯としてマグネシウムを含有するアルミニウム合金を用いた場合、ロール法を用いた鋳造では、溶湯が凝固収縮を起こしやすく、凝固収縮が起こると結晶粒間に隙間ができるため、鋳巣が発生しやすい。しかし、第1スクレイパー5Aで第1金属層41表面近傍の鋳巣の発生しやすい部位を掻き取るため、鋳巣がない単層のアルミマグネシウム合金の金属板40Aを、得ることができる。
【0034】
また、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが、上記作動においては、第1金属層41の表面に面接触する。それ故、先端部51Aは、第1金属層41の表面に確実に当接する。したがって、装置10Aによれば、第1スクレイパー5Aの上述した機能を、より良好に発揮できる。
【0035】
更に、第1スクレイパー5Aの表面が保護材料532、533で覆われているので、上記作動においては、第1金属溶湯4Aの温度低下が防止され、また、第1金属溶湯4Aが第1スクレイパー5Aの表面に固着してしまうのが防止される。したがって、装置10Aによれば、この点からも、第1スクレイパー5Aの上述した機能を、より良好に発揮でき、しかも、金属板40Aの生産効率を向上できる。
【0036】
[第2実施形態]
図5は、本発明の金属板製造装置の第2実施形態を示す正面断面概略図である。この装置10Bは、2種の金属溶湯から2層のクラッド金属板を製造するための装置であり、単ロール法を採用している。
【0037】
装置10Bは、第1ロール1、第1プール3A、及び第2プール3Bを、備えている。
【0038】
第1ロール1は、第1実施形態の第1ロール1と同じ構成を有している。
【0039】
第1プール3Aは、第1実施形態の第1プール3Aと同じ構成を有している。
【0040】
第2プール3Bは、金属溶湯を貯めることができように、第1スクレイパー5Aと、両サイド部材32と、第1スクレイパー5Aより第1ロール1の回転方向(矢印R1方向)前方に設けられた第2前プレート(以下「第2スクレイパー」と称する)5Bと、第1ロール1の表面11と、で囲まれている。
【0041】
第1スクレイパー5Aは、第1実施形態の第1スクレイパー5Aと同じ構成を有している。
【0042】
第2スクレイパー5Bは、第2プール3Bの前壁を構成している。第2スクレイパー5Bは、第1スクレイパー5Aと同様の形態を有しており、先端部51Bと第1ロール1の表面11との間の距離HBが変わり得るように、可動に設けられている。具体的には、第2スクレイパー5Bは、基端部52Bにて、水平軸521B回り(矢印Y方向)に回動自在に支持されており、これにより、距離HBが可変となっている。また、第2スクレイパー5Bは、距離HBが小さくなる方向(矢印Y1方向)に回動するように、常時付勢されている。具体的には、第2スクレイパー5Bの基端部52Bには、紐61Bを介して所定重量の錘6Bが連結されており、第2スクレイパー5Bは、錘6Bによって、矢印Y1方向に回動するように、常時、一定の力で引っ張られている。これにより、第2スクレイパー5Bの先端部51Bは、第1ロール1の表面11に向かって、常時、一定の力で付勢されている。なお、この一定の力とは、第2プール3Bに注湯される金属溶湯の半凝固状態における硬さに相当する力であり、金属層の半凝固状態表面の固相率の低い部分を掻き取りながら金属層を平坦に均す程度の力である。第2スクレイパー5Bに対する付勢は、距離HBが変わっても、常時、一定の力で付勢できるので、且つ、装置を簡易に構成できるので、錘の力で行うのが好ましいが、同様の効果が得られるのであれば、油圧など、他の機構を採用してもよい。
【0043】
第2スクレイパー5Bの先端部51Bが、上記金属層に面接触するためには、第1実施形態の第1スクレイパー5Aと同様に、第1ロール1と先端部51Bの裏面(ロール側の面)とのなす角度は、30度未満であることが必要であり、より好ましくは角度が0、すなわち平行である。また、先端部51Bの長さは、5mm以上30mm以下がよく、10mm以上20mm以下が好ましい。これは、先端部51Bの長さが短すぎれば、面接触の効果が弱くなり、長すぎれば、伸びた先端部の上に凝固物が堆積する恐れがあるためである。先端部51Bの裏面は、平面が好ましいが、平面性を実質的に損なわない範囲で曲率半径の大きな凸面になっていてもよい。
【0044】
また、第2スクレイパー5Bは、第1スクレイパー5A(図3)と同様に、芯材531の表面が2種類の保護材料532、533で二重に覆われた構成を、採用している。
【0045】
後部材31は、第1実施形態の後部材31と同じ構成を有している。
【0046】
両サイド部材32は、第1実施形態の両サイド部材32と同じ構成を有しているが、第2プール3Bの両側壁も構成できるように、拡張して設けられている。又は、第1実施形態で具体例を示したような、鍔付きの第1ロール1を採用してもよい。
【0047】
次に、上記構成の装置10Bの作動について、図6を参照しながら、説明する。なお、図6では、両サイド部材32の図示を省略している。また、第2プール3Bに注湯する第2金属溶湯4Bの融点は、第1プール3Aに注湯する第1金属溶湯4Aの融点以下である。
【0048】
まず、第1プール3Aに第1金属溶湯4Aを注湯しながら、及び、第2プール3Bに第2金属溶湯4Bを注湯しながら、装置10Bを起動させる。そうすると、第1ロール1が、所定速度で回転するとともに、冷却機能が作動する。これにより、第1ロール1が、その表面に接触している第1プール3A内の第1金属溶湯4Aを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層41を形成しながら第1金属層41を伴って回転する。なお、第1金属層41は、第1ロール1の表面11側から凝固状態へと変化していく。また、第1ロール1における後部材31の下端縁311から第1スクレイパー5Aの先端部51Aまでの円周距離L1(図6)は、半凝固状態表面を有する第1金属層41が形成され得る距離に、設定されている。
【0049】
そして、第1金属層41が、第1ロール1の回転に伴って移動して第1スクレイパー5Aを越えると、第2プール3B内の第2金属溶湯4Bが、第1金属層41に接触して、第1金属層41を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第2金属溶湯4B自体は冷却される。これにより、第1金属層41表面には、第2金属溶湯4Bの半凝固状態の第2金属層42が形成され、第2金属層42は、第1ロール1の回転に伴って、第1金属層41と共に移動する。そして、第1金属層41及び第2金属層42は、第1ロール1の回転に伴って、更に冷却される。
【0050】
これにより、第1金属溶湯4Aが完全凝固してなる第1金属層401と、第2金属溶湯4Bが完全凝固してなる第2金属層402と、が接合してなるクラッド金属板40Bが、得られる。
【0051】
ところで、第1金属層41が第1スクレイパー5Aを越える時には、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが第1金属層41の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第1金属層41の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第1金属層41が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層42は、第1金属層41の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0052】
一方、第2金属層42が第2スクレイパー5Bを越える時には、第2スクレイパー5Bの先端部51Bが第2金属層42の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第2金属層42の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第2金属層42が一定の厚さに調整される。
【0053】
したがって、装置10Bによれば、第1金属層401と第2金属層402との界面が明瞭であり、且つ、第1金属層401及び第2金属層402の、厚さ分布が略均一な、2層のクラッド金属板40Bを、得ることができる。
【0054】
また、第2スクレイパー5Bの先端部51Bが、上記作動においては、第2金属層42の表面に面接触する。それ故、先端部51Bは、第2金属層42の表面に確実に当接する。したがって、装置10Bによれば、第2スクレイパー5Bの上述した機能を、より良好に発揮できる。
【0055】
更に、第2スクレイパー5Bの表面が保護材料532、533で覆われているので、上記作動においては、第2金属溶湯4Bの温度低下が防止され、また、第2金属溶湯4Bが第2スクレイパー5Bの表面に固着してしまうのが防止される。したがって、装置10Bによれば、この点からも、第2スクレイパー5Bの上述した機能を、より良好に発揮でき、しかも、金属板40Bの生産効率を向上できる。
【0056】
なお、第1スクレイパー5Aによるその他の作用効果は、第1実施形態の場合と同じである。
【0057】
[第3実施形態]
図7は、本発明の金属板製造装置の第3実施形態を示す正面断面概略図である。この装置10Cは、2種の金属溶湯から2層のクラッド金属板を製造するための装置であり、双ロール法を採用している。
【0058】
装置10Cは、第1ロール1、第2ロール2、第1プール3A、及び第2プール3Bを、備えている。
【0059】
第1ロール1は、第1実施形態の第1ロール1と同じ構成を有している。
【0060】
第2ロール2は、第1スクレイパー5Aより第1ロール1の回転方向(矢印R1方向)前方において、第1ロール1に対向して配置されており、且つ、第1ロール1に向けて(すなわち矢印A方向に)付勢されて設けられている。例えば、第2ロール2は、ばね付勢されている。
【0061】
上記第2ロール2は、第1ロール1の直径と同じものでも良いが、小径ロールの方が安価であるため、且つ、第1プール3A及び第2プール3Bを備えるための空間を広く確保できるため、第1ロール1の直径より小さい直径のロールを採用している。また、第2ロール2は、第1ロール1とは反対方向(矢印R2方向)に回転するように、それぞれ単独で駆動されるように、設けられており、更に、両ロール1、2は、ロール表面11、21における周速が、同じになるように、設定されている。具体的には、駆動モーターを2台用いた方式、いわゆるツインドライブ方式を採用することにより、これを達成できる。また、両ロール1、2が同径の場合は、それぞれ単独で駆動されるように、設けられていなくてもよい。これには、いわゆるシングルドライブ方式が採用できる。
【0062】
更に、第2ロール2も、第1ロール1と同様に、その表面11に接触した金属溶湯を冷却するための冷却機構(図示せず)を有している。その冷却機構としては、冷却水がロール内部を循環することにより冷却能を発揮する「水冷式」を、採用しているが、他の方式を採用してもかまわない。また、第2ロール2の外部に冷却機構を備えていれば、第2ロール2の内部に冷却機構を有していなくてもよい。
【0063】
第1プール3Aは、第1実施形態の第1プール3Aと同じ構成を有している。
【0064】
第2プール3Bは、金属溶湯を貯めることができるように、第2ロール2の表面21と、第1スクレイパー5Aと、両サイド部材32と、第1ロール1の表面11と、で囲まれている。
【0065】
第1スクレイパー5Aは、第1実施形態の第1スクレイパー5Aと同じ構成を有している。
【0066】
後部材31は、第1実施形態の後部材31と同じ構成を有している。
【0067】
両サイド部材32は、第1実施形態の両サイド部材32と同じ構成を有しているが、第2プール3Bの両側壁も構成できるように、拡張して設けられている。又は、第1実施形態で具体例を示したような、鍔付きの第1ロール1を採用してもよい。
【0068】
次に、上記構成の装置10Cの作動について、図8を参照しながら、説明する。なお、図8では、両サイド部材32の図示を省略している。また、第2プール3Bに注湯する第2金属溶湯4Bの融点は、第1プール3Aに注湯する第1金属溶湯4Aの融点以下である。
【0069】
まず、第1プール3Aに第1金属溶湯4Aを注湯しながら(第1注湯工程)、及び、第2プール3Bに第2金属溶湯4Bを注湯しながら(第2注湯工程)、装置10Bを起動させる。そうすると、第1ロール1と第2ロール2が、所定速度で回転するとともに、冷却機能が作動する。これにより、第1ロール1が、その表面11に接触している第1プール3A内の第1金属溶湯4Aを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層41を形成しながら第1金属層41を伴って回転し(第1冷却工程)、また、第2ロール2が、その表面21に接触している第2プール3B内の第2金属溶湯4Bを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第2金属層42を形成しながら第2金属層42を伴って回転する(第2冷却工程)。なお、第1金属層41は、第1ロール1の表面11側から、凝固状態へと変化していき、また、第2金属層42は、第2ロール2の表面21側から、凝固状態へと変化していく。また、第1ロール1における後部材31の下端縁311から第1スクレイパー5Aの先端部51Aまでの円周距離L1(図7)は、半凝固状態を有する第1金属層41が形成され得る距離に、設定されており、また、第2ロール2における第2プール3Bの液面から両ロール1、2のキス点までの円周距離L2は、半凝固状態を有する第2金属層42が形成され得る距離に、設定されている。
【0070】
そして、第1金属層41が、第1ロール1の回転に伴って移動して第1スクレイパー5Aを越えると、第2ロール2の回転に伴って移動して来た第2金属層42が、第1金属層41に、接触していく。そして、接触した両金属層41、42が、両ロール1、2によって接合されるとともに、両ロール1、2によって更に冷却される(仕上げ工程)。
【0071】
これにより、第1金属溶湯4Aが完全凝固してなる第1金属層401と、第2金属溶湯4Bが完全凝固してなる第2金属層402と、が接合してなるクラッド金属板40Cが、得られる。
【0072】
ところで、半凝固状態を有する第1金属層41が第1スクレイパー5Aを越える時には、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが第1金属層41の表面に一定の力で面的に当接し続ける(第1スクレイピング工程)。これにより、第1金属層41の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第1金属層41が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層42は、第1金属層41の平坦な表面に、形成されることとなる。このとき、仕上げ工程における接合性が向上するので、第1金属層41の半凝固状態表面の固相率の低い部分を掻き取り、第1金属層41の半凝固状態表面を、流動性が低い半凝固状態にしておくのがよい。
【0073】
したがって、装置10Cによれば、第1金属層401と第2金属層402との界面が明瞭であり、且つ、第1金属層401及び第2金属層402の厚さ分布が略均一な、2層のクラッド金属板40Cを、得ることができる。なお、界面が明瞭であるとは、金属溶湯同士の混合や反応がない状態を言う。
【0074】
また、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが、上記作動においては、第1金属層41の表面に面接触する。それ故、先端部51Aは、第1金属層41の表面に確実に当接する。したがって、装置10Cによれば、第1スクレイパー5Aの上述した機能を、より良好に発揮できる。
【0075】
更に、第1スクレイパー5Aへの付勢力を調節することによって、第1金属層41の半凝固状態部分の固相率を調節して、第1金属層41の半凝固状態表面を、流動性が低い半凝固状態にしておくことにより、融点が低い第2金属溶湯4Bの注湯温度を、融点が高い第1金属溶湯4Aの液相線温度より低くした場合においても、金属溶等同士が混合や反応をせずに接合界面が明瞭で、且つ、接合界面に隙間が発生せずに接合界面の密着性の高い、良好なクラッド金属板を得ることができる。これにより、融点が低い第2金属溶湯4Bを、第2金属溶湯4Bの液相線より高くとも液相線に近い温度でも注湯できるので、第2金属溶湯4Bがガスを吸収しないで健全性を保ち、且つ、第2金属溶湯4Bが急冷凝固されて微細な組織を形成するので、できたクラッド金属板の延性が優れている。この場合、融点が高い第1金属溶湯4Aへの、及び、両ロール1、2への、熱負荷も、小さくなる。よって、装置の冷却機能への負担を減らすことができる。
【0076】
更に、第1スクレイパー5Aの表面が保護材料532、533で覆われているので、上記作動においては、第1金属溶湯4A及び第2金属溶湯4Bの温度低下が防止され、また、第1金属溶湯4A及び第2金属溶湯4Bが第1スクレイパー5Aの表面に固着してしまうのが防止される。したがって、装置10Cによれば、この点からも、第1スクレイパー5Aの上述した機能を、より良好に発揮でき、しかも、金属板40Cの生産効率を向上できる。
【0077】
[第4実施形態]
図9は、本発明の金属板製造装置の第4実施形態を示す正面断面概略図である。この装置10Dは、2種又は3種の金属溶湯から3層のクラッド金属板を製造するための装置であり、双ロール法を採用している。
【0078】
装置10Dは、第1ロール1、第2ロール2、第1プール3A、第2プール3B、及び第3プール3Cを、備えている。
【0079】
第1ロール1は、第1実施形態の第1ロール1と同じ構成を有している。
【0080】
第2ロール2は、第3実施形態の第2ロール2と同じ構成を有している。
【0081】
第1プール3Aは、第1実施形態の第1プール3Aと同じ構成を有している。
【0082】
第2プール3Bは、金属溶湯を貯めることができように、第1スクレイパー5Aと、両サイド部材32と、第1スクレイパー5Aより第1ロール1の回転方向(矢印R1方向)前方に設けられた第2前プレート(以下「第2スクレイパー」と称する)5Bと、第1ロール1の表面11と、第2ロール2の表面21と、で囲まれている。
【0083】
第3プール3Cは、金属溶湯を貯めることができように、第2ロール2の表面21と、第2スクレイパー5Bと、両サイド部材32と、で囲まれている。
【0084】
第1スクレイパー5Aは、第1実施形態の第1スクレイパー5Aと同じ構成を有している。
【0085】
第2スクレイパー5Bは、第2プール3Bの前壁と第3プール3Cの後壁とを兼ねており、プレートを加工して設けられている。第1スクレイパー5Bは、図9の断面図に示したように、ここでは、断面が、折り曲げ形態を有しているが、直線又は円弧状の形態を有していてもよい。第2スクレイパー5Bは、その先端が鈍角に折れ曲がっており、折れ曲がった箇所から先端が、先端部51Bになっている。そして、第1スクレイパー5Bは、先端部51Bと第2ロール1の表面21との間の距離HBが変わり得るように、可動に設けられている。具体的には、第2スクレイパー5Bは、基端部52Bにて、水平軸521B回り(矢印Y方向)に回動自在に支持されており、これにより、距離HBが可変となっている。また、第2スクレイパー5Bは、距離HBが小さくなる方向(矢印Y2方向)に回動するように、常時付勢されている。具体的には、第2スクレイパー5Bの基端部52Bには、紐61Bを介して所定重量の錘6Bが連結されており、第2スクレイパー5Bは、錘6Bによって、矢印Y2方向に回動するように、常時、一定の力で引っ張られている。これにより、第2スクレイパー5Bの先端部51Bは、第2ロール2の表面21に向かって、常時、一定の力で付勢されている。なお、この一定の力とは、第3プール3Cに注湯される金属溶湯の半凝固状態における硬さに相当する力であり、金属層の半凝固状態表面の固相率の低い部分を掻き取りながら金属層を平坦に均す程度の力である。第2スクレイパー5Bに対する付勢は、装置を簡易に構成できるので、錘の力で行っているが、油圧など、他の機構を採用してもよい。
【0086】
第2スクレイパー5Bの先端部51Bが、上記金属層に面接触するためには、第1実施形態の第1スクレイパー5Aと同様に、第2ロール2と先端部51Bの裏面(ロール側の面)とのなす角度は、30度未満であることが必要であり、より好ましくは角度が0、すなわち平行である。また、先端部51Bの長さは、5mm以上30mm以下がよく、10mm以上20mm以下が好ましい。これは、先端部51Bの長さが短すぎれば、面接触の効果が弱くなり、長すぎれば、伸びた先端部の上に凝固物が堆積する恐れがあるためである。先端部51Bの裏面は、平面が好ましいが、平面性を実質的に損なわない範囲で曲率半径の大きな凸面になっていてもよい。
【0087】
また、第2スクレイパー5Bは、第1スクレイパー5A(図3)と同様に、芯材531の表面が2種類の保護材料532、533で二重に覆われた構成を、採用している。
【0088】
後部材31は、第1実施形態の後部材31と同じ構成を有している。
【0089】
両サイド部材32は、第1実施形態の両サイド部材32と同じ構成を有しているが、第2プール3B及び第3プール3Cの、両側壁も構成できるように、拡張して設けられている。又は、第1実施形態で具体例を示したような、鍔付きの第1ロール1を採用してもよい。
【0090】
次に、上記構成の装置10Dの作動について、図10を参照しながら、説明する。なお、図10では、両サイド部材32の図示を省略している。また、第2プール3Bに注湯する第2金属溶湯4Bの融点は、第1プール3Aに注湯する第1金属溶湯4Aの融点以下であり、また、第3プール3Cに注湯する第3金属溶湯4Cの融点は、第2金属溶湯4Bの融点以上である。第1金属溶湯4Aと第3金属溶湯4Cとは、同じでもよい。
【0091】
まず、第1プール3Aに第1金属溶湯4Aを注湯しながら(第1注湯工程)、及び、第2プール3Bに第2金属溶湯4Bを注湯しながら(第2注湯工程)、及び、第3プール3Cに第3金属溶湯4Cを注湯しながら(第3注湯工程)、装置10Cを起動させる。そうすると、第1ロール1と第2ロール2が、所定速度で回転するとともに冷却機能が作動する。これにより、第1ロール1が、その表面11に接触している第1プール3A内の第1金属溶湯4Aを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層41を形成しながら第1金属層41を伴って回転し(第1冷却工程)、また、第2ロール2が、その表面21に接触している第3プール3C内の第3金属溶湯4Cを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第3金属層43を形成しながら第3金属層43を伴って回転する(第2冷却工程)。なお、第1金属層41は、第1ロール1の表面11側から、凝固状態へと変化していき、また、第3金属層43は、第2ロール2の表面21側から、凝固状態へと変化していく。また、第1ロール1における後部材31の下端縁311から第1スクレイパー5Aの先端部51Aまでの円周距離L1(図9)は、半凝固状態表面を有する第1金属層41が形成され得る距離に、設定されており、また、第2ロール2における第3プール3Cの液面から両ロール1、2のキス点までの円周距離L3は、半凝固状態表面を有する第3金属層43が形成され得る距離に、設定されている。
【0092】
そして、第1金属層41が、第1ロール1の回転に伴って移動して第1スクレイパー5Aを越えると、第2プール3B内の第2金属溶湯4Bが、第1金属層41に接触して、第1金属層41を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第2金属溶湯4B自体は冷却される。これにより、第1金属層41表面には、第2金属溶湯4Bの半凝固状態の第2金属層421が形成され、第2金属層421は、第1ロール1の回転に伴って、第1金属層41と共に移動する。一方、第3金属層43が、第2ロール2の回転に伴って移動して第2スクレイパー5Bを越えると、第2プール3B内の第2金属溶湯4Bが、第3金属層43に接触して、第3金属層43を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第2金属溶湯4B自体は冷却される。これにより、第3金属層43表面には、第2金属溶湯4Bの半凝固状態の第2金属層422が形成され、第2金属層422は、第2ロール2の回転に伴って、第3金属層43と共に移動する。なお、第1ロール1における第1スクレイパー5Aの先端部51Aから両ロール1、2のキス点までの円周距離L2は、半凝固状態の第2金属層421、422が形成され得る距離に、設定されている。
【0093】
そして、両ロール1、2の回転に伴って、第2金属層421と第2金属層422とが接触していき、第1金属層41と第2金属層421と第2金属層422と第3金属層43とが、両ロール1、2によって接合されるとともに、両ロール1、2によって更に冷却される(仕上げ工程)。
【0094】
これにより、第1金属溶湯4Aが完全凝固してなる第1金属層401と、第2金属溶湯4Bが完全凝固してなる第2金属層402と、第3金属溶湯4Cが完全凝固してなる第3金属層403と、が接合してなるクラッド金属板40Dが、得られる。
【0095】
ところで、第1金属層41が第1スクレイパー5Aを越える時には、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが第1金属層41の表面に一定の力で面的に当接し続ける(第1スクレイピング工程)。これにより、第1金属層41の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第1金属層41が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層421は、第1金属層41の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0096】
一方、第3金属層43が第2スクレイパー5Bを越える時には、第2スクレイパー5Bの先端部51Bが第3金属層43の表面に一定の力で当接し続ける(第2スクレイピング工程)。これにより、第3金属層43の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第3金属層43が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層422は、第3金属層43の平坦な表面に、形成されることとなる。このとき、仕上げ工程における接合性が向上するので、第1金属層41及び第3金属層43の半凝固状態表面の固相率の低い部分を掻き取り、両金属層41、43の半凝固状態表面を、流動性が低い半凝固状態にしておくのがよい。
【0097】
したがって、装置10Dによれば、第1金属層401と第2金属層402と第3金属層403との各界面が明瞭であり、且つ、第1金属層401、第2金属層402、及び第3金属層403の、厚さ分布が略均一な、3層のクラッド金属板40Dを、得ることができる。
しかも、金属層間の界面が明瞭であるので、第2金属溶湯4Bの融点が第1金属溶湯4A及び第3金属溶湯4Cの融点以下であっても、良品のクラッド金属板を得ることができる。
【0098】
また、第2スクレイパー5Bの先端部51Bは、上記作動においては、第3金属層43の表面に面接触する。それ故、先端部51Bは、第3金属層43の表面に確実に当接する。したがって、装置10Dによれば、第2スクレイパー5Bの上述した機能を、より良好に発揮できる。
【0099】
更に、第1スクレイパー5Aへの付勢力を調節することによって、第1金属層41及び第3金属層43の半凝固状態部分の固相率を調節して、両金属層の半凝固状態表面を流動性が低い半凝固状態にしておくことにより、融点が低い第2金属溶湯4Bの注湯温度を、融点が高い第1金属溶湯4A及び第3金属溶湯4Cの液相線温度より低くした場合においても、金属溶等同士が混合や反応をせずに接合界面が明瞭で、且つ、接合界面に隙間が発生せずに接合界面の密着性の高い、良好なクラッド金属板を得ることができる。これにより、融点が低い第2金属溶湯4Bを、第2金属溶湯4Bの液相線より高くとも液相線に近い温度でも注湯できるので、第2金属溶湯4Bがガスを吸収しないで健全性を保ち、且つ、第2金属溶湯4Bが急冷凝固されて微細な組織を形成するので、できたクラッド金属板の延性が優れている。この場合、融点が高い第1金属溶湯4A及び第3金属溶湯4Cへの、及び、両ロール1、2への、熱負荷も、小さくなる。よって、装置の冷却機能への負担を減らすことができる。
【0100】
更に、第2スクレイパー5Bの表面が保護材料532、533で覆われているので、上記作動においては、第2金属溶湯4B及び第3金属溶湯4Cの温度低下が防止され、また、第2金属溶湯4B及び第3金属溶湯4Cが第2スクレイパー5Bの表面に固着してしまうのが防止される。したがって、装置10Dによれば、この点からも、第2スクレイパー5Bの上述した機能を、より良好に発揮でき、しかも、金属板40Dの生産効率を向上できる。
【0101】
なお、第1スクレイパー5Aによるその他の作用効果は、第3実施形態の場合と同じである。
【0102】
[第5実施形態]
図11は、本発明の金属板製造装置の第5実施形態を示す正面断面概略図である。この装置10Eは、3種又は4種の金属溶湯から4層のクラッド金属板を製造するための装置であり、双ロール法を採用している。
【0103】
装置10Eは、第1ロール1、第2ロール2、第1プール3A、第2プール3B、第3プール3C、及び第4プール3Dを、備えている。
【0104】
第1ロール1は、第1実施形態の第1ロール1と同じ構成を有している。
【0105】
第2ロール2は、第3実施形態の第2ロール2と同じ構成を有している。
【0106】
第1プール3Aは、第1実施形態の第1プール3Aと同じ構成を有している。
【0107】
第2プール3Bは、金属溶湯を貯めることができように、第1スクレイパー5Aと、両サイド部材32と、第1スクレイパー5Aより第1ロール1の回転方向(矢印R1方向)前方に設けられた第2前プレート(以下「第2スクレイパー」と称する)5Bと、第1ロール1の表面11と、で囲まれている。
【0108】
第3プール3Cは、金属溶湯を貯めることができように、第2スクレイパー5Bと、両サイド部材32と、第2スクレイパー5Bより第1ロール1の回転方向(矢印R1方向)前方に設けられた第3前プレート(以下「第3スクレイパー」と称する)5Cと、第1ロール1の表面11と、第2ロール2の表面21と、で囲まれている。
【0109】
第4プール3Dは、金属溶湯を貯めることができように、第2ロール2の表面21と、第3スクレイパー5Cと、両サイド部材32と、で囲まれている。
【0110】
第1スクレイパー5Aは、第1実施形態の第1スクレイパー5Aと同じ構成を有している。
【0111】
第2スクレイパー5Bは、第1スクレイパー5Aと同じ構成を有している。
【0112】
第3スクレイパー5Cは、第4実施形態の第2スクレイパー5Bと同じ構成を有している。なお、第3スクレイパー5Cには、紐61Cを介して錘6Cが連結されている。
【0113】
後部材31は、第1実施形態の後部材31と同じ構成を有している。
【0114】
両サイド部材32は、第1実施形態の両サイド部材32と同じ構成を有しているが、第2プール3B、第3プール3C、及び第4プール3Dの、両側壁も構成できるように、拡張して設けられている。又は、第1実施形態で具体例を示したような、鍔付きの第1ロール1を採用してもよい。
【0115】
上記構成の装置10Eは、次のように作動する。なお、第2プール3Bに注湯する第2金属溶湯4Bの融点は、第1プール3Aに注湯する第1金属溶湯4Aの融点以下であり、また、第3プール3Cに注湯する第3金属溶湯4Cの融点は、第2金属溶湯4Bの融点以下であり、第4プール3Dに注湯する第4金属溶湯4Dの融点は、第3金属溶湯4Cの融点以上である。第1金属溶湯4Aと第4金属溶湯4Dとは、同じでもよい。
【0116】
まず、第1プール3Aに第1金属溶湯4Aを注湯しながら、及び、第2プール3Bに第2金属溶湯4Bを注湯しながら、及び、第3プール3Cに第3金属溶湯4Cを注湯しながら、及び、第4プール3Dに第4金属溶湯4Dを注湯しながら、装置10Eを起動させる。そうすると、第1ロール1と第2ロール2が、所定速度で回転するとともに、冷却機能が作動する。これにより、第1ロール1が、その表面11に接触している第1プール3A内の第1金属溶湯4Aを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層41を形成しながら第1金属層41を伴って回転し、また、第2ロール2が、その表面21に接触している第4プール3D内の第4金属溶湯4Dを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第4金属層44を形成しながら第4金属層44を伴って回転する。なお、第1金属層41は、第1ロール1の表面11側から、凝固状態へと変化していき、また、第4金属層44は、第2ロール2の表面21側から、凝固状態へと変化していく。また、第1ロール1における後部材31の下端縁311から第1スクレイパー5Aの先端部51Aまでの円周距離L1(図11)は、半凝固状態表面を有する第1金属層41が形成され得る距離に、設定されており、また、第2ロール2における第4プール3Dの液面から両ロール1、2のキス点までの円周距離L4は、半凝固状態表面を有する第4金属層44が形成され得る距離に、設定されている。
【0117】
そして、第1金属層41が、第1ロール1の回転に伴って移動して第1スクレイパー5Aを越えると、第2プール3B内の第2金属溶湯4Bが、第1金属層41に接触して、第1金属層41を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第2金属溶湯4B自体は冷却される。これにより、第1金属層41表面には、第2金属溶湯4Bの半凝固状態の第2金属層42が形成され、第2金属層42は、第1ロール1の回転に伴って、第1金属層41と共に移動する。なお、第1ロール1における第1スクレイパー5Aの先端部51Aから第2スクレイパー5Bの先端部51Bまでの円周距離L2(図11)は、半凝固状態の第2金属層42が形成され得る距離に、設定されている。
【0118】
そして、第2金属層42が、第1ロール1の回転に伴って移動して第2スクレイパー5Bを越えると、第3プール3C内の第3金属溶湯4Cが、第2金属層42に接触して、第2金属層42を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第3金属溶湯4C自体は冷却される。これにより、第2金属層42表面には、第3金属溶湯4Cの半凝固状態の第3金属層431が形成され、第3金属層431は、第1ロール1の回転に伴って、第2金属層42と共に移動する。
【0119】
一方、第4金属層44が、第2ロール2の回転に伴って移動して第3スクレイパー5Cを越えると、第3プール3C内の第3金属溶湯4Cが、第4金属層44に接触して、第4金属層44を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第3金属溶湯4C自体は冷却される。これにより、第4金属層44表面には、第3金属溶湯4Cの半凝固状態の第3金属層432が形成され、第3金属層432は、第2ロール2の回転に伴って、第4金属層44と共に移動する。なお、第1ロール1における第2スクレイパー5Bの先端部51Bから両ロール1、2のキス点までの円周距離L3(図9)は、半凝固状態の第3金属層431、432が形成され得る距離に、設定されている。
【0120】
そして、両ロール1、2の回転に伴って、第3金属層431と第3金属層432とが接触していき、第1金属層41と第2金属層42と第3金属層431と第3金属層432と第4金属層44とが、両ロール1、2によって接合されるとともに、両ロール1、2によって更に冷却される。
【0121】
これにより、第1金属溶湯4Aが完全凝固してなる第1金属層401と、第2金属溶湯4Bが完全凝固してなる第2金属層402と、第3金属溶湯4Cが完全凝固してなる第3金属層403と、第4金属溶湯4Dが完全凝固してなる第4金属層404と、が接合してなるクラッド金属板40Eが、得られる。
【0122】
ところで、第1金属層41が第1スクレイパー5Aを越える時には、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが第1金属層41の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第1金属層41の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第1金属層41が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層42は、第1金属層41の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0123】
また、第2金属層42が第2スクレイパー5Bを越える時には、第2スクレイパー5Bの先端部51Bが第2金属層42の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第2金属層42の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第2金属層42が一定の厚さに調整される。したがって、第3金属層431は、第2金属層42の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0124】
一方、第4金属層44が第3スクレイパー5Cを越える時には、第3スクレイパー5Cの先端部51Cが第4金属層44の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第4金属層44の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第4金属層44が一定の厚さに調整される。したがって、第3金属層432は、第4金属層44の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0125】
したがって、装置10Eによれば、第1金属層401と第2金属層402と第3金属層403と第4金属層404の各界面が明瞭であり、且つ、第1金属層401、第2金属層402、第3金属層403、及び第4金属層404の、厚さ分布が略均一な、4層のクラッド金属板40Eを、得ることができる。
【0126】
なお、第1スクレイパー5A及び第2スクレイパー5Bは、上記実施形態の第1スクレイパー5Aと同様の作用効果を発揮する。また、第3スクレイパー5Cは、第4実施形態の第2スクレイパー5Bと同様の作用効果を発揮する。
【0127】
[第6実施形態]
図12は、本発明の金属板製造装置の第6実施形態を示す正面断面概略図である。この装置10Fは、2種又は3種の金属溶湯から3層のクラッド金属板を製造するための装置であり、双ロール法を採用している。
【0128】
装置10Fは、第1ロール1、第2ロール2、第1プール3A、第2プール3B、及び第3プール3Cを、備えている。
【0129】
第1ロール1及び第2ロール2は、同じ大きさを有しており、水平方向において対向して配置されている。第1ロール1は、図において時計回りに(矢印R1方向に)回転するように、設けられており、第2ロール2は、図において反時計回りに(矢印R2方向に)回転するように、設けられている。
【0130】
第1ロール1は、その表面11に接触した金属溶湯を冷却するための冷却機構(図示せず)を有しており、その表面11に接触した金属溶湯を冷却しながら回転するようになっている。したがって、第1ロール1は、金属溶湯の半凝固状態乃至凝固状態の金属層を形成しながらその金属層を伴って回転し、回転しながらその金属層を完全凝固させるようになっている。冷却機構は、例えば、冷却水がロール内部を循環することにより冷却機能を発揮する「水冷式」が、好ましい。第2ロール2も、第1ロール1と同じ構成及び機能を有している。
【0131】
第1プール3Aは、金属溶湯を貯めることができるように、第1ロール1の表面11と、第1ロール1の回転方向(矢印R1方向)前方に位置する第1前プレート(以下「第1スクレイパー」と称する)5Aと、第1ロール1の回転方向後方に位置する後部材31Aと、両サイド部材(図示せず)と、で囲まれている。
【0132】
後部材31Aは、第1実施形態の後部材31と同じ構成を有している。
【0133】
第1スクレイパー5Aは、第1実施形態の第1スクレイパー5Aと同じ構成を有している。
【0134】
第3プール3Cは、金属溶湯を貯めることができるように、第2ロール2の表面21と、第2ロール2の回転方向(矢印R2方向)前方に位置する第2前プレート(以下「第2スクレイパー」と称する)5Bと、第2ロール2の回転方向後方に位置する後部材31Bと、両サイド部材(図示せず)と、で囲まれている。第3プール3Cは、第1プール3Aに対して、左右対象の構造を有している。なお、第2スクレイパー5Bは、第4実施形態の第2スクレイパー5Bと同じである。
【0135】
第2プール3Bは、金属溶湯を貯めることができるように、第1ロール1の表面11と、第2ロール2の表面21と、第1スクレイパー5Aと、第2スクレイパー5Bと、両サイド部材(図示せず)と、で囲まれている。
【0136】
両サイド部材は、第1実施形態の両サイド部材32と同じ構成を有しているが、第2プール3B、及び第3プール3Cの、両側壁も構成できるように、拡張して設けられている。
【0137】
上記構成の装置10Fは、次のように作動する。なお、第2プール3Bに注湯する第2金属溶湯4Bの融点は、第1プール3Aに注湯する第1金属溶湯4Aの融点以下であり、また、第3プール3Cに注湯する第3金属溶湯4Cの融点は、第2金属溶湯4Bの融点以上である。第1金属溶湯4Aと第3金属溶湯4Cとは、同じでもよい。
【0138】
まず、第1プール3Aに第1金属溶湯4Aを注湯しながら、及び、第2プール3Bに第2金属溶湯4Bを注湯しながら、及び、第3プール3Cに第3金属溶湯4Cを注湯しながら、装置10Fを起動させる。そうすると、第1ロール1と第2ロール2が、所定速度で回転するとともに、冷却機能が作動する。これにより、第1ロール1が、その表面11に接触している第1プール3A内の第1金属溶湯4Aを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層41を形成しながら第1金属層41を伴って回転し、また、第2ロール2が、その表面21に接触している第3プール3C内の第3金属溶湯4Cを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第3金属層43を形成しながら第3金属層43を伴って回転する。なお、第1金属層41は、第1ロール1の表面11側から、凝固状態へと変化していき、また、第3金属層43は、第2ロール2の表面21側から、凝固状態へと変化していく。また、第1ロール1における後部材31Aの下端縁311Aから第1スクレイパー5Aの先端部51Aまでの円周距離L1(図12)は、半凝固状態表面を有する第1金属層41が形成され得る距離に、設定されており、また、第2ロール2における後部材31Bの下端縁311Bから第2スクレイパー5Bの先端部51Bまでの円周距離L3(図12)は、半凝固状態表面を有する第3金属層43が形成され得る距離に、設定されている。
【0139】
そして、第1金属層41が、第1ロール1の回転に伴って移動して第1スクレイパー5Aを越えると、第2プール3B内の第2金属溶湯4Bが、第1金属層41に接触して、第1金属層41を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第2金属溶湯4B自体は冷却される。一方、第3金属層43が、第2ロール2の回転に伴って移動して第2スクレイパー5Bを越えると、第2プール3B内の第2金属溶湯4Bが、第3金属層43に接触して、第3金属層43を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第2金属溶湯4B自体は冷却される。これにより、第1金属層41と第3金属層43との間に、第2金属溶湯4Bの半凝固状態の第2金属層42が形成される。なお、第1ロール1における第1スクレイパー5Aの先端部51Aから両ロール1、2のキス点までの円周距離L2は、半凝固状態の第2金属層42が形成され得る距離に、設定されている。第2ロール2における円周距離L2も同じである。
【0140】
そして、第2金属層42は、両ロール1、2の回転に伴って、第1金属層41及び第3金属層43と共に移動していき、第1金属層41と第2金属層42と第3金属層43とが、両ロール1、2によって接合されるとともに、両ロール1、2によって更に冷却される。
【0141】
これにより、第1金属溶湯4Aが完全凝固してなる第1金属層401と、第2金属溶湯4Bが完全凝固してなる第2金属層402と、第3金属溶湯4Cが完全凝固してなる第3金属層403と、が接合してなるクラッド金属板40Fが、得られる。
【0142】
ところで、第1金属層41が第1スクレイパー5Aを越える時には、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが第1金属層41の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第1金属層41の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第1金属層41が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層42は、第1金属層41の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0143】
また、第3金属層43が第2スクレイパー5Bを越える時には、第2スクレイパー5Bの先端部51Bが第3金属層43の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第3金属層43の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第3金属層43が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層42は、第3金属層43の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0144】
したがって、装置10Fによれば、第1金属層401と第2金属層402と第3金属層403との各界面が明瞭であり、且つ、第1金属層401、第2金属層402、及び第3金属層403の、厚さ分布が略均一な、3層のクラッド金属板40Fを、得ることができる。
【0145】
[第7実施形態]
図13は、本発明の金属板製造装置の第7実施形態を示す正面断面概略図である。この装置10Gは、3種又は4種の金属溶湯から5層のクラッド金属板を製造するための装置である。
【0146】
装置10Gは、第1ロール1、第2ロール2、第1プール3A、第2プール3B、及び第3プール3Cを、備えた下装置部FAと、第3ロール6、第4ロール7、及び第4プール3Dを、備えた上装置部FBと、を備えている。
【0147】
下装置部FAは、第6実施形態の装置10Fと同じ構成を有している。
【0148】
上装置部FBにおいて、第3ロール6及び第4ロール7は、同じ大きさを有しているが、そうでなくてもよく、また、水平方向において対向して配置されているが、そうでなくてもよい。第3ロール6は、図において時計回りに(矢印R1方向に)回転するように、設けられており、第4ロール7は、図において反時計回りに(矢印R2方向に)回転するように、設けられている。第3ロール6及び第4ロール7は、両ロール6、7の間の間隙81が下装置部FAの第2ロール2の幅方向中央の真上に位置するように、配置されているが、ガイド等を使用することにより、そのように真上に配置しなくてもよい。
【0149】
第3ロール6は、その表面61に接触した金属溶湯を冷却するための冷却機構(図示せず)を有しており、その表面61に接触した金属溶湯を冷却しながら回転するようになっている。したがって、第3ロール6は、金属溶湯の半凝固状態乃至凝固状態の金属層を形成しながらその金属層を伴って回転し、回転しながらその金属層を完全凝固させるようになっている。冷却機構は、例えば、冷却水がロール内部を循環することにより冷却機能を発揮する「水冷式」が、好ましい。第4ロール7も、第3ロール6と同じ構成及び機能を有している。
【0150】
第4プール3Dは、金属溶湯を貯めることができるように、第3ロール6の表面61と、第4ロール7の表面71と、両サイド部材(図示せず)と、で囲まれている。
【0151】
上記構成の装置10Gは、次のように作動する。なお、第2プール3Bに注湯する第2金属溶湯4Bの融点は、第1プール3Aに注湯する第1金属溶湯4Aの融点以下であり、また、第3プール3Cに注湯する第3金属溶湯4Cの融点は、第2金属溶湯4Bの融点以上であり、第4プール3Dに注湯する第4金属溶湯4Dの融点は、第2金属溶湯4Bの融点以上である。第1金属溶湯4Aと第3金属溶湯4Cと第4金属溶湯4Dは、同じでもよい。
【0152】
まず、第1プール3Aに第1金属溶湯4Aを注湯しながら、及び、第2プール3Bに第2金属溶湯4Bを注湯しながら、及び、第3プール3Cに第3金属溶湯4Cを注湯しながら、及び、第4プール4Cに第4金属溶湯4Dを注湯しながら、装置10Gを起動させる。そうすると、全ロール1、2、6、7が、各々所定速度で回転するとともに、冷却機能が作動する。これにより、第1ロール1が、その表面11に接触している第1プール3A内の第1金属溶湯4Aを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層41を形成しながら第1金属層41を伴って回転し、また、第2ロール2が、その表面21に接触している第3プール3C内の第3金属溶湯4Cを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第3金属層43を形成しながら第3金属層43を伴って回転する。また、一方では、第3ロール6及び第4ロール7が、その表面61、71に接触している第4プール3D内の第4金属溶湯4Dを冷却して半凝固状態の第4金属層44を形成しながら第4金属層44を伴って回転する。なお、両ロール6、7における第3プール3Cの液面から両ロール6、7のキス点までの円周距離L4は、半凝固状態の第4金属層44が形成され得る距離に、設定されている。そして、第4金属層44は、両ロール6、7によって接合される。
【0153】
一方、第1金属層41が、第1ロール1の回転に伴って移動して第1スクレイパー5Aを越えると、第2プール3B内の第2金属溶湯4Bが、第1金属層41に接触して、第1金属層41を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第2金属溶湯4B自体は冷却される。これにより、半凝固状態の第2金属層421が、形成され、第1ロール1の回転に伴って、第1金属層41と共に移動する。
【0154】
また、第3金属層43が、第2ロール2の回転に伴って移動して第2スクレイパー5Bを越えると、第3プール3C内の第3金属溶湯4Cが、第3金属層43に接触して、第3金属層43を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第2金属溶湯4B自体は冷却される。これにより、半凝固状態の第2金属層422が、形成され、第2ロール2の回転に伴って、第3金属層43と共に移動する。
【0155】
一方、第4金属層44が、両ロール6、7の回転に伴って下方に移動し、第2プール3B内を通過して、第2金属層421と第2金属層422との間に至る。
【0156】
そして、第4金属層44が、第2金属層421と第2金属層422とを金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第4金属層44自体は冷却される。これにより、第1金属層41と第2金属層421と第4金属層44と第2金属層422と第3金属層43とが、共に移動していき、両ロール1、2によって接合されるとともに、両ロール1、2によって更に冷却される。
【0157】
これにより、第1金属溶湯4Aが完全凝固してなる第1金属層401と、第2金属溶湯4Bが完全凝固してなる第2金属層402と、第4金属溶湯4Dが完全凝固してなる第3金属層403と、第2金属溶湯4Bが完全凝固してなる第4金属層404と、第3金属溶湯4Cが完全凝固してなる第5金属層405と、が接合してなるクラッド金属板40Gが、得られる。
【0158】
ところで、第1金属層41が第1スクレイパー5Aを越える時には、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが第1金属層41の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第1金属層41の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第1金属層41が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層421は、第1金属層41の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0159】
また、第3金属層43が第2スクレイパー5Bを越える時には、第2スクレイパー5Bの先端部51Bが第3金属層43の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第3金属層43の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第3金属層43が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層422は、第3金属層43の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0160】
したがって、装置10Gによれば、第1金属層401と第2金属層402と第3金属層403と第4金属層404と第5金属層405との各界面が明瞭であり、且つ、第1金属層401、第2金属層402、第3金属層403、第4金属層404、及び第5金属層405の、厚さ分布が略均一な、5層のクラッド金属板40Gを、得ることができる。
【0161】
[別の実施形態]
(1)スクレイパーを付勢する機構としては、錘を用いる機構に限るものではなく、例えば、油圧機構でもよい。
(2)スクレイパーは、製作が容易である故にプレートを折り曲げ加工して製作されているが、金属溶湯のプールの壁を構成することができ、且つ、先端部を設けることができれば、他の部材でもよい。
(3)スクレイパーは、芯材のみで構成されてもよい。但し、その場合のスクレイパーの材質は、金属溶湯に対して無反応性である必要がある。具体的な材料としては、アルミナファイバー、ゾノライト系ケイ酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなどがある。
【実施例】
【0162】
[第1実施例]
本実施例は、図1乃至図4に示される第1実施形態に相当している。本実施例における実施条件は、次のとおりである。
【0163】
(実施条件)
・第1ロール1
・ロールシェル材質…SS400
・ロール直径…1500mm
・ロール幅W1(図2)…50mm
・金属板冷却速度…100℃/秒 以上
・第1金属溶湯4A
・材料…6022合金(Al−Si系合金);融点655℃
・注湯温度…680℃
・第1スクレイパー5A
・形態…図1の断面概略図に示したような折り曲げ形態を有したもの
・材質…鋼板を、シリカクロスで覆い、更にアルミナシリカクロスで覆ったもの
・先端部51Aの長さ…1.5cm
・錘6A…0.5kg
・第1ロール1の回転速度(周速)…20m/分
・凝固距離L1…110mm
【0164】
なお、凝固距離L1とは、後部材31の下端縁311から第1スクレイパー5Aの先端部51Aまでの円周距離である。
【0165】
(結果)
(1)得られた薄板の表面を観察した。その結果、表面が平滑であり、且つ、板厚分布が圧延可能なほどに均一であった。
(2)得られた薄板について、「180度曲げ試験」及び「引張試験」を行った。
(2-1) 180度曲げ試験
・得られた薄板を、鋳造方向(第1ロール1の回転方向)に対して0度の向きに折り曲げて、薄板の表面と裏面とについて割れの有無を調査した。その結果、いずれの面にも、割れは発見されなかった。
・得られた薄板を、上記鋳造方向に対して90度の向きに折り曲げて、薄板の表面と裏面とについて割れの有無を調査した。その結果、いずれの面にも、割れは発見されなかった。
(2-2) 引張試験
・得られた薄板を、厚さ1mmまで冷間圧延し、430℃で1時間焼鈍し、水焼き入れし、T4処理した。試験片形状は、7号試験片とした。「引張強さ」、「0.2%耐力」、及び「伸び」を測定した。その結果、「引張強さ」は248MPaであり、「0.2%耐力」は115MPaであり、「伸び」は32%であった。これは、自動車ボディパネル材としての使用に耐え得るものであった。
【0166】
(変形例)
注湯温度を、6022合金の液相線温度655℃の近傍である665℃として、上記と同様に実施したところ、同様の結果が得られた。
【0167】
[第2実施例]
本実施例は、図9及び図10に示される第4実施形態に相当している。本実施例における実施条件は、次のとおりである。
【0168】
(実施条件)
・第1ロール1
・ロールシェル材質…SS400
・ロール直径…1500mm
・ロール幅W1…50mm
・金属板冷却速度…100℃/秒 以上
・第2ロール2
・ロールシェル材質…銅
・ロール直径…250mm
・ロール幅W1…50mm
・ばね荷重…18N
・金属板冷却速度…100℃/秒 以上
・第1金属溶湯4A
・材料…3M01合金(Al−Mn系合金);
固相線温度:628℃、液相線温度:655℃
・注湯温度…700℃
・第2金属溶湯4B
・材料…4045合金(Al−Si系合金);
固相線温度:577℃、液相線温度:590℃
・注湯温度…610℃
・第3金属溶湯4C
・材料…3M01合金(Al−Mn系合金);
固相線温度:628℃、液相線温度:655℃
・注湯温度…750℃
・第1スクレイパー5A及び第2スクレイパー5B
・形態…図9の断面概略図に示したような折り曲げ形態を有したもの
・材質…鋼板を、シリカクロスで覆い、更にアルミナシリカクロスで覆ったもの
・先端部51A及び51Bの長さ…1.5cm
・錘6A…0.5kg
・錘6B…0.5kg
・第1ロール1及び第2ロール2の回転速度(周速)…20m/分
・凝固距離L1…110mm
・凝固距離L2…100mm
・凝固距離L3…80mm
【0169】
なお、凝固距離L1とは、後部材31の下端縁311から第1スクレイパー5Aの先端部51Aまでの円周距離である。凝固距離L2とは、第1スクレイパー5Aの先端部51Aから両ロール1、2のキス点までの円周距離である。凝固距離L3とは、第3プール3Cの液面から第2スクレイパー5Bの先端部51Bまでの円周距離である。
【0170】
(結果)
得られた薄板の界面を観察した。その結果、第1金属層と第2金属層と第3金属層との各界面に、金属溶湯の混合や反応は発見されなかった。すなわち、いずれの界面も、明瞭であった。
【0171】
注目すべきは、第2金属溶湯4Bの注湯温度が、第1金属溶湯4A及び第3金属溶湯4Cの、液相線温度以下及び固相線温度以下でも、接合が可能であったことである。これは、スクレイパーで掻かれた後の第1金属層41及び第3金属層43の表面を、流動性の低い半凝固状態にしておいたからである。したがって、第2実施例で得られたクラッド金属板は、図14に示されるように、第3金属層403と第2金属層402との接合面が明瞭であり、当然に、第1金属層401と第2金属層402との接合面も明瞭である。この効果は、スクレイパーが、金属層の表面を平滑にするだけでなく、金属層の表面の固相率を調節して、流動性の低い半凝固状態にしておくことによって、初めて可能になったものであり、本発明の特徴である。これに対して、スクレイパーで掻かれた後の第1金属層41及び第3金属層43の表面が、固相状態である場合には、図15に示されるように、第3金属層503と第2金属層502との接合面に隙間600ができた。
【0172】
(変形例)
第2金属溶湯4Bの注湯温度を、4055合金の液相線温度590℃の近傍である595℃として、上記と同様に実施したところ、同様の結果が得られた。
【0173】
注目すべきは、第2金属溶湯4Bの注湯温度が、その合金の液相線温度近傍の低い温度でも接合できたことである。このように、第2金属溶湯4Bの注湯温度が低いために、第2金属溶湯4Bがガスを吸収しないで健全性を保ち、且つ、第2金属溶湯4Bが急冷凝固されて微細な組織を形成するので、できたクラッド金属板の延性が向上する。また、装置の冷却機能への負担を減らすことができるという利点もある。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明の金属板製造装置及び金属板製造方法は、単層の金属板又は複層のクラッド金属板を省工程で、安価に、製造できるので、産業上の利用価値は大である。
【符号の説明】
【0175】
1、2 ロール 11、21 表面 3A、3B、3C、3D プール 31 後部材 32 サイド部材 4A、4B、4C、4D 金属溶湯 5A、5B、5C スクレイパー 51A、51B、51C 先端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールを用いた連続鋳造によって、単層の金属板又は複層のクラッド金属板を製造する、金属板製造装置及び金属板製造方法に、関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の産業界においては、CO2排出量の削減が強く求められている。そこで、自動車業界においては、車両の軽量化などを図るために、アルミニウム合金薄板やアルミニウム合金クラッド板を使用することが、提案されている。
【0003】
アルミニウム合金薄板を作製する方法としては、DC鋳造を用いる方法や、それよりも安価に作製する方法として双ロール法が、よく知られているが、双ロール法よりも安価に作製する方法としては、非特許文献1に示されているような単ロール法が知られている。
【0004】
また、アルミニウム合金クラッド板を作製する方法としては、アルミニウム合金薄板を作製した後に圧延して接合を行う接合法、及び、非特許文献2、特許文献1、2に示されているような双ロール法が、知られている。上記接合法においては、アルミニウム合金薄板を作製するために、DC鋳造によって作製した厚さ600mm程度のスラブを、面削処理、熱処理、熱間圧延処理、及び冷間圧延処理するための、設備及び工程が必要であり、また、アルミニウム合金薄板を接合するために、脱脂処理、エッジの溶接処理、及び熱間圧延処理するための、設備及び工程が必要である。したがって、上記接合法によって得られたクラッド板は、高価である。これに対して、双ロール法は、省工程で且つ簡素な装置で実行できるので、安価にクラッド板を作製できるという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−142763号公報
【特許文献2】特開2009−125794号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】羽賀俊雄、外3名、「メルトドラッグ法によるAl‐12%Si合金板の性状に及ぼす溶湯とロールの接触状態」、軽金属 第48巻 第12号、1998年、P613−617
【非特許文献2】T.Haga、外3名、「Clad strip casting by a twin roll caster」、Archives of Materials Science and Engineering、Volume37、Issue2、2009年6月、P117−124
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1の単ロール法では、連続して生産していると、ロールにより形成された金属層の表面に、塊状の盛り上がった部分が発生するために、得られたアルミニウム合金薄板の板厚が不均一である、という不具合がある。
【0008】
更に、ロール法では、溶湯としてマグネシウムを含有するアルミニウム合金を用いた場合、溶湯が凝固収縮を起こしやすく、凝固収縮が起こると結晶粒間に隙間ができるため、鋳巣が発生する。上記単ロール法では、形成された金属層の自由凝固面に鋳巣が発生しやすい、という不具合がある。ところで、自由凝固面とは、ロール表面に直接触れないで凝固した面のことを言う。
【0009】
上記特許文献1、2の双ロール法では、金属溶湯同士が混ざらないようにする目的で仕切り板を設けているが、その仕切り板の先端縁とロールとの距離が固定されているために、溶湯漏が発生しやすく、また、金属溶湯がロール表面で過大に凝固した場合には、凝固した層がロール表面と上記先端縁との間隙に詰まり、装置が停止してしまう、という問題がある。しかも、自由凝固面が平滑にならないために、得られたクラッド板の接合界面が平坦ではなく、金属層間で混合や反応が起こるために、接合界面が不明瞭であり、それ故に、できた金属板の物性が安定しない、という不具合がある。
【0010】
更に、上記双ロール法では、特許文献1の請求項1に記載のように、接合する前に、高融点側の金属溶湯の凝固殻形成を予め完了させておく必要がある。また、融点が低い材料の注湯温度が、融点が高い材料の液相線温度より高いことを、必須の条件としている。しかし、融点が低い材料の金属溶湯がガスを吸収しないで健全性を保つためには、及び、融点の低い材料が急冷凝固されて微細な組織を形成するためには、融点が低い材料の注湯温度は、融点が高い材料の液相線温度より低い、且つ、その材料の液相線より高くとも液相線に近い、温度であることが望ましく、その場合、融点が高い材料の金属溶湯への、及び、ロールへの、熱負荷も、小さくなる。このため、融点が低い材料の注湯温度を、融点が高い材料の液相線温度より低くした場合においても、接合できる方法が、望まれている。
【0011】
また、非特許文献2の双ロール法では、2層のクラッド合金板を製造する装置において、「scriber」と称する可動式仕切り板を用いて、高融点側の金属溶湯が、低融点側の溶湯プールへ漏れないようにする方法が、示されている。しかしながら、可動式仕切り板が平面プレートで構成されており、その先端縁は、ロール表面に形成された金属層に対して、主として線接触しているために、金属層を押し付ける付勢力の調節が難しい。それ故、この可動式仕切り板では、自由凝固面の半凝固状態部分をすべて掻き取って、凝固層のみを引き出すことは、可能であるが、半凝固状態部分の、流動性の高い部分のみを掻き取り、流動性の低い部分を凝固層の上に残して、半凝固状態部分の固相率を調節することは、困難である。更に、付勢力が弱い場合には、溶湯漏れが発生し、付勢力が強い場合には、凝固物がロール表面と可動式仕切り板の先端縁との間隙に詰まり、装置が停止してしまう、という問題がある。
【0012】
ところで、非特許文献2に示されている、上記2層クラッド合金板製装置に、上記可動式仕切り板を、更にもう一枚追加すると、本発明の第6実施形態で示すような、内側に低融点の金属材料を用い、外側に、それより高融点の材料を用いる、3層クラッド合金板製装置を構成できるが、上記問題が、3層クラッド合金板の製造過程においても、同様に発生する。また、可動式仕切り板で金属層の半凝固状態部分をすべて掻き取って、金属層の表面を固相状態にしてから接合すると、融点が低い第2金属溶湯の注湯温度を、融点が高い第1金属及び第3金属の液相線温度よりも高くしないと、接合界面に隙間ができる、という不具合がある。しかし、第2金属溶湯の注湯温度が高いと、第2金属溶湯がガスを吸収し、できた金属板に細かい気泡となって残るために、物性が劣化しやすい。また、第2金属溶湯が急冷凝固されないため、微細な組織を形成することができない。それ故、できた金属板の延性が劣る。更には、両ロールへの熱負荷が大きくなるため、装置の冷却機能への負担も大きくなるという不具合がある。
【0013】
本発明は、ロールを用いた連続鋳造によって、単層の金属板又は複層のクラッド金属板を製造する、金属板製造装置及び金属板製造方法において、上記した諸問題を解消することを目的とし、単層の金属板又は複層のクラッド金属板を、省工程で、安価に、製造できる、金属板製造装置及び金属板製造方法を、提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ロールを用いた連続鋳造によって、単層の金属板又は複層のクラッド金属板を製造する、金属板製造装置において、冷却能を有する第1ロールと、第1金属溶湯を貯めるための第1プールと、を備えており、第1プールは、第1ロールの表面と、第1ロールの回転方向前方に位置する第1前プレートと、第1ロールの回転方向後方に位置する後部材と、両サイド部材と、で囲まれており、第1前プレートは、先端部を有し、前記先端部と第1ロールの表面との間の距離が変わり得るように、可動に設けられており、第1ロールは、第1プール内の第1金属溶湯を冷却して第1ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層を形成しながら第1金属層を伴って回転するようになっており、第1前プレートは、第1ロールの回転に伴って移動する第1金属層の半凝固状態表面に、第1前プレートの先端部が一定の力で面的に常時当接するように付勢されている、ことを特徴としている。
【0015】
ところで、金属溶湯は、ロールで冷却することにより、次第に、液相状態から固相状態へと変化する。液相状態とは、液体の状態を言い、固相状態とは、完全凝固した固体の状態を言う。半凝固状態とは、液相と固相とが混合して、同時に存在する状態であり、液相状態と固相状態との間の状態を言う。固相率とは、半凝固状態における固相の割合を言う。固相率が低いほど、半凝固状態が液相状態に近いために、流動性が高く、固相率が高いほど、半凝固状態が固相状態に近いために、流動性が低いことを意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の金属板製造装置によれば、第1前プレートの先端部が第1金属層の半凝固状態表面に一定の力で面的に当接し続けるので、鋳巣や組成の偏りが発生しやすい第1金属層の半凝固状態表面を掻き取りながら均し、それ故、第1金属層を一定の厚さに調整できる。したがって、本発明の装置によれば、鋳巣や偏析がなく、表面が平滑であり、且つ、板厚分布が略均一な、単層の金属板を、得ることができる。ちなみに、掻き取られた半凝固物は、金属溶湯の熱で再度溶解されるので、第1前プレートの先端部と第1ロールとの間隙に詰まることはない。
【0017】
更に、上述したように、第1前プレートによって、第1金属層の表面を平滑化できるので、その表面に第2金属層を形成した場合に、接合界面が良好なクラッド金属板を得ることができる。
【0018】
しかも、第1前プレートへの付勢力を調節することによって、第1金属層の半凝固状態部分の固相率を調節して、第1金属層の半凝固状態表面を、流動性が低い半凝固状態にしておくことにより、融点が低い第2金属溶湯の注湯温度を、融点が高い第1金属液相線温度より低くした場合においても、金属溶等同士が混合や反応をせずに接合界面が明瞭で、且つ、接合界面に隙間が発生せずに接合界面の密着性の高い、良好なクラッド金属板を得ることができる。これにより、融点が低い第2金属溶湯を、融点が高い材料の液相線温度より低い、且つ、第2金属の液相線より高くとも液相線に近い、温度でも、注湯できるため、第2金属溶湯がガスを吸収しないで健全性を保ち、且つ、第2金属溶湯が急冷凝固されて微細な組織を形成するので、できた金属板の延性が優れている。この場合、融点が高い第1金属溶湯への、及び、ロールへの、熱負荷も、小さくなる。よって、装置の冷却機能への負担を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の金属板製造装置の第1実施形態を示す正面断面概略図である。
【図2】図1のII矢視部分図である。
【図3】第1スクレイパーの一部断面部分図である。
【図4】第1実施形態の作動を示す正面断面概略図である。
【図5】本発明の金属板製造装置の第2実施形態を示す正面断面概略図である。
【図6】第2実施形態の作動を示す正面断面概略図である。
【図7】本発明の金属板製造装置の第3実施形態を示す正面断面概略図である。
【図8】第3実施形態の作動を示す正面断面概略図である。
【図9】本発明の金属板製造装置の第4実施形態を示す正面断面概略図である。
【図10】第4実施形態の作動を示す正面断面概略図である。
【図11】本発明の金属板製造装置の第5実施形態の作動を示す正面断面概略図である。
【図12】本発明の金属板製造装置の第6実施形態の作動を示す正面断面概略図である。
【図13】本発明の金属板製造装置の第7実施形態の作動を示す正面断面概略図である。
【図14】第2実施例で得られたクラッド金属板の断面を示す、図面に代わる写真である。
【図15】第2実施例と比較するために作製されたクラッド金属板の断面を示す、図面に代わる写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明の金属板製造装置の第1実施形態を示す正面断面概略図である。この装置10Aは、1種の金属溶湯から単層の金属板を製造するための装置であり、単ロール法を採用している。
【0021】
装置10Aは、第1ロール1及び第1プール3Aを備えている。
【0022】
第1ロール1は、その表面11に接触した金属溶湯を冷却しながら回転するようになっており、すなわち、第1ロール1は、その表面11に半凝固状態乃至凝固状態の金属層を形成しながらその金属層を伴って回転し、回転しながらその金属層を完全凝固させるようになっている。第1ロール1は、その表面11に接触した金属溶湯を冷却するための冷却機構(図示せず)を有している。その冷却機構としては、冷却水がロール内部を循環することにより冷却機能を発揮する「水冷式」を採用しているが、他の機構を採用してもかまわない。また、第1ロール1の外部に冷却機構を備えていれば、第1ロール1の内部に冷却機構を有していなくてもよい。
【0023】
第1プール3Aは、金属溶湯を貯めることができるように、第1ロール1の表面11と、第1ロール1の回転方向(矢印R1方向)前方に位置する第1前プレート(以下「第1スクレイパー」と称する)5Aと、第1ロール1の回転方向後方に位置する後部材31と、両サイド部材32と、で囲まれている。
【0024】
後部材31は、製作が安価で設置が簡単なため、ここでは、プレートで構成されているが、第1プール3Aの後壁を構成できるならば、他の部材でもよい。後部材31の先端縁311は、第1プール3A内に貯められた金属溶湯が後方へ漏れるのを防止できる距離まで、第1ロール1の表面11に近接している。後部材31の先端縁311は、第1ロール1の回転を許容する限りにおいて、第1ロール1の表面11に当接してもよいが、回転する第1ロール1との摩擦によって互いに摩耗しないようにするには、第1ロール1の表面11に当接していない方が好ましい。
【0025】
図2は、図1のII矢視部分図である。両サイド部材32は、ここでは、プレートで構成されているが、第1プール3Aの両側壁を構成できるならば、他の部材でもよい。また、両サイド部材32は、図1に示した位置に固定されていなくてもよい。具体的には、第1ロール1の端に、円盤又はリング状の両サイド部材32を、第1ロール1の鍔となるように取り付けてもよい。サイド部材32は、図1に示されるように、第1スクレイパー5Aと後部材31との間に空間を確保できる長さSを、有している。サイド部材32の内面321は、第1プール3A内に貯めた金属溶湯が第1ロール1の両側に漏れるのを防止できる距離まで、第1ロール1の側面12に近接している。サイド部材32の内面321は、第1ロール1の回転を許容する限りにおいて、第1ロール1の側面12に当接してもよいが、回転する第1ロール1との摩擦によって互いに摩耗しないようにするには、第1ロール1の側面12に当接していない方が好ましい。
【0026】
そして、第1スクレイパー5Aは、第1プール3Aの前壁を構成するように、プレートを加工して設けられている。第1スクレイパー5Aは、図1の断面図に示したように、ここでは、断面が、折り曲げ形態を有しているが、直線又は円弧状の形態を有していてもよい。第1スクレイパー5Aは、その先端が鈍角に折れ曲がっており、折れ曲がった箇所から先端が、先端部51Aになっている。そして、第1スクレイパー5Aは、先端部51Aと第1ロール1の表面11との間の距離HAが変わり得るように、可動に設けられている。具体的には、第1スクレイパー5Aは、基端部52Aにて、水平軸521A回り(矢印Y方向)に回動自在に支持されており、これにより、距離HAが可変となっている。また、第1スクレイパー5Aは、距離HAが小さくなる方向(矢印Y1方向)に回動するように、常時付勢されている。具体的には、第1スクレイパー5Aの基端部52Aには、紐61Aを介して所定重量の錘6Aが連結されており、第1スクレイパー5Aは、錘6Aによって、矢印Y1方向に回動するように、常時、一定の力で引っ張られている。これにより、第1スクレイパー5Aの先端部51Aは、第1ロール1の表面11に向かって、常時、一定の力で付勢されている。なお、この一定の力とは、第1プール3Aに注湯される金属溶湯の半凝固状態における硬さに相当する力であり、金属層の半凝固状態表面の固相率の低い部分を掻き取りながら金属層を平坦に均す程度の力である。第1スクレイパー5Aに対する付勢は、距離HAが変わっても、常時、一定の力で付勢できるので、且つ、装置を簡易に構成できるので、錘の力で行うのが好ましいが、同様の効果が得られるのであれば、油圧など、他の機構を採用してもよい。
【0027】
第1スクレイパー5Aの先端部51Aは、第1ロール上の半凝固状態乃至凝固状態の金属層に接するが、この金属層はロール面と平行であるため、先端部51Aが、この金属層に、線接触ではなく、面接触するためには、第1ロール1と先端部51Aの裏面(ロール側の面)とのなす角度は30度未満であることが必要であり、より好ましくは角度が0、すなわち平行である。また、先端部51Aの長さは、5mm以上30mm以下がよく、10mm以上20mm以下が好ましい。これは、先端部51Aの長さが短すぎれば、面接触の効果が弱くなり、長すぎれば、伸びた先端部の上に凝固物が堆積する恐れがあるためである。また、先端部の裏面は、平面が好ましいが、平面性を実質的に損なわない範囲で曲率半径の大きな凸面になっていてもよい。
【0028】
図3は、第1スクレイパー5Aの一部断面部分図である。第1スクレイパー5Aは、芯材531の表面が2種類の保護材料532、533で二重に覆われた構成を、採用している。芯材531には、鋼板を採用しているが、材質を特に限定するものではなく、他の金属の板を採用してもよい。芯材531の表面には、金属溶湯と反応しないために、また、スクレイパーからの熱伝導により金属溶湯の温度低下を防ぐために、保護材料が平面性を損なわない範囲の厚さで付設されている。保護材料532、533には、シリカ、アルミナシリカなどのクロスシートが使用できる。
【0029】
次に、上記構成の装置10Aの作動について、図4を参照しながら、説明する。なお、図4では、両サイド部材32の図示を省略している。
【0030】
まず、第1プール3Aに第1金属溶湯4Aを注湯しながら(第1注湯工程)、装置10Aを起動させる。そうすると、第1ロール1が、所定速度で回転するとともに、冷却機能が作動する。これにより、第1ロール1が、その表面11に接触している第1プール3A内の第1金属溶湯4Aを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層41を形成しながら第1金属層41を伴って回転する(第1冷却工程)。なお、第1金属層41は、第1ロール1の表面11側から、凝固状態へと変化していく。また、後部材31の下端縁311から第1スクレイパー5Aの先端部51Aまでの円周距離L1(図1)は、半凝固状態表面を有する第1金属層41が形成され得る距離に、設定されている。そして、第1ロール1は、第1金属層41が、第1スクレイパー5Aの先端部51Aと第1ロール1の表面11との間を通過した後、すなわち、第1スクレイパー5Aを越えた後は、回転しながら第1金属層41を更に冷却して完全凝固させる。こうして、第1金属溶湯4Aが完全凝固してなる金属板40Aが、得られる。
【0031】
ところで、半凝固状態表面を有する第1金属層41が第1スクレイパー5Aを越える時には、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが第1金属層41の表面に一定の力で面的に当接し続ける(第1スクレイピング工程)。すなわち、第1スクレイパー5Aの先端部51Aは、第1金属層41の厚さに追従する。これにより、第1金属層41の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第1金属層41が一定の厚さに調整される。
【0032】
したがって、装置10Aによれば、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが第1金属層41の半凝固状態表面に一定の力で面的に当接し続けるので、鋳巣や組成の偏りが発生しやすい第1金属層41の半凝固状態表面を掻き取るとともに、第1金属層41を一定の厚さに調整できる。したがって、本発明の装置によれば、鋳巣や偏析がなく、表面が平滑であり、且つ、板厚分布が略均一な、単層の金属板40Aを、得ることができる。
【0033】
特に、溶湯としてマグネシウムを含有するアルミニウム合金を用いた場合、ロール法を用いた鋳造では、溶湯が凝固収縮を起こしやすく、凝固収縮が起こると結晶粒間に隙間ができるため、鋳巣が発生しやすい。しかし、第1スクレイパー5Aで第1金属層41表面近傍の鋳巣の発生しやすい部位を掻き取るため、鋳巣がない単層のアルミマグネシウム合金の金属板40Aを、得ることができる。
【0034】
また、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが、上記作動においては、第1金属層41の表面に面接触する。それ故、先端部51Aは、第1金属層41の表面に確実に当接する。したがって、装置10Aによれば、第1スクレイパー5Aの上述した機能を、より良好に発揮できる。
【0035】
更に、第1スクレイパー5Aの表面が保護材料532、533で覆われているので、上記作動においては、第1金属溶湯4Aの温度低下が防止され、また、第1金属溶湯4Aが第1スクレイパー5Aの表面に固着してしまうのが防止される。したがって、装置10Aによれば、この点からも、第1スクレイパー5Aの上述した機能を、より良好に発揮でき、しかも、金属板40Aの生産効率を向上できる。
【0036】
[第2実施形態]
図5は、本発明の金属板製造装置の第2実施形態を示す正面断面概略図である。この装置10Bは、2種の金属溶湯から2層のクラッド金属板を製造するための装置であり、単ロール法を採用している。
【0037】
装置10Bは、第1ロール1、第1プール3A、及び第2プール3Bを、備えている。
【0038】
第1ロール1は、第1実施形態の第1ロール1と同じ構成を有している。
【0039】
第1プール3Aは、第1実施形態の第1プール3Aと同じ構成を有している。
【0040】
第2プール3Bは、金属溶湯を貯めることができように、第1スクレイパー5Aと、両サイド部材32と、第1スクレイパー5Aより第1ロール1の回転方向(矢印R1方向)前方に設けられた第2前プレート(以下「第2スクレイパー」と称する)5Bと、第1ロール1の表面11と、で囲まれている。
【0041】
第1スクレイパー5Aは、第1実施形態の第1スクレイパー5Aと同じ構成を有している。
【0042】
第2スクレイパー5Bは、第2プール3Bの前壁を構成している。第2スクレイパー5Bは、第1スクレイパー5Aと同様の形態を有しており、先端部51Bと第1ロール1の表面11との間の距離HBが変わり得るように、可動に設けられている。具体的には、第2スクレイパー5Bは、基端部52Bにて、水平軸521B回り(矢印Y方向)に回動自在に支持されており、これにより、距離HBが可変となっている。また、第2スクレイパー5Bは、距離HBが小さくなる方向(矢印Y1方向)に回動するように、常時付勢されている。具体的には、第2スクレイパー5Bの基端部52Bには、紐61Bを介して所定重量の錘6Bが連結されており、第2スクレイパー5Bは、錘6Bによって、矢印Y1方向に回動するように、常時、一定の力で引っ張られている。これにより、第2スクレイパー5Bの先端部51Bは、第1ロール1の表面11に向かって、常時、一定の力で付勢されている。なお、この一定の力とは、第2プール3Bに注湯される金属溶湯の半凝固状態における硬さに相当する力であり、金属層の半凝固状態表面の固相率の低い部分を掻き取りながら金属層を平坦に均す程度の力である。第2スクレイパー5Bに対する付勢は、距離HBが変わっても、常時、一定の力で付勢できるので、且つ、装置を簡易に構成できるので、錘の力で行うのが好ましいが、同様の効果が得られるのであれば、油圧など、他の機構を採用してもよい。
【0043】
第2スクレイパー5Bの先端部51Bが、上記金属層に面接触するためには、第1実施形態の第1スクレイパー5Aと同様に、第1ロール1と先端部51Bの裏面(ロール側の面)とのなす角度は、30度未満であることが必要であり、より好ましくは角度が0、すなわち平行である。また、先端部51Bの長さは、5mm以上30mm以下がよく、10mm以上20mm以下が好ましい。これは、先端部51Bの長さが短すぎれば、面接触の効果が弱くなり、長すぎれば、伸びた先端部の上に凝固物が堆積する恐れがあるためである。先端部51Bの裏面は、平面が好ましいが、平面性を実質的に損なわない範囲で曲率半径の大きな凸面になっていてもよい。
【0044】
また、第2スクレイパー5Bは、第1スクレイパー5A(図3)と同様に、芯材531の表面が2種類の保護材料532、533で二重に覆われた構成を、採用している。
【0045】
後部材31は、第1実施形態の後部材31と同じ構成を有している。
【0046】
両サイド部材32は、第1実施形態の両サイド部材32と同じ構成を有しているが、第2プール3Bの両側壁も構成できるように、拡張して設けられている。又は、第1実施形態で具体例を示したような、鍔付きの第1ロール1を採用してもよい。
【0047】
次に、上記構成の装置10Bの作動について、図6を参照しながら、説明する。なお、図6では、両サイド部材32の図示を省略している。また、第2プール3Bに注湯する第2金属溶湯4Bの融点は、第1プール3Aに注湯する第1金属溶湯4Aの融点以下である。
【0048】
まず、第1プール3Aに第1金属溶湯4Aを注湯しながら、及び、第2プール3Bに第2金属溶湯4Bを注湯しながら、装置10Bを起動させる。そうすると、第1ロール1が、所定速度で回転するとともに、冷却機能が作動する。これにより、第1ロール1が、その表面に接触している第1プール3A内の第1金属溶湯4Aを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層41を形成しながら第1金属層41を伴って回転する。なお、第1金属層41は、第1ロール1の表面11側から凝固状態へと変化していく。また、第1ロール1における後部材31の下端縁311から第1スクレイパー5Aの先端部51Aまでの円周距離L1(図6)は、半凝固状態表面を有する第1金属層41が形成され得る距離に、設定されている。
【0049】
そして、第1金属層41が、第1ロール1の回転に伴って移動して第1スクレイパー5Aを越えると、第2プール3B内の第2金属溶湯4Bが、第1金属層41に接触して、第1金属層41を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第2金属溶湯4B自体は冷却される。これにより、第1金属層41表面には、第2金属溶湯4Bの半凝固状態の第2金属層42が形成され、第2金属層42は、第1ロール1の回転に伴って、第1金属層41と共に移動する。そして、第1金属層41及び第2金属層42は、第1ロール1の回転に伴って、更に冷却される。
【0050】
これにより、第1金属溶湯4Aが完全凝固してなる第1金属層401と、第2金属溶湯4Bが完全凝固してなる第2金属層402と、が接合してなるクラッド金属板40Bが、得られる。
【0051】
ところで、第1金属層41が第1スクレイパー5Aを越える時には、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが第1金属層41の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第1金属層41の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第1金属層41が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層42は、第1金属層41の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0052】
一方、第2金属層42が第2スクレイパー5Bを越える時には、第2スクレイパー5Bの先端部51Bが第2金属層42の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第2金属層42の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第2金属層42が一定の厚さに調整される。
【0053】
したがって、装置10Bによれば、第1金属層401と第2金属層402との界面が明瞭であり、且つ、第1金属層401及び第2金属層402の、厚さ分布が略均一な、2層のクラッド金属板40Bを、得ることができる。
【0054】
また、第2スクレイパー5Bの先端部51Bが、上記作動においては、第2金属層42の表面に面接触する。それ故、先端部51Bは、第2金属層42の表面に確実に当接する。したがって、装置10Bによれば、第2スクレイパー5Bの上述した機能を、より良好に発揮できる。
【0055】
更に、第2スクレイパー5Bの表面が保護材料532、533で覆われているので、上記作動においては、第2金属溶湯4Bの温度低下が防止され、また、第2金属溶湯4Bが第2スクレイパー5Bの表面に固着してしまうのが防止される。したがって、装置10Bによれば、この点からも、第2スクレイパー5Bの上述した機能を、より良好に発揮でき、しかも、金属板40Bの生産効率を向上できる。
【0056】
なお、第1スクレイパー5Aによるその他の作用効果は、第1実施形態の場合と同じである。
【0057】
[第3実施形態]
図7は、本発明の金属板製造装置の第3実施形態を示す正面断面概略図である。この装置10Cは、2種の金属溶湯から2層のクラッド金属板を製造するための装置であり、双ロール法を採用している。
【0058】
装置10Cは、第1ロール1、第2ロール2、第1プール3A、及び第2プール3Bを、備えている。
【0059】
第1ロール1は、第1実施形態の第1ロール1と同じ構成を有している。
【0060】
第2ロール2は、第1スクレイパー5Aより第1ロール1の回転方向(矢印R1方向)前方において、第1ロール1に対向して配置されており、且つ、第1ロール1に向けて(すなわち矢印A方向に)付勢されて設けられている。例えば、第2ロール2は、ばね付勢されている。
【0061】
上記第2ロール2は、第1ロール1の直径と同じものでも良いが、小径ロールの方が安価であるため、且つ、第1プール3A及び第2プール3Bを備えるための空間を広く確保できるため、第1ロール1の直径より小さい直径のロールを採用している。また、第2ロール2は、第1ロール1とは反対方向(矢印R2方向)に回転するように、それぞれ単独で駆動されるように、設けられており、更に、両ロール1、2は、ロール表面11、21における周速が、同じになるように、設定されている。具体的には、駆動モーターを2台用いた方式、いわゆるツインドライブ方式を採用することにより、これを達成できる。また、両ロール1、2が同径の場合は、それぞれ単独で駆動されるように、設けられていなくてもよい。これには、いわゆるシングルドライブ方式が採用できる。
【0062】
更に、第2ロール2も、第1ロール1と同様に、その表面11に接触した金属溶湯を冷却するための冷却機構(図示せず)を有している。その冷却機構としては、冷却水がロール内部を循環することにより冷却能を発揮する「水冷式」を、採用しているが、他の方式を採用してもかまわない。また、第2ロール2の外部に冷却機構を備えていれば、第2ロール2の内部に冷却機構を有していなくてもよい。
【0063】
第1プール3Aは、第1実施形態の第1プール3Aと同じ構成を有している。
【0064】
第2プール3Bは、金属溶湯を貯めることができるように、第2ロール2の表面21と、第1スクレイパー5Aと、両サイド部材32と、第1ロール1の表面11と、で囲まれている。
【0065】
第1スクレイパー5Aは、第1実施形態の第1スクレイパー5Aと同じ構成を有している。
【0066】
後部材31は、第1実施形態の後部材31と同じ構成を有している。
【0067】
両サイド部材32は、第1実施形態の両サイド部材32と同じ構成を有しているが、第2プール3Bの両側壁も構成できるように、拡張して設けられている。又は、第1実施形態で具体例を示したような、鍔付きの第1ロール1を採用してもよい。
【0068】
次に、上記構成の装置10Cの作動について、図8を参照しながら、説明する。なお、図8では、両サイド部材32の図示を省略している。また、第2プール3Bに注湯する第2金属溶湯4Bの融点は、第1プール3Aに注湯する第1金属溶湯4Aの融点以下である。
【0069】
まず、第1プール3Aに第1金属溶湯4Aを注湯しながら(第1注湯工程)、及び、第2プール3Bに第2金属溶湯4Bを注湯しながら(第2注湯工程)、装置10Bを起動させる。そうすると、第1ロール1と第2ロール2が、所定速度で回転するとともに、冷却機能が作動する。これにより、第1ロール1が、その表面11に接触している第1プール3A内の第1金属溶湯4Aを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層41を形成しながら第1金属層41を伴って回転し(第1冷却工程)、また、第2ロール2が、その表面21に接触している第2プール3B内の第2金属溶湯4Bを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第2金属層42を形成しながら第2金属層42を伴って回転する(第2冷却工程)。なお、第1金属層41は、第1ロール1の表面11側から、凝固状態へと変化していき、また、第2金属層42は、第2ロール2の表面21側から、凝固状態へと変化していく。また、第1ロール1における後部材31の下端縁311から第1スクレイパー5Aの先端部51Aまでの円周距離L1(図7)は、半凝固状態を有する第1金属層41が形成され得る距離に、設定されており、また、第2ロール2における第2プール3Bの液面から両ロール1、2のキス点までの円周距離L2は、半凝固状態を有する第2金属層42が形成され得る距離に、設定されている。
【0070】
そして、第1金属層41が、第1ロール1の回転に伴って移動して第1スクレイパー5Aを越えると、第2ロール2の回転に伴って移動して来た第2金属層42が、第1金属層41に、接触していく。そして、接触した両金属層41、42が、両ロール1、2によって接合されるとともに、両ロール1、2によって更に冷却される(仕上げ工程)。
【0071】
これにより、第1金属溶湯4Aが完全凝固してなる第1金属層401と、第2金属溶湯4Bが完全凝固してなる第2金属層402と、が接合してなるクラッド金属板40Cが、得られる。
【0072】
ところで、半凝固状態を有する第1金属層41が第1スクレイパー5Aを越える時には、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが第1金属層41の表面に一定の力で面的に当接し続ける(第1スクレイピング工程)。これにより、第1金属層41の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第1金属層41が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層42は、第1金属層41の平坦な表面に、形成されることとなる。このとき、仕上げ工程における接合性が向上するので、第1金属層41の半凝固状態表面の固相率の低い部分を掻き取り、第1金属層41の半凝固状態表面を、流動性が低い半凝固状態にしておくのがよい。
【0073】
したがって、装置10Cによれば、第1金属層401と第2金属層402との界面が明瞭であり、且つ、第1金属層401及び第2金属層402の厚さ分布が略均一な、2層のクラッド金属板40Cを、得ることができる。なお、界面が明瞭であるとは、金属溶湯同士の混合や反応がない状態を言う。
【0074】
また、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが、上記作動においては、第1金属層41の表面に面接触する。それ故、先端部51Aは、第1金属層41の表面に確実に当接する。したがって、装置10Cによれば、第1スクレイパー5Aの上述した機能を、より良好に発揮できる。
【0075】
更に、第1スクレイパー5Aへの付勢力を調節することによって、第1金属層41の半凝固状態部分の固相率を調節して、第1金属層41の半凝固状態表面を、流動性が低い半凝固状態にしておくことにより、融点が低い第2金属溶湯4Bの注湯温度を、融点が高い第1金属溶湯4Aの液相線温度より低くした場合においても、金属溶等同士が混合や反応をせずに接合界面が明瞭で、且つ、接合界面に隙間が発生せずに接合界面の密着性の高い、良好なクラッド金属板を得ることができる。これにより、融点が低い第2金属溶湯4Bを、第2金属溶湯4Bの液相線より高くとも液相線に近い温度でも注湯できるので、第2金属溶湯4Bがガスを吸収しないで健全性を保ち、且つ、第2金属溶湯4Bが急冷凝固されて微細な組織を形成するので、できたクラッド金属板の延性が優れている。この場合、融点が高い第1金属溶湯4Aへの、及び、両ロール1、2への、熱負荷も、小さくなる。よって、装置の冷却機能への負担を減らすことができる。
【0076】
更に、第1スクレイパー5Aの表面が保護材料532、533で覆われているので、上記作動においては、第1金属溶湯4A及び第2金属溶湯4Bの温度低下が防止され、また、第1金属溶湯4A及び第2金属溶湯4Bが第1スクレイパー5Aの表面に固着してしまうのが防止される。したがって、装置10Cによれば、この点からも、第1スクレイパー5Aの上述した機能を、より良好に発揮でき、しかも、金属板40Cの生産効率を向上できる。
【0077】
[第4実施形態]
図9は、本発明の金属板製造装置の第4実施形態を示す正面断面概略図である。この装置10Dは、2種又は3種の金属溶湯から3層のクラッド金属板を製造するための装置であり、双ロール法を採用している。
【0078】
装置10Dは、第1ロール1、第2ロール2、第1プール3A、第2プール3B、及び第3プール3Cを、備えている。
【0079】
第1ロール1は、第1実施形態の第1ロール1と同じ構成を有している。
【0080】
第2ロール2は、第3実施形態の第2ロール2と同じ構成を有している。
【0081】
第1プール3Aは、第1実施形態の第1プール3Aと同じ構成を有している。
【0082】
第2プール3Bは、金属溶湯を貯めることができように、第1スクレイパー5Aと、両サイド部材32と、第1スクレイパー5Aより第1ロール1の回転方向(矢印R1方向)前方に設けられた第2前プレート(以下「第2スクレイパー」と称する)5Bと、第1ロール1の表面11と、第2ロール2の表面21と、で囲まれている。
【0083】
第3プール3Cは、金属溶湯を貯めることができように、第2ロール2の表面21と、第2スクレイパー5Bと、両サイド部材32と、で囲まれている。
【0084】
第1スクレイパー5Aは、第1実施形態の第1スクレイパー5Aと同じ構成を有している。
【0085】
第2スクレイパー5Bは、第2プール3Bの前壁と第3プール3Cの後壁とを兼ねており、プレートを加工して設けられている。第1スクレイパー5Bは、図9の断面図に示したように、ここでは、断面が、折り曲げ形態を有しているが、直線又は円弧状の形態を有していてもよい。第2スクレイパー5Bは、その先端が鈍角に折れ曲がっており、折れ曲がった箇所から先端が、先端部51Bになっている。そして、第1スクレイパー5Bは、先端部51Bと第2ロール1の表面21との間の距離HBが変わり得るように、可動に設けられている。具体的には、第2スクレイパー5Bは、基端部52Bにて、水平軸521B回り(矢印Y方向)に回動自在に支持されており、これにより、距離HBが可変となっている。また、第2スクレイパー5Bは、距離HBが小さくなる方向(矢印Y2方向)に回動するように、常時付勢されている。具体的には、第2スクレイパー5Bの基端部52Bには、紐61Bを介して所定重量の錘6Bが連結されており、第2スクレイパー5Bは、錘6Bによって、矢印Y2方向に回動するように、常時、一定の力で引っ張られている。これにより、第2スクレイパー5Bの先端部51Bは、第2ロール2の表面21に向かって、常時、一定の力で付勢されている。なお、この一定の力とは、第3プール3Cに注湯される金属溶湯の半凝固状態における硬さに相当する力であり、金属層の半凝固状態表面の固相率の低い部分を掻き取りながら金属層を平坦に均す程度の力である。第2スクレイパー5Bに対する付勢は、装置を簡易に構成できるので、錘の力で行っているが、油圧など、他の機構を採用してもよい。
【0086】
第2スクレイパー5Bの先端部51Bが、上記金属層に面接触するためには、第1実施形態の第1スクレイパー5Aと同様に、第2ロール2と先端部51Bの裏面(ロール側の面)とのなす角度は、30度未満であることが必要であり、より好ましくは角度が0、すなわち平行である。また、先端部51Bの長さは、5mm以上30mm以下がよく、10mm以上20mm以下が好ましい。これは、先端部51Bの長さが短すぎれば、面接触の効果が弱くなり、長すぎれば、伸びた先端部の上に凝固物が堆積する恐れがあるためである。先端部51Bの裏面は、平面が好ましいが、平面性を実質的に損なわない範囲で曲率半径の大きな凸面になっていてもよい。
【0087】
また、第2スクレイパー5Bは、第1スクレイパー5A(図3)と同様に、芯材531の表面が2種類の保護材料532、533で二重に覆われた構成を、採用している。
【0088】
後部材31は、第1実施形態の後部材31と同じ構成を有している。
【0089】
両サイド部材32は、第1実施形態の両サイド部材32と同じ構成を有しているが、第2プール3B及び第3プール3Cの、両側壁も構成できるように、拡張して設けられている。又は、第1実施形態で具体例を示したような、鍔付きの第1ロール1を採用してもよい。
【0090】
次に、上記構成の装置10Dの作動について、図10を参照しながら、説明する。なお、図10では、両サイド部材32の図示を省略している。また、第2プール3Bに注湯する第2金属溶湯4Bの融点は、第1プール3Aに注湯する第1金属溶湯4Aの融点以下であり、また、第3プール3Cに注湯する第3金属溶湯4Cの融点は、第2金属溶湯4Bの融点以上である。第1金属溶湯4Aと第3金属溶湯4Cとは、同じでもよい。
【0091】
まず、第1プール3Aに第1金属溶湯4Aを注湯しながら(第1注湯工程)、及び、第2プール3Bに第2金属溶湯4Bを注湯しながら(第2注湯工程)、及び、第3プール3Cに第3金属溶湯4Cを注湯しながら(第3注湯工程)、装置10Cを起動させる。そうすると、第1ロール1と第2ロール2が、所定速度で回転するとともに冷却機能が作動する。これにより、第1ロール1が、その表面11に接触している第1プール3A内の第1金属溶湯4Aを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層41を形成しながら第1金属層41を伴って回転し(第1冷却工程)、また、第2ロール2が、その表面21に接触している第3プール3C内の第3金属溶湯4Cを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第3金属層43を形成しながら第3金属層43を伴って回転する(第2冷却工程)。なお、第1金属層41は、第1ロール1の表面11側から、凝固状態へと変化していき、また、第3金属層43は、第2ロール2の表面21側から、凝固状態へと変化していく。また、第1ロール1における後部材31の下端縁311から第1スクレイパー5Aの先端部51Aまでの円周距離L1(図9)は、半凝固状態表面を有する第1金属層41が形成され得る距離に、設定されており、また、第2ロール2における第3プール3Cの液面から両ロール1、2のキス点までの円周距離L3は、半凝固状態表面を有する第3金属層43が形成され得る距離に、設定されている。
【0092】
そして、第1金属層41が、第1ロール1の回転に伴って移動して第1スクレイパー5Aを越えると、第2プール3B内の第2金属溶湯4Bが、第1金属層41に接触して、第1金属層41を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第2金属溶湯4B自体は冷却される。これにより、第1金属層41表面には、第2金属溶湯4Bの半凝固状態の第2金属層421が形成され、第2金属層421は、第1ロール1の回転に伴って、第1金属層41と共に移動する。一方、第3金属層43が、第2ロール2の回転に伴って移動して第2スクレイパー5Bを越えると、第2プール3B内の第2金属溶湯4Bが、第3金属層43に接触して、第3金属層43を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第2金属溶湯4B自体は冷却される。これにより、第3金属層43表面には、第2金属溶湯4Bの半凝固状態の第2金属層422が形成され、第2金属層422は、第2ロール2の回転に伴って、第3金属層43と共に移動する。なお、第1ロール1における第1スクレイパー5Aの先端部51Aから両ロール1、2のキス点までの円周距離L2は、半凝固状態の第2金属層421、422が形成され得る距離に、設定されている。
【0093】
そして、両ロール1、2の回転に伴って、第2金属層421と第2金属層422とが接触していき、第1金属層41と第2金属層421と第2金属層422と第3金属層43とが、両ロール1、2によって接合されるとともに、両ロール1、2によって更に冷却される(仕上げ工程)。
【0094】
これにより、第1金属溶湯4Aが完全凝固してなる第1金属層401と、第2金属溶湯4Bが完全凝固してなる第2金属層402と、第3金属溶湯4Cが完全凝固してなる第3金属層403と、が接合してなるクラッド金属板40Dが、得られる。
【0095】
ところで、第1金属層41が第1スクレイパー5Aを越える時には、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが第1金属層41の表面に一定の力で面的に当接し続ける(第1スクレイピング工程)。これにより、第1金属層41の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第1金属層41が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層421は、第1金属層41の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0096】
一方、第3金属層43が第2スクレイパー5Bを越える時には、第2スクレイパー5Bの先端部51Bが第3金属層43の表面に一定の力で当接し続ける(第2スクレイピング工程)。これにより、第3金属層43の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第3金属層43が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層422は、第3金属層43の平坦な表面に、形成されることとなる。このとき、仕上げ工程における接合性が向上するので、第1金属層41及び第3金属層43の半凝固状態表面の固相率の低い部分を掻き取り、両金属層41、43の半凝固状態表面を、流動性が低い半凝固状態にしておくのがよい。
【0097】
したがって、装置10Dによれば、第1金属層401と第2金属層402と第3金属層403との各界面が明瞭であり、且つ、第1金属層401、第2金属層402、及び第3金属層403の、厚さ分布が略均一な、3層のクラッド金属板40Dを、得ることができる。
しかも、金属層間の界面が明瞭であるので、第2金属溶湯4Bの融点が第1金属溶湯4A及び第3金属溶湯4Cの融点以下であっても、良品のクラッド金属板を得ることができる。
【0098】
また、第2スクレイパー5Bの先端部51Bは、上記作動においては、第3金属層43の表面に面接触する。それ故、先端部51Bは、第3金属層43の表面に確実に当接する。したがって、装置10Dによれば、第2スクレイパー5Bの上述した機能を、より良好に発揮できる。
【0099】
更に、第1スクレイパー5Aへの付勢力を調節することによって、第1金属層41及び第3金属層43の半凝固状態部分の固相率を調節して、両金属層の半凝固状態表面を流動性が低い半凝固状態にしておくことにより、融点が低い第2金属溶湯4Bの注湯温度を、融点が高い第1金属溶湯4A及び第3金属溶湯4Cの液相線温度より低くした場合においても、金属溶等同士が混合や反応をせずに接合界面が明瞭で、且つ、接合界面に隙間が発生せずに接合界面の密着性の高い、良好なクラッド金属板を得ることができる。これにより、融点が低い第2金属溶湯4Bを、第2金属溶湯4Bの液相線より高くとも液相線に近い温度でも注湯できるので、第2金属溶湯4Bがガスを吸収しないで健全性を保ち、且つ、第2金属溶湯4Bが急冷凝固されて微細な組織を形成するので、できたクラッド金属板の延性が優れている。この場合、融点が高い第1金属溶湯4A及び第3金属溶湯4Cへの、及び、両ロール1、2への、熱負荷も、小さくなる。よって、装置の冷却機能への負担を減らすことができる。
【0100】
更に、第2スクレイパー5Bの表面が保護材料532、533で覆われているので、上記作動においては、第2金属溶湯4B及び第3金属溶湯4Cの温度低下が防止され、また、第2金属溶湯4B及び第3金属溶湯4Cが第2スクレイパー5Bの表面に固着してしまうのが防止される。したがって、装置10Dによれば、この点からも、第2スクレイパー5Bの上述した機能を、より良好に発揮でき、しかも、金属板40Dの生産効率を向上できる。
【0101】
なお、第1スクレイパー5Aによるその他の作用効果は、第3実施形態の場合と同じである。
【0102】
[第5実施形態]
図11は、本発明の金属板製造装置の第5実施形態を示す正面断面概略図である。この装置10Eは、3種又は4種の金属溶湯から4層のクラッド金属板を製造するための装置であり、双ロール法を採用している。
【0103】
装置10Eは、第1ロール1、第2ロール2、第1プール3A、第2プール3B、第3プール3C、及び第4プール3Dを、備えている。
【0104】
第1ロール1は、第1実施形態の第1ロール1と同じ構成を有している。
【0105】
第2ロール2は、第3実施形態の第2ロール2と同じ構成を有している。
【0106】
第1プール3Aは、第1実施形態の第1プール3Aと同じ構成を有している。
【0107】
第2プール3Bは、金属溶湯を貯めることができように、第1スクレイパー5Aと、両サイド部材32と、第1スクレイパー5Aより第1ロール1の回転方向(矢印R1方向)前方に設けられた第2前プレート(以下「第2スクレイパー」と称する)5Bと、第1ロール1の表面11と、で囲まれている。
【0108】
第3プール3Cは、金属溶湯を貯めることができように、第2スクレイパー5Bと、両サイド部材32と、第2スクレイパー5Bより第1ロール1の回転方向(矢印R1方向)前方に設けられた第3前プレート(以下「第3スクレイパー」と称する)5Cと、第1ロール1の表面11と、第2ロール2の表面21と、で囲まれている。
【0109】
第4プール3Dは、金属溶湯を貯めることができように、第2ロール2の表面21と、第3スクレイパー5Cと、両サイド部材32と、で囲まれている。
【0110】
第1スクレイパー5Aは、第1実施形態の第1スクレイパー5Aと同じ構成を有している。
【0111】
第2スクレイパー5Bは、第1スクレイパー5Aと同じ構成を有している。
【0112】
第3スクレイパー5Cは、第4実施形態の第2スクレイパー5Bと同じ構成を有している。なお、第3スクレイパー5Cには、紐61Cを介して錘6Cが連結されている。
【0113】
後部材31は、第1実施形態の後部材31と同じ構成を有している。
【0114】
両サイド部材32は、第1実施形態の両サイド部材32と同じ構成を有しているが、第2プール3B、第3プール3C、及び第4プール3Dの、両側壁も構成できるように、拡張して設けられている。又は、第1実施形態で具体例を示したような、鍔付きの第1ロール1を採用してもよい。
【0115】
上記構成の装置10Eは、次のように作動する。なお、第2プール3Bに注湯する第2金属溶湯4Bの融点は、第1プール3Aに注湯する第1金属溶湯4Aの融点以下であり、また、第3プール3Cに注湯する第3金属溶湯4Cの融点は、第2金属溶湯4Bの融点以下であり、第4プール3Dに注湯する第4金属溶湯4Dの融点は、第3金属溶湯4Cの融点以上である。第1金属溶湯4Aと第4金属溶湯4Dとは、同じでもよい。
【0116】
まず、第1プール3Aに第1金属溶湯4Aを注湯しながら、及び、第2プール3Bに第2金属溶湯4Bを注湯しながら、及び、第3プール3Cに第3金属溶湯4Cを注湯しながら、及び、第4プール3Dに第4金属溶湯4Dを注湯しながら、装置10Eを起動させる。そうすると、第1ロール1と第2ロール2が、所定速度で回転するとともに、冷却機能が作動する。これにより、第1ロール1が、その表面11に接触している第1プール3A内の第1金属溶湯4Aを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層41を形成しながら第1金属層41を伴って回転し、また、第2ロール2が、その表面21に接触している第4プール3D内の第4金属溶湯4Dを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第4金属層44を形成しながら第4金属層44を伴って回転する。なお、第1金属層41は、第1ロール1の表面11側から、凝固状態へと変化していき、また、第4金属層44は、第2ロール2の表面21側から、凝固状態へと変化していく。また、第1ロール1における後部材31の下端縁311から第1スクレイパー5Aの先端部51Aまでの円周距離L1(図11)は、半凝固状態表面を有する第1金属層41が形成され得る距離に、設定されており、また、第2ロール2における第4プール3Dの液面から両ロール1、2のキス点までの円周距離L4は、半凝固状態表面を有する第4金属層44が形成され得る距離に、設定されている。
【0117】
そして、第1金属層41が、第1ロール1の回転に伴って移動して第1スクレイパー5Aを越えると、第2プール3B内の第2金属溶湯4Bが、第1金属層41に接触して、第1金属層41を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第2金属溶湯4B自体は冷却される。これにより、第1金属層41表面には、第2金属溶湯4Bの半凝固状態の第2金属層42が形成され、第2金属層42は、第1ロール1の回転に伴って、第1金属層41と共に移動する。なお、第1ロール1における第1スクレイパー5Aの先端部51Aから第2スクレイパー5Bの先端部51Bまでの円周距離L2(図11)は、半凝固状態の第2金属層42が形成され得る距離に、設定されている。
【0118】
そして、第2金属層42が、第1ロール1の回転に伴って移動して第2スクレイパー5Bを越えると、第3プール3C内の第3金属溶湯4Cが、第2金属層42に接触して、第2金属層42を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第3金属溶湯4C自体は冷却される。これにより、第2金属層42表面には、第3金属溶湯4Cの半凝固状態の第3金属層431が形成され、第3金属層431は、第1ロール1の回転に伴って、第2金属層42と共に移動する。
【0119】
一方、第4金属層44が、第2ロール2の回転に伴って移動して第3スクレイパー5Cを越えると、第3プール3C内の第3金属溶湯4Cが、第4金属層44に接触して、第4金属層44を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第3金属溶湯4C自体は冷却される。これにより、第4金属層44表面には、第3金属溶湯4Cの半凝固状態の第3金属層432が形成され、第3金属層432は、第2ロール2の回転に伴って、第4金属層44と共に移動する。なお、第1ロール1における第2スクレイパー5Bの先端部51Bから両ロール1、2のキス点までの円周距離L3(図9)は、半凝固状態の第3金属層431、432が形成され得る距離に、設定されている。
【0120】
そして、両ロール1、2の回転に伴って、第3金属層431と第3金属層432とが接触していき、第1金属層41と第2金属層42と第3金属層431と第3金属層432と第4金属層44とが、両ロール1、2によって接合されるとともに、両ロール1、2によって更に冷却される。
【0121】
これにより、第1金属溶湯4Aが完全凝固してなる第1金属層401と、第2金属溶湯4Bが完全凝固してなる第2金属層402と、第3金属溶湯4Cが完全凝固してなる第3金属層403と、第4金属溶湯4Dが完全凝固してなる第4金属層404と、が接合してなるクラッド金属板40Eが、得られる。
【0122】
ところで、第1金属層41が第1スクレイパー5Aを越える時には、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが第1金属層41の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第1金属層41の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第1金属層41が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層42は、第1金属層41の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0123】
また、第2金属層42が第2スクレイパー5Bを越える時には、第2スクレイパー5Bの先端部51Bが第2金属層42の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第2金属層42の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第2金属層42が一定の厚さに調整される。したがって、第3金属層431は、第2金属層42の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0124】
一方、第4金属層44が第3スクレイパー5Cを越える時には、第3スクレイパー5Cの先端部51Cが第4金属層44の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第4金属層44の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第4金属層44が一定の厚さに調整される。したがって、第3金属層432は、第4金属層44の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0125】
したがって、装置10Eによれば、第1金属層401と第2金属層402と第3金属層403と第4金属層404の各界面が明瞭であり、且つ、第1金属層401、第2金属層402、第3金属層403、及び第4金属層404の、厚さ分布が略均一な、4層のクラッド金属板40Eを、得ることができる。
【0126】
なお、第1スクレイパー5A及び第2スクレイパー5Bは、上記実施形態の第1スクレイパー5Aと同様の作用効果を発揮する。また、第3スクレイパー5Cは、第4実施形態の第2スクレイパー5Bと同様の作用効果を発揮する。
【0127】
[第6実施形態]
図12は、本発明の金属板製造装置の第6実施形態を示す正面断面概略図である。この装置10Fは、2種又は3種の金属溶湯から3層のクラッド金属板を製造するための装置であり、双ロール法を採用している。
【0128】
装置10Fは、第1ロール1、第2ロール2、第1プール3A、第2プール3B、及び第3プール3Cを、備えている。
【0129】
第1ロール1及び第2ロール2は、同じ大きさを有しており、水平方向において対向して配置されている。第1ロール1は、図において時計回りに(矢印R1方向に)回転するように、設けられており、第2ロール2は、図において反時計回りに(矢印R2方向に)回転するように、設けられている。
【0130】
第1ロール1は、その表面11に接触した金属溶湯を冷却するための冷却機構(図示せず)を有しており、その表面11に接触した金属溶湯を冷却しながら回転するようになっている。したがって、第1ロール1は、金属溶湯の半凝固状態乃至凝固状態の金属層を形成しながらその金属層を伴って回転し、回転しながらその金属層を完全凝固させるようになっている。冷却機構は、例えば、冷却水がロール内部を循環することにより冷却機能を発揮する「水冷式」が、好ましい。第2ロール2も、第1ロール1と同じ構成及び機能を有している。
【0131】
第1プール3Aは、金属溶湯を貯めることができるように、第1ロール1の表面11と、第1ロール1の回転方向(矢印R1方向)前方に位置する第1前プレート(以下「第1スクレイパー」と称する)5Aと、第1ロール1の回転方向後方に位置する後部材31Aと、両サイド部材(図示せず)と、で囲まれている。
【0132】
後部材31Aは、第1実施形態の後部材31と同じ構成を有している。
【0133】
第1スクレイパー5Aは、第1実施形態の第1スクレイパー5Aと同じ構成を有している。
【0134】
第3プール3Cは、金属溶湯を貯めることができるように、第2ロール2の表面21と、第2ロール2の回転方向(矢印R2方向)前方に位置する第2前プレート(以下「第2スクレイパー」と称する)5Bと、第2ロール2の回転方向後方に位置する後部材31Bと、両サイド部材(図示せず)と、で囲まれている。第3プール3Cは、第1プール3Aに対して、左右対象の構造を有している。なお、第2スクレイパー5Bは、第4実施形態の第2スクレイパー5Bと同じである。
【0135】
第2プール3Bは、金属溶湯を貯めることができるように、第1ロール1の表面11と、第2ロール2の表面21と、第1スクレイパー5Aと、第2スクレイパー5Bと、両サイド部材(図示せず)と、で囲まれている。
【0136】
両サイド部材は、第1実施形態の両サイド部材32と同じ構成を有しているが、第2プール3B、及び第3プール3Cの、両側壁も構成できるように、拡張して設けられている。
【0137】
上記構成の装置10Fは、次のように作動する。なお、第2プール3Bに注湯する第2金属溶湯4Bの融点は、第1プール3Aに注湯する第1金属溶湯4Aの融点以下であり、また、第3プール3Cに注湯する第3金属溶湯4Cの融点は、第2金属溶湯4Bの融点以上である。第1金属溶湯4Aと第3金属溶湯4Cとは、同じでもよい。
【0138】
まず、第1プール3Aに第1金属溶湯4Aを注湯しながら、及び、第2プール3Bに第2金属溶湯4Bを注湯しながら、及び、第3プール3Cに第3金属溶湯4Cを注湯しながら、装置10Fを起動させる。そうすると、第1ロール1と第2ロール2が、所定速度で回転するとともに、冷却機能が作動する。これにより、第1ロール1が、その表面11に接触している第1プール3A内の第1金属溶湯4Aを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層41を形成しながら第1金属層41を伴って回転し、また、第2ロール2が、その表面21に接触している第3プール3C内の第3金属溶湯4Cを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第3金属層43を形成しながら第3金属層43を伴って回転する。なお、第1金属層41は、第1ロール1の表面11側から、凝固状態へと変化していき、また、第3金属層43は、第2ロール2の表面21側から、凝固状態へと変化していく。また、第1ロール1における後部材31Aの下端縁311Aから第1スクレイパー5Aの先端部51Aまでの円周距離L1(図12)は、半凝固状態表面を有する第1金属層41が形成され得る距離に、設定されており、また、第2ロール2における後部材31Bの下端縁311Bから第2スクレイパー5Bの先端部51Bまでの円周距離L3(図12)は、半凝固状態表面を有する第3金属層43が形成され得る距離に、設定されている。
【0139】
そして、第1金属層41が、第1ロール1の回転に伴って移動して第1スクレイパー5Aを越えると、第2プール3B内の第2金属溶湯4Bが、第1金属層41に接触して、第1金属層41を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第2金属溶湯4B自体は冷却される。一方、第3金属層43が、第2ロール2の回転に伴って移動して第2スクレイパー5Bを越えると、第2プール3B内の第2金属溶湯4Bが、第3金属層43に接触して、第3金属層43を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第2金属溶湯4B自体は冷却される。これにより、第1金属層41と第3金属層43との間に、第2金属溶湯4Bの半凝固状態の第2金属層42が形成される。なお、第1ロール1における第1スクレイパー5Aの先端部51Aから両ロール1、2のキス点までの円周距離L2は、半凝固状態の第2金属層42が形成され得る距離に、設定されている。第2ロール2における円周距離L2も同じである。
【0140】
そして、第2金属層42は、両ロール1、2の回転に伴って、第1金属層41及び第3金属層43と共に移動していき、第1金属層41と第2金属層42と第3金属層43とが、両ロール1、2によって接合されるとともに、両ロール1、2によって更に冷却される。
【0141】
これにより、第1金属溶湯4Aが完全凝固してなる第1金属層401と、第2金属溶湯4Bが完全凝固してなる第2金属層402と、第3金属溶湯4Cが完全凝固してなる第3金属層403と、が接合してなるクラッド金属板40Fが、得られる。
【0142】
ところで、第1金属層41が第1スクレイパー5Aを越える時には、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが第1金属層41の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第1金属層41の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第1金属層41が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層42は、第1金属層41の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0143】
また、第3金属層43が第2スクレイパー5Bを越える時には、第2スクレイパー5Bの先端部51Bが第3金属層43の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第3金属層43の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第3金属層43が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層42は、第3金属層43の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0144】
したがって、装置10Fによれば、第1金属層401と第2金属層402と第3金属層403との各界面が明瞭であり、且つ、第1金属層401、第2金属層402、及び第3金属層403の、厚さ分布が略均一な、3層のクラッド金属板40Fを、得ることができる。
【0145】
[第7実施形態]
図13は、本発明の金属板製造装置の第7実施形態を示す正面断面概略図である。この装置10Gは、3種又は4種の金属溶湯から5層のクラッド金属板を製造するための装置である。
【0146】
装置10Gは、第1ロール1、第2ロール2、第1プール3A、第2プール3B、及び第3プール3Cを、備えた下装置部FAと、第3ロール6、第4ロール7、及び第4プール3Dを、備えた上装置部FBと、を備えている。
【0147】
下装置部FAは、第6実施形態の装置10Fと同じ構成を有している。
【0148】
上装置部FBにおいて、第3ロール6及び第4ロール7は、同じ大きさを有しているが、そうでなくてもよく、また、水平方向において対向して配置されているが、そうでなくてもよい。第3ロール6は、図において時計回りに(矢印R1方向に)回転するように、設けられており、第4ロール7は、図において反時計回りに(矢印R2方向に)回転するように、設けられている。第3ロール6及び第4ロール7は、両ロール6、7の間の間隙81が下装置部FAの第2ロール2の幅方向中央の真上に位置するように、配置されているが、ガイド等を使用することにより、そのように真上に配置しなくてもよい。
【0149】
第3ロール6は、その表面61に接触した金属溶湯を冷却するための冷却機構(図示せず)を有しており、その表面61に接触した金属溶湯を冷却しながら回転するようになっている。したがって、第3ロール6は、金属溶湯の半凝固状態乃至凝固状態の金属層を形成しながらその金属層を伴って回転し、回転しながらその金属層を完全凝固させるようになっている。冷却機構は、例えば、冷却水がロール内部を循環することにより冷却機能を発揮する「水冷式」が、好ましい。第4ロール7も、第3ロール6と同じ構成及び機能を有している。
【0150】
第4プール3Dは、金属溶湯を貯めることができるように、第3ロール6の表面61と、第4ロール7の表面71と、両サイド部材(図示せず)と、で囲まれている。
【0151】
上記構成の装置10Gは、次のように作動する。なお、第2プール3Bに注湯する第2金属溶湯4Bの融点は、第1プール3Aに注湯する第1金属溶湯4Aの融点以下であり、また、第3プール3Cに注湯する第3金属溶湯4Cの融点は、第2金属溶湯4Bの融点以上であり、第4プール3Dに注湯する第4金属溶湯4Dの融点は、第2金属溶湯4Bの融点以上である。第1金属溶湯4Aと第3金属溶湯4Cと第4金属溶湯4Dは、同じでもよい。
【0152】
まず、第1プール3Aに第1金属溶湯4Aを注湯しながら、及び、第2プール3Bに第2金属溶湯4Bを注湯しながら、及び、第3プール3Cに第3金属溶湯4Cを注湯しながら、及び、第4プール4Cに第4金属溶湯4Dを注湯しながら、装置10Gを起動させる。そうすると、全ロール1、2、6、7が、各々所定速度で回転するとともに、冷却機能が作動する。これにより、第1ロール1が、その表面11に接触している第1プール3A内の第1金属溶湯4Aを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層41を形成しながら第1金属層41を伴って回転し、また、第2ロール2が、その表面21に接触している第3プール3C内の第3金属溶湯4Cを冷却して半凝固状態乃至凝固状態の第3金属層43を形成しながら第3金属層43を伴って回転する。また、一方では、第3ロール6及び第4ロール7が、その表面61、71に接触している第4プール3D内の第4金属溶湯4Dを冷却して半凝固状態の第4金属層44を形成しながら第4金属層44を伴って回転する。なお、両ロール6、7における第3プール3Cの液面から両ロール6、7のキス点までの円周距離L4は、半凝固状態の第4金属層44が形成され得る距離に、設定されている。そして、第4金属層44は、両ロール6、7によって接合される。
【0153】
一方、第1金属層41が、第1ロール1の回転に伴って移動して第1スクレイパー5Aを越えると、第2プール3B内の第2金属溶湯4Bが、第1金属層41に接触して、第1金属層41を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第2金属溶湯4B自体は冷却される。これにより、半凝固状態の第2金属層421が、形成され、第1ロール1の回転に伴って、第1金属層41と共に移動する。
【0154】
また、第3金属層43が、第2ロール2の回転に伴って移動して第2スクレイパー5Bを越えると、第3プール3C内の第3金属溶湯4Cが、第3金属層43に接触して、第3金属層43を金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第2金属溶湯4B自体は冷却される。これにより、半凝固状態の第2金属層422が、形成され、第2ロール2の回転に伴って、第3金属層43と共に移動する。
【0155】
一方、第4金属層44が、両ロール6、7の回転に伴って下方に移動し、第2プール3B内を通過して、第2金属層421と第2金属層422との間に至る。
【0156】
そして、第4金属層44が、第2金属層421と第2金属層422とを金属結合可能な温度まで加熱するとともに、第4金属層44自体は冷却される。これにより、第1金属層41と第2金属層421と第4金属層44と第2金属層422と第3金属層43とが、共に移動していき、両ロール1、2によって接合されるとともに、両ロール1、2によって更に冷却される。
【0157】
これにより、第1金属溶湯4Aが完全凝固してなる第1金属層401と、第2金属溶湯4Bが完全凝固してなる第2金属層402と、第4金属溶湯4Dが完全凝固してなる第3金属層403と、第2金属溶湯4Bが完全凝固してなる第4金属層404と、第3金属溶湯4Cが完全凝固してなる第5金属層405と、が接合してなるクラッド金属板40Gが、得られる。
【0158】
ところで、第1金属層41が第1スクレイパー5Aを越える時には、第1スクレイパー5Aの先端部51Aが第1金属層41の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第1金属層41の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第1金属層41が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層421は、第1金属層41の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0159】
また、第3金属層43が第2スクレイパー5Bを越える時には、第2スクレイパー5Bの先端部51Bが第3金属層43の表面に一定の力で面的に当接し続ける。これにより、第3金属層43の半凝固状態表面が掻き取られながら均されるとともに、第3金属層43が一定の厚さに調整される。したがって、第2金属層422は、第3金属層43の平坦な表面に、形成されることとなる。
【0160】
したがって、装置10Gによれば、第1金属層401と第2金属層402と第3金属層403と第4金属層404と第5金属層405との各界面が明瞭であり、且つ、第1金属層401、第2金属層402、第3金属層403、第4金属層404、及び第5金属層405の、厚さ分布が略均一な、5層のクラッド金属板40Gを、得ることができる。
【0161】
[別の実施形態]
(1)スクレイパーを付勢する機構としては、錘を用いる機構に限るものではなく、例えば、油圧機構でもよい。
(2)スクレイパーは、製作が容易である故にプレートを折り曲げ加工して製作されているが、金属溶湯のプールの壁を構成することができ、且つ、先端部を設けることができれば、他の部材でもよい。
(3)スクレイパーは、芯材のみで構成されてもよい。但し、その場合のスクレイパーの材質は、金属溶湯に対して無反応性である必要がある。具体的な材料としては、アルミナファイバー、ゾノライト系ケイ酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなどがある。
【実施例】
【0162】
[第1実施例]
本実施例は、図1乃至図4に示される第1実施形態に相当している。本実施例における実施条件は、次のとおりである。
【0163】
(実施条件)
・第1ロール1
・ロールシェル材質…SS400
・ロール直径…1500mm
・ロール幅W1(図2)…50mm
・金属板冷却速度…100℃/秒 以上
・第1金属溶湯4A
・材料…6022合金(Al−Si系合金);融点655℃
・注湯温度…680℃
・第1スクレイパー5A
・形態…図1の断面概略図に示したような折り曲げ形態を有したもの
・材質…鋼板を、シリカクロスで覆い、更にアルミナシリカクロスで覆ったもの
・先端部51Aの長さ…1.5cm
・錘6A…0.5kg
・第1ロール1の回転速度(周速)…20m/分
・凝固距離L1…110mm
【0164】
なお、凝固距離L1とは、後部材31の下端縁311から第1スクレイパー5Aの先端部51Aまでの円周距離である。
【0165】
(結果)
(1)得られた薄板の表面を観察した。その結果、表面が平滑であり、且つ、板厚分布が圧延可能なほどに均一であった。
(2)得られた薄板について、「180度曲げ試験」及び「引張試験」を行った。
(2-1) 180度曲げ試験
・得られた薄板を、鋳造方向(第1ロール1の回転方向)に対して0度の向きに折り曲げて、薄板の表面と裏面とについて割れの有無を調査した。その結果、いずれの面にも、割れは発見されなかった。
・得られた薄板を、上記鋳造方向に対して90度の向きに折り曲げて、薄板の表面と裏面とについて割れの有無を調査した。その結果、いずれの面にも、割れは発見されなかった。
(2-2) 引張試験
・得られた薄板を、厚さ1mmまで冷間圧延し、430℃で1時間焼鈍し、水焼き入れし、T4処理した。試験片形状は、7号試験片とした。「引張強さ」、「0.2%耐力」、及び「伸び」を測定した。その結果、「引張強さ」は248MPaであり、「0.2%耐力」は115MPaであり、「伸び」は32%であった。これは、自動車ボディパネル材としての使用に耐え得るものであった。
【0166】
(変形例)
注湯温度を、6022合金の液相線温度655℃の近傍である665℃として、上記と同様に実施したところ、同様の結果が得られた。
【0167】
[第2実施例]
本実施例は、図9及び図10に示される第4実施形態に相当している。本実施例における実施条件は、次のとおりである。
【0168】
(実施条件)
・第1ロール1
・ロールシェル材質…SS400
・ロール直径…1500mm
・ロール幅W1…50mm
・金属板冷却速度…100℃/秒 以上
・第2ロール2
・ロールシェル材質…銅
・ロール直径…250mm
・ロール幅W1…50mm
・ばね荷重…18N
・金属板冷却速度…100℃/秒 以上
・第1金属溶湯4A
・材料…3M01合金(Al−Mn系合金);
固相線温度:628℃、液相線温度:655℃
・注湯温度…700℃
・第2金属溶湯4B
・材料…4045合金(Al−Si系合金);
固相線温度:577℃、液相線温度:590℃
・注湯温度…610℃
・第3金属溶湯4C
・材料…3M01合金(Al−Mn系合金);
固相線温度:628℃、液相線温度:655℃
・注湯温度…750℃
・第1スクレイパー5A及び第2スクレイパー5B
・形態…図9の断面概略図に示したような折り曲げ形態を有したもの
・材質…鋼板を、シリカクロスで覆い、更にアルミナシリカクロスで覆ったもの
・先端部51A及び51Bの長さ…1.5cm
・錘6A…0.5kg
・錘6B…0.5kg
・第1ロール1及び第2ロール2の回転速度(周速)…20m/分
・凝固距離L1…110mm
・凝固距離L2…100mm
・凝固距離L3…80mm
【0169】
なお、凝固距離L1とは、後部材31の下端縁311から第1スクレイパー5Aの先端部51Aまでの円周距離である。凝固距離L2とは、第1スクレイパー5Aの先端部51Aから両ロール1、2のキス点までの円周距離である。凝固距離L3とは、第3プール3Cの液面から第2スクレイパー5Bの先端部51Bまでの円周距離である。
【0170】
(結果)
得られた薄板の界面を観察した。その結果、第1金属層と第2金属層と第3金属層との各界面に、金属溶湯の混合や反応は発見されなかった。すなわち、いずれの界面も、明瞭であった。
【0171】
注目すべきは、第2金属溶湯4Bの注湯温度が、第1金属溶湯4A及び第3金属溶湯4Cの、液相線温度以下及び固相線温度以下でも、接合が可能であったことである。これは、スクレイパーで掻かれた後の第1金属層41及び第3金属層43の表面を、流動性の低い半凝固状態にしておいたからである。したがって、第2実施例で得られたクラッド金属板は、図14に示されるように、第3金属層403と第2金属層402との接合面が明瞭であり、当然に、第1金属層401と第2金属層402との接合面も明瞭である。この効果は、スクレイパーが、金属層の表面を平滑にするだけでなく、金属層の表面の固相率を調節して、流動性の低い半凝固状態にしておくことによって、初めて可能になったものであり、本発明の特徴である。これに対して、スクレイパーで掻かれた後の第1金属層41及び第3金属層43の表面が、固相状態である場合には、図15に示されるように、第3金属層503と第2金属層502との接合面に隙間600ができた。
【0172】
(変形例)
第2金属溶湯4Bの注湯温度を、4055合金の液相線温度590℃の近傍である595℃として、上記と同様に実施したところ、同様の結果が得られた。
【0173】
注目すべきは、第2金属溶湯4Bの注湯温度が、その合金の液相線温度近傍の低い温度でも接合できたことである。このように、第2金属溶湯4Bの注湯温度が低いために、第2金属溶湯4Bがガスを吸収しないで健全性を保ち、且つ、第2金属溶湯4Bが急冷凝固されて微細な組織を形成するので、できたクラッド金属板の延性が向上する。また、装置の冷却機能への負担を減らすことができるという利点もある。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明の金属板製造装置及び金属板製造方法は、単層の金属板又は複層のクラッド金属板を省工程で、安価に、製造できるので、産業上の利用価値は大である。
【符号の説明】
【0175】
1、2 ロール 11、21 表面 3A、3B、3C、3D プール 31 後部材 32 サイド部材 4A、4B、4C、4D 金属溶湯 5A、5B、5C スクレイパー 51A、51B、51C 先端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールを用いた連続鋳造によって、単層の金属板又は複層のクラッド金属板を製造する、金属板製造装置において、
冷却能を有する第1ロールと、
第1金属溶湯を貯めるための第1プールと、を備えており、
第1プールは、第1ロールの表面と、第1ロールの回転方向前方に位置する第1前プレートと、第1ロールの回転方向後方に位置する後部材と、両サイド部材と、で囲まれており、
第1前プレートは、先端部を有し、前記先端部と第1ロールの表面との間の距離が変わり得るように、可動に設けられており、
第1ロールは、第1プール内の第1金属溶湯を冷却して第1ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層を形成しながら第1金属層を伴って回転するようになっており、
第1前プレートは、第1ロールの回転に伴って移動する第1金属層の半凝固状態表面に、前記第1前プレートの先端部が一定の力で面的に常時当接するように付勢されている、
ことを特徴とする金属板製造装置。
【請求項2】
第1ロールとは反対方向に回転する、冷却能を有する第2ロールと、
融点が第1金属溶湯の融点以下である第2金属溶湯を、貯めるための、第2プールと、を更に備えており、
第2ロールは、第1前プレートより第1ロールの回転方向前方において、第1ロールに対向して且つ第1ロールに向けて付勢されて、設けられており、
第2プールは、第2ロールの表面と、第1前プレートと、両サイド部材と、第1ロールの表面と、で囲まれており、
第2ロールは、第2プール内の第2金属溶湯を冷却して第2ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第2金属層を形成しながら第2金属層を伴って回転するようになっており、
第2ロールの回転に伴って移動する第2金属層が、第1ロールの回転に伴って第1前プレートの先端部と第1ロールの表面との間を通過して来た第1金属層に、接触していき、接触した両層が、上記両ロールによって接合されるとともに完全凝固されるようになっている、
請求項1記載の金属板製造装置。
【請求項3】
第1ロールとは反対方向に回転する、冷却能を有する第2ロールと、
第2ロールと第1前プレートとの間に位置する、第2前プレートと、
融点が第1金属溶湯の融点以下である第2金属溶湯を、貯めるための、第2プールと、
融点が第2金属溶湯の融点以上である第3金属溶湯を、貯めるための、第3プールと、を更に備えており、
第2ロールは、第1前プレートより第1ロールの回転方向前方において、第1ロールに対向して且つ第1ロールに向けて付勢されて、設けられており、
第2プールは、第1前プレートと、第1ロールの表面と、両サイド部材と、第2ロールの表面と、第2前プレートと、で囲まれており、
第3プールは、第2ロールの表面と、第2前プレートと、両サイド部材と、で囲まれており、
第2前プレートは、先端部を有し、前記先端部と第2ロールの表面との間の距離が変わり得るように、可動に設けられており、
第2ロールは、第3プール内の第3金属溶湯を冷却して第2ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第3金属層を形成しながら第3金属層を伴って回転するようになっており、
第2前プレートは、第2ロールの回転に伴って移動する第3金属層の半凝固状態表面に、第2前プレートの先端部が一定の力で面的に常時当接するように付勢されており、
第2金属溶湯が、第1ロールの回転に伴って第1前プレートの先端部と第1ロールの表面との間を通過して来た第1金属層と、第2ロールの回転に伴って第2前プレートの先端部と第2ロールの表面との間を通過して来た第3金属層と、に接触して、半凝固状態の第2金属層となり、第1金属層と第2金属層と第3金属層とが、上記両ロールによって接合されるとともに完全凝固されるようになっている、
請求項1記載の金属板製造装置。
【請求項4】
第2ロールの直径が第1ロールの直径より小さい、
請求項2又は3のいずれか一項に記載の金属板製造装置。
【請求項5】
請求項1記載の金属板製造装置を用いて単層の金属板を製造する方法であって、
第1プールに第1金属溶湯を注湯する第1注湯工程と、
第1ロールを回転させて、第1プール内の第1金属溶湯を第1ロールによって冷却して第1ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層を形成しながら、第1ロールの表面と共に第1金属層を移動させる、第1冷却工程と、
第1前プレートの先端部を第1金属層の半凝固状態表面に一定の力で面的に常時当接させて、第1金属層の表面を掻き取りながら均す、第1スクレイピング工程と、を備えていることを特徴とする金属板製造方法。
【請求項6】
請求項2又は4に記載の金属板製造装置を用いて2層のクラッド金属板を製造する方法であって、
第1プールに第1金属溶湯を注湯する第1注湯工程と、
第2プールに第2金属溶湯を注湯する第2注湯工程と、
第1ロールを回転させて、第1プール内の第1金属溶湯を第1ロールによって冷却して第1ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層を形成しながら、第1ロールの表面と共に第1金属層を移動させる、第1冷却工程と、
第1前プレートの先端部を第1金属層の半凝固状態表面に一定の力で面的に常時当接させて、第1金属層の表面を掻き取りながら均す、第1スクレイピング工程と、
第2ロールを回転させて、第2プール内の第2金属溶湯を第2ロールによって冷却して第2ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第2金属層を形成しながら、第2ロールの表面と共に第2金属層を移動させる、第2冷却工程と、
上記両ロールを回転させながら、第1金属層と第2金属層とを接触させ、更に、上記両層を、上記両ロールによって接合するとともに完全凝固させる、仕上げ工程と、を備えていることを特徴とする金属板製造方法。
【請求項7】
請求項3又は4に記載の金属板製造装置を用いて3層のクラッド金属板を製造する方法であって、
第1プールに第1金属溶湯を注湯する第1注湯工程と、
第2プールに第2金属溶湯を注湯する第2注湯工程と、
第3プールに第3金属溶湯を注湯する第3注湯工程と、
第1ロールを回転させて、第1プール内の第1金属溶湯を第1ロールによって冷却して第1ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層を形成しながら、第1ロールの表面と共に第1金属層を移動させる、第1冷却工程と、
第1前プレートの先端部を第1金属層の半凝固状態表面に一定の力で面的に常時当接させて、第1金属層の表面を掻き取りながら均す、第1スクレイピング工程と、
第2ロールを回転させて、第3プール内の第3金属溶湯を第2ロールによって冷却して第2ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第3金属層を形成しながら、第2ロールの表面と共に第3金属層を移動させる、第2冷却工程と、
第2前プレートの先端部を第3金属層の半凝固状態表面に一定の力で面的に常時当接させて、第3金属層の表面を掻き取りながら均す、第2スクレイピング工程と、
第2プール内の第2金属溶湯を、第1金属層と第3金属層とに接触させて半凝固状態の第2金属層を形成し、更に、第1金属層と第2金属層と第3金属層とを、上記両ロールによって接合するとともに完全凝固させる、仕上げ工程と、を備えていることを特徴とする金属板製造方法。
【請求項1】
ロールを用いた連続鋳造によって、単層の金属板又は複層のクラッド金属板を製造する、金属板製造装置において、
冷却能を有する第1ロールと、
第1金属溶湯を貯めるための第1プールと、を備えており、
第1プールは、第1ロールの表面と、第1ロールの回転方向前方に位置する第1前プレートと、第1ロールの回転方向後方に位置する後部材と、両サイド部材と、で囲まれており、
第1前プレートは、先端部を有し、前記先端部と第1ロールの表面との間の距離が変わり得るように、可動に設けられており、
第1ロールは、第1プール内の第1金属溶湯を冷却して第1ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層を形成しながら第1金属層を伴って回転するようになっており、
第1前プレートは、第1ロールの回転に伴って移動する第1金属層の半凝固状態表面に、前記第1前プレートの先端部が一定の力で面的に常時当接するように付勢されている、
ことを特徴とする金属板製造装置。
【請求項2】
第1ロールとは反対方向に回転する、冷却能を有する第2ロールと、
融点が第1金属溶湯の融点以下である第2金属溶湯を、貯めるための、第2プールと、を更に備えており、
第2ロールは、第1前プレートより第1ロールの回転方向前方において、第1ロールに対向して且つ第1ロールに向けて付勢されて、設けられており、
第2プールは、第2ロールの表面と、第1前プレートと、両サイド部材と、第1ロールの表面と、で囲まれており、
第2ロールは、第2プール内の第2金属溶湯を冷却して第2ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第2金属層を形成しながら第2金属層を伴って回転するようになっており、
第2ロールの回転に伴って移動する第2金属層が、第1ロールの回転に伴って第1前プレートの先端部と第1ロールの表面との間を通過して来た第1金属層に、接触していき、接触した両層が、上記両ロールによって接合されるとともに完全凝固されるようになっている、
請求項1記載の金属板製造装置。
【請求項3】
第1ロールとは反対方向に回転する、冷却能を有する第2ロールと、
第2ロールと第1前プレートとの間に位置する、第2前プレートと、
融点が第1金属溶湯の融点以下である第2金属溶湯を、貯めるための、第2プールと、
融点が第2金属溶湯の融点以上である第3金属溶湯を、貯めるための、第3プールと、を更に備えており、
第2ロールは、第1前プレートより第1ロールの回転方向前方において、第1ロールに対向して且つ第1ロールに向けて付勢されて、設けられており、
第2プールは、第1前プレートと、第1ロールの表面と、両サイド部材と、第2ロールの表面と、第2前プレートと、で囲まれており、
第3プールは、第2ロールの表面と、第2前プレートと、両サイド部材と、で囲まれており、
第2前プレートは、先端部を有し、前記先端部と第2ロールの表面との間の距離が変わり得るように、可動に設けられており、
第2ロールは、第3プール内の第3金属溶湯を冷却して第2ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第3金属層を形成しながら第3金属層を伴って回転するようになっており、
第2前プレートは、第2ロールの回転に伴って移動する第3金属層の半凝固状態表面に、第2前プレートの先端部が一定の力で面的に常時当接するように付勢されており、
第2金属溶湯が、第1ロールの回転に伴って第1前プレートの先端部と第1ロールの表面との間を通過して来た第1金属層と、第2ロールの回転に伴って第2前プレートの先端部と第2ロールの表面との間を通過して来た第3金属層と、に接触して、半凝固状態の第2金属層となり、第1金属層と第2金属層と第3金属層とが、上記両ロールによって接合されるとともに完全凝固されるようになっている、
請求項1記載の金属板製造装置。
【請求項4】
第2ロールの直径が第1ロールの直径より小さい、
請求項2又は3のいずれか一項に記載の金属板製造装置。
【請求項5】
請求項1記載の金属板製造装置を用いて単層の金属板を製造する方法であって、
第1プールに第1金属溶湯を注湯する第1注湯工程と、
第1ロールを回転させて、第1プール内の第1金属溶湯を第1ロールによって冷却して第1ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層を形成しながら、第1ロールの表面と共に第1金属層を移動させる、第1冷却工程と、
第1前プレートの先端部を第1金属層の半凝固状態表面に一定の力で面的に常時当接させて、第1金属層の表面を掻き取りながら均す、第1スクレイピング工程と、を備えていることを特徴とする金属板製造方法。
【請求項6】
請求項2又は4に記載の金属板製造装置を用いて2層のクラッド金属板を製造する方法であって、
第1プールに第1金属溶湯を注湯する第1注湯工程と、
第2プールに第2金属溶湯を注湯する第2注湯工程と、
第1ロールを回転させて、第1プール内の第1金属溶湯を第1ロールによって冷却して第1ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層を形成しながら、第1ロールの表面と共に第1金属層を移動させる、第1冷却工程と、
第1前プレートの先端部を第1金属層の半凝固状態表面に一定の力で面的に常時当接させて、第1金属層の表面を掻き取りながら均す、第1スクレイピング工程と、
第2ロールを回転させて、第2プール内の第2金属溶湯を第2ロールによって冷却して第2ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第2金属層を形成しながら、第2ロールの表面と共に第2金属層を移動させる、第2冷却工程と、
上記両ロールを回転させながら、第1金属層と第2金属層とを接触させ、更に、上記両層を、上記両ロールによって接合するとともに完全凝固させる、仕上げ工程と、を備えていることを特徴とする金属板製造方法。
【請求項7】
請求項3又は4に記載の金属板製造装置を用いて3層のクラッド金属板を製造する方法であって、
第1プールに第1金属溶湯を注湯する第1注湯工程と、
第2プールに第2金属溶湯を注湯する第2注湯工程と、
第3プールに第3金属溶湯を注湯する第3注湯工程と、
第1ロールを回転させて、第1プール内の第1金属溶湯を第1ロールによって冷却して第1ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第1金属層を形成しながら、第1ロールの表面と共に第1金属層を移動させる、第1冷却工程と、
第1前プレートの先端部を第1金属層の半凝固状態表面に一定の力で面的に常時当接させて、第1金属層の表面を掻き取りながら均す、第1スクレイピング工程と、
第2ロールを回転させて、第3プール内の第3金属溶湯を第2ロールによって冷却して第2ロールの表面に半凝固状態乃至凝固状態の第3金属層を形成しながら、第2ロールの表面と共に第3金属層を移動させる、第2冷却工程と、
第2前プレートの先端部を第3金属層の半凝固状態表面に一定の力で面的に常時当接させて、第3金属層の表面を掻き取りながら均す、第2スクレイピング工程と、
第2プール内の第2金属溶湯を、第1金属層と第3金属層とに接触させて半凝固状態の第2金属層を形成し、更に、第1金属層と第2金属層と第3金属層とを、上記両ロールによって接合するとともに完全凝固させる、仕上げ工程と、を備えていることを特徴とする金属板製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−206835(P2011−206835A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78647(P2010−78647)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年10月14日 社団法人軽金属学会発行の「社団法人軽金属学会第117回秋期大会講演概要」で発表
【出願人】(503420833)学校法人常翔学園 (62)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年10月14日 社団法人軽金属学会発行の「社団法人軽金属学会第117回秋期大会講演概要」で発表
【出願人】(503420833)学校法人常翔学園 (62)
【Fターム(参考)】
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