説明

金属検出装置を動作させるための方法および装置

【課題】1つまたは複数の動作周波数を使用する金属検出装置を動作させるための改善された方法およびこの方法に従って動作する金属検出装置を提供する。
【解決手段】受信機ユニット200の入力に接続される受信機コイル201に結合される送信機コイル101の第1の終端に第1の組の2つの駆動スイッチ61A、62Aを介しておよびその送信機コイル101の第2の終端に第2の組の2つの駆動スイッチ61B、62Bを介して2つの異なる駆動電圧V0、V1を交互に印加する駆動回路4を備える送信機ユニット100を含む金属検出装置を動作させる。第1の波形Wは、第1の組の駆動スイッチ61A、62Aを制御するために生成され、第2の波形Wは、第2の組の駆動スイッチ61B、62Bを制御するために生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属検出装置を動作させるための方法およびこの方法に従って動作する金属検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属検出装置は、食用品および他の製品中の金属汚染を検出するために使用される。WO02/25318で述べられるように、現代の金属検出装置は、生鮮および冷凍製品などの多種多様な製品中の鉄系、非鉄系およびステンレス鋼を含むすべての金属汚染物質類を検出する能力がある「平衡コイルシステム」を含むサーチヘッドを利用する。
【0003】
「平衡コイル」原理に従って動作する金属検出装置は典型的には、非金属フレームに巻かれる3つのコイルを含み、各々は、その他と正確に平行である。中心に位置する送信機コイルは、磁場を生成する高周波電流で励起される。送信機コイルの各々の側にある2つのコイルは、受信機コイルとしての役割を果たす。2つの受信機コイルは、同一であり、送信機コイルから同じ距離で設置されるので、同一電圧が、それらの各々に誘起される。システムが平衡状態にあるときにゼロである出力信号を受信するために、第1の受信機コイルは、逆向きの巻線を有する第2の受信機コイルと直列に接続される。それ故に、同一振幅でかつ逆極性である、受信機コイルに誘起される電圧は、システムが金属汚染のないときに平衡状態にある場合には、互いに相殺している。
【0004】
金属粒子が、コイル配置を通過すると、高周波場が、最初に1つの受信機コイルの近くで、次いでもう一方の受信機コイルの近くで乱される。金属粒子が、受信機コイルを通って運ばれる間に、各受信機コイルに誘起される電圧は、典型的にはナノボルトの範囲で変えられる。この平衡の変化は、受信機コイルの出力に信号をもたらし、その信号は、処理され、増幅され、その後に製品中の金属汚染の存在を検出するために使用できる。
【0005】
信号処理チャンネルは、受信信号を互いに90°離れた2つの個別成分に分割する。合成ベクトルは、コイルを通って運ばれる製品および汚染物質について典型的である大きさおよび位相角を有する。金属汚染物質を識別するためには、「製品の影響」は、除去されるまたは低減される必要がある。もし製品の位相が周知であるならば、そのとき対応する信号ベクトルは、低減できる。それ故に、信号スペクトルから不要な信号を排除することは、汚染物質から生じる信号にとってより高い感度につながる。
【0006】
従って、信号スペクトルから不要な信号を排除するために適用される方法は、汚染物質、製品および他の材料が磁場に異なる影響を有し、その結果生じる信号が位相の点で異なるという事実を利用する。
【0007】
さまざまな金属または製品が金属検出装置のコイルを通過するとき、それらによって引き起こされる信号は、測定される物体の導電率および透磁率に従って2つの成分、すなわち抵抗成分およびリアクタンス成分に分割できる。フェライトによって引き起こされる信号は、主にリアクタンス性であり、一方ステンレス鋼からの信号は、主に抵抗性である。導電性である製品は典型的には、強い抵抗成分を持つ信号を引き起こす。
【0008】
位相検出器を用いて異なる起源の信号成分の位相間を区別することは、製品および汚染物質についての情報を得ることを可能にする。位相検出器、例えば周波数混合器またはアナログ乗算器回路は、受信機コイルからの信号などの信号入力と送信機ユニットによって受信機ユニットに提供される基準信号との間の位相の差を表す電圧信号を生成する。それ故に、製品信号成分の位相と一致するように基準信号の位相を選択することによって、ゼロである位相差および対応する製品信号は、位相検出器の出力で得られる。汚染物質から生じる信号成分の位相が、製品信号成分の位相とは異なる場合には、そのとき汚染物質の信号成分は、検出できる。しかしながら、汚染物質の信号成分の位相が、製品信号成分の位相に近い場合には、汚染物質の信号成分は、製品信号成分と一緒に抑制されるので、そのとき汚染物質の検出は、失敗する。
【0009】
従って、周知のシステムでは、送信機周波数は、金属汚染物質の信号成分の位相が製品信号成分の位相と一致しなくなるように選択可能である。
GB2423366Aは、少なくとも2つの異なる動作周波数の間で切り替えるように設計され、その結果製品中のどんな金属粒子も異なる周波数での走査を受けることになる、金属検出装置を開示する。動作周波数は、急速に変えられ、その結果コンベヤーベルト上を通過するどんな金属粒子も、2つ以上の異なる周波数で走査されることになる。第1の動作周波数について、金属粒子によって引き起こされる信号成分の位相が、製品の信号成分の位相に近く、それ故に覆い隠される場合には、そのとき第2の周波数については、金属粒子によって引き起こされる信号成分の位相は、製品の信号成分の位相とは異なることになり、その結果この信号成分は、区別できると仮定される。多くの周波数の間で切り替えることによって、1つの周波数が、どんな特定の金属の種類、大きさおよび向きについても適切な感度を提供することになると期待される。
【0010】
GB2423366Aで開示される送信機の駆動回路は、電気的にプログラム可能な論理デバイス、および送信機コイルが横断して接続される全波ブリッジ回路を形成する4つの電界効果トランジスタに接続されるドライバを含む。特定のコイルシステムについて、複数のドライブマップが、電子的にプログラム可能な論理デバイスに保存され、各々は、装置のそれぞれの所定動作周波数についてスイッチのための切り替え順序を含有する。保存されたルックアップテーブルの助けを借りて、マイクロプロセッサは次いで、選択される動作周波数に応じて適切なマップを選択することができる。
【0011】
特定のコイルシステムについて適切なドライブマップを保存し、更新し、選択することは、動作周波数の数とともに増加するかなりの労力を必要とする。特定応用のためにシステムを適合させ、最適化するプロセスは、ドライブマップを更新し、強化することを必要とする。ユーザが、検査すべき製品を変え、先の応用で測定された汚染物質とは種類および寸法の点で異なる金属汚染物質の出現を期待する場合には、骨の折れる最適化プロセスが、行われる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO02/25318
【特許文献2】GB2423366A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明は、1つまたは複数の動作周波数を使用する金属検出装置を動作させるための改善された方法およびこの方法に従って動作する金属検出装置を創出する目的に基づいている。
【0014】
詳しくは、本発明は、どんなコイルシステムについても容易に、迅速にかつ高精度で特定応用に適合できる金属検出装置を作る目的に基づいている。
より詳しくは、本発明の方法は、低減された労力でかつ高精度で送信機コイルに印加される駆動電流の調節を可能にするはずである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記および他の目的は、請求項1で定義されるような金属検出装置を動作させるための方法および請求項12で定義されるような金属検出装置によって達成される。
本発明の方法は、受信機ユニットの入力に接続される受信機コイルに結合される送信機コイルの第1の終端に第1の組の2つの駆動スイッチを介しておよびその送信機コイルの第2の終端に第2の組の2つの駆動スイッチを介して2つの異なる駆動電圧を交互に印加する駆動回路を備える送信機ユニットを含む金属検出装置を動作させるのに役立つ。
【0016】
本発明によると、少なくとも第1の波形は、第1の組の駆動スイッチを制御するために生成され、少なくとも第2の波形は、第2の組の駆動スイッチを制御するために生成され、選択される動作周波数に対応するその第1および第2の波形は、所望の駆動電流が送信機コイルを通って流れることを可能にするために、互いに対してシフトされる。
【0017】
本発明の教示によると、駆動電流は、選択される動作周波数についておよび精密に調節できるレベルで容易に生成できる。変更および調節は、容易に行うことができ、その結果本発明の方法は、異なる動作モード間での急速な変化を可能にする。送信機は、第1の動作周波数および第1のレベルの駆動電流で動作する状態から第2のレベルの駆動電流での第2の動作周波数に変更できる。駆動電流は、実際には1クロックサイクル内で所望のレベルまで選択可能な分解能の刻みで調節できる。
【0018】
2つの波形間の所要の位相シフトを得るためには、ただ1つの波形だけが、位相をシフトされる必要がある。駆動電流の位相を一定に保つためには、好ましくは両方の波形が、互いに対して反対方向にシフトされる。
【0019】
第1および第2の組の駆動スイッチに各々提供される2つの波形は、好ましくは互いに対して180°だけ位相シフトされる。好ましい実施形態では、各駆動スイッチは、専用波形で個々に制御される。このようにして、駆動電流の最適制御が、得られてもよく、誤動作が、回避されてもよい。
【0020】
波形は、好ましくは整数nで割った動作周波数の波長に対応する長さを有する刻みでシフトされる。
最も好ましくは、波形に対応する極性「0」または「1」のセグメントは、所望の波形がシフトレジスタの出力に生成されるように、動作周波数に整数nを掛けることによって得られるクロック周波数を使ってシフトレジスタ中でシフトされ、好ましくは回転される。
【0021】
好ましい実施形態では、セグメントは、半波についてのみ提供され、第2の半波について反転され、それ故により短いシフトレジスタを使用することを可能にする。シフトレジスタから出るセグメントは、インバータに印加され、それは、反転極性を持つセグメントをそのシフトレジスタの入力に提供する。その結果、第1の半波および第2の半波のセグメントは、正しい極性を持ってシフトレジスタ中で循環される。
【0022】
対応するシフトレジスタは、選択されるシフト分解能について設定され、整数nを掛けた動作周波数に対応するクロック周波数でクロック動作される。
前記整数nは、より低い動作周波数についてはより高いシフト分解能が得られ、より高い動作周波数についてはより低いシフト分解能が得られるように、印加される動作周波数に従って選択される。
【0023】
整数nは好ましくは、25kHzから250kHzの範囲の動作周波数については512から64の間の範囲でおよび250kHzから1MHzの範囲の動作周波数については128から16の間の範囲で選択される。
【0024】
好ましい実施形態では、セグメントは、50%のデューティサイクルを持つ波形が表されるような極性および数を提供される。
さらに好ましい実施形態では、両方の駆動スイッチを閉じることは、2つの駆動電圧間の短絡につながることになるので、一組の駆動スイッチの第1の駆動スイッチを閉じることは、このスイッチの組の第2の駆動スイッチがなお閉じられている限り回避されるステップおよび手段が、提供される。この目的は有利には、対応する駆動スイッチが閉じられている半サイクルのセグメントのグループの少なくとも先頭にあるセグメントを反転させ、それ故にこの駆動スイッチの作動を対応する時間の長さにわたって遅らせることによって達成される。シフトレジスタで提供される1つまたは複数のセグメントを反転させることは、ほとんど労力を使うことなく行うことができる。遅延は、反転セグメントの数およびそれらの時間の長さに対応し、それは、シフトレジスタに提供されるクロック周波数の周期に対応する。別法として、遅延は、カウンタを使用することによって得ることができ、それは、入力信号に応答して、クロック周波数の所定数のクロックが数えられた後に出力信号を提供する。最も好ましくは、カウンタは、各動作周波数について所定数のクロック、それ故に所定の遅延が選択できるようにプログラム可能である。
【0025】
本発明の目的および利点のいくつかが、述べられたが、他のものは、次の説明が添付図面と一緒に考えられるとき現れることになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】駆動電圧V0、V1がそれを通じて送信機コイル101に印加される4つの駆動スイッチ61A、62A;61B、62Bを制御するために使用される少なくとも2つのシフトレジスタ32A、32Bを備える発生器モジュール3を含む本発明の金属検出装置のブロック図を示す図である。
【図2】図2aは、位相がそろった波形W、Wを表すセグメントで満たされるシフトレジスタ32A、32Bを備える図1の発生器モジュール3を示す図である。図2bは、両方とも位相が互いに対して反対方向にシフトされる波形W、Wを表すセグメントで満たされるシフトレジスタ32A、32Bを備える図1の発生器モジュール3を示す図である。
【図3】波形W、Wの半波だけを表し、レジスタ32A、32B中で循環するときターンごとに反転されるセグメントで満たされるシフトレジスタ32A、32Bを備える好ましい実施形態での図1の発生器モジュール3を示す図である。
【図4】あらゆる駆動スイッチ61A、62A;61B、62Bに割り当てられるシフトレジスタ32A1;32A2;32B1;32B2を備えるさらに好ましい実施形態での図1の発生器モジュール3を示す図である。
【図5】図5aは、送信機コイル101の向かい合った終端に同相で生じる合成電圧UCA、UCBおよびこの設定ではゼロである、結果として生じる駆動電流Iの図である。図5bは、送信機コイル101の向かい合った終端に位相がずれて生じる合成電圧UCA、UCBおよび結果として生じる駆動電流Iの図である。図5cは、送信機コイル101の向かい合った終端に位相が180°ずれて生じる合成電圧UCA、UCBおよび最大値である、結果として生じる駆動電流Iの図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の金属検出装置のブロック図を示し、それは、送信機ユニット100と、送信機コイル101、第1および第2の受信機コイル201、202を備える平衡コイルシステムと、受信機ユニット200と、標準インターフェース、入力デバイスおよび出力デバイス、キーボードおよびモニタを含む制御ユニット9とを含む。金属検出装置の動作中に受信され、処理された信号は、受信機ユニット200から制御ユニット9に転送され、それはさらに、測定結果を処理し、表示する。制御ユニット9はさらに、ユーザによって入力される命令に従って金属検出装置の構成および動作を制御する。制御信号は、制御線またはバス91、92、93を介して送信機ユニット100および受信機ユニット200の様々な実体またはモジュールに運ばれる(図3もまた参照)。受信機ユニット200からは、受信され、処理された信号は、データバス94を介して制御ユニット9に転送され、それはさらに、測定プロセスの結果を処理し、表示しかつ/または保存する。
【0028】
送信機ユニット100は、クロック周波数fRCを発生器モジュール3に供給する周波数シンセサイザ2、好ましくはダイレクトデジタルシンセサイザに基準信号fREFを提供する周波数発生器1、好ましくは水晶発振器を含む。クロック周波数fRCは、金属検出装置の動作周波数fOPの倍数であるように選択される。
【0029】
発生器モジュール3は、波形W、Wを持つ2つの制御電圧を生成し、それは、共通増幅器モジュール4(図3を参照)または個々の増幅器モジュール4A、4Bおよびおそらくは2つのインバータ5A、5Bを介して送信機コイル101の1つの終端に接続される第1の組の駆動スイッチ61A、62Aにおよび送信機コイル101のもう一方の終端に接続される第2の組の駆動スイッチ61B、62Bに転送される。制御信号W、Wの印加によって、各駆動の組の駆動スイッチ61A、62A;61B、62Bは、第1および第2の駆動電圧V0およびV1に交互にしかし決して同時にではなく接続され、その結果短絡は、回避される。送信機コイル101の終端に駆動電圧V0およびV1が交互接続されると、発生器モジュール3によって提供される制御信号の波形W、Wに対応する合成電圧UCAおよびUCBが、送信機コイル101の両方の終端に現れる。
【0030】
これらの合成電圧UCAおよびUCBは、制御電圧または波形W、Wが同相である限り図5aで示されるように同相であり、その結果、2つの合成電圧UCAおよびUCBの差はゼロであるので、駆動電流Iは、送信機コイル101を通り抜けない。しかしながら、波形W、W、それ故に合成電圧UCAおよびUCBが、図5bで示されるように位相角dPH1だけ互いに対してシフトされるとすぐに、そのとき駆動電流Iは、送信機コイル101に流れ始める。合成電圧UCAおよびUCBが差を示す期間T1、T2の間、反対極性の駆動電流Iが、送信機コイル101に導入される。合成電圧UCAおよびUCBが差を示さない期間T3、T4では、そのとき送信機コイル101に導入される駆動電流Iは、閉じた駆動スイッチ61Aおよび61Bまたは62Aおよび62Bを横断して循環する。波形W、W、それ故に合成電圧UCAおよびUCBが、図5cで示されるように180°の位相角だけ互いに対してシフトされる場合には、そのとき反対極性の駆動電流Iが、最長である時間間隔T1、T2の間送信機コイル101に導入され、一方時間間隔T3およびT4は、ゼロである。
【0031】
駆動電圧V1、V0間の短絡を回避するために、両方の駆動スイッチ61Aおよび62Aまたは61Bおよび62Bが同時に閉じることは、インバータ5Aおよび5Bを用いて回避される。この方策によって、駆動スイッチ61Aおよび62Aまたは61Bおよび62Bの入力を制御する制御電圧は、常に反対極性であることが保証される。各スイッチの組61A、62Aまたは61B、62Bの第2の駆動スイッチ62A;62Bに印加される制御電圧または波形W、Wを反転させることによって、駆動電圧V0、V1の交互印加が、達成される。駆動電圧V0、V1は、同一値だが反対極性とすることができる。本例では、第1の駆動電圧V0は、接地電位に設定され、一方第2の駆動電圧V1は、24Vなどの適切な値に設定される。
【0032】
上で述べられ、図5a、5bおよび5cで示されるように、適切な駆動電流Iは、制御信号の波形W、Wを互いに対してシフトさせることによって精密に調節できる。駆動電流Iは、1つのまたはもう一方の波形W、Wをシフトさせるときに流れ始めることになる。
【0033】
しかしながら、好ましい実施形態では、両方の波形W、Wは、互いに対して反対方向に等しくシフトされる。図5cで例示されるように、同等の位相シフトshPH−AおよびshPH−Bが、両方の波形W、Wに適用され、それは、合成電圧UCAおよびUCBの波形に対応する。波形W、Wを反対方向に等しくシフさせる結果として、駆動電流Iの位相は、駆動電流Iのレベルを変えるとき一定のままである(図5a、5bおよび5cを横断する基準線PHREFを参照)。
【0034】
好ましくは、波形W、Wは、対応して構成されるシフトレジスタ32A、32Bの助けを借りて発生器モジュール3で生成され、シフトされる。この手段を使うと、そのタスクは、望ましい波形がまた生成される可能性もある高価な信号処理手段を必要とすることなく効果的に果たすことができる。発生器モジュール3は、いくつかのタスクを行う制御モジュール31を含む。除算器モジュール311を使って、周波数シンセサイザ2、好ましくはダイレクトデジタルシンセサイザDDSによって提供されるクロック周波数fRCは、金属検出装置の動作周波数fOPを得るために整数nで割られる。
【0035】
動作周波数fOPを選択するとき、制御ユニット9は、周波数シンセサイザ2のクロック周波数fRCを動作周波数fOPに整数nを掛けた積に対応する値に設定する(fRC=fOP×n)。
【0036】
整数nは、動作周波数fOPに対応する発生器モジュール3の出力での波形W、Wが、図2aで示されるように対応するシフトレジスタ32A、32Bで提供される数nのセグメントs1、s0に分割されるように選択される。その結果、クロック周波数fRCは、シフトレジスタ32A、32Bのためのクロックとして使用される。数nのクロック信号を使って、波形W、Wの全波が、発生器モジュール3によって生成される。それ故に、クロック周波数fRCがシフトレジスタ32A、32Bに印加され、波形W、Wの全波当たり数nのセグメントが提供されると、動作周波数fOPを示す対応する制御信号が、生成される。
【0037】
従って、整数nは、波形W、Wがシフトされる分解能および駆動電流Iが調節できる分解能を決定する。
整数nは、好ましくはより低い動作周波数fOPについてはより高いシフト分解能が得られ、より高い動作周波数fOPについてはより低いシフト分解能が得られるように、印加される動作周波数fOPに従って選択される。
【0038】
整数nは好ましくは、25kHzから250kHzの間の範囲の動作周波数fOPについては512から64の間の範囲でおよび250kHzから1MHzの間の範囲の動作周波数fOPについては128から16の間の範囲で選択される。
【0039】
例えば、25kHzから28kHzの周波数帯域については256の整数n、29kHzから250kHzの周波数帯域については128の整数n、251kHzから500kHzの周波数帯域については64の整数nおよび501kHzから850kHzの周波数帯域については32の整数nが、有利に適用できる。
【0040】
図2aでは、極性「1」を有する32のセグメントs1および極性「0」を有する32のセグメントs0で満たされた64ビットのビット長を持つ2つのシフトレジスタ32Aおよび32Bが、作られた。両方のシフトレジスタ32A、32Bでは、極性「1」を持つセグメントs1は、アドレスA1からA32に位置し、極性「0」を持つセグメントs0は、アドレスA33からA64に位置する。その結果、生成される、すなわちシフトレジスタ32A、32Bから出ている波形は、同相である。合成電圧UCAおよびUCBは、同相であり、送信機コイル101を通る駆動電流Iは、ゼロのままである。
【0041】
図2bでは、第1のシフトレジスタ32A中のセグメントs1、s0は、6セグメントs1、s0だけ右にシフトされ、第2のシフトレジスタ32B中のセグメントs1、s0は、6セグメントs1、s0だけ左にシフトされた。第1のシフトレジスタ32AのアドレスA1〜A6およびA39〜A64では、極性「0」を持つセグメントs0が、提供され、一方アドレスA7〜A38では、極性「1」を持つセグメントs1が、提供される。第2のシフトレジスタ32BのアドレスA1〜A26およびA59〜A64では、極性「1」を持つセグメントs1が、提供され、一方アドレスA27〜A58では、極性「0」を持つセグメントs0が、提供される。図2bでさらに示されるように、互いに対して反対方向にシフトされる、結果として生じる波形W、Wが、生成され、対応する駆動電流Iを送信機コイル101に流す。
【0042】
この好ましい実施形態では、セグメントs1、s0は、シフトレジスタ32A、32B中で循環される。それ故に、シフトレジスタ32A、32Bの出力から出るセグメントs1、s0は、シフトレジスタ32A、32Bの入力に連続して転送され、このようにして循環される。
【0043】
所望の駆動電流Iを所要の刻みの分解能で調節するために、シフトレジスタ32A、32Bは、選択される整数nに対応するビット長で設定され、要求に応じてまたは図2bで例として示されるように互いに対してシフトされるセグメントs1、s0で満たされる。
【0044】
このタスクは、選択される整数nおよび所望の駆動電流Iに従ってシフトレジスタ32A、32Bを設定しかつ変更する管理のために提供される管理モジュール312によって行われる。
【0045】
減少したビット長を持つシフトレジスタ32A、32Bを使用するために、波形W、Wの半サイクルだけを表す数n/2のセグメントs1、s0は、出力で放出される各セグメントs1、s0が、シフトレジスタ32A、32Bの入力に印加される前に反転されるまたは反対極性のセグメントs0、s1に変換されるように、シフトレジスタ32A、32Bで提供され、循環される。このようにして、完全な波形は、しかしながら長さが半分だけであるレジスタ32A、32Bで循環される。
【0046】
図3で示されるように、シフトレジスタ32A、32Bの出力から出るセグメントs1、s0は、それらがシフトレジスタ32A、32Bの入力に印加される前にインバータ33A、33Bの入力に印加される。シフトレジスタ32A、32Bの出力から出るセグメントs1、s0はまた、増幅器モジュール4の入力にも転送され、それは、各駆動スイッチ61A、62A、61B、62Bのための個々の制御信号の波形WA1、WA2、WB1、WB2を生成するために、受信セグメントを増幅するまたは反転して増幅する。
【0047】
送信機コイル101のどちらかの側の駆動スイッチ61A、62Aまたは61B、62Bが同時にオンになり、駆動電圧V0およびV1を短絡させるのを防止するために、好ましくは周波数発生器1によって提供されるクロック周波数に基づく遅延が、提供され、それを使って駆動スイッチ61A、62Aまたは61B、62Bが入るのが、遅延される。この遅延は好ましくは、駆動スイッチ61A、62A、61B、62Bの特性、すなわちターンオフ遅延および入力が除去されるときの降下時間に対応する。それ故に、遅延を使うと、駆動スイッチ61A;62A;61B;62Bは、隣接駆動スイッチ61A;62A;61B;62Bがオンにされる前に完全に切られることが保証される。
【0048】
例えば、駆動スイッチ61A;62A;61B;62Bを入れるのは、クロック周波数の5クロックパルスだけ遅延される。850kHzの動作周波数および32ビットのシフトレジスタ長では、クロック周波数は、27.2MHzであることになる。この周波数での1クロック周期の長さの36.8nsを使うと、結果として生じる5クロック周期の遅延は、そのとき184nsであることになる。
【0049】
25kHzの動作周波数および256ビットのシフトレジスタ長の場合には、5クロック周期から結果として生じる遅延時間は、781nsであることになり、それは、長すぎることになる。典型的な電力MOSFETスイッチについて約180nsの適切な遅延に近い遅延を維持するために、クロック周波数の倍数が、周波数発生器1によって提供されてより短いクロック周期を提供してもよく、そのクロック周期を使って遅延が、選択されてもよい。
【0050】
所望の遅延は、ハードウェア回路またはソフトウェアで実施されてもよい。
図3は、2つの遅延モジュール34Aおよび34Bを備える発生器モジュール3を示し、その遅延モジュールは、クロック周波数fRCのクロック周期の選択可能な数だけ制御信号WA1、WA2、WB1、WB2の立ち上がりエッジを遅延させる。遅延回路34Aおよび34Bは好ましくは、カウンタを含み、それは、クロックサイクルを数え、所定数のクロックサイクルが数えられた後に出力信号を提供する。遅延モジュール34Aおよび34Bは、ハードウェアモジュールまたはソフトウェアモジュールとすることができる。
【0051】
図4は、あらゆる駆動スイッチ61A、62A;61B、62Bに割り当てられるシフトレジスタ32A1;32A2;32B1;32B2を備えるさらに好ましい実施形態での図1の発生器モジュール3を示す。この実施形態では、遅延は、シフトレジスタ32A、32Bを制御している管理モジュール312に提供されるソフトウェアを用いて得られる。黒で図示されるセグメントs0’を除けば、シフトレジスタ32A1、32A2およびシフトレジスタ32B1、32B2中のセグメントs1、s0は、対応するアドレスで反対極性であることが示される。その結果、スイッチの組61A、62Aまたは61B、62Bの駆動スイッチのただ1つだけが、一度に閉じることができる。しかしながら、駆動スイッチ61A、62A、61B、62Bを作動させることになる極性「1」を持つセグメントs1のグループの先頭にある2つのセグメントs0’は、反対極性にリセットされており、それ故にセグメントs1のグループの最初のセグメントの到着とともに対応する駆動スイッチ61A、62A、61B、62Bが作動するのを防止する。それ故に、駆動スイッチ61A、62A、61B、62Bを作動させることは、移行プロセスの間2つの駆動電圧V0、V1間の接続を回避するために、セグメントs0’の選択可能な数だけ遅延できる。
【符号の説明】
【0052】
1 周波数発生器
2 周波数シンセサイザ
3 発生器モジュール
4 共通増幅器モジュール
4A 増幅器モジュール
4B 増幅器モジュール
5A インバータ
5B インバータ
9 制御ユニット
31 制御モジュール
32A シフトレジスタ
32A1 シフトレジスタ
32A2 シフトレジスタ
32B シフトレジスタ
32B1 シフトレジスタ
32B2 シフトレジスタ
33A インバータ
33B インバータ
34A 遅延モジュール
34B 遅延モジュール
61A 駆動スイッチ
61B 駆動スイッチ
62A 駆動スイッチ
62B 駆動スイッチ
91 制御線またはバス
92 制御線またはバス
93 制御線またはバス
94 データバス
100 送信機ユニット
101 送信機コイル
200 受信機ユニット
201 受信機コイル
202 受信機コイル
311 除算器モジュール
312 管理モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機ユニット(200)の入力に接続される受信機コイル(201)に結合される送信機コイル(101)の第1の終端に第1の組の2つの駆動スイッチ(61A、62A)を介しておよび前記送信機コイル(101)の第2の終端に第2の組の2つの駆動スイッチ(61B、62B)を介して2つの異なる駆動電圧(V0、V1)を交互に印加する駆動回路(4)を備える送信機ユニット(100)を含む金属検出装置を動作させるための方法であって、
少なくとも第1の波形Wは、前記第1の組の駆動スイッチ(61A、61B)を制御するために生成され、少なくとも第2の波形Wは、前記第2の組の駆動スイッチ(61B、62B)を制御するために生成され、選択される動作周波数に対応するその第1および第2の波形W、Wは、所望の駆動電流Iが前記送信機コイル(101)を通って流れることを可能にするために、互いに対してシフトされることを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記波形Wおよび/またはWは、整数nで割った動作周波数fOPの波長に対応する長さを有する刻みでシフトされる、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記波形W、WまたはWA1、WA2およびWB1、WB2に対応する極性「0」または「1」のセグメントs1、s0は、所望の波形がシフトレジスタ(32A、32B;32A1、32A2、32B1、32B2)の出力に生成されるように、前記動作周波数fOPに前記整数nを掛けることによって得られるクロック周波数fRCを使って前記シフトレジスタ(32A、32B;32A1、32A2、32B1、32B2)中でシフトされ、好ましくは回転される、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記第1または第2の組の駆動スイッチ(61A、62A;61B、62B)の前記波形WまたはWは、もう一方の波形WまたはWに対してシフトされる、または両方の波形WおよびWは、互いに対して反対方向にシフトされる、方法。
【請求項5】
請求項1または4に記載の方法において、各駆動スイッチ(61A、62A;61B、62B)の制御のために個々の波形WA1、WA2およびWB1、WB2が、生成され、前記第1および前記第2の組の駆動スイッチ(61A、62A;61B、62B)のために提供される前記波形WA1、WA2およびWB1、WB2は、好ましくは互いに対して180°だけ位相シフトされるまたは前記関連する駆動スイッチ(61A;62A;61B;62B)を個々に制御するように適合される、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記セグメントs1、s0の前記極性は、前記波形W、WまたはWA1、WA2およびWB1、WB2の半サイクルにわたって反転され、それ故に前記波形W、WまたはWA1、WA2およびWB1、WB2の半波だけを提供されるより短いシフトレジスタ(32A、32B;32A1、32A2、32B1、32B2)を使用することを可能にする、方法。
【請求項7】
請求項4、5または6に記載の方法において、各スイッチの組(61A、62A;61B、62B)の駆動スイッチが閉じられることを、前記同じスイッチの組(61A、62A;61B、62B)のもう一方の駆動スイッチがなお閉じられている限り阻止するステップが、提供される、方法。
【請求項8】
請求項5から7の一項に記載の方法において、駆動スイッチ(61A;62A;61B;62B)を閉じている前記制御信号もしくは波形W、WまたはWA1、WA2およびWB1、WB2の先頭にあるエッジは、隣接する駆動スイッチ(61A;62A;61B;62B)が切られるまで遅延される、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、駆動スイッチ(61A;62A;61B;62B)を閉じている前記制御信号もしくは波形W、WまたはWA1、WA2およびWB1、WB2の前記先頭にあるエッジは、カウンタ(34A;34B)、好ましくはプログラム可能なカウンタを用いて、選択可能な数のクロックパルスだけ遅延される、または対応する駆動スイッチ(61A;62A;61B;62B)が閉じられる半サイクルの先頭にあるセグメントs1の少なくとも1つは、極性が反転され、それ故にこの駆動スイッチ(61A;62A;61B;62B)の作動を対応する時間の長さにわたって遅延する、方法。
【請求項10】
請求項3から9の一項に記載の方法において、前記整数nは、より低い動作周波数fOPについてはより高いシフト分解能が得られ、より高い動作周波数fOPについてはより低いシフト分解能が得られるように、前記印加される動作周波数fOPに従って選択される、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記整数nは、25kHzから250kHzの範囲の動作周波数fOPについては512から64の間の範囲で選択され、前記整数nは、250kHzから1MHzの範囲の動作周波数fOPについては128から16の間の範囲で選択される、方法。
【請求項12】
周波数源(2)と、受信機ユニット(200)の入力に接続される受信機コイル(201)に結合される送信機コイル(101)の第1の終端に第1の組の2つの駆動スイッチ(61A、62A)を介しておよび前記送信機コイル(101)の第2の終端に第2の組の2つの駆動スイッチ(61B、62B)を介して2つの異なる駆動電圧(V0、V1)を交互に印加するように設計される駆動回路(4)とを備える送信機ユニット(100)を含む、請求項1から11の一項で定義されるような方法に従って動作する金属検出装置であって、
周波数源(2)に接続される発生器モジュール(3)は、前記第1の組の駆動スイッチ(61A、62A)または各駆動スイッチ(61A;62A)を制御するために少なくとも第1の波形Wおよび前記第2の組の駆動スイッチ(61B、62B)または各駆動スイッチ(61B;62B)を制御するために少なくとも第2の波形Wを生成するように設計され、駆動電流Iが前記送信機コイル(101)を通って流れることを可能にするために、選択される動作周波数fOPに対応する前記第1および第2の波形W、Wを互いに対してシフトさせる能力があることを特徴とする、金属検出装置。
【請求項13】
請求項12に記載の金属検出装置において、各生成された波形W、WまたはWA1、WA2およびWB1、WB2について、前記対応する波形W、WまたはWA1、WA2、WB1、WB2の数nまたはn/2のセグメントs1、s0で満たされるシフトレジスタ(32A、32B;32A1、32A2、32B1、32B2)が、提供され、前記セグメントs1、s0は、好ましくは全波または半波を構成し、好ましくは前記周波数源(2)の周波数に対応する前記動作周波数fOPよりもn倍高いクロック周波数fRCを使って前記シフトレジスタ(32A、32B;32A1、32A2、32B1、32B2)中で循環されるまたは反転されて循環される、金属検出装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の金属検出装置において、各スイッチの組(61A、62A;61B、62B)の駆動スイッチが閉じられることを、前記同じスイッチの組(61A、62A;61B、62B)のもう一方の駆動スイッチがなお閉じられている限り阻止する手段が、提供される、金属検出装置。
【請求項15】
請求項14に記載の金属検出装置において、前記シフトレジスタ(32A、32B;32A1、32A2、32B1、32B2)は、極性「1」の数xのセグメントs1および極性「0」の数yのセグメントs0で満たされ、前記数はさらに、対応する駆動スイッチ(61A;62A;61B;62B)が閉じられている半サイクルの先頭にあるセグメントs1の少なくとも1つが極性を反転され、それ故にこの駆動スイッチ(61A;62A;61B;62B)の作動を対応する時間の長さにわたって遅延させるように選択される、金属検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−64736(P2013−64736A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−202958(P2012−202958)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【出願人】(511241516)メトラー−トレド・セーフライン・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】