説明

金属検出装置

【課題】外来電磁ノイズの影響やその変化に対して金属検出の条件設定を自動的に好適な条件に調整可能な金属検出装置を提供する。
【解決手段】磁界発生手段22の設定周波数を被検査体Wの物品影響に対応して定めた周波数範囲内で変化させ、その設定周波数のそれぞれに対応する検出動作周波数について磁界検出部23を用いて検査領域中の電磁ノイズを測定する測定手段40と、測定手段40で測定された電磁ノイズレベルが所定値以下となるいずれかの検出動作周波数を選択し磁界発生手段22の設定周波数として設定する周波数選択設定手段32、35とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体中の金属又は金属成分を検出する金属検出装置、特に食品等の被検査体が交番磁界中を通過するときの磁界の変動を基に被検査体中における金属又は金属成分の有無を判定する金属検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の金属検出装置としては、例えばコンベア搬送されるワーク(被検査体)が所定周波数の交番磁界中を通過するように、送信コイルにより製品検査領域に交番磁界を発生させ、その磁界中でのワークの移動に起因する磁界変動を受信コイルへの誘起電圧の変動として検出し、この検出信号に送信コイルの励磁駆動信号と同期する検波処理を施して、その検波出力の出力レベルを閾値判定することで金属等の有無を判定するといったものが一般に知られている。
【0003】
また、金属や金属成分を含んでいない物品が前記交番磁界中を移動することにより前記磁界変動に与える影響(以下、これを物品影響という)を最小にし、検出対象の金属異物等に対する検出感度を高めるべく、前記検波処理の位相角や交番磁界周波数の設定を工夫したものがある(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
さらに、受信コイルの検出信号を直交検波した2つの検波出力の出力レベルを直交座標成分として各被検査体が前記交番磁界中を通過する間に直交座標平面に描かれるリサージュ図形を作成し、この図形データを基に各製品中の磁性成分と非磁性成分の割合を把握して製品中の金属異物の有無を判定するとともに、前記割合を表わす指標であるワーク位相(前記リサージュ図形の長軸の傾きで表わされる)の変化に応じて、送信コイルに印加する励磁信号と直交検波用の各同期検波器に印加する励磁信号との相対位相を調整することで、検出精度の向上を図ったものがある(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平5−232248号公報
【特許文献2】特開平5−100047号公報
【特許文献3】特開2002−168834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように交番磁界の変動を検出する金属検出装置では、金属を検出するのに最適な磁界の周波数が、被検査体の特性(水分や塩分あるいは包材の種類等)によって異なるという点を考慮して、磁界周波数範囲である数kHz〜数MHz程度の周波数帯域から被検査体に適当な周波数帯域を1つあるいは2つ選択して出力するのがよい。
【0006】
また、同じ周波数帯域を使用した複数の金属検出装置が近接配置される際に、相互の干渉を抑えるべく、それら複数の金属検出装置の使用磁界周波数を少しずつ異ならせるような微調整を行なうのがよい。
【0007】
しかしながら、このようにして最適な磁界周波数を設定しても、なお、次のような未解決の課題が残る。
【0008】
すなわち、金属検出装置では、例えば磁界周波数等の検出条件を決定するために使用する、金属混入の無い代表的被検査体(以下、これをサンプル品という)の物品影響による検出信号レベルN(noise)を予め記憶しておき、各被検査体の検出信号レベルS(signal)とこの記憶した検出信号レベルNとのレベル比S/Nが予め定めた閾値(例えば5)以上のとき、その被検査体を金属混入品と判定する。そのため、より小さな金属が混入していて検出信号レベルSが小さい場合、被検査体を正しく金属混入品と判定するためには、サンプル品の物品影響による検出信号レベルNを小さくしなければ、十分なS/Nの比が得られない。
【0009】
一方、被検査体の形状や水分含有率の変化に起因して物品影響が変化するような場合にも、その物品影響の変化に追従して良好な検出感度を維持しながら安定した金属検出を行なうためには、金属が混入していない被検査体(良品)の検出レベルが検出信号のノイズレベル以上であるのがよい(特許文献3参照)。したがって、サンプル品の物品影響による検出信号レベルが小さくなるような状態で、近接する他の金属検出機若しくは包装機器等による外来電磁ノイズの影響を受け、検出信号レベルを超えるノイズが検出されると、前記物品影響の変化を検知できないために金属検出性能が低下するばかりか、金属が混入していない被検査体を金属混入品と誤判定したり、逆に本来であれば検出可能な金属混入品を良品と誤判定したりすることがあり、金属検出装置の信頼性が大きく低下せざるを得ない。
【0010】
さらに、金属検出機の使用条件の変更や使用環境の変化、さらには、経時・経年変化等によっても、外来電磁ノイズの影響は変化する可能性が高い。このような理由から、外来電磁ノイズによる金属検出装置の性能低下が生じ易いという問題が解決できていなかった。
【0011】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決するためになされたもので、外来電磁ノイズの影響やその変化に対して金属検出の条件設定を自動的に好適な条件に調整可能な金属検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的達成のため、被検査体の物品影響に対応して予め定められた周波数範囲に含まれる設定周波数の交番磁界を被検査体の検査領域に発生させる磁界発生手段と、前記被検査体が前記交番磁界中を通過することに起因する前記交番磁界の変動を前記設定周波数に対応する検出動作周波数で検出する磁界検出手段と、該磁界検出手段の検出信号に基づいて前記被検査体中における金属物又は金属成分の有無を判定する判定手段とを備えた金属検出装置において、前記磁界発生手段の前記設定周波数を前記周波数範囲内で変化させ、該設定周波数のそれぞれに対応する複数の異なる前記検出動作周波数について前記磁界検出手段を用いて前記検査領域中の電磁ノイズを測定する測定手段と、前記複数の異なる検出動作周波数のうち前記測定手段で測定された電磁ノイズレベルが所定値以下となるいずれかの周波数を選択し前記磁界発生手段の前記設定周波数として設定する周波数選択設定手段とを設けたものである。
【0013】
この構成により、外来電磁ノイズの影響が複数の異なる検出動作周波数について測定され、外来電磁ノイズの影響が小さくなる周波数を選択して磁界発生手段の発生磁界周波数が設定されるとともに、それに対応する検出動作周波数が設定されることになる。
【0014】
また、本発明の金属検出装置においては、前記測定手段が、前記磁界検出手段を用いて前記検査領域中の電磁ノイズを測定することで、既存の装備を利用して、前記測定手段をきわめて容易かつ低コストで実現できることになる。
【0015】
さらに、前記周波数選択設定手段が、前記複数の異なる検出動作周波数のうち前記測定手段で測定された電磁ノイズレベルが最低値となる周波数を選択し、前記設定周波数として設定するか、あるいは、前記周波数選択設定手段が、前記複数の異なる検出動作周波数のうち前記測定手段で測定された電磁ノイズレベルが予め定めた許容ノイズレベル以下となる周波数を選択し前記設定周波数として設定するのが好ましい。
【0016】
この構成により、外来電磁ノイズの影響による金属検出性能の低下を確実に抑えることが可能となる。
【0017】
本発明の金属検出装置においては、前記磁界制御手段、前記測定手段および前記周波数選択設定手段が、装置の起動時若しくは動作リセット時に作動するようにするのが好ましい。これにより、初期化処理の一部と並行して外来電磁ノイズの影響測定および好適な発生磁界周波数およびこれに対応する検出動作周波数の選択設定が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外来電磁ノイズの影響を複数の異なる検出動作周波数について測定して、外来電磁ノイズの影響が十分小さくなる周波数を選択し前記設定周波数として設定するようにしているので、使用環境の変化等に関わりなく、外来電磁ノイズの影響を少なくするよう金属検出の条件設定を自動的に好適条件に調整可能な金属検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いながら説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
図1〜図5は本発明の第1の実施の形態に係る金属検出装置の概略構成を示す図である。
【0021】
まず、その構成について説明する。
【0022】
図1において、被検査体であるワークWは、ワーク移動手段であるコンベア11によって所定方向に搬送され、その搬送速度はワークWの製造ラインの搬送速度に応じて設定されている。ワークWの搬送方向の所定区間は、ワークW中への金属異物(金属からなる異物又は金属成分を含んだ異物、欠品検出の場合は異物でなく構成要素となる)の検出を行なう検査領域12となっており、この検査領域12の入り口付近にはワークWの検査領域12への進入を検知する例えば光学式のワーク検知センサ13が設置されている。なお、ワークWは、複数製造される任意の製品、例えば量産される食品を包装材で個々に、あるいは所定数の輸送時の個数単位で包装したものであり、箱入り製品のような定形のものでも、流動物等を封入した可撓性の袋入り製品のような不定形のものでよい。
【0023】
ワークWの検査領域12の近傍にはワークW中の金属異物を検出する検出部20が設けられている。
【0024】
この検出部20は、予め設定された振幅および周波数の送信信号を発生する信号発生部21と、信号発生部21からの信号により送信コイルを電流駆動する磁界発生部22(磁界発生手段)と、差動検出器等で構成される磁界検出部23とを含んで構成されている。
【0025】
詳細は図示しないが、信号発生部21は、ワーク検知センサ13に応動する基準信号発生器、測定期間を特定するためのタイマー、電力増幅器、同調回路等を有しており、ワークWが検査領域12を通過するとき、設定周波数の送信信号を発生して磁界発生部22の送信コイルを電流駆動する。また、磁界発生部22の送信コイルは、コンベア11によるワーク搬送路の近傍に配置され、信号発生部21からの電流駆動により励磁されたとき、前記送信信号の設定周波数に対応する交番磁界を検査領域12中に発生させることができる。
【0026】
磁界検出部23は、信号発生部21および磁界発生部22と協働して複数のワークW(被検査体)について、そのワークW中の金属異物を検出するようになっており、差動接続された一対の受信コイル、同調回路および増幅器等からなる。この磁界検出部23は、磁界発生部22からの交番磁界のみに対しては一対の受信コイルの誘起電圧が等しく平衡し、両者の差動出力がゼロになるように調整されている。
【0027】
磁界中を通過する磁性金属には磁束密度の大きさに比例してより多くの磁束が引き寄せられ、磁界中を通過する非磁性金属にはその移動による磁束密度の変化を打ち消すような向きでうず電流が生じ、ジュール熱が消費されるという性質がある。したがって、コンベア11上のワークWが検査領域12を通過するとき、磁界検出部23の受信コイル間の出力の平衡状態がくずれる。
【0028】
磁界検出部23は、このようにコンベア11上のワークWの移動により両受信コイル間の出力平衡状態がくずれたとき、その磁界の変化に応じた検出信号を出力する。この検出信号は、磁界発生部22側からの交番磁界に対応して前記送信信号の設定周波数を有する交流信号成分に、ワークWの磁界通過により変化する低周波信号成分が重畳した信号形態となる。
【0029】
磁界検出部23の検出信号は信号レベル測定部24に取り込まれるようになっており、この信号レベル測定部24は、詳細は図示しないが、直交検波を行なう一対の同期検波器、移相器、バンドパスフィルタ、増幅器およびA/D変換器等によって構成されている。
【0030】
信号レベル測定部24の一対の同期検波器は、直交検波のために前記基準信号を位相調整した信号を取り込み、検出信号から送信信号相当の高周波成分を取り除いた検波出力を生成する。信号レベル測定部24は、この検波出力に更にフィルタによるノイズ除去およびA/D変換を施した信号を金属有無判定部26と検出条件制御回路30とにそれぞれ出力する。
【0031】
なお、前記直交検波の出力は、例えば、磁束密度変化が大きいほど外部磁界変化を引き起こす非磁性金属の影響が大きい検出信号と、磁束密度が大きいほど外部磁界変化を引き起こす磁性金属の影響の大きい検出信号となる。また、信号レベル測定部24から出力される低周波成分の検出信号は、差動検出信号の所定位相位置の瞬時値を結ぶ包絡線の波形、および前記所定位相位置から送信信号周期の1/4周期分、つまり90度だけ位相がずれた瞬時値を結ぶ包絡線の波形を形成するものとなる。
【0032】
一方、検出条件制御回路30は、検出部20の検出信号および図示しない操作器からのユーザーの操作入力に基づいて所定の制御プログラムに従った演算処理を実行し、その処理結果を信号発生部21および磁界検出部23にそれぞれ出力するようになっている。
【0033】
検出条件制御回路30は、例えばCPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェースを含むマイクロコンピュータで構成されたもので、ROM内に格納された制御プログラムをRAMとの間でデータの授受を行ないながらCPUにより実行し、I/Oインターフェースを介して取り込んだ信号レベル測定部24からの信号等に基づいて、後述する処理を実行するようになっており、機能的には、図1に示す振幅設定手段31、検出周波数設定手段32、磁界検出部制御手段33、記憶手段34および検出周波数選択手段35を実現するものである。
【0034】
信号発生部21の発生信号の振幅は振幅設定手段31により設定され、信号発生部21の送信信号の設定周波数は検出周波数設定手段32により設定される。
【0035】
ここで、振幅設定手段31は、信号発生部21と共に、磁界発生部22の発生磁界の強度レベルを通常検出動作の磁界強度レベルである第1の強度レベルと、その第1の強度レベルより低い第2の強度レベルとのうち任意の一方の磁界強度レベルに切り替える磁界制御手段として機能し得る。また、検出周波数設定手段32は、通常検出時の磁界発生部22の発生磁界周波数を規定すべく信号発生部21の設定周波数(発生信号周波数)を設定する機能と、磁界検出部制御手段33を介して磁界検出部23の検出動作周波数を設定する周波数選択設定手段の機能とを有している。
【0036】
前記第1の強度レベルとは、通常の金属検出動作を行なう際に磁界発生部22で発生される範囲の磁界強度レベルであり、前記第2の強度レベルは、例えばその第1の強度レベルの1/5以下の磁界強度レベル(近接して配置されている金属検出機に対して影響を及ぼさない磁界強度レベルに相当する)である。第2の強度レベルは、好ましくは、例えば信号発生部21から磁界発生部22への送信信号出力を停止し、磁界発生部22による磁界の発生を停止した状態、すなわち発生磁界強度が通常の残留値レベル程度で実質的にゼロ(A/m)と言えるレベルである。
【0037】
磁界検出部制御手段33は、磁界検出部23の検波器に検波クロック信号を供給するとともに検出周波数設定手段32からの設定周波数情報に基づいて、その検波クロック信号の周波数および位相(信号発生部21の基準信号に対する位相差)を調整する機能を有しており、磁界発生部22の作動の有無(磁界発生の有無)に関係なく、磁界検出部23の検出動作周波数を規定することができる。
【0038】
記憶手段34はRAM又は他の書き換え可能なメモリデバイスで構成されており、通常動作時の検出動作周波数をはじめとして、金属検出に関する各種設定情報や信号レベル測定部24での測定結果のデータを一時的に格納することができる。
【0039】
検出周波数選択手段35は、検出周波数設定手段32、磁界検出部制御手段33および信号レベル測定部24と共に測定手段40を構成しており、この測定手段40は、磁界発生部22の発生磁界が前記第2の強度レベルとなっている状態で、磁界検出部23の複数の異なる検出動作周波数で、検査領域12中の電磁ノイズを測定するようになっている(詳細は後述する)。
【0040】
また、検出周波数選択手段35は、検出周波数設定手段32および磁界検出部制御手段33と協働して、前記複数の異なる検出動作周波数のうち測定手段40で測定された電磁ノイズレベルが所定値以下となるいずれかの周波数を選択し、磁界発生部22の設定周波数およびそれに対応する磁界検出部23の検出動作周波数(検波周波数)を設定する周波数選択設定手段となっている。
【0041】
ところで、金属有無判定部26は、検査領域12に搬送された各ワークWの検出信号振幅レベルを予め定めた閾値レベルと比較し、ワークW中に金属異物が含まれているか否か、すなわち製品としての合否を公知の判定方法で判定して、その判定結果を表示部27に出力する判定手段となっている。この金属有無判定部26は、併せて、コンベア11の検査領域12より下流側に設けられた選別部28に対し、不良品を良品と分けるための選別指令信号を出力するようになっている。
【0042】
次に、動作について説明する。
【0043】
金属検出装置の起動時には、電源投入により、制御系の初期化と設定データの読込等が実行され、例えば磁界発生部22で発生する送信信号の振幅や設定周波数が決定され、これに応じた交番磁界が磁界発生部22から発生されることになるが、この起動に際して、本実施形態では、次に述べるような動作周波数設定処理が実行される。
【0044】
図2は、その動作周波数設定処理の概略の手順を示すフローチャートである。
【0045】
同図において、まず、最初に金属検出機の動作状態が、起動ボタンが押された直後の初期設定中であるか又はリセットボタンが操作された後の再設定中であるかがチェックされ(ステップS1)、そのいずれかの場合であれば(ステップS1でYESの場合)、次いで、今回の動作周波数設定処理の後で検査されるワークW(被検査物)の種別情報がユーザーによる設定入力又は既設定データから把握されて取得され(ステップS2)、そのワークWに関連する各種設定パラメータ等が記憶手段34その他のメモリデバイスから読み込まれる(ステップS3)。次いで、磁界発生部22の磁界発生強度が第2の強度レベル(通常動作レベルの1/5以下、例えば実質的に出力ゼロのレベル)に設定される(ステップS4)。これにより、検査領域12中への磁界発生部22からの磁界の影響が十分に弱く、検査領域12中への外来の電磁ノイズの影響測定が可能な状態となる。
【0046】
次いで、ワークWの種別情報に基づいて、ワークW中の金属検出に適した磁界周波数の範囲、すなわち周波数帯域が設定されるとともに、その範囲中で動作周波数設定処理のための一時的な検出動作周波数である複数の検査周波数、例えばf1〜fn(nは1以上の整数)が設定される(ステップS5)。
【0047】
具体的には、ワークWの特性(水分や塩分あるいは包材の種類等)に応じて、そのワークW中の金属検出に適した周波数帯域が、数kHz〜数MHzの範囲で、1つあるいは複数選択される。そして、その検査周波数帯域で特定される測定範囲において、例えば使用して好ましい周波数順に検査周波数が選択されて、その検査周波数で検査領域12中への外来電磁ノイズのノイズレベルが測定され(ステップS6)、測定結果が記憶手段34に一時的に記憶される(ステップS7)。
【0048】
ここでの検査周波数の設定間隔は、検出部20における周波数安定度(例えばディジタル直接合成シンセサイザの確度や温度特性など)を基に決定され、検査周波数の設定範囲は、同調回路のQ(周波数選択性の良さを表わす同調特性値)に基づいて決定される。具体的には、全周波数帯を数kHz〜数MHzの範囲のうち複数の周波数帯とし、例えば1MHz帯に対応する同調回路のQの値が100であれば、1MHz帯における最適周波数サーチの帯域幅(=f/Q)は10kHzといった形で設定されており、複数の周波数帯の全部又はワークWに好適な特定の周波数帯が検査周波数として選択される。
【0049】
次いで、今回の測定結果が許容ノイズレベル判定のための閾値である所定値の電磁ノイズレベル以下となっているか否かが判別され(ステップS8)、所定値以下の磁界ノイズレベルであれば(ステップS8でYESの場合)、今回の検査周波数をそのまま選択して、これを以後の動作中における前記設定周波数およびこれに対応する前記検出動作周波数(図中では、両周波数を総称して動作周波数という)の設定値とする(ステップS11)。
【0050】
今回の測定結果が所定値以下の磁界ノイズレベルでなければ(ステップS8でNOの場合)、次いで、今回の検査周波数が予め定められた測定順の周波数のうち最後の周波数、例えば周波数fnであったか否かがチェックされ(ステップS9)、最後の周波数でなければ(ステップS9でNOの場合)、ステップS5に戻って次の検査周波数の設定を行ない、その検査周波数で再度、検査領域12中への外来電磁ノイズのノイズレベルが測定され(ステップS6)、その測定結果が記憶手段34に一時的に記憶される(ステップS7)。
【0051】
このような処理が、検査周波数が予め定められた測定順の周波数のうち最後の周波数になるか、測定結果が所定値の電磁ノイズレベル以下となるまで、所定回数内で繰り返し実行され、所定回数内に測定結果が所定値の電磁ノイズレベル以下とならなければ(ステップS9でYESの場合)、電磁ノイズ異常であることを表示、プリント又は音声その他の出力形式で報知し(ステップS10)、次いで、前回の動作周波数設定処理で設定された設定周波数および検出動作周波数、若しくは測定結果のうち電磁ノイズレベルが最も低い検査周波数を、磁界発生部22の設定周波数およびこれに対応する磁界検出部23の検出動作周波数の設定値とする(ステップS11)。
【0052】
このような動作周波数の設定が済むと、次いで、磁界発生部22の発生磁界強度が通常の検出動作時の出力レベルである第1のレベルに設定され(ステップS12)、ワークWについての金属検出が可能な状態となる。なお、電磁ノイズ異常の場合に、ユーザが何らかの操作入力を行なうまで、待機状態とすることもできる。
【0053】
上述の設定が完了すると、外来ノイズの影響を抑えた検出条件下で、通常の金属検出が行なわれる。
【0054】
本実施の形態においては、ワークWに対する使用磁界の好ましい周波数帯域内で、前記設定周波数および検出動作周波数が測定結果を基に微調整されたものとなっているから、例えば同じ周波数帯域を使用した複数の金属検出装置が近接配置されるような場合でも、相互の干渉を抑えるべく、それら複数の金属検出装置の使用磁界周波数を少しずつ異ならせるような微調整が自動的に可能となる。
【0055】
さらに、次のような点で、外来電磁ノイズによる金属検出装置の性能低下を防止することができる。
【0056】
図3は、本実施形態の磁界検出部23における検出信号の出力例を示す図であり、同図中の(a)は磁界検出部回路の電気ノイズ、(b)はワークWによる磁界変動検出時の出力、(c)はワークWに金属が混入しているときの磁界変動検出時の出力、(d−1)は電磁ノイズの影響、例えば他の金属検出装置等と多少干渉しているときの出力、(d−2)は近接はしていないが他の金属検出装置からの電磁ノイズが干渉しているときの出力、(d−3)は近接する他の金属検出装置からの電磁ノイズが強く干渉しているときの出力をそれぞれ示しており、更にそれぞれの信号を直交検波した出力から得られるリサージュ波形を下方側に対応付けて図示している。
【0057】
本実施の形態においては、同図(d−1)に示すような電磁ノイズの影響をも考慮して、検出動作周波数が選択設定されるから、そのような影響をも除去して、同図(b)、(c)に示すようなワークWによる磁界変動検出時の出力を良好なS/N比で検出することができる。同図(d−2)、(d−3)に示すような場合であって、検出動作周波数の選択だけではノイズの影響を抑えられないようなときには、ノイズ異常を報知することができる。
【0058】
なお、図5(a)〜(c)、図5(d−1)〜(d−3)に示す各リサージュ波形は、ハッチングを付けた円形が電磁ノイズの影響によるもの、楕円形が被検査体による磁界変動によるものであり、図5(a)〜(c)は理想的な状態を示しているということができる。同図(b)と(d−1)に示す状態では、金属異物の検出信号についてのS/N比は同等であるが、同図(b)に示す状態では、ノイズレベルが被検査体の物品影響より小さく、物品の位相特性が精度良く安定的に算出可能であるのに対して、同図(d−1)に示す状態では、物品の位相特性がノイズの影響で精度良く算出できず、金属検出の安定性に欠けることとなる。同図(d−2)に示す状態では、ノイズの影響が大きくなり、金属検出性能が低下している。同図(d−3)に示す状態では、ノイズの影響が非常に大きくなり、金属検出信号がノイズ影響下(円形中)に埋もれてしまって金属検出ができない。
【0059】
図4は検出動作周波数を微調整したときの、それぞれの検出動作周波数についての磁界検出部23の検出信号出力例を示しており、図中の(i)〜(v)の横に記載された周波数の値が検査周波数として使用した周波数、その下の波形が測定されたノイズ検出信号の出力波形である。同図からノイズレベルが最も低いのは(ii)の999.8kHzのときであり、従来なら図中の(i)、(ii)、(iv)、(v)のような場合は識別できず、ある程度の外来電磁ノイズの影響を容認せざるを得なかったが、本実施形態では、測定結果に基づく検出動作周波数の選択とそれに対応する設定周波数の設定により、好適な検出条件の自動的な選択設定が可能となる。
【0060】
このように、本実施形態の金属検出装置では、外来電磁ノイズの影響を複数の異なる検出動作周波数について測定し、外来電磁ノイズの影響が小さくなる周波数を選択して信号発生部21および磁界発生部22の設定周波数とするので、使用環境の変化等による外来電磁ノイズの変化に関わりなく、外来電磁ノイズの影響を抑えるよう検出条件の設定を自動的に好適条件に調整することができる。
【0061】
また、専用の磁界検出手段を設けることも可能であるが、本実施形態では、そのような構成でなく、通常の金属検出に用いる磁界検出部23および信号レベル測定部24等を利用して検査領域12中の電磁ノイズを測定するようにしているので、外来電磁ノイズの測定手段を低コストでかつ簡素な構成で容易に付加できることになる。
【0062】
しかも、本実施形態の金属検出装置では、検出周波数選択手段35が、複数の異なる検査周波数を、ワークWの品種毎に定めた周波数範囲内で決定することから、ワークWの品種に好適な動作周波数の帯域を予め特定しておき、その周波数帯域で外来電磁ノイズの測定を行なうことで、起動時等における動作周波数設定処理を迅速に行なうことが可能になる。
【0063】
さらに、検出周波数選択手段35が、複数の異なる検査周波数(検出動作周波数)のうち磁界検出部23および信号レベル測定部24で測定された電磁ノイズレベルが前記所定値、すなわち予め定めた許容ノイズレベル以下となる周波数を選択し、この周波数を発生磁界の設定周波数として設定するので、外来電磁ノイズの影響による金属検出性能の低下を確実に抑えることが可能となる。
【0064】
また、上述のような設定条件の変更処理が、金属検出装置の起動時若しくは金属検出装置の動作のリセット時に行なわれるので、初期化処理の一部と並行して外来電磁ノイズの影響測定および好適な動作周波数を選択設定することができる。
【0065】
さらに、第2の強度レベルを第1の強度レベルの1/5以下の適当なレベルに設定することで、例えば近接して配置されている金属検出機が同一周波数帯で動作していても、互いに干渉し影響を及ぼし合ったりすることなく、最適な検出動作周波数を選択・設定することができる。第2の強度レベルを実質的にゼロとすれば、金属検出装置が隣接して配置されたときでも、影響を及ぼし合うことを防止することができる。
【0066】
[第2の実施の形態]
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る金属検出装置の動作周波数設定処理の概略手順を示すフローチャートである。なお、本実施形態の金属検出装置の構成は上述の実施の形態とほぼ同様であるので、上述と同様な構成要素および処理については上述と同一の符号を用いて説明する。
【0067】
図5において、まず、最初に金属検出機の動作状態が、起動ボタンが押された直後の初期設定中であるか又はリセットボタンが操作された後の再設定中であるかがチェックされ(ステップS1)、そのいずれかの場合であれば(ステップS1でYESの場合)、次いで、今回の動作周波数設定処理の後で検査されるワークW(被検査物)の種別情報がユーザーによる設定入力又は既設定データ(予定情報を含む)から把握されて取得され(ステップS2)、そのワークWに関連する各種設定パラメータ等が記憶手段34その他のメモリデバイスから読み込まれる(ステップS3)。次いで、磁界発生部22の磁界発生強度が第2の強度レベル(通常動作レベルの1/5以下、例えば出力ゼロのレベル)に設定される(ステップS4)。これにより、検査領域12中への磁界発生部22からの磁界の影響が十分に弱く、検査領域12中への外来電磁ノイズの影響測定が可能な状態となる。
【0068】
次いで、ワークW(被検査物)の種別情報に基づいて、ワークW中の金属検出に適した磁界周波数の範囲が設定されるとともに、その範囲中で複数の検査周波数、例えばf1〜fn(nは1以上の整数)が設定される(ステップS5)。そして、その検査周波数のうち予め定められた測定順の周波数を用いて、例えば周波数の高い順に検査周波数が選択されて、その検査周波数で検査領域12中への外来電磁ノイズのノイズレベルが測定され(ステップS6)、測定結果が記憶手段34に一時的に記憶される(ステップS7)。
【0069】
次いで、今回の検査周波数が予め定められた測定順の周波数のうち最後の周波数、例えば周波数fnであったか否かがチェックされ(ステップS9)、最後の周波数でなければ(ステップS9でNOの場合)、ステップS5に戻って次の検査周波数の設定を行ない、その検査周波数で再度、検査領域12中への外来電磁ノイズのノイズレベルが測定され(ステップS6)、その測定結果が記憶手段34に一時的に記憶される(ステップS7)。
【0070】
このような処理が、検査周波数が予め定められた測定順の周波数のうち最後の周波数になるまで所定回数繰り返し実行され、最後の周波数になると(ステップS9でYESの場合)測定結果のうち電磁ノイズレベルが最も低くなる検査周波数を選択して、その周波数を以後の動作周波数、すなわち発生磁界の設定周波数および検出動作周波数の設定値とする(ステップS21)。
【0071】
具体的には、例えば1MHz帯が1つ好ましい検査周波数の周波数帯として選択され、信号レベル測定部24が16bitのA/D変換器を用いて検出レベル値を出力する場合に、検査周波数1000.4kHzで検出レベルが632、検査周波数1000.2kHzで検出レベルが532、検査周波数1000.0kHzで検出レベルが658、検査周波数999.8kHzで検出レベルが587、検査周波数999.6kHzで検出レベルが655といった測定結果が得られたとすると、最適な周波数はノイズ検出レベルが最低となった1000.2kHzであり、これが以後の動作周波数の設定値となる。
【0072】
動作周波数の設定が済むと、次いで、磁界発生部22の発生磁界強度が通常の検出動作時の出力レベルである第1の強度レベルに設定され(ステップS12)、ワークWについての金属検出が可能な状態となる。
【0073】
このように、本実施形態の金属検出装置も、外来電磁ノイズの影響を複数の異なる検査周波数(検出動作周波数)について測定し、外来電磁ノイズの影響が小さくなる周波数を選択し発生磁界の設定周波数として金属検出の設定条件を変更するので、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができ、外来電磁ノイズの影響による金属検出性能の低下を確実に抑えることが可能な金属検出機を提供することができる。
【0074】
しかも、本実施形態の金属検出装置では、検出周波数選択手段35が、複数の異なる検査周波数のうち最低ノイズレベルとなる周波数を選択し、設定周波数および検出動作周波数として設定するので、起動時等における動作周波数設定処理をより迅速に行なうことができる。
【0075】
なお、上述した動作周波数設定処理における測定結果を記憶手段34に一時的に記憶した測定結果データを蓄積しておき、外来電磁ノイズの変化を経時的に比較可能な情報としたり、検出動作中における検出動作周波数および発生磁界周波数の切り替え処理のために使用したりすることができるのはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明は、外来電磁ノイズの影響を複数の異なる検査周波数について測定し、外来電磁ノイズの影響が小さくなる周波数を検出動作周波数として選択するので、使用環境の変化等による外来電磁ノイズの変化に関わりなく、外来電磁ノイズの影響を少なくするよう金属検出の条件設定を自動的に好適条件に調整可能な金属検出装置を提供することができるという効果を奏するものであり、交番磁界を用いて被検査体中の金属を検出する金属検出装置、特に搬送されあるいは自重で移動する製品中への金属異物の混入検出等に好適であり、外来電磁ノイズによる影響の少ない検出動作条件を定期的に設定する必要のある金属検出型の検査装置あるいは検査方法およびプログラムにも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る金属検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る金属検出装置の動作周波数設定処理の概略手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る金属検出装置の磁界検出部におけるノイズやワークによる磁界変動時、金属検出機同士の干渉時等の検出信号を例示する検出信号波形図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る金属検出装置の磁界検出部における複数の異なる検出動作周波数とその周波数でのノイズ検出信号を例示する検出信号波形図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る金属検出装置の動作周波数設定処理の概略手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
12 検査領域
13 ワーク検知センサ
20 検出部
21 信号発生部
22 磁界発生部(磁界発生手段)
23 磁界検出部(磁界検出手段)
24 信号レベル測定部
26 金属有無判定部(判定手段)
27 表示部
28 選別部
30 検出条件制御回路
31 振幅設定手段(磁界制御手段)
32 検出周波数設定手段(周波数選択設定手段)
33 磁界検出部制御手段
34 記憶手段
35 検出周波数選択手段(周波数選択設定手段)
40 測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体の物品影響に対応して予め定められた周波数範囲に含まれる設定周波数の交番磁界を被検査体の検査領域(12)に発生させる磁界発生手段(22)と、
前記被検査体が前記交番磁界中を通過することに起因する前記交番磁界の変動を前記設定周波数に対応する検出動作周波数で検出する磁界検出手段(23)と、
該磁界検出手段の検出信号に基づいて前記被検査体中における金属物又は金属成分の有無を判定する判定手段(26)とを備えた金属検出装置において、
前記磁界発生手段の前記設定周波数を前記周波数範囲内で変化させ、該設定周波数のそれぞれに対応する複数の異なる前記検出動作周波数について前記磁界検出手段を用いて前記検査領域中の電磁ノイズを測定する測定手段(40)と、
前記複数の異なる検出動作周波数のうち前記測定手段で測定された電磁ノイズレベルが所定値以下となるいずれかの周波数を選択し前記磁界発生手段の前記設定周波数として設定する周波数選択設定手段(32、35)と、を設けたことを特徴とする金属検出装置。
【請求項2】
前記周波数選択設定手段が、前記複数の異なる検出動作周波数のうち前記測定手段で測定された電磁ノイズレベルが最低値となる周波数を選択し前記磁界発生手段の前記設定周波数として設定することを特徴とする請求項1に記載の金属検出装置。
【請求項3】
前記周波数選択設定手段が、前記複数の異なる検出動作周波数のうち前記測定手段で測定された電磁ノイズレベルが予め定めた許容ノイズレベル以下となる周波数を選択し前記磁界発生手段の前記設定周波数として設定することを特徴とする請求項1に記載の金属検出装置。
【請求項4】
前記磁界制御手段、前記測定手段および前記周波数選択設定手段が、装置の起動時若しくは動作リセット時に作動することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−256718(P2008−256718A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192122(P2008−192122)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【分割の表示】特願2004−250245(P2004−250245)の分割
【原出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】