説明

金属樹脂積層板及び金属樹脂積層板の製造方法

【課題】簡便な工程により機械的強度を高めることができ、且つ接着性等に悪影響を及ぼすことなく静電気の抑制効果を長期に亘って持続できる金属樹脂積層板及び金属樹脂積層板の製造方法を提供する。
【解決手段】基体1の両面に接着層4を介して表面に塗膜層3が形成された金属箔2を貼着し、この基体1及び/又は塗膜層2を構成する合成樹脂や塗料にカーボンナノファイバーを含有させて機械的強度を高め、且つ導電性を備えさせている。カーボンナノファイバーを含有させるのみであるから、接着性等に悪影響を及ぼすことなく、長期に亘って静電気の抑制効果を持続させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の基体の両面に金属箔が貼設された金属樹脂積層板及び金属樹脂積層板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製の基体の両面に金属箔が貼設された金属樹脂積層板は、とりわけ外装用途において広く用いられてきているが、屋外に用いられるものとしては風荷重等に対抗可能とする高い機械的強度が求められる。かかる要求性能に対応して、機械的強度が高められたものとして、例えば表面材と裏面材との間に芯材を介設した複合パネルにおいて、該表面材と該裏面材との間に、糸密度が縦・横それぞれ1〜20本/25mm、引張り強度が2〜40N/mmの無機繊維メッシュを設ける複合パネルが開示されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、金属樹脂複合板においては、表面付近に金属箔が配置されていることで静電気の発生の問題は起こりにくいが、表面層として合成樹脂製の塗膜層が形成されている場合が多く、屋内用途においては接触した際に痺れを感じさせる静電気を抑制したりする性能が要求されており、また金属箔を貼設する前の基体は合成樹脂製の板状体である。かかる静電気の発生の抑制については、塗料や合成樹脂に帯電防止剤を配合する等して対応がなされてきている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−96945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の金属樹脂積層板では、無機繊維メッシュを設ける必要があることから積層板が5層構造となり、製造に係わる工程は極めて煩雑なものとなり、また無機繊維を用いることでリサイクル性にも問題があるものであった。
【0006】
また基体や塗膜層に帯電防止剤を配合するのでは、基体に配合された帯電防止剤は接着層にブリードアウトして基体と金属箔との接着性に悪影響を及ぼす恐れがあり、また塗膜層に帯電防止剤を配合しても、降雨等により容易に溶出されることで長期における静電気の抑制効果が持続されにくいものであった。
【0007】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、簡便な工程により機械的強度を高めることができ、且つ接着性等に悪影響を及ぼすことなく静電気の抑制効果を長期に亘って持続できる金属樹脂積層板及び金属樹脂積層板の製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わる金属樹脂積層板は、合成樹脂製の基体の両面に金属箔が貼設され、該金属箔の上に合成樹脂製の塗膜層が形成された積層板であって、前記基体及び/又は塗膜層にカーボンナノファイバーが含有されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係わる金属樹脂積層板によれば、基体及び/又は塗膜層を形成する際に、合成樹脂や塗料にカーボンナノファイバーを含有させることによって簡便な工程により機械的強度を高めることができ、またカーボンナノファイバーは溶出等することがなく且つ導電性を有するものであるから、接着性等に悪影響を及ぼすことなく、長期に亘って静電気の抑制効果を持続させることができる。
【0010】
また本発明に係わる金属樹脂積層板の製造方法は、合成樹脂製の基体の両面に、表面に塗膜層を形成した金属箔を貼設する金属樹脂積層板の製造方法であって、前記基体の成形時及び/又は前記塗膜層の形成時に、基体を形成する合成樹脂及び/又は塗膜層を形成する塗料にカーボンナノファーバーを配合することを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係わる金属樹脂積層板の製造方法によれば、基体及び/又は塗膜層を形成する際に、基体を形成する合成樹脂及び/又は塗料にカーボンナノファイバーを含有させることによって簡便に機械的強度を高め、且つ静電気の抑制効果を得ることができ、またカーボンナノファイバーは溶出等することがないことから、接着性等に悪影響を及ぼすことなく上述の如き効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係わる金属樹脂積層板によれば、基体及び/又は塗膜層を形成する際に、合成樹脂や塗料にカーボンナノファイバーを含有させることによって簡便な工程により機械的強度を高めることができ、またカーボンナノファイバーは溶出等することがなく且つ導電性を有するものであるから、接着性等に悪影響を及ぼすことなく、長期に亘って静電気の抑制効果を持続させることができる。
【0013】
また本発明に係わる金属樹脂積層板の製造方法によれば、基体及び/又は塗膜層を形成する際に、基体を形成する合成樹脂及び/又は塗料にカーボンナノファイバーを含有させることによって簡便に機械的強度を高め、且つ静電気の抑制効果を得ることができ、またカーボンナノファイバーは溶出等することがないことから、接着性等に悪影響を及ぼすことなく上述の如き効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係わる金属樹脂積層板の、実施の一形態を示す断面図である。金属樹脂積層板10は、基体1の両面に金属箔2が貼設され、基体1と金属箔2とは接着層4により接着されて一体化されている。金属箔2の上には、合成樹脂製の塗膜層3が形成されている。
【0016】
図2は、基体1の、寸法を誇張して表した縦断面図である。基体1中にはポリオレフィン系樹脂である合成樹脂11中に、カーボンナノチューブであるカーボンナノファイバー12が略均一に分散されて含有されていることで、基体1の機械的強度が合成樹脂単体における場合と比較して格段に高められるようになされている。またカーボンナノファイバー12は、基体1の長さ方向αに沿って配向されていることで、とりわけ長さ方向αにおける機械的強度が高められるようになされている。
【0017】
更にカーボンナノファイバー12は導電性を有するものであるから、基体1に発生する静電気が抑制されるようになされ、例えば基体1を成形して金属箔2が貼設される前に倉庫等に保管しておく場合においても、基体1の表面に発生する静電気が抑制され、埃等がつきにくくなって接着前及び接着時の基体1の管理が容易なものとなり得る。また塗膜層3においても、塗膜層3表面に発生する静電気が抑制され、金属樹脂積層板10表面への埃の付着を防止できると共に、接触時に痺れるようなことも未然に防ぐことができるようになり得る。更にまた基体1及び塗膜層3に含有されるカーボンナノファイバーは炭素繊維であり溶出するものではないことから、基体1からブリードアウトして接着性に悪影響を及ぼしたり、塗膜層3から溶出したりすることがなく、長期に亘って静電気の抑制効果を維持することができる。
【0018】
また図3は、塗膜層3の、寸法を誇張して表した縦断面図である。塗膜層3を形成する樹脂マトリックス31中に、カーボンナノチューブであるカーボンナノファイバー32が略均一に分散されて含有されることで、塗膜層3の機械的強度が高められている。塗膜層3は( )μm程度の小さい厚みのものではあるが、金属樹脂積層板10の最外層に配置されていることで機械的強度への寄与は大きいものとなされている。
【0019】
基体1に含有されるカーボンナノファイバー12は、外径が0.4〜80nm程度のものであり、繊維長さは10nm〜3mm程度である。またバインダー1の100重量部に対し、カーボンナノファイバー2は0.01〜20重量部程度配合されている。
【0020】
また塗膜層3に含有されるカーボンナノファイバー32は、同じく外径が0.4〜80nm程度のものであり、繊維長さは10nm〜3mm程度である。またバインダー1の100重量部に対し、カーボンナノファイバー2は0.01〜20重量部程度配合されている。
【0021】
またカーボンナノファイバーは、本実施形態の如く、基体1及び塗膜層3の両方に含有されるものであってもよいが、基体1及び塗膜層3のいずれか一方に含有するようにしてもよい。
【0022】
基体1及び/又は塗膜層3に含有されるカーボンナノファイバーは、カーボンナノチューブに限定されるものではなく、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンマイクロコイル、カーボンフレーク及びフラーレンからなる群から選ばれた少なくとも1つを選択して用いることができる。用いることが可能なカーボンナノチューブとしては、例えばシングルウオールカーボンナノチューブ、マルチウオールカーボンナノチューブ等が挙げられる。カーボンナノコイルとは炭素からなる繊維直径が0.05〜5μm、コイル外径が繊維直径の2〜10倍であり、巻数が10μm当たり5/コイル外径(μm)〜50/コイル外径(μm)であるコイル状繊維のものである。更にフラーレンとしてはC60、C70、C60とC70の混合物などを用いることができるが、C60構造のものは球形に近く方向性に乏しいものであるから、C70構造を有するものを好適に用いることができる。
【0023】
また、かかる金属樹脂積層板を製造するにおいて、まずカーボンナノファイバーを含有する基体は、パウダー状のポリオレフィン系樹脂等の合成樹脂に、粉体であるカーボンナノファイバーをドライブレンドし、ホッパーから押出機に投入して合成樹脂が溶融されることで、合成樹脂中にカーボンナノファイバーがほぼ均一に分散されて容易に成形することができる。ここで、成形時にTダイ等の金型から吐出される際にカーボンナノファイバーが長さ方向に配向させることもできる。
【0024】
次にカーボンナノファイバーを含有する塗膜層は、塗料ビヒクル樹脂を溶媒中に分散させた塗料に粉末状のカーボンナノファイバーを配合し、その塗料を金属箔の上に塗布し、溶媒を揮発させて硬化させることで、樹脂マトリックス中にカーボンナノファーバーが分散された塗膜層を得ることができる。この他にも、二液硬化型の塗料の一方の中にカーボンナノファイバーを分散させ、二液を均一に分散させた後に塗布したり等して形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係わる金属樹脂積層板の、実施の一形態を示す断面図である。
【図2】図1における基体の、寸法を誇張して表した縦断面図である。
【図3】図1における塗膜層の、寸法を誇張して表した縦断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 基体
11 合成樹脂
12 カーボンナノファイバー
2 金属箔
3 塗膜層
31 樹脂マトリックス
32 カーボンナノファイバー
10 金属樹脂積層板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の基体の両面に金属箔が貼設され、該金属箔の上に合成樹脂製の塗膜層が形成された積層板であって、前記基体及び/又は塗膜層にカーボンナノファイバーが含有されていることを特徴とする金属樹脂積層板。
【請求項2】
合成樹脂製の基体の両面に、表面に塗膜層を形成した金属箔を貼設する金属樹脂積層板の製造方法であって、前記基体の成形時及び/又は前記塗膜層の形成時に、基体を形成する合成樹脂及び/又は塗膜層を形成する塗料にカーボンナノファーバーを配合することを特徴とする金属樹脂積層板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−49666(P2008−49666A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230770(P2006−230770)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】