説明

金属樹脂複合体及びその製造方法

【課題】簡易な構成により、目標とする位置に内側部材を配置できる金属樹脂複合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属樹脂複合体1の製造方法は、被覆工程と、設置工程と、加熱工程と、を含む。被覆工程では、棒状で且つ金属製の第1部材2において、その外周面2sの一部が、発泡樹脂3及び非発泡樹脂4によって被覆された状態とする。設置工程では、第1部材2を、金属製で且つ第1部材2が内部に挿入可能となるように筒状に形成された第2部材5の内部に対して挿入設置する。加熱工程では、第1部材2及び第2部材5を、これらの軸方向が水平方向に沿うように配置した状態で、加熱により発泡樹脂3を第1部材2及び第2部材5の間で発泡させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製で且つ筒状又は棒状の内側部材と、金属製で且つ内側部材が内部に挿入可能となるように筒状に形成された外側部材と、内側部材及び外側部材の間の中間層とを有する金属樹脂複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の車体構造材の一例が開示されている。特許文献1の技術においては、一層の樹脂をベースとする材料18を内部チューブ16の表面に塗布し、次に内部チューブ16と外部シェル14を組立てて、チューブ・イン・チューブ構造を形成している(FIG. 1, 2, 6 参照)。このような構成により、著しく質量を増加せずに、ビーム12の剛性が著しく高められる。また、樹脂をベースとする層18には気泡形成剤等が含まれており、且つ、気泡形成剤は、化学発泡剤又は物理発泡剤のいずれかの発泡剤を含んでもよいとされ、層18が熱硬化及び/又は膨張できる樹脂をベースとする材料である場合、層18は熱により硬化及び/又は膨張する。
【0003】
【特許文献1】特表2001−507647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば自動車用のドアビーム等に、筒状又は棒状の金属製部材(以下、第1部材とする)を、鋼製等の筒状部材(以下、第2部材とする)に挿入したものが使用されることがある。ここで、第1部材は補強のために挿入される。
【0005】
ところで、発泡樹脂の加熱中(加熱直後)には、発泡樹脂において、発泡により樹脂全体が膨張するような力が発生する。しかし、加熱が終了した後に、発泡が行なわれず、且つ、樹脂全体がまだ硬化していない時期が発生する。そして、第1部材と第2部材との隙間に樹脂を有する金属樹脂複合体を製造する場合には、通常、第1部材及び第2部材の軸方向が水平方向に沿うように配置して製造することになる。そのため、加熱中においては、内側の第1部材が、樹脂全体の膨張力により、樹脂中を降下することなく樹脂によって保持されるが、上記の加熱後の時期においては、樹脂が軟らかいこと、発泡後の気体が収縮すること等の理由により、第1部材が当初の目標位置よりも降下してしまう。そして、第1部材の位置精度は強度面から重要である。
【0006】
そして、特許文献1の技術のように、(筒状でなく)溝状の部材同士を連結してその間を樹脂で充填する場合には、例えば、各部材に支持用の鍔部等を形成することで、上側の部材を下側部材に対して位置決めできるため、上側部材が樹脂中を降下してしまう問題は生じにくい。しかし、特に、上記のように、筒状又は棒状の第1部材と、筒状の第2部材との間に中間層を有する金属樹脂複合体を、第1部材及び第2部材の軸方向が水平方向に沿うように配置して製造する場合には、第1部材の樹脂中での降下を防止するための部分や部材がなく、樹脂がまだ硬化していない時期に、第1部材がその自重により軟らかい樹脂中を降下してしまう上記の問題が生じやすい。
【0007】
そして、この場合には、第1部材の上方においては、樹脂が充填されていない隙間や、発泡体の密度が低い部分が生じる。このような隙間や低密度部分が存在することで、補強機能を有する樹脂の発泡体に関して設計通りの強度が得られない。
【0008】
また、例えば両端で第1部材を支持するような位置決め装置を別途使用することは、組立時の部品点数が増加してしまうことから望ましくない。さらに、部材の両端が覆われているような場合には、このような位置決め装置を使用することもできない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、簡易な構成により、目標とする位置に内側部材を配置できる金属樹脂複合体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る金属樹脂複合体の製造方法は、筒状又は棒状で且つ金属製の第1部材において、その外周面の少なくとも一部が、発泡樹脂及び非発泡材によって被覆された状態とする、一段階又は複数段階の被覆工程と、前記第1部材を、金属製で且つ前記第1部材が内部に挿入可能となるように筒状に形成された第2部材の内部に対して挿入設置する設置工程と、前記第1部材及び前記第2部材を、これらの軸方向が水平方向に沿うように配置した状態で、加熱により前記発泡樹脂を前記第1部材及び前記第2部材の間で発泡させる加熱工程と、を有する。
【0011】
この構成によると、加熱工程において、前記第2部材と前記第1部材との間が、発泡樹脂の発泡により得られる発泡体及び非発泡材によって充填され、且つ、非発泡材がスペーサーとなるので、加熱後の樹脂がまだ軟らかい状態で、第2部材と第1部材とがその下部において接近することを防止でき、第2部材と第1部材との間の距離を目標距離に保つことができる。そのため、この製造方法によると、簡易な構成により、目標とする位置に内側部材を配置できる。その結果、樹脂の発泡体に関して設計通りの補強効果が得られる。
【0012】
なお、発泡樹脂とは、ベース樹脂となる合成樹脂の中に発泡剤が含まれるものであり、加熱により発泡、硬化する。また、非発泡樹脂とは、ベース樹脂となる合成樹脂の中に発泡剤が含まれないものである。
【0013】
被覆工程は、まとめて一段階で行なってもよく、複数段階に分けて行なってもよい。また、本発明に係る金属樹脂複合体の製造方法には、被覆工程、設置工程、加熱工程は、上記の記載順序に限られず、例えば、次のような順序で組み合わせることができる。
(1)被覆工程→設置工程→加熱工程
(2)設置工程→被覆工程→加熱工程
(3)被覆工程(第一段階)→設置工程→被覆工程(第二段階)→加熱工程
なお、これらの工程の前後及び各工程間に別の工程が設けられていてもよい。
【0014】
また、例えば、ドアビームには、軽量で且つ高い強度を有することが求められる。そして、金属樹脂複合体をドアビームとして使用する場合に、挿入される第1部材が鋼製であると、全体の重量が大きくなってしまう。そのため、第1部材としては、軽量のアルミニウム等を用いることが望ましい。
【0015】
また、「被覆工程」には、第1部材に対して、第1部材とは別部材である非発泡材を被覆することだけではなく、第1部材と非発泡材とを、押し出し成型等により、一体的に形成することも含まれるものとする。
【0016】
また、「第1部材において、その外周面の少なくとも一部が、発泡樹脂及び非発泡材によって被覆された状態」とは、“完成品である金属樹脂複合体において、第1部材の外周面の少なくとも一部に相当する部分”に、発泡樹脂及び非発泡材が配置された状態をいう。そのため、「被覆工程」には、金属樹脂複合体の状態における第1部材と第2部材との間の空間に、発泡樹脂及び非発泡材が配置されることが含まれるものとする。すなわち、「被覆工程」には、第2部材の内周部に対して、(i)第2部材とは別部材である非発泡材を配置すること、(ii)第2部材と非発泡材とを押し出し成型等により一体的に形成すること、及び、(iii)第2部材の内周部に発泡樹脂を配置することが含まれる。また、「被覆工程」には、第1部材及び第2部材の一方に対して非発泡材を配置し、他方に対して発泡樹脂を配置することも含まれるものとする。
【0017】
前記加熱工程においては、前記非発泡材の少なくとも一部は、前記第1部材における最下部の外周面の少なくとも一部と、前記第2部材における最下部の内周面の少なくとも一部と、により上下方向に関して挟まれた状態となってもよい。これによると、径方向断面において一箇所で、内側部材を下方から支持できるので、少量の非発泡材を用いて、簡易な構成により目標とする位置に内側部材を配置できる。
【0018】
前記被覆工程において、前記第1部材の外周面の少なくとも一部は、前記第1部材と前記発泡樹脂との間に接着剤層が挟まれている状態で、前記発泡樹脂によって被覆された状態となってもよい。これによると、第1部材と中間層とが強固に接着され、これらの間に隙間が発生しにくい製品が得られる。
【0019】
前記被覆工程において、前記第1部材を被覆している前記発泡樹脂の表面にさらに接着剤層が被覆された状態となってもよい。これによると、第2部材と中間層とが強固に接着され、これらの間に隙間が発生しにくい製品が得られる。
【0020】
前記第2部材の内周面の少なくとも一部に接着剤層が被覆された状態とする接着剤層被覆工程をさらに有してもよい。これによると、第2部材と中間層とが強固に接着され、これらの間に隙間が発生しにくい製品が得られる。
【0021】
また、この場合には、本発明に係る金属樹脂複合体の製造方法に接着剤層被覆工程が含まれ、被覆工程、設置工程、加熱工程、接着剤層被覆工程は、例えば、次のような順序で組み合わせることができる。
(1)接着剤層被覆工程→被覆工程→設置工程→加熱工程
(2)被覆工程→接着剤層被覆工程→設置工程→加熱工程
(3)接着剤層被覆工程→設置工程→被覆工程→加熱工程
(4)設置工程→接着剤層被覆工程→被覆工程→加熱工程
(5)接着剤層被覆工程→被覆工程(第一段階)→設置工程→被覆工程(第二段階)→加熱工程
(6)被覆工程(第一段階)→接着剤層被覆工程→設置工程→被覆工程(第二段階)→加熱工程
(7)被覆工程(第一段階)→設置工程→接着剤層被覆工程→被覆工程(第二段階)→加熱工程
なお、これらの工程の前後及び各工程間に別の工程が設けられていてもよい。
【0022】
前記被覆工程において、前記第1部材を被覆する前記発泡樹脂には、未発泡状態の発泡可能樹脂が含まれ、前記加熱工程においては、前記発泡可能樹脂の発泡を行ってもよい。これによると、第1部材及び第2部材が直接接触することをより確実に抑止できる。
【0023】
前記非発泡材は、非発泡樹脂であってもよい。上記のように、第1部材及び第2部材は金属製である。そして、例えば、第1部材をアルミニウムとし、且つ、第2部材を鋼製部材とした場合において、第1部材(アルミニウム)と第2部材(鋼製部材)とが、互いに通電可能な状態になっていると、これらに電食(腐食)が発生してしまう。そして、例えば、非発泡材が金属部材の場合には、第1部材及び第2部材が通電可能な状態になる。そこで、第1部材と第2部材との隙間に非発泡樹脂を挟むことで金属樹脂複合体を構成することにより、これらが互いに通電可能な状態を回避することができる。その結果、第1部材及び第2部材の電食を防止できる。
【0024】
前記第1部材は、円筒状又は丸棒状であり、前記第2部材は、円筒状であってもよい。これによると、例えば、第1部材及び第2部材の軸中心を一致させることにより、強度に関して、方向依存性の少ない金属樹脂複合体が得られる。
【0025】
前記第1部材は、角筒状又は角棒状であり、前記第2部材は、角筒状であってもよい。これによると、単純な形状とすることで、第1部材及び第2部材を容易に製造できる。
【0026】
前記発泡樹脂には、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレンのいずれかが含まれていてもよい。これらは、いずれも化学発泡剤の加熱発泡温度とのバランスから最適と考えられる樹脂であるため、この構成により、いずれが含まれていても、良好な発泡が得られる。
【0027】
前記発泡樹脂には、酸変性ポリオレフィンが含まれていてもよい。これによると、発泡樹脂に酸変性ポリオレフィンが含まれることで発泡樹脂と金属との親和性が高くなる。そのため、発泡後の発泡樹脂と第1部材及び第2部材との粘着性が向上し、位置ずれが生じにくくなる。
【0028】
なお、酸変性ポリオレフィンとしては、樹脂を構成するポリマーを事後的に酸化処理して、ポリマーの主鎖または側鎖に酸基を導入したもの、或いは、オレフィン系モノマーと共に少量のアクリル酸、メタクリル酸、または無水マレイン酸などの酸基を有するモノマーを共重合させたものが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0029】
前記発泡樹脂には、有機変性された薄片状無機質粉末が含まれていてもよい。これによると、発泡樹脂に有機変性された薄片無機質粉末が含まれることで微細発泡が可能となり、且つ、発泡樹脂層の強度が増す。そのため、発泡後の発泡樹脂と、第1部材および第2部材との接着強度が増大し、位置ずれが生じにくくなる。
【0030】
変性により薄片状無機質粉末の層間に官能基を導入することを、薄片状無機質粉末に有機変性を付与するという。ここで、官能基の導入に用いる有機化剤としては、1〜4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、ラウリルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジオクタデシルジメチルアンモニウムイオン、トリオクタデシルアンモニウムイオン等が挙げられる。これらの有機変性処理によって、薄片状無機質粉末の層間に存在する金属カチオンを、それらの4級塩などで置換・導入すると、層間の分離が促進され、無機質粉末が、微細燐片状で樹脂マトリックス全体に拡散し、ガスバリア促進作用がより効果的に発揮される。
【0031】
また、薄片性無機質粉末は、薄片状の結晶が重なり合った構造の粉末で、溶融した熱可塑性樹脂層内でそれらが微細な燐片状に分離しつつ拡散する特性を備えたものであればよい。その具体例としては、薄片状(層状)無機質粉末、例えば、モンモリロナイト(ベントナイト)、クレー、ハイデライト、ノントロナイト、サポナイト、バイデライト、ヘクトライト、スティブンサイト等の粘性鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト等の天然雲母または膨潤性雲母等が挙げられるまた、これらは天然物でも合成物でもよい。
【0032】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る金属樹脂複合体は、金属製で且つ筒状又は棒状の第1部材と、金属製で且つ前記第1部材が内部に挿入可能となるように筒状に形成された第2部材と、中間層と、を有している。そして、前記第1部材は前記第2部材の内部に挿入配置され、且つ、前記中間層は前記第1部材の外側で且つ前記第2部材の内側に配置されており、前記中間層は、前記第1部材が前記第2部材の内部に対して挿入設置され、且つ、前記第1部材の外周面の少なくとも一部が、発泡樹脂及び非発泡材によって被覆された状態であって前記第1部材及び前記第2部材の軸方向が水平方向に沿うように配置された状態において、加熱により前記発泡樹脂を前記第1部材及び前記第2部材の間で発泡させたものである。これによると、簡易な構成により、目標とする位置に内側部材を配置できる金属樹脂複合体が得られる。
【0033】
前記非発泡材は、非発泡樹脂であってもよい。これによると、第1部材及び第2部材の電食を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、ここでは、本発明に係る金属樹脂複合体が自動車用のドアビームに適用される一実施形態について説明する。
【0035】
図1は、本実施形態に係る金属樹脂複合体の、加熱前及び加熱後の状態を示しており、(a)は加熱前複合体を示す径方向断面概略図、(b)は加熱後の金属樹脂複合体を示す径方向断面概略図である。図2は、図1(a)のA−A’矢視図に相当する側面視概略図であり、外側の第2部材を省略して示している。なお、図1の断面位置は、図2のC−C’位置に相当する。図3は、図1における内側の第1部材の斜視概略図である。図4は、本実施形態に係る金属樹脂複合体の製造方法における、被覆工程経過後の状態を示す斜視概略図である。図5は、本実施形態に係る金属樹脂複合体の製造方法における、設置工程を説明するための斜視概略図である。図6は、本実施形態に係る金属樹脂複合体の製造方法における、設置工程経過後の状態を示す斜視概略図である。図7は、本実施形態に係る金属樹脂複合体の製造方法における、加熱工程経過後の金属樹脂複合体を示す斜視概略図である。
【0036】
(全体構成)
まず、本発明の一実施形態に係る金属樹脂複合体の全体構成について説明する。本実施形態に係る金属樹脂複合体1は、図1(b)、図7に示すようなものであり、内側の第1部材2と、外側の第2部材5と、これらの間に充填された中間層6とを有して構成される。第1部材2は金属製で且つ棒状に形成されており、第2部材5は、金属製で且つ筒状に形成されている。また、第1部材2は第2部材5の内部に挿入配置され、且つ、中間層6は第1部材2の外側で且つ第2部材5の内側に充填配置されている。
【0037】
ドアビームには、軽量で且つ高い強度を有することが求められ、これを満たすため、金属樹脂複合体1においては、第2部材5の内部に第1部材2を挿入することにより、せん断力や曲げに対する強度を高く維持しており、また、これらの間に絶縁体である中間層を設けることにより、さらに全体を補強しつつ、第1部材2と第2部材5との接触による金属部材の電食を防止している。以下、各構成部材の詳細について説明する。
【0038】
(第1部材)
第1部材2は、上記のように、第2部材5の内部に挿入される補強部材であり、金属製で且つ丸棒状に構成されている(図3参照)。より詳細には、第1部材2はアルミニウム製である。このように、軽量で且つ金属製の補強部材を用いることにより、金属樹脂複合体1において、軽量であること、及び、高い強度を有すること、の両方が満たされる。なお、第1部材は、軽量金属部材であることが望ましいが、アルミニウム製のものには限られず、例えば、銅製、鋼製、ステンレス製ものであってもよい。
【0039】
(第2部材)
第2部材5は、金属製で、且つ、第1部材2が内部に挿入可能となるように円筒状に形成されている(図5参照)。より詳細には、第2部材5は鋼製である。なお、第2部材5は、強度の高い金属部材であれば、鋼製のものには限られず、例えば、銅製、アルミニウム製、ステンレス製であってもよい。
【0040】
(中間層)
中間層6は、上記のように第1部材2の外側で且つ第2部材5の内側に充填配置される。中間層6は、第1部材2が第2部材5の内部に対して挿入設置され、且つ、第1部材2の外周面の少なくとも一部が、発泡樹脂及び非発泡樹脂によって被覆された状態であって、第1部材2及び第2部材5の軸方向が水平方向に沿うように配置された状態において、加熱により発泡樹脂を第1部材2及び第2部材5の間で発泡させたものである(詳細については製造方法の説明において後述する)。また、中間層6は、発泡樹脂の発泡による発泡体と、非発泡樹脂(非発泡材)とを含む(詳細は後述する)。
【0041】
なお、第1部材の外周面及び第2部材の内周面の、一方または両方に対して表面処理加工を行なってもよい。表面処理加工としては、化成処理、陽極酸化処理、シランカップリング処理等が挙げられる。これらの表面処理加工を第1部材及び第2部材に施すことで、腐食を防止できる。以下、各表面処理加工の性質及び効果を示す。
【0042】
化成処理とは、表面に化学的に非金属の化成皮膜を形成することをいい、例えば、クロム系(リン酸クロメート、クロムクロメートなど)、ノンクロム系(リン酸亜鉛など)の薬剤を用いる表面処理が挙げられる。この化成処理を第1部材及び第2部材に施すことで、耐食性、塗料との親和性が向上する。
【0043】
陽極酸化処理とは、第1部材または第2部材を陽極とした電気化学的方法によって人工的に酸化被膜を形成する処理をいう。本技術においては、一般的な陽極酸化処理方法を採用できる。この陽極酸化処理を第1部材及び第2部材に施すことで、耐食性、耐摩耗性が向上する。
【0044】
シランカップリング処理とは、反応性基(又は官能基)を有する加水分解縮合性有機ケイ素化合物を用いて、表面にシランカップリング層を設ける処理である。具体的には、シランカップリング剤として、ハロゲン含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランなど)、アミノ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤、ビニル基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤などを適宜使用できる。このシランカップリング処理を第1部材及び第2部材に施すことで、接着性、耐食性、物理強度が向上する。
【0045】
(製造方法)
次に、本実施形態に係る金属樹脂複合体1の製造方法について説明する。まず、第1部材2が準備される。最初の状態においては、図3に示すように、第1部材2は、その外周面2sに何も被覆されていない状態となっている。
【0046】
(被覆工程)
次に、図4に示すように、第1部材2において、その外周面2sの一部が、発泡樹脂3及び非発泡樹脂4によって被覆された状態とする(被覆工程)。図4は、被覆工程を経た後の第1部材2を示している。
【0047】
より詳細には、この被覆工程において、発泡樹脂3は、二つのブロックとして第1部材2の表面に被覆され、この二つの発泡樹脂3,3の軸方向の長さは、それぞれ、第1部材2の軸方向の長さとほぼ等しく、且つ、発泡樹脂3,3は、第1部材2の軸方向に沿って配置される(図2、4参照)。また、非発泡樹脂4は、二つのブロックとして第1表面に被覆され、二つの非発泡樹脂4,4それぞれの軸方向長さは、第1部材2の軸方向長さの半分よりも短く、且つ、この二つの非発泡樹脂4,4は、第1部材2の軸方向に関する両端付近にそれぞれ配置される。また、二つの非発泡樹脂4,4は、正面視(図2のD−D’矢視参照)において互いに重なるように、同一軸線上に配置される。そして、図1(a)、図4に示すように、第1部材2の径方向断面において、二つの発泡樹脂3,3、非発泡樹脂4は、非発泡樹脂4が図における最下部に位置し、且つ、二つの発泡樹脂3,3が上方に位置するように、外周面2s上にほぼ120度間隔で互いに離隔して配置される。なお、以後の説明においては、特記しない限り、二つの発泡樹脂3,3をまとめて“発泡樹脂3”と示し、二つの非発泡樹脂4,4をまとめて“非発泡樹脂4”と示す。
【0048】
また、被覆工程において被覆された非発泡樹脂4には、径方向に関しての厚みが、最終製品である金属樹脂複合体1における第2部材5と第1部材2との間の設計目標距離(図1(a)参照)に等しい部分が含まれる。すなわち、被覆工程においては、非発泡樹脂4の少なくとも一部分において、その径方向に関する厚みを、金属樹脂複合体1において非発泡樹脂4が配置される部分における、第2部材5と第1部材2との間の設計目標距離に設定する。すなわち、非発泡樹脂4は、第1部材2を、樹脂の硬化中に移動しないように支持して、第1部材2を、最終的な目標位置に位置決めしておくためのものである。
【0049】
ここで、“発泡樹脂”とは、ベース樹脂となる合成樹脂の中に発泡剤が含まれるものであり、加熱により発泡、硬化する。また、“非発泡樹脂”とは、ベース樹脂となる合成樹脂の中に発泡剤が含まれないものである。ベース樹脂の樹脂成分は特に限定されないが、望ましいものとして、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ゴムなどが挙げられる。ベース樹脂として好ましいのは、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリスチレン系樹脂である。これらは、いずれも化学発泡剤の加熱発泡温度とのバランスから最適と考えられる樹脂であるため、発泡樹脂としていずれが含まれていても、良好な発泡が得られる。また、特に好ましいのは、ポリオレフィン系樹脂であり、剛性の高いポリオレフィン系樹脂を使用することによって、得られる金属樹脂複合体の剛性を高めることができる。
【0050】
また、含まれる発泡剤としては、有機発泡剤、無機発泡剤のいずれも使用可能である。有機発泡剤の成分としては、例えば、アゾ化合物、ニトロソ化合物、スルホニルヒドラジド化合物等の使用が可能であり、より具体的には、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、アゾビスイソブチロニトリル、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p-トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ヒドラゾジカルボンアミド、ジフェニルスルホン-3,3-ジスルホンヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、ビウレアなどが挙げられる。無機発泡剤の成分としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸亜鉛など、さらに、熱膨張性マイクロカプセルなどが挙げられる。これらの発泡剤成分の中でも、120度以上、より好ましくは150度以上に加熱することにより発泡するものが望ましい。尚、上記の発泡剤成分は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、上記発泡剤成分は、発泡樹脂の樹脂成分中、1〜10質量%含まれていることが好ましく、2〜5質量%含まれていることがより好ましい。
【0051】
なお、樹脂の被覆は様々な方法を用いて行うことができる。例えば、金属部材と発泡樹脂との間に接着剤層が設けられる場合があるが(後述する変形例参照)、そのような場合に、押出機を用いて、接着剤層、発泡樹脂層を被覆してもよい。また、樹脂シートが巻回された加熱ロールを用いて、加熱ロール及び第1部材の軸方向を一致させ、加熱ロールを回転させつつ、第1部材を周方向に回転させながら軸方向に移動させ、樹脂シートを前進する第1部材に螺旋状に巻き付けることで、樹脂を被覆してもよい。また、加熱ロール及び第1部材の軸方向を直交させ、第1部材を周方向に回転させずに軸方向に移動させ、軸方向に沿って樹脂シートを貼り付けるようにして樹脂を被覆してもよい(本実施形態が該当する)。
【0052】
なお、本実施形態においては、第1部材2の外周面2sの(全体でなく)一部が、発泡樹脂3及び非発泡樹脂4によって被覆されているが(図1(a)、図4参照)、外周面の少なくとも一部が、発泡樹脂及び非発泡樹脂によって被覆された状態となっていればよい。そのため、このような被覆の形態には限られず、本実施形態とは異なる部分において、外周面が部分的に発泡樹脂及び非発泡樹脂によって被覆されてもよく、また、第1部材の外周面全体が発泡樹脂及び非発泡樹脂によって被覆されてもよい。
【0053】
(設置工程)
次に、被覆工程を経てその外周面2sの一部が、発泡樹脂3及び非発泡樹脂4によって被覆された第1部材2を第2部材の内部に対して挿入設置する(配置工程)。そして、第1部材2及び第2部材5の軸方向が水平方向に沿うようにこれらを配置する(図6参照)。図5には、設置工程前の第1部材2及び第2部材5を示しており、図6には、設置工程を経た後の第1部材及び第2部材5を示している。また、被覆工程及び設置工程を経た後の、加熱工程を行なうことができる(加熱工程直前の)状態の第1部材2、第2部材5(及び、発泡樹脂3及び非発泡樹脂4)の組立体を、加熱前複合体1pとする(図1(a)、図6参照)。
【0054】
なお、本実施形態においては、設定工程において第1部材2及び第2部材5の軸方向が水平方向に沿うように配置されているが、加熱工程においてこのように配置された状態になっていればよく、設置工程においては、第1部材2及び第2部材5の軸方向が水平方向に沿うように配置されていなくてもよい。そのため、設置工程では、例えば、第1部材2及び第2部材5の軸方向が垂直方向に沿うようにこれらを配置してもよい。
【0055】
(加熱工程)
次に、第1部材2及び第2部材5を、これらの軸方向が水平方向に沿うように配置した状態で、加熱前複合体1pを加熱し、発泡樹脂3を第1部材2及び第2部材5の間で発泡させる(加熱工程)。ここで、第1部材2及び第2部材5を、これらの軸方向が水平方向に沿うように配置するのは、第1部材2及び第2部材を安定して固定するためである。そして、この加熱工程を経ることで、発泡樹脂3が発泡して膨張、硬化し、第1部材2と第2部材5との間の隙間が、中間層6によって充填されて金属樹脂複合体1となる。図7には、加熱工程を経た金属樹脂複合体1を示している。また、加熱工程においては、少なくとも発泡樹脂3を加熱するように、加熱前複合体1pを加熱する。また、上記のように、中間層6は、発泡樹脂3の発泡による発泡体3hと、非発泡樹脂(非発泡材)4とを含んで構成される(図1(b)、図7参照)。
【0056】
また、上記のように、二つの非発泡樹脂4,4のそれぞれの軸方向長さは、第1部材2の軸方向長さの半分よりも短く、そのため、非発泡樹脂4の軸方向長さ(二つの非発泡樹脂4,4の長さを合計した長さ)は、第1部材2の軸方向長さよりも短い。すなわち、非発泡樹脂4は、第1部材2の軸方向に関しての一部を被覆している。以上により、加熱前の段階において、非発泡樹脂4は、第1部材2における最下部の外周面2tの一部(軸方向に関しての一部)と、第2部材5における最下部の内周面5tの一部(軸方向に関しての一部)と、により上下方向に関して挟まれた状態となっており(図1(a)、2、4、5、6参照)、加熱工程においては、その状態の加熱前複合体1pが加熱される。
【0057】
なお、本実施形態では、加熱工程において、非発泡樹脂4は、第1部材2における最下部の外周面2tの一部と、第2部材5における最下部の内周面5tの一部と、により上下方向に関して挟まれた状態となっているが、加熱工程において、非発泡樹脂の少なくとも一部が、第1部材における最下部の外周面の少なくとも一部と、第2部材における最下部の内周面の少なくとも一部と、により上下方向に関して挟まれた状態となっていればよく、本実施のような形態には限られない。具体的に説明すると、例えば、本実施形態においては、非発泡樹脂4の内周面及び外周面の周方向に関しての“全体”が、上下方向に関して挟まれた状態となっているが、非発泡樹脂が、本実施形態に係る非発泡樹脂よりも周方向長さが長く形成されていてもよく、この場合に(当該長くなった部分は、最下部によって上下方向に関して挟まれることはないので)非発泡樹脂の“一部”が、上下方向に関して挟まれた状態となっていてもよい。また、本実施形態においては、非発泡樹脂4は、第1部材2における最下部の外周面2tの(軸方向に関する)“一部”と、第2部材5における最下部の内周面5tの(軸方向に関する)“一部”と、により上下方向に関して挟まれた状態となっているが、非発泡樹脂の軸方向の長さが、第1部材の軸方向の長さ以上であってもよく、この場合に、非発泡樹脂が、第1部材における最下部の外周面の(軸方向に関しての)“全体”と、第2部材における最下部の内周面の(軸方向に関しての)“全体”と、により上下方向に関して挟まれた状態となっていてもよい。
【0058】
また、本実施形態の製造方法においては、被覆工程、設置工程、加熱工程は、被覆工程→設置工程→加熱工程という順序で実施されるが、このような順序には限られず、例えば、設置工程→被覆工程→加熱工程という順序で組み合わせることができる。すなわち、被覆前の第1部材を第2部材の内部に対して挿入設置し、その後に、発泡樹脂及び非発泡樹脂を第1部材と第2部材との間に挿入して第1部材に発泡樹脂及び非発泡樹脂を被覆し、その後加熱してもよい。
【0059】
また、本実施形態においては、被覆工程はまとめて一段階で行なうが、複数段階に分けて行なってもよい。その結果、製造方法において、被覆工程(第一段階)→設置工程→被覆工程(第二段階)→加熱工程という順序の組み合わせも考えられる。この場合には、例えば被覆工程の第一段階において非発泡樹脂のみを第1部材に被覆し、その状態で第1部材を第2部材の内部に挿入し(設置工程)、その後、被覆工程の第二段階において発泡樹脂を第1部材に被覆し、その後加熱してもよい。また、これらの工程の前後及び各工程間に別の工程が設けられていてもよい。また、例えば、被覆工程→設置工程→加熱工程という順序には、被覆工程(第一段階)→被覆工程(第二段階)→設置工程→加熱工程という順序も含まれる。
【0060】
また、本実施形態においては、非発泡材として非発泡樹脂が用いられているが、非発泡材は、金属材料であってもよい(後述する変形例参照)。ただし、非発泡樹脂を用いることにより、第1部材及び第2部材における電食の発生を防止できる。
【0061】
(効果)
次に、本実施形態に係る金属樹脂複合体1及びその製造方法による効果について説明する。金属樹脂複合体1の製造方法は、棒状で且つ金属製の第1部材2において、その外周面2sの一部が、発泡樹脂3及び非発泡樹脂4によって被覆された状態とする、一段階の被覆工程と、第1部材2を、金属製で且つ第1部材2が内部に挿入可能となるように筒状に形成された第2部材5の内部に対して挿入設置する設置工程と、第1部材2及び第2部材5を、これらの軸方向が水平方向に沿うように配置した状態で、加熱により発泡樹脂3を第1部材2及び第2部材5の間で発泡させる加熱工程と、を有する。
【0062】
この構成により、加熱工程において、第2部材5と第1部材2との間が、発泡樹脂3の発泡により得られる発泡体3h及び非発泡樹脂4によって充填され、且つ、非発泡樹脂4がスペーサーとなるので、加熱後の樹脂がまだ軟らかい状態で、第2部材5と第1部材2とがその下部において接近することを防止でき、第2部材5と第1部材2との間の距離を目標距離に保つことができる。そのため、この製造方法によると、簡易な構成により、目標とする位置に第1部材2(内側部材)を配置できる。その結果、第1部材2及び第2部材5が直接接触することを抑止できるので、第1部材2(又は第2部材5)の電食を防止でき、また、樹脂の発泡体3hに関して設計通りの補強効果が得られる。
【0063】
より具体的には、加熱しても非発泡樹脂4の厚みは変わらないので、被覆工程において、非発泡樹脂4の少なくとも一部分の径方向に関する厚みを、金属樹脂複合体1の当該一部分における第1部材2と第2部材5との間の設計目標距離に設定することで、第1部材2と第2部材5との位置関係を、目標通りのものとすることができる(図1(a)、(b)参照)。また、例えば、発泡樹脂3の発泡条件を自動車電着塗装時の加熱条件に合わせることで、電着塗装工程を発泡のための加熱工程として利用できる。
【0064】
本実施形態に係る金属樹脂複合体1の製造方法による効果について、図15乃至17の参考例を参照しつつさらに詳細に説明する。図15乃至図17は、本実施形態とは異なり、非発泡樹脂が含まれない加熱前複合体901pを加熱して金属樹脂複合体901を製造する参考例に係る技術について説明するものであり、図15は、参考例に係る金属樹脂複合体における加熱前及び加熱中(加熱直後)の状態を示しており、(a)は加熱前複合体を示す径方向断面概略図、(b)は加熱中(加熱直後)の金属樹脂複合体を示す径方向断面概略図である。図16は、参考例に係る金属樹脂複合体において、加熱後であって図15(b)からさらに時間が経過した後の状態(第1パターン)を示す径方向断面概略図である。図17は、参考例に係る金属樹脂複合体において、加熱後であって図15(b)からさらに時間が経過した後の状態(第2パターン)を示す径方向断面概略図である。なお、図15乃至17において、符号402s、405s、406を付した部分は、それぞれ、上記の実施形態において、符号2s、5s、6を付した部分に相当する。
【0065】
参考例に係る加熱前複合体901pには、非発泡樹脂が含まれず、第1部材902の表面には、発泡樹脂903のみが被覆されている(図15(a)参照)。そして、発泡樹脂の加熱中は、発泡により樹脂全体が膨張するような力が発生するため、図15(b)に示すように、加熱中(加熱直後)においては、内側の第1部材902が、樹脂中を降下することなく、周囲の発泡体(中間層)906によって、径方向断面における中央付近に支持される。しかし、加熱が終了した後においては、自然冷却のため、発泡は行なわれず、且つ、樹脂全体がまだ硬化していないような時期が発生するため、この時期において、樹脂が軟らかいこと、発泡後の気体が収縮すること等の理由により、第1部材902が当初の目標位置よりも降下してしまう。
【0066】
図16、図17は、図15(b)に示す状態の後の状態(複合体901a、複合体901b)を示したものであり、それぞれ、その第1パターン、第2パターンを示している。図16では、中間層906の形が崩れ(中間層906a参照)、第1部材902の最下部の外周面と、第2部材905の最下部の内周面とが接触してしまっている(図16のE部分参照)。また、第1部材902の上方においては、樹脂が充填されていない隙間(又は発泡体の密度が低い部分)906hが生じる。また、図17では、中間層906の形が崩れ(中間層906b参照)、第1部材902の最下部の外周面と、第2部材905の最下部の内周面とは接触していないものの、第1部材902は、下方へ降下しており、第1部材902の上方においては、やはり、樹脂が充填されていない隙間(又は発泡体の密度が低い部分)906jが生じてしまっている。
【0067】
このように、第1部材902を全く支持せずに、発泡のための加熱を行なった場合には、第2部材905と第1部材902とが接触して電食が発生する可能性があり、また、隙間又は発泡体の密度が低い部分が、第1部材902の上方に発生することで、ある程度の補強機能を有する発泡体(中間層)906に関して設計通りの強度が得られない可能性がある。しかし、本発明に係る製造方法により、上記のように、簡易な構成により目標とする位置に第1部材2(内側部材)を配置でき、その結果、本実施形態のように、第1部材がアルミニウム製で、第2部材が鋼製であるような場合に、第1部材における電食の発生を防止でき、また、樹脂の発泡体3hに関して設計通りの補強効果が得られる。
【0068】
また、本実施形態に係る製造方法によると、例えば両端で第1部材を支持するような位置決め装置を別途使用する必要もなく、組立時の部品点数が増加してしまうことがない。また、例えば、第2部材の両端が覆われているような場合には、このような位置決め装置を使用することもできないが、本実施形態に係る製造方法によると、そのような場合であっても、内側部材を目標の位置に配置できる。
【0069】
また、本実施形態に係る製造方法の加熱工程においては、非発泡樹脂4の少なくとも一部は、第1部材2における最下部の外周面2tの少なくとも一部と、第2部材5における最下部の内周面5tの少なくとも一部と、により上下方向に関して挟まれた状態となるので、径方向断面において一箇所で、第1部材2(内側部材)を下方から支持できるので、少量の非発泡樹脂を用いて、簡易な構成により目標とする位置に内側部材を配置できる。
【0070】
また、本実施形態に係る製造方法において、非発泡材は、非発泡樹脂である。本実施形態のように、第1部材2をアルミニウムとし、且つ、第2部材5を鋼製部材とした場合において、第1部材(アルミニウム)と第2部材(鋼製部材)とが、互いに通電可能な状態になっていると、これらに電食(腐食)が発生してしまう。そして、例えば、非発泡材が金属部材の場合には、第1部材及び第2部材が通電可能な状態になる。そこで、第1部材2と第2部材5との隙間に非発泡樹脂を挟むことにより、これらが互いに通電可能な状態を回避することができる。その結果、第1部材2及び第2部材5の電食を防止できる。
【0071】
また、本実施形態に係る製造方法において、第1部材2は、丸棒状であり、第2部材5は、円筒状であるので、例えば、本実施形態に係る金属樹脂複合体1のように、第1部材2及び第2部材5の軸中心を一致させることにより、径方向断面において第1部材2が第2部材5の内側に偏りなく配置され(図1(b)、図7参照)、強度に関して、方向依存性の少ない金属樹脂複合体が得られる。
【0072】
また、本実施形態に係る製造方法において、発泡樹脂3には、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレンのいずれかが含まれる。これらは、いずれも化学発泡剤の加熱発泡温度とのバランスから最適と考えられる樹脂であるため、この構成により、いずれが含まれていても、良好な発泡が得られる。
【0073】
また、本実施形態に係る金属樹脂複合体1は、金属製で且つ棒状の第1部材2と、金属製で且つ第1部材2が内部に挿入可能となるように筒状に形成された第2部材5と、中間層6と、を有し、第1部材2は第2部材5の内部に挿入配置され、且つ、中間層6は第1部材2の外側で且つ第2部材5の内側に配置されており、中間層6は、第1部材2が第2部材5の内部に対して挿入設置され、且つ、第1部材2の外周面2sの少なくとも一部が、発泡樹脂3及び非発泡樹脂4によって被覆された状態であって第1部材2及び第2部材5の軸方向が水平方向に沿うように配置された状態において、加熱により発泡樹脂3を第1部材2及び第2部材5の間で発泡させたものであるので、これによると、簡易な構成により、目標とする位置に内側部材を配置できる金属樹脂複合体が得られる。
【0074】
また、本実施形態に係る金属樹脂複合体1において、非発泡材が非発泡樹脂であることにより、第1部材2及び第2部材5の電食を防止できる。
【0075】
(変形例)
次に、上記の実施形態に係る金属樹脂複合体の変形例について、上記の実施形態と異なる部分を中心に説明する。なお、上記の実施形態と同様の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0076】
図8は、第1変形例に係る金属樹脂複合体の加熱前複合体における径方向断面概略図である。図9は、第2変形例に係る金属樹脂複合体の加熱前複合体における径方向断面概略図である。なお、図8、9は、図1(a)で説明すると、Bの範囲を拡大したものに相当する。図10は、第3変形例に係る金属樹脂複合体を示す斜視概略図である。図11は、第4変形例に係る金属樹脂複合体を示す斜視概略図である。図12は、第5、6変形例に係る金属樹脂複合体の加熱前複合体を示しており、(a)は、第5変形例に係る加熱前複合体の径方向断面概略図、(b)は、第6変形例に係る加熱前複合体の径方向断面概略図である。図13は、第7変形例に係る金属樹脂複合体の加熱前複合体における側面視概略図であり、外側の第2部材を省略して示している。図14は、図13の隙間の大きさを説明するための参考例を示す参考図であり、(a)は加熱前の状態を示す概略図、(b)は、加熱後の状態を示す概略図である。図18は第11変形例に係る金属樹脂複合体の径方向断面概略図を示しており、(a)は加熱前の状態を示す断面概略図、(b)は加熱後の状態を示す断面概略図である。図19は第12変形例に係る金属樹脂複合体の径方向断面概略図を示しており、(a)は加熱前の状態を示す断面概略図、(b)は加熱後の状態を示す断面概略図である。図20は第13変形例に係る金属樹脂複合体の径方向断面概略図を示しており、(a)は加熱前の状態を示す断面概略図、(b)は加熱後の状態を示す断面概略図である。
【0077】
(第1変形例)
まず、図8を参照して第1変形例に係る金属樹脂複合体の製造方法について説明する。なお、図8において符号102t、104を付した部分は、それぞれ、上記の実施形態において符号2t、4を付した部分に相当する。図8には加熱前複合体101pを示している。本変形例においては、被覆工程において、第1部材102の外周面102sの全体が接着剤層7aにより被覆された状態となり、その結果、被覆工程において、第1部材102の外周面102sの一部は、第1部材102と発泡樹脂103との間に接着剤層7aが挟まれている状態で、発泡樹脂103によって被覆された状態となる(図8参照)。このため、第1部材102と中間層とが強固に接着され、これらの間に隙間が発生しにくい製品が得られる。
【0078】
また、本変形例においては、被覆工程において、第1部材102を(接着剤層7aを介して)被覆している発泡樹脂3の表面にさらに接着剤層7bが被覆された状態となる(図8参照)。このため、第2部材5と中間層とが強固に接着され、これらの間に隙間が発生しにくい製品が得られる。
【0079】
なお、本変形例においては、第1部材102の外周面102sの全体が接着剤層7aにより被覆された状態となっているが、第1部材と発泡樹脂との間に接着剤層が挟まれている状態となっていればよく、このような形態には限られない。
【0080】
(第2変形例)
次に、図9を参照して第2変形例に係る金属樹脂複合体の製造方法について説明する。なお、図9において、符号202、202s、202t、204、205tを付した部分は、それぞれ、上記の実施形態において、符号2、2s、2t、4、5tを付した部分に相当する。本変形例に係る製造方法には、第2部材205の内周面205s全体に接着剤層7cが被覆された状態とする接着剤層被覆工程がさらに含まれる。図9には、接着剤被覆工程を経た後の加熱前複合体201pを示している。これにより、第2部材205と中間層とが強固に接着され、これらの間に隙間が発生しにくい製品が得られる。
【0081】
また、この場合には、本発明に係る金属樹脂複合体の製造方法に、接着剤層被覆工程がさらに含まれ、被覆工程、設置工程、加熱工程、及び、接着剤層被覆工程は、例えば、次のような順序で組み合わせることができる。
(1)接着剤層被覆工程→被覆工程→設置工程→加熱工程(本変形例)
(2)被覆工程→接着剤層被覆工程→設置工程→加熱工程
(3)接着剤層被覆工程→設置工程→被覆工程→加熱工程
(4)設置工程→接着剤層被覆工程→被覆工程→加熱工程
(5)接着剤層被覆工程→被覆工程(第一段階)→設置工程→被覆工程(第二段階)→加熱工程
(6)被覆工程(第一段階)→接着剤層被覆工程→設置工程→被覆工程(第二段階)→加熱工程
(7)被覆工程(第一段階)→設置工程→接着剤層被覆工程→被覆工程(第二段階)→加熱工程
なお、これらの工程の前後及び各工程間に別の工程が設けられていてもよい。
【0082】
また、本変形例においては、接着剤被覆工程において、第2部材205の内周面205s全体に接着剤層7cが被覆された状態となるが、第2部材の内周面の少なくとも一部に接着剤層が被覆された状態となればよく、接着剤層は内周面の一部に被覆されても良い。
【0083】
(第3変形例)
次に、図10を参照して第3変形例に係る金属樹脂複層体について説明する。なお、図10において、符号302sを付した部分は、上記の実施形態において、符号2sを付した部分に相当する。上記の実施形態においては、第1部材は丸棒状に形成されているが、本変形例に係る金属樹脂複合体301のように、第1部材302には貫通孔302hが形成されていることにより、第1部材302が丸筒状に形成されていてもよい。
【0084】
(第4変形例)
次に、図11を参照して第4変形例に係る金属樹脂複合体について説明する。なお、図11において、符号402s、405s、406を付した部分は、それぞれ、上記の実施形態において、符号2s、5s、6を付した部分に相当する。上記の実施形態においては、第1部材は丸棒状に、第2部材は円筒状に形成されているが、本変形例に係る金属樹脂複合体401のように、第1部材402が角棒状に、第2部材405が角筒状に形成されていてもよい。また、図示はしないが、第1部材には貫通孔が形成されていることにより、第1部材が角筒状に形成されていてもよい。これによると、単純な形状とすることで、第1部材及び第2部材を容易に製造できる。
【0085】
(第5、6変形例)
次に、図12を参照して、第5、6変形例に係る金属樹脂複合体について説明する。なお、図12において、符号501p、504、601p、604を付した部分は、それぞれ、上記の実施形態において、符号1p、4、1p、4を付した部分に相当する。上記の実施形態においては、加熱工程において、非発泡樹脂4は、第1部材2における最下部の外周面2tの一部と、第2部材5における最下部の内周面5tの一部と、により上下方向に関して挟まれた状態となっているが、このような形態には限られず、第5変形例のように、加熱工程において、径方向断面において、第1部材2及び第2部材5の最下部から周方向に関して両回転方向に(90度以内の範囲で)移動した位置に、二つの非発泡樹脂504,504が配置されるようにしてもよい(図12(a)参照)。このようにすることによって、内側の第1部材2を、非発泡樹脂によって下方から支持することができ、簡易な構成により、目標とする位置に内側部材を配置できる。
【0086】
また、第6変形例のように、加熱前複合体601pにおいて、非発泡樹脂604が、第1部材2における最上部の外周面の一部と、第2部材5における最上部の内周面の一部と、により上下方向に関して挟まれた状態となっていてもよい(図12(b)参照)。ここで、非発泡樹脂604は、第2部材5に対して接着されており、第1部材2は、非発泡樹脂604に対して接着されている。すなわち、第1部材2が、上方から吊り下げられた状態となっている。また、上記の実施形態とは逆に、発泡樹脂3は、第1部材2の下方よりの位置に被覆されている。このようにすることによっても、内側の第1部材2を、非発泡部材によって支持することができ、簡易な構成により、目標とする位置に内側部材を配置できる。
【0087】
(第7変形例)
次に、図13を参照して第7変形例について説明する。なお、図13において、符号702sを付した部分は、上記の実施形態において、符号2sを付した部分に相当する。上記の実施形態においては、被覆工程において、発泡樹脂の軸方向の長さは、それぞれ、第1部材の軸方向の長さとほぼ等しく、且つ、発泡樹脂は、第1部材の軸方向に沿って配置されている。しかし、このような形態には限られず、本変形例のように、発泡樹脂703の軸方向の長さは、第1部材702の軸方向の長さに比べて短く、且つ、複数の発泡樹脂703が、互いに離隔しつつ、同一軸線上に配置されてもよい。
【0088】
ここで、複数の発泡樹脂703の間の、軸方向に関しての間隔W1の大きさについて図14を参照して説明する。図14は、参考例を示した参考図であり、外側の筒状の第2部材805、内側の棒状の第1部材802、第1部材802に被覆された発泡樹脂803、を有して構成されている。そして、この参考例に係る複合体を加熱すると、加熱前の状態(図14(a))から、加熱後の状態(図14(b))となる。加熱後の状態においては、発泡樹脂803が発泡して、発泡体806になっており、発泡体806の軸方向の幅Wbは、発泡樹脂の軸方向の幅Waよりも大きくなっている。ここで、例えば、以下の(1)乃至(4)の条件下で発泡させると、WbのWaに対する比は、式1のようになる。
(1)第1部材802の外径:25mm
(2)第2部材805の外径:30mm
(3)発泡樹脂803の厚み:1mm
(4)発泡樹脂803の発泡倍率:4倍
Wb/Wa=1.5 (式1)
すなわち、図13におけるW1の大きさは、発泡による発泡樹脂の幅の前後比を考慮して決定すればよい。このようにしてW1を適切に設定することにより、加熱後の金属樹脂複合体において、軸方向に関しての発泡体の隙間を無くすことができる。なお、図14において、符号802、803、805、806を付した部分は、それぞれ、上記の実施形態において、符号2、3、5、6を付した部分に相当する。
【0089】
また、他の変形例(第8変形例)として、被覆工程において、第1部材を被覆する発泡樹脂には、未発泡状態(発泡が完了していない状態)の発泡可能樹脂(発泡が完了していないためにさらに発泡が可能な状態)が含まれ、加熱工程においては、当該発泡可能樹脂の発泡を行ってもよい。これによると、第1部材及び第2部材が直接接触することをより確実に抑止できる。
【0090】
また、その他の実施例(第9変形例)として、発泡樹脂には、酸変性ポリオレフィンが含まれていてもよい。これにより、発泡樹脂に酸変性ポリオレフィンが含まれることで発泡樹脂と金属との親和性が高くなる。そのため、発泡後の発泡樹脂と第1部材及び第2部材との接着強度が増大し、位置ずれが生じにくくなる。
【0091】
また、さらに他の実施例(第10変形例)として、発泡樹脂には、有機変性された薄片状無機質粉末が含まれていてもよい。これにより、発泡樹脂に有機変性された薄片無機質粉末が含まれることで微細発泡が可能となり、且つ、発泡樹脂層の強度が増す。そのため、発泡後の発泡樹脂と第1部材および第2部材との粘着性が向上し、位置ずれが生じにくくなる。
【0092】
(第11変形例)
次に、図18を参照して第11変形例に係る金属樹脂複合体の製造方法について説明する。なお、図18において、符号1003h、1006を付した部分は、それぞれ、上記の実施形態において、符号3h、6を付した部分に相当する。図18(a)には加熱前複合体1001pを示し、図18(b)には加熱後の金属樹脂複合体1001を示している。本変形例においては、第1部材1002の上面及び下面に、位置決めのための二つの支持部材(非発泡材)8が配置されている。二つの支持部材8は、押し出し加工(押し出し成型)により、第1部材1002と一体に形成されたものであり、第1部材1002と同様にアルミニウム製である。すなわち、第1部材1002及び支持部材8は押出形材である。第1部材1002は、支持部材8により位置決めされ、第2部材1005の中心付近に配置される(図18(a)参照)。また、発泡樹脂1003は、発泡後に、第1部材1002と第2部材1005との間に隙間ができないように、第1部材1002に対して被覆されている。金属樹脂複合体はこのようなものであってもよい。これにより、第1部材(又は第2部材)とは別に非発泡材を準備する必要がなくなるので、部品点数が減少する。そのため、加熱前複合体の準備作業が簡易なものとなる。なお、本実施形態では、支持部材が、第1部材と一体に形成されているが、支持部材は、第2部材と一体に形成されていてもよい。
【0093】
なお、本変形例に係る金属樹脂複合体の製造方法において、「被覆工程」には、(i)押し出し加工により第1部材及び支持部材を一体的に形成すること、並びに、(ii)第1部材の外周面(又は第2部材の内周面)に発泡樹脂を配置すること、が含まれる。
【0094】
(第12変形例)
次に、図19を参照して第12変形例に係る金属樹脂複合体の製造方法について説明する。なお、図19において、符号1103h、1106を付した部分は、それぞれ、上記の実施形態において、符号3h、6を付した部分に相当する。図19(a)には加熱前複合体1101pを示し、図19(b)には加熱後の金属樹脂複合体1101を示している。本変形例においては、第1部材1102の両側面及び下面に、位置決めのための三つの支持部材(非発泡材)8が配置されている。三つの支持部材8は、押し出し加工により、第1部材1102と一体に形成されたものである。第1部材1102は、支持部材8により安定して位置決めされ、第2部材1105の中心付近に配置される(図19(a)参照)。また、発泡樹脂1103は、発泡後に、第1部材1102と第2部材1105との間に隙間ができないように第1部材1102に対して被覆されている。金属樹脂複合体はこのようなものであってもよい。
【0095】
(第13変形例)
次に、図20を参照して第13変形例に係る金属樹脂複合体の製造方法について説明する。なお、図20において、符号1203h、1206を付した部分は、それぞれ、上記の実施形態において、符号3h、6を付した部分に相当する。図20(a)には加熱前複合体1201pを示し、図20(b)には加熱後の金属樹脂複合体1201を示している。本変形例においては、第1部材2の下面に、位置決めのための二つの支持部材(非発泡材)8が配置されている。二つの支持部材8は、押し出し加工により、第1部材1202と一体に形成されたものである。第1部材1202は、支持部材8により安定して位置決めされて、第2部材1205の中心付近に配置される(図20(a)参照)。また、発泡樹脂1203は、発泡後に、第1部材1202と第2部材1205との間に隙間ができないように第1部材1202に被覆されている。金属樹脂複合体はこのようなものであってもよい。
【0096】
また、第11乃至第13変形例では、支持部材8が、第1部材と共に、押し出しにより形成されているが、このようなものには限られず、支持部材8が、第2部材と共に、押し出しにより形成されてもよい。また、支持部材8(非発泡材)は、第1部材を予め位置決めするために、第1部材の上面、下面、又は側面に対して、適宜溶接又は接着により、一体的に取り付けられてもよい。このようにすることによっても、金属樹脂複合体の製作が容易になる。また、上記の支持部材は、非発泡樹脂であってもよい。
【実施例】
【0097】
次に、本発明にかかる金属樹脂複合体の実施例について説明する。本実施例においては、金属部材と発泡樹脂との間に接着剤層を挟まずに、金属樹脂複合体を製造し、第1部材と第2部材との接着状態を確認した。その結果を表1に示す。表において、含有量とは、「発泡樹脂」における含有量である。なお、本実施例において使用した材料を以下に示す。
(a)マトリックス樹脂(ポリプロピレン):プライムポリマー(登録商標)製 F−744NP
(b)マレイン酸変性 ポリプロピレン:三洋化成(登録商標)製 ユーメックス1001
(c)有機変性モンモリロナイト:ホージュン(登録商標)製 エスベンNX
(d)発泡剤:永和化成(登録商標)製 ADCA AC#R
【0098】
【表1】

なお、表中の(1)(2)は、発泡樹脂に、酸変性ポリオレフィンとして、マレイン酸変性ポリプロピレンが含まれた金属樹脂複合体の実施例を示しており(第9変形例参照)、表中の(1)は、発泡樹脂に、有機変性された薄片状無機質粉末が含まれた金属樹脂複合体の実施例を示している(第10変形例参照)。また、表中の(3)は、発泡樹脂に酸変性ポリオレフィンが含まれず、且つ、発泡樹脂に有機変性された薄片状無機質粉末が含まれていない金属樹脂複合体の実施例(上記の実施形態参照)を示している。
【0099】
表1の(2)に示すように、発泡樹脂に、酸変性ポリオレフィンとして、マレイン酸変性ポリプロピレンが入ると、酸変性ポリオレフィンが含まれない場合に比べて、接着状態が向上する。また、表1の(1)に示すように、発泡樹脂に、有機変性された薄片状無機質粉末が含まれると、有機変性された薄片状無機質粉末が含まれない場合に比べて、接着状態が向上し、第1部材が外れにくくなる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【0101】
例えば、上記の実施形態においては、本発明に係る金属樹脂複合体を自動車のドアビームへ適用するものとして説明しているが、このようなものには限られず、本発明に係る金属樹脂複合体は、例えば吸音性を有する排水管等、他の用途にも適用できる。また、上記の例は一例であり、例えば、各部材の長さ、発泡樹脂及び非発泡樹脂の配置などについては、自由に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本実施形態に係る金属樹脂複合体の、加熱前及び加熱後の状態を示しており、(a)は加熱前複合体を示す径方向断面概略図、(b)は加熱後の金属樹脂複合体を示す径方向断面概略図。
【図2】図1(a)のA−A’矢視図に相当する側面視概略図(外側の第2部材を省略している)。
【図3】図1における内側の第1部材の斜視概略図。
【図4】本実施形態に係る金属樹脂複合体の製造方法における、被覆工程経過後の状態を示す斜視概略図。
【図5】本実施形態に係る金属樹脂複合体の製造方法における、設置工程を説明するための斜視概略図。
【図6】本実施形態に係る金属樹脂複合体の製造方法における、設置工程経過後の状態を示す斜視概略図。
【図7】本実施形態に係る金属樹脂複合体の製造方法における、加熱工程経過後の金属樹脂複合体を示す斜視概略図。
【図8】第1変形例に係る金属樹脂複合体の加熱前複合体における径方向断面概略図。
【図9】第2変形例に係る金属樹脂複合体の加熱前複合体における径方向断面概略図。
【図10】第3変形例に係る金属樹脂複合体を示す斜視概略図。
【図11】第4変形例に係る金属樹脂複合体を示す斜視概略図。
【図12】第5、6変形例に係る金属樹脂複合体の加熱前複合体を示しており、(a)は、第5変形例に係る加熱前複合体の径方向断面概略図、(b)は、第6変形例に係る加熱前複合体の径方向断面概略図。
【図13】第7変形例に係る金属樹脂複合体の加熱前複合体における側面視概略図。
【図14】図13の隙間の大きさを説明するための参考例を示す参考図であり、(a)は加熱前の状態を示す概略図、(b)は、加熱後の状態を示す概略図。
【図15】参考例に係る金属樹脂複合体における加熱前及び加熱中(加熱直後)の状態を示しており、(a)は加熱前複合体を示す径方向断面概略図、(b)は加熱中(加熱直後)の金属樹脂複合体を示す径方向断面概略図。
【図16】参考例に係る金属樹脂複合体において、加熱後であって図15(b)からさらに時間が経過した後の状態(第1パターン)を示す径方向断面概略図。
【図17】参考例に係る金属樹脂複合体において、加熱後であって図15(b)からさらに時間が経過した後の状態(第2パターン)を示す径方向断面概略図。
【図18】第11変形例に係る金属樹脂複合体の、加熱前及び加熱後の状態を示しており、(a)は加熱前複合体を示す径方向断面概略図、(b)は加熱後の金属樹脂複合体を示す径方向断面概略図。
【図19】第12変形例に係る金属樹脂複合体の、加熱前及び加熱後の状態を示しており、(a)は加熱前複合体を示す径方向断面概略図、(b)は加熱後の金属樹脂複合体を示す径方向断面概略図。
【図20】第13変形例に係る金属樹脂複合体の、加熱前及び加熱後の状態を示しており、(a)は加熱前複合体を示す径方向断面概略図、(b)は加熱後の金属樹脂複合体を示す径方向断面概略図。
【符号の説明】
【0103】
1,301,401 金属樹脂複合体
1p,101p,201p,501p,601p 加熱前複合体
2,102,202,302,402,702 第1部材
2s,102s,202s,302s,402s,702s 外周面
2t,102t,202t 最下部の外周面
3,103,703 発泡樹脂
3h 発泡体
4,104,204,504,604 非発泡樹脂(非発泡材)
5,205,405 第2部材
5s,205s,405s 内周面
5t,205t 最下部の内周面
6,406 中間層
7a,7b,7c 接着剤層
8 支持部材(非発泡材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状又は棒状で且つ金属製の第1部材において、その外周面の少なくとも一部が、発泡樹脂及び非発泡材によって被覆された状態とする、一段階又は複数段階の被覆工程と、
前記第1部材を、金属製で且つ前記第1部材が内部に挿入可能となるように筒状に形成された第2部材の内部に対して挿入設置する設置工程と、
前記第1部材及び前記第2部材を、これらの軸方向が水平方向に沿うように配置した状態で、加熱により前記発泡樹脂を前記第1部材及び前記第2部材の間で発泡させる加熱工程と、を有することを特徴とする金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項2】
前記非発泡材は、非発泡樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程においては、前記非発泡材の少なくとも一部は、前記第1部材における最下部の外周面の少なくとも一部と、前記第2部材における最下部の内周面の少なくとも一部と、により上下方向に関して挟まれた状態となることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項4】
前記被覆工程において、前記第1部材の外周面の少なくとも一部は、前記第1部材と前記発泡樹脂との間に接着剤層が挟まれている状態で、前記発泡樹脂によって被覆された状態となることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項5】
前記被覆工程において、前記第1部材を被覆している前記発泡樹脂の表面にさらに接着剤層が被覆された状態となることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項6】
前記第2部材の内周面の少なくとも一部に接着剤層が被覆された状態とする接着剤層被覆工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項7】
前記被覆工程において、前記第1部材を被覆する前記発泡樹脂には、未発泡状態の発泡可能樹脂が含まれ、前記加熱工程においては、前記発泡可能樹脂の発泡を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項8】
前記第1部材は、円筒状又は丸棒状であり、
前記第2部材は、円筒状であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項9】
前記第1部材は、角筒状又は角棒状であり、前記第2部材は、角筒状であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項10】
前記発泡樹脂には、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレンのいずれかが含まれることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項11】
前記発泡樹脂には、酸変性ポリオレフィンが含まれることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の金属樹脂複合板の製造方法。
【請求項12】
前記発泡樹脂には、有機変性された薄片状無機質粉末が含まれることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の金属樹脂複合板の製造方法。
【請求項13】
金属製で且つ筒状又は棒状の第1部材と、
金属製で且つ前記第1部材が内部に挿入可能となるように筒状に形成された第2部材と中間層と、を有し、
前記第1部材は前記第2部材の内部に挿入配置され、且つ、前記中間層は前記第1部材の外側で且つ前記第2部材の内側に配置されており、
前記中間層は、前記第1部材が前記第2部材の内部に対して挿入設置され、且つ、前記第1部材の外周面の少なくとも一部が、発泡樹脂及び非発泡材によって被覆された状態であって前記第1部材及び前記第2部材の軸方向が水平方向に沿うように配置された状態において、加熱により前記発泡樹脂を前記第1部材及び前記第2部材の間で発泡させたものであることを特徴とする金属樹脂複合体。
【請求項14】
前記非発泡材は、非発泡樹脂であることを特徴とする請求項13に記載の金属樹脂複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−1005(P2009−1005A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122993(P2008−122993)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】