説明

金属水酸化物微粒子の製造方法

【課題】粉砕が不要で、粒径が小さく、単分散性に優れた透明性の高い金属水酸化物微粒子を容易に製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】金属水酸化物微粒子の製造方法は、金属塩、例えばマグネシウム塩の水溶液と水酸化物塩の水溶液を混合し、未結晶化状態の金属水酸化物粒子を析出する反応工程と、析出された未結晶化状態の金属水酸化物粒子を含む混合液から副生成塩を除去する精製工程と、精製工程を経て得られた未結晶化状態の金属水酸化物粒子を、表面処理剤でその表面を処理する表面処理工程と、表面処理された未結晶化状態の金属水酸化物粒子を水熱処理により結晶化する加熱工程と、を少なくとも有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属水酸化物微粒子の製造方法に関し、特に、水酸化マグネシウム微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子材料、熱可塑性樹脂が、電気電子機器部品、筐体用材料等の材料として、様々の分野に使用されている。高分子材料がテレビやパソコン等のOA機器の外装材に用いられる場合、安全性の観点から、高分子材料には難燃性が求められる。
【0003】
高分子材料に難燃性を付与する方法として、高分子材料に難燃剤を添加することが行なわれている。難燃剤の代表的なものとして、ハロゲン系、リン系、無機粒子系がある。しかしハロゲン系難燃剤については、燃焼時のハロゲンガス、黒煙の発生、焼却時のダイオキシンの発生等、環境面での問題が多い。またリン系難燃剤については、やはりホスフィンガスの発生等、環境面での問題があり、さらに価格の高さ、原材料であるリン鉱石の供給懸念等の問題がある。
【0004】
これに対し、無機粒子系難燃剤の代表である金属水酸化物、例えば水酸化マグネシウム微粒子については、無害であり、環境面での問題が少ない。さらには安価、原料資源豊富といった特徴もあり、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤それぞれの問題を解決できる。
【0005】
例えば、特許文献1は、中和により水酸化マグネシウムの共沈物を生成し、水熱反応により水酸化マグネシウム微粒子を生成し、水酸化マグネシウム微粒子を表面処理し、その後、濾過、水洗、乾燥、粉砕する水酸化マグネシウム粒子の製造方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−348574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方法では、水酸化マグネシウム粒子の共沈物を生成した後に、水熱反応を行なっている。共沈物を生成した際、副生成物として塩が生成される。副生成塩が存在すると、副生成塩の塩析の効果により水熱反応中に水酸化マグネシウム粒子の凝集・沈殿を生じる。そのため、水酸化マグネシウム粒子を作製するためには水熱反応後に粉砕工程が必要となる。分散のための粉砕工程は高い分散エネルギーを必要とする。粉砕工程を行なうことで、水酸化マグネシウム微粒子中に不純物が混入しやすくなる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、粉砕を必要とせず、凝集・沈殿が生じにくい金属水酸化物微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、金属水酸化物微粒子の製造方法であって、金属塩の水溶液と水酸化物塩の水溶液を混合し、未結晶化状態の金属水酸化物粒子を析出する反応工程と、析出された未結晶化状態の前記金属水酸化物粒子を含む混合液から副生成塩を除去する精製工程と、精製工程を経て得られた未結晶化状態の前記金属水酸化物粒子を、表面処理剤でその表面を処理する表面処理工程と、表面処理された未結晶化状態の前記金属水酸化物粒子を水熱処理により結晶化する加熱工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【0010】
塩析の原因となる副生成塩を反応工程後に除去しているので、金属水酸化物粒子が凝集・沈殿するのを防止できる。さらに、精製工程後に金属水酸化物粒子に表面処理を施しているので、金属水酸化物粒子の表面を安定化できる。これにより、水熱処理中に金属水酸化物粒子が凝集・成長するのを防止することができる。
【0011】
本発明の他の態様によると、好ましくは、前記金属塩がマグネシウム塩である。
【0012】
本発明の他の態様によると、好ましくは、前記精製工程後の前記副生成塩の濃度が0.05%以下、好ましくは0.01%以下である。副生成塩の濃度を上述の範囲とすることで、金属水酸化物粒子の凝集・沈殿をより確実に防止することができる。
【0013】
本発明の他の態様によると、好ましくは、前記反応工程において、2種類以上の流体をそれぞれ供給する複数の供給チャンネル、前記複数の供給チャンネルに接合された合流部、前記合流部に接続された排出チャネルを有するマイクロデバイスを用いて、前記複数の供給チャンネルのいくつかに前記金属塩の水溶液を供給し、前記複数の供給チャネルの他に前記水酸化物塩の水溶液を供給し、前記金属塩と前記水酸化物塩を前記合流部で混合させて、前記排出チャネルから混合液を排出することを含む。
【0014】
マイクロデバイスを利用することで、粒子径が小さく、単分散性に優れた金属水酸化物微粒子を得ることができる。
【0015】
本発明の他の態様によると、好ましくは、前記表面処理剤がシランカップリング剤である。シランカップリング剤は様々な官能基を選択できるからである。
【0016】
本発明の他の態様によると、好ましくは、前記表面処理工程において、前記シランカップリング剤が前記前記金属水酸化物粒子に対して0.1〜50重量%の範囲である。
【0017】
シランカップリング剤の添加量が0.1重量%未満であると、粒子の表面安定性が極端に低下し、前記加熱工程において凝集・成長が促進される。その結果、望ましい粒径・分散度の粒子を得られない場合がある。また、シランカップリング剤の添加量が50重量%より多いと、表面との反応に寄与しない余剰のシランカップリング剤分子が増える。この余剰分子の存在下で前記加熱工程を実施した場合、余剰分子同士が凝集し、この凝集体を介して粒子同士が凝集してしまうため、好ましくない。
【0018】
本発明の他の態様によると、好ましくは、前記加熱工程の後にさらに乾燥工程を有する。乾燥することで輸送コストの低減並びに、分散媒体の変更を容易にすることができる。
【0019】
本発明の他の態様によると、好ましくは、結晶化された前記金属水酸化物粒子が、0.01μm〜1μmの体積平均粒径(MV)を有し、体積平均粒径(MV)と個数平均粒径(MN)との比(MV/MN)が2.0以下である。体積平均粒径、及び体積平均粒径(MV)と個数平均粒径(MN)との比を上述の範囲とすることにより非常に透明性が高く、難燃性に優れた前記金属水酸化物微粒子とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、粉砕が不要で、粒径が小さく、単分散性に優れた透明性の高い金属水酸化物微粒子を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る金属水酸化物微粒子の製造方法フローの一例を示す概略図。
【図2】マイクロデバイスの構造を示す概略図。
【図3】実施例1で得られた水酸化マグネシウムのSEM像及び、水分散物の粒度分布データを示す。
【図4】実施例2で得られた水酸化マグネシウムのSEM像(A)及び、水分散物の粒度分布データ(B)を示す。
【図5】実施例3で得られた水酸化マグネシウムのSEM像(A)及び、水分散物の粒度分布データ(B)を示す。
【図6】実施例4で得られた水酸化マグネシウムのSEM像(A)及び、水分散物の粒度分布データ(B)を示す。
【図7】実施例5で得られた水酸化マグネシウムのSEM像(A)及び、水分散物の粒度分布データ(B)を示す。
【図8】比較例1で得られた水酸化マグネシウムのSEM像(A)及び、水分散物の粒度分布データ(B)を示す。
【図9】比較例2で得られた水酸化マグネシウムのSEM像(A)及び、水分散物の粒度分布データ(B)を示す。
【図10】比較例3で得られた水酸化マグネシウムのSEM像(A)及び、水分散物の粒度分布データ(B)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱することなく、多くの手法により変更を行なうことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。従って、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
【0023】
水酸化マグネシウム微粒子の製造方法を例に、以下実施形態について説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態の製造フローを示す。第1に、反応工程ではマグネシウム塩と水酸化物塩を混合し、未結晶化状態の水酸化マグネシウム粒子を析出する。次に、精製工程では、水酸化マグネシウム粒子を析出させた混合液から、副生成物である塩を除去する。これにより、塩析による水酸化マグネシウム粒子の凝集・沈殿を抑制する。次に、表面処理工程では、水酸化マグネシウム粒子の表面を表面処理剤で表面処理する。これにより、水酸化マグネシウム粒子の表面を安定化させることができる。次に、加熱工程では、未結晶化状態の水酸化マグネシウム粒子を水熱処理により結晶化させる。水酸化マグネシウム粒子はその表面に対し表面処理が施されているので、水熱処理中に水酸化マグネシウム粒子が凝集・成長することはない。最後に、必要に応じて乾燥工程を加熱処理後に行ってもよい。乾燥することにより水酸化マグネシウム粒子が輸送コストの低減並びに、分散媒体の変更を容易にとなる。
【0025】
次に、各工程についてより詳細に説明する。
【0026】
<反応工程>
例えば塩化マグネシウム(MgCl)のようなマグネシウム塩と、水酸化ナトリウム(NaOH)のような水酸化物塩をそれぞれ溶媒に予め溶解する。マグネシウム塩の水溶液と水酸化物塩の水溶液を混合し、水酸化マグネシウム粒子を析出する。
【0027】
反応工程で、例えば、特許第4339163号に記載されたマイクロデバイスを用いて混合・析出を実施することができる。図2は、マイクロデバイスの構造を示す概略図である。マイクロデバイス1は、2種以上の流体をそれぞれ供給することができる複数の供給チャネル2(2a、2b、2c、2d),3(3a、3b、3c、3d)と、複数の供給チャネル2,3に接続され、複数の供給チャネル2,3からの流体を混合するための合流部4と、合流部4に接続され、混合された流体を合流部4の外部に排出する排出チャネル5を有する。
【0028】
図2に示すマイクロデバイスを利用した反応について説明する。一の種類の流体を供給する供給チャネル2a、2b、2c、2dに塩化マグネシウム溶液を導入する。他の種類の液体を供給する供給チャネル3a、3b、3c、3dに水酸化ナトリウム溶液を導入する。塩化マグネシウム溶液と水酸化ナトリウム溶液とを合流部4で混合する。次いで、合流部4で混合された混合液を排出チャネル5へ排出する。排出チャンネル5内で反応が進み水酸化マグネシウムの析出が始まる。特に、図2に示すマイクロデバイス1を使用することにより、排出チャネル5内で一方向の流れ場を実現できる。これにより凝集が抑制される。
【0029】
なお、本実施形態において、マイクロデバイスの1例として図2に示すマイクロデバイスを使用した。本実施形態で用いるマイクロデバイスについては、特定の構造になんら限定されるものではない。
【0030】
本実施形態においてマグネシウム塩として塩化マグネシウム(MgCl)を使用した。本実施形態で用いるマグネシウム塩として、例えば、硝酸マグネシウム(Mg(NO)、硫酸マグネシウム(Mg(SO))等を使用することができる。
【0031】
本実施形態において水酸化物塩とし水酸化ナトリウム(NaOH)を使用した。本実施形態で用いる水酸化物塩として水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化アンモニウム(NHOH)等を使用することができる。
【0032】
<精製工程>
反応で発生する副生成物である塩(上述の反応では塩化ナトリウム(NaCl))を除去する。反応工程で析出する水酸化マグネシウム粒子は本質的に自己分散性を有する。しかしながら副生成塩が存在すると、副生成塩の塩析効果により水酸化マグネシウム粒子は凝集・沈殿を始める。反応直後に精製し副生成塩を除去することにより、水酸化マグネシウム粒子は、本来の自己分散性により、凝集を解し、溶媒に分散しやすくなる。
【0033】
精製の方法として、膜を使用した濾過法、遠心力を利用した沈降法、静電気力を利用した電気透析法等を採用することができる。精製工程では、副生成塩の濃度を、好ましくは、0.05%以下であり、より好ましくは0.01%以下まで除去する。副生成塩の濃度をこの範囲とすることで、水酸化マグネシウム粒子が凝集・沈殿するのを抑制することができる。
【0034】
<表面処理工程>
精製後の水酸化マグネシウム微粒子の表面を、高級脂肪酸、高級脂肪酸アルカリ金属塩、多価アルコール高級脂肪酸エステル、アニオン系界面活性剤、リン酸エステル、シランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、チタネートカップリング剤、オルガノシラン、オルガノシロキサン及びオルガノシラザンから選ばれる少なくとも1種の表面処理剤を用いて、表面処理する。表面処理を施すことで、水酸化マグネシウム微粒子の表面を安定化させることができる。
【0035】
処理剤と粒子との密着性の観点から、表面処理剤として、好ましくは、シランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、チタネートカップリング剤を使用する。特に、好ましくは、様々な官能基を選択できるので、シランカップリング剤を使用することである。
【0036】
表面処理剤は水酸化マグネシウム微粒子に対して、0.1〜50重量%の範囲、好ましくは0.5〜30重量%の範囲、より好ましくは2〜20重量%の範囲で処理することである。
【0037】
シランカップリング剤の添加量が0.1重量%未満であると、粒子の表面安定性が極端に低下し、前記加熱工程において凝集・成長が促進される。その結果、望ましい粒径・分散度の粒子を得られない場合がある。また、シランカップリング剤の添加量が50重量%より多いと、表面との反応に寄与しない余剰のシランカップリング剤分子が増える。この余剰分子の存在下で前記加熱工程を実施した場合、余剰分子同士が凝集し、この凝集体を介して粒子同士が凝集してしまうため、好ましくない。
【0038】
<加熱工程>
表面処理された水酸化マグネシウム粒子を水熱処理し、水酸化マグネシウム粒子の結晶化を促進する。これにより水酸化マグネシウム粒子が扁平化し、その比表面積が増加する。
【0039】
水酸化マグネシウム粒子の比評面積が増加すると、水酸化マグネシウム粒子を難燃剤として使用したときに難燃性の向上を期待できる。
【0040】
具体的には、表面処理された水酸化マグネシウム粒子を、オートクレーブ内において120℃以上で8時間以上水熱処理する。水熱処理は、好ましくは、少なくとも80℃以上で8時間以上行なわれる。
【0041】
本実施形態の方法によれば、高圧・高せん断のような高い分散エネルギーを与えないで水酸化マグネシウム粒子を製造することができる。また、微細で、溶媒中で個々の粒子が凝集なく分散している状態で容易に取り出すことができる。
【0042】
本実施形態の方法で作製された水酸化マグネシウム粒子は、体積平均粒径(MV)が0.01〜1μmの範囲で、体積平均粒径(MV)と数平均粒径(MV)の比(MV/MN)が2.0以下の特徴を有する。
【0043】
<乾燥工程>
乾燥工程については、一般的な乾燥方法を用いる事ができる。具体的には、加熱乾燥法、真空乾燥法、遠心乾燥、噴霧乾燥法、凍結乾燥法等の方法を用いることにより、金属水酸化物微粒子を乾燥することができる。特に、乾燥時に昇華により溶媒と粒子を分離できる凍結乾燥法を用いることにより、乾燥時の溶媒の表面張力を抑制できる。その結果、再分散性を向上することができる。
【0044】
[実施例1]
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0045】
<実施例1>
1モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液と6モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液とを準備した。それぞれの水溶液を200cc/min(MgCl2)と100cc/min(NaOH)の流量比で、マイクロデバイスにて温度90℃で混合させて、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。得られたスラリーを水洗で、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、凝集の無い水酸化マグネシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3−アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して10重量%加え、攪拌下、20〜25℃の室温の状態を30分保ち、粒子への表面処理を実施した。この後、更に攪拌下で120℃、2時間加熱し、乾燥した。図3は、実施例1で得られた水酸化マグネシウムのSEM像(A)及び、水分散物の粒度分布データ(B)を示す。
【0046】
<実施例2>
1モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液と6モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液とを準備した。それぞれの水溶液を200cc/min(MgCl2)と100cc/min(NaOH)の流量比で、マイクロデバイスにて20〜25℃の室温で混合させ、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。得られたスラリーを水洗で、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、凝集の無い水酸化マグネシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3−アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して10重量%加え、攪拌下、20〜25℃の室温の状態を30分保ち、粒子への表面処理を実施した。この後、更に攪拌下で120℃、2時間加熱し、乾燥した。図4は、実施例2で得られた水酸化マグネシウムのSEM像(A)及び、水分散物の粒度分布データ(B)を示す。
【0047】
<実施例3>
0.5モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液と3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液を準備した。それぞれの水溶液を200cc/min(MgCl2)と100cc/min(NaOH)の流量比で、マイクロデバイスにて20〜25℃の室温で混合させ、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、凝集の無い水酸化マグネシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3−アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して10重量%加え、攪拌下、20〜25℃の室温の状態を30分保ち、粒子への表面処理を実施した。この後、更に攪拌下で120℃、2時間加熱し、乾燥した。図5は、実施例3で得られた水酸化マグネシウムのSEM像(A)及び、水分散物の粒度分布データ(B)を示す。
【0048】
<実施例4>
0.5モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液と3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液を準備した。それぞれの水溶液を200cc/min(MgCl2)と100cc/min(NaOH)の流量比で、マイクロデバイスにて0〜25℃の室温で混合させ、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、凝集の無い水酸化マグネシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3−アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して1重量%加え、攪拌下、20〜25℃の室温の状態を30分保ち、粒子への表面処理を実施した。この後、更に攪拌下で120℃、2時間加熱し、乾燥した。図6は、実施例4で得られた水酸化マグネシウムのSEM像(A)及び、水分散物の粒度分布データ(B)を示す。
【0049】
<実施例5>
0.5モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液200ccと、3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液100ccを準備した。ビーカー内で攪拌された塩化マグネシウム水溶液中に、水酸化ナトリウム水溶液を内径0.8mmのノズルから100cc/minの速度で、20〜25℃の室温で滴下し、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、凝集の無い水酸化マグネシウム微粒子の水分散物を得た。得られた水分散物に、3−アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して10重量%加え、攪拌下、20〜25℃の室温の状態を30分保ち、粒子への表面処理を実施した。この後、更に攪拌下で120℃、2時間加熱し、乾燥した。図7は、実施例5で得られた水酸化マグネシウムのSEM像(A)及び、水分散物の粒度分布データ(B)を示す。
【0050】
<比較例1>
0.5モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液と3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液を準備した。それぞれの水溶液を200cc/min(MgCl2)と100cc/min(NaOH)の流量比で、マイクロデバイスにて20〜25℃の室温で混合させ、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。得られたスラリーを120℃、2時間加熱した。その後、水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、乾燥した。図8は、比較例1で得られた水酸化マグネシウムのSEM像(A)及び、水分散物の粒度分布データ(B)を示す。
【0051】
<比較例2>
0.5モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液と3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液を準備した。それぞれの水溶液を200cc/min(MgCl2)と100cc/min(NaOH)の流量比で、マイクロデバイスにて20〜25℃の室温で混合させ、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。得られたスラリーに、3−アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して10重量%加え、30分攪拌した後、攪拌下でさらに120℃、2時間加熱した。このスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行い、乾燥した。図9は、比較例2で得られた水酸化マグネシウムのSEM像(A)及び、水分散物の粒度分布データ(B)を示す。
【0052】
<比較例3>
0.5モル/Lに調整した塩化マグネシウム水溶液200ccと3モル/Lに調整した水酸化ナトリウム水溶液100ccを準備した。ビーカー内で攪拌された塩化マグネシウム水溶液中に、水酸化ナトリウム水溶液を内径0.8mmのノズルから100cc/minの速度で、20〜25℃の室温で滴下し、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。得られたスラリーを水洗にて、塩分濃度が0.00%になるまで精製を行った後、攪拌下で120℃、2時間加熱した。このスラリーに、3−アミノプロピルトリメトキシシランを水酸化マグネシウム粒子に対して10重量%加え、30分攪拌した後、乾燥した。図10は、比較例3で得られた水酸化マグネシウムのSEM像(A)及び、水分散物の粒度分布データ(B)を示す。
【0053】
<評価>
実施例1〜5は、図3〜7に示すように、粒子同士の凝集が殆ど無く、粒径が非常に小さく、粒度分布が単分散であるため、その分散体は非常に透明であった。
【0054】
一方、比較例1〜3は、図8〜10に示すように、粒子同士の凝集が激しく、結果として2次粒径が大きく、粒度分布が多分散であるため、その分散体は懸濁した物であった。
【符号の説明】
【0055】
1…マイクロデバイス、2,3…供給チャネル、4…合流部、5…排出チャネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属水酸化物微粒子の製造方法であって、
金属塩の水溶液と水酸化物塩の水溶液を混合し、未結晶化状態の金属水酸化物粒子を析出する反応工程と、
析出された未結晶化状態の前記金属水酸化物粒子を含む混合液から副生成塩を除去する精製工程と、
精製工程を経て得られた未結晶化状態の前記金属水酸化物粒子を、表面処理剤でその表面を処理する表面処理工程と、
表面処理された未結晶化状態の前記金属水酸化物粒子を水熱処理により結晶化する加熱工程と、
を少なくとも有する金属水酸化物微粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の金属水酸化物微粒子の製造方法であって、前記金属塩がマグネシウム塩である金属水酸化物微粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属水酸化物微粒子の製造方法であって、前記精製工程後の前記副生成塩の濃度が0.05%以下、好ましくは0.01%以下である金属水酸化物微粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の金属水酸化物微粒子の製造方法であって、前記反応工程において、2種類以上の流体をそれぞれ供給する複数の供給チャンネル、前記複数の供給チャンネルに接合された合流部、前記合流部に接続された排出チャネルを有するマイクロデバイスを用いて、前記複数の供給チャンネルのいくつかに前記金属塩の水溶液を供給し、前記複数の供給チャネルの他に前記水酸化物塩の水溶液を供給し、前記金属塩と前記水酸化物塩を前記合流部で混合させて、前記排出チャネルから混合液を排出することを含む金属水酸化物微粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の金属水酸化物微粒子の製造方法であって、前記表面処理剤がシランカップリング剤である金属水酸化物微粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の金属水酸化物微粒子の製造方法であって、前記表面処理工程において、前記シランカップリング剤が前記前記金属水酸化物粒子に対して0.1〜50重量%の範囲である金属水酸化物微粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の金属水酸化物微粒子の製造方法であって、前記加熱工程の後にさらに乾燥工程を有する金属水酸化物微粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の金属水酸化物微粒子の製造方法であって、結晶化された前記金属水酸化物粒子が、0.01μm〜1μmの体積平均粒径(MV)を有し、体積平均粒径(MV)と個数平均粒径(MN)との比(MV/MN)が2.0以下である金属水酸化物微粒子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−195384(P2011−195384A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64387(P2010−64387)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】