説明

金属空気電池及びその製造方法

【課題】本発明は、金属負極と空気極とを含む金属空気電池であって、前記金属負極は有機電解液を含み、前記空気極は水性電解液を含む金属空気電池とその製造方法に関する。
【解決手段】本発明による構造の金属空気電池は、正極と負極の電解液の混合を防止することができ、電池反応を活性化することができるため、高容量の電池製造が可能である。従って、正極における固体反応生成物の析出を防止することができ、水や酸素等は固体分離膜を通過することができず、負極の金属と反応する恐れがないため、電池安定性に優れ、充電時に、充電専用の正極を配置し、充電による空気極の腐食と劣化を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高容量で安定性に優れた金属空気電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、化石燃料の消費にともなう二酸化炭素排出量の増加や、原油価格の激しい変化などを理由に、自動車のエネルギー源をガソリンや軽油から電気エネルギーに転換することが注目されている。
【0003】
電気自動車の実用化はすでに一部進められており、長距離走行用の蓄電池としてのリチウムイオン電池の高性能化及び低コスト化が期待されている。しかし、現状のリチウムイオン電池では、電池容量に制約があるため長距離走行が困難であり、また、これにより大量の電池を自動車に搭載する必要があるため、車体価格が大幅に上昇するという問題があった。
【0004】
電気自動車の普及のためには、現在のレベルの約6〜7倍のエネルギー密度が必要となる。そこで、理論上、リチウムイオン電池よりもはるかに大きいエネルギー密度を有する金属空気電池が注目されている。この電池は、金属を負極活物質とし、空気中の酸素を正極活物質とする充/放電可能な電池を指している。正極の活物質である酸素は電池セルに含める必要がないため、理論上リチウムイオン電池よりも大きな容量を期待でき、自動車用電池としても研究されている。
【0005】
金属空気電池の放電時、金属と酸素が反応して金属酸化物(Metal Oxide)を生成する(Metal+O→Metal Oxide)収率によると、もっとも好ましい開放電圧は2.8V程度である。この場合、理論的に貯蔵できる単位重量あたりのエネルギーは、3000〜5000Wh/Kgであって、リチウムイオン二次電池の300Wh/Kgに比べると、非常に高い水準である。
【0006】
実際に酸素は空気から得られるため、宇宙/水中などの特別な場合を除き、蓄電池に貯蔵する必要がないため実効的な性能は更にあがる。参考に、リチウムイオン電池の放電容量は120〜150mAh/g、金属空気電池の放電容量は700〜3000mAh/gである。
【0007】
そのため、理論的に大容量化が可能であると予測される金属(Li)空気電池が次世代の大容量電池として注目されているが、今まで報告されたリチウム空気電池は、以下のような問題を有している。
【0008】
1)正極に固体の反応生成物(LiO)が蓄積することにより、分離膜の気孔(Pore)が詰まり、充/放電効率の低下及びショート(Short)の問題が存在した。
2)空気中の水分が金属リチウムと反応すると危険な水素ガスを発生する。
3)空気中の窒素が金属リチウムと反応して放電を妨害する懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−230981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、上記のような従来の金属空気電池の様々な問題を解決するためのものであって、本発明の目的は、高容量で、かつ充/放電効率の低下とショートの問題、及び水素ガスを発生させず、放電妨害などの問題のない金属空気電池を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記のような特徴を有する高容量の金属空気電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための本発明の金属空気電池は、金属負極と空気極(空気正極)とを含み、前記金属負極は有機電解液を含み、前記空気極は水性電解液を含むことを特徴とする。
【0012】
前記金属負極は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)及びこれらの合金からなる群から選ばれる1種以上であることができる。
【0013】
前記空気極は、貴金属、金属酸化物、及び有機金属錯体からなる群から選ばれる1種以上の触媒を含むことができる。
【0014】
前記貴金属は、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)から選ばれる1種以上であり、金属酸化物は、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)から選ばれる1種以上であり、有機金属錯体は、金属ポルフィリン及び金属フタロシアニンから選ばれる1種以上であることができる。
【0015】
前記有機電解液及び水性電解液は、リチウム含有化合物を電解質塩として含むことができる。
【0016】
前記リチウム含有化合物は、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOCF、LiN(SO、CFSOLi、LIC(SOCF、LiAsF、LiSbF、LiI、LiCFCO、LiPF(C、LiF(C、LiF(CF、LiPF(C、LiPF(CF、LiPF(C)、及びLiPF(CF)からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0017】
前記有機電解液の溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチルジオキソラン、スルホラン(sulfolane)、γ‐ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、酢酸エチル、酢酸メチル、酪酸メチル、及びプロピオン酸エチルからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0018】
前記水性電解液は、pH10〜12.5のアルカリ性電解液が好ましい。
【0019】
前記有機電解液と水性電解液との間には、分離膜を含むことが好ましい。
【0020】
前記分離膜は、金属負極を構成する金属イオンのみを通過させる固体分離膜が好ましい。
【0021】
前記固体分離膜は、シリコン(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、及びマグネシウム(Mg)からなる群から選ばれる1種以上の金属からなる固体無機分離膜であることができる。
【0022】
前記分離膜は、電解液に反応性のない有機高分子/無機物の複合分離膜であることができる。
【0023】
前記分離膜が電解液に反応性のない有機高分子/無機物の複合分離膜である場合、前記有機高分子は、重量平均分子量100,000〜5,000,000の酸素(‐O‐)原子を含む有機高分子化合物が好ましい。
【0024】
前記有機高分子化合物は、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリオキシメチレン及びこれらの誘導体の中から選ばれる1種以上であることができる。
【0025】
また、前記有機高分子/無機物複合分離膜の前記無機物は、シリコン(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、及びマグネシウム(Mg)からなる群から選ばれる1種以上であることができる。
【0026】
本発明はまた、前記他の課題を解決するために、金属負極を製造する段階と、空気極を製造する段階と、前記金属負極と空気極との間に固体分離膜を形成する段階と、前記金属負極に有機電解液を含浸させる段階と、前記空気極に水性電解液を含浸させる段階とを含む金属空気電池の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、金属負極側には有機電解液を使用し、正極の空気極側には水溶性電解液を使用し、前記負極の有機電解液と空気極の水溶性電解液との間に負極の金属イオンのみを通過させる固体分離膜を用いる構造を有する。
【0028】
従って、本発明による金属空気電池は、正極と負極の各電解液の混合を防止することができ、電池反応を活性化することができるため、高容量電池の製造が可能である。
【0029】
また、正極における固体反応生成物の析出を防止することができる効果を有する。
【0030】
また、正極活物質として用いられる水や酸素などは、固体分離膜を通過できないため、負極の金属と反応する恐れがなく、電池安全性を高める効果を有する。
【0031】
また、本発明は、充電時、充電専用の正極を配置することにより、充電による空気極の腐食と劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態による負極、正極、及び電解液の構造である。
【図2】本発明の一実施形態による電池の構造である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0034】
本発明の金属空気電池は、金属負極と空気極を含む金属空気電池であり、前記金属負極は有機電解液を含み、前記空気極は水性電解液を含むことを特徴とする。また、前記金属負極の有機電解液と空気極の水性電解液との間には分離膜を含む。
【0035】
このような構造は、添付の図1に示したとおりである。
【0036】
本発明の負極10は、負極集電体11上に1種以上の金属を活物質として含む活物質スラリーを塗布した活物質層12を含む。
【0037】
負極活物質は、金属イオンを吸蔵したり放出可能なものであれば、特に限定されず、前記金属イオンの具体例としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)及びこれらの合金からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0038】
前記負極活物質が塗布される負極集電体は、導電性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、銅、ニッケル、及びこれらの合金などを用いることができる。また、その厚さは、10〜300μm程度が好ましい。前記集電体としては、前記のような金属箔だけでなく、エッチングされた金属箔、エキスパンドメタル、パンチメタル、網、発泡体などのように前/裏面に貫通孔を有したものを用いても良い。
【0039】
また、本発明の正極20は、正極集電体21に空気を活物質とし、これに触媒及びその他の添加剤を含むスラリーを塗布した活物質層22を含む。
【0040】
前記正極集電体21は、耐腐食性に優れ、金属に比べ軽量である多孔性炭素材料が好ましく、例えば、炭素繊維、活性炭材料などを用いることができる。正極集電体21は、外部の酸素が円滑に拡散できるように多孔質構造を有することがより好ましい。多孔質構造は、特に限定されず、10〜40%の気孔率を有することが好ましい。
【0041】
本発明による金属空気電池は、正極活物質として酸素を用いるため、前記正極集電体21が金属空気電池のケース(外装材)の機能を共に行っても良い。
【0042】
外部の酸素を活物質として用いるために、別途の多孔膜を設けて酸素の流入を円滑にすることもでき、別途の酸素供給装置を設けることもできる。
【0043】
本発明の空気極は、酸素を正極活物質として用いることにあたり、前記酸素の反応を促進させるための触媒を含むことが好ましい。
【0044】
前記触媒の具体例としては、貴金属、金属酸化物、及び有機金属錯体からなる群から選ばれる1種以上が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0045】
前記貴金属は、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)から選ばれる1種以上であり、金属酸化物は、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)から選ばれる1種以上であり、有機金属錯体は、金属ポルフィリン及び金属フタロシアニンから選ばれる1種以上であることができる。
【0046】
前記触媒の含量は、空気極の全体構成中1〜10重量%であることが好ましい。1重量%未満の場合、触媒の役割を期待することが困難であり、10重量%を超える場合、分散度が低下し、コストの問題があるため、好ましくない。
【0047】
また、前記触媒の他にも、導電性材料及びバインダーなどをさらに含むこともでき、これは、通常の二次電池及び金属空気電池に用いられるものであれば、いかなるものでも使用することができ、その含量もまた通常の水準で含まれることができる。
【0048】
一方、本発明は、金属負極と空気極に相違する電解液を含むことを特徴とし、具体的には、添付の図1のように、前記金属負極には有機電解液を、空気極には水性電解液を含ませる。勿論、前記有機電解液と水性電解液との間には、分離膜30で絶縁させた構造を有する。
【0049】
本発明で空気極に水性電解液を用いる場合、外部から流入された酸素(O)が四つの電子と反応するようになるため、有機電解液の場合よりその反応性が向上するという効果を有する。従って、正極と負極に、同一の非水電解液を用いるよりは、本発明のように相違した電解液を用いることが電池の容量を増大させることができる。
【0050】
また、金属空気電池の場合、通常、正極活物質として用いられる酸素内には窒素(N)などの成分を含んでいるため、前記窒素は負極金属と反応し、負極が崩壊するという問題があった。
【0051】
しかし、本発明は、正極と負極が相違する電解液を含むとともに、これを固体分離膜で絶縁させる構造を有することにより、正極活物質として用いられる水や酸素などは固体分離膜を通過できないため、負極の金属と反応する恐れがなく、電池安全性を高めることができる。
【0052】
また、充電時、充電専用の正極を配置することにより、充電による空気極の腐食と劣化を防止することができる。
【0053】
前記金属負極と空気極に用いられる有機電解液及び水性電解液は、リチウム含有化合物を電解質塩として含むことができ、前記リチウム含有化合物は、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOCF、LiN(SO、CFSOLi、LIC(SOCF、LiAsF、LiSbF、LiI、LiCFCO、LiPF(C、LiF(C、LiF(CF、LiPF(C、LiPF(CF、LiPF(C)、及び LiPF(CF)からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0054】
前記有機電解液の溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチルジオキソラン、スルホラン(sulfolane)、γ‐ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、酢酸エチル、酢酸メチル、酪酸メチル、及びプロピオン酸エチルからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、このうち、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)を全溶媒中50重量%以上含有させることが、多様な温度特性を有する点において好ましい。
【0055】
また、前記空気極に用いられる水性電解液は、pH10〜12.5のアルカリ性電解液が好ましく、例えば、KOH、NaOHなどのアルカリ性水性電解液が好ましい。
【0056】
前記有機電解液と水性電解液との間に用いられる分離膜は、金属負極を構成する金属イオンのみを通過させる固体分離膜が好ましい。前記固体分離膜は、金属イオンのみを通過させ、その他のものは全て遮断する。その結果、両電解液の混合を防ぎ、正極側に固体生成物が生じることを効果的に防止することができる。
【0057】
前記固体分離膜は、シリコン(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、及びマグネシウム(Mg)からなる群から選ばれる1種以上の金属からなる固体の無機分離膜であることができる。
【0058】
また、前記分離膜は、電解液に反応性のない有機高分子/無機物複合分離膜を用いることもできる。前記分離膜が電解液に反応性のない有機高分子/無機物複合分離膜である場合、有機高分子は、重量平均分子量100,000〜5,000,000の酸素(‐O‐)原子を含む有機高分子化合物であることができる。例えば、ポリエチレンエーテル系化合物として、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリオキシメチレン及びこれらの誘導体から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0059】
前記有機高分子は、固体電解質膜として用いることができれば、特に制限されないが、重量平均分子量100,000〜5,000,000、好ましくは、500,000〜5,000,000、最も好ましくは1,000,000〜4,000,000程度のものである。
【0060】
また、前記有機高分子/無機物複合分離膜の前記無機物は、シリコン(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、及びマグネシウム(Mg)からなる群から選ばれる1種以上であることができる。このうち、シリコン、チタン及びジルコニウムの金属酸化物がより好ましく、製造が容易で、低コストであるという点において、シリコン酸化物(SiO)が最も好ましい。
【0061】
本発明に用いられる電池ケースは、前記水性電解液を含む空気極、有機電解液を含む金属負極、及び非水電解質が収納できれば、特に限定されず、例えば、コイン型、平板型、円筒状、ラミネート型など全てが可能である。
【0062】
また、本発明の電池ケースは、大気中に開放された形態も、密閉された形態も可能である。密閉型電池ケースの場合、密閉型電池ケース内に空気の供給管及び排出管を設けることが好ましい。この場合、供給/排出する気体は、酸素濃度の高いものが好ましく、純酸素であることがより好ましい。また、放電時には酸素濃度を高め、充電時には酸素濃度を低めることが好ましい。
【0063】
以下、本発明による金属空気電池の製造方法を説明する。
【0064】
先ず、負極側には、金属アルミニウムに有機電解液を用い、正極側には、空気に水溶性電解液を用いることを基本とする。負極側の有機電解液と正極側の水溶性電解液との間に、金属イオンのみを通過させる固体電解質を分離膜の用途として用いれば、両電解液の混合を防止することができ、高容量のアルミニウム空気電池の構造が完成される。
【0065】
上記のような構造において、各正極と負極では、以下の式1、2のような反応が起こり、全反応は以下の式3のとおりである。
【0066】
[式1]
正極:3/2O+3HO+6e→6OH
[式2]
負極:2Al+6OH→ Al+3HO+3e
[式3]
全反応:2Al+3/2O→Al(2.71V)
【0067】
また、本発明による金属空気電池の充/放電の反応式は以下のとおりである。
先ず、放電時の電極反応は以下のとおりである。
1)負極での反応:Al→Al3++3e
金属イオンがアルミニウム(Al3+)として有機電解液に溶解し、電子は導線に供給される。溶解されたアルミニウム(Al3+)は固体分離膜を通過して正極の水性電解液に移動する。
2)正極での反応:3/2O+3HO+6e→6OH
導線から電子が供給され、微細化カーボンの表面で空気中の酸素と水が反応して水素イオン(OH)が生じる。前記水素イオンは、酸素正極水溶性電解液のアルミニウム(Al3+)と接触して水溶性の水酸化アルミニウム(AlOH)となる。
【0068】
また、充電時の電極における反応は、以下のとおりである。
1)負極での反応:Al+3e→Al3+
導線から電子が供給され、アルミニウム(Al3+)は正極の水性電解液から固体分離膜を通過して負極表面に達し、そこで金属リチウムの析出反応が起こる。
2)正極での反応:4OH→O+2HO+4e
酸素発生反応が生じ、発生した電子は導線に供給される。
【0069】
上記のように、金属負極側に有機電解液を、空気極側に水溶性電解液を配置し、その間を固体分離膜で分離させた。前記固体分離膜は、負極金属イオンのみを通過させ、その他は全て遮断する。その結果、正極と負極の電解液の混合を防ぎ、従来のように、正極側に固体生成物が生じることを遮断することができる。また、正極側の水溶性電解液には水溶性の水酸化金属が生じ、これは放電後、正極側の電解液をろ過(Filtering)の方法で再生できる効果を有する。
【0070】
本発明による金属空気電池は、自動車用電池の用途、固定型電源の用途、家庭用電源の用途などとして用いられることができ、特に自動車用電池として非常に多様に用いられる。例えば、自動車用スタンドで、正極の水溶性電解液を入れ替え、負極側の金属アルミニウムをカセットなどの方式で普及すれば、自動車は充電の待ち時間なく連続走行できる。
【0071】
また、本発明による金属空気電池は、一次、二次電池に全て使用できるが、充電にかかる時間と費用及び容量を考慮すると、充電せずに負極だけを入れ替えて使用する一次電池がより好ましいと言える。
【0072】
以下、本発明による金属空気電池を以下の実施形態により具体的に説明するが、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。
【0073】
[実施形態]
実施形態1
本実施形態においては、アルミニウム空気電池を製造し、セルの製作は全て露点が−60℃以下であるアルゴングローブボックスの中で行われ、添付の図2の構造を有する金属空気電池を製造した。
【0074】
まず、電池ケースとしてリチウム金属を用いた。負極のケース13としてリチウム金属を配置し、前記リチウム金属上に、負極集電体11上にアルミニウム金属を活物質層12として含む負極10を形成した。
【0075】
前記負極10上にSiO固体分離膜30を形成し、前記固体分離膜30の上部に正極20を形成した。前記正極は、空気の酸化反応をさらに誘導できる多孔質炭素に酸素触媒剤としてMnOを混合した形態の活物質層22を含む。また、正極ケース23としてリチウム金属を配置した後、外部の酸素が流入され得る開放型電池ケースを有するように前記正極ケース23の一部に多孔膜14を形成した。
【0076】
前記アルミニウム負極10には、有機電解液15である1.2MLiPF/EC:PC:EMC(3:1:4)を、空気極20には、1.2M NaOHの水溶液電解液25(pH11)を注入した。
【0077】
[実験例]
実験例:放電容量測定
前記アルミニウム空気電池を空気中で0.1A/gの放電レートで放電すると、放電容量は、約2000mAh/gに測定された。
【符号の説明】
【0078】
10 負極
11 負極集電体
12 負極活物質層
13 負極ケース
14 多孔膜
15 有機電解液
20 正極
21 正極集電体
22 正極活物質層
23 正極ケース
25 水性電解液
30 分離膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属負極と空気極とを含む金属空気電池であって、
前記金属負極は有機電解液を含み、前記空気極は水性電解液を含む金属空気電池。
【請求項2】
前記金属負極は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)及びこれらの合金からなる群から選ばれる1種以上である請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項3】
前記空気極は、貴金属、金属酸化物、及び有機金属錯体からなる群から選ばれる1種以上の触媒を含む請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項4】
前記貴金属は、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)から選ばれる1種以上であり、金属酸化物は、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)から選ばれる1種以上であり、有機金属錯体は、金属ポルフィリン及び金属フタロシアニンから選ばれる1種以上である請求項3に記載の金属空気電池。
【請求項5】
前記有機電解液及び水性電解液は、リチウム含有化合物を電解質塩として含む請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項6】
前記リチウム含有化合物は、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOCF、LiN(SO、CFSOLi、LIC(SOCF、LiAsF、LiSbF、LiI、LiCFCO、LiPF(C、LiF(C、LiF(CF、LiPF(C、LiPF(CF、LiPF(C)、及びLiPF(CF)からなる群から選ばれる1種以上である請求項5に記載の金属空気電池。
【請求項7】
前記有機電解液は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチルジオキソラン、スルホラン(sulfolane)、γ‐ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、酢酸エチル、酢酸メチル、酪酸メチル、及びプロピオン酸エチルからなる群から選ばれる1種以上の溶媒を含む請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項8】
前記水性電解液は、pH10〜12.5のアルカリ性電解液である請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項9】
前記有機電解液と水性電解液との間には、分離膜を含む請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項10】
前記分離膜は、金属負極を構成する金属イオンのみを通過させる固体分離膜である請求項9に記載の金属空気電池。
【請求項11】
前記固体分離膜は、シリコン(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、及びマグネシウム(Mg)からなる群から選ばれる1種以上の金属からなる固体無機分離膜である請求項10に記載の金属空気電池。
【請求項12】
前記分離膜は、電解液に反応性のない有機高分子/無機物の複合分離膜である請求項9に記載の金属空気電池。
【請求項13】
前記有機高分子は、重量平均分子量100,000〜5,000,000の酸素(‐O‐)原子を含む有機高分子化合物である請求項12に記載の金属空気電池。
【請求項14】
前記有機高分子化合物は、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリオキシメチレン及びこれらの誘導体から選ばれる1種以上である請求項13に記載の金属空気電池。
【請求項15】
前記無機物は、シリコン(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、及びマグネシウム(Mg)からなる群から選ばれる1種以上である請求項13に記載の金属空気電池。
【請求項16】
金属負極を製造する段階と、
空気極を製造する段階と、
前記金属負極と空気極との間に固体分離膜を形成する段階と、
前記金属負極に有機電解液を含浸させる段階と、
前記空気極に水性電解液を含浸させる段階と、を含む金属空気電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−227119(P2012−227119A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−10859(P2012−10859)
【出願日】平成24年1月23日(2012.1.23)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】