説明

金属箔の加工歪矯正装置及び加工歪矯正方法

【課題】微細孔加工を行った金属箔の反りを矯正する金属箔の加工歪矯正装置及び加工歪矯正方法を提供する。
【解決手段】微細孔加工を行った金属箔50を、エンボス加工凸部11が形成されたエンボス加工用成形ロール10及び受けロール20にて挟み、受けロール20上の金属箔50をエンボス加工用成形ロール10にてロール間の管理された隙間にて押圧することで、エンボス加工凸部11によって金属箔50にエンボス加工を施し圧延ユニット130、131により圧延する
エンボス加工凸部11は微細孔加工を行う微細孔成形ロール70に形成した微細孔加工凸部71の配列と、実質的に異なるような配列とすることで、金属箔50に生じた反りを矯正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池・キャパシター等に用いられる集電体電極箔として用いられる、多数の微細孔が成形される金属箔において、その微細孔成形時に生じた加工反り等の歪みを平坦化して取り除くための金属箔の加工歪矯正装置及び加工歪矯正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マルチメディア技術の急速な発展に伴い、携帯用の電子機器に使用され、更にここにきて加速度的に変化している電気自動車(EV)を始め地球規模での代替エネルギーとして二次電池の小型軽量化及び高性能化の要請が待ったなしで求められている。
【0003】
リチウム電池では、主に電極活物質の開発がエネルギー密度向上とコストダウンを目的に精力的に行われているが、これら正負活物質各々は、その集電体である正極のアルミニウム箔及び負極の銅箔表面との密着性が悪く局部的な剥離現象を生じやすいという問題を抱え、特許文献1にて金属集電体に連通した孔がこの剥離現象による電極性能低下を顕著に改善している。
【0004】
また、孔明け箔の製造方法としては、従来、凹凸の金型を用いたプレス加工によって孔を形成する方法(パンチング)や、エッチング等の化学処理によって箔の材料の一部を溶かして孔を形成する方法が用いられている。
【0005】
例えば、特許文献2においては、打抜き穴を有する金型と弾性体との間に金属箔を挟持してロール間を通過させることにより、弾性体を加圧して金属箔を金型の打抜き穴内に変形させて金属箔に穴を形成する方法であって、金型及び弾性体は夫々ロールの外周長より十分に大きい長さの環状体からなり、金型及び弾性体を回転移動させる穴明き箔の製造方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献3においては、加工が容易であり、加工コストの低減が図れ、加工時にバリが発生したり破れたりするのを防止でき、強度のある多孔金属箔シートの製造方法であり、厚さ50μm以下の金属箔シートに紫外線硬化型,熱剥離型又は水溶性粘着テープをラミネートし、次に紫外線硬化型粘着テープと金属箔シートにパンチング加工によって開孔率が25%以上となる多数の小孔を均一に穿孔し、次いで粘着テープに粘着力を喪失させて当該粘着テープを金属箔シートから剥離させることを特徴とする多孔金属箔シートの成形方法が開示されている。
【0007】
更に、特許文献4においては、集電体箔の開口率を大きくすると共に、薄い集電体箔に多数の小孔を形成することができる二次電池の電極用集電体箔の成形方法および成形装置であって、多数の凸部を有するエンボスロールと凹凸を有しない平ロールとの間に、無孔の集電体箔を弾性ベルトと重ね合わせて通過させ、凸部によって押圧される集電体箔の箇所に貫通孔を形成すると共に貫通孔の形成時に発生する抜きカスを弾性ベルトに埋め込み、その弾性ベルトに埋め込まれた抜きカスは、ロール通過後に弾性ベルトから除去するようにした箔の成形方法および成形装置が開示されている。
【0008】
更に、特許文献5においては、コスト高を招くことなく、穴の大きさやピッチ等の自由度が大きい穴明き箔を効率的に製造することが可能な穴明き箔の製造方法であり、ベース板の上に弾性体を金属箔を載置し、溝付きロールを弾性体側に押し込むと、弾性体が変形し、金属箔がロールの溝内に押し込まれ、溝の縁と弾性体により金属箔の剪断加工が行われ、ロールの突起部で弾性体に押し付けられた金属箔の部分は、抜きカスとなり、穴が形成された穴明き箔が得られる方法が開示されている。同様に、特許文献6においては、形成された4角形の孔の周縁のリブにクラックを発生させることのない孔あき箔の製造方法であり、ロール装置の一方のロールを構成する加工ロールの表面に形成された菱形凸部において、2組の対向する頂点のうちの一方の組の対向する頂点をロール回転方向に沿って配置し、他方の組の対向する頂点をロール軸方向に沿って配置するとともに、一方の組の頂点間の間隔を他方の組の頂点間の間隔より長く設定するものが開示されている。
【0009】
また、上記各特許文献の微細孔を有する金属箔の成形を行う場合に、バリ状の加工カエリや完全に孔が形成されないハーフカットが生じる虞があり、そこに金属箔の加工屑が引っかかるなどする虞があったが、本願出願人はこれを特許文献7に示す技術によって解消することに成功している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平7−70327号公報
【特許文献2】特許第3666558号
【特許文献3】特開2001−79795号公報
【特許文献4】特開2002−216775号公報
【特許文献5】特開2001−1007号公報
【特許文献6】特開2002−113535号公報
【特許文献7】特開2010−005709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特に、上記のような構成のロール成形による金属箔の微細孔加工においては、金属箔表面と裏面との伸び率が相違するために、その加工終了後の金属箔に幅方向にその断面から見て加工カエリを外弧とした円弧状の反りが生じることがあった。このように反りがある状態で金属箔を巻き取ると、反りが原因となってシワやヨレ・巻きずれができ、製品とする際に活物質が均一に塗布できず、金属箔が露出する不具合が生じ、組込することで金属箔同士が接触し、集電体としての機能を損なうという製品として重大な欠陥が生じる虞がある。
【0012】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、多数の微細孔が成形された金属箔において、その微細孔成形時に生じた加工反りを取り除いて平坦化する金属箔の加工歪矯正装置及び加工歪矯正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の金属箔の加工歪矯正装置は、コイル状に巻いた長尺の金属箔を巻き戻して、該長尺金属箔を微細孔成形ロールと受けロールの間に挟み込んで該微細孔成形ロール面側から加工して金属箔に多数の微細な孔を成形し、微細孔成形後に圧延加工にて加工カエリを処理した長尺金属箔を再度コイル状に巻き取る金属箔の微細孔ロール成形装置において、前記微細孔成形ロールの後段に、前記微細孔成形加工の方向と反対の方向即ち加工による加工カエリの方向からエンボス加工するエンボス加工手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項1の構成によれば、金属箔に微細孔を成形することにより生じる加工歪によって生じる反りを、エンボス加工を行うことによって矯正し平坦化することができる。
【0015】
請求項2記載の金属箔の加工歪矯正装置は、請求項1記載の金属箔の加工歪矯正装置において、前記金属箔の前記微細孔成形ロール表面には多数の微細孔成形凸部を形成し、前記エンボス加工手段には多数のエンボス加工凸部を形成しており、前記エンボス加工手段に形成したエンボス加工凸部の単位面積当たりの数は、前記微細孔成形ロール表面に形成した微細孔成形凸部の単位面積当たりの数と実質的に同一であることを特徴とする。
【0016】
請求項2の構成によれば、微細孔成形凸部によって形成される金属箔の微細孔の面積と実質的に同じく金属箔に形成されるエンボスの数を、金属箔の表面に占める割合を単位面積当たりで比較して略同一とし、それにより微細孔成形による金属箔の延び量とエンボス加工の際に生じる金属箔の延び量を反対方向に実質的に同一とすることで、金属箔全体の表裏の延び量を均一にすることができる。
【0017】
請求項3記載の金属箔の加工歪矯正装置は、請求項2記載の金属箔の加工歪矯正装置において、前記エンボス加工手段に形成したエンボス加工凸部によるエンボス加工の位置を、前記微細孔成形ロール表面に形成した微細孔成形凸部による加工の位置と実質的に相違した位置となるように配置したことを特徴とする。
【0018】
請求項3の構成によれば、金属箔に成形される微細孔部の間隙にエンボス加工をすることで、微細孔された残部にエンボス加工をすることで平坦化加工が適正に行われる。
【0019】
請求項4記載の金属箔の加工歪矯正装置は、請求項1乃至3の内の1の請求項記載の金属箔の加工歪矯正装置において、前記エンボス加工手段は、前記エンボス加工用の微細孔成形凸部がロール表面に形成されたエンボス加工ロールであることを特徴とする。
【0020】
請求項4の構成によれば、微細孔成形凸部を設けた微細孔成形ロールによる金属箔の微細孔成形加工に続いて、エンボス加工凸部を設けたエンボス加工手段をロールにて構成し、各々の工程でロール間に金属箔を挟み、通過させることで微細孔加工及び反りの矯正加工のエンボス加工を行うことが可能となる。
【0021】
請求項5記載の金属箔の加工歪矯正装置は、請求項1乃至4の内の1の請求項記載の金属箔の加工歪矯正装置において、前記エンボス加工手段の後段に、金属箔を圧延加工する圧延手段を備えたことを特徴とする。
【0022】
請求項5の構成によれば、エンボス加工後に更に金属箔を圧延加工することで、より確実に金属箔の反り返りを矯正することができる。
【0023】
請求項6記載の金属箔の加工歪矯正方法は、コイル状に巻いた長尺の金属箔を巻き戻して、該長尺金属箔を微細孔成形ロールと受けロールの間に挟み込んで該微細孔成形ロール面側から加工して金属箔に多数の微細な孔を成形した後に、微細孔成形後の長尺金属箔を再度コイル状に巻き取る金属箔の微細孔ロール成形方法において、前記微細孔成形ロールの後に、エンボス加工手段により前記成形加工と反対の方向即ち加工による加工カエリの方向からエンボス加工することを特徴とする。
【0024】
請求項6の構成によれば、微細孔成形の際に押圧された側と反対側から金属箔を押圧してエンボス加工を行うことで、より効果的に金属箔の反り返りを矯正することができる。
【0025】
請求項7記載の金属箔の加工歪矯正方法は、請求項6記載の金属箔の加工歪矯正方法において、前記エンボス加工の後に、圧延手段により前記金属箔を圧延加工することを特徴とする。
【0026】
請求項7の構成によれば、エンボス加工によって金属箔の反り返りを矯正した後に残る微小な反りを、エンボス加工後の圧延加工によって更に矯正することができる。
【発明の効果】
【0027】
上記のような金属箔の加工歪矯正装置及び加工歪矯正方法によれば、金属箔の微細孔成形によって生じる金属箔の反り返りを矯正し、平坦とすることで、加工後において、金属箔をシワやヨレを発生させずに再度巻き直すことが可能となり、電極としてより品質の良い平坦な微細孔を形成した集電体金属箔の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例の金属箔の加工歪矯正装置の構成図である。
【図2】本発明の実施例の金属箔の加工歪矯正装置の微細孔成形部の詳細構成図である。
【図3】本発明の実施例の金属箔の加工歪矯正装置であり、(a)は成形ロールでのエンボス加工を行う加工歪矯正装置、(b)は往復動プレスでのエンボス加工を行う加工歪矯正装置を示す側面図である。
【図4】(a)は微細孔成形ロールの微細孔成形凸部の配列、(b)はエンボス加工用成形ロールエンボス加工凸部の配列を示す展開平面図である。
【図5】本発明の実施例の金属箔の加工歪矯正装置の各工程における金属箔の反りの状態を示す断面図であり、(a)は微細加工直後、(b)は第1の圧延加工後、(c)はエンボス加工後、(d)は第2の圧延加工後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態としての実施例を図1から図5を参照して説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反さない範囲で、実施例において説明した以外のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【0030】
本発明の金属箔ロール成形装置を、金属箔の送り出しから巻き取りまでの全工程を図1に沿って説明する。
【0031】
本発明の金属箔ロール成形における前段の微細孔加工については、本発明者による前記特開2010−005709号公報に記載された発明と同様の構成を備えるものであるが、図2を参照しながら簡単に説明する。金属箔ロール成形装置の微細孔加工は、二次電池等電子部品の電極用集電体として金属箔に多数の微細孔を幾何学的に搾設配列させるもので、更に説明すれば、機械加工技術等で形成された多数の微細突起71(300〜600μmφ)が幾何学的に等間隔で配置されている金属製の微細孔成形ロール70、及び、これと同期して回転するゴム製の受けロール80によってアルミニウムや銅等の金属箔50に微細孔を空けるのである。この際、ゴム製の受けロール80は、金属製の微細孔成形ロール70に対して、所定のロール間の管理された隙間での押圧力で加圧されて転動している。
【0032】
これにより、金属箔50に微細の孔が成形され、その際に300〜600μmφで厚み10〜100μm程の抜き屑21が発生する。この抜き屑21の多くは、受けロール80であるゴムロールに伴われて金属箔50から分離されるが、一部金属箔50に同伴される抜き屑21は、受けロール80の下流側に配置されたブラシロール100により掻き落とされる。このようにして、抜き屑21と微細な金属粉を受けロール80であるゴムロールで分離し、分離しきれない抜き屑21等は、2軸のモータ駆動機構(図示なし)等を微細孔成形ロール70の円周上に追加配置することにより掻き落とすことができる。さらに、微細孔成形ロール70の微細突起71に付着した粉塵等を排除するために、成型ロール70の金属箔50の導入部よりも回転方向で上流側にブラシロール110を設けることにより、微細孔成形ロール70の微細突起71から粉塵を直接的に掻き落とすことができる。
【0033】
前段に上述した金属箔の微細孔加工工程を備えた図1の金属箔ロール成形・歪矯正装置においては、リール状金属箔60から長尺金属箔50が矢印方向に送り出され、導入ロール110によって、微細孔成形ロール70と、ゴム製の第1の受けロール80の間に挟み込まれ、微細孔成形ロール70表面の凸状切刃型(図2の71)によって多数の微小孔が成形される。凸状切刃型の形状は、特に限定されるものではないが、一般的には円筒形の頂部が切り歯となった構成が選択される。図1では図示しない抜き屑(図2の21)の多くは第1の受けロール80の表面上に捕捉され、第1の受けロール80の回転により微小孔成形加工後の金属箔50からは分離される。第1の受けロール80表面のゴムに付着した抜き屑は、下流に設けられた払い落としブラシロール89,89によって払い落とされる。微細孔成形ロール70と第1の受けロール80の間での第1の微細孔成形加工動作の後も、金属箔50は微細孔成形ロール70に巻き付けられたままで回転移送され、ゴム製の第2の受けロール90によって、第2の微細孔成形加工動作を受けることになる。ここで、第1の成形加工動作によっては完全に抜かれていない不完全加工部分、即ち、ハーフカットや、バリ状の微小高さの「カエリ」の間に挟まり固定されている抜き屑(図2の21)等が、第2の微細孔成形加工動作によって完全に抜き加工されることになる。しかし、第2の微細孔成形加工動作領域においても、金属箔50から抜かれた僅かな抜き屑21(図2)は第2の受けロール90の表面のゴムに付着し、下流に設けられた払い落としブラシロール99によって払い落とされる。
【0034】
以上によっても、なお、成形加工後の金属箔50に同伴する抜き屑21や粉塵等は、抜き屑排除ユニット100(ブラシロール)により除去される。以上により抜き屑や粉塵等が除去された金属箔50は、成形加工領域から出た後に、導出ロール110により方向転換され、当該微細孔抜き加工により発生した金属箔50の反りやバリ51(図3)を圧延ユニッット120、121(圧延ロールセット)により圧延し、バリを平坦化して箔厚を微細孔ロール成形加工前の箔厚に近いレベルにする。この微細孔抜き加工後の圧延ユニッット120、121による成形金属箔の平坦化工程は、その後のエンボス加工をより有効なものとするが、必須の工程というものではない。
【0035】
このように、微細孔加工後に圧延加工を行った金属箔50であっても、従来の加工においては図5の(a)または(b)に示すように、僅かながら弧状に反ってしまう傾向があった。この状態にて「巻取り」を行うと、金属箔50に皺などの歪みが発生する虞がある。また、この僅かな反り返りが最終製品の電気的特性に悪影響を及ぼすこともあった。そこで本発明においては、金属箔50の微細孔加工後にエンボス加工を行うことにより反りを矯正しようとするものである。具体的には、エンボス加工は、微細孔加工後の金属箔をエンボス加工用成形ロール10とゴム製の受けロール20との間に挟みこみ、金属箔50を押圧することでエンボス加工用成形ロール10表面の突起部の形状が金属箔表面に押圧加工される。
【0036】
微細孔加工後にエンボス加工が施された金属箔50は、その材質によっては上述の微細孔加工の際と同様に厚み方向の変形により箔厚が増す虞がある。そこで再度圧延ユニット130,131によって圧延を行うことで、エンボス加工で金属箔の厚み方向に箔厚を所定厚まで薄くし、実質的な反りの矯正を実現する。従ってこの圧延ユニット130,131による圧延工程については、必須の工程であり金属箔50の材質に関らず省略することは不可能である。
【0037】
加工完成箔の「巻取り」直前までも、万が一にも金属箔50に抜き加工微粉が同伴して来る場合には、その排除の目的でエアー除塵ユニット140及びクリーニング機能付き除塵ローラユニット150を備えることが可能である。勿論、設けないことも可能であるし、もっと前段に設けることも可能である。エアー除塵ユニット140は、その詳細は同一出願人による特開2010−005709号公報に開示されているものと同様の構成を設けることが可能であり、エアーの噴出し穴(ここでは図示せず)と、それの対称位置に同じくエアー吸引穴(ここでは図示せず)との間を微細孔加工後の金属箔50が移動する構成のユニットである。また金属箔50が移動する部分には、箔表面に接触する位置に長方形に囲った柔らかいブラシ(ここでは図示せず)を配置し、微粉末を金属箔50の表面より剥離させる機能を備えている。これにより、微粉末は剥離されエアー集塵することが可能となる。
【0038】
図1におけるエンボス加工手段たるエンボス加工ロール10及び受けロール20について、図3に基づいて説明する。図3(a)に示すように、エンボス加工用成形ロール10には多数のエンボス加工凸部11が形成されており、エンボス加工用成形ロール10と受けロール20で微細孔加工後の金属箔50を挟み込み、回転することでエンボス加工凸部11が金属箔50を受けロール20に押圧し、エンボス加工を行う。また、別の構成として、図3(b)に示すように、往復動するエンボス加工用成形金型30にはエンボス加工凸部31が形成されており、エンボス加工用成形金型30と受け金型40で微細孔加工後の金属箔50を挟み込み、成形金型30を昇降させることでエンボス加工凸部31が金属箔50を受け金型20に押圧し、エンボス加工を行う。この場合は、金属箔の送りが間欠的になる。
【0039】
図3は、本発明の微細孔加工・歪矯正装置1の機能を説明するための側面図でもある。金属箔50は、図3(a)の下流に設置された図示しない微細孔成形ロール及び圧延ロールによって極小の孔部(微細孔部52)が形成された後、エンボス加工手段(エンボス加工用成形ロール10またはエンボス加工用成形金型30)に搬送される。金属箔50には、微細孔成形ロール70により、多数の微細孔部52が形成されることで、微細孔部52の周囲には加工バリ51が生じる。これにより、金属箔50は図3の面に対して垂直方向に反ることになる。その金属箔50のバリ51を平坦化するために図1に示す圧延工程(圧延ロール120,121)によって抜きバリ51を除去する工程を設けることも有効である。しかし、この圧延工程を経たとしても、金属箔50の断面形状に弧状の歪が残ってしまう場合がある。そこで、さらにこの弧状に歪んだ金属箔50をエンボス加工用成形ロール10及び受けロール20によって挟み込み、エンボス加工を行い、歪の除去前加工を行う。尚、このエンボス加工は、図3(b)に示すように、往復動プレスによるエンボス加工を行うとしてもよく、その際は、金属箔50を間欠的に所定の長さ分搬送し、プレス受け40の上部の受けゴム41に載せられた金属箔50の上からエンボス加工用成形プレス30を下降させ、エンボス加工用成形プレス30の下面に形成されたエンボス加工凸部31によって金属箔50を押圧成形することで金属箔50をエンボス加工するという手順を繰り返し行うこととする。
【0040】
次に、図4に基づいて、微細孔加工成形ロール70に形成された微細孔成形凸部71の配列とエンボス加工用成形ロール10に形成された突起11(エンボス成形凸部)の配列の関係について説明する。図4(a)は、微細加工孔加工成形ロール70に形成された微細孔成形凸部71の配列を示しており、図4(b)は、エンボス加工成形ロール10もしくはエンボス加工用プレス30に形成されたエンボス加工凸部11(31)の配列を示している。微細孔成形凸部71の配列は、金属箔50の進行方向においてピッチaにて配列され、金属箔50の幅方向においてピッチbにて配列されている。これに対してエンボス加工凸部11(31)は、丁度90度回転させたように、金属箔50の進行方向においてピッチbにて配列され、金属箔50の幅方向においてピッチaにて配列されている。これによって、微細孔成形凸部71によって成形された微細孔51でない部分を、エンボス加工凸部11(31)によってエンボス加工することが可能で、かつ、その加工の数も同一にすることが可能であり、それによって金属箔の反り及び歪みの平坦化を図ることができるものである。
【0041】
次に、金属箔50の微細孔成形工程後に第1の圧延工程を行い、第1の圧延工程後にエンボス矯正工程を行い、さらにエンボス矯正工程後に第2の圧延工程を行った際の金属箔の断面形状について図5に基づいて説明する。図5(a)は、微細孔成形後の金属箔50の断面を示している。微細孔52形成の際、金属箔50は図5(a)の上方から微細孔成形加工凸部が押圧されて微細孔52が穿設されるため、金属箔50は下方に反ってしまい、更にバリ状の加工カエリ51が形成されてしまう。この図5(a)の金属箔50を、圧延ロールによって圧延を行うことにより、図5(b)に示すように、加工カエリ51を除去することができる。その際、圧延加工の圧力によって金属箔50が反対に反ることがある。さらに、この反りを矯正するために、エンボス加工用成形ロール10及び受けロール20によって金属箔50にエンボス加工を行う。図5(c)は、図5(b)に示す金属箔50にエンボス加工を施した状態を示している。金属箔50に形成された微細孔52の間隙にエンボス加工を行うことで、金属箔50全体に生じた反りを平坦に矯正することができる。
【0042】
金属箔50の材質によっては、図5(c)のようなエンボス加工を行ったとしても反りが取り除き切れない場合もある。そこでエンボス加工工程の後に再度圧延工程(例えば図1における圧延ロール130,131)を設けることで金属箔の厚み方向に箔厚を所定厚まで薄くし、実質的な反りの矯正を実施し、より精度の高い金属箔50の平坦化を図ることができより精度の高い金属箔50の平坦化を図ることができる。
【0043】
以上説明した通り、本発明の加工屑・微粉・塵を排除した微細孔加工を施した金属箔の加工歪矯正装置及び加工歪矯正方法によれば、構造が単純な金型と弾性体のロール間の管理された隙間にて加圧することで金属箔の孔を形成しているので、コストをやすく抑え、しかもロール成型法であるために高速な連続加工工法が可能であり、更には、今後の金属箔を用いた集電体電極用途のトレンドである「薄い箔への微細孔加工」に対しては微細凸形状の金型により、全面加工や幅方向両側端面に未加工部が残るパターンについても微細孔の安定した生産性の高い、加工屑・微粉・塵を含まない、加工カエリ等もない、厚みも均一で、更に金属箔の反りを矯正した平坦な理想的な集電体金属箔を市場に提供することが可能になる。
【0044】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば図4において、微細孔成形凸部の配列とエンボス加工凸部の配列の関係の一例を示したが、これに限定せず、各々で実質的に異なる配置を適宜選択して実施しても何ら問題ない。
【符号の説明】
【0045】
1 加工歪矯正装置
10 エンボス加工用成形ロール
11 エンボス加工用成形凸部
20 受けロール
30 エンボス加工用成形プレス30
31 エンボス加工用成形凸部
40 プレス受け
41 受けゴム
50 金属箔
51 加工カエリ(バリ)
52 微細孔
53 エンボス加工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状に巻いた長尺の金属箔を巻き戻して、該長尺金属箔を微細孔成形ロールと受けロールの間に挟み込んで該微細孔成形ロール面側から加工して金属箔に多数の微細な孔を成形し、微細孔成形後に圧延加工にて加工カエリを処理した長尺金属箔を再度コイル状に巻き取る金属箔の微細孔ロール成形装置において、
前記微細孔成形ロールの後段に、前記微細孔成形加工の方向と反対の方向からエンボス加工するエンボス加工手段を備えたことを特徴とする金属箔の加工歪矯正装置。
【請求項2】
前記金属箔の前記微細孔成形ロール表面には多数の微細孔成形凸部を形成し、前記エンボス加工手段には多数のエンボス加工凸部を形成しており、前記エンボス加工手段に形成したエンボス加工凸部の単位面積当たりの数は、前記微細孔成形ロール表面に形成した微細孔成形凸部の単位面積当たりの数と実質的に同一であることを特徴とする請求項1記載の金属箔の加工歪矯正装置。
【請求項3】
前記エンボス加工手段に形成したエンボス加工凸部によるエンボス加工の位置を、前記微細孔成形ロール表面に形成した微細孔成形凸部による加工の位置と実質的に相違した位置となるように配置したことを特徴とする請求項2記載の金属箔の加工歪矯正装置。
【請求項4】
前記エンボス加工手段は、前記エンボス加工凸部がロール表面に形成されたエンボス加工ロールであることを特徴とする請求項1乃至3の内の1の請求項記載の金属箔の加工歪矯正装置。
【請求項5】
前記エンボス加工手段の後段に、金属箔を圧延加工する圧延手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4の内の1の請求項記載の金属箔の加工歪矯正装置。
【請求項6】
コイル状に巻いた長尺の金属箔を巻き戻して、該長尺金属箔を微細孔成形ロールと受けロールの間に挟み込んで該微細孔成形ロール面側から加工して金属箔に多数の微細な孔を成形した後に、微細孔成形後の長尺金属箔を再度コイル状に巻き取る金属箔の微細孔ロール成形方法において、
前記微細孔成形ロールの後に、エンボス加工手段により前記成形加工と反対の方向からエンボス加工することを特徴とする金属箔の加工歪矯正方法。
【請求項7】
前記エンボス加工の後に、圧延手段により前記金属箔を圧延加工することを特徴とする請求項6記載の金属箔の加工歪矯正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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