説明

金属管及びその連繋接続方法

【課題】連結対象の一方の管路端に他管が密挿される鞘管部3を設け、他方端(挿入部2)に係止突部21を形成し、前記鞘管部3の内周面に係止突部が係合する凹条部31並びに前記凹条部に係止突部が進出可能とする開口切欠部33を形成し、鞘管部内にリングシールを装着して他管挿入部を鞘管部に挿入・回動して管路構成をなす金属管の配管路構築において、前記の連繋接続作業を容易にする。
【解決手段】 鞘管部形成側に端部近傍外周における開口切欠部を基準とした所定位置と、係止突部形成側の係止突部21より後方外周面における係止突部を基準とした所定位置とに、連結操作用突起4を突設し、前記連結操作用突起4に適宜な器具を装着して連繋接続作業を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道配管路やガス配管路を構築するのに使用する金属管及びその連繋接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の配管路は、その用途に応じて適宜な管径並びに長さの金属管を適宜連結して所望の管路を構築しているものである。一般的な接続手法としては、各金属管の端縁近傍に管を一周する浅い凹条を形成しておき、その脚部が前記凹条に係合する継手を用いているものである。
【0003】
具体的には、この継手は、リング状シール(ゴム製)と、シールの外周に位置せしめてなる2個の半月状の締付けリング(金属製)と、締付けリングの内径を小さくする方に作用する締付ボルトで構成されており、連結しようとする隣接管の端面を正確に一致せしめ隣接する両管にまたがってリング状シールを嵌挿すると共に、締付けボルトの操作で金属リングを締付け、締付け金属リングでシールを強圧し、締付け金属リングの脚を凹条に係合してなるものである。
【0004】
前記の接続連結手段は、シールによる密閉作業も同時に行わなければならず、必ずしも作業能率上優れているとは言い難い。そこで本件出願人は、先に連結対象の一方の管路端に他方の連結対象管が密挿される鞘管部を設け、他方の挿入する連結対象管(挿入管部)の端部近傍に係止突部を形成すると共に、前記鞘管部の端部近傍内周面に、前記係止突部が係合する凹条部並びに前記凹条部に係止突部が進出可能とする開口切欠部を形成し、係止突部が凹条部に位置した際に、挿入管部外周面と鞘管部内周面とを密封するリングシールを鞘管部に内装し、前記鞘管部に係止突部の凹条部からの離脱を防止する離脱防止機構を付設した管路接続構造を提案した(特許文献1,2)。
【0005】
また前記の管路の構築作業を効率的に実施する工具として、前記挿入管部の挟持機構を備えた抱持部と、鞘管部分を管軸方向全体及び半周以内を密着被覆すると共に、鞘管部外周を摺動可能な形状とした摺動部とを、管軸方向で抱持部と摺動部の間隔を調整できる作動杆で連結し、抱持部又は摺動部に作動杆の動作機構を設けてなる構造のものを提案した(特許文献3)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−250492号公報。
【特許文献2】特開2003−176883号公報。
【特許文献3】特開2005−279905号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記した管接続構造を採用し、且つ前記の連結用工具を使用した場合には、連結作業が迅速且つ容易に実施できるが、更により以上連結作業を迅速化することが要望されていた。また連結用工具自体が複雑な構造で、その製造コストが掛かり過ぎるという問題もあり、また当該工具は一定の形状の管の専用工具となってしまうという問題もある。
【0008】
そこで本発明は、簡単な連結工具で、管路の組上げ・分解が迅速に且つ容易に行うことのできるように、連結操作の補助となる構成を備えた新規な金属管並びに管路構築のための管連繋接続方法を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る金属管は、所定の長さ及び管径を備えた管本体の一端部に、当該管自体が密挿される鞘管部を設け、他方端近傍外周に係止突部を形成し、前記鞘管部の内周面に、前記係止突部が係合する係合凹条部と、係合凹条部奥方に設けたシール収納凹条部とを形成すると共に、鞘管部開口端に、係止突部が開口端から係止凹条部へ進出を可能とする開口切欠部を形成し、前記鞘管部形成側の端部近傍外周における開口切欠部を基準とした所定位置と、係止突部形成側の係止突部より後方外周面における係止突部を基準とした所定位置とに、連結操作用突起を突設してなることを特徴とするものである。
【0010】
また本発明に係る金属管の連繋接続方法は、前記の金属管を連繋接続して所定の配管路を構築するに際して、連繋接続対象となる隣接両管を、鞘管部側端と係止突部側端とが向き合い、且つ両管の連結操作用突起が管軸方向で一致する位置とし、両管の連結操作用突起に装着して両管を接近させる挿入操作用器具を用いて、係止突部側の管端部分を鞘管部に挿入し、しかる後隣接管の各連結操作用突起に装着したレバー器具で、管軸方向を中心に相対的な回動操作を行ってなることを特徴とするものである。
【0011】
而して前記管を連結するには、シール収納凹条部に予め所定のリングシールを装着し、当該管の鞘管部に隣接管の係止突部形成側端部(挿入部)を挿入し、挿入後連結した管を、管軸中心線を中心として相対的に回動させて、係止突部を係止凹部内に位置させることで、隣接管は互いに連結されるもので、前記の挿入操作並びに回動操作に際して、操作用突起に装着して隣接管の突起を接近させる挿入操作用器具と、挿入後に前記突起に装着し隣接管を相対的な回動操作を行うレバー器具の使用によって、挿入・引き抜き操作と回動操作を行うものである。
【0012】
勿論本発明方法によらず(器具を使用せずに)、操作用突起が手で把持できる形状及び大きさであれば、手作業による連結・分離も実施することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の金属管は、上記構成を採用したことによって、管の操作基点となる操作用突起を利用することによって、簡易な工具を使用して隣接管の挿入部を他方の鞘管部への差し入れ、更に回動させるという管の連繋接続による管路形成作業を能率的に行うことができ、また特に管路分解作業も伴なう仮設配管の構築に最適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明の実施の形態について説明する。実施形態に示した金属管は、所定の厚さを備え、適宜長さ及び管径を備えたステンレス鋼管で形成した本管部(管本体)1の一方端に挿入部2を溶接連結し、他方端に鞘管部3を溶接連結したものであり、更に両端近傍に連結操作用突起4を設けたものである。
【0015】
挿入部2は、外径を本管部1と一致させ、本管部1より厚い筒体で、本管部1の端縁に溶着して本管部1と一体化したものである。また外周所定位置(後述する開口切欠部位置と45°ずれた位置)に於いて管直径方向の180°対向する2個所に、外周面における円周方向に添って適宜幅及び適宜長さの係止突部21設けてなる。
【0016】
鞘管部3は、挿入部2が密挿される内周面を備え、本管部1の他端に直接溶接して連結固定したもので、内周面に係合凹条部31と、シール収納凹条部32とを設け、係合凹条部31の開口端側の一部を切欠して開口切欠部33を形成したものである。
【0017】
係合凹条部31は、前記係止突部21と対応する幅及び深さに形成したもので、係止突部21が係合凹条部31内に位置することによって、係止を実現するようにしたものである。
【0018】
シール収納凹条部32は、係合凹条部31の奥方に設けたもので、本金属管を使用して管路を構築するに際して、前記シール収納凹条部32にリングシールBを内装するものである。
【0019】
開口切欠部33は、係合凹条部31の開口端側の一部を、係止突部21と対応する位置及び大きさに切欠して形成したもので、係止突部21を係合凹条部31に侵入できるようにしたものである。
【0020】
連結操作用突起4は、後述する連結工具Cが適切に使用できる大きさとし、本管部1の両端近傍に設けたもので、挿入部2側においては、係止突部21を基準とし、鞘管部3側においては、開口切欠部33を基準にして設けたもので、当管A1に次管A2を連結接続する際に、係止突部21の位置と開口切欠部33を管軸方向で一直線上合致させた際に、各管A1,A2の連結操作用突起4も管軸方向で一直線上合致するように設けたもので、図示例は、係止突部21と開口切欠部33の形成位置の外周軸線上に設けてなる。
【0021】
而して前記の金属管を連続して繋ぎ合わせて所定の配管路を形成するもので、前記の配管路形成には、図3に示す連結工具Cを使用する(本発明方法)。この連結工具Cは、挿入操作用器具及びレバー器具を兼ねるものである。
【0022】
連結工具Cは、端部を互いに枢結した操作杆51と作動杆52を備え、操作杆51及び作動杆52に、前記連結操作用突起4に被冠装着される装着部(第一装着部53a,第二装着部53b,第三装着部53c)を付設したもので、第一装着部53aは、枢結軸54の軸方向と平行な軸方向で、且つ軸方向を基準とした表面側で、作動杆52の先端に設け、第二装着部53bは、操作杆51における枢結軸54から適宜離れた位置に第一装着部53aと同一方向に設け、第三装着部53cは、操作杆51の端部(枢結軸54と反対側)に、杆軸方向に設けたものである。
【0023】
また付属部品として、装着体Dを備えたもので、装着体Dは、断面コの字状に形成して、開口切欠部33を満たし且つ開口切欠部33に隣接する係合凹条部31をも満たすと共に、係合凹条部31と鞘管部外周面部を自己の弾性で挟持するようにしたもので、金属製や樹脂製としたものである。
【0024】
次に前記連結工具Cを使用しての配管路の構築について説明する。配管路は、本管を連繋して構築されるもので、当管A1に連続して次管A2を連繋接続するには、従前の連繋手段と同様に当管A1の鞘管部3側端に次官A2の係止突部21側端を挿入し、管軸方向を中心に管A1,A2を相対的な回動操作を行うものである。
【0025】
特に本発明においては、金属管に連結操作用突起4を設け、これを利用した点に特徴があり、連繋接続に際しては、当管A1と次管A2の連結操作用突起4が管軸方向で一致する位置で向き合わせる(図4)。この状態で係止突部21開口切欠部33と向き合うことになり、当管A1と次管A2とは管軸中心に45°ずれた状態となっている。
【0026】
前記状態で連結工具Cの第一装着部53aと第二装着部53bを各管A1,A2の連結操作用突起4に被冠装着し、操作杆51を、第二装着部53bを中心として回動操作すると、次管A2は当管A1に引き込まれ、次管A2の係止突部21は当管A1の係止凹条部31に位置することになる(図5→図6)。
【0027】
次に連結工具Cを外して第三装着部53cを各連結操作用突起4に装着すると、操作杆51が管軸方向と直交する方向に突出して装着されることになるので、操作杆51を回動方向に操作すると管A1,A2は相対的に回動(45°捻じる)することにより、係止突起21が開口切欠部33より外れて係止凹条部31に位置し、管A1,A2の連繋接続がなされるものである。
【0028】
また連繋接続後に空所となる開口切欠部33に、装着体Dを装着すると、装着体Dは、開口切欠部33及び開口切欠部33と連続する係止凹条部31とを塞ぎ、挿入した次管A2が回動して、係止突部21が開口切欠部33から抜け出るのが防止されるものである。特に45°の捻じりによって装着体Dの位置は管路全体において一直線上に位置することになる。
【0029】
本金属管で仮設配管路を構築した場合における管路分解においては、管の連繋接続順の逆順の作業で容易に且つ迅速に分解取外しを行うことができるものである。
【0030】
尚前記した連結工具Cは、挿入操作用器具とレバー器具とを兼ねるようにしたものであるが、別々の独立した器具を使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態の金属管の一部省略した断面図。
【図2】同要部斜視図。
【図3】同連結工具の斜視図。
【図4】同管の連繋接続過程の説明図(挿入前)。
【図5】同管の連繋接続過程の説明図(挿入操作)。
【図6】同管の連繋接続過程の説明図(挿入後状態)。
【図7】同管の連繋接続過程の説明図(回動操作)。
【図8】同管の連繋接続過程の説明図(断面図:挿入後状態)。
【図9】同管の連繋接続過程の説明図(断面図:挿入後の係止状態)。
【図10】同管の連繋接続過程の説明図(断面図:挿入後の開口切欠部位置の状態)。
【符号の説明】
【0032】
A1,A2 管
1 本管部
2 挿入部
21 係止突部
3 鞘管部
31 係合凹条部
32 シール収納凹条部
33 開口切欠部
4 連結操作用突起
B リンクグシール
C 連結工具
51 操作杆
52 作動杆
53a 第一装着部
53b 第二装着部
53c 第三装着部
54 枢結軸
D 装着体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の長さ及び管径を備えた管本体の一端部に、当該管自体が密挿される鞘管部を設け、他方端近傍外周に係止突部を形成し、前記鞘管部の内周面に、前記係止突部が係合する係合凹条部と、係合凹条部奥方に設けたシール収納凹条部とを形成すると共に、鞘管部開口端に、係止突部が開口端から係止凹条部へ進出を可能とする開口切欠部を形成し、前記鞘管部形成側の端部近傍外周における開口切欠部を基準とした所定位置と、係止突部形成側の係止突部より後方外周面における係止突部を基準とした所定位置とに、連結操作用突起を突設してなることを特徴とする金属管。
【請求項2】
管両端部分に設ける連結操作用突起を、180度対向する管直径方向に設けてなる請求項1記載の金属管。
【請求項3】
開口部に着脱可能とした閉塞体を装着してなる請求項1又は2記載の金属管。
【請求項4】
請求項1又は2記載の金属管を連繋接続して所定の配管路を構築するに際して、連繋接続対象となる隣接両管を、鞘管部側端と係止突部側端とが向き合い、且つ両管の連結操作用突起が管軸方向で一致する位置とし、両管の連結操作用突起に装着して両管を接近させる挿入操作用器具を用いて、係止突部側の管端部分を鞘管部に挿入し、しかる後隣接管の各連結操作用突起に装着したレバー器具で、管軸方向を中心に相対的な回動操作を行ってなることを特徴とする金属管の連繋接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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