説明

金属表面処理剤用レゾルシン変性水溶性フェノール樹脂及び金属表面処理剤

【課題】金属表面処理剤として用いた場合、硬化性及び金属との密着性に優れ、金属材料表面に耐食性を付与することができ、安定した塗膜を得ることができるレゾルシンによって変性された変性水溶性フェノール樹脂を提供するものである。
【解決手段】本発明は、レゾルシンによって変性されていることを特徴とする金属表面処理剤用変性水溶性フェノール樹脂であり、レゾルシンの変性量が1〜60重量%であることが好ましい。また、前記レゾルシン変性水溶性フェノール樹脂を含んでなる金属表面処理剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルシンによって変性された金属表面処理剤用水溶性変性フェノール樹脂及び金属表面処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属材料は、成形加工性及び使用環境下で長期間外観を保持するために、耐食性に優れていることが要求されている。金属材料の耐食性を向上する方法として、金属材料表面に6価クロムイオンを含有する樹脂皮膜を形成させることで、優れた耐食性を金属材料表面に付与することができる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、6価クロムイオンは、毒性が強く、人体に悪影響を及ぼすことが懸念されている。また、近年、環境問題への関心が高まり、6価クロムは、水質汚濁防止法の規制物質に該当することから、廃水処理にコストがかかる問題がある。
【0003】
このような問題を解決する手段として、水溶性樹脂を用いて金属材料表面に耐食性を付与する方法が知られている(例えば特許文献2)。
【0004】
しかし、このような従来の方法では、金属材料表面に、安定した塗膜を形成することが困難であり、また、金属材料表面と十分な密着性が得られないという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特許2097278号公報
【特許文献2】特開昭61−91369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、金属表面処理剤として用いた場合、硬化性及び金属との密着性に優れ、金属材料表面に優れた耐食性を付与することができ、安定した塗膜を得ることができるレゾルシンによって変性された変性水溶性フェノール樹脂を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(8)により達成される。
(1)金属表面処理剤用水溶性変性フェノール樹脂であって、レゾルシンによって変性されていることを特徴とする金属表面処理剤用レゾルシン変性水溶性フェノール樹脂。
(2)前記水溶性変性フェノール樹脂におけるレゾルシンの変性量が1〜60重量%である請求項1に記載の金属表面処理剤用変性水溶性フェノール樹脂。
(3)前記水溶性変性フェノール樹脂の未反応のホルムアルデヒドが1重量%以下である請求項1〜2に記載の金属表面処理剤用変性水溶性フェノール樹脂。
(4)前記水溶性変性フェノール樹脂の未反応のフェノールが1重量%以下である請求項1〜3に記載の金属表面処理剤用変性水溶性フェノール樹脂。
(5) レゾルシン変性水溶性フェノール樹脂を含んでなる金属表面処理剤。
(6) レゾルシン変性水溶性フェノール樹脂におけるレゾルシンの変性量が1〜60重量%である(5)に記載の金属表面処理剤。
(7) レゾルシン変性水溶性フェノール樹脂中の未反応のホルムアルデヒドが1重量%以下である(5)又は(6)に記載の金属表面処理剤。
(8) レゾルシン変性水溶性フェノール樹脂中の未反応のフェノールが1重量%以下である(5)〜(7)のいずれか1項に記載の金属表面処理剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属表面処理剤に、レゾルシンによって変性された変性水溶性フェノール樹脂を用いることにより、金属材料表面との密着性に優れ、金属に耐食性を付与することがで、安定した塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、レゾルシンによって変性されていることを特徴とする金属表面処理剤用変性水溶性フェノール樹脂及び該フェノール樹脂を用いた金属表面処理剤である。
【0010】
以下、本発明のレゾルシンによって変性された変性水溶性フェノール樹脂(以下、単に「変性フェノール樹脂」ということがある)について詳細に説明する。
【0011】
本発明の変性フェノール樹脂に用いるレゾルシンの変性量は、変性フェノール樹脂全体に対して、1〜60重量%であることが好ましく、2〜50重量%であることが特に好ましい。レゾルシンの変性量が前記下限値未満であると、金属表面処理剤として用いた場合、金属との密着性が不十分であり、十分な効果が得られない場合があり、前記上限値を超えるとゲル化物を生成する場合がある。
【0012】
次に、本発明の変性フェノール樹脂を製造する方法について説明する。
本発明の変性フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とレゾルシンとをアルカリ触媒下で反応させることにより得ることができる。
【0013】
反応に用いられるアルカリ触媒としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物、アンモニア水、トリエチルアミンなどの第3級アミン、炭酸ナトリウム、ヘキサメチレンテトラミンなどのアルカリ性物質などが上げられる。これらを単独または2種以上組合わせて使用することができる。これらの中でも、水溶性を発現させるためには、高分子量化を抑制することが出来るアルカリ金属の水酸化物、または、アルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物が好ましい。
上記アルカリ触媒の添加量は、特に限定されないが、フェノール類100重量部に対して、0.05〜8重量部の範囲が好ましく、特に1〜5重量部が好ましい。添加量が前記下限値より少ないと、反応が十分に進行しないことがあり、前記上限値を超える場合には、ゲル化物を生成するおそれがある。
【0014】
反応時に用いるフェノール類としては、特に限定されないが、例えば、フェノール、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、2、3−キシレノール、2、4−キシレノール、2、5−キシレノール、2、6−キシレノール、3、5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、イソブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クミルフェノール、アリルフェノール、カテコール、ハイドロキノン、1−ナフトール、2−ナフトール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。これらの中でも、経済的にも有利なフェノールが特に好ましい。
【0015】
反応時に用いるアルデヒド類としては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、パラヒドロキシベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、1−ナフチルアルデヒド、2−ナフチルアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒド類は単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの化合物の中でも、フェノール、オルソ置換フェノール類との反応性が優れ、工業的に大量生産され安価であるホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが好ましい。
【0016】
本発明の変性フェノール樹脂を得るために、フェノール類(P)とアルデヒド類(F)とのモル比(F/P)は、特に限定されないが、1.5〜4.5が好ましく、特に2.0〜3.5が好ましい。前記モル比が前記下限値未満であると未反応のフェノール類が多く残存する場合があり、前記上限値を超えると未反応のアルデヒド類が多く残存してしまう場合がある。
【0017】
これらの各成分を反応させる順序は特に限定されない。逐次行ってもよいし一括して行うこともできる。
【0018】
変性剤として用いるレゾルシンを反応させる順序は特に限定されない。フェノール類とアルデヒド類と一括して反応を行なってもよいし、フェノール類とアルデヒド類とを反応させた後、レゾルシンを反応させてもよい。
【0019】
反応は、必要に応じて、中和を行なっても良い。反応に使用する中和剤としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、ホウ酸、リン酸、亜リン酸などの無機酸類、蓚酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸、有機ホスホン酸などの有機酸類などが上げられる。これらを単独または2種以上組合わせて使用することができる。また、中和後のフェノール樹脂のpHは、6.0〜8.0(25℃)が好ましい。これ以外のpHでは、保管時の安定性が低下する恐れがある。
【0020】
中和後に未反応のホルムアルデヒドの低減を目的に、使用したホルムアルデヒドに対し5〜
90重量%の尿素、ジシアンジアミド、メラミンから選ばれた1種又は2種以上を添加し、反応せしめてもよい。この時、上記下限値未満であるとホルムアルデヒドの低減効果が少なく、上記上限値を超えると低温での貯蔵安定性が低下したり、金属表面処理剤として使用した際に、金属材料との密着性が低下する場合がある。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ここに記載されている「部」および「%」はすべて「重量部」および「重量%」を示し、本発明はこれら実施例により何ら制約されるものではない。
【0022】
(実施例1)攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応器に、フェノール500部、37%ホルマリン1290部、50%水酸化ナトリウム水溶液30部を仕込み、80℃で30分間反応を行なった。その後、60℃まで冷却を行い、レゾルシン20部を添加し、30分間
反応を行なった。反応後、ホウ酸14部、尿素150部を仕込み、30分間反応後、30℃以下まで冷却し、変性フェノール樹脂2004部を得た。
【0023】
(実施例2)攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応器に、フェノール500部、37%ホルマリン1290部、50%水酸化ナトリウム水溶液30部を仕込み、80℃で30分間反応を行なった。その後、60℃まで冷却を行い、レゾルシン40部を添加し、30分間
反応を行なった。反応後、ホウ酸14部、尿素150部を仕込み、30分間反応後、30℃以下まで冷却し、変性フェノール樹脂2024部を得た。
【0024】
(実施例3)攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応器に、フェノール500部、37%ホルマリン1290部、50%水酸化ナトリウム水溶液30部を仕込み、80℃で30分間反応を行なった。その後、60℃まで冷却を行い、レゾルシン400部を添加し、30分間
反応を行なった。反応後、ホウ酸14部、尿素150部を仕込み、30分間反応後、30℃以下まで冷却し、変性フェノール樹脂2384部を得た。
【0025】
(比較例1)攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応器に、フェノール500部、37%ホルマリン1290部、50%水酸化ナトリウム水溶液30部を仕込み、80℃で30分間反応を行なった。その後、60℃まで冷却を行い、30分間反応を行なった。反応後、ホウ酸14部、尿素100部を仕込み、30分間反応後、30℃以下まで冷却し、変性フェノール樹脂1934部を得た。
【0026】
(比較例2)攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応器に、フェノール500部、37%ホルマリン1290部、50%水酸化ナトリウム水溶液30部を仕込み、80℃で30分間反応を行なった。その後、60℃まで冷却を行い、30分間反応を行なった。反応後、ホウ酸14部、尿素150部を仕込み、30分間反応後、30℃以下まで冷却し、変性フェノール樹脂1984部を得た。
【0027】
実施例1〜4及び比較例1、2で得られた変性フェノール樹脂について、不揮発分、ゲル化時間、pH、未反応フェノール、未反応ホルムアルデヒド、水溶性、引張りせん断接着強さを表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
(測定方法)
1.不揮発分:JIS−K−6909に準ずる。
2.ゲル化時間:JIS−K−6910に準ずる。
3.未反応フェノール:ガスクロマトグラフィーにより測定した。
4.未反応ホルムアルデヒド:塩酸ヒドロキシルアミン法により測定した。
5.水溶性:ガラス製メスシリンダーに試料10mlを入れ、液温を25℃に調整しながら純水を沈殿、凝集物が発生するまで添加し、沈殿、凝集物の発生が確認された時点の液量を読みとり、下式に従い計算する。
水溶性(倍)= [沈殿、凝集物が発生した時点の液量(ml)―10(ml)]/10(ml)
6.引張りせん断接着強さ:JIS−K−6850に準ずる。
7.塗膜の状態:酸洗鉄板に硬化後の膜厚が50μmになるようにバーコーターで樹脂を塗布し、150℃、3時間硬化した後、塗膜の表面を目視確認した。
【0030】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜4で得られた本発明の変性フェノール樹脂は、レゾルシンで変性されているものであり、比較例1及び2で得られたレゾルシンで変性されていない樹脂と比較して、硬化性に優れ、引張りせん断接着強さが向上し、安定した塗膜が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面処理剤用水溶性変性フェノール樹脂であって、レゾルシンによって変性されていることを特徴とする金属表面処理剤用レゾルシン変性水溶性フェノール樹脂。
【請求項2】
前記水溶性変性フェノール樹脂におけるレゾルシンの変性量が1〜60重量%である請求項1に記載の金属表面処理剤用変性水溶性フェノール樹脂。
【請求項3】
前記水溶性変性フェノール樹脂中の未反応のホルムアルデヒドが1重量%以下である請求項1又は2に記載の金属表面処理剤用変性水溶性フェノール樹脂。
【請求項4】
前記水溶性変性フェノール樹脂中の未反応のフェノールが1重量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属表面処理剤用変性水溶性フェノール樹脂。
【請求項5】
レゾルシン変性水溶性フェノール樹脂を含んでなる金属表面処理剤。
【請求項6】
レゾルシン変性水溶性フェノール樹脂におけるレゾルシンの変性量が1〜60重量%である請求項5に記載の金属表面処理剤。
【請求項7】
レゾルシン変性水溶性フェノール樹脂中の未反応のホルムアルデヒドが1重量%以下である請求項5又は6に記載の金属表面処理剤。
【請求項8】
レゾルシン変性水溶性フェノール樹脂中の未反応のフェノールが1重量%以下である請求項5〜7のいずれか1項に記載の金属表面処理剤。

【公開番号】特開2009−221395(P2009−221395A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69062(P2008−69062)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】