説明

金属被覆付有孔マトリクス内にナノストラクチャを設けた直接帯電装置

【課題】レセプタを直接帯電させることができまた帯電プロセスにおける反応性酸化性化学種の不要発生を減らせる方法及びシステムを提供する。
【解決手段】導電層710、多孔質層720、導電層730及びナノストラクチャ750によって電子写真用帯電装置700を構成する。導電層710上には多孔質層720がありその上には導電層730がある。多孔質層720には複数個の孔740があり、各孔740内には少なくとも1個のナノストラクチャ750があって導電層710に導電接続されている。導電層710には電源780から第1バイアス電圧を印加し、それによって、導電層730の向かい側にあるレセプタ760を帯電又は放電させる。好ましくは電源782によって導電層730に第2バイアス電圧を印加し、帯電又は放電動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電又は放電(以下「帯電」と総称)処理に使用しうる帯電装置に関する。本発明は、例えば、多孔質素材により孔を形成し更にその孔内にナノストラクチャを配した構成を有する電子写真(electrophotographic)装置用帯電装置として、実施できる。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスでは、例えばフォトレセプタ(以下単に「レセプタ」とも呼ぶ)帯電処理、トナー層再帯電処理、静電トナー転写用中間転写ベルト帯電処理、シート状媒体(用紙シート等)帯電処理等のため、様々な帯電装置が用いられる。従来から用いられている帯電装置には非接触式と接触式とがあり、非接触式帯電装置としては、ワイヤ又はピンに直流高電圧を印加してイオンを発生させ、そのイオンを帯電に使用するコロトロン、スコロトロン、ジコロトロン等が広く用いられている。しかしながら、この種の装置には、帯電プロセス実施中に反応性の強い酸化性の化学種が発生するという問題がある。帯電プロセス実施中等に発生するこうした不要な化学種は、フォトレセプタ劣化や空気汚濁の原因となる。他方の接触式帯電装置は交流高電圧を用い小径ドラムを帯電させる仕組みであるが、これにもやはり、帯電プロセス実施中に発生する物質がフォトレセプタと反応しこれを劣化させるという問題がある。更に、従来の帯電装置では、高プロセス速度電子写真マシンを実現するのに大型の(例えばプロセス方向寸法が大きな)帯電装置が必要であり、また高電圧が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述の問題点を含め従来技術に存する問題点のうち幾つかを解決し、レセプタを直接帯電させることができ、しかも帯電プロセスにおける反応性酸化性化学種の不要発生を減らせるような、方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ここに、本発明の一実施形態に係る電子写真用帯電装置は、第1導電層と、第1導電層上にあり複数個の孔を有する多孔質層と、多孔質層上にある第2導電層と、多孔質層の各孔内に少なくとも1個あり第1導電層に導電接続されているナノストラクチャと、導電接続先の第1導電層に第1バイアス電圧を印加する第1電源と、を備え、第2導電層の向かい側にあるレセプタを帯電させるものである。
【0005】
また、本発明の一実施形態に係り電子写真用帯電装置により実行されるレセプタ帯電方法は、複数個の孔を有する多孔質層を導電面上に設けるステップと、この導電面に導電接続されるよう多孔質層の各孔内に少なくとも1個のナノストラクチャを設けるステップと、多孔質層上に第2導電層を設けるステップと、上記導電面及び第2導電層に電圧を印加して複数種類の帯電種を発生させるステップと、発生した帯電種をその上に堆積させることによりレセプタを帯電させるステップと、を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の原理について別紙図面を参照しつつ説明する。ご理解頂けるように、これから示す詳細な説明及び先に示した概略的な説明は何れも例示的且つ説明的なものであり、別紙特許請求の範囲に記した発明の要旨を更に限定する趣旨のものではない。また、明細書の記載を参照し本発明の実施形態を説明するに当たっては、本発明の実施形態を幾つか示す別紙図面を併せて参照する。別紙図面においては、可能な限り、同一の又は類似する要素についてどの図でも同じ参照符号を用いている。
【0007】
ここではまず、本発明の実施形態についてその構成を仔細に説明するのに先立ち、本発明の各実施形態に係る帯電装置(後に詳述)を組み込める電子写真複製(reproduction)装置及びその種々の構成要素について、図1を参照して模式的に説明する。本発明に係る帯電装置はとりわけ電子写真複製マシンにて好適に使用できるが、後の説明によって追々明らかになるように、本発明は他種装置でも好適に実施できる。例えば、静電写真(electrostatographic)プロセスを実施する様々なマシンで、或いは何らかの形で帯電装置を用いる様々なシステムで、本発明の実施形態に係る帯電装置を好適に使用することができる。特に、大抵の静電写真複写(copying)乃至印刷装置が数多くのサブシステムから構成されており、それらのサブシステムの中には帯電装置を設けうるサブシステムが種々あり、従ってそうしたサブシステムでも本発明の各実施形態に係る帯電装置を使用できる、ということに、ご留意頂きたい。該当するサブシステムとしては、トナー転写、剥離、放電、消去、予備乃至事前清掃、清掃等のサブシステムがある。更にご留意頂きたいことに、本発明に係る帯電装置は様々な用途向けにまた様々な目的用に実施することができる。例えば、本発明の実施形態に係る帯電装置は、面を帯電させる処理、面上の電荷に変化を与える処理、面上にイオンを堆積させる処理、気体中乃至流体中でイオンを堆積させる処理等、目的を問わず様々な用途に用いうる。また、本発明の実施形態に係る帯電装置は、面上に存する一種類以上の素材に電荷の変化をもたらす目的、例えば吸着支援、面における電荷誘導、分極、クリーンルーム内等での浄化・高純度化、生体物質による汚染の除去、生体物質の検知、生体物質の成長制御乃至移動制御等で、使用することができる。生体物質関連の例についていえば、本発明の実施形態に係る帯電装置を組み込んで解析センサ、検知器乃至解析システムを構成し、電気泳動解析又はそれに類する解析を実施するための機器に組み込むのが望ましい。
【0008】
図1に示した電子写真複製装置は、電気的に接地された導電基板14上に光導電面12を堆積させた構成を有するドラム10を備えている。図示しないがドラム10はモータと連携しており、そのモータが動作するとドラム10が矢印16の方向に回転する。この回転に伴い光導電面12の各部は前進していき、行く先々に配置されている後述の様々な処理ステーションを通り抜けていく。ドラム10上の光導電面12の各部がまず通るのは帯電装置20を有する帯電ステーションAであり、この装置20は到来した部分を帯電させる。
【0009】
光導電面12のうち帯電処理が済んだ部分は画像形成ステーションBに進む。画像形成ステーションBでは、図示しない原稿をやはり図示しない光源に対し露出し、その原稿の光像を光導電面12上の帯電部分に形成することによって、その部分の電荷を部位選択的に消散させる。これによって、原稿に相応する静電潜像がドラム10上に記録される。
【0010】
本件技術分野における習熟者(いわゆる当業者)であれば理解できるように、光導電面12上の帯電部分への輻射による潜像形成手法は幾つかある。例えば、レーザビーム等の走査用電磁輻射ビームを適宜変調し、光導電面12上の該当部位に照射すればよい。
【0011】
ドラム10上の光導電面12のうち静電潜像記録済部分は現像ステーションCに進む。現像ステーションCに設けられている現像システム30、例えば磁気ブラシ型現像器は、その静電潜像上に現像剤を堆積させる。
【0012】
この図に示した現像システム30は、ハウジング34内に単一の現像ローラ32を配した構成である。通常、ハウジング34内にはキャリア溜まりがあり、そこにはトナー粒子より大きな導電性キャリアビーズが貯留されている。現像システム30は、例えば、このキャリアビーズをトナー粒子と混ぜ合わせ両者の摩擦により後者を帯電させて現像剤を形成し、形成された現像剤を現像ローラ32上に装荷する。現像ローラ32には、現像剤の装荷及び移送並びに現像剤による現像のため、例えば磁石を内蔵させてある。現像ローラ32の表面には摩擦帯電されたトナー粒子が吸着して層をなすので、現像ローラ32を回転させてトナー粒子を現像ゾーンに運び込み、そこで磁気ブラシにより光導電面12上にトナー像を形成即ち現像することができる。いわゆる当業者であれば理解できるように、現像システムにはこれ以外にも様々な形式がある。
【0013】
光導電面12のうちトナー粒子堆積済部分は、同図中に示すように、ドラム10の回転に伴い転写ステーションDに進む。転写ステーションDでは、現像により得られたトナー像を、移動中のシート状被着素材42に接触させる。各部材の動作タイミングは、光導電面12上に現像済の像が転写ステーションDにてシート状被着素材42と接触することとなるよう、設定乃至制御する。転写ステーションDに設けられている帯電装置40は、被着素材42の背面に静電荷を発生させることによって、光導電面12上に現像済の像から被着素材42へのトナー転写を支援する。
【0014】
画像転写済被着素材42は次いで矢印44の方向へ移送され、図示しないコンベア上に載せられて図示しない融着ステーションに送られる。融着ステーションでは、転写済画像を被着素材42に永久固着させ、複写物乃至印刷物を完成させる。オペレータは、こうして仕上がった複写物乃至印刷物を受け取ることができる。
【0015】
他方、被着素材42がドラム10から剥がれた後の光導電面12上には、現像剤が僅かながら貼り付いて残る可能性がある。被着素材42がドラム10から剥がれた後に残存トナー粒子を光導電面12から除去するには、例えば清掃ステーションE等の最終処理ステーションを設ければよい。
【0016】
清掃ステーションEは様々な機構によって実現することができる。例えば図示の如く単純なブレード50を設け或いは図示しない繊維質ブラシを可回転実装し、それを用いて光導電面12からトナー粒子を刮ぎ落とすようにする。また、何れも図示しないが、清掃ステーションEに放電ランプや予備清掃消去器(プレクリーンイレース)を設けるとよい。放電ランプから光導電面12の隅々に十分な量の光を照射し、或いは帯電装置20及び40と同様のタイプのプレクリーンイレースを用いることにより、光導電面12上の残存静電荷を全て消去乃至散逸させることができ、次の画像形成サイクルに備えることができる。
【0017】
本発明を実施する際には、その装置乃至システム構成が周知になっている数種類のものを含め、様々な静電複製装置を対象とすることができる。また、本願中に記した静電写真プロセス用サブシステム乃至プロセスの細部に対し、特に支障なく本発明を実施できるよう、改変を施すこともできる。
【0018】
図2〜図7に、電子写真プロセスにて例えば対レセプタ帯電又は放電処理に使用できる帯電装置を、何種類か示す。これらの図により例示する帯電装置は、従来の帯電装置で使用していた電圧より低電圧で使用でき、また酸化性の物質例えばオゾンやNOxの発生量も少ない。また、ここでレセプタと称しているのは例えば前述の光導電面12のようなフォトレセプタのことであるが、それ以外に、トナー層、その上にトナーを堆積させうるシート状媒体、転写ベルト等もレセプタの範疇に含めることとする。以下本発明の実施形態として説明する帯電装置においては、第1導電層上に多孔質層が配置されており、またその多孔質層の各孔内に1個以上のナノストラクチャが入っている。
【0019】
図2に、本発明の一実施形態に係る帯電装置200の断面を示す。この帯電装置200は、第1導電層210、その上にあり複数個の孔240を有する多孔質層220、並びに更にその上にある第2導電層230を備えている。また、この帯電装置200の多孔質層220には複数個の孔240があり、各孔240内には少なくとも1個のナノストラクチャ250があり、そのナノストラクチャ250は第1導電層210に導電接触している。更に、第2導電層230の向かい側には、光導電面262を有するレセプタ260がある距離を隔てて配置されている。
【0020】
第1導電層210としては例えば導電素材から形成された基板を使用できる。使用できる導電素材としては、例えば金属、導電面を有する絶縁体(例えば酸化インジウム錫(ITO)により被覆されたガラス)、金属が混入されたポリマ、ドーピングされたセラミクス、導電性有機組成物等がある。
【0021】
多孔質層220は例えば(実質的に)絶縁性の素材によって形成できる。使用できる絶縁素材としては、例えばポリマ、セラミクス、ガラス、無機塩、ポリマ複合材、絶縁性金属酸化物等がある。例えば、相分離可能な一種類以上の絶縁性孔形成性ポリマによって、多孔質層220を形成できる。具体的には、溶剤又は複数種類の溶剤をブレンドしたものに溶ける二種類のポリマや、適当な担体液中でエマルジョン乃至分散系を形成する二種類のポリマによって、多孔質層220を形成することが可能である。即ち、そうした二種類のポリマは(ほとんど)混ざり合わないので乾燥中に相分離する。この相分離により孔構造を発生させることができる。或いは、乾燥だけでは(ほとんど)分離しない複数種類のポリマを用いて、またそのうち一種類として橋架け剤を用いて、多孔質層220を形成することもできる。この場合は、複数種類のポリマを所望相に分離させる機構として他の機構、例えば電気泳動分離法、沈降法等を用いる。何れにせよ、ポリマ相分離後、例えば孔内を満たしているポリマを溶かしそれ以外のポリマは溶かさない溶剤を用い、孔内ポリマを除去することによって、孔構造を形成することができる。好ましくは、ポリマ除去後に残る方のポリマ即ち最終的に多孔質層220になるポリマとして、その多孔質層220上に特に支障なく第2導電層230を形成できるものを用いるようにする。更に、比較的安価で比較的容易に入手できる一種類又は複数種類の非毒性ポリマを、多孔質層220の形成に使用するのが望ましい。そうした条件を満たすポリマの例としては、PS(polysterene)とPVP(poly(4-vinylpyridine))のジブロック共重合体、特にPVPがHABA(2-(4'-hydroxybenzeneazo)benzoic acid)と水素結合により会合しているもの等がある。このジブロック共重合体は自己組織化し、その内部にHABA及びPVPが散在するPSマトリクスになる。このPSマトリクスにおいては、HABA及びPVPによってナノスコーピック円筒による六角形アレイが形成される。更にそのジブロック共重合体膜を気相アニーリングすることで、形成される円筒の向きを基板直交方向に近づけることができる。形成された円筒は、所定の溶剤を用いHABAを抽出することによって、孔へと形態変換させることができる。
【0022】
また、多孔質層220としてナノポーラステンプレートを用いる形態でも本発明を実施できる。使用できるナノポーラステンプレートとしては、例えば米国ワシントン州ケント所在のSterlitech Co.から入手可能なPCTE(polycarbonate track etched)膜や、陽極酸化等によって形成されるアルミナテンプレートがある。
【0023】
或いは、適当なポリマに対しフォトアブレーション、レーザ穿孔、レーザアブレーション等を施すことによってナノポーラス構造を形成してもよい。例えば、レーザを用いたアブレーションによって、所望パターンをなすようポリマ内に孔を形成し、それによって孔含有層を形成すればよい。
【0024】
多孔質層220に形成される孔240は、例えばその直径が約5〜約1000nmで、図面の通り円形断面の孔である。但し、孔240の断面形状は適当な形状であればどのような形状でもよく、例えば円形、卵形、三つ葉形、多葉形等でもよい。また、図3A及び図3Bに示すように孔240同士の間隔は規則的でも不規則でもよい。図3Aに示した例は孔間隔が一定でない例であり、図3Bに示した例は規則的パターンに従って垂直円筒状の孔240がアレイ配置された例である。
【0025】
第2導電層230は様々な導電素材により形成できる。使用できる導電素材としては、例えば金属、合金、導電性複合材等がある。また、第2導電層230に形成される開口は、例えば図2に示すように孔240と同じ直径にしてもよいし、或いは図4に示すようにD<D<Dになるようにしてもよい。Dは多孔質層420の孔440の直径、Dは第2導電層430の開口の直径、Dはナノストラクチャ450の直径である。後に述べるように、第2導電層430とナノストラクチャ450の間に電圧を印加すると、それらの間隙に電界が生じ、その電界によりコロナが発生する。
【0026】
また、図2に示したナノストラクチャ250はSWNT(single-walled nanotube)、MWNT(multi-walled nanotube)、ロッド、ワイヤ、コーン、ファイバ等の形状とするとよい。それらの形状が複数種類混在していてもかまわない。ナノストラクチャ形成元素としては例えばIV族、V族、VI族、VII族、VIII族、IB族、IIB族、IVA族及びVA族のうち何れかに属する元素又はその混合物を一種類以上使用できる。従って金属、合金等も使用できる。なお、本願における元素族表記はCAS(Chemical Abstract System;化学文献抄録サービス;登録商標)による表記に従っている。また、ナノストラクチャ形成手法としては様々な手法を使用できる。使用できる手法としては例えば気相成長、真空蒸着、電解メッキ、無電解メッキ等がある。但し、いわゆる当業者であれば理解できるように他種形成手法も使用できる。更に、ナノストラクチャ250は、その主軸がその被着先基板例えば第1導電層210に対して実質的に直交することとなるよう、形成するとよい。ナノストラクチャ250の向きは、第1導電層210の表面に直交する方向に対して約0〜約80°の角度をなす向きにすることもできる。更に、ナノストラクチャ250は、孔240内に不規則に配置してもよいし、円柱状の孔240のアレイが孔240内に形成されるよう規則的に配置してもよい。
【0027】
本発明の実施に当たってはナノストラクチャ250のアスペクト比を高くするとよい。例えば、米国ワシントン州ケント所在のSterlitech Co.から入手可能なPCTE膜の片面にスパッタリングによって金属厚膜を形成し、更にその金属膜を第1導電層210に被着させた上で、電気化学成長によってPCTE膜のチャネル内にナノワイヤを形成することで、高アスペクト比のナノストラクチャ250を形成することができる。
【0028】
ナノストラクチャ250のアスペクト比は、そのナノストラクチャ250の直径に対する長さの比により表すことができる。本発明を実施するに当たっては、ナノストラクチャ250のアスペクト比を約2以上にするとよい。更に、ナノストラクチャ250の間隔Nとナノストラクチャ250の高さHの比を約1000以下にするとよい。また、図2に示すようにナノストラクチャ250の高さHを多孔質層220の厚みと等しくしてもよいし、図5に示すように多孔質層520の厚みTをナノストラクチャ550の高さHより大きくしてもよい。
【0029】
本発明の実施に当たっては、多孔質層に形成された各孔内に複数個のナノストラクチャを設けるようにしてもよい。例えば図6に示す帯電装置600は、第1導電層610、その上にある多孔質層620、並びに更にその上にある第2導電層630を備えており、多孔質層620に設けられている複数個の孔640それぞれの中には複数個のナノストラクチャ650が配置され、更にそれらが第1導電層610に導電接続されている。
【0030】
また、レセプタ260とすることができるのは、例えばフォトレセプタドラム乃至ベルトの光導電面262である。その他にも、トナー層、その上にトナーを堆積させうるシート状媒体、転写ベルト等も、レセプタ260とすることができる。
【0031】
次に、本発明の実施形態に係る帯電装置によるレセプタ帯電又は放電動作について説明する。まず、図7に示す帯電装置700は、第1導電層710、その上にあり複数個の孔740を有する多孔質層720、並びに更にその上にある第2導電層730を備えている。この帯電装置700の多孔質層720の各孔740内には、第1導電層710と導電接触するよう、少なくとも1個のナノストラクチャ750が配置されている。また、レセプタ760の光導電面762は第2導電層730と向かい合っており、且つその光導電面762は第2導電層730からある距離だけ離れた位置にある。このレセプタ760は、例えば、図中矢印で示されているように、第2導電層730に対し横方向に移動している。更に、第1導電層710には第1電源780から第1電圧を、第2導電層730には第2電源782から第2電圧を、それぞれバイアス電圧として印加する。本発明の実施に当たっては、例えばこの第1電圧と第2電圧の差を電荷放出しきい値以下、例えば2000V以下にする。更に、第1及び第2電圧の印加に先立って、光導電面762の表面電位を接地電位にしておくとよい。第1電圧は直流電圧又は直流パルス電圧にするとよく、第2電圧は直流電圧にするとよい。
【0032】
このように、第1電源780によって印加される第1電圧と、第2電源782によって印加される第2電圧との間には差がある。この電圧差によって電界が発生するため、各ナノストラクチャ750の端部にてコロナが発生し、その結果光導電面762への帯電又は光導電面762からの放電が起こる。ここでは、どのような原理で放電が生じるかを特定するつもりはない。しかし、第1導電層710に第1電圧を印加し第2導電層730に第2電圧を印加すると電界が発生し、ナノストラクチャ750の端部における電界強度がコロナしきい値電界例えば空気のそれ乃至約6V/μmを上回るとコロナ放電が起き、その結果空気組成分子がイオン化して正イオン、自由電子、負イオン等の帯電種が発生するものと見られる。電界発生によりナノストラクチャ750と光導電面762の間の電位勾配は急になるので、正イオンはナノストラクチャ750へと強力に吸引され、負イオンや電子は光導電面762に吸引される(或いは正イオンがナノストラクチャ750から強力に退けられ負イオンや自由電子が光導電面762から退けられる;何れになるかはコロナの極性による)。それらの電子は、この過程で他の原子と衝突してそれらの原子(のうち一部)をイオン化する。このイオン化により生成された新たな帯電種例えば電子やイオン(のうち一部)も、光導電面762へと吸引される。
【0033】
更に、第2導電層782に印加する第2電圧の値を所望レセプタ表面電位相当値に近づける操作によって、光導電面762の過剰帯電を防ぐことができる。即ち、第2導電層782への印加直流電圧が光導電面762の電位に近いと、ナノストラクチャ750にて発生した帯電種は、もはや光導電面762上には堆積せず第2導電層730によって収集されるようになる。従って、この手法で光導電面762への帯電を制御することができる。
【0034】
以上、電子写真方式又は静電写真方式による画像形成装置、システム及び方法に対する本発明の適用例を以て、本発明に係るシステム及び方法について説明した。ご理解頂けるように、以上の説明は例示的なものであり、本発明の用途をその種の用途に限定する趣旨のものではない。むしろ、本発明の実施形態に係るシステム及び方法は、その原理上、帯電処理を担う装置である限りどのような装置にも好適に適用できる。
【0035】
いわゆる当業者であれば、上述していないものを含め本発明にどのような実施形態があり得るかを、本願記載の事項及び本件技術分野における常識に従い認識することができよう。即ち、本発明の技術的範囲及びその神髄は別紙特許請求の範囲に示されている通りであり、本願における細部説明及び例示説明はあくまで例示を目的としたものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の各実施形態を使用できる電子写真印刷装置の例を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る帯電装置及びレセプタを示す図である。
【図3A】本発明の実施形態における孔配置の例を示す図である。
【図3B】本発明の実施形態における孔配置の別例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る帯電装置を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る帯電装置を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る帯電装置、特に各孔内に複数個のナノストラクチャを設けた実施形態を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るレセプタ帯電方法を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
12,262,762 光導電面、20,40,200,600,700 帯電装置、210,610,710 第1導電層、220,420,520,620,720 多孔質層、230,430,630,730 第2導電層、240,440,640,740 孔、250,450,550,650,750 ナノストラクチャ、260,760 レセプタ、780 第1電源、782 第2電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電層と、
第1導電層上にあり複数個の孔を有する多孔質層と、
多孔質層上にある第2導電層と、
多孔質層の各孔内に少なくとも1個あり第1導電層に導電接続されているナノストラクチャと、
導電接続先の第1導電層に第1バイアス電圧を印加する第1電源と、
を備え、第2導電層の向かい側にあるレセプタを帯電させる電子写真用帯電装置。
【請求項2】
請求項1記載の電子写真用帯電装置であって、ナノストラクチャが、IV族、V族、VI族、VII族、VIII族、IB族、IIB族、IVA族及びVA族のうち何れかに属する元素を一種類以上含む電子写真用帯電装置。
【請求項3】
請求項1記載の電子写真用帯電装置であって、ナノストラクチャのアスペクト比が約2以上である電子写真用帯電装置。
【請求項4】
複数個の孔を有する多孔質層を導電面上に設けるステップと、
上記導電面に導電接続されるよう多孔質層の各孔内に少なくとも1個のナノストラクチャを設けるステップと、
多孔質層上に第2導電層を設けるステップと、
上記導電面及び第2導電層に電圧を印加して複数種類の帯電種を発生させるステップと、
発生した帯電種をその上に堆積させることによりレセプタを帯電させるステップと、
を有し、電子写真用帯電装置により実行されるレセプタ帯電方法。
【請求項5】
請求項4記載のレセプタ帯電方法であって、上記導電面及び第2導電層に電圧を印加して複数種類の帯電種を発生させる際、上記導電面及び第2導電層にその差が約2000V以下の電圧を印加し、各ナノストラクチャの一端にて電荷を発生させるレセプタ帯電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−279722(P2007−279722A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90291(P2007−90291)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】