金属製キャビティが植え込まれた医療器具に用いる超音波トランスデューサ
ハウジングと、伝搬周波数を有し、ハウジングの一部分に接続される超音波トランスデューサとを備える植え込み型医療機器が提供される。ハウジングは伝搬周波数で共振し、包装体がハウジングに接続されて、超音波トランスデューサを覆って配置される。包装体は、超音波トランスデューサの変形を曲げモードで増幅させ、そして曲げモーメントをハウジングに伝達するように適合される。上側部分及び下側部分を有するハウジングを備える植え込み型医療機器が提供される。第1超音波トランスデューサは第1接続ロッドに接続され、かつ第1接続ロッドと同軸に設けられる。第1超音波トランスデューサ及び第1接続ロッドが上側部分と下側部分との間に配置されるので、第1超音波トランスデューサは上側部分及び下側部分を同時に振動させるように適合されることができる。植え込み型医療機器の超音波トランスデューサ及びハウジングを最適化する方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植え込み型医療機器と組み合わせて使用されることにより無線通信を、植え込み型医療機器と体内に植え込まれる遠隔操作用器具との間で行なうトランスデューサに関するものである。本発明は更に詳細には、金属製キャビティを備える植え込み型医療機器と組み合わせて使用される超音波トランスデューサに関するものである。
【0002】
本出願は、2006年7月21日出願の仮出願第60/820,055号の優先権を主張するものであり、当該仮出願を本明細書において参照することにより、当該仮出願の内容全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
植え込み型医療機器は多くの場合、種々の症状を治療するために使用される。植え込み型医療機器の例として、薬剤投与器具、鎮痛装置、及び心臓不整脈を治療する器具を挙げることができる。心臓不整脈を治療するために使用される植え込み型医療機器の一例が心臓ペースメーカであり、心臓ペースメーカは普通、患者の体内に埋め込まれることにより除脈(すなわち、異常に遅い心臓の拍動)を治療する。ペースメーカはパルス発生器及び複数のリード線を含み、これらのリード線は、パルス発生器と心臓との間の電気接続を形成する。植え込み型除細動器(ICD)を使用して頻脈(すなわち、異常に速い心臓の拍動)を治療する。ICDもパルス発生器及び複数のリード線を含み、これらのリード線は、電気エネルギーを心臓に供給する。パルス発生器は通常、バッテリ及び電気回路を収容する金属ハウジングと、そしてリード線をパルス発生器に接続するヘッダと、を含む。
【0004】
植え込み型医療機器は、心不全の治療にも有用である。心臓再同期療法(CRT)(普通、両室ペーシングとも表記される)は、心不全に対する新しい治療法であり、この治療法では、右心室及び左心室の両方を刺激して血流効率及び心拍出量を上げる。心不全及び心臓不整脈の治療は、遠隔操作用の植え込み型器具を使用することにより向上させることができる。このような遠隔操作用器具の一つの例が脈管系内に配置される圧力センサである。植え込み型医療機器と遠隔操作用器具との間で通信することによって、センサデータを臨床医がダウンロードすることができ、センサデータを使用して、植え込み型医療機器、または両方の器具によって行なわれる治療を変更する。従って、遠隔操作用の植え込み型器具との通信を行なうトランスデューサを含む植え込み型医療機器が必要になる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態による本発明は植え込み型医療機器であり、植え込み型医療機器は、ハウジングと、そして伝搬周波数を有し、かつハウジングの一部分に接続される超音波トランスデューサとを備える。ハウジングは伝搬周波数で共振し、そして包装体がハウジングに接続され、かつ超音波トランスデューサを覆って配置される。包装体は、超音波トランスデューサの変形を曲げモードで拡大させ、そして曲げモーメントをハウジングに伝達するように適合される。
【0006】
別の実施形態による本発明は植え込み型医療機器であり、植え込み型医療機器は、上側部分及び下側部分を有するハウジングを備える。第1超音波トランスデューサが第1接続ロッドに接続され、かつ第1接続ロッドと同軸に設けられる。第1超音波トランスデューサ及び第1接続ロッドを上側部分と下側部分との間に配置して、第1超音波トランスデューサが上側部分及び下側部分を同時に振動させるように適合される。
【0007】
更に別の実施形態による本発明は、植え込み型医療機器の超音波トランスデューサ及びハウジングを最適化する方法である。本方法は、超音波トランスデューサに関するシステムレベルの要件を規定するステップと、そして第1超音波トランスデューサを、システムレベルの要件に基づいて選択するステップとを含む。第1の有限要素法分析を行なって、第1トランスデューサの実現可能性を検証し、そして第2の有限要素法分析及び水槽実験を行なって、ハウジング及び超音波トランスデューサが目標超音波伝搬周波数において所望の振動モードを有するかどうかについて判断する。超音波トランスデューサを、またはハウジングの構造を、第1及び第2の有限要素法分析、及び水槽実験を行なった結果に基づいて最適化する。最適化された超音波トランスデューサの共振周波数及び振幅を、有限要素法分析及び水槽実験を利用して検証する。最終的な超音波トランスデューサ及びハウジングの構造を、検証ステップの結果に基づいて選択する。
【0008】
複数の実施形態が開示されるが、本発明の更に別の実施形態が存在することは、この技術分野の当業者には、以下の詳細な記載から明らかであり、以下の詳細な記載では、本発明の例示としての実施形態が示され、そして記載される。従って、図面及び詳細な記述は本質的に例示として捉えられるべきであり、本発明を制限するものとして捉えられるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の1つの実施形態による植え込み型医療機器の断面透視図である。
【図2】本発明の1つの実施形態による図1の植え込み型医療機器の内部の正面図である。
【図3】図A,Bは、図2の植え込み型医療機器の種々の図を示している。
【図4】図A,Bは、本発明の別の実施形態による植え込み型医療機器の種々の図である。
【図5】図A,Bは、本発明の更に別の実施形態による植え込み型医療機器の種々の図である。
【図6】本発明の別の実施形態による植え込み型医療機器の断面図である。
【図7】図A,Bは、本発明の別の実施形態による植え込み型医療機器の種々の図である。
【図8】本発明の更に別の実施形態による植え込み型医療機器の断面図である。
【図9】図A,Bは、本発明の別の実施形態による植え込み型医療機器の種々の図である。
【図10】図A,Bは、本発明の別の実施形態による植え込み型医療機器の種々の図である。
【図11】図A,Bは、本発明の別の実施形態による植え込み型医療機器の種々の図である。
【図12】本発明の更に別の実施形態による植え込み型医療機器の断面図である。
【図13】本発明の更に別の実施形態による植え込み型医療機器の断面図である。
【図14】本発明による超音波トランスデューサを有する植え込み型医療機器を最適化する例示としての方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は種々の変形物及び代替形態に変更することができるが、特定の実施形態が例示として図面に示されており、そして以下に詳細に記載される。しかしながら、本発明を、記載される特定の実施形態に制限しようと意図するのではない。そうではなく、本発明は、全ての変形物、等価物、及び代替物を、添付の請求項に規定される本発明の技術的範囲に含まれるものとして包含するものである。
【0011】
図1は、植え込み型医療機器(IMD)10の透視図である。IMD10はパルス発生器12と、そして心臓リード線14と、を含む。リード線14は、電気信号を心臓16とパルス発生器12との間で伝送するように機能する。リード線14の近位端18はパルス発生器12に接続され、そして遠位端20は心臓16に接続される。リード線14は、リード近位端18からリード遠位端20に延びるリード線本体17を含む。
【0012】
心臓16は、右心房22と、右心室24と、そして肺動脈26と、を含む。三尖弁28は右心房22と右心室24との間に位置し、かつ右心房22から右心室24への血流を制御する。肺動脈弁30は右心室24と肺動脈26との間に位置し、かつ右心室24から肺動脈26への血流を制御する。心臓16は更に、左心房32と、左心室34と、そして大動脈36と、を含む。僧帽弁38は左心房32と左心室34との間に位置し、かつ左心房32から左心室34への血流を制御する。大動脈弁40は左心室34と大動脈36との間に位置し、かつ左心室34から大動脈36への血流を制御する。1つの実施形態では、IMD10は複数のリード線14を含む。例えば、IMD10は、電気信号をパルス発生器12と左心室34との間で伝送するように適合された第1リード線14と、そして電気信号をパルス発生器12と右心室24との間で伝送するように適合された第2リード線14とを含む。
【0013】
図1に示す実施形態では、螺旋電極42が右心室24の心内膜43を貫通し、そして心臓16の心筋44に埋め込まれる。上記のように配置される場合、電極42を使用することにより、心臓16の電気的活動を検出する、または刺激パルスを右心室24に印加することができる。他の実施形態では、本発明の心臓リード線14は、この技術分野では公知の如く、心臓16の他のいずれかの部分に埋め込むこともできる。例えば、リード線14は、右心房22、右心室24、肺動脈26、左心室34に、または冠状静脈に埋め込むことができる。1つの実施形態では、IMD10は複数の電極42を含み、これらの電極は、電気的活動を検出し、そして/または治療を心臓16の左側及び右側の両方に行なうように配置される。1つの実施形態では、リード線14は心外膜リード線とすることができ、この場合、電極42が心外膜45を貫通する。
【0014】
図1に示すように、遠隔操作用器具46は肺動脈26内に配置される。別の構成として、遠隔操作用器具46は右心室24内、大動脈36内に配置することができ、また心臓16内または脈管系内の、或いは心臓16または脈管系の近傍の他のいずれかの位置に配置することができる。図1に示す遠隔操作用器具46は圧力センサを含む。図1に示す遠隔操作用器具46を使用することにより、肺動脈26内の圧力を測定することができる。1つの実施形態では、遠隔操作用器具46は、収縮終期圧を肺動脈26内で測定する。検出される血圧を利用して、心不全患者の代償不全を予測する、またはペーシング治療または除細動治療を最適化することができる。圧力を測定するように適合された圧力センサの一例が、Wolinskyらによる米国特許第6,764,446号明細書に開示されている。
【0015】
図1に示すIMD10は心臓ペースメーカを備えるが、IMD10は体内埋め込みに適する他のいずれかの医療器具を備えることができる。例えば、IMD10は薬剤投与器具または鎮痛装置を備えることができる。遠隔操作用器具46は、治療を行なうように、または生物学的機能をモニタリングするように適合されたいずれかのタイプの長期体内埋植器具またはリモートセンサを含むことができる。遠隔操作用器具46は、所望の生物学的パラメータを検出する、または治療を行なうために適合する体内のいずれの位置にも配置することができる。例えば、遠隔操作用器具46は、ボリュームセンサを含む、または最高血圧または最低血圧のような他のいずれかの心臓パラメータを検出する、或いは血圧勾配のような心臓パラメータの微分を計算することができる。他の実施形態では、遠隔操作用器具46は、グルコースレベルモニタ、肺音センサ、衛星を介してデータ伝送を行なうペーシング器具、または他のいずれかのリモートセンシング装置または治療用器具を含むことができる。複数の遠隔操作用器具46は体内のどこにでも、そして互いに、かつIMD10と無線通信するように埋め込むことができる。
【0016】
図2は、パルス発生器12の内部の正面図を示している。パルス発生器12はハウジング48と、そしてヘッダ50と、を含む。超音波トランスデューサ52をハウジング48の内部に取り付け、そして制御回路(図示せず)に電気的に接続する。超音波トランスデューサ52はセンサ、アクチュエータとして、またはセンサ及びアクチュエータの両方として使用することができる。図3A,3Bはハウジング48の断面図を示している。超音波トランスデューサ52は電極54を含み、そしてハウジング48の内部に絶縁接着層55によって接着させることができる。図2に示す実施形態では、超音波トランスデューサ52は円形形状を有するが、超音波トランスデューサは、矩形、梁状形状、円形、環状形、または三角形のような他のいずれかの形状を採ることができる。
【0017】
1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52は圧電材料を含む。超音波トランスデューサ52に使用するために適合する圧電材料は、圧電ポリマー材料、圧電結晶材料、または圧電セラミック材料を含む。1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52は二フッ化ポリビニリデン(PVDF)材料を含むことができる。別の実施形態では、超音波トランスデューサ52はジルコン酸チタン酸鉛(PZT)材料を含むことができる。更に別の実施形態では、超音波トランスデューサは、マグネシウムニオブ酸−チタン酸鉛(PMN−PT)のような圧電単結晶材料を含むことができる。他の実施形態では、超音波トランスデューサ52は、cMUT(容量型超微細加工超音波)トランスデューサを含むことができる。PZT材料が使用される1つの実施形態では、PZT材料の厚さは、ハウジング48の厚さとほぼ同じである。1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52はPZT5A材料を含み、25.4ミリメートル以下の直径を有し、そして3ミリメートル以下の厚さを有する。
【0018】
図3A,3Bに示すように、一方の電極54をAC電圧源に接続し、そして他方の電極54をグランドに接続する(電極54の厚さはこれらの図では寸法通りには描かれていない)。AC電圧を超音波トランスデューサ52に印加することにより、超音波トランスデューサを所望の周波数で振動させることができる。別の構成として、両方の電極54を、この技術分野の当業者には公知のように、Hブリッジによって同時に駆動することができる。1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52は、約20キロヘルツ超の機械共振周波数を有する。別の実施形態では、超音波トランスデューサ52は、約40キロヘルツの機械共振周波数を有する。更に別の実施形態では、超音波トランスデューサ52は、電気共振モードで動作することができる。
【0019】
1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52は、約20キロヘルツ超の周波数を有する超音波を生成し、そして受信するように適合され、0.25メートル水深での約100パスカル/ボルトを超える送信感度、または1メートル水深での1マイクロパスカル/ボルトを基準とした(re)約148デシベル(dB)を超える送信電圧応答(TVR)を有し、約0.5ミリボルト/パスカルを超える受信感度、または1ボルト/マイクロパスカルを基準とした−186dBを超える自由音場感度(free−field voltage sensitivity:FFVS)を有し、そして約20ナノファラド以下の合計静電容量を有する。別の実施形態では、超音波トランスデューサ52は、約40キロヘルツ超の周波数を有する超音波を生成し、そして受信するように適合され、0.25メートル水深での約200パスカル/ボルトを超える送信感度、または1メートル水深での1マイクロパスカル/ボルトを基準とした約154デシベルを超えるTVRを有し、約0.5ミリボルト/パスカルを超える受信感度、または1ボルト/マイクロパスカルを基準とした−186dBを超えるFFVSを有し、そして約8ナノファラド以下の合計静電容量を有する。
【0020】
超音波トランスデューサ52は、IMD10と遠隔操作用器具46との間の無線通信に使用することができる。図3Bに示すように、超音波信号はIMD10から遠隔操作用器具46に、AC電圧を超音波トランスデューサ52に印加して、または電荷変化を超音波トランスデューサ52に起こして、超音波トランスデューサ52が変形し、そしてパルス発生器のハウジング48が、この変形に応答して振動するようにすることにより伝達される。遠隔操作用器具46から送信される超音波信号を超音波トランスデューサ52が受信すると、超音波を照射することによってハウジング48が機械的に振動するので、電圧変化または電荷密度変化が超音波トランスデューサ52に発生し、この変化が制御回路(図示せず)によって検出される。
【0021】
図4A,4Bは、包装体62が超音波トランスデューサ52を閉じ込める構成の本発明の1つの実施形態を示している。包装体62は2つの機能を提供する。第1の機能では、包装体62は、超音波トランスデューサ52が変形するときに曲がることにより、曲げモーメントをハウジング48に加える。第2の機能では、包装体62は、特にハウジング48が所望の周波数において共振モードを有する場合に超音波トランスデューサ52の変形を機械的に拡大する。1つの実施形態では、包装体62は、25ミリメートル超の直径、4ミリメートル未満の高さ、0.2〜1ミリメートルの表層厚み、及び3〜6ミリメートルの壁厚を有する。1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52は包装体62に取り付けられ、そして超音波トランスデューサ52とハウジング48との間に隙間または空間を設けることができる。別の実施形態では、超音波トランスデューサ52はハウジング48に取り付けられ、そして超音波トランスデューサ52と包装体62との間に隙間を設けることができる。
【0022】
図5A,5B、及び6は、超音波トランスデューサ52を有するIMD10の別の実施形態を示している。図5A,5Bに示すように、ハウジング48は、ハウジング48のほとんどの部分よりも細い断面を有する環状領域64を含む。図5Aに示す領域64は「射的の的」を含むが、別の構成として、複数の矩形または円形のような他のいずれかの形状を有することができる。図5Bに示すように、超音波トランスデューサ52が領域64に隣接することにより、ハウジング48の振動、移動、及び/又は変形の拡大が可能になる。1つの実施形態では、領域64の厚さは約0.12ミリメートルである。図6は、領域64が、ハウジング48の内、超音波トランスデューサ52の下方に位置する皺領域または波形領域の形態を採る別のハウジング48を示している。図5A,5B及び6に示す隙間66は、空気、窒素、他の或る種類のガスを含むことができる、または真空とすることができる。図示のように、図5A,5B及び6は、図4A,4Bに関して説明した包装体62を含むが、別の実施形態では、包装体62は設ける必要はない。
【0023】
図7A,7Bは、超音波トランスデューサ52を有するIMD10の別の実施形態を示している。この実施形態では、超音波トランスデューサ52は環状形を有する。超音波トランスデューサ52は制限構造として機能し、そして超音波トランスデューサ52によって領域56の共振特性が、領域56の境界条件が設定されることにより定義される。領域56の共振特性によって、超音波トランスデューサ52の性能が向上する。領域56の共振周波数と同じ周波数を有する超音波を領域56に照射すると、領域56が振動することにより、超音波トランスデューサ52が変形する。この変形によって、電圧変化または電荷変化が超音波トランスデューサ52に発生し、この変化が制御回路によって検出される。超音波トランスデューサ52を、共振周波数のAC電圧またはHブリッジを使用して駆動することにより、超音波トランスデューサ52が周期的に変形する。この変形によって、領域56が共振周波数で振動するので、超音波が領域56から所望の周波数で送信される。
【0024】
超音波トランスデューサ52の寸法は、ISBN 1−57524−184−6に掲載されたBlevinsによる「固有周波数及びモード形状を表わす公式」と題する論文に記載された以下の数式を使用して求めることができ、この論文をここで参照することにより、当該論文の内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0025】
【数1】
上の数式の中に使用されるように、aはプレート半径であり、hはプレート厚さであり、Eはヤング率であり、νはポアソン比であり、ρは密度であり、γは質量/単位面積またはρ*hであり、そしてλはBlevinsの論文に現われるモード形状によって変わる無次元の周波数パラメータである。
【0026】
1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52はPZT材料を含み、そして超音波トランスデューサ52によって約20キロヘルツ超の機械共振周波数を有する領域56が画定される。環状圧電トランスデューサ52が、4.2ミリメートルの内径、8.4ミリメートルの外径、及び2ミリメートルの厚さを有する場合に、ハウジング48がチタンを含み、かつモード00の場合にλ=3.19であり、E=116ギガパスカル、ν=0.3、h=0.3ミリメートル、及びρ=4500kg/m3、及びa=4.2ミリメートルである1つの実施形態では、領域56の第1モードの固有周波数fは40kHzに設定される。超音波トランスデューサ52は、ハウジング48にエポキシまたは医用接着剤を使用して接着させることができる。Blevinsは、更に別の形状及び境界条件に対応する更に別のモード共振周波数の数式を提供している。
【0027】
図8に示す実施形態では、超音波トランスデューサ52は非能動的制限構造58に機械的に接着される。図示のように、制限構造58は環状形を有し、そして共振領域56を画定する。非能動的制限構造58を使用することにより、超音波トランスデューサ52の送信感度及び受信感度の両方を、共振領域56が超音波トランスデューサ52と同じ共振周波数を有する場合に高めることができる。非能動的制限構造58は変形を、超音波トランスデューサ52とハウジング48との間で伝達する。例えば、超音波トランスデューサ52が受信モードになっている場合、超音波を照射することにより共振領域56が振動し、そして結果として生じる変形が超音波トランスデューサ52に非能動的制限構造58を介して伝達される。超音波トランスデューサ52が送信モードになっている場合、超音波トランスデューサ52を作動させることにより、超音波トランスデューサが共振周波数で振動し、次にこの振動がハウジング48に非能動的制限構造58を介して伝達されるので、共振領域56が共振周波数で振動する。非能動的制限構造58は、チタン、アルミニウム、ステンレス鋼、セラミック材料、または他のいずれかの剛性材料により構成することができる。超音波トランスデューサ52と共振領域56との隙間60には空気、窒素、他の或る種類のガスを充填することができる、または隙間60は真空とすることができる。
【0028】
図9A,9Bは、IMD10の別の実施形態を示している。図9Aに示すように、制限構造58はハウジング48のコーナー70に配置され、ほぼ部分円形状を有し、そして共振領域56を画定する。超音波トランスデューサ52はハウジング48に接着させ、そして制限構造58から延出して共振領域56に食い込んでいる。1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52の長さは、共振領域56の歪み/応力分布によって決まる。1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52の変形は制限構造58によって制限され、そして超音波トランスデューサ52は、共振領域56の半径の半分以下の長さを有する。図9Bの断面図に示すように、制限構造58はハウジングの背面壁72に届くまで延出することはないが、別の実施形態では、制限構造58は背面壁72に届くまで延出することができる。更に別の実施形態では、制限構造58はハウジング48の外部に配置することができる。1つの実施形態では、制限構造58は、ハウジング48の外部に配置される環状リングの形状を採ることができる。
【0029】
図10A,10Bは、本発明の更に別の実施形態を示している。この実施形態では、超音波トランスデューサ52はハウジング48のコーナー70に配置される。図10Aに示す市松模様パターンは、約40キロヘルツのハウジング48のモード形状を表わす。領域73は、ハウジング48の内、Z軸方向に移動している領域を表わす。これらの領域73は、Z軸に沿った正方向または負方向のいずれの方向にも移動することができる。ドット領域73は、無ドット領域73がZ軸に沿った負正方向に移動することができる状態になっている間に、Z軸に沿った正方向に移動することができる。市松模様パターンのライン74はノーダル領域を表わす、またはハウジングがZ軸に対して動かない位置のラインを表わす。図示の実施形態では、コーナー70は制限構造として機能し、そして共振領域56を画定するが、他の実施形態では、トランスデューサ52は、ノーダルライン74によって共振領域56が形成される位置の領域73に配置することができる。図示のように、超音波トランスデューサ52は上面76に接着させ、かつ共振領域56内に配置される。1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52は、応力及び歪みが最大になる領域の内部に配置される。他の実施形態では、ハウジング48自体の形状を変更して、所望の周波数特性を実現することができる。他の実施形態では、ハウジング48はエンボス加工することができる、またはハウジング48に「窪み」を設けることにより、所望の周波数特性を実現することができる。
【0030】
図11A,11Bは、本発明のIMD10の更に別の実施形態を示している。この実施形態では、ヘッダ50は制限構造として超音波トランスデューサ52に作用する。開口78がヘッダ50内に配置され、そして開口78によって共振領域56が画定される。超音波トランスデューサ52は共振領域56の内部にまで延出し、そしてハウジング48の内部に接着させる。
【0031】
図12は、本発明のIMD10の別の実施形態の断面図を示している。IMD10はハウジング48を含み、ハウジング48は上側部分48a及び下側部分48bを有する。接続ロッド84を上側部分48aに接続し、そして第2の接続ロッド84を下側部分48bに接続する。超音波トランスデューサ52は2つの接続ロッド84の間に挟まれる。接続ロッド84は図12ではベル形を有するが、他のいずれかの形状を有することができる。図12の超音波トランスデューサ52を作動させる場合、部分48a,48bが振動し、超音波が2つの方向に伝搬する。超音波トランスデューサ52の厚さは、超音波を生成するハウジング48の所望の作動変位量に従って調整することができる。
【0032】
図13は、超音波トランスデューサ52を各部分48a,48bに接続し、かつ2つの接続ロッド84がこれらの超音波トランスデューサ52の間に挟まれる構成の別の実施形態の断面図を示している。図13に示す構造によって更に、超音波は2つの方向に同時に伝搬することができる。図13の構造が対称であるので、超音波トランスデューサ52及び接続ロッド84の設計及び作製を容易にすることができる。
【0033】
図12及び13に示す実施形態によって、超音波トランスデューサまたは超音波トランスデューサ群の感度が高くなる。超音波トランスデューサまたは超音波トランスデューサ群52は、PZTまたはPVDFのような圧電材料を含むことができる。図12及び13では、部分48a,48bによって予備応力を超音波トランスデューサまたは超音波トランスデューサ群52に加えることができる。1つの実施形態では、超音波トランスデューサまたは超音波トランスデューサ群52、及び接続ロッド84は厚さ方向モードで共振する。別の実施形態では、超音波トランスデューサまたは超音波トランスデューサ群52、及び接続ロッド84は動径モードで共振する。1つの実施形態では、接続ロッド84及び超音波トランスデューサ52の合計厚さは、伝搬周波数の波長の約半分である。1つの実施形態では、接続ロッド84及び超音波トランスデューサ52の合計厚さは、6〜7ミリメートルである。別の実施形態では、単一の接続ロッド84及び単一の超音波トランスデューサ52が部分48aと48bとの間に挟まれる。1つの実施形態では、単一の超音波トランスデューサ52は、直径1センチメートル、厚さ1ミリメートルのPZT材料を含む。接続ロッド84は、約6ミリメートルの高さ、1センチメートルの最小直径、2.5センチメートルの最大直径、及び約3ミリメートルの高さから始まる先細り部分を有する。1つの実施形態では、ハウジング48の厚さは0.3〜2ミリメートルであり、そしてハウジング48の幅は約2.5〜5センチメートルである。
【0034】
図14は、超音波トランスデューサ52、及びIMD10を最適化して遠隔操作用器具46と無線通信する例示としての方法200を示している。電力消費予定量、トランスデューサ感度、機械的サイズ、材料選択、及び金属製ハウジング48の振動モードのようなシステムレベル要件を決定する(ブロック210)。第1超音波トランスデューサ52を、システムレベル要件に基づいて選択する(ブロック220)。この技術分野の当業者には公知の有限要素法(FEM)分析を行なって、簡易構造の第1トランスデューサの実現可能性を検証する(ブロック230)。この実施形態では、実現可能性の検証では、超音波トランスデューサ52のシステムレベル属性がシステムレベル要件の許容範囲内に収まるかどうかについて判断する。FEM(有限要素法)及び水槽実験を利用して、金属製ハウジング48及び超音波トランスデューサ52が目標超音波伝搬周波数の所望の振動モードを有するかどうかについて判断する(ブロック240)。設計は、ハウジング48の構造を変化させ、包装体62を組み込み、包装体62の構造を変更し、寸法を含む超音波トランスデューサ52の特性を変更する、またはこれらの操作を組み合わせることにより最適化することができる(ブロック250)。
【0035】
一旦、構造が更に微調整されると、超音波トランスデューサ52の水中共振周波数及び振幅は、有限要素法モデル及び水槽実験を利用して検証することができる(ブロック260)。実験は水槽の中で水中聴音器を使用して行なうことができ、そして実験では、走査型レーザ振動計(SLV)を利用することができる。一つのこのようなSLVは、ドイツのヴァルトブロンのPolytec−Platz 1−7, D−76337を所在地とするPolytec GmbH社から入手することができる。設計はこの場合も同じようにして、ハウジング48の構造、超音波トランスデューサ52の構造などのようなパラメータを変化させることにより最適化することができる(ブロック250)。この最適化を、所望の共振特性が得られ、そして最終形態の超音波トランスデューサ構造が得られるまで繰り返す(ブロック270)。
【0036】
本発明を、ペースメーカ及び除細動器のような植え込み型医療機器に関して説明してきたが、本発明は、インスリンポンプ、神経刺激装置、薬剤投与システム、疼痛管理システム、心拍センサまたは肺音センサのような他のいずれかの植え込み型医療機器に、或いは他のいずれかの埋め込み可能な医療器具における使用に適合されることができる。遠隔操作用器具46は、治療を行なうように適合された、または生物学的機能をモニタリングするように適合された、圧力センサ、グルコース濃度モニタ、肺音センサ、ボリュームセンサ、衛星を介してデータ伝送を行なうペーシング器具、または他のいずれかの遠隔操作型検出器または治療用器具のようないずれかの種類の長期体内埋植器具またはリモートセンサを含むことができ、そして所望の生物学的パラメータを検出する、または治療を行なうために適合する体内のあらゆる部位に配置することができる。複数の遠隔操作用器具46は体内のどこにでも、そして互いに、かつIMD10と無線通信するように埋め込むことができる。
【0037】
種々の変更及び追加を、議論した例示としての実施形態に対して、本発明の技術範囲から逸脱しない限り行なうことができる。例えば、上に説明した実施形態は特定の特徴に関して記載されているが、本発明の技術範囲には、複数の特徴の異なる組み合わせを有する実施形態、及び記載の特徴の全てを含む訳ではない実施形態が含まれる。従って、本発明の技術範囲は、このような代替物、変形物、及び変更物の全てを、請求項の全ての等価物を含む請求項の範囲に含まれるものとして包含するものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、植え込み型医療機器と組み合わせて使用されることにより無線通信を、植え込み型医療機器と体内に植え込まれる遠隔操作用器具との間で行なうトランスデューサに関するものである。本発明は更に詳細には、金属製キャビティを備える植え込み型医療機器と組み合わせて使用される超音波トランスデューサに関するものである。
【0002】
本出願は、2006年7月21日出願の仮出願第60/820,055号の優先権を主張するものであり、当該仮出願を本明細書において参照することにより、当該仮出願の内容全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
植え込み型医療機器は多くの場合、種々の症状を治療するために使用される。植え込み型医療機器の例として、薬剤投与器具、鎮痛装置、及び心臓不整脈を治療する器具を挙げることができる。心臓不整脈を治療するために使用される植え込み型医療機器の一例が心臓ペースメーカであり、心臓ペースメーカは普通、患者の体内に埋め込まれることにより除脈(すなわち、異常に遅い心臓の拍動)を治療する。ペースメーカはパルス発生器及び複数のリード線を含み、これらのリード線は、パルス発生器と心臓との間の電気接続を形成する。植え込み型除細動器(ICD)を使用して頻脈(すなわち、異常に速い心臓の拍動)を治療する。ICDもパルス発生器及び複数のリード線を含み、これらのリード線は、電気エネルギーを心臓に供給する。パルス発生器は通常、バッテリ及び電気回路を収容する金属ハウジングと、そしてリード線をパルス発生器に接続するヘッダと、を含む。
【0004】
植え込み型医療機器は、心不全の治療にも有用である。心臓再同期療法(CRT)(普通、両室ペーシングとも表記される)は、心不全に対する新しい治療法であり、この治療法では、右心室及び左心室の両方を刺激して血流効率及び心拍出量を上げる。心不全及び心臓不整脈の治療は、遠隔操作用の植え込み型器具を使用することにより向上させることができる。このような遠隔操作用器具の一つの例が脈管系内に配置される圧力センサである。植え込み型医療機器と遠隔操作用器具との間で通信することによって、センサデータを臨床医がダウンロードすることができ、センサデータを使用して、植え込み型医療機器、または両方の器具によって行なわれる治療を変更する。従って、遠隔操作用の植え込み型器具との通信を行なうトランスデューサを含む植え込み型医療機器が必要になる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態による本発明は植え込み型医療機器であり、植え込み型医療機器は、ハウジングと、そして伝搬周波数を有し、かつハウジングの一部分に接続される超音波トランスデューサとを備える。ハウジングは伝搬周波数で共振し、そして包装体がハウジングに接続され、かつ超音波トランスデューサを覆って配置される。包装体は、超音波トランスデューサの変形を曲げモードで拡大させ、そして曲げモーメントをハウジングに伝達するように適合される。
【0006】
別の実施形態による本発明は植え込み型医療機器であり、植え込み型医療機器は、上側部分及び下側部分を有するハウジングを備える。第1超音波トランスデューサが第1接続ロッドに接続され、かつ第1接続ロッドと同軸に設けられる。第1超音波トランスデューサ及び第1接続ロッドを上側部分と下側部分との間に配置して、第1超音波トランスデューサが上側部分及び下側部分を同時に振動させるように適合される。
【0007】
更に別の実施形態による本発明は、植え込み型医療機器の超音波トランスデューサ及びハウジングを最適化する方法である。本方法は、超音波トランスデューサに関するシステムレベルの要件を規定するステップと、そして第1超音波トランスデューサを、システムレベルの要件に基づいて選択するステップとを含む。第1の有限要素法分析を行なって、第1トランスデューサの実現可能性を検証し、そして第2の有限要素法分析及び水槽実験を行なって、ハウジング及び超音波トランスデューサが目標超音波伝搬周波数において所望の振動モードを有するかどうかについて判断する。超音波トランスデューサを、またはハウジングの構造を、第1及び第2の有限要素法分析、及び水槽実験を行なった結果に基づいて最適化する。最適化された超音波トランスデューサの共振周波数及び振幅を、有限要素法分析及び水槽実験を利用して検証する。最終的な超音波トランスデューサ及びハウジングの構造を、検証ステップの結果に基づいて選択する。
【0008】
複数の実施形態が開示されるが、本発明の更に別の実施形態が存在することは、この技術分野の当業者には、以下の詳細な記載から明らかであり、以下の詳細な記載では、本発明の例示としての実施形態が示され、そして記載される。従って、図面及び詳細な記述は本質的に例示として捉えられるべきであり、本発明を制限するものとして捉えられるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の1つの実施形態による植え込み型医療機器の断面透視図である。
【図2】本発明の1つの実施形態による図1の植え込み型医療機器の内部の正面図である。
【図3】図A,Bは、図2の植え込み型医療機器の種々の図を示している。
【図4】図A,Bは、本発明の別の実施形態による植え込み型医療機器の種々の図である。
【図5】図A,Bは、本発明の更に別の実施形態による植え込み型医療機器の種々の図である。
【図6】本発明の別の実施形態による植え込み型医療機器の断面図である。
【図7】図A,Bは、本発明の別の実施形態による植え込み型医療機器の種々の図である。
【図8】本発明の更に別の実施形態による植え込み型医療機器の断面図である。
【図9】図A,Bは、本発明の別の実施形態による植え込み型医療機器の種々の図である。
【図10】図A,Bは、本発明の別の実施形態による植え込み型医療機器の種々の図である。
【図11】図A,Bは、本発明の別の実施形態による植え込み型医療機器の種々の図である。
【図12】本発明の更に別の実施形態による植え込み型医療機器の断面図である。
【図13】本発明の更に別の実施形態による植え込み型医療機器の断面図である。
【図14】本発明による超音波トランスデューサを有する植え込み型医療機器を最適化する例示としての方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は種々の変形物及び代替形態に変更することができるが、特定の実施形態が例示として図面に示されており、そして以下に詳細に記載される。しかしながら、本発明を、記載される特定の実施形態に制限しようと意図するのではない。そうではなく、本発明は、全ての変形物、等価物、及び代替物を、添付の請求項に規定される本発明の技術的範囲に含まれるものとして包含するものである。
【0011】
図1は、植え込み型医療機器(IMD)10の透視図である。IMD10はパルス発生器12と、そして心臓リード線14と、を含む。リード線14は、電気信号を心臓16とパルス発生器12との間で伝送するように機能する。リード線14の近位端18はパルス発生器12に接続され、そして遠位端20は心臓16に接続される。リード線14は、リード近位端18からリード遠位端20に延びるリード線本体17を含む。
【0012】
心臓16は、右心房22と、右心室24と、そして肺動脈26と、を含む。三尖弁28は右心房22と右心室24との間に位置し、かつ右心房22から右心室24への血流を制御する。肺動脈弁30は右心室24と肺動脈26との間に位置し、かつ右心室24から肺動脈26への血流を制御する。心臓16は更に、左心房32と、左心室34と、そして大動脈36と、を含む。僧帽弁38は左心房32と左心室34との間に位置し、かつ左心房32から左心室34への血流を制御する。大動脈弁40は左心室34と大動脈36との間に位置し、かつ左心室34から大動脈36への血流を制御する。1つの実施形態では、IMD10は複数のリード線14を含む。例えば、IMD10は、電気信号をパルス発生器12と左心室34との間で伝送するように適合された第1リード線14と、そして電気信号をパルス発生器12と右心室24との間で伝送するように適合された第2リード線14とを含む。
【0013】
図1に示す実施形態では、螺旋電極42が右心室24の心内膜43を貫通し、そして心臓16の心筋44に埋め込まれる。上記のように配置される場合、電極42を使用することにより、心臓16の電気的活動を検出する、または刺激パルスを右心室24に印加することができる。他の実施形態では、本発明の心臓リード線14は、この技術分野では公知の如く、心臓16の他のいずれかの部分に埋め込むこともできる。例えば、リード線14は、右心房22、右心室24、肺動脈26、左心室34に、または冠状静脈に埋め込むことができる。1つの実施形態では、IMD10は複数の電極42を含み、これらの電極は、電気的活動を検出し、そして/または治療を心臓16の左側及び右側の両方に行なうように配置される。1つの実施形態では、リード線14は心外膜リード線とすることができ、この場合、電極42が心外膜45を貫通する。
【0014】
図1に示すように、遠隔操作用器具46は肺動脈26内に配置される。別の構成として、遠隔操作用器具46は右心室24内、大動脈36内に配置することができ、また心臓16内または脈管系内の、或いは心臓16または脈管系の近傍の他のいずれかの位置に配置することができる。図1に示す遠隔操作用器具46は圧力センサを含む。図1に示す遠隔操作用器具46を使用することにより、肺動脈26内の圧力を測定することができる。1つの実施形態では、遠隔操作用器具46は、収縮終期圧を肺動脈26内で測定する。検出される血圧を利用して、心不全患者の代償不全を予測する、またはペーシング治療または除細動治療を最適化することができる。圧力を測定するように適合された圧力センサの一例が、Wolinskyらによる米国特許第6,764,446号明細書に開示されている。
【0015】
図1に示すIMD10は心臓ペースメーカを備えるが、IMD10は体内埋め込みに適する他のいずれかの医療器具を備えることができる。例えば、IMD10は薬剤投与器具または鎮痛装置を備えることができる。遠隔操作用器具46は、治療を行なうように、または生物学的機能をモニタリングするように適合されたいずれかのタイプの長期体内埋植器具またはリモートセンサを含むことができる。遠隔操作用器具46は、所望の生物学的パラメータを検出する、または治療を行なうために適合する体内のいずれの位置にも配置することができる。例えば、遠隔操作用器具46は、ボリュームセンサを含む、または最高血圧または最低血圧のような他のいずれかの心臓パラメータを検出する、或いは血圧勾配のような心臓パラメータの微分を計算することができる。他の実施形態では、遠隔操作用器具46は、グルコースレベルモニタ、肺音センサ、衛星を介してデータ伝送を行なうペーシング器具、または他のいずれかのリモートセンシング装置または治療用器具を含むことができる。複数の遠隔操作用器具46は体内のどこにでも、そして互いに、かつIMD10と無線通信するように埋め込むことができる。
【0016】
図2は、パルス発生器12の内部の正面図を示している。パルス発生器12はハウジング48と、そしてヘッダ50と、を含む。超音波トランスデューサ52をハウジング48の内部に取り付け、そして制御回路(図示せず)に電気的に接続する。超音波トランスデューサ52はセンサ、アクチュエータとして、またはセンサ及びアクチュエータの両方として使用することができる。図3A,3Bはハウジング48の断面図を示している。超音波トランスデューサ52は電極54を含み、そしてハウジング48の内部に絶縁接着層55によって接着させることができる。図2に示す実施形態では、超音波トランスデューサ52は円形形状を有するが、超音波トランスデューサは、矩形、梁状形状、円形、環状形、または三角形のような他のいずれかの形状を採ることができる。
【0017】
1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52は圧電材料を含む。超音波トランスデューサ52に使用するために適合する圧電材料は、圧電ポリマー材料、圧電結晶材料、または圧電セラミック材料を含む。1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52は二フッ化ポリビニリデン(PVDF)材料を含むことができる。別の実施形態では、超音波トランスデューサ52はジルコン酸チタン酸鉛(PZT)材料を含むことができる。更に別の実施形態では、超音波トランスデューサは、マグネシウムニオブ酸−チタン酸鉛(PMN−PT)のような圧電単結晶材料を含むことができる。他の実施形態では、超音波トランスデューサ52は、cMUT(容量型超微細加工超音波)トランスデューサを含むことができる。PZT材料が使用される1つの実施形態では、PZT材料の厚さは、ハウジング48の厚さとほぼ同じである。1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52はPZT5A材料を含み、25.4ミリメートル以下の直径を有し、そして3ミリメートル以下の厚さを有する。
【0018】
図3A,3Bに示すように、一方の電極54をAC電圧源に接続し、そして他方の電極54をグランドに接続する(電極54の厚さはこれらの図では寸法通りには描かれていない)。AC電圧を超音波トランスデューサ52に印加することにより、超音波トランスデューサを所望の周波数で振動させることができる。別の構成として、両方の電極54を、この技術分野の当業者には公知のように、Hブリッジによって同時に駆動することができる。1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52は、約20キロヘルツ超の機械共振周波数を有する。別の実施形態では、超音波トランスデューサ52は、約40キロヘルツの機械共振周波数を有する。更に別の実施形態では、超音波トランスデューサ52は、電気共振モードで動作することができる。
【0019】
1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52は、約20キロヘルツ超の周波数を有する超音波を生成し、そして受信するように適合され、0.25メートル水深での約100パスカル/ボルトを超える送信感度、または1メートル水深での1マイクロパスカル/ボルトを基準とした(re)約148デシベル(dB)を超える送信電圧応答(TVR)を有し、約0.5ミリボルト/パスカルを超える受信感度、または1ボルト/マイクロパスカルを基準とした−186dBを超える自由音場感度(free−field voltage sensitivity:FFVS)を有し、そして約20ナノファラド以下の合計静電容量を有する。別の実施形態では、超音波トランスデューサ52は、約40キロヘルツ超の周波数を有する超音波を生成し、そして受信するように適合され、0.25メートル水深での約200パスカル/ボルトを超える送信感度、または1メートル水深での1マイクロパスカル/ボルトを基準とした約154デシベルを超えるTVRを有し、約0.5ミリボルト/パスカルを超える受信感度、または1ボルト/マイクロパスカルを基準とした−186dBを超えるFFVSを有し、そして約8ナノファラド以下の合計静電容量を有する。
【0020】
超音波トランスデューサ52は、IMD10と遠隔操作用器具46との間の無線通信に使用することができる。図3Bに示すように、超音波信号はIMD10から遠隔操作用器具46に、AC電圧を超音波トランスデューサ52に印加して、または電荷変化を超音波トランスデューサ52に起こして、超音波トランスデューサ52が変形し、そしてパルス発生器のハウジング48が、この変形に応答して振動するようにすることにより伝達される。遠隔操作用器具46から送信される超音波信号を超音波トランスデューサ52が受信すると、超音波を照射することによってハウジング48が機械的に振動するので、電圧変化または電荷密度変化が超音波トランスデューサ52に発生し、この変化が制御回路(図示せず)によって検出される。
【0021】
図4A,4Bは、包装体62が超音波トランスデューサ52を閉じ込める構成の本発明の1つの実施形態を示している。包装体62は2つの機能を提供する。第1の機能では、包装体62は、超音波トランスデューサ52が変形するときに曲がることにより、曲げモーメントをハウジング48に加える。第2の機能では、包装体62は、特にハウジング48が所望の周波数において共振モードを有する場合に超音波トランスデューサ52の変形を機械的に拡大する。1つの実施形態では、包装体62は、25ミリメートル超の直径、4ミリメートル未満の高さ、0.2〜1ミリメートルの表層厚み、及び3〜6ミリメートルの壁厚を有する。1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52は包装体62に取り付けられ、そして超音波トランスデューサ52とハウジング48との間に隙間または空間を設けることができる。別の実施形態では、超音波トランスデューサ52はハウジング48に取り付けられ、そして超音波トランスデューサ52と包装体62との間に隙間を設けることができる。
【0022】
図5A,5B、及び6は、超音波トランスデューサ52を有するIMD10の別の実施形態を示している。図5A,5Bに示すように、ハウジング48は、ハウジング48のほとんどの部分よりも細い断面を有する環状領域64を含む。図5Aに示す領域64は「射的の的」を含むが、別の構成として、複数の矩形または円形のような他のいずれかの形状を有することができる。図5Bに示すように、超音波トランスデューサ52が領域64に隣接することにより、ハウジング48の振動、移動、及び/又は変形の拡大が可能になる。1つの実施形態では、領域64の厚さは約0.12ミリメートルである。図6は、領域64が、ハウジング48の内、超音波トランスデューサ52の下方に位置する皺領域または波形領域の形態を採る別のハウジング48を示している。図5A,5B及び6に示す隙間66は、空気、窒素、他の或る種類のガスを含むことができる、または真空とすることができる。図示のように、図5A,5B及び6は、図4A,4Bに関して説明した包装体62を含むが、別の実施形態では、包装体62は設ける必要はない。
【0023】
図7A,7Bは、超音波トランスデューサ52を有するIMD10の別の実施形態を示している。この実施形態では、超音波トランスデューサ52は環状形を有する。超音波トランスデューサ52は制限構造として機能し、そして超音波トランスデューサ52によって領域56の共振特性が、領域56の境界条件が設定されることにより定義される。領域56の共振特性によって、超音波トランスデューサ52の性能が向上する。領域56の共振周波数と同じ周波数を有する超音波を領域56に照射すると、領域56が振動することにより、超音波トランスデューサ52が変形する。この変形によって、電圧変化または電荷変化が超音波トランスデューサ52に発生し、この変化が制御回路によって検出される。超音波トランスデューサ52を、共振周波数のAC電圧またはHブリッジを使用して駆動することにより、超音波トランスデューサ52が周期的に変形する。この変形によって、領域56が共振周波数で振動するので、超音波が領域56から所望の周波数で送信される。
【0024】
超音波トランスデューサ52の寸法は、ISBN 1−57524−184−6に掲載されたBlevinsによる「固有周波数及びモード形状を表わす公式」と題する論文に記載された以下の数式を使用して求めることができ、この論文をここで参照することにより、当該論文の内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0025】
【数1】
上の数式の中に使用されるように、aはプレート半径であり、hはプレート厚さであり、Eはヤング率であり、νはポアソン比であり、ρは密度であり、γは質量/単位面積またはρ*hであり、そしてλはBlevinsの論文に現われるモード形状によって変わる無次元の周波数パラメータである。
【0026】
1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52はPZT材料を含み、そして超音波トランスデューサ52によって約20キロヘルツ超の機械共振周波数を有する領域56が画定される。環状圧電トランスデューサ52が、4.2ミリメートルの内径、8.4ミリメートルの外径、及び2ミリメートルの厚さを有する場合に、ハウジング48がチタンを含み、かつモード00の場合にλ=3.19であり、E=116ギガパスカル、ν=0.3、h=0.3ミリメートル、及びρ=4500kg/m3、及びa=4.2ミリメートルである1つの実施形態では、領域56の第1モードの固有周波数fは40kHzに設定される。超音波トランスデューサ52は、ハウジング48にエポキシまたは医用接着剤を使用して接着させることができる。Blevinsは、更に別の形状及び境界条件に対応する更に別のモード共振周波数の数式を提供している。
【0027】
図8に示す実施形態では、超音波トランスデューサ52は非能動的制限構造58に機械的に接着される。図示のように、制限構造58は環状形を有し、そして共振領域56を画定する。非能動的制限構造58を使用することにより、超音波トランスデューサ52の送信感度及び受信感度の両方を、共振領域56が超音波トランスデューサ52と同じ共振周波数を有する場合に高めることができる。非能動的制限構造58は変形を、超音波トランスデューサ52とハウジング48との間で伝達する。例えば、超音波トランスデューサ52が受信モードになっている場合、超音波を照射することにより共振領域56が振動し、そして結果として生じる変形が超音波トランスデューサ52に非能動的制限構造58を介して伝達される。超音波トランスデューサ52が送信モードになっている場合、超音波トランスデューサ52を作動させることにより、超音波トランスデューサが共振周波数で振動し、次にこの振動がハウジング48に非能動的制限構造58を介して伝達されるので、共振領域56が共振周波数で振動する。非能動的制限構造58は、チタン、アルミニウム、ステンレス鋼、セラミック材料、または他のいずれかの剛性材料により構成することができる。超音波トランスデューサ52と共振領域56との隙間60には空気、窒素、他の或る種類のガスを充填することができる、または隙間60は真空とすることができる。
【0028】
図9A,9Bは、IMD10の別の実施形態を示している。図9Aに示すように、制限構造58はハウジング48のコーナー70に配置され、ほぼ部分円形状を有し、そして共振領域56を画定する。超音波トランスデューサ52はハウジング48に接着させ、そして制限構造58から延出して共振領域56に食い込んでいる。1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52の長さは、共振領域56の歪み/応力分布によって決まる。1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52の変形は制限構造58によって制限され、そして超音波トランスデューサ52は、共振領域56の半径の半分以下の長さを有する。図9Bの断面図に示すように、制限構造58はハウジングの背面壁72に届くまで延出することはないが、別の実施形態では、制限構造58は背面壁72に届くまで延出することができる。更に別の実施形態では、制限構造58はハウジング48の外部に配置することができる。1つの実施形態では、制限構造58は、ハウジング48の外部に配置される環状リングの形状を採ることができる。
【0029】
図10A,10Bは、本発明の更に別の実施形態を示している。この実施形態では、超音波トランスデューサ52はハウジング48のコーナー70に配置される。図10Aに示す市松模様パターンは、約40キロヘルツのハウジング48のモード形状を表わす。領域73は、ハウジング48の内、Z軸方向に移動している領域を表わす。これらの領域73は、Z軸に沿った正方向または負方向のいずれの方向にも移動することができる。ドット領域73は、無ドット領域73がZ軸に沿った負正方向に移動することができる状態になっている間に、Z軸に沿った正方向に移動することができる。市松模様パターンのライン74はノーダル領域を表わす、またはハウジングがZ軸に対して動かない位置のラインを表わす。図示の実施形態では、コーナー70は制限構造として機能し、そして共振領域56を画定するが、他の実施形態では、トランスデューサ52は、ノーダルライン74によって共振領域56が形成される位置の領域73に配置することができる。図示のように、超音波トランスデューサ52は上面76に接着させ、かつ共振領域56内に配置される。1つの実施形態では、超音波トランスデューサ52は、応力及び歪みが最大になる領域の内部に配置される。他の実施形態では、ハウジング48自体の形状を変更して、所望の周波数特性を実現することができる。他の実施形態では、ハウジング48はエンボス加工することができる、またはハウジング48に「窪み」を設けることにより、所望の周波数特性を実現することができる。
【0030】
図11A,11Bは、本発明のIMD10の更に別の実施形態を示している。この実施形態では、ヘッダ50は制限構造として超音波トランスデューサ52に作用する。開口78がヘッダ50内に配置され、そして開口78によって共振領域56が画定される。超音波トランスデューサ52は共振領域56の内部にまで延出し、そしてハウジング48の内部に接着させる。
【0031】
図12は、本発明のIMD10の別の実施形態の断面図を示している。IMD10はハウジング48を含み、ハウジング48は上側部分48a及び下側部分48bを有する。接続ロッド84を上側部分48aに接続し、そして第2の接続ロッド84を下側部分48bに接続する。超音波トランスデューサ52は2つの接続ロッド84の間に挟まれる。接続ロッド84は図12ではベル形を有するが、他のいずれかの形状を有することができる。図12の超音波トランスデューサ52を作動させる場合、部分48a,48bが振動し、超音波が2つの方向に伝搬する。超音波トランスデューサ52の厚さは、超音波を生成するハウジング48の所望の作動変位量に従って調整することができる。
【0032】
図13は、超音波トランスデューサ52を各部分48a,48bに接続し、かつ2つの接続ロッド84がこれらの超音波トランスデューサ52の間に挟まれる構成の別の実施形態の断面図を示している。図13に示す構造によって更に、超音波は2つの方向に同時に伝搬することができる。図13の構造が対称であるので、超音波トランスデューサ52及び接続ロッド84の設計及び作製を容易にすることができる。
【0033】
図12及び13に示す実施形態によって、超音波トランスデューサまたは超音波トランスデューサ群の感度が高くなる。超音波トランスデューサまたは超音波トランスデューサ群52は、PZTまたはPVDFのような圧電材料を含むことができる。図12及び13では、部分48a,48bによって予備応力を超音波トランスデューサまたは超音波トランスデューサ群52に加えることができる。1つの実施形態では、超音波トランスデューサまたは超音波トランスデューサ群52、及び接続ロッド84は厚さ方向モードで共振する。別の実施形態では、超音波トランスデューサまたは超音波トランスデューサ群52、及び接続ロッド84は動径モードで共振する。1つの実施形態では、接続ロッド84及び超音波トランスデューサ52の合計厚さは、伝搬周波数の波長の約半分である。1つの実施形態では、接続ロッド84及び超音波トランスデューサ52の合計厚さは、6〜7ミリメートルである。別の実施形態では、単一の接続ロッド84及び単一の超音波トランスデューサ52が部分48aと48bとの間に挟まれる。1つの実施形態では、単一の超音波トランスデューサ52は、直径1センチメートル、厚さ1ミリメートルのPZT材料を含む。接続ロッド84は、約6ミリメートルの高さ、1センチメートルの最小直径、2.5センチメートルの最大直径、及び約3ミリメートルの高さから始まる先細り部分を有する。1つの実施形態では、ハウジング48の厚さは0.3〜2ミリメートルであり、そしてハウジング48の幅は約2.5〜5センチメートルである。
【0034】
図14は、超音波トランスデューサ52、及びIMD10を最適化して遠隔操作用器具46と無線通信する例示としての方法200を示している。電力消費予定量、トランスデューサ感度、機械的サイズ、材料選択、及び金属製ハウジング48の振動モードのようなシステムレベル要件を決定する(ブロック210)。第1超音波トランスデューサ52を、システムレベル要件に基づいて選択する(ブロック220)。この技術分野の当業者には公知の有限要素法(FEM)分析を行なって、簡易構造の第1トランスデューサの実現可能性を検証する(ブロック230)。この実施形態では、実現可能性の検証では、超音波トランスデューサ52のシステムレベル属性がシステムレベル要件の許容範囲内に収まるかどうかについて判断する。FEM(有限要素法)及び水槽実験を利用して、金属製ハウジング48及び超音波トランスデューサ52が目標超音波伝搬周波数の所望の振動モードを有するかどうかについて判断する(ブロック240)。設計は、ハウジング48の構造を変化させ、包装体62を組み込み、包装体62の構造を変更し、寸法を含む超音波トランスデューサ52の特性を変更する、またはこれらの操作を組み合わせることにより最適化することができる(ブロック250)。
【0035】
一旦、構造が更に微調整されると、超音波トランスデューサ52の水中共振周波数及び振幅は、有限要素法モデル及び水槽実験を利用して検証することができる(ブロック260)。実験は水槽の中で水中聴音器を使用して行なうことができ、そして実験では、走査型レーザ振動計(SLV)を利用することができる。一つのこのようなSLVは、ドイツのヴァルトブロンのPolytec−Platz 1−7, D−76337を所在地とするPolytec GmbH社から入手することができる。設計はこの場合も同じようにして、ハウジング48の構造、超音波トランスデューサ52の構造などのようなパラメータを変化させることにより最適化することができる(ブロック250)。この最適化を、所望の共振特性が得られ、そして最終形態の超音波トランスデューサ構造が得られるまで繰り返す(ブロック270)。
【0036】
本発明を、ペースメーカ及び除細動器のような植え込み型医療機器に関して説明してきたが、本発明は、インスリンポンプ、神経刺激装置、薬剤投与システム、疼痛管理システム、心拍センサまたは肺音センサのような他のいずれかの植え込み型医療機器に、或いは他のいずれかの埋め込み可能な医療器具における使用に適合されることができる。遠隔操作用器具46は、治療を行なうように適合された、または生物学的機能をモニタリングするように適合された、圧力センサ、グルコース濃度モニタ、肺音センサ、ボリュームセンサ、衛星を介してデータ伝送を行なうペーシング器具、または他のいずれかの遠隔操作型検出器または治療用器具のようないずれかの種類の長期体内埋植器具またはリモートセンサを含むことができ、そして所望の生物学的パラメータを検出する、または治療を行なうために適合する体内のあらゆる部位に配置することができる。複数の遠隔操作用器具46は体内のどこにでも、そして互いに、かつIMD10と無線通信するように埋め込むことができる。
【0037】
種々の変更及び追加を、議論した例示としての実施形態に対して、本発明の技術範囲から逸脱しない限り行なうことができる。例えば、上に説明した実施形態は特定の特徴に関して記載されているが、本発明の技術範囲には、複数の特徴の異なる組み合わせを有する実施形態、及び記載の特徴の全てを含む訳ではない実施形態が含まれる。従って、本発明の技術範囲は、このような代替物、変形物、及び変更物の全てを、請求項の全ての等価物を含む請求項の範囲に含まれるものとして包含するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
伝搬周波数を有し、かつ前記伝搬周波数で共振するハウジングの一部分に接続される超音波トランスデューサと、
前記ハウジングに接続され、前記超音波トランスデューサを覆って配置される包装体とを備え、前記包装体は、前記超音波トランスデューサの変形を曲げモードで増幅し、曲げモーメントをハウジングに伝達するように適合されている、植え込み型医療機器。
【請求項2】
パルス発生器を備える、請求項1記載の植え込み型医療機器。
【請求項3】
前記超音波トランスデューサは圧電材料を含む、請求項1記載の植え込み型医療機器。
【請求項4】
前記圧電材料は二フッ化ポリビニリデン(PVDF)材料を含む、請求項3記載の植え込み型医療機器。
【請求項5】
前記超音波トランスデューサはマグネシウムニオブ酸−チタン酸鉛(PMN−PT)を含む、請求項3記載の植え込み型医療機器。
【請求項6】
前記圧電材料はジルコン酸チタン酸鉛(PZT)材料を含む、請求項3記載の植え込み型医療機器。
【請求項7】
前記超音波トランスデューサは円形形状と、約25.4ミリメートル以下の直径と、約3ミリメートル以下の厚さとを有する、請求項6記載の植え込み型医療機器。
【請求項8】
前記包装体は、約25.4ミリメートル超の直径と、約4ミリメートル未満の高さと、約0.2〜1ミリメートルの表層厚さと、約3〜6ミリメートル未満の壁厚とを有する、請求項1記載の植え込み型医療機器。
【請求項9】
前記超音波トランスデューサは、約20キロヘルツ超の機械共振周波数を有する、請求項1記載の植え込み型医療機器。
【請求項10】
前記超音波トランスデューサは、約40キロヘルツの機械共振周波数を有する、請求項1記載の植え込み型医療機器。
【請求項11】
前記ハウジングは、ハウジングのほとんどの部分よりも薄い断面を有する薄厚化領域を含み、前記超音波トランスデューサは薄厚化領域に隣接して配置される、請求項1記載の植え込み型医療機器。
【請求項12】
前記薄厚化領域は環状形を有する、請求項11記載の植え込み型医療機器。
【請求項13】
前記薄厚化領域は波形状または皺形状を有する、請求項11記載の植え込み型医療機器。
【請求項14】
上側部分及び下側部分を有するハウジングと、
第1接続ロッドに接続され、前記第1接続ロッドと同軸に設けられる第1超音波トランスデューサと
を備え、 前記第1超音波トランスデューサは前記上側部分及び下側部分を同時に振動させるように適合されるように、前記第1超音波トランスデューサ及び前記第1接続ロッドが前記上側部分と下側部分との間に配置される、植え込み型医療機器。
【請求項15】
前記第1超音波トランスデューサ及び前記第1接続ロッドと同軸に設けられ、前記上側部分と下側部分との間に配置される第2超音波トランスデューサを更に備える、請求項14記載の植え込み型医療機器。
【請求項16】
前記第1超音波トランスデューサ及び前記第1接続ロッドと同軸に設けられ、前記上側部分と下側部分との間に配置される第2接続ロッドを更に備える、請求項14記載の植え込み型医療機器。
【請求項17】
第2接続ロッドと第2超音波トランスデューサとを更に備え、前記第2接続ロッド及び第2超音波トランスデューサは、前記第1超音波トランスデューサ及び第1接続ロッドと同軸に設けられ、前記上側部分と下側部分との間に配置される、請求項14記載の植え込み型医療機器。
【請求項18】
前記第1接続ロッドと前記第1超音波トランスデューサとの厚さの合計は、約6〜7ミリメートルである、請求項14記載の植え込み型医療機器。
【請求項19】
前記第1超音波トランスデューサは約1センチメートルの直径と約1ミリメートルの高さとを有するジルコン酸チタン酸鉛(PZT)材料を含み、前記接続ロッドは、約6ミリメートルの高さと約1センチメートルの最小直径と約2.5センチメートルの最大直径と約3ミリメートルの高さから始まる先細り部分とを有し、ハウジングの厚さは0.3〜2ミリメートルであり、ハウジングの幅は約2.5〜5センチメートルである、請求項14記載の植え込み型医療機器。
【請求項20】
植え込み型医療機器の超音波トランスデューサ及びハウジングを最適化する方法であって、
超音波トランスデューサに関するシステムレベル要件を決定するステップと、
第1超音波トランスデューサを、システムレベル要件に基づいて選択するステップと、
第1の有限要素法分析を行なって、前記第1超音波トランスデューサの実現可能性を検証するステップと、
第2の有限要素法分析及び水槽実験を行なって、前記ハウジングと超音波トランスデューサとが目標超音波伝搬周波数において所望の振動モードを有するかどうかについて判断するステップと、
前記超音波トランスデューサまたは前記ハウジングの構造を、前記第1及び第2の有限要素法分析と水槽実験を行なった結果とに基づいて最適化するステップと、
前記最適化された超音波トランスデューサの共振周波数及び振幅を、有限要素法分析及び水槽実験を利用して検証するステップと、
最終的な超音波トランスデューサ及びハウジング構造を、前記検証するステップの結果に基づいて選択するステップと
を備える方法。
【請求項21】
第2の有限要素法分析及び水槽実験を行なうステップは、水槽実験を行なうステップ、及び走査型レーザ振動計(SLV)を利用した測定を行なうステップの内の少なくとも一つのステップを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記検証するステップは、水槽実験を行なうステップ、及び走査型レーザ振動計(SLV)を利用した測定を行なうステップの内の少なくとも一つのステップを含む、請求項20記載の方法。
【請求項1】
ハウジングと、
伝搬周波数を有し、かつ前記伝搬周波数で共振するハウジングの一部分に接続される超音波トランスデューサと、
前記ハウジングに接続され、前記超音波トランスデューサを覆って配置される包装体とを備え、前記包装体は、前記超音波トランスデューサの変形を曲げモードで増幅し、曲げモーメントをハウジングに伝達するように適合されている、植え込み型医療機器。
【請求項2】
パルス発生器を備える、請求項1記載の植え込み型医療機器。
【請求項3】
前記超音波トランスデューサは圧電材料を含む、請求項1記載の植え込み型医療機器。
【請求項4】
前記圧電材料は二フッ化ポリビニリデン(PVDF)材料を含む、請求項3記載の植え込み型医療機器。
【請求項5】
前記超音波トランスデューサはマグネシウムニオブ酸−チタン酸鉛(PMN−PT)を含む、請求項3記載の植え込み型医療機器。
【請求項6】
前記圧電材料はジルコン酸チタン酸鉛(PZT)材料を含む、請求項3記載の植え込み型医療機器。
【請求項7】
前記超音波トランスデューサは円形形状と、約25.4ミリメートル以下の直径と、約3ミリメートル以下の厚さとを有する、請求項6記載の植え込み型医療機器。
【請求項8】
前記包装体は、約25.4ミリメートル超の直径と、約4ミリメートル未満の高さと、約0.2〜1ミリメートルの表層厚さと、約3〜6ミリメートル未満の壁厚とを有する、請求項1記載の植え込み型医療機器。
【請求項9】
前記超音波トランスデューサは、約20キロヘルツ超の機械共振周波数を有する、請求項1記載の植え込み型医療機器。
【請求項10】
前記超音波トランスデューサは、約40キロヘルツの機械共振周波数を有する、請求項1記載の植え込み型医療機器。
【請求項11】
前記ハウジングは、ハウジングのほとんどの部分よりも薄い断面を有する薄厚化領域を含み、前記超音波トランスデューサは薄厚化領域に隣接して配置される、請求項1記載の植え込み型医療機器。
【請求項12】
前記薄厚化領域は環状形を有する、請求項11記載の植え込み型医療機器。
【請求項13】
前記薄厚化領域は波形状または皺形状を有する、請求項11記載の植え込み型医療機器。
【請求項14】
上側部分及び下側部分を有するハウジングと、
第1接続ロッドに接続され、前記第1接続ロッドと同軸に設けられる第1超音波トランスデューサと
を備え、 前記第1超音波トランスデューサは前記上側部分及び下側部分を同時に振動させるように適合されるように、前記第1超音波トランスデューサ及び前記第1接続ロッドが前記上側部分と下側部分との間に配置される、植え込み型医療機器。
【請求項15】
前記第1超音波トランスデューサ及び前記第1接続ロッドと同軸に設けられ、前記上側部分と下側部分との間に配置される第2超音波トランスデューサを更に備える、請求項14記載の植え込み型医療機器。
【請求項16】
前記第1超音波トランスデューサ及び前記第1接続ロッドと同軸に設けられ、前記上側部分と下側部分との間に配置される第2接続ロッドを更に備える、請求項14記載の植え込み型医療機器。
【請求項17】
第2接続ロッドと第2超音波トランスデューサとを更に備え、前記第2接続ロッド及び第2超音波トランスデューサは、前記第1超音波トランスデューサ及び第1接続ロッドと同軸に設けられ、前記上側部分と下側部分との間に配置される、請求項14記載の植え込み型医療機器。
【請求項18】
前記第1接続ロッドと前記第1超音波トランスデューサとの厚さの合計は、約6〜7ミリメートルである、請求項14記載の植え込み型医療機器。
【請求項19】
前記第1超音波トランスデューサは約1センチメートルの直径と約1ミリメートルの高さとを有するジルコン酸チタン酸鉛(PZT)材料を含み、前記接続ロッドは、約6ミリメートルの高さと約1センチメートルの最小直径と約2.5センチメートルの最大直径と約3ミリメートルの高さから始まる先細り部分とを有し、ハウジングの厚さは0.3〜2ミリメートルであり、ハウジングの幅は約2.5〜5センチメートルである、請求項14記載の植え込み型医療機器。
【請求項20】
植え込み型医療機器の超音波トランスデューサ及びハウジングを最適化する方法であって、
超音波トランスデューサに関するシステムレベル要件を決定するステップと、
第1超音波トランスデューサを、システムレベル要件に基づいて選択するステップと、
第1の有限要素法分析を行なって、前記第1超音波トランスデューサの実現可能性を検証するステップと、
第2の有限要素法分析及び水槽実験を行なって、前記ハウジングと超音波トランスデューサとが目標超音波伝搬周波数において所望の振動モードを有するかどうかについて判断するステップと、
前記超音波トランスデューサまたは前記ハウジングの構造を、前記第1及び第2の有限要素法分析と水槽実験を行なった結果とに基づいて最適化するステップと、
前記最適化された超音波トランスデューサの共振周波数及び振幅を、有限要素法分析及び水槽実験を利用して検証するステップと、
最終的な超音波トランスデューサ及びハウジング構造を、前記検証するステップの結果に基づいて選択するステップと
を備える方法。
【請求項21】
第2の有限要素法分析及び水槽実験を行なうステップは、水槽実験を行なうステップ、及び走査型レーザ振動計(SLV)を利用した測定を行なうステップの内の少なくとも一つのステップを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記検証するステップは、水槽実験を行なうステップ、及び走査型レーザ振動計(SLV)を利用した測定を行なうステップの内の少なくとも一つのステップを含む、請求項20記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2009−544366(P2009−544366A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521021(P2009−521021)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/073998
【国際公開番号】WO2008/011577
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/073998
【国際公開番号】WO2008/011577
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
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