説明

金属製品の連続鋳造用鋳型へ液体金属を導入するためのノズルと、このノズルを備えた設備

【課題】 チムニー4を有し、このチムニー4の上端は固定手段6、7によって液体金属を収容する容器の出口ノズル1に結合され、その下端は鋳型10によって規定される鋳造空間13中へ液体金属を分配させる出口19, 20,20', 21, 41, 42,42', 43, 43', 44, 44' ,45, 45', 46, 46'を備えたノズル 3, 39, 50の端部に結合している形式の金属の連続鋳造用鋳型10へ液体金属を導入するためのノズル3, 39, 50 。
【解決方法】 バーナーのような加熱手段32, 32' を用いて上記端部の内側を加熱できるようにするためのための少なくとも1つの開口部17, 17' がこの端部の上側部分に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は金属、特に鋼の連続鋳造方法に関するものであり、特に断熱材料で作られた「ノズル(busette) 」といわれる管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】このノズルは上端が液体金属の貯蔵容器の役目をする容器に連結され、下端は鋳型内の溶融液体金属中に浸漬されている。金属の凝固は鋳型内で始まる。ノズルの役目は容器から鋳型まで移動する間に液体金属のジェット流が大気によって酸化されないように保護することにある。また、ノズルの下端を適当な形にすることによって鋳造品が可能最高条件で凝固するように鋳型内での液体金属流の向きを変えることができる。
【0003】一般に「平らな鋳造品」とよばれる極めて細長い長方形断面の鋳造品を得るための鋳型で行う鋳造は、製鋼では鋼をスラブすなわち幅が約 0.6〜3m、厚さが約20cmの鋳造品にする場合である。「薄板スラブ鋳造機」とよばれる最近のプラントでは数cmの薄さにすることもできる。これらの装置では鋳型は銅または銅合金の固定壁で構成され、金属と接触しない面が強制冷却される。
【0004】液体金属を直接凝固して厚さが数mmの鋼のストリップを直接製造するプラントの実験も行われている。この場合に使用される鋳型の鋳造空間は互いに逆方向へ回転する平行な水平軸線を有する一対の内部冷却ロールによって規定される「大きな側面」と、ロール端部に押圧された側壁とよばれる断熱材料のプレートによって閉じられた「小さい側面」とで区画される。ロールの代わりに冷却されたエンドレスベルトを使うこともできる。
【0005】鋳型内の金属の流れの向きを変えるためにはノズルの下端部を複雑な形状にして鋳造空間の大きな側面と平行な細長いノズルにする。特に、薄い鋳造品を2本のロール間で鋳造する場合には、ノズルの下端部が鋳造空間の大部分を占めようになる。しかも、鋳造開始時にノズル内側またはその回りで金属が固まらないようにするために断熱材料で作り、鋳造する前にこの断熱材料を慎重に予備加熱しなければならない。このことは横断面の一部を塞いでノズルの内側に障害物を設けて金属ヘッド(metal head)のロスを減らして金属の流れを安定化させた場合には特に必要である。
【0006】さらに、タンディッシュ内の金属温度が鋳造中に明らかに下がった場合(特に鋳造の最後の5分間)に凝固を防止するという安全上の理由で、最上品質の鋳造品が得られる冶金学的に望ましい温度以上の温度で金属を鋳造する必要があることも多い。また、鋳造中一定の温度に保つために誘導加熱装置またはプラズマトーチを用いてタンディッシュ内の金属を再加熱することもある。しかし、これらの装置はプラント建設費および運転費用を高くし、鋳造設備の構造を複雑にし、多量のエネルギーを消費する。さらに、鋳造中に鋳造品自体に作用する電気抵抗器の形をした加熱要素をノズルに取付けることも提案されている(特開平1-228,649号参照)が、このノズルは構造および使用が非常に複雑になる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ノズルの構造および使用を過度に複雑にしないで上記の熱の問題を大幅に解決可能なノズルおよび鋳造プラントを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、チムニーを有し、このチムニーの上端は固定手段によって液体金属を収容する容器の出口ノズルに結合され、その下端は鋳型によって規定される鋳造空間中へ液体金属を分配させる出口を備えたノズルの端部に結合している形式の金属の連続鋳造用鋳型へ液体金属を導入するためのノズルにおいて、バーナーのような加熱手段を用いて上記端部の内側を加熱できるようにするためのための少なくとも1つの開口部がこの端部の上側部分に形成されていることを特徴とするノズルを提供する。
【0009】本発明はさらに、ノズルが上記の形式であることを特徴とする、鋳造空間を規定する内部から強制冷却された壁を有する無底鋳型と、上端が液体金属を収容した容器に連結され、下端を介して液体金属を鋳造空間へ供給する断熱材料で作られたノズルとを有する形式の金属の連続鋳造設備を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明設備は一般のスラブ鋳造設備か、2本のロール間で鋳造する液体金属から薄板ストリップを直接鋳造する設備にすることができる。
【0011】以下で説明するように、本発明はノズルの内側を加熱可能なバーナーのような装置を通すことができる少なくとも1つの開口部を有するノズルを提供する。複数のバーナーを用いる好ましい実施例の場合には、対応数の開口部を設けなければならない。必要な場合には鋳造前にこのバーナーを使用することができる。鋳造中は開口部を常に液体金属の高さより上方に保持しなければならない。また、追加要素を少量ずつ液体金属に導入するために開口部を用いることもできる。必要な場合には、この追加要素による熱の損失を補償するためにバーナーを使用する。さらに、鋳造開始時に鋳造の開始を加速したり、一時的な擬似凝固を溶融するために、開口部を介して発熱粉末を金属に導入することもできる。
【0012】従って、この形式のノズルを効果的に使用するためには、空気が開口部を通って入ってノズル内側の金属を汚染しないようにすることが必須である。そのためよは、少なくともノズルの下部をキャップで覆うのが望ましいことである。このキャップは鋳型の環境も保護する。本発明はノズルの下部がフレアー(朝顔)型で細長い形状を有し、鋳型の大きな側面と平行になるように向けられているノズルに特に適している。本発明は添付図面を参照した以下の説明からより良く理解できよう。
【0013】
【実施例】図1および図2に示す実施例は厚さが約20cm、幅が約 0.6〜3mの一般的な鋼スラブの連続鋳造に関するものである。この鋳造設備は「タンディッシュ」(図示せず)とよばれる液体金属貯蔵容器を有している。液体鋼はタンディッシュの底に形成された出口を通って操作者の制御可能な流量でタンディッシュから流出する。この出口はグラファイト化アルミナ等の断熱材料で作られた管状出口ノズル1まで延びている。管状出口ノズル1の内部空間2は円筒形であり、本発明のノズル3はこの管状出口ノズル1と連結している。ノズル3はノズル1と同じ断熱材料か、ノズル3の構造上の制約や鋳型内の一般的物理化学的条件を考慮にいれた別の種類の材料で作られている。ノズル3は2つの部分からなるが、図示した実施例では単一部品で作られている。
【0014】第1部分は全体の輪郭形状が円筒形で径が「d」のチムニー(chimney、鉱柱)4である。このチムニー4の円筒形の内部空間5は出口ノズル1の内部空間の延長上にあり、出口ノズル1と同じ径にするか、2つの空間2、5にわずかな不整合があった場合でも金属の流れに影響がでないようにするためにそれよりわずかに大きな径にするのが好ましい。ノズル3中に周囲の空気が入り込まないようにするために、出口ノズル1とノズル3のチムニー4との連結部はできるだけ密閉しなければならない。図示した実施例では、出力ノズル1の下端およびチムニー4の上端にそれぞれ設けられた支持表面8、9に支持された上側ブッシュ6および下側ブッシュ7を図示していない手段によって固定することによって互いに気密に連結されている。
【0015】端部とよばれるノズル3の第2部分の役目はチムニー4から出た液体鋼を受けてそれを鋳型10で区画される鋳造空間内に分配することにある。鋳型10は図1R>1および図2に示すように通常の鋼スラブを鋳造するための鋳型で、一般に2つの大きな側面11、11’と2つの小さい側面12、12’とを有している。これらの側面は内部が強制冷却された銅または銅合金で作られた壁で作られ、液体金属はこれらの壁と接触して凝固し始める。鋳造空間13の横断面は全長にわたって一定な長方形である。
【0016】チムニー4の下側では、ノズル3はチムニー4の外径「d」に等しいか、それとわずかに相違する一定の厚さ「e」を有している。垂直断面図から分かるように、ノズル3の端部は五角形で、ノズル3を取付けた時には底14がほぼ水平になり、横壁15、15’、15''、15''' はほぼ垂直になり且つ斜めの壁16、16’を介してチムニー4の下端に連結されている。
【0017】本発明では、各斜壁16、16’が開口部17、17’を有する。開口部17、17’の役目は以下で説明するが、鋳造空間13への液体金属の導入の点では何の役目もしない。鋳造空間13への液体金属の導入は通常の鋳造条件下での鋳型内の液体金属の表面の高さ18よりも常に下になるように配置されたノズル3の底14と、横壁15、15’、15”、15”’に形成された一連の出口とを介して行われる。第1の出口19、19’は鋳型10の大きな側面11、11’に面した横壁15”、15”'に形成されている。好ましくは第1の出口19、19’によって生じた流れがメニスカスすなわち液体金属の表面と鋳型10との接触部分に供給されて擬似(spurious)凝固を防ぎ、一般に鋳型表面に堆積した被覆粉末を溶融するのに必要な熱量をメニスカスに供給する。第1の出口19、19’は横壁15''、15''' の全幅に渡って分布している。液体金属が出口を通ってメニスカスへ向かうように出口は水平または斜めに向けることができる。
【0018】第2出口20、20’は鋳型10の小さい側面12、12’に面した横壁15、15’に形成されている。横壁15、15は幅が狭いので一般に1つの横壁に1つの出口が形成されている。第2の出口20、20’は第1の出口19、19’と同じ役目をするが、その位置、寸法および方向は、鋳型10の隅に形成された固体金属のシェルの一部を溶融させるような量の溶融金属が鋳型10の隅部へ送られないように決定する。シェルが弱くなって裂けた場合には重大な鋳造事故(湯もれ)が生じる。第3の出口21は底14に形成されていて、鋳造空間13の下部へ溶融金属を供給する。図示した実施例では出口21は垂直方向を向いているが、必要な場合には斜めにすることもできる。また、ノズルの垂直中心面Ia-Ia の両面に分布させた複数の出口21の列にすることもできる。
【0019】図示した実施例のノズル3のチムニー4の内側の収容部23には挿入物22が配置されて、チムニー4の内部空間5の一部を塞いでいる。この挿入物22は必須ではないが挿入するのが望ましい。このように一部を塞ぐことによって金属のエネルギーの一部を失わせて、ノズル3の内部空間と出口19、19', 20, 20',21が完全に満たすという効果が得られる。その結果、ノズル3から流出する金属はより均一になり、鋳造品の品質が良くなる。この挿入物22は図示したようにチムニー4の径よりも小さい径を有する管状要素でよいが、別の形状、例えば複数の孔を有するディスクにすることもできる。挿入物22をチムニー4の上流端または下流端に配置することもできる。流れをさらに均一にするために、ノズル3の底14に仕切り24を設け、これをチムニー4と同一線上に配置してノズル3の下部へ流下する液体金属のジェット流を砕き、それを2つの流れに分流することもできる。従って、ノズル3の端部の内部空間はこの仕切り24によって上側に開口部17、17’を有する2つの区画に分けられる。
【0020】本発明設備では鋳型10の周りの空間を外気から保護する装置を有している。従来のスラブ鋳造設備では完全密閉式のノズルと被覆粉末とを用いて液体鋼を大気から保護しているのでこの装置は必須ではないが、本発明ノズル3は開口部17、17’によってノズル3の内部空間が外気に曝されているので、金属の酸化を防止するためには雰囲気を不活性にすることが特に重要である。図示した実施例では砂28等の密閉材料を収容した溝27を有するカラー26が鋳型10のリム25の外囲に沿って設けられている。
【0021】鋳型10の上側空間は上側ブッシュ6 (従ってタンディッシュ) に固定されたキャップ29によって区画され、その下側空間は溝27内の砂28中に挿入された鉛直端縁部30で区画されている。従って、鉛直端縁部30はキャップ29が垂直運動しても密閉状態を維持し、タンディッシュおよびノズル3の上下運動に追随することができ、鋳型10の環境を不活性化せずにノズル3の液体金属中への浸漬深さを調節することができる。この垂直運動は従来の鋳型に必須な垂直振動運動をも可能にするものである。この密閉手段自体は周知のものであるが、この方法のみに制限されるものではない。この密閉手段には多くの利点があるが、キャップ29の下側にタンディッシュの出口ノズル1とノズル3のチムニー4との連結部分を有し、この連結部での密閉欠陥に起因する被害を最小限にすることができる。
【0022】本発明のキャップ29は2つの開口部31、31’を有し、開口部31、31’の寸法および位置は2つのバーナー32、32’が挿入できるように決定されてきいる。各バーナーはノズル3に形成された開口部17、17’へ向っており、従って、バーナーがノズル3の内側に位置している時に各バーナー32、32’はノズル3の各半分を加熱し、液体金属を加熱する。単一のバーナー32、32’を用いることも考えられるが、2つのバーナーを用いた場合、特に仕切り24を用いた場合には、ノズル3の端部の内部空間が物理的に2つに区画されるので、加熱の均質性が良いということは明らかである。各バーナーは可燃性ガスの注入口33、33’と酸化ガスの注入口34、34’とを有している。酸化剤の流量の制御が悪くなると、酸化剤の消費が不完全になり、金属および断熱材料が酸化不足になるので、酸化ガスは酸素、好ましくは空気にすることができる。また、例えばプラズマトーチを用いることも考えられる。
【0023】キャップ29を通る開口部31、31’を密閉するために各バーナー32、32’にはカラー35、35’が取付けられている。カラー35、35’は図示していない手段によってキャップ29に固定されている。ノズル3の内部を特に効果的に予備加熱する段階のみにバーナー32、32’を用いることもできる。バーナーを配置したままにして、鋳造中にキャップ29の下側の鋳造空間の上方に中性ガスを送るためにだけバーナーを用いるか、バーナーを外し、その代わりに密閉カバーを用いて外気から鋳造空間を遮断することもできる。このバーナー32、32’と外側からノズル3の端部を加熱する別のバーナーとを組み合わせることによって、内部空間を含むノズル3全体を極めて良く予備加熱することができる。
【0024】予備加熱後、タンディッシュ/ノズル3/キャップ29の組立体を鋳型10の上方に配置する。タンディッシュの高さはノズル3が通常の深さで鋳型10に浸漬するように調節する。次いで、鋳造を開始する。鋳造開始時に熱が過剰に失われてノズル3の内部の金属が凝固するのを防止するために、液体金属の流体力学的特性を向上させる種々の耐熱要素、例えば仕切り24を配置して、ノズル3の内部空間を複雑な形状にすることができる。
【0025】出口19、20、20', 21'の一部または全部が塞がってノズル3から流出する金属の量が不十分になっても、外気保護装置によってノズル3が十分に垂直運動できる場合には、ノズル3が鋳型により深く潜って、開口部17、17’が鋳型の少なくとも一部の中に浸り、鋳型に液体金属を供給する役目をする。このように、通常より悪い条件下でも連続鋳造ができる。
【0026】上記の構造は例えば鋳型の出口の厚さが5〜7cmの薄板スラブの鋳造にも利用できる。そうした鋳造品の鋳造設備の鋳型は2面ずつ対抗した平行面にするか、鋳型の出口へ向って面を収束させるか、面/凹面の組合せにすることができる。いずれにせよ、ノズル3は鋳造空間13の水平輪郭形状に合うように設計することができる。
【0027】図3、図4は2本の強制冷却されたロール間で厚さが約数mmの薄板を鋳造するのに利用される本発明の別の実施例を示している。図1、2の場合と同じ機能、同じ形状を有する装置には同じ参照符号が付けてある。公知のように、この鋳型の鋳造空間13は互いに逆方向へ回転する水平軸線を有する2本の互いに近接したロール36、36’で形成される。2本のロールは内部から強制冷却され、ロールの外表面上で凝固が開始して凝固シェルが形成され、ニップ37の所すなわちロールが最も近づく点で凝固シェルが合体して鋳造ストリップが形成される。この鋳造空間内の液体金属、例えば鋼の側部はロール36、36’の端縁部40、40’に押圧された断熱材料で作られた側壁38、38’によって規制されている。
【0028】図3、4に示した本発明のノズル39は、2本のロール間鋳造で使用するのに適しするように、図1R>1、2に示したノズルとは下記の点で違っている:1) 鋳造空間13の形状に合うように、端部はほぼ一定の厚さ「e」を有する代わりに上から下へ次第に狭くなり、2) 液体金属を鋳造空間13へ導入するために端部に形成された各出口の分布が異なっている (なお、分布はこの実施例に限定されるものではない) 。
【0029】第1の出口41、41’はロール36、36’に面したノズル39の横壁15", 15"' に形成されている。第1の出口41、41’はできるだけ広い幅にわって広く分布され、特に、図示したように、上方を向いている場合には、液体金属と近接したロールとの第1接触部分に擬似凝固を防止するのに必要な熱量を供給することができるので好ましい。第2の出口42、42’は鋳造空間13を区画する側壁38、38’に面したノズル39の横壁15、15’に形成されている。この出口42、42’も液体金属の流れを上方へ向けることができる。ロール36、36’と側壁38、38’との境界のエッジ部分に形成される鋳造空間13の隅部は鋳造空間13内で最も冷却された部分であり、この冷却によってロールと側壁との間に固体金属が浸入する等のマイナスの効果が生じるが、本発明ではこの隅部へ溶融金属を好ましく供給することができる。
【0030】別の出口43, 43', 44, 44', 45, 45', 46, 46'が横壁15、15’および/またはノズル39の底14に形成されていて、出口から出た液体金属を鋳造空間13へ向けて流す。出口43, 43', 44, 44', 45, 45' は側壁38、38’へ向け、出口46、46’はニップ37へ向けるのが好ましい。当然ながら上記の実施例に限定されるものではなく、ノズル39の出口の数、分布および方向はノズル39および鋳造空間13の形状によって変えることができる。
【0031】前記の実施例のように、キャップ29は上側ブッシュ6に固定され、2つのバーナー32、32’を通す2つの開口部31、31’を有している。このキャップ29は外気から鋳造空間を遮断し、ノズル39の内部空間を加熱するために鋳造前およびできれば鋳造中も鋳造空間上に取付けておくのが好ましい。キャップ29の垂直に垂れた端縁部を受ける溝27には砂28が充填され、この溝27は垂直支持体47、47’を介して側壁38、38’に支持されている。溝27の下側にはロール36、36’と同じ直線上にシュー48、48’が固定されている。このシュー48、48’の下側表面はロール36、36’の外側表面の形状と一致し、最大で数mm離れている。シュー48、48’をロール36、36’から離している空間49、49’にシュー48、48’を介して不活性ガスを送り、ガスバリヤーを形成して鋳型周辺の空間に空気が入らないようにするのが好ましい。
【0032】図5および図6は本発明ノズル50の別の実施例を示している。ノズル50は上記ノズル39のように2本のロール間で薄板ストリップを鋳造するのに適している。ノズル50は図3、図4の上記説明と同様に鋳造空間13を不活性化する装置に設けられ、2つの区画された部分で構成されている。
【0033】第1部分51は図1、図2のノズル3と同じ構成であるが、下記の点が変更されている:1) チムニー4を短くして鋳造中に底14が液体金属に浸漬する深さを比較的浅くし、従って、横壁15、15', 15", 15"'に形成された出口19、19', 20, 20’を底14の上に配置し、鋳造中に液体金属表面が通常の高さにある時に底14を浸漬させておく。
2) 第1の部分51は一定の厚さにせずに、鋳造空間13が次第に狭くなるのに従って端部をわずかに薄くする。
【0034】ノズル50の第2の部分は第1の部分51から離れた所でその下部を取り囲むバスケット52で構成されている。バスケット52はシュー48、48’に設けられた支持表面53、53’で支持されている。バスケット52の下部も鋳造空間13の形状に合わせて狭くなっており、バスケット52の各外壁と、外壁と面する各ロール36、36’との間にほぼ均一な距離が維持されている。ノズル50の第1の部分51から出た液体金属は直接鋳造空間13に流れないで、先ずバスケット52を通り、底54とバスケット52の横壁55、55', 56, 56 ’に形成された一連の出口を介してバスケット52から流出する。出口57、57', 58, 58'は液体金属を側壁38、38’へ向け、出口59、59’は液体金属をロール36、36’へ向け、出口60、61、62、63、64、65は鋳造空間13の底へ向ける。
【0035】底54に2つの互いに収束する出口を形成して液体金属の流れが互いに衝突し合うようにすることができる。その結果、金属の流れが分散して、再加熱または溶融しなければならない凝固シェルへの局部的衝突を避けることができる。当然、この形式の構造は図1、図2R>2および図3、図4の前記ノズル3および39の底14に設けることもできる。液体金属の表面はノズル50の第1の部分51の内部、バスケット52内および鋳造空間13の内部で同じ高さ18(ヘッドのロスは含まない)である。
【0036】このバスケット52にはいくつかの利点があり、追加のエネルギー吸収装置を構成し、鋳造空間13内の液体金属の流れを安定化させ、液体金属表面の高さ18の変動をなくして鋳造物の品質を向上させる。さらに、タンディッシュから出た液体金属に存在する大部分の非金属介在物および種々の不純物を残留させることができ、従って、純度の高い鋳造品が得られる。しかし、このバスケット52を従来のノズルで用いると、組み立て後にバスケット52が取り囲むノズルの第1の部分51の底14に外側から接近できなくなるので、ノズルの予備加熱が妨げられる。しかも、バスケット52を使用すると断熱材料全体の量が増加するので、予備加熱は確実に重要になる。
【0037】本発明ではバスケット52とノズル50とを組み合わせることで上記問題点を解決することができる。開口部17、17’が存在するのでノズル50の組立て後でも第1の部分51の底14に接近することができる。第1の部分51は鋳造前に、好ましくは鋳造中もバーナー32、32’で加熱することができる。変形例として、バスケット52をシュー48、48’以外の機械部分またはノズルの第1の部分51に直接係合させることもできる。この解決策は一般のスラブ連続鋳造設備でノズル50を用いる必要がある場合に特に利用できる。
【0038】本発明のノズル339、50の他の利点は、ノズルの開口部17、17’を介して、固体材料または気体の形で追加要素を導入することができる点にある。図1に示すように管66、66' を用いて導入する。この管66、66' の下端が開口部17、17’の上方にあるキャップ29を通る。管66、66’は材料の追加時以外は閉じるか、必要な場合にば不活性ガスを送り込むのに使用することができる。粉末、粒子、ワイヤーまたは被覆ワイヤーの形の固体材料を導入するか、小径ランスで液体金属中にガスバブルを送り込むことができる。この管66、66' (または管66、66' の隣に並んで配置された同様な別の管)を利用して液体金属の温度または溶解した酸素の含有量の測定手段やノズル3の大気を確実に不活性化するガスのサンプリング装置等の測定機器をノズル3に導入することもできる。また、管66、66’を介して吸引ガラス管のような液体金属サンプル手段を導入することもできる。
【0039】上記ノズルとは別の形式のノズルに管66、66’または同じ機能の均等装置を設けることもできる。ノズル339、50内にこれらの追加要素をうまく分散させるためには、特に仕切り24を用いる場合には、1本のみより、2本の管66、66’を使用するのが好ましい。追加元素は、製錬の終わりに近い段階で極小の合金元素を追加した場合に鋳型内で追加する場合よりも優れた均一性を有することができる。しかも、鋳造中にバーナー32、32’を用いてこの追加要素が追加される温度まで金属を加熱できることから、液体金属の吸熱効果があった場合に有効に補償することができる。周知のように、極小の元素を追加するのは、特に金属の化学組成の微調整をして、凝固条件を向上させ、しかも化学組成および形態学的非金属含有を改良するためである。
【0040】本発明のノズル339、50の他の利点は開口部17、17’があるため複雑な内部形状を有するノズルでもノズルを構成する断熱材料を HIP (hot isostatic press)を用いて単一部品のノズルとして容易に製造できる点にある。一般に、このプレス成形は後でノズルに損害を与えずに除去可能な1つまたは複数のコア型を用いて行われる。本発明では、ノズルに開口部17、17’があるので、コア型を構成する各種の部品を順次除去することができる。しかし、単一部品としての本発明のノズル全体の構成は必須ではなく、ノズルの複数部分を製造してタンディッシュにノズルを設置する前、または設置時に1つずつ組み合わすことができる。
【0041】本発明の精神を逸脱しない限り、上記のノズルおよびノズル環境の形状は当然変更することができる。特に、ノズルおよび鋳造空間を外気から確実に密閉するための別の手段を用いることができる。さらに、ノズルを流れる液体金属の全てを加熱できるのであれば、必要に応じて、装置の向きおよび能力やノズルの内部形状が許す限り、単一の加熱装置(および単一の開口部17、17')で十分な場合もある。また、介在物を除去するフィルター、例えば多孔質断熱要素を少なくとも幾つかの出口に挿入することによって多くの介在物を除去することができる。
【0042】さらに、キャップ29と追加要素を無くし、バーナー32、32’をカラー35、35’を用いてノズル 3, 39, 50の端部に直接固定することによって、ノズル 3, 39,50、カラー35、35'/ノズル 3, 39, 50の連結部を確実に密閉することもできる。この場合にはノズル 3, 39, 50の端部にバーナー32、32’の固定手段を設け必要がある。既に述べたように、バーナー32、32’はノズル 3, 39, 50を予備加熱する段階(この場合には鋳造中に開口部17、17’を塞ぐカバーで代用できる)のみに作動させるか、鋳造中に作動させることもできる。ノズル内部に極小な要素を追加したい場合には管66、66’をノズル 3 39、50の壁に通す必要がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のノズルと、連続スラブ鋳造機の鋳型および鋳型環境の実施例を示すIa-Ia 線による断面図。
【図2】 図1と同じノズルおよび鋳型のIb-Ib 線による断面図。
【図3】 本発明のノズルと、2本のロール間薄板ストリップ鋳造機の鋳型および鋳型環境の実施例を示すIIa-IIa 線による断面図。
【図4】 図3と同じノズルおよび鋳型のIIb-IIb 線による断面図。
【図5】 本発明の別の実施例のノズルと、2本のロール間薄板ストリップ鋳造機の鋳型および鋳型環境のIIIa-IIIa 線による断面図。
【図6】 図5と同じノズルおよび鋳型のIIIb-IIIb 線による断面図。
【符号の説明】
1 出口ノズル 3 39 50 ノズル
4 チムニー 6、7 固定手段
10 鋳型 11、11’、12、12’、36、36’ 壁
13 鋳造空間 17、17’ 開口部
19、20、20’、21、41、42、42’、43、43’、44’、45、45’、46、46’ 出口
22 挿入物 24 仕切り
29 キャップ 31、31’ 開口部
32、32’バーナー 52 バスケット
57、57’、58、58’、59、59’、60、61、62、63、64、65 出口
66、66’追加要素導入手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 チムニー(4) を有し、このチムニー(4) の上端は固定手段(6,7)によって液体金属を収容する容器の出口ノズル(1) に結合され、その下端は鋳型(10)によって規定される鋳造空間(13)中へ液体金属を分配させる出口(19, 20,20', 21, 41, 42, 42', 43, 43', 44, 44',45, 45', 46, 46') を備えたノズル(3, 39, 50) の端部に結合している形式の金属の連続鋳造用鋳型(10)へ液体金属を導入するためのノズル(3, 39, 50)において、バーナーのような加熱手段(32, 32') を用いて上記端部の内側を加熱できるようにするためのために、少なくとも1つの開口部(17, 17') がこの端部の上側部分に形成されていることを特徴とするノズル。
【請求項2】 開口部(17, 17') が2つあり、上記端部の内部空間にはチムニー(4)と一直線上に配置された仕切り(24)が設けられ、この仕切り(24)によってこの内部空間は2つの区画され、各区画は各開口部(17, 17') に対応してその一直線上に配置されている請求項1に記載のノズル。
【請求項3】 液体金属を鋳造空間(13)へ通すための出口(57, 57', 58, 58',59, 59', 60, 61, 62, 63, 64, 65)を備えたバスケット(52)によって端部が取り囲まれている請求項1または2に記載のノズル。
【請求項4】 加熱手段(32, 32') をノズル(3, 39, 50)の端部に固定する手段を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項5】 追加要素、測定機器を導入したり、ノズル(3, 39, 50) の端部内側から液体金属のサンプルを採取する手段(66, 66') を有する請求項1〜4に記載のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項6】 チムニー(4) またはその一端に液体金属の通路の一部を塞ぐ挿入物(22)を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項7】 ノズル(3, 39, 50)が請求項1に記載の形式のものであることを特徴とする、内部から強制冷却された壁(11, 11', 12, 12', 36, 36') を有する鋳造空間(13)を規定する無底の鋳型(10)と、断熱材料製のノズル(3, 39, 50)とを有し、このノズルの上端は液体金属を収容した容器に結合され、液体金属はこのノズルの下端を介して鋳造空間(13)へ供給される金属の連続鋳造設備。
【請求項8】 鋳造空間(13)の上方を覆うキャップ(29)を有し、このキャップ(29)はバーナー(32, 32') のような加熱手段を挿入可能な少なくとも1つの開口部(31, 31') を有し、加熱手段を各ノズル(3, 39, 50)の開口部(17, 17') へ向ける手段を有する請求項7に記載の連続鋳造設備。
【請求項9】 追加要素、測定機器を導入したり、ノズル(3, 39, 50)の端部の内側から液体金属のサンプルを採取する手段(66, 66') を有し、この手段(66,66')がキャップ(29)を貫通している請求項8に記載の連続鋳造設備。
【請求項10】 キャップ(29)がチムニー(4) を液体金属を収容する容器の出口ノズル(1) に固定する上記手段(6, 8)に固定されている請求項7〜9のいずれか一項に記載の連続鋳造設備。
【請求項11】 液体金属の出口(57, 57', 58, 58', 59, 59', 60, 61, 62,63, 64, 65)が形成されたバスケット(52)を有し、このバスケット(52)がノズル(3, 39, 50)の端部を取り囲んでいる請求項7〜10のいずれか一項に記載の連続鋳造設備。
【請求項12】 スラブの連続鋳造用の請求項7〜11のいずれか一項に記載の連続鋳造設備。
【請求項13】 液体金属から直接ストリップを連続鋳造するための請求項6〜11に記載の連続鋳造設備。
【請求項14】 ロール間鋳造設備である請求項13に記載の連続鋳造設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平9−174209
【公開日】平成9年(1997)7月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−329129
【出願日】平成8年(1996)11月25日
【出願人】(591000986)ユジノール サシロール(ソシエテ アノニム) (9)
【出願人】(591197806)ティッセン スタール アクチェンゲゼルシャフト (1)