説明

金属製排水部材のヌメリ抑制処理方法及びヌメリ抑制金属製排水部材

【課題】 システムキッチンの排水ゴミカゴ等の排水部材にヌメリが付着するのを抑制する。
【解決手段】排水部材11のステンレス基材の表面に、メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の下地処理剤を1.5wt%〜7wt%含む希釈水溶液処理に浸漬して該基材の表面にシラノール基を形成する下地処理を施し、次いで3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの抗菌剤を1〜4wt%含む希釈水溶液処理に浸漬して上記基材の表面に抗菌性を付与する抗菌処理を施し、その後に120℃〜170℃、0.5〜3時間の高温加熱処理を施すことによって、上記シラノール基に上記抗菌剤の4級アンモニウム塩のシラノール基を共有結合することによってヌメリ付着抑制措置とする。耐薬品性と耐久性に優れてヌメリ付着を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムキッチンのシンクやユニットバスの床乃至浴槽の排水に用いる金属製排水部材のヌメリ抑制処理方法及びヌメリ抑制金属製排水部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、システムキッチンのシンクに設置した排水部材、即ち、排水トラップ、該排水トラップの受孔に嵌挿配置する着脱自在の排水ゴミカゴ、該排水ゴミカゴの開口部を覆う排水プレート等の排水周りの部材は、ステンレス等の金属製のものが多いが、これらの排水部材の表面には、調理や食器洗浄の食材や油脂成分が付着し、また残存することによって、微生物の繁殖に起因するヌメリが発生し、またこれに起因する臭気を発生することが知られている。このようなヌメリの発生を抑制するヌメリ抑制措置として、下記特許文献1は、金属基材の表面に、ロジン等の水溶性樹脂を含有するアクリル樹脂のコーティング層を、例えばバーコーターを用いて20μm〜30μmの膜厚に塗工機によって塗装するものとし、該水溶性樹脂の溶出によって該コーティング層を更新することによって、食材や油性成分を更新とともに流下除去するものとされ、また、下記特許文献2は、同じく金属基材の表面に、特定の分子構造のジメチルシリコン基を含有するアクリル樹脂のコーティング層を、例えば数μmの膜厚にスプレー塗装するものとし、該コーティング層の表面滑水性によって、同じく食材や油性成分を流下除去して、それぞれ排水部材にヌメリが付着するのを抑制するものとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−30280号公報
【特許文献2】特開2009−127384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの場合、排水部材に対するヌメリの付着を抑制し得るものであるとしても、ヌメリ抑制のために金属基材の表面に対してアクリル樹脂のコーティング層を形成するものであるから、このような樹脂塗膜は、有機物であることによってその表面が比較的軟質であり、食器類の接触や洗浄時の磨耗等による損傷を受けやすく、損傷を受けると、該損傷箇所の滑水性が損なわれて、微生物とこれによるヌメリが付着するとともに該損傷箇所において微生物が繁殖して、更にヌメリの付着量が増大し易いという問題点を残している。
【0005】
また、これらの場合、その金属基材の表面に対するアクリル樹脂のコーティング層の固定は、金属基材の表面とアクリル樹脂の水素結合並びに物理吸着によるものであり、従って、金属基材の表面に対するコーティング層の密着性が必ずしも充分ではない。このため次亜塩素酸ナトリウム水溶液(例えばライオン株式会社 商品名「キッチンハイター」)等との接触によってコーティング層の塗膜表面が損傷を受ける可能性があり、損傷を受けると、上記と同じ問題を生じる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、有機性の樹脂を用いることなく、抗菌性が高く、ヌメリの付着を可及的有効に抑制するとともに剥離したり、更には磨耗したりする可能性もなく、耐薬品性に優れ、高度な耐久性を確保し、併せて可及的簡易且つ確実に形成し得る金属製排水部材のヌメリ抑制処理方法を提供するにあり、また、該ヌメリ抑制処理を施した金属製のヌメリ抑制排水部材を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に沿って鋭意検討したところ、排水部材の金属基材の表面に、抗菌性を付与するに適した3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドによる抗菌処理を施したものとすれば、その抗菌性によってヌメリの発生を可及的有効に抑制することが可能となること、抗菌剤として該3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドを用いた場合、その抗菌剤は、金属基材の表面に対する密着性が乏しく且つ耐薬品性が必ずしも充分ではないという問題点が残ること、しかし、3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの抗菌処理に際して、金属基材の表面に、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン又は3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのいずれかによる下地処理を施し、該下地処理後に上記抗菌剤による抗菌処理を施して、高温の加熱処理を施すようにすれば、下地処理によって金属基材の表面に形成されるシラノール基に対して3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの4級アンモニウム塩のシラノール基が共有結合する結果、剥離や磨耗の可能性がなく、金属基体の表面に対して高度な密着性と耐薬品性を確保し、ヌメリ抑制効果を可及的長期に亘って確保する耐久性に優れたヌメリ抑制措置とすることが可能になるとの知見を得た。本発明は、かかる知見に基づいてなされたもので、即ち、請求項1に記載の発明を、金属基材の表面に、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの下地処理剤のいずれかを含む希釈水溶液処理によって該金属基材の表面にシラノール基を形成する下地処理工程と、3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの抗菌剤を含む希釈水溶液処理によって上記金属基材の表面に抗菌性を付与する抗菌処理工程と、高温加熱処理によって上記シラノール基に上記抗菌剤の4級アンモニウム塩のシラノール基を共有結合する加熱処理工程を施すことを特徴とする金属製排水部材のヌメリ抑制処理方法としたものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、上記抗菌剤を用いるに好適にして、排水部材としても好ましい金属基材の素材とするように、これを、上記金属基材を、ステンレスによるものとしてなることを特徴とする請求項1に記載の金属製排水部材のヌメリ抑制処理方法としたものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記下地処理剤を用いるに際してその濃度を1.5wt%以上、7wt%以下の範囲内のものとすることが、上記高度の密着性と耐薬品性を確保して耐久性に優れ且つ下地処理剤による処理ムラ等のない良好な外観を確保した好ましい形態のものとし得ることから、これを、上記希釈水溶液における下地処理剤の濃度を、1.5wt%〜7wt%とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属製排水部材のヌメリ抑制処理方法としたものである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記抗菌剤の濃度を1wt%以上、4wt%以下の範囲内のものとすることが、上記高度の密着性と耐薬品性を確保して耐久性に優れ且つ抗菌剤による処理ムラ等のない良好な外観を確保した好ましい形態のものとし得ることから、これを、上記抗菌処理の希釈水溶液における抗菌剤濃度を、1wt%〜4wt%とすることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の金属製排水部材のヌメリ抑制処理方法としたものである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記高温の加熱処理を、処理温度を120℃以上にして170℃以下とし、処理時間を0.5時間〜3時間とする範囲内のものとすることが、同様に上記高度の密着性と耐薬品性を確保して耐久性に優れた好ましい形態のものとし得ることから、これを、上記高温加熱処理を、加熱温度120℃〜170℃、加熱時間0.5〜3時間とすることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の金属製排水部材のヌメリ抑制処理方法としたものである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、金属基材の表面に形成したシラノール基に対して3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの4級アンモニウム塩のシラノール基が共有結合して、剥離や磨耗の可能性がなく、金属基体の表面に対して高度な密着性と耐薬品性を確保し、ヌメリ抑制効果を可及的長期に亘って確保する耐久性に優れたヌメリ抑制排水部材を提供するように、これを、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのいずれかの下地処理剤によって金属基材表面に形成したシラノール基に対して4級アンモニウム塩のシラノール基を共有結合した3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの抗菌処理を施してなることを特徴とするヌメリ抑制金属製排水部材としたものである。
【0013】
請求項7及び8に記載の発明は、上記に加えて、ヌメリが発生し易く、その抑制を有効に行なうに適したそれぞれ好ましい水廻り用の排水部材とするように、請求項7に記載の発明を、上記排水部材を、システムキッチンにおけるシンク用のものとしてなることを特徴とする請求項6に記載のヌメリ抑制金属製排水部材とし、請求項8に記載の発明を、上記排水部材を、ユニットバスの床又は浴槽用のものとしてなることを特徴とする請求項6に記載のヌメリ抑制金属製排水部材としたものである。
【0014】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1に記載の発明は、抗菌性を付与するに適した3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドによる抗菌処理を施すことによる、金属基材の表面に対する密着性や耐薬品性に欠けるという問題点を、その抗菌処理に際して、金属基材の表面に、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン又は3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのいずれかによる下地処理を施し、該下地処理後に上記抗菌剤による抗菌処理を施して、高温の加熱処理を施すようにして、下地処理によって金属基材の表面に形成されるシラノール基に対して3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの4級アンモニウム塩のシラノール基が共有結合する結果、剥離や磨耗の可能性がなく、金属基体の表面に対して高度な密着性と耐薬品性を確保し、ヌメリ抑制効果を可及的長期に亘って確保する耐久性に優れたヌメリ抑制措置とし得るようにした金属製排水部材のヌメリ抑制処理方法を提供することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、上記抗菌剤を用いるに好適にして、排水部材としても好ましい金属基材の素材とすることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記下地処理剤を用いるに際してその濃度を1.5wt%以上、7wt%以下の範囲内のものとすることによって、上記高度の密着性と耐薬品性を確保して耐久性に優れ且つ下地処理剤による処理ムラ等のない良好な外観を確保した好ましい形態のものとすることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記抗菌剤の濃度を1wt%以上、4wt%以下の範囲内のものとすることによって、上記高度の密着性と耐薬品性を確保して耐久性に優れ且つ抗菌剤による処理ムラ等のない良好な外観を確保した好ましい形態のものとすることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記高温の加熱処理を、処理温度を120℃以上にして170℃以下とし、処理時間を0.5時間〜3時間とする範囲内のものとすることによって、同様に上記高度の密着性と耐薬品性を確保して耐久性に優れた好ましい形態のものとすることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、金属基材の表面に形成したシラノール基に対して3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの4級アンモニウム塩のシラノール基が共有結合して、剥離や磨耗の可能性がなく、金属基体の表面に対して高度な密着性と耐薬品性を確保し、ヌメリ抑制効果を可及的長期に亘って確保する耐久性に優れたヌメリ抑制排水部材を提供することができる。
【0021】
請求項7及び8に記載の発明は、上記に加えて、ヌメリが発生し易く、その抑制を有効に行なうに適したそれぞれ好ましい水廻り用の排水部材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】シンクと排水部材の関係を示す縦断面図である。
【図2】基材表面と抗菌処理剤の結合状態を示す分子式。
【図3(A)】ヌメリ抑制処理を施した排水部材の写真である。
【図3(B)】下地処理を省略した排水部材の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明を更に具体的に説明すれば、Aはシステムキッチン、1はシンク、12はキャビネット、13はトップカウンター、14は中段引出、15は下段引出であり、該システムキッチンAのシンクにあって、11は、本例にあって、排水管16に接続した排水トラップ11a、該排水トラップ11aの受孔に着脱自在に嵌挿配置した排水ゴミカゴ11b、該排水ゴミカゴ11bの開口部を覆う排水プレート11c等のシンク1の排水用に用いる、システムキッチンAにおけるシンク1用のものとした金属製、特にその金属基材をステンレスによるものとしたヌメリ抑制排水部材であり、該排水部材11は、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのいずれかの下地処理剤によって金属基材表面に形成したシラノール基に対して4級アンモニウム塩のシラノール基を共有結合した3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの抗菌処理を施したものとしてある。
【0024】
本例にあって排水トラップ11aは、シンク1底面に受孔を開口して、排水管16に連結してあり、排水ゴミカゴ11bは、排水トラップ11aの上記受孔に着脱自在に嵌挿配置した椀状、コーン状等適宜形状、本例にあっては上向き開口にして側面及び底面に多数の水抜孔を透設した椀状のものとし、排水プレート11cは、該排水ゴミカゴ11bの上面開口を塞ぎ、シンク1の排水を排水ゴミカゴ11bに流下するように多数の排水孔を透設したプレート状のものとしてあり、いずれも金属、特に上記ステンレスによって一体に成形した成形部材によるものとしてある。
【0025】
上記排水部材11、即ち11a乃至11cの全部又は一部、本例にあっては全部に上記ヌメリ抑制措置を施したヌメリ抑制のものとしてあり、これによって、これら排水部材11は、抗菌性が高く、ヌメリの付着を可及的有効に抑制するとともに磨耗や剥離の可能性がなく、耐薬品性にも優れるものとして、高度な耐久性を確保したものとしてある。
【0026】
これら排水部材11のヌメリ抑制措置をその処理方法によって説明すれば、該処理方法は、金属基材の表面に、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの下地処理剤のいずれかを含む希釈水溶液処理によって該金属基材の表面にシラノール基を形成する下地処理工程と、3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの抗菌剤を含む希釈水溶液処理によって上記金属基材の表面に抗菌性を付与する抗菌処理工程と、高温加熱処理によって上記シラノール基に上記抗菌剤の4級アンモニウム塩のシラノール基を共有結合する加熱処理工程を施すものとしてある。
【0027】
即ち、ヌメリ抑制処理方法は、金属基材の表面、本例にあっては上記ステンレスの成形部材に、脱脂処理工程、下地処理工程、抗菌処理工程及び加熱処理工程を、例えば一連の工程として施すことによって、これを行なうものとしてある。このとき脱脂処理工程、下地処理工程、抗菌処理工程は、それぞれ脱脂剤、下地処理剤、抗菌剤の希釈水溶液を用いて、金属基材を該希釈水溶液に浸漬処理し、希釈水溶液をスプレー処理等常法に従ってその全面、好ましくは排水ゴミカゴ11bの水抜孔、排水プレート11cの排水孔等の金属基材に形成した透孔の内周壁を含めた全面に、これを行なうようにしてある。
【0028】
脱脂処理工程は、例えばトルエン、塩化メチレン等の有機溶剤、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、珪酸ナトリウム等のアルカリ性又は硫酸、硝酸等の酸性の脱脂剤を所定濃度に希釈した希釈水溶液を用いて、金属基材の表面脱脂を行なうものとしてある。
【0029】
下地処理工程は、上記メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのいずれかを含む希釈水溶液を用いて、金属基材の表面にシラノール基を形成するように、該金属基材の処理を行なうものとしてあり、このとき希釈水溶液は、メルカプトプロピルトリメトキシシランにあっては酢酸の水溶液に添加したものを用い、その余の3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランにあっては、そのままを用いて所定の濃度として、上記浸漬処理又はスプレー処理を行なうものとしてある。
【0030】
本例にあって、上記下地処理の希釈水溶液における下地処理剤の濃度は、これを、1.5wt%〜7wt%とするものとしてあり、これによって、金属基材の表面に、抗菌剤の3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの4級アンモニウム塩のシラノール基を共有結合する上記シラノール基を形成することによって、金属基材の抗菌処理の耐久性を確保するものとしてある。即ち、下地処理剤は、その濃度が1.5wt%を下回ると、シラノール基の形成が不充分となり、抗菌処理の密着性や耐薬品性が低下して、耐久性に欠ける傾向を残す一方、7wt%を上回ると、下地処理剤の濃度が過剰で、金属基材の表面で下地処理剤が自己重合して、その自己重合物に起因する斑紋状のムラ、即ちくすみが生じて、排水部材の外観不良を招く傾向を生じるから、該下地処理剤の濃度は、上記1.5wt%以上、7wt%以下とするのがよく、該濃度は、これを2wt%以上、6wt%以下とするのが、そのシラノール基の有効な形成と、これによる抗菌処理の耐久性及び排水部材の良好な外観の双方を確実に確保する上で好ましい。
【0031】
抗菌処理工程は、抗菌剤として上記3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドを使用することが必要であり、本例にあって、該抗菌処理の希釈水溶液における抗菌剤濃度は、これを、1wt%〜4wt%とするものとしてあり、これによって抗菌剤の抗菌作用によるヌメリ抑制効果の確保と該抗菌剤の4級アンモニウム塩のシラノール基を金属基材の表面に形成した上記シラノール基と共有結合することによる耐久性を確保し得るものとなる。抗菌剤濃度は、これが1wt%を下回ると、4級アンモニウム塩のシラノール基が不足して、その抗菌作用が不充分にして耐久性が低下する可能性を残す一方、抗菌剤の濃度は、これをアップしてもヌメリ付着抑制効果を維持することができるが、該抗菌剤の濃度が4wt%を上回ると、該抗菌剤が同じく自己重合することによると見られる斑紋状のムラ、即ち、くすみが生じて外観不良を招く傾向を生じることがあるから、該抗菌剤の濃度は、上記1wt%以上とするも、良好な外観を確保する上で、これを4wt%以下とするのがよい。特に、該濃度は、これを1wt%以上、3wt%以下とするのが、上記シラノール基の共有結合による抗菌処理の耐久性確保、排水部材の良好な外観の双方を確実に確保する上で好ましい。
【0032】
抗菌処理工程後の加熱処理工程は、該抗菌処理を施した金属基材を、例えば、加熱炉(乃至乾燥路)通過させるか、これに滞留させる雰囲気加熱法によって行なうものとしてあり、本例にあって該加熱処理工程は、これを、加熱温度120℃〜170℃、加熱時間0.5〜3時間とするものとしてあり、これによって、上記抗菌処理工程による抗菌剤のシラノール基を金属基材の表面のシラノール基に対して有効且つ確実に共有結合することによって、該共有結合による密着性及び耐薬品性を確保し、好ましいヌメリ抑制効果を得ることができる。このとき、後述の表1の次亜塩素酸ナトリウム溶液への24時間浸漬後のヌメリ付着試験結果に示すように、加熱温度を相対的に低温とするときは加熱時間を長くし、加熱温度を相対的に高温とするときは加熱時間を短くすることが可能となるが、加熱温度が120℃を下回ると、工場生産における限界的な3時間の加熱処理を施しても、シラノール基に対する4級アンモニウム塩のシラノール基の共有結合が不充分となって、密着性乃至耐薬品性が損なわれる結果、好ましいヌメリ抑制効果を得られなくなる可能性が残り、また、170℃を上回ると、加熱時間に拘らず、同じく密着性乃至耐薬品性が損なわれて好ましいヌメリ抑制効果を得られなくなる可能性が残るから、加熱温度及び加熱時間は上記120℃〜170℃、0.5〜3時間とするのがよい。
【0033】
このとき、同じく表1に示すように、ヌメリ付着試験後のヌメリ付着面積は、加熱温度及び加熱時間によって異なり、加熱温度が100℃を下回ると、加熱時間を3時間と長くしても1/2(50%)を上回る程度となるが、100℃を上回ると1時間乃至それ以上の加熱時間によってヌメリ付着面積は1/2を下回り、120℃以上とすると1/5(20%)を下回る結果であり、また、130℃以上、170℃以下とすると30分以上の加熱時間で1/10(10%)程度乃至それ以下となって、特に好ましい結果となし得る一方、加熱温度を180℃以上とすると、加熱時間によってはヌメリ付着面積を1/2以下となし得るも、概ね1/2を超える結果となる。即ち、120℃にあっては、加熱時間を3時間程度とすること、また、130℃、140℃にあっては、加熱時間を1時間乃至3時間とすること、150℃、160℃にあっては加熱時間を0.5時間乃至1.5時間とすること、170℃にあっては、加熱時間を0.5時間乃至1時間とすることによって、ヌメリ付着面積を面積比20%以下とすることができるとともに該面積比を10%近辺乃至数%程度とすることができ、密着性乃至耐薬品性と有効なヌメリ抑制効果を確保する上で特に好ましい結果を得ることが可能となる。
【0034】
上記抗菌剤の3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドがヌメリ抑制効果を有するのは、該抗菌剤の4級アンモニウム塩のカチオンが、多糖類(アルギン酸)であるヌメリを出すシュードモナス属菌のような原因菌の細胞壁を破壊して、該原因菌を殺菌することによるものと見られ、従って排水部材に流下した調理や食器洗浄の食材や油脂成分によって原因菌が繁殖しても、排水部材表面にあってはこれに原因菌が接触することによってその殺菌を行なう結果、該原因菌の繁殖を阻止し、該原因菌に起因するヌメリの発生乃至増加を抑制するに至るものと見られる。
【0035】
また、上記ヌメリ抑制処理によってヌメリ抑制効果の耐久性が向上するのは、上記下地処理によって金属基材の表面に該基材との反応性によって該表面に形成されたシラノール基に対して抗菌剤の4級アンモニウム塩のシラノール基が共有結合することによって、金属基材の表面に対する抗菌剤の密着性と耐薬品性が確保され、その結果、高度な耐久性を確保するに至るためと見られる。金属基材の表面に下地処理工程によって形成したシラノール基と抗菌処理剤の4級アンモニウム塩のシラノール基の加熱処理工程による共有結合の状態は、図2に示すとおりであると認められる。
【0036】
上記ヌメリ抑制措置を施した排水部材の耐久性について、システムキッチンのシンクに使用されることの多い次亜塩素酸ナトリウム水溶液(ライオン株式会社商品名キッチンハイターの原液)に1日間浸漬した後に後述のヌメリ付着試験を行なった、下記実験例1における加熱温度150℃、加熱時間30分の場合の排水部材、特に排水ゴミカゴ11bの表面の写真を図3Aに、下地処理を施すことなく、上記抗菌剤の希釈水溶液に浸漬後に加熱温度100℃、加熱時間3時間の加熱処理を施した、下記実験例6の排水部材、同じく排水ゴミカゴの表面の写真を図3Bにそれぞれ示す。図3Aは面積比8%程度のヌメリ付着が認められるに止まり、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の原液に対しても充分な耐薬品性を呈するものである一方、図3Bは全面に亘ってヌメリが付着、即ち、面積比100%のヌメリ付着が認められ、従って、その耐久性に欠けるものであった。
【0037】
以上のとおりヌメリ付着措置を施すことによって、排水部材は、有機性の樹脂を用いることなく、抗菌性が高く、ヌメリの付着を可及的有効に抑制するとともに磨耗や剥離の可能性がなく、耐薬品性にも優れることによって、高度な耐久性を確保し、併せて可及的簡易且つ確実にヌメリ抑制措置を施したものとすることができる。
【0038】
本発明の実施に当って、下地処理剤を3−アミノプロピルトリメトキシシラン又は3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとすること、上記排水部材を、ユニットバスの床又は浴槽用として用いることを含めて、排水部材、下地処理剤、抗菌剤、下地処理工程、抗菌処理工程、加熱処理工程等の各具体的形状、構造、材質や具体的処理方法及び条件等は、上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【実験例1】
【0039】
株式会社伸晃製のステンレス製の排水ゴミカゴ(パンチング材 BA仕上げ sus304 60°千鳥 D1.2 P2.0)を用いて、それぞれ下記の処理条件によって脱脂処理工程、エッチング処理工程、下地処理工程、抗菌処理工程を行った後に、加熱温度及び加熱時間の条件を変化した加熱処理工程を施して、それぞれヌメリ抑制処理の排水ゴミカゴとし、これら各排水ゴミカゴについて後述のヌメリ付着試験を施した。結果を表1に示す。
【0040】
脱脂処理工程及びエッチング処理工程は、日本表面化学株式会社製脱脂剤(商品名ケイクリン3)の29.4g/l水溶液(液温45℃)に4分間浸漬して脱脂処理を行い、常温1分間の水洗後、株式会社ケミコート製の鉄鋼製面剤(ケミコート306)25wt%及び同じく株式会社ケミコート製の表面調整助剤(ケミコート100)3wt%の混合水溶液(液温45℃)で4分間エッチング処理し、同じく常温1分間水洗した。
【0041】
下地処理工程は、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学株式会社製 KBM803)を1%の酢酸水溶液に、下地処理剤濃度2%となるように溶解し、1時間撹拌して、下地処理剤の希釈水溶液とし、これに排水部材を1時間浸漬することによって行った。この下地処理後、余分な水分をエアーで除去し、加熱炉に入れ、加熱温度120℃、加熱時間30分の加熱処理を行った。
【0042】
抗菌処理は、メタノールの42%溶液として市販されている3-(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド(東レ・ダウコーニング株式会社製 商品名R5700)を用い、3-(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの抗菌剤濃度1.3%の水溶液となるように調整して、30分間撹拌して抗菌剤の希釈水溶液とし、これに排水ゴミカゴを30分間浸漬することによって抗菌処理を行った。加熱処理は、加熱温度を80℃〜180℃の範囲、加熱時間を15分〜3時間の範囲として、表1に実施例及び比較例として示す加熱温度と加熱時間の組合せに従って、加熱炉に排水ゴミカゴを入れて雰囲気加熱によって、これを行った。
【0043】
ヌメリ付着試験は、各排水ゴミカゴを、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(ライオン株式会社商品名キッチンハイター)の原液に24時間浸漬してテストサンプルとし、それぞれ米飯、油で炒めた豚挽肉、レタスの混合物10g(米飯4、油0.5、豚挽肉3.5、レタス2の比率とした)を35℃の水500mlとともに排水部材に流し込み、室温35℃、湿度85%の環境で1日間保持した後、該排水ゴミカゴ内の混合物を捨て、3L/分の水量で15秒間洗浄した。これを3回繰り返した後、排水ゴミカゴの表面に付着したヌメリ面積を肉視によって測定した。ヌメリ付着量は、ヌメリ抑制措置を施していない排水ゴミカゴにおけるヌメリ付着面積を100%としたときの相対的な比率によって表示した(なおヌメリ抑制措置を施していない場合のヌメリ付着面積は排水ゴミカゴの全面に亘るものであったので、実験例のヌメリ付着量は、排水ゴミカゴの総面積に対する比率と結果的に同一比率であった)。加熱温度を150℃、加熱時間を30分としたヌメリ付着面積(8%)の排水ゴミカゴの写真を、上記のとおり図3(A)に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示すように、加熱温度を、例えば120℃〜140℃とするときは、概ね1時間以上の加熱時間を必要とするが、120℃にあって、加熱時間を3時間程度とすること、また、130℃、140℃とするときは、加熱時間を1時間乃至3時間とすることによって、例えば、ヌメリ付着面積を表面に対する面積比を20%以下とする、特に好ましい結果を得られる。また、150℃〜170℃とするときは、加熱時間を1時間以内とすることが可能であり、150℃、160℃のとき、0.5時間乃至1.5時間とすることによって、170℃のとき、0.5時間乃至1時間とすることによって、20%以下、特に10%近辺乃至数%程度とする、同じく特に好ましい結果を得られる。一方、120℃のとき1.5時間乃至それ以下とすると、表面面積の1/4乃至1/2程度となり、140℃のとき0.5時間では同じく1/3程度、150℃、160℃のとき3時間とすると、同じく1/3程度、1/2程度となり、また170℃のとき1.5時間とすると、20%を超える結果となる。一方、更に170℃を超えて180℃とすると、加熱時間に拘らず1/3乃至1/2以上となって、密着性乃至耐薬品性に起因するものと見られるが、ヌメリ抑制効果は著しく低下するに至る。従って、加熱時間の長短が影響するも、加熱処理工程は、その生産効率上、加熱温度を可及的に150℃〜170℃の高温として、加熱時間を0.5時間〜1.5時間程度とするのが、密着性乃至耐薬品性と有効なヌメリ抑制効果を確保する上で、特に好ましいことが判明した。
【実験例2】
【0046】
下地処理剤として、メルカプトプロピルトリメトキシシランは1%の酢酸水溶液に濃度2%となるように、また、3−アミノプロピルトリメトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランはそのまま用いて各濃度2%となるようにそれぞれ水道水に溶解しし、1時間撹拌して、下地処理剤の希釈水溶液とし、これに排水部材を1時間浸漬して下地処理とし、加熱温度を120℃、加熱時間を30分とした以外、上記実施例と同様とした。そのヌメリ付着試験によるヌメリ付着面積を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
下地処理剤をメルカプトプロピルトリメトキシシランとしたとき、ヌメリ付着面積は8%であったのに対して、3−アミノプロピルトリメトキシシランとしたとき12%、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとしたとき11%であり、下地処理剤を変更することによるヌメリ付着面積は、いずれも1/10(10%)程度であり、大きな差は認められなかった。
【実験例3】
【0049】
下地処理剤メルカプトプロピルトリメトキシシランによる下地処理後の加熱処理における加熱温度を100℃、120℃、140℃とし、その加熱時間を10分、30分、1時間、1.5時間とする以外、実験例1と同様にした。そのヌメリ付着試験による各ヌメリ付着面積を表3に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
下地処理後の加熱処理における加熱温度は、加熱温度を概ね120℃〜140℃程度とし且つ加熱時間を10分、特に30分〜1時間とすることによって、ヌメリ付着試験のヌメリ付着面積を1/10(10%)程度乃至それ以下とし得る結果であった。
【実験例4】
【0052】
下地処理剤メルカプトプロピルトリメトキシシランの濃度を0.1wt%、1.0wt%、2.0wt%、4.0wt%、6.0wt%とする以外、実験例1と同様にした。そのヌメリ付着試験によるヌメリ付着面積を表4に示す。
【0053】
【表4】

【0054】
下地処理剤の濃度は、上記実験例1の2wt%を下回る1wt%乃至それ以下の場合、ヌメリ付着試験のヌメリ付着面積は1/2(50%)以上である一方、該2wt%を上回る4wt%、6wt%とすると、ヌメリ付着面積は2wt%のときの6%を上回り、4wt%乃至それ以下となし得たが、7wt%以上とすると、排水部材の表面に斑紋が生じる傾向が見られ、外観不良を招く結果となった。
【実験例5】
【0055】
抗菌処理剤3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの濃度を0.4wt%、0.8wt%、1.3wt%、1.7wt%、2.5wt%、3.8wt%とする以外、実験例1と同様とした。ヌメリ付着試験によるヌメリ付着面積を表5に示す。
【0056】
【表5】

【0057】
抗菌処理剤3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの濃度が、1.3wt%を下回ると、ヌメリ付着試験のヌメリ付着面積は1/2(50%)以上である一方、該1.3wt%を上回る1.7wt%とすると、ヌメリ付着面積は1.3wt%のときの6%を上回る2%、2.5wt%のとき3%、3.8wt%のとき1%となし得た。従ってヌメリ付着抑制の面から抗菌処理剤の濃度は更にアップすることが可能であるが、上記のとおり、濃度が4wt%を上回るようにすると、排水ゴミカゴの表面に抗菌処理剤の自己重合に起因するとみられる斑紋状のムラが生じる傾向が見られるから、外観上の理由から該抗菌処理剤の濃度の上限は、これを4wt%とするのが好ましい。
【実験例6】
【0058】
下地処理(及びその後の加熱処理)を省略し、抗菌処理後の加熱処理を、加熱温度100℃、3時間とした以外、実験例1と同様とした。ヌメリ付着試験後の排水部材の写真を図3(B)に示すとおり、下地処理を省略したとき、排水部材の全面にヌメリが付着し、ヌメリ付着面積は100%であった。
【0059】
以上の実験例の結果から、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの下地処理剤のいずれかを含む希釈水溶液による排水部材基材表面の下地処理、3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの抗菌剤を含む希釈水溶液による抗菌処理、その後の高温の加熱処理によるヌメリ抑制措置を施すことによって、有効なヌメリ抑制効果を呈するとともに、次亜塩素酸に1日間浸漬する過酷な条件下に置いても高度な耐久性(耐薬品性といってもよい)を呈するものとなし得ることが判明し、このとき、上記下地処理の希釈水溶液における下地処理剤濃度を、1.5wt%〜7wt%とすること、上記抗菌処理の希釈水溶液における抗菌剤濃度を、1wt%〜4wt%とすること、上記高温の加熱処理を、加熱温度120℃〜170℃にして加熱時間0.5〜3時間とすることが、下地処理によって基材表面に形成したシラノール基に対して、高温加熱によって3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドのシラノール基が共有結合し、剥離の可能性もなく、基体表面に対して高度な密着性を確保し、耐久性に優れ、ヌメリ抑制効果を可及的長期に亘って確保するヌメリ抑制措置とする上で有効なことが判明した。
【符号の説明】
【0060】
A システムキッチン
1 シンク
11 排水部材
11a 排水トラップ
11b 排水ゴミカゴ
11c 排水プレート
12 キャビネット
13 トップカウンター
14 中段引出
15 下段引出
16 排水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材の表面に、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの下地処理剤のいずれかを含む希釈水溶液処理によって該金属基材の表面にシラノール基を形成する下地処理工程と、3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの抗菌剤を含む希釈水溶液処理によって上記金属基材の表面に抗菌性を付与する抗菌処理工程と、高温加熱処理によって上記シラノール基に上記抗菌剤の4級アンモニウム塩のシラノール基を共有結合する加熱処理工程を施すことを特徴とする金属製排水部材のヌメリ抑制処理方法。
【請求項2】
上記金属基材を、ステンレスによるものとしてなることを特徴とする請求項1に記載の金属製排水部材のヌメリ抑制処理方法。
【請求項3】
上記希釈水溶液における下地処理剤の濃度を、1.5wt%〜7wt%とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属製排水部材のヌメリ抑制処理方法。
【請求項4】
上記抗菌処理の希釈水溶液における抗菌剤の濃度を、1wt%〜4wt%とすることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の金属製排水部材のヌメリ抑制処理方法。
【請求項5】
上記高温加熱処理を、加熱温度120℃〜170℃、加熱時間0.5〜3時間とすることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の金属製排水部材のヌメリ抑制処理方法。
【請求項6】
メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのいずれかの下地処理剤によって金属基材表面に形成したシラノール基に対して4級アンモニウム塩のシラノール基を共有結合した3−(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの抗菌処理を施してなることを特徴とするヌメリ抑制金属製排水部材。
【請求項7】
上記排水部材を、システムキッチンにおけるシンク用のものとしてなることを特徴とする請求項6に記載のヌメリ抑制金属製排水部材。
【請求項8】
上記排水部材を、ユニットバスの床又は浴槽用のものとしてなることを特徴とする請求項6に記載のヌメリ抑制金属製排水部材。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2011−72868(P2011−72868A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224716(P2009−224716)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】