説明

金属製真空断熱容器

【課題】封止部の保護と外観性に優れた金属製真空断熱容器を提供する。
【解決手段】金属製の内容器3と金属製の外容器6とをそれぞれ口部7で一体化して二重壁構造としてなるとともに、内容器3と外容器6の間の空隙を、外容器6に設けた排気孔9より排気して、排気孔9をろう材10で封止して真空断熱層8としてなる金属製真空断熱容器において、排気孔9をろう材10で封止した封止部17への保護板19を合成樹脂製熱接着剤20で密着させたことにより、保護板19と断熱容器間に水が浸入せず、金属腐食や、金属腐食による断熱性能の低下を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製マグや魔法瓶などの金属製真空断熱容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものは、内容器と外容器とをそれぞれ口部で溶接一体化して二重壁構造とし、内容器と外容器の間の空隙を、排気孔より排気して、排気孔をろう材で封止して真空断熱層としてなる金属製真空断熱容器があり、排気孔をろう材で封止した封止部にカバーシートを貼着したり(例えば、特許文献1)、または保護板を接着剤を用いて貼り付けて、ろう材の保護と、外観性の向上を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−316729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の金属製真空断熱容器の底部材を覆う底カバーの嵌合や、特許文献1に記載されたカバーシートの貼着では、容器の丸洗いのときに底カバーと外容器の間、あるいはカバーシートと外容器の間に水が浸入し金属腐食のおそれがあることや、腐食が真空断熱層まで達すれば真空破壊による断熱性低下のおそれがあった。また、カバーシートの貼着だけでは落下などによる容器の変形に対しては排気孔の保護の効果は小さかった。
【0005】
そこで、本願発明は上記した問題点に鑑み、封止部の保護と外観性に優れた金属製真空断熱容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明の金属製真空断熱容器では、金属製の内容器と金属製の外容器とをそれぞれ口部で一体化して二重壁構造としてなるとともに、前記内容器と前記外容器の間の空隙を、前記内容器あるいは前記外容器に設けた排気孔より排気して、前記排気孔をろう材で封止して真空断熱層としてなる金属製真空断熱容器において、前記排気孔を前記ろう材で封止した封止部への保護体を合成樹脂製熱接着剤で密着させたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明の金属製真空断熱容器では、前記封止部の前記ろう材表面は、前記保護体の接着面と同じ位置、あるいは前記接着面よりも深い位置になることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明の金属製真空断熱容器では、前記断熱層に溶接されるゲッターは、前記接着面よりも内側に溶接されることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明の金属製真空断熱容器では、前記保護体は金属製であることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明の金属製真空断熱容器では、前記保護体は合成樹脂、あるいはゴム、熱可塑性エラストマー製であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1記載の発明によれば、保護体と断熱容器間に水が浸入せず、金属腐食や、金属腐食による断熱性能の低下を防ぐことができる。
【0012】
本発明の請求項2記載の発明によれば、保護体がろう材と接触せず、すなわち保護板が接着面から浮き上がることなく、合成樹脂製熱接着剤を介して密着させることができる。
【0013】
本発明の請求項3記載の発明によれば、ゲッターの溶接跡が保護体により隠蔽され外観性を向上させることができる。
【0014】
本発明の請求項4記載の発明によれば、封止部を強固に補強することができ、容器の落下などによる衝撃や変形から保護し、断熱性能の低下を防止することができる。
【0015】
本発明の請求項5記載の発明によれば、容器の落下などによる衝撃を吸収して封止部を保護し、断熱性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の金属製真空断熱容器の実施例1を示す断面図である。
【図2】同上、容器の底側を上向きとした断面図である。
【図3】同上、外容器を底側から見た斜視図である。
【図4】本発明の金属製真空断熱容器の実施例2を示す断面図である。
【図5】本発明の金属製真空断熱容器の実施例3を示す要部断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0018】
図1〜図3は本発明の金属製真空断熱容器の実施例1を示しており、同図において真空構造体としてのマグや魔法瓶などの断熱二重容器は、内筒部1の底に内底板部2を有する内容器3と、外筒部4の底に外底板部5を有する外容器6とを、それぞれの上部開口7を接合したものであり、内容器3と外容器6はそれぞれステンレス鋼、例えば18−8ステンレス鋼によって形成されている。そして、内容器3と外容器6との間隙は真空断熱空間8が形成されているものであり、これは外筒部4の中央に形成し内外を連通した排気孔9を介して真空断熱空間8の間隙を排気した後、ろう材10によって封止したものである。尚、内容器3の真空断熱空間8側の面又は及び外容器6の真空断熱空間8側の面にはゲッターGが装着している。
【0019】
外底板部5に小孔状の排気孔9が形成されており、この排気孔9の周囲は平面を円形として断熱空間8側に凹に形成されている。そして上下に三段状の凹部は、最深部に排気孔9が形成された幅狭凹部である小径の円筒凹部12(以下、小径円筒凹部12と呼称する)と、前記小径円筒凹部12より一段外側に形成され小径円筒凹部12と後述の大径の円筒凹部14との中間の径を有する中径の円筒凹部13(以下、中径円筒凹部13と呼称する)と、この中径円筒凹部13及びと外底板部5の表面との間に形成される幅大凹部である大径の円筒凹部14(以下、大径円筒凹部14)を有する三段状の円筒からなる。
【0020】
小径円筒凹部12には、小径円筒凹部12の底面15(以下、小径底面部15と呼称する)から側壁16(以下、小径側面16と呼称する)上端付近まで充填されたろう材10によって排気孔9を封止した封止部17が形成されている。前記ろう材10は、金属もしくはガラス製ろう材である。
【0021】
大径円筒凹部14には、底面視略ドーナツ状の底面18(以下、大径底面18と呼称する)に遊嵌するように円板状に形成された保護板19が変性ポリオフィレン等の合成樹脂製熱接着剤20を介して接着面である大径底面18に接着されている。
【0022】
前記保護板19は、内容器3と外容器6同様のステンレス鋼、例えば18−8ステンレス鋼等の金属製であり、保護板19の板厚Dは、0.1mm以上であることが好ましい。
【0023】
大径円筒凹部14と保護板19間に介在する合成樹脂製熱接着剤20に関しては、合成樹脂製熱接着剤20を介して保護板19と大径底面18が接触する接着面積S(図中、点描部分)が150mm以上かつ、もしくは保護板19と大径底面18の接着幅Wを2mm以上とすることが好ましい。
【0024】
以上の構成の金属製真空断熱容器において、合成樹脂製熱接着剤20は加熱溶融と加圧により、合成樹脂製熱接着剤20が大径底面18と保護板19の隙間を完全に埋めて、保護板19を大径底面18に密着させることができるため、保護板19と断熱容器間に水が浸入せず、金属腐食や、金属腐食による断熱性能の低下がない。
【0025】
また、図2に示すようにろう材10の下側表面10Aは、保護板19の接着面である大径底面18よりも金属容器内部、つまり断熱空間8側に向けてより凹ませた深い位置になるので、保護板19とろう材10が接触せず、すなわち盛り上がったろう材10によって保護板19が接着面(大径底面18)から浮き上がることがなく、合成樹脂製熱接着剤20を介して保護板19を大径底面18に密着させることができる。
【0026】
さらに、ゲッターGは、保護板19の接着面(大径底面18)よりも内側、つまり接着後の保護板18の外容器6底側からの投影面積Pの内側にある中径円筒凹部13の底面21(以下、中径底面21と呼称する)に溶接されているので、ゲッターGの溶接跡22が保護板19により隠蔽され外観を悪化させることがない。
【0027】
また、保護板19が金属製であるため、封止部17を強固に補強することができ、容器の落下などによる衝撃や変形から保護し断熱性能の低下を防止することができる。
【0028】
さらに、保護板19の接着面積Sが150mm以上かつ、もしくは接着幅Wが2mm以上であることにより、十分な接着強度を得ることができる。尚、保護板19の接着面積Sが150mmより小さいと、容器の落下などによる変形に耐えるほどの接着強度がなく、保護板19がはがれて封止部17を保護することができないという問題がある。また、接着幅Wが2mmより小さくても同様な問題がある。
【0029】
また、保護板19の板厚Dが0.1mm以上であることにより、十分な強度を得ることができる。尚、板厚Dが0.1mmより小さいと、容器の落下などによる変形に対する補強効果が小さく、変形から封止部17を保護することができないという問題がある。
【0030】
以上のように本実施例は請求項1に対応しており、金属製の内容器3と金属製の外容器6とをそれぞれ口部7で一体化して二重壁構造としてなるとともに、内容器3と外容器6の間の空隙を、外容器6に設けた排気孔9より排気して、排気孔9をろう材10で封止して真空断熱層8としてなる金属製真空断熱容器において、排気孔9をろう材10で封止した封止部17への保護体である保護板19を合成樹脂製熱接着剤20で密着させたことにより、保護板19と断熱容器間に水が浸入せず、金属腐食や、金属腐食による断熱性能の低下を防ぐことができる。
【0031】
また、本実施例は請求項2に対応しており、封止部17のろう材10表面である底側表面10Aは、保護板19の接着面である大径底面18と同じ位置、あるいは大径底面18よりも深い位置(図2参照)になることにより、保護板19がろう材10と接触せず、すなわち保護板19が大径底面18から浮き上がることなく、合成樹脂製熱接着剤20を介して密着させることができる。
【0032】
さらに、本実施例は請求項3に対応しており、断熱層8に溶接されるゲッターGは、接着面である大径底面18よりも内側の中径底面21に溶接されることにより、ゲッターGの溶接跡22が保護板19により隠蔽され外観性を向上させることができる。
【0033】
また、本実施例は請求項4に対応しており、保護板19は金属製であることにより、封止部17を強固に補強することができ、容器の落下などによる衝撃や変形から保護し、断熱性能の低下を防止することができる。
【0034】
さらに、本実施例上の効果として、この排気孔9の周囲は平面を円形として断熱空間8側に上下に三段状の凹部12,13,14を形成し、封止部17が形成された小径凹部12と保護板19が接着された大径凹部14との間に中径部13によって形成された空間Kを設けたことにより、保護板19とろう材10とが接触せず、すなわち盛り上がったろう材10によって保護板19が接着面(大径底面18)から浮き上がることがなく、合成樹脂製熱接着剤20を介して保護板19を大径底面18に密着させることができる。
【実施例2】
【0035】
図4は、実施例2を示しており、前記実施例1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。実施例2の断熱容器は、内筒部1を上部開口7に向けて縮径させた細口型の内容器3と、外筒部4を上部開口7に向けて縮径させた細口型の外容器6をそれぞれの上部開口7で接合した細口型の断熱容器である。
【実施例3】
【0036】
図5は、実施例3を示しており、前記実施例1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。実施例3の断熱容器は、保護板30を合成樹脂、あるいはゴム、熱可塑性エラストマー製とし、外底板部5とほぼ同一面積かそれ以下に形成された円板形状を有し、その中央部分に大径底部18に遊嵌するように形成された凸部31を備え、合成樹脂製熱接着剤20を介して、凸部31と外周30Aがそれぞれ大径底部18と外底板部5に接着されたものである。
【0037】
本実施例は請求項5に対応しており、保護板30を合成樹脂、あるいはゴム、熱可塑性エラストマー製とすることにより、容器の落下などによる衝撃を吸収し、封止部17を保護して断熱性能の低下を防止することができる。
【0038】
本発明は、上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、封止部17の形態については、適宜変更可能であり、排気孔9をステンレス鋼等の金属板で塞いでから、この金属板ごと排気孔9をろう材10によって封止するものとしても良いものとする。また、排気孔9の周囲の形状についても、ろう材10の表面10Aと保護板19の接着面との間に空間Kを形成する構造であれば、外底面5を断熱空間8側に上下に三段状の凹にする形状に限らず、四段以上の複数段の凹とする形状としても構わないものとする。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように本発明に係る金属製真空断熱容器は、各種の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
3 内容器
6 外容器
7 上部開口(口部)
9 排気孔
10 ろう材
17 封止部
18 大径底面(接着面)
19,30 保護板(保護体)
20 合成樹脂製熱接着剤
G ゲッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の内容器と金属製の外容器とをそれぞれ口部で一体化して二重壁構造としてなるとともに、前記内容器と前記外容器の間の空隙を、前記内容器あるいは前記外容器に設けた排気孔より排気して、前記排気孔をろう材で封止して真空断熱層としてなる金属製真空断熱容器において、
前記排気孔を前記ろう材で封止した封止部への保護体を合成樹脂製熱接着剤で密着させたことを特徴とする金属製真空断熱容器。
【請求項2】
前記封止部の前記ろう材表面は、前記保護体の接着面と同じ位置、あるいは前記接着面よりも深い位置になることを特徴とする請求項1記載の金属製真空断熱容器。
【請求項3】
前記断熱層に溶接されるゲッターは、前記接着面よりも内側に溶接されることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属製真空断熱容器。
【請求項4】
前記保護体は金属製であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属製真空断熱容器。
【請求項5】
前記保護体は合成樹脂、あるいはゴム、熱可塑性エラストマー製であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属製真空断熱容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−219125(P2011−219125A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89787(P2010−89787)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(591261602)サーモス株式会社 (76)
【Fターム(参考)】