説明

金属部材の防錆方法

【課題】防錆のための再塗装や、設備の定期的な交換を行うことなく、防錆効果を維持する。
【解決手段】 海水を取り扱う施設Fで用いられ海水wに触れる金属部材の表面に、オゾンを含有する海水w’を当てることによって、その金属部材の表面に酸化被膜を形成する金属部材の防錆方法を採用した。海水を取り扱う施設Fの送水管23の途中にオゾン発生装置25を設け、そのオゾン発生装置25により前記送水管23の中の海水wにオゾンを含有させるようにする。このオゾンを含有する海水w’が、金属製の送水管23や冷却水タンク26等に当たることによりその表面に酸化被膜が形成され、防錆効果を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、海水を移送するための配管や、貯留用のタンクなど、各種海水を取り扱う施設に用いられる金属部材の防錆方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海岸沿いの工場や、各種船舶などには、各種、海水を取り扱う施設が設けられている。
例えば、工場では、機器類の冷却水として海水を汲み上げて利用する場合がある。また、船舶では、海水を冷却水としての利用する場合の他、その船舶に積荷等が積載されていないときに船体の重心を下げるためのバラスト水として利用する場合もある。
【0003】
この種の海水を取り扱う施設において、その海水に触れるタンク内面や配管内面、ボルト等の金属部材には、海水に対して防錆機能を発揮し得る各種塗装処理が施される(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−305303号公報
【特許文献2】特開平9−206675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この塗装は、海水の給水や排水を繰り返していると、経年で劣化する傾向がある。特に、塩分を含む海水を用いていることから、真水を対象とした一般的な貯水タンクや送水管等よりも、腐食の進行は早いと考えられる。
【0006】
また、その海水の給排水の繰り返しによって、その海水に含まれる夾雑物が前記タンク内面や配管内面、ボルト等に衝突することによって、塗装が削られているとも考えられる。
【0007】
塗装が剥がれたり削られたりすると、防錆効果は得られなくなり、そのままでは腐食が進行してしまう。このため、そのタンクや配管類等は、定期的に交換、又は、前記内面等の再塗装を行うことが望ましい。
【0008】
このような設備の定期的な交換や再塗装は、工場の稼働休止や船舶の運航休止等を伴い、また、それらの作業は大規模なものとなるのでコストアップの要因となっている。
【0009】
そこで、この発明は、防錆のための再塗装や、設備の定期的な交換を行うことなく、防錆効果を維持することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、この発明は、海水を取り扱う施設に用いられる部材のうち、タンク内面や配管内面、ボルト等、海水に触れる金属部材に、オゾンを混入させた海水を当てて酸化被膜を形成するようにしたものである。
【0011】
海水とオゾンとによる酸化被膜の形成によって防錆機能が発揮されるので、海水に触れる部分への塗装処理が不要となる。すなわち、オゾンが海水中に含まれることによって、その海水とオゾンとの相互作用によって、酸化被膜の形成が促進される効果が期待できる。
【0012】
また、このオゾンによる酸化被膜の形成は、海水を用いて行うことから、工場の稼働中や船舶の運航中等にも継続して行うことができる。このため、防錆のための再塗装や、設備の定期的な交換を行うことなく、防錆効果を維持することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、海水に触れる金属部材に、海水とオゾンとによる相互作用によって酸化被膜を形成するようにしたので、塗装処理が不要となる。
また、その酸化被膜の形成は海水を用いて行うことから、防錆のための再塗装や、設備の定期的な交換を行うことなく、防錆効果を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
具体的な実施形態は、海水を取り扱う施設で用いられ、その海水に触れる金属部材の表面に、オゾンを含有する海水を当てることによって、その金属部材の表面に酸化被膜を形成することを特徴とする金属部材の防錆方法である。
【0015】
前記海水を取り扱う施設は、海水を移送するための配管を備えており、その配管の途中にオゾン発生装置を設け、そのオゾン発生装置により前記配管中の海水にオゾンを含有させる構成とすることができる。
【0016】
また、前記オゾン発生装置は、前記配管に沿って複数箇所に設けられる構成を採用することができる。海水中に含まれるオゾンの濃度は、海水が配管内を流れるに従って徐々に減少する傾向があるので、特に、配管が長い場合には有効である。
【0017】
前記オゾン発生装置の下流側に、オゾンを含有する前記海水を撹拌することによりオゾン濃度を調整する撹拌装置を備えた構成を採用することができる。海水を撹拌すれば、その海水中に含まれるオゾンの濃度が減少する傾向があるので、この撹拌装置によって、海水を、酸化被膜の形成に適切なオゾン濃度に調整することができる。
【0018】
前記海水を取り扱う施設としては、例えば、工場や船舶等において用いられる冷却水供給設備が挙げられる。
また、船舶にバラスト水としての海水を収容するためのバラスト水関連設備も挙げられる。
【0019】
バラスト水関連設備の場合、そのバラスト水関連設備が、前記海水を給水する際等にその海水に含まれる生物の死滅処理を行う機能を有するバラスト水処理装置を備えている場合においては、前記オゾン発生装置は、そのバラスト水処理装置とすることができる。
この構成によれば、海水に含まれる生物を死滅させるためのバラスト水処理装置を、そのまま、酸化被膜形成用のオゾン発生装置として利用することができ、装置の簡素化を図ることができる。
【0020】
なお、前記酸化被膜の形成は、前記海水を取り扱う施設を構築する前に、その海水を取り扱う施設で用いられる各金属部材の表面に対して行い、その酸化被膜の形成後、前記海水を取り扱う施設を構築する手法を採用することができる。施設を構築する前の部品の状態において、既に酸化被膜が形成されていれば、施設を構築して稼働後、すぐに防錆機能が発揮される。
【0021】
このように施設の構築前に酸化被膜を形成する金属部材としては、前記海水を取り扱う施設で用いられるタンク装置、配管、ボルト及びナットから選択される単一種類の又は複数種類の部材を含む構成とすることができる。
【実施例】
【0022】
第一の実施例を図1に示す。この実施例は、海岸沿いの工場において、海水wを機器類の冷却水として取り扱う施設(冷却水供給設備)Fである。
図1に示すように、海Sから汲み上げられた海水wが、送水管23を通じて冷却水タンク装置26に移送されている。
【0023】
海水wを移送するための送水管23の途中には、オゾン発生装置25が複数設けられている。そのオゾン発生装置25により、送水管23内の海水wに、オゾンを含有させることができる構成となっている。
【0024】
オゾンを含有した海水w’は、その送水管23の内面や、前記冷却水タンク装置26の内面、その他海水wが触れる金属部材に酸化被膜を形成する。この酸化被膜の形成メカニズムは、オゾンに海水が作用することにより遊離酸素が発生し、金属部材の表面が、オキシ水酸化鉄などの金属酸化物により均一に覆われることや、鋼材等に微量に含まれるCr等の元素の不動態被膜化が均一にできる結果と推定される。この酸化被膜により、冷却水供給設備Fの金属部材の錆の発生、腐食が抑制される。
【0025】
この酸化被膜の形成は、オゾン発生装置25がオゾンの発生を継続している限り、前記冷却水供給設備Fが海水wを用いて稼働している間、継続して行われる。このため、錆や腐食の抑制効果は持続される。
【0026】
なお、オゾンによる酸化被膜の形成は、金属部材の表面に、防錆のための各種塗装を施していても、ピンホール部や塗り残し部等に対してある程度期待できる。
【0027】
また、その海水w’中に含まれるオゾンの濃度は、海水w’が送水管23内を流れるに従って徐々に減少する傾向があるので、オゾン発生装置25が、送水管23の配管12が伸びる方向に沿って複数箇所に設けられている。このため、オゾン濃度が送水管23の全長を通じて一定以上に保たれる。
【0028】
また、上記の構成は、各種船舶に搭載される冷却水供給設備Fとしても採用することができる。
【0029】
以下に、第二の実施例を示す。この実施例は、図2に示す被膜形成装置を用いて、前記冷却水供給設備(海水を取り扱う施設)Fや、船舶用のバラスト水関連設備(海水を取り扱う施設)B等を構築する前に、その各設備B,Fに用いられる金属部材に酸化被膜を形成するものである。
【0030】
被膜形成装置は、図2に示すように、貯水タンク2から引き出された送水管3にポンプ4が設けられている。ポンプ4によって前記貯水タンク2から矢印aの方向へ海水wが導かれる。
【0031】
その送水管3は、オゾン発生装置5に接続されている。オゾン発生装置5では、前記貯水タンク2から供給された海水wにオゾンを混入させる処理を行う。オゾンの濃度は、適宜設定できるようになっている。
【0032】
送水管3はさらに伸びて、フィルタ6を通過した後、撹拌タンク1に通じている。オゾンを含有する海水w’は、この撹拌タンク1内に流入する。
【0033】
撹拌タンク1内には、撹拌装置20が設けられている。撹拌装置20は、水平方向の回転軸20aの周りに、複数の撹拌翼20bが設けられている。駆動力によって、回転軸20aが軸周りに回転すれば、撹拌翼20bは、図中矢印bの方向へ回転する。
【0034】
撹拌翼20bが回転することにより、オゾンを含有する海水w’が撹拌され、その海水w’のオゾン濃度を調整することができる。すなわち、回転速度を上げれば、撹拌度合いが増してオゾン濃度が低減され、回転速度を下げれば、あるいは回転を停止すれば、オゾン濃度が低減せずに維持される。
【0035】
撹拌タンク1には、吐出部10が設けられている。オゾンを含有する海水w’は、この吐出部10から排水されて、貯水タンク2に戻るようになっている。
【0036】
酸化被膜の形成は、前記海水を取り扱う施設B,Fを構成する各部部品、すなわち、被膜形成対象物となる金属部材を撹拌タンク1内や前記吐出部10内に配置して、あるいは、その吐出部10に接続して行う。
【0037】
被膜形成対象物を前記撹拌タンク1内や前記吐出部10内に配置すれば、その被膜形成対象物にオゾンを含有する海水w’が当たるので、一定時間を経過すれば、その表面に酸化被膜が形成される。
また、被膜形成対象物が配管等の管状部材であれば、その管状部材を前記吐出部10に接続することにより、一定時間を経過すれば、その管状部材の内面に酸化被膜を形成することができる。
【0038】
図2は、吐出部10内に被膜形成対象物として試験片11が配置された状態を示している。吐出部10は、撹拌タンク1に一体の根元部10aと、その根元部10aに着脱自在の着脱部10bとからなり、前記試験片11は、着脱部10b内に配置されて周知の手法で固定される。
また、図2では、前記着脱部10bに被膜形成対象物として配管12が接続されている。
【0039】
吐出部10からオゾンを含有する海水w’が排水され、一定時間が経過すれば、前記試験片11の表面や、前記配管12の内面に酸化被膜を形成することができる。
【0040】
なお、撹拌タンク1内に設けられている撹拌装置20の回転軸20a及び撹拌翼20bを被膜形成対象物として、撹拌タンク1内のオゾンを含有する海水w’の水位を調節して被膜形成し、その被膜形成された回転軸20aや撹拌翼20bを、前記海水を取り扱う施設B,Fの一部とすることもできる。
また、その撹拌タンク1自体を被膜形成対象物として、その撹拌タンク1を前記海水を取り扱う施設B,Fの一部としてもよい。
【0041】
図3は、前記バラスト水関連設備Bに用いられるボルト13、ナット14、その他部材15を、テンショナ21を介して前記吐出部10内に配置する際の態様を示している。
【0042】
図3(a)は、C字型のテンショナ21aに固定されたナット21bに、被膜形成対象物としてのボルト13がねじ込まれて固定されている。テンショナ21aは、吐出部10の前記着脱部10b内面に一体に固定されている。
【0043】
図3(b)は、同じくテンショナ21aに固定されたボルト21cに、被膜形成対象物としてのナット14がねじ込まれて固定されている。
【0044】
図3(c)は、吐出部10内に固定されたC字型のテンショナ21aに、被膜形成対象物としてのその他部材15が、前記テンショナ21aの開口部21dに挟まれて固定されている。この実施形態では、その他部材15として板状部材を採用している。テンショナ21の弾性力によって、前記その他部材15が板厚方向に挟まれて固定されている。
【0045】
図4は、被膜形成対象物としての配管(管状部材)12を、前記吐出部10に複数本接続したものである。
【0046】
図5に第三の実施例を示す。この実施例は、前記海水を取り扱う施設Bとして、バラスト水関連設備Bを船舶に搭載したものである。このバラスト水関連設備Bは、上記第二の実施例の方法により酸化被膜が形成された部品を用いて構築されている。
【0047】
また、このバラスト水関連設備Bには、バラスト水としての海水wに含まれる生物を死滅させるためのオゾン処理を行うバラスト水処理装置(オゾン発生装置)25が搭載されている。
【0048】
バラスト水関連設備Bの構成は、バラスト水としての海水wが貯留されるバラストタンク装置26、そのバラストタンク装置26への海水wの給水装置である送水管23、ポンプ24、給水管27、前記海水wにオゾン処理を施すバラスト水処理装置25、及び前記バラストタンク装置26内の海水wの排水装置である排水管28を備えている。図中の符号29,30は、開閉弁である。
【0049】
上記の方法により、酸化被膜が形成されているのは、前記バラストタンク装置26の内面における前記海水wに触れる部分、前記給水装置としての送水管23、ポンプ24、給水管27の内面における前記海水wに触れる部分、前記排水装置としての排水管28の内面における前記海水wに触れる部分、及び前記バラスト水処理装置25の前記海水wに触れる部分である。
【0050】
送水管23や給水管27、排水管28等の各種管状部材には、前述の方法により酸化被膜が形成された前記配管12が用いられている。
また、酸化被膜が形成されているのは、前記海水wに触れる部分であり、配管12や撹拌タンク1等に使用されるボルトやナット、その他部材(例えば、スペーサ等の板状部品)も、前述の方法により酸化被膜が形成されたボルト13,ナット14、その他部材15等が用いられている。また、送水管23等の途中に適宜設けられるストレーナに用いられるフィルタにも酸化被膜が形成されている。
【0051】
このように、前記バラスト水関連設備Bを船舶へ搭載する前に、装置の各部に酸化被膜を形成されているので、バラスト水関連設備Bの稼働初期から大きな防錆効果が期待できる。また、酸化被膜の形成は、バラスト水処理装置25による生物の死滅処理とは別に行われるため、酸化被膜の形成に最適なオゾン濃度を採用することにより、より高い防錆効果を発揮し得る酸化被膜を形成することができる。
【0052】
また、その酸化被膜は、実際にバラスト水処理装置25の稼働を開始した後、その稼働によって断続的にオゾンを含有する海水w’に触れるので、膜厚の劣化が少なく防錆効果を安定して持続させることができる。
【0053】
例えば、バラストタンク装置26へ海水wを供給する場合、図5(a)に示す開閉弁30を開放し、開閉弁29を閉じる。ポンプ24を稼働させて、海水wを図中矢印で示すように海からポンプアップするとともに、バラスト水処理装置25を稼働させて、そのポンプアップした海水wにオゾンを含有させる。そのオゾンを含有する海水w’は、図5(a)中に矢印で示すように、各バラストタンク装置26に流入し貯留される。
【0054】
各バラストタンク装置26に貯留されたオゾンを含有する海水w’は、図5(b)に示すように、各バラストタンク装置26、給水管27、及び排水管28内を循環させることもできる。
この循環の際は、開閉弁30を閉じ、開閉弁29を開放する。ポンプ24を稼働させれば、図5(b)に矢印で示すようにオゾンを含有する海水w’が循環する。この循環は、酸化被膜の形成に効果的である。また、このとき、同時にバラスト水処理装置25を稼働させて、その循環中のオゾンを含有する海水w’に、さらにオゾンを付加することもできる。
【0055】
バラストタンク装置26内のオゾンを含有する海水w’を排水する際には、開閉弁29
と開閉弁30を閉じ、排水管28の先に設けた排水ポンプ(図示せず)を稼働させることにより、オゾンを含有する海水w’は、排水管28を経由して船外に排水される。この排水の際にも、排水管28をはじめ、排水される海水w’に触れる部品等に酸化被膜を形成し得る。
なお、開閉弁29を閉じるとともに開閉弁30を解放し、ポンプ24を稼働させることにより、オゾンを含有する海水w’を、図5(c)に矢印で示すように送水管23を介して船外に排水してもよい。この排水の際にも、送水管23をはじめ、開閉弁30や、排水される海水w’に触れる部品等に酸化被膜を形成し得る。
【0056】
前記酸化被膜を形成する際のオゾン濃度は、海水wを用いる場合、図2の装置において、前記吐出部10付近で0.5ppm程度となるようにすれば、酸化被膜が形成されやすい。また、水の種類や金属の素材等に応じて、0.1ppm〜10ppmの間で、酸化被膜の形成に最適な数値を選択することが望ましい。なお、金属材料としては、鉄を主成分とした一般鋼材、ステンレス鋼、クロム合金、青銅などの銅合金など、海水中で使用される材料一般に適用できる。また、特に、鋳鉄に適用することもできる。
【0057】
なお、前記バラスト水処理装置25による海水w内の生物の死滅処理の際には、オゾン濃度は、0.5ppm〜5ppmの間で、水の取水地域の違いや生物の種別等に応じて、死滅処理に最適な数値を選択することが望ましい。
【0058】
また、他の実施例として、前記バラスト水関連設備Bが船舶に搭載された後、実際に船舶が運航を開始して生物の死滅処理が稼働する前に、そのバラスト水関連設備Bが備える前記バラスト水処理装置25によって、オゾンを含有する海水w’を装置各部に供給し、その海水w’が触れる部分に酸化被膜を形成する手法を採用することもできる。
【0059】
この構成においても、酸化被膜の形成は、バラスト水処理装置25による生物の死滅処理とは別に行われるため、酸化被膜の形成に最適なオゾン濃度を採用することにより、より高い防錆効果を発揮し得る酸化被膜を形成することができる。
【実験例】
【0060】
図6及び図7に、金属部材にオゾンを含有する海水w’を当てることによる防錆効果の確認の実験例を示す。
【0061】
図6は、「オゾンを含有しない海水w」と「オゾンを含有する海水w’」のそれぞれに、試験片としての鋼管(前記配管12)を、図2に示す装置の前記吐出部10に設置して、その鋼管の腐食の進行度合いを比較したものである。なお、「オゾンを含有する海水w’」のオゾン濃度は、0.5ppmとした。
【0062】
グラフ中で「海水のみ」と示される「オゾンを含有しない海水w」に触れる鋼管は、時間の経過とともに腐食が進行してその重量が減少している。
同じくグラフ中で「プラスオゾン水」と示される「オゾンを含有する海水w’」に触れる鋼管は、酸化被膜の効果により、重量の減少がほとんど見られない。
【0063】
図7は、試験片として鋼板を用い、オゾンの濃度の差異により、その鋼板の重量の減少にどの程度の差異が現れるかを検証した。
【0064】
グラフ中で「海水」と示される鋼板は、「オゾンを含有しない海水w」に触れる試験片であり、時間の経過とともに徐々にその重量が減少している。
「海水+オゾン0.5ppm」と表示される鋼板、及び「海水+オゾン3ppm」と表示される鋼板は、いずれも、「海水」と示される鋼板と比較して、重量の減少が非常に少ない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第一の実施例を示す全体正面図
【図2】第二の実施例の酸化被膜形成装置の全体正面図
【図3】図1の要部拡大図で、(a)は供給配管内にナット付テンショナを配置した場合の正面図、(b)はボルト付テンショナを配置した場合の正面図、(c)は板状部材を保持できるテンショナを配置した場合の正面図
【図4】供給配管に複数の管体を連結した状態を示す要部拡大図
【図5(a)】第三の実施例の船舶に搭載されるバラスト水関連設備を示し、海水の供給時の流れを示す模式図
【図5(b)】第三の実施例の船舶に搭載されるバラスト水関連設備を示し、海水の循環時の流れを示す模式図
【図5(c)】第三の実施例の船舶に搭載されるバラスト水関連設備を示し、海水の排水時の流れを示す模式図
【図6】本発明を適用した鋼管の防錆効果確認実験例
【図7】本発明を適用した鋼板の防錆効果確認実験例
【符号の説明】
【0066】
1 撹拌タンク
2 貯水タンク
3,23 送水管
4,24 ポンプ
5 オゾン発生装置
10 吐出部
10a 根元部
10b 着脱部
11 試験片(被膜形成対象物)
12 配管(管状部材)(被膜形成対象物)
13 ボルト(被膜形成対象物)
14 ナット(被膜形成対象物)
15 板状部材(被膜形成対象物)
20 撹拌装置
20a 回転軸
20b 撹拌翼(被膜形成対象物)
21 テンショナ
21a テンショナ
21b ナット
21c ボルト
21d 開口部
25 バラスト水処理装置(オゾン発生装置)
26 冷却水タンク装置、バラストタンク装置
27 給水管
28 排水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水を取り扱う施設(B,F)で用いられ、その海水(w)に触れる金属部材の表面に、オゾンを含有する海水(w’)を当てることによって、その金属部材の表面に酸化被膜を形成することを特徴とする金属部材の防錆方法。
【請求項2】
前記海水を取り扱う施設(B,F)は、海水(w)を移送するための配管(12)を備えており、その配管(12)の途中にオゾン発生装置(25)を設け、そのオゾン発生装置(25)により前記配管(12)中の海水(w)にオゾンを含有させることを特徴とする請求項1に記載の金属部材の防錆方法。
【請求項3】
前記オゾン発生装置(25)は、前記配管(12)に沿って複数箇所に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属部材の防錆方法。
【請求項4】
前記酸化被膜の形成は、前記海水を取り扱う施設(B,F)を構築する前に、その海水を取り扱う施設(B,F)で用いられる各金属部材の表面に対して行い、その酸化被膜の形成後、前記海水を取り扱う施設(B,F)を構築することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の金属部材の防錆方法。
【請求項5】
前記金属部材は、前記海水を取り扱う施設(B,F)で用いられるタンク装置(1;26)、配管(12;23,27,28)、ボルト(13)及びナット(14)から選択される単一種類の又は複数種類の部材を含むことを特徴とする請求項4に記載の金属部材の防錆方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−270175(P2009−270175A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123536(P2008−123536)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】