説明

金融取引処理装置

【課題】金融取引処理装置は、電子的に取引履歴データを磁気ディスクなどに記憶しているが、水害などにより電子部品がすべて故障するような冗長性機能が果たせなくなるような場合、取引履歴データの復元ができない。
【解決手段】この発明は、水害による故障被害を及ぼすような浸水などの異常を事前に検知し、検知した場合に、データを安全な場所にバックアップする必要がある。しかし、データ保全できる時間をできる限り短くしないと、バックアップ途中に障害が発生してしまう可能性があるため、バックアップする情報は、必要最低限とし、ホスト側との履歴データと時系列的に矛盾なきようなインデックスを付与することで復元が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば利用者自ら操作を行い、金融取引を行なう金融取引処理装置内の取引履歴バックアップ手段に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金融取引処理装置(ATM:Automated Teller Machine等)は、取引の証跡を残すために取引履歴をATM内のジャーナル装置にて紙に印字し、保有している。昨今の環境問題から紙をなくして電子記憶媒体に電子的に記録することでペーパレスのニーズが高まっている。
【0003】
電子記憶媒体の故障時などは、RAIDなどの技術で冗長性を高める技術は確立しているが、水害などの災害時には、電子記憶媒体全体が故障してしまい、記録データの復元が不可能となり、ペーパーレス化に踏み切ることができなかった。
【0004】
このような水害時でも問題ないように冗長化をはかるためにホスト側の上位装置にATMが生成した情報もリアルに送信して格納しておくことで対応は可能だが、ホスト改造などが発生し、費用面でも大変である。そこでデータを復元できるよう、装置配下に水が浸水したときだけに、即座にバックアップ記憶部にデータを移動することで保全を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-35126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記文献にあるようにATMでは取引履歴をジャーナルとして紙に印字して残していたが、ジャーナル用紙切れや印字するためのジャーナルプリンタが故障した場合に、ATMが使えなくなることを避けるために、一旦、データとして残しておき、用紙の補充、ジャーナルプリンタの修理後に印字することにより、ATMを継続して使用させている。ところがこの状態において、電子ジャーナル記憶部などが災害で水没したりすると、電子ジャーナル記憶部が使用できなくなり、ジャーナル印字すべきデータが消えてしまう問題があった。
【0007】
この発明は、金融取引処理装置は、電子的に取引履歴データを磁気ディスクなどに記憶しているが、水害などにより電子部品がすべて故障するような冗長性機能が果たせなくなるような場合、取引履歴データの復元ができない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、浸水するまえに、異常を検知しデータを水害被害に及ばない部位にバックアップすることで対応は可能である。しかし、災害時に電子記憶媒体が故障するまでの時間は十分確保できる保証はないため、データ保全できる時間をできる限り短くする必要がある。そこで、現在、取引成立時などは、センタから送信されてきているデータなどは、センタ側にて情報を保有しているので、そのような情報は取引通番だけをバックアップしておけば、復元は可能となるのでバックアップ時間がミニマム化を図れるよう金融取引処理装置のみが記録している情報だけを切り出し、バックアップ処理をおこなうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明により、水害発生時に短時間で情報を退避でき、復元にはセンタ側記録情報等を活用することで元の取引履歴データを復元することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ATMの外観を示す斜視図。
【図2】ATMの内部構成を示すブロック図。
【図3】ホストの内部構成を示すブロック図。
【図4】ATM内取引履歴情報のイメージ図。
【図5】ATM生成情報退避処理のフローチャート。
【図6】ATM生成バックアップ情報のイメージ図。
【図7】センタの履歴情報面のイメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【0012】
本実施形態は、銀行システムなどの金融機関システムに採用される例えばATM(Automated Teller Machine)のような金融取引処理装置に関する。
【0013】
図1は、金融取引処理装置としてのATM1の外観を示す斜視図であり、図2は、ATM1の内部構成を示すブロック図であり、図3は、ATM1と通信回線を介して接続されている上位装置であるホストコンピュータとしてのホスト14の内部構成を示すブロック図である。
【0014】
図1および図2に示すように、ATM1は、金融機関等に設置され、顧客である利用者の操作によって現金の入金や出金等の取引を行う自動取引装置である。このATM1は、回線接続部11により上位に設けたホスト13の回線接続部18に接続されている。ATM1は、操作案内部2、紙幣処理部3、硬貨処理部4、カード/明細票処理部5、通帳処理部6、音声案内ガイダンス部7、利用者検知センサ部8、バックアップ記憶部12、水検知センサ13そしてこれら各部を制御する制御部10などで構成されており、利用者の希望する種々の金融取引を自動的に実行する。制御部10は、CPU、記憶部9等のハード構成と、前記記憶部9に記憶されたプログラム、ATMの取引履歴などのデータ等のソフト構成とから成り、各種処理、取引を制御する。
【0015】
操作案内部2は、利用者に対して取引を誘導する操作案内手段としての画面表示部2a、及び利用者が入力するためのキー入力機能を有する入力手段としての操作部2bから構成されている。主にATM1の利用者が取引を行う際、ATM1は、前記画面表示部2aで取引処理案内を行ない、操作部2bにて希望する取引種別キーを選択入力させ、選択された取引を処理する。尚、操作案内部2は、操作案内表示画面に表示された表示キーへの押下を検知出来るようになっており、画面(ディスプレイ)とキー(タッチパネル)が一体化されたタッチパネルディスプレイ等により構成された入力兼表示部(入力表示部ともいう)が好ましい。そして、操作部2bは、表示ボタンあるいは表示キーとして構成されることが好ましい。
【0016】
紙幣処理部3と硬貨処理部4は、現金の入金や出金機能、現金の鑑別や搬送、収納機能を有する。
【0017】
カード/明細票処理部5は、利用者のカードの挿入又は排出動作、カードの磁気ストライプ又はICチップへのリード又はライト動作、カードエンボス部分のイメージの読取り機能などを有する。また取引した内容を印字部により明細票に印字し、装置内から排出する明細票機構を有する。
【0018】
通帳機構部6は、利用者の通帳の挿入を受け付けまた排出する挿入/排出機能、磁気ストライプのリード/ライト機能、通帳への印字部による印字機能などを有する。
【0019】
音声案内ガイダンス部7は、前記操作案内部2で利用者が取引を行なう際に、音声にて取引案内のサポートを実施し、利用者が取り忘れた現金の注意喚起等を行なう機能を有する。
【0020】
利用者検知センサ部8は、ATM1の前方部に設けられ、該装置の前方の利用者が存在するか否かを検知するものである。この利用者検知センサ部8は、検知結果を制御部10に通知し、利用者の挙動に対する様々な対応を実施するものである。
【0021】
記憶部9は、各種処理、取引に必要なプログラム、ATM取引履歴などのデータ等が記憶されており、制御部10によって、記憶制御される。
【0022】
バックアップ記憶部12は、制御部10によって、記憶部に記録されている取引履歴情報の一部をバックアップし記録されるものである。
【0023】
水検知センサ13は、水害等で浸水が発生したときに、その状態を検知し、制御部10に通知するものである。
【0024】
図3に示すように、ATM1と接続するホスト14は、回線接続部18を介してATM1の回線接続部11と接続され、ATM1とのデータの送信または受信を行う。
【0025】
ホスト14は、利用者の口座情報などを記憶する口座情報ファイル17およびATM取引履歴ファイル18を記憶するファイル部16と、これらを制御するホストコンピュータ制御部15とを有する。
【0026】
ATM取引履歴ファイル18は、ATM1とホスト1が取引情報を送受信を行ったことによる取引内容の証跡として履歴情報を保有する。保有している内容はATMの記憶部にも同じ内容が記録されている。
【0027】
図4はATM1内の記憶部9内に記憶されているATM内取引履歴情報30の例である。ATM内取引履歴情報には、ホスト14と通信を行った結果得られるホスト情報(30a,30d,30e)と係員処理などの証跡としてのATM内生成情報(30b,30c,30f)とが時系列的に格納されている。ホスト情報は、取引通番という情報で時系列を認識できるようになっている。ATM内生成情報は、直近の取引通番にそれ以降の時系列インデックスを付加したインデックスを記憶することでATM内生成情報であることの認識と時系列を確保することができる。例えば図4内に示すATM内生成情報通番(1−1)31の意味は、取引通番1の後に最初に発生した事象であることが認識できる。
【0028】
図5は、水害などの浸水が発生した時のバックアップ処理フローを示す。水検知センサ部13でATM床下に水を検知した場合(ステップS401)、制御部10は、記憶部9に対して、ATM生成情報退避処理を開始する(ステップS402)。制御部10は、退避すべき記憶領域の最初の取引レコードを検索しATM生成情報かを「ATM内生成情報通番」の有無を確認(ステップS403)し、ホスト情報ならば次レコードを検索し(ステップS405)、ATM内生成情報通番ならば、その情報をバックアップ記憶部にデータを転送する(ステップS404)。その操作を対象領域のすべてのレコードに対して実施し(ステップS406)、すべて終了すればATM生成情報退避処理を終了する(ステップS407)。
【0029】
また、その処理が終了すると図6に示すように、バックアップ記憶部12には、ATMが生成した取引履歴情報が格納される。
【0030】
図7には、ホスト内のATM取引履歴ファイル18の、センタ履歴情報33内には、取引通番にて時系列的に整列されたATMとの取引履歴情報(33a,33b,33c)が記憶されており、本情報は、ATM内部に記憶されているATM内取引履歴情報30のホスト情報と同等の内容が記憶されている。
【0031】
万一、水害により記憶部9がデータ復元不可能な状態になった場合でも、金融取引装置を修理した後に、ホスト内のATM取引履歴ファイル18内のセンタ履歴情報33をダウンロードしてもらい、さらにバックアップ記憶部12内のATM生成バックアップ情報32を組み合わせ、ATM生成情報時系列インデックスを活用することで、ATM取引履歴情報が復元可能となる。
【符号の説明】
【0032】
1…ATM、2…操作案内部、2a…画面表示部、2b…操作部、3…紙幣処理部、4…硬貨処理部、5…カード/明細書処理部、6…通帳処理部、7…音声案内ガイダンス部、8…利用者検知センサ部、9…記憶部、10…制御部、11…回戦接続部、12…バックアップ記憶部、13…水検知センサ、14…ホスト、15…ホストコンピュータ制御部、16…ファイル部、17…口座情報ファイル、18…ATM取引履歴ファイル、30…ATM内取引履歴情報エリア、30a〜30f…ATM取引履歴データ例、31…ATM生成情報時系列インデックス、32…ATM生成バックアップ情報エリア、32a〜32c…ATM生成バックアップ情報データ例、33…センタの履歴情報エリア、33a〜33c…センタの履歴情報データ例。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引履歴を保有する手段を持ち、取引履歴の中で他の上位装置からの指示事項など上位装置にも同等情報が履歴として残している情報と自装置が生成し、自装置のみ保有している情報とを区別する手段を有する金融取引処理装置。
【請求項2】
取引履歴を記録している部位が復元不可能な故障を事前に検知する手段を有した請求項1記載の金融取引装置。
【請求項3】
復元不可能な故障を事前に検知したら、請求項1項の区別する手段により、自装置のみ保有している情報のみを他のバックアップ部に情報を転送する手段を有し、請求項3のバックアップした情報と上位装置が保有している情報を時系列通りに整列し、復元できる請求項1記載の金融取引処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−277209(P2010−277209A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127162(P2009−127162)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】