釣り竿
【課題】 元竿の軽量化と握り込み易いリールシートを備えた釣り竿を提供する。
【解決手段】 筒状のリールシート5のリール脚取付部とは反対側の面に開口を形成する。開口にゴム製のカバー体8を装着してその開口を被覆する。カバー体8を装着したリールシート5を元竿2の所定位置に外嵌固定し、カバー体8の内面と元竿2の外周面とを接着固定してある。
【解決手段】 筒状のリールシート5のリール脚取付部とは反対側の面に開口を形成する。開口にゴム製のカバー体8を装着してその開口を被覆する。カバー体8を装着したリールシート5を元竿2の所定位置に外嵌固定し、カバー体8の内面と元竿2の外周面とを接着固定してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、元竿にリールシートを有している釣り竿に関する。
【背景技術】
【0002】
釣り人は、リールシートのリール脚取付部とは反対側からリールシート部位を握り、中指と薬指との間にリール脚を挟み込んで握り込む。その握り込んだ状態で竿を振って仕掛けをキャストしたり、竿を立てて魚を取り込む。
キャスト時等においてリールシートを握る指が滑らないように、リールシートの円周方向120°離れた所定位置に、ゴム等の弾性部材を装着して滑り止め機能を持たせたものがあった(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−046634号公報(公報段落番号〔0012〕〜〔0013〕、図1、図3、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したゴム等の弾性部材は、窪みに取り付けられているものの、リールシートの外面に直接接着固定されている。したがって、窪みを設けるために、リールシート部分を他の元竿部分よりも肉盛して大径化する必要があり、竿として重いものになっていた。また、大径部分に弾性部材を直接取り付けていたので、握りにくいものになっていた。
【0005】
本発明の目的は、元竿の軽量化と握り込み易いリールシートを備えた釣り竿を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、元竿の所定位置に装着される筒状のリールシートにおけるリール脚取付部とは竿軸芯を挟んで反対側の面に開口を形成し、前記開口に軟質弾性材製のカバー体を装着してその開口を被覆するとともに、前記カバー体を装着したリールシートを元竿の所定位置に外嵌固定し、前記カバー体の内面と元竿の外周面とを接着固定してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
リールシートを元竿とは別体で構成することにしたので、握り易さや滑りにくさを得る為に、軟質弾性材製のカバー体をリールシートに装着するが、その装着方法は、リールシートに開口を形成することによって行っている。これによって、リールシートを元竿とは別個に構成するものであっても軽量化を図ることができる。
しかも、この開口にカバー体を嵌め込む状態で取り付けているので、カバー体がリールシートの外周面から余り突出することにならず、そのカバー体部位を握り込むことが容易である。
さらに、開口を通してカバー体を元竿の外周面に直接接着固定できるので、カバー体が剥がれにくくなっている。
【0008】
〔効果〕
リールシートを元竿とは別体に構成し、そのリールシートに開口を設けることによって、カバー体を径方向に膨出しない状態でリールシートに装着でき、握りやすく滑りにくく剥がれにくいカバー体を得ることができた。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明において、前記リール脚取付部とは前記リールシートの竿軸芯を挟んで反対側の位置において、前記開口がリールシートにおける竿先側フードから竿尻側フードに亘る範囲に対応して形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
つまり、開口が竿先側フードから竿尻側フードに亘る範囲に対応して形成してあるので、十分大きな開口を得ることができ、軽量化の効果が高い。しかも、竿先側フードから竿尻側フードに対応させて形成された開口を覆うようにカバー体を設けてあるので、その竿先側フードと竿尻側フードを握り込むことになる手の掌の広範囲に亘る部分をカバー体に作用させることができるので、手指を圧迫することが少なく、長時間に亘る握り操作時にも手指のつかれなく操作が可能になる。
【0011】
請求項3に係る発明の特徴構成は、請求項2に係る発明において、前記カバー体における竿軸芯から半径方向外方側へ向かう最大突出部を、前記カバー体における竿尻側端部から竿先側端部に至る長さの二等分位置と前記竿先側端部との間に設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
この最大突出部が竿尻側にはないので、リールシートを握り込む際に手の掌が最大突出部に作用することが少なく、手の掌を圧迫することが少ない。一方、最大突出部は竿先側に形成されているので、人指し指等を竿尻側から最大突出部に当接させることができ、リールシートを握る手指が移動することがなく、安定させた握り操作状態を得ることができる。
【0013】
請求項4に係る発明の特徴構成は、請求項1〜3の内のいずれか一つに係る発明において、前記カバー体の円周方向幅を円周方向で180°に満たない範囲に形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0014】
〔作用効果〕
つまり、軽量化に奇与する十分な開口面積を確保しながら、円周方向幅を円周方向で180°に満たない範囲に抑えることによって、強度面での低下を回避し、主として、圧迫される手の掌部分をカバー体で受け止めるように構成することが可能になった。
【0015】
請求項5に係る発明の特徴構成は、請求項1〜4の内のいずれか一つに係る発明において、前記カバー体の竿尻側での円周方向幅よりも、竿先側での円周方向幅を大きくしてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0016】
〔作用効果〕
つまり、竿先を上に向けて釣り竿を立てて魚を引き込む場合に、手指のカバー体に接触する面積が、人指し指側程広くなっているので、滑りにくい。針掛かりした魚を引き込む際に握りが安定しているので、手返し操作(魚の動きと一旦反対方向に竿を寝かせる操作を行った後、次に魚が移動していく方向に竿を反転させる操作)等が行い易く、魚の取り込みも容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
海釣り、磯釣り等に使用される釣り竿1について説明する。
釣り竿1は、元竿2、複数の中竿、穂先竿とを夫々糸ガイドを備えて振出式の竿に構成してあり、図1に示すように、元竿2の中間部にリール3を取り付けるリールシート5を外嵌装着してある。
【0018】
釣り竿1は、基本的には、ガラス繊維かカーボン繊維等の強化繊維にエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成したプリプレグをマンドレルに巻回して筒状に形成した竿素材を焼成して形成されている。
【0019】
リールシート5の構成について説明する。
図1及び図2に示すように、リールシート5は、ポリエチレン・テレフタレート(PET)やABS樹脂等のエンジニアリング樹脂をインジェクションによって成形されている。リール脚を取り付ける表側には、固定フード(竿先側フード)6がリールシート本体と一体形成されており、固定フード6の竿尻側には金属製の可動フード(竿尻側フード)7が竿芯方向にスライド移動自在に装着されている。
【0020】
図8に示すように、リールシート5における前記表側より180°反対側の背面側には、内部空間に連通する開口9が形成されており、この開口9に後記するゴム製のカバー体8が接着固定されることになる。
開口9は、図8に示すように、略先拡がり状の長孔として形成されており、前端が固定フード6に対応する位置まで設けられており、後端は可動フード7が移動する範囲におけるその移動範囲後端近くにまで延出されている。
【0021】
開口9は、前端よりやや竿尻側の部分の横幅が最も広くなっており、この最も広い横幅部分でも円周方向の180°よりは小さな円周方向長さに抑えられている。つまり、図2及び図9に示すように、リールシート5を横側方から見た場合に開口9の縁部は、リールシート5の上下幅方向の中心となる竿軸芯Xを越えて下方までは入り込まない状態に形成されている。この開口9の形成によって、元竿2にリールシート5を嵌着するものであっても、開口分だけは軽量化を図ることができるとともに、開口9から直接元竿2に接触することができ元竿2を通して魚の当たりを捉える場合の感度向上を図ることができる。
【0022】
ゴム製のカバー体8について説明する。図8及び9に示すように、このゴム製カバー体8は、ネオプレン等を材料としてインジェクション成型したエラストマーであり、弾性に富んだものとなっており、その外形形状は開口9の開口縁9aに沿った形状に形成されている。このゴム製カバー体8の外周面には、「シボ」や「梨地」処理を行って、美観と滑り止め機能を持たせるようにしてある。ゴム製のカバー体8の側面視では、図9に示すように、左右幅方向の中心が高くなっている中高い形状をしているとともに、図10に示すように、竿軸芯Xに沿った方向視では縦断面が略円弧状を呈しており、前記横幅方向での横幅長さが最も広い部分が最も大きな半径による円弧状突出部aを呈している。この円弧状突出部aの位置は、両フード6,7に装着されたリール3におけるリール脚の中心位置bよりも固定フード6側に寄った位置に設定されている。
【0023】
ゴム製カバー体8の取付手順は、まず、リールシート5を元竿2の玉口側から外嵌する状態で嵌め込み、リールシート5を元竿2の所定位置において接着剤で固定する。このリールシート5を固定する為に、リールシート5と元竿2の外周面との間に接着剤を塗布しているが、リールシート5に前記した開口9が形成されているので、開口9がない場合に比べて接着剤が偏りなく広がりリールシート5の内周面に遍く塗布されやすい。
【0024】
リールシート5を接着固定した後、又は、同時にゴム製カバー体8を開口縁9aに嵌め込み接着固定すると、ゴム製カバー体8の周縁部もその開口縁9に接着されるとともにカバー体8の周縁部より内側に位置する内周面の一部もその元竿2の外周面に接着固定されることになる。
なお、ゴム製カバー体8を球殻状ではなく、円弧状突出部aを肉の厚いものに形成していれば、ゴム製カバー体8の内周面が元竿2の外周面に沿ったものにでき、元竿2の外周面に密着接着することになり、剥がれにくくなる。
【0025】
以上のように、リールシート5の背面側に開口9を形成してゴム製カバー体8をその開口縁9aに嵌め込む状態で接着固定しているので、開口9を形成しないでリールシート5の外周面に直接接着固定するよりも、ゴム製カバー体8の元竿2から半径方向外側への突出量を抑えることができるとともに、重量軽減にも効果がある。また、リールシート5に開口9を設けないでそのリールシート5の外周面に直接ゴム製カバー体8を被着した場合には、竿軸芯Xからゴム製カバー体8の突出部分までの半径方向長さが大径になり握りにくくなる。これに対して、本願発明においては、前記したように、リールシート5に開口9を形成して、この開口9内に落とし込む状態でゴム製カバー体8を嵌着しているので、竿軸芯Xからゴム製カバー体8の突出部分までの半径方向長さを短くすることができ、握りやすくなっている。
【0026】
上記した釣り竿1で深せ釣り等を行う場合には、図1及び図2に示すように、釣り竿1を立てて魚を引き込む場合に、リールシート5を握った人指し指と親指との基端部分がその円弧状突出部aに引っ掛かる状態で位置することになるので、釣り竿1が摺り落ちにくく引き込み操作が行い易い。しかも、円弧状突出部aは、最も横幅の広い部分でもあるので、握り込む手指に当接するゴム製カバー体8の部分を広くできるので、手指を圧迫することが少なく、長時間握って釣り操作をおこなっても、疲れが少ない。また、手指のゴム製カバー体8に接触する面積が、人指し指側程広くなっているので、滑りにくい。針掛かりした魚を引き込む際に握りが安定しているので、手返し操作等が行い易く、魚の取り込みも容易である。
【0027】
可動フード7の構成について説明する。リールシート5の可動フード7の取り付け台座5Aにおける両横側面にガイド溝5a,5aが設けてあり、ガイド溝5a,5aに可動フード7の両脚部7A,7Aを挿入して、可動フード7をスライド移動可能に構成してある。前記取り付け台座5Aの上面には可動フード7を係止固定するラック溝が形成してあり、可動フード7に設けられているロック片がラック溝に係合して、可動フード7の位置決めを行えるようになっている。
【0028】
固定フード6に対する化粧カバー10について説明する。図3〜5に示すように、化粧カバー10は、固定フード6のフード状外周面から竿尻側に位置するリール脚の取り付け台座5Aに亘って被着されるドーム部10Aと、そのドーム部10Aの竿尻側に延出されて取り付け台座5Aに嵌め込み装着される長方形状の後延部10Bとで構成されている。ドーム部10Aは、半円錐台状の前壁10aと、その前壁10aの両側端より後方に向けて延出された縦向きの側壁10bと、両側壁10bの後端部上方に連設してある上壁10cとで構成してある。側壁10bと上壁10cとは後方に向けて延出されており、前記した後延部10Bを構成してある。前壁10aと側壁10bと上壁10cとの中程に、リール脚挿入用の挿通孔10Cを貫通形成している。ここに、ドーム部10Aと後延部10Bとをカバー本体と称する。
【0029】
化粧カバー10は、薄板金属に型成形を施したものに樹脂メッキを施して形成されており、弾性変形させた状態で所定位置に装着するようになっている。装着固定状態は、接着剤も併用して行う。つまり、図4に示すように、固定フード6から取り付け台座5Aに掛けて弾性的に挟み込み載置する為の嵌め込み段差部6A、5Bを形成してあり、その段差部6A、5Bに化粧カバー10を取り付けるようにしてある。この段差部6Aは、前壁10aと側壁10bとに凹入して形成してあり、段差部5Bは取り付け台座5Aに凹入させて形成してある。従って、この段差部6Aに化粧カバー10を取り付けた状態で、化粧カバー10と固定フード6の境界面とが段差のない面一状態となるように構成してある。
【0030】
図4に示すように、化粧カバー10に設けた挿通孔10Cにおける後延部10B側の縁部には、その後延部10Bに向けて入り込む切り欠き部10dを形成してある。この切り欠き部10dを設けてない場合には、化粧カバー10を段差部6A,5Bに装着するために、その化粧カバー10自体に左右方向等への弾性変形力を加えると、挿通孔10Cの左右の縁部10e、10eに亀裂が発生する等の不都合があった。そこで、上記したように、切り欠き部10dを形成すると、化粧カバー10を左右に引き伸ばすように弾性変形させても、その切り欠き部10dが左右幅方向に広がることになり、弾性変形力が挿通孔10Cの左右の縁部10e、10eに集中するのを緩和することになる。
【0031】
化粧カバー10については、ステンレスやアルミニユウム等の金属材料のみで型成型する点を言及したが、樹脂のインジェクション成型で形成することでもよい。また、その樹脂成型品に金属コーティングを施したものであってもよい。さらには、樹脂成型品の挿通孔10Cの縁部だけに金属を嵌め込んで、装飾効果と強度向上を図ることにしてもよい。
【0032】
次に、可動フード7の抜け止め機能を有する後受止部材11について説明する。図3〜図7に示すように、後受止部材11は、樹脂のインジェクション成型品であり、後下がり傾斜面を有する上壁11Aと左右の縦向き側壁11Bとからなる。図5に示すように、内面には、左右方向に長い二つの嵌合用凹入部11a,11aが前後に平行する状態で形成されている。
一方、リールシート5における取り付け台座5Aの後端位置には、後受止部材11を嵌合固定する装着台座5Cが凹入形成してあり、この装着台座5Cには、前後平行に横長突起5b、5bが設けてある。
【0033】
このような構成によって、装着台座5Cに後受止部材11を載置し、後受止部材11の上壁11Aを押し込むと、装着台座5Cに形成した横長突起5b、5bが後受止部材11の嵌合用凹入部11a、11a内に嵌入して、後受止部材11の弾性変形力によって後受止部材11が装着台座5Cに装着固定される。固定は、カシメ処理を施して行う。後受止部材11の周縁には内向きの傾斜面となっており、その内向き傾斜面が装着台座5Cの周面に形成された傾斜面5cに接触する構成となっている。
【0034】
図7に示すように、後受止部材11の上壁11Aの後端縁部で裏面側に、前向きに凹入する取外具用の挿入凹入溝11bが設けてある。この挿入凹入溝11bは後端縁部の裏面側に上向きに凹入する状態で形成してあるので、上壁11Aの表面には現れてはいない。これに対して、後受止部材11を装着する装着台座5Cには、前記挿入凹入溝11bに対応した下向きに凹入する凹入溝5cが形成してある。この挿入凹入溝11bと装着台座側の凹入溝5cとで挿入孔を形成することによって、リールシート5の装着台座5Cに嵌着されている後受止部材11に対して、挿入孔に取外具としてのマイナスドライバ等を差し込み軽く持ち上げ操作を行うだけで、後受止部材11を取り外すことができる。
【0035】
次に、元竿2のリールシート5の装着部より竿尻側の肘当て部12とリールシート5についての構成について説明する。図1及び図2に示すように、ゴム製カバー体8と肘当て部12との竿軸芯Xから半径方向への突出長さを異なる長さに設定してある。つまり、図2に示すように、竿軸芯Xからゴム製カバー体8の円弧状突出部aまでの突出長Pよりも、竿軸芯Xから肘当て部12に最大径部までの突出長Qを長くしてある。
【0036】
このような構成を採っているので、図1に示すように、釣り竿1を立てて操作する場合や、水平に寝かせた状態で当たりを待つ間は、肘当て部12を肘に当接させて竿を操作することになる。このような操作を行う場合に、前記したような突出長の関係になっているので、肘当て部12に肘を当てた状態でリールシート5部分を握った手首が安定し、竿の操作が容易になる。前記した手返し操作もより容易になる。
【0037】
図1及び図2に示すように、肘当て部12は、全周に亘って特殊な塗装が施されている。つまり、この特殊塗装は、2液型特殊ウレタン樹脂塗料を施したもので、この特殊塗装を施した肘当て部12は、通常の塗料が有する「素材保護」「美粧」という基本的性能を発揮するとともに、その肘当て部12に触れた場合の感触が落ち着いた「柔らか味」「温かさ」に溢れたものになる。つまり、このような塗料を塗布することによって、肘当て部12に僅かな弾性変形力を付与することができ、その肘当て部12にあてた肘に対する滑り止め効果を持たせることができる。しかも、リールシート5の背面部にはゴム製カバー体8を設けてあるところから、握りの感触を向上させており、両者の協働によって、竿を寝かせて当たりを待つ場合だけでなく、竿を立てて魚を引き抜く操作を行う場合等においても、操作を容易に行うことのできる釣り竿1とできたのである。
【0038】
リールシート5の横幅Dとの関係について説明する。図9、図10、及び図11に示すように、化粧カバー10を固定フード6に装着した状態で、化粧カバー10の横幅がリールシート5の横幅Dより突出しない寸法に形成してある。しかも、段差なく、化粧カバー10の横側面とリールシート5の横側面とが繋がる状態に形成してある。これによって、図1に示すように、リール脚部を握った場合に、化粧カバー10に巻回される人指し指等が圧迫を受けることが少ない。
【0039】
図9及び図12に示すように、可動フード7をリールシート5の取り付け台座5Aに装着した状態で、可動フード7の横幅Lがリールシート5の横幅Dより小さな寸法に形成してある。これによって、図1に示すように、リール脚部を握った場合に、可動フード7に巻回される薬指や小指等が圧迫を受けることが少ない。
【0040】
〔別実施の形態〕
(1) カバー体8としては、基板として樹脂板を元竿2の外周面に接する状態に形成するとともに、その基板に対して前記エラストマーを植設して形成したものでもよい。エラストマーの厚さは、前記した最大突出部aに相当する厚さを持つものであればよい。
(2) 軟質弾性材としては、エラストマー以外に布や糸を織ったもので形成してもよい。
(3) カバー体8の円周方向幅は、竿尻側から竿先側に向けて徐々に広くなるものでなくてもよく、竿尻側での円周方向幅よりも、竿先側での円周方向幅を大きくしてあるものであればよい。
(4) カバー体8における竿軸芯Xから半径方向外方側へ向かう最大突出部aを設ける位置としては、リールシート5に取り付けられたリール3の脚部に置ける竿先側から竿尻側への中心より竿先側に位置するものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】竿を立てて、魚を取り込む動作状態を示す側面図
【図2】元竿のリールシートと肘当て部を示す側面図
【図3】リールシートのリール脚取付部を示す斜視図
【図4】化粧カバーと可動フードと後受止部材とを取り外した状態を示す斜視図
【図5】化粧カバーと可動フードと後受止部材との取付前の状態を示す斜視図
【図6】後受止部材の装着前状態を示す平面図
【図7】後受止部材を取り外す状態を示す縦断側面図
【図8】リールシートの開口と、その開口を覆うカバー体を示す斜視図
【図9】元竿にリールシートを取り付けた状態を示す縦断側面図
【図10】図9におけるA―A線断面図
【図11】図9におけるB―B線断面図
【図12】図9におけるC―C線断面図
【図13】図9におけるD―D線断面図
【符号の説明】
【0042】
2 元竿
5 リールシート
6 竿先側フード
7 竿尻側フード
8 軟質弾性材製のカバー体
9 開口
a 最大突出部
X 竿軸芯
【技術分野】
【0001】
本発明は、元竿にリールシートを有している釣り竿に関する。
【背景技術】
【0002】
釣り人は、リールシートのリール脚取付部とは反対側からリールシート部位を握り、中指と薬指との間にリール脚を挟み込んで握り込む。その握り込んだ状態で竿を振って仕掛けをキャストしたり、竿を立てて魚を取り込む。
キャスト時等においてリールシートを握る指が滑らないように、リールシートの円周方向120°離れた所定位置に、ゴム等の弾性部材を装着して滑り止め機能を持たせたものがあった(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−046634号公報(公報段落番号〔0012〕〜〔0013〕、図1、図3、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したゴム等の弾性部材は、窪みに取り付けられているものの、リールシートの外面に直接接着固定されている。したがって、窪みを設けるために、リールシート部分を他の元竿部分よりも肉盛して大径化する必要があり、竿として重いものになっていた。また、大径部分に弾性部材を直接取り付けていたので、握りにくいものになっていた。
【0005】
本発明の目的は、元竿の軽量化と握り込み易いリールシートを備えた釣り竿を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、元竿の所定位置に装着される筒状のリールシートにおけるリール脚取付部とは竿軸芯を挟んで反対側の面に開口を形成し、前記開口に軟質弾性材製のカバー体を装着してその開口を被覆するとともに、前記カバー体を装着したリールシートを元竿の所定位置に外嵌固定し、前記カバー体の内面と元竿の外周面とを接着固定してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
リールシートを元竿とは別体で構成することにしたので、握り易さや滑りにくさを得る為に、軟質弾性材製のカバー体をリールシートに装着するが、その装着方法は、リールシートに開口を形成することによって行っている。これによって、リールシートを元竿とは別個に構成するものであっても軽量化を図ることができる。
しかも、この開口にカバー体を嵌め込む状態で取り付けているので、カバー体がリールシートの外周面から余り突出することにならず、そのカバー体部位を握り込むことが容易である。
さらに、開口を通してカバー体を元竿の外周面に直接接着固定できるので、カバー体が剥がれにくくなっている。
【0008】
〔効果〕
リールシートを元竿とは別体に構成し、そのリールシートに開口を設けることによって、カバー体を径方向に膨出しない状態でリールシートに装着でき、握りやすく滑りにくく剥がれにくいカバー体を得ることができた。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明において、前記リール脚取付部とは前記リールシートの竿軸芯を挟んで反対側の位置において、前記開口がリールシートにおける竿先側フードから竿尻側フードに亘る範囲に対応して形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
つまり、開口が竿先側フードから竿尻側フードに亘る範囲に対応して形成してあるので、十分大きな開口を得ることができ、軽量化の効果が高い。しかも、竿先側フードから竿尻側フードに対応させて形成された開口を覆うようにカバー体を設けてあるので、その竿先側フードと竿尻側フードを握り込むことになる手の掌の広範囲に亘る部分をカバー体に作用させることができるので、手指を圧迫することが少なく、長時間に亘る握り操作時にも手指のつかれなく操作が可能になる。
【0011】
請求項3に係る発明の特徴構成は、請求項2に係る発明において、前記カバー体における竿軸芯から半径方向外方側へ向かう最大突出部を、前記カバー体における竿尻側端部から竿先側端部に至る長さの二等分位置と前記竿先側端部との間に設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
この最大突出部が竿尻側にはないので、リールシートを握り込む際に手の掌が最大突出部に作用することが少なく、手の掌を圧迫することが少ない。一方、最大突出部は竿先側に形成されているので、人指し指等を竿尻側から最大突出部に当接させることができ、リールシートを握る手指が移動することがなく、安定させた握り操作状態を得ることができる。
【0013】
請求項4に係る発明の特徴構成は、請求項1〜3の内のいずれか一つに係る発明において、前記カバー体の円周方向幅を円周方向で180°に満たない範囲に形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0014】
〔作用効果〕
つまり、軽量化に奇与する十分な開口面積を確保しながら、円周方向幅を円周方向で180°に満たない範囲に抑えることによって、強度面での低下を回避し、主として、圧迫される手の掌部分をカバー体で受け止めるように構成することが可能になった。
【0015】
請求項5に係る発明の特徴構成は、請求項1〜4の内のいずれか一つに係る発明において、前記カバー体の竿尻側での円周方向幅よりも、竿先側での円周方向幅を大きくしてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0016】
〔作用効果〕
つまり、竿先を上に向けて釣り竿を立てて魚を引き込む場合に、手指のカバー体に接触する面積が、人指し指側程広くなっているので、滑りにくい。針掛かりした魚を引き込む際に握りが安定しているので、手返し操作(魚の動きと一旦反対方向に竿を寝かせる操作を行った後、次に魚が移動していく方向に竿を反転させる操作)等が行い易く、魚の取り込みも容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
海釣り、磯釣り等に使用される釣り竿1について説明する。
釣り竿1は、元竿2、複数の中竿、穂先竿とを夫々糸ガイドを備えて振出式の竿に構成してあり、図1に示すように、元竿2の中間部にリール3を取り付けるリールシート5を外嵌装着してある。
【0018】
釣り竿1は、基本的には、ガラス繊維かカーボン繊維等の強化繊維にエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成したプリプレグをマンドレルに巻回して筒状に形成した竿素材を焼成して形成されている。
【0019】
リールシート5の構成について説明する。
図1及び図2に示すように、リールシート5は、ポリエチレン・テレフタレート(PET)やABS樹脂等のエンジニアリング樹脂をインジェクションによって成形されている。リール脚を取り付ける表側には、固定フード(竿先側フード)6がリールシート本体と一体形成されており、固定フード6の竿尻側には金属製の可動フード(竿尻側フード)7が竿芯方向にスライド移動自在に装着されている。
【0020】
図8に示すように、リールシート5における前記表側より180°反対側の背面側には、内部空間に連通する開口9が形成されており、この開口9に後記するゴム製のカバー体8が接着固定されることになる。
開口9は、図8に示すように、略先拡がり状の長孔として形成されており、前端が固定フード6に対応する位置まで設けられており、後端は可動フード7が移動する範囲におけるその移動範囲後端近くにまで延出されている。
【0021】
開口9は、前端よりやや竿尻側の部分の横幅が最も広くなっており、この最も広い横幅部分でも円周方向の180°よりは小さな円周方向長さに抑えられている。つまり、図2及び図9に示すように、リールシート5を横側方から見た場合に開口9の縁部は、リールシート5の上下幅方向の中心となる竿軸芯Xを越えて下方までは入り込まない状態に形成されている。この開口9の形成によって、元竿2にリールシート5を嵌着するものであっても、開口分だけは軽量化を図ることができるとともに、開口9から直接元竿2に接触することができ元竿2を通して魚の当たりを捉える場合の感度向上を図ることができる。
【0022】
ゴム製のカバー体8について説明する。図8及び9に示すように、このゴム製カバー体8は、ネオプレン等を材料としてインジェクション成型したエラストマーであり、弾性に富んだものとなっており、その外形形状は開口9の開口縁9aに沿った形状に形成されている。このゴム製カバー体8の外周面には、「シボ」や「梨地」処理を行って、美観と滑り止め機能を持たせるようにしてある。ゴム製のカバー体8の側面視では、図9に示すように、左右幅方向の中心が高くなっている中高い形状をしているとともに、図10に示すように、竿軸芯Xに沿った方向視では縦断面が略円弧状を呈しており、前記横幅方向での横幅長さが最も広い部分が最も大きな半径による円弧状突出部aを呈している。この円弧状突出部aの位置は、両フード6,7に装着されたリール3におけるリール脚の中心位置bよりも固定フード6側に寄った位置に設定されている。
【0023】
ゴム製カバー体8の取付手順は、まず、リールシート5を元竿2の玉口側から外嵌する状態で嵌め込み、リールシート5を元竿2の所定位置において接着剤で固定する。このリールシート5を固定する為に、リールシート5と元竿2の外周面との間に接着剤を塗布しているが、リールシート5に前記した開口9が形成されているので、開口9がない場合に比べて接着剤が偏りなく広がりリールシート5の内周面に遍く塗布されやすい。
【0024】
リールシート5を接着固定した後、又は、同時にゴム製カバー体8を開口縁9aに嵌め込み接着固定すると、ゴム製カバー体8の周縁部もその開口縁9に接着されるとともにカバー体8の周縁部より内側に位置する内周面の一部もその元竿2の外周面に接着固定されることになる。
なお、ゴム製カバー体8を球殻状ではなく、円弧状突出部aを肉の厚いものに形成していれば、ゴム製カバー体8の内周面が元竿2の外周面に沿ったものにでき、元竿2の外周面に密着接着することになり、剥がれにくくなる。
【0025】
以上のように、リールシート5の背面側に開口9を形成してゴム製カバー体8をその開口縁9aに嵌め込む状態で接着固定しているので、開口9を形成しないでリールシート5の外周面に直接接着固定するよりも、ゴム製カバー体8の元竿2から半径方向外側への突出量を抑えることができるとともに、重量軽減にも効果がある。また、リールシート5に開口9を設けないでそのリールシート5の外周面に直接ゴム製カバー体8を被着した場合には、竿軸芯Xからゴム製カバー体8の突出部分までの半径方向長さが大径になり握りにくくなる。これに対して、本願発明においては、前記したように、リールシート5に開口9を形成して、この開口9内に落とし込む状態でゴム製カバー体8を嵌着しているので、竿軸芯Xからゴム製カバー体8の突出部分までの半径方向長さを短くすることができ、握りやすくなっている。
【0026】
上記した釣り竿1で深せ釣り等を行う場合には、図1及び図2に示すように、釣り竿1を立てて魚を引き込む場合に、リールシート5を握った人指し指と親指との基端部分がその円弧状突出部aに引っ掛かる状態で位置することになるので、釣り竿1が摺り落ちにくく引き込み操作が行い易い。しかも、円弧状突出部aは、最も横幅の広い部分でもあるので、握り込む手指に当接するゴム製カバー体8の部分を広くできるので、手指を圧迫することが少なく、長時間握って釣り操作をおこなっても、疲れが少ない。また、手指のゴム製カバー体8に接触する面積が、人指し指側程広くなっているので、滑りにくい。針掛かりした魚を引き込む際に握りが安定しているので、手返し操作等が行い易く、魚の取り込みも容易である。
【0027】
可動フード7の構成について説明する。リールシート5の可動フード7の取り付け台座5Aにおける両横側面にガイド溝5a,5aが設けてあり、ガイド溝5a,5aに可動フード7の両脚部7A,7Aを挿入して、可動フード7をスライド移動可能に構成してある。前記取り付け台座5Aの上面には可動フード7を係止固定するラック溝が形成してあり、可動フード7に設けられているロック片がラック溝に係合して、可動フード7の位置決めを行えるようになっている。
【0028】
固定フード6に対する化粧カバー10について説明する。図3〜5に示すように、化粧カバー10は、固定フード6のフード状外周面から竿尻側に位置するリール脚の取り付け台座5Aに亘って被着されるドーム部10Aと、そのドーム部10Aの竿尻側に延出されて取り付け台座5Aに嵌め込み装着される長方形状の後延部10Bとで構成されている。ドーム部10Aは、半円錐台状の前壁10aと、その前壁10aの両側端より後方に向けて延出された縦向きの側壁10bと、両側壁10bの後端部上方に連設してある上壁10cとで構成してある。側壁10bと上壁10cとは後方に向けて延出されており、前記した後延部10Bを構成してある。前壁10aと側壁10bと上壁10cとの中程に、リール脚挿入用の挿通孔10Cを貫通形成している。ここに、ドーム部10Aと後延部10Bとをカバー本体と称する。
【0029】
化粧カバー10は、薄板金属に型成形を施したものに樹脂メッキを施して形成されており、弾性変形させた状態で所定位置に装着するようになっている。装着固定状態は、接着剤も併用して行う。つまり、図4に示すように、固定フード6から取り付け台座5Aに掛けて弾性的に挟み込み載置する為の嵌め込み段差部6A、5Bを形成してあり、その段差部6A、5Bに化粧カバー10を取り付けるようにしてある。この段差部6Aは、前壁10aと側壁10bとに凹入して形成してあり、段差部5Bは取り付け台座5Aに凹入させて形成してある。従って、この段差部6Aに化粧カバー10を取り付けた状態で、化粧カバー10と固定フード6の境界面とが段差のない面一状態となるように構成してある。
【0030】
図4に示すように、化粧カバー10に設けた挿通孔10Cにおける後延部10B側の縁部には、その後延部10Bに向けて入り込む切り欠き部10dを形成してある。この切り欠き部10dを設けてない場合には、化粧カバー10を段差部6A,5Bに装着するために、その化粧カバー10自体に左右方向等への弾性変形力を加えると、挿通孔10Cの左右の縁部10e、10eに亀裂が発生する等の不都合があった。そこで、上記したように、切り欠き部10dを形成すると、化粧カバー10を左右に引き伸ばすように弾性変形させても、その切り欠き部10dが左右幅方向に広がることになり、弾性変形力が挿通孔10Cの左右の縁部10e、10eに集中するのを緩和することになる。
【0031】
化粧カバー10については、ステンレスやアルミニユウム等の金属材料のみで型成型する点を言及したが、樹脂のインジェクション成型で形成することでもよい。また、その樹脂成型品に金属コーティングを施したものであってもよい。さらには、樹脂成型品の挿通孔10Cの縁部だけに金属を嵌め込んで、装飾効果と強度向上を図ることにしてもよい。
【0032】
次に、可動フード7の抜け止め機能を有する後受止部材11について説明する。図3〜図7に示すように、後受止部材11は、樹脂のインジェクション成型品であり、後下がり傾斜面を有する上壁11Aと左右の縦向き側壁11Bとからなる。図5に示すように、内面には、左右方向に長い二つの嵌合用凹入部11a,11aが前後に平行する状態で形成されている。
一方、リールシート5における取り付け台座5Aの後端位置には、後受止部材11を嵌合固定する装着台座5Cが凹入形成してあり、この装着台座5Cには、前後平行に横長突起5b、5bが設けてある。
【0033】
このような構成によって、装着台座5Cに後受止部材11を載置し、後受止部材11の上壁11Aを押し込むと、装着台座5Cに形成した横長突起5b、5bが後受止部材11の嵌合用凹入部11a、11a内に嵌入して、後受止部材11の弾性変形力によって後受止部材11が装着台座5Cに装着固定される。固定は、カシメ処理を施して行う。後受止部材11の周縁には内向きの傾斜面となっており、その内向き傾斜面が装着台座5Cの周面に形成された傾斜面5cに接触する構成となっている。
【0034】
図7に示すように、後受止部材11の上壁11Aの後端縁部で裏面側に、前向きに凹入する取外具用の挿入凹入溝11bが設けてある。この挿入凹入溝11bは後端縁部の裏面側に上向きに凹入する状態で形成してあるので、上壁11Aの表面には現れてはいない。これに対して、後受止部材11を装着する装着台座5Cには、前記挿入凹入溝11bに対応した下向きに凹入する凹入溝5cが形成してある。この挿入凹入溝11bと装着台座側の凹入溝5cとで挿入孔を形成することによって、リールシート5の装着台座5Cに嵌着されている後受止部材11に対して、挿入孔に取外具としてのマイナスドライバ等を差し込み軽く持ち上げ操作を行うだけで、後受止部材11を取り外すことができる。
【0035】
次に、元竿2のリールシート5の装着部より竿尻側の肘当て部12とリールシート5についての構成について説明する。図1及び図2に示すように、ゴム製カバー体8と肘当て部12との竿軸芯Xから半径方向への突出長さを異なる長さに設定してある。つまり、図2に示すように、竿軸芯Xからゴム製カバー体8の円弧状突出部aまでの突出長Pよりも、竿軸芯Xから肘当て部12に最大径部までの突出長Qを長くしてある。
【0036】
このような構成を採っているので、図1に示すように、釣り竿1を立てて操作する場合や、水平に寝かせた状態で当たりを待つ間は、肘当て部12を肘に当接させて竿を操作することになる。このような操作を行う場合に、前記したような突出長の関係になっているので、肘当て部12に肘を当てた状態でリールシート5部分を握った手首が安定し、竿の操作が容易になる。前記した手返し操作もより容易になる。
【0037】
図1及び図2に示すように、肘当て部12は、全周に亘って特殊な塗装が施されている。つまり、この特殊塗装は、2液型特殊ウレタン樹脂塗料を施したもので、この特殊塗装を施した肘当て部12は、通常の塗料が有する「素材保護」「美粧」という基本的性能を発揮するとともに、その肘当て部12に触れた場合の感触が落ち着いた「柔らか味」「温かさ」に溢れたものになる。つまり、このような塗料を塗布することによって、肘当て部12に僅かな弾性変形力を付与することができ、その肘当て部12にあてた肘に対する滑り止め効果を持たせることができる。しかも、リールシート5の背面部にはゴム製カバー体8を設けてあるところから、握りの感触を向上させており、両者の協働によって、竿を寝かせて当たりを待つ場合だけでなく、竿を立てて魚を引き抜く操作を行う場合等においても、操作を容易に行うことのできる釣り竿1とできたのである。
【0038】
リールシート5の横幅Dとの関係について説明する。図9、図10、及び図11に示すように、化粧カバー10を固定フード6に装着した状態で、化粧カバー10の横幅がリールシート5の横幅Dより突出しない寸法に形成してある。しかも、段差なく、化粧カバー10の横側面とリールシート5の横側面とが繋がる状態に形成してある。これによって、図1に示すように、リール脚部を握った場合に、化粧カバー10に巻回される人指し指等が圧迫を受けることが少ない。
【0039】
図9及び図12に示すように、可動フード7をリールシート5の取り付け台座5Aに装着した状態で、可動フード7の横幅Lがリールシート5の横幅Dより小さな寸法に形成してある。これによって、図1に示すように、リール脚部を握った場合に、可動フード7に巻回される薬指や小指等が圧迫を受けることが少ない。
【0040】
〔別実施の形態〕
(1) カバー体8としては、基板として樹脂板を元竿2の外周面に接する状態に形成するとともに、その基板に対して前記エラストマーを植設して形成したものでもよい。エラストマーの厚さは、前記した最大突出部aに相当する厚さを持つものであればよい。
(2) 軟質弾性材としては、エラストマー以外に布や糸を織ったもので形成してもよい。
(3) カバー体8の円周方向幅は、竿尻側から竿先側に向けて徐々に広くなるものでなくてもよく、竿尻側での円周方向幅よりも、竿先側での円周方向幅を大きくしてあるものであればよい。
(4) カバー体8における竿軸芯Xから半径方向外方側へ向かう最大突出部aを設ける位置としては、リールシート5に取り付けられたリール3の脚部に置ける竿先側から竿尻側への中心より竿先側に位置するものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】竿を立てて、魚を取り込む動作状態を示す側面図
【図2】元竿のリールシートと肘当て部を示す側面図
【図3】リールシートのリール脚取付部を示す斜視図
【図4】化粧カバーと可動フードと後受止部材とを取り外した状態を示す斜視図
【図5】化粧カバーと可動フードと後受止部材との取付前の状態を示す斜視図
【図6】後受止部材の装着前状態を示す平面図
【図7】後受止部材を取り外す状態を示す縦断側面図
【図8】リールシートの開口と、その開口を覆うカバー体を示す斜視図
【図9】元竿にリールシートを取り付けた状態を示す縦断側面図
【図10】図9におけるA―A線断面図
【図11】図9におけるB―B線断面図
【図12】図9におけるC―C線断面図
【図13】図9におけるD―D線断面図
【符号の説明】
【0042】
2 元竿
5 リールシート
6 竿先側フード
7 竿尻側フード
8 軟質弾性材製のカバー体
9 開口
a 最大突出部
X 竿軸芯
【特許請求の範囲】
【請求項1】
元竿の所定位置に装着される筒状のリールシートにおけるリール脚取付部とは竿軸芯を挟んで反対側の面に開口を形成し、前記開口に軟質弾性材製のカバー体を装着してその開口を被覆するとともに、前記カバー体を装着したリールシートを元竿の所定位置に外嵌固定し、前記カバー体の内面と元竿の外周面とを接着固定してある釣り竿。
【請求項2】
前記リール脚取付部とは前記リールシートの竿軸芯を挟んで反対側の位置において、前記開口がリールシートにおける竿先側フードから竿尻側フードに亘る範囲に対応して形成してある請求項1記載の釣り竿。
【請求項3】
前記カバー体における竿軸芯から半径方向外方側へ向かう最大突出部を、前記カバー体における竿尻側端部から竿先側端部に至る長さの二等分位置と前記竿先側端部との間に設けてある請求項2記載の釣り竿。
【請求項4】
前記カバー体の円周方向幅を円周方向で180°に満たない範囲に形成してある請求項1〜3のうちいずれか一つに記載の釣り竿。
【請求項5】
前記カバー体の竿尻側での円周方向幅よりも、竿先側での円周方向幅を大きくしてある請求項1〜4のうちいずれか一つに記載の釣り竿。
【請求項1】
元竿の所定位置に装着される筒状のリールシートにおけるリール脚取付部とは竿軸芯を挟んで反対側の面に開口を形成し、前記開口に軟質弾性材製のカバー体を装着してその開口を被覆するとともに、前記カバー体を装着したリールシートを元竿の所定位置に外嵌固定し、前記カバー体の内面と元竿の外周面とを接着固定してある釣り竿。
【請求項2】
前記リール脚取付部とは前記リールシートの竿軸芯を挟んで反対側の位置において、前記開口がリールシートにおける竿先側フードから竿尻側フードに亘る範囲に対応して形成してある請求項1記載の釣り竿。
【請求項3】
前記カバー体における竿軸芯から半径方向外方側へ向かう最大突出部を、前記カバー体における竿尻側端部から竿先側端部に至る長さの二等分位置と前記竿先側端部との間に設けてある請求項2記載の釣り竿。
【請求項4】
前記カバー体の円周方向幅を円周方向で180°に満たない範囲に形成してある請求項1〜3のうちいずれか一つに記載の釣り竿。
【請求項5】
前記カバー体の竿尻側での円周方向幅よりも、竿先側での円周方向幅を大きくしてある請求項1〜4のうちいずれか一つに記載の釣り竿。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−25683(P2006−25683A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208724(P2004−208724)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】
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