説明

鉄筋コンクリート造柱などの高精度切断方法

【課題】 ワイヤーソーで鉄筋コンクリート造柱などの被切断部材を高精度に切断する方法を提供する。
【解決手段】 ガイド部材挿入孔を被切断部材の切断面に沿って、後で挿入するガイド部材でワイヤーソーの両面を挟み拘束しつつ、切断を案内できる大きさで形成する。ガイド部材挿入孔にガイド部材を少なくとも2本挿入し、このガイド部材の間にワイヤーソーを挟み、拘束させつつ被切断部材の切断を進める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーソーで鉄筋コンクリート造柱などの被切断部材(鉄骨鉄筋コンクリート造柱、コンクリート造柱の他、各種部材を含む。)を高精度に切断する方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
(i)ワイヤーソーで鉄筋コンクリート造柱などの被切断部材を切断する場合、通例の切断方法は、被切断部材の外周面に切断精度を確保するための桟木ガイドを設置し、同桟木ガイドでワイヤーソーを切断方向に案内することで、切断精度を確保している。
【0003】
(ii)ちなみに、特許文献1には、ワーク面上にワイヤーソーの径より巾広の間隔で対向配置したガイドマークを形成し、当該ガイドマークで切断時のワイヤーソーの位置決めを行う技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、柱の切断面で上下方向に分割されるように孔を開け、当該孔を通過する位置までワイヤーソーで柱を切断すると、切断方向に分断された上部柱が倒壊しないように、前記孔にパイプ材を挿入し、残りを切断する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平6−31723号公報
【特許文献2】特開2002−327543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(i)の切断方法は、高速で周回するワイヤーソーに桟木ガイドが負けて、同ワイヤーソーの両面を好適に拘束することができない。そのため、ワイヤーソーが振られて逃げるので、高い切断精度を確保することができない問題点がある。
【0006】
(ii)の特許文献1及び2は技術分野が異なり、ワイヤーソーで被切断部材を高精度に切断する技術ではない。
【0007】
本発明の目的は、被切断部材の切断面に沿って開けたガイド部材挿入孔にガイド部材を挿入し、このガイド部材の間にワイヤーソーを挟み、拘束させつつ被切断部材の切断を進めることで、ワイヤーソーが振られて逃げることがなく、高精度に被切断部材を切断することができる、鉄筋コンクリート造柱などの高精度切断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る鉄筋コンクリート造柱などの高精度切断方法は、
ワイヤーソーで鉄筋コンクリート造柱などの被切断部材を高精度に切断する方法であって、
ガイド部材挿入孔を被切断部材の切断面に沿って、後で挿入するガイド部材でワイヤーソーの両面を挟み拘束しつつ、切断を案内できる大きさで形成すること、
前記ガイド部材挿入孔にガイド部材を少なくとも2本挿入し、このガイド部材の間にワイヤーソーを挟み、拘束させつつ被切断部材の切断を進めることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載した鉄筋コンクリート造柱などの高精度切断方法において、
ガイド部材は鋼棒であることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載した鉄筋コンクリート造柱などの高精度切断方法において、
ガイド部材挿入孔は切断面に沿って複数本交わらない配置で開けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る鉄筋コンクリート造柱などの高精度切断方法は、被切断部材の切断面に沿って開けたガイド部材挿入孔にガイド部材を挿入し、このガイド部材の間にワイヤーソーを挟み、拘束させつつ被切断部材の切断を進めるので、ワイヤーソーが振られて逃げることがなく、高精度に被切断部材を切断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ガイド部材挿入孔を被切断部材の切断面に沿って、後で挿入するガイド部材でワイヤーソーの両面を挟み拘束しつつ、切断を案内できる大きさで形成する。前記ガイド部材挿入孔にガイド部材を少なくとも2本挿入し、このガイド部材の間にワイヤーソーを挟み、拘束させつつ被切断部材の切断を進める。
【実施例1】
【0013】
請求項1、2に記載した発明に係る鉄筋コンクリート造柱などの被切断部材の高精度切断方法(以下、切断方法と省略する。)の実施例を、図面に基づいて説明する。本実施例の切断方法は、既存建物の免震改修時に、鉄筋コンクリート造の柱1に積層ゴム(図示を省略)を設置するべく、ワイヤーソー2で柱1を略水平に切断する。
【0014】
先ず、柱1の所定の高さHに設定した切断面Nに沿って、略水平にガイド部材挿入孔3を開ける(図1及び図2を参照)。具体的には、前記ガイド部材挿入孔3は、柱1の切断始端Sから中心点Cを通って切断終端Eに到達するように、コアドリル等で掘削し、その口径Rが、後に挿入するガイド部材4、5でガタツキなくワイヤーソー2の両面を挟み拘束しつつ、切断を案内できる大きさに形成している(図3及び図6を参照)。一例として、ワイヤーソー2の厚さTが10mm、ガイド部材4、5の直径R、Rがそれぞれ18mmの場合、ガイド部材挿入孔3の口径Rは50mm程度とする。
【0015】
このガイド部材挿入孔3に、ワイヤーソー2の両面を拘束するのに十分な強度を有する丸鋼棒から成るガイド部材4、5を上下に挿入する(図4を参照、請求項2記載の発明)。このとき、ガイド部材4、5の切断始端S側の端部4a、5aを、ガイド部材挿入孔3の口縁3aから突出させておく。
【0016】
前記上下のガイド部材4、5それぞれの端部4a、5aの間にワイヤーソー2を挟み込み、柱1に巻き付け(図5及び図6を参照)、図示を省略した駆動装置と駆動力の伝達が可能に接続し、切断の準備を整える。そして、上下のガイド部材4、5で、周回しながら駆動装置で切断方向に引っ張られるワイヤーソー2の両面を拘束しつつ、柱1の切断を進める(図7を参照)。
【0017】
本発明の切断方法は、柱1の切断面Nに沿って開けたガイド部材挿入孔3にガイド部材4、5を挿入し、このガイド部材4、5の間にワイヤーソー2を挟み、拘束させつつ柱1の切断を進めるので、ワイヤーソー2が上下方向に振られて逃げることがなく、高精度に柱1を切断することができる。
【実施例2】
【0018】
上記実施例1のガイド部材挿入孔3は1本であったが、精度を高めるために交わらない配置で複数本(図示例では3本)開けると良い(図8を参照、請求項3記載の発明)。
【実施例3】
【0019】
上記実施例1のガイド部材挿入孔3は切断始端Sから中心点Cを通って切断終端Eに到達するように開けたが、少なくとも、一端が切断終端Eに到達するように開けていれば、柱1を高精度に切断できる。また、切断精度が低くて良い場合のガイド部材挿入孔3の掘削位置は特に限定されないが、やはり一端が切断終端E近傍に到達するように開けることが望ましい。
【実施例4】
【0020】
上記実施例1のガイド部材3、4は鋼棒で構成しているが、ワイヤーソー2に負けない十分な強度を有する部材であれば、特に限定されない。
【実施例5】
【0021】
上記実施例1では桟木ガイドを設置していないが、通例の切断方法と同様に、桟木ガイドを設置しても良い。
【実施例6】
【0022】
上記実施例1の切断方法は、柱1に積層ゴムを設置するために実施したが、用途は特に限定されず、被切断部材も柱に限定されない。また、被切断部材を水平に切断するだけでなく、垂直又は傾斜角を設けて切断することもできる。
【実施例7】
【0023】
以上に本発明の実施例を説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る鉄筋コンクリート造柱などの高精度切断方法の実施例を概略的に示した斜視図である。
【図2】柱にガイド部材挿入孔を穿孔した状態を示した縦断面図である。
【図3】柱にガイド部材挿入孔を穿孔した状態を示した水平断面図である。
【図4】柱に穿孔したガイド部材挿入孔にガイド部材を挿入した状態を示した縦断面図である。
【図5】ガイド部材挿入孔に挿入した上下のガイド部材の間にワイヤーソーを挟み込んだ状態を示した縦断面図である。
【図6】ガイド部材挿入孔における上下のガイド部材とワイヤーソーとの位置関係を示した図である。
【図7】柱をワイヤーソーで切断している状態を示した縦断面図である。
【図8】本発明に係る鉄筋コンクリート造柱などの高精度切断方法の異なる実施例を概念的に示した斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 柱
2 ワイヤーソー
3 ガイド部材挿入孔
4 ガイド部材
5 ガイド部材
H 切断高さ位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーソーで鉄筋コンクリート造柱などの被切断部材を高精度に切断する方法であって、
ガイド部材挿入孔を被切断部材の切断面に沿って、後で挿入するガイド部材でワイヤーソーの両面を挟み拘束しつつ、切断を案内できる大きさで形成すること、
前記ガイド部材挿入孔にガイド部材を少なくとも2本挿入し、このガイド部材の間にワイヤーソーを挟み、拘束させつつ被切断部材の切断を進めることを特徴とする、鉄筋コンクリート造柱などの高精度切断方法。
【請求項2】
ガイド部材は鋼棒であることを特徴とする、請求項1に記載した鉄筋コンクリート造柱などの高精度切断方法。
【請求項3】
ガイド部材挿入孔は切断面に沿って複数本交わらない配置で開けることを特徴とする、請求項1に記載した鉄筋コンクリート造などの高精度切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−70881(P2007−70881A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258854(P2005−258854)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(596105208)第一カッター興業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】