説明

鉄道工事桁及びその架設方法並びに鉄道工事桁を利用した単スパン橋梁化工法

【課題】軌道の下を開削する工事の際に前記軌道を支持する鉄道工事桁において、短時間で架設可能な工事桁を提供する。
【解決手段】軌道の両側にレール5に沿って配置される一対の主桁2と、レール5とレール5の下方で交差するようにそれぞれ配置され、その両端が主桁2に支持される複数の横桁3と、隣合う横桁3の間で左右のレール5の直下にレール5に沿って配置され、レール5を下方から支持するとともに、その両端が横桁3に支持される複数の縦桁4とで工事桁1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線路下構造物の構築等、軌道を破線せずに軌道下で掘削等の工事を行う場合に、軌道を支持する鉄道工事桁に関する。
【背景技術】
【0002】
列車を走行させつつ線路の下方に構造物を構築する場合には、掘削により線路下が空洞になっても列車が当該区間を安全に走行できるように、線路を強固に支持する鉄道工事桁が用いられる。
【0003】
一般に、この工事桁として、既設軌道のマクラギの下にU型断面の鋼製横桁を挿入し、この横桁の凹部底面でマクラギを支持して受桁とし、この受桁を軌道の両側に配置した2本の主桁に接続固定することで構成されるものが用いられる。
【0004】
このような工事桁は、主桁及び受桁が各々鋼板を溶接して製作する構造であるため、溶接歪みによる製作精度のバラツキが生じたり、製作コストが高価になってしまうという問題があった。この問題を解消するための工事桁として、主桁及び横桁に形鋼を用いて溶接を不要にした工事桁が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−214405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の工事桁は、まず道床土留め工とともに主桁を収納する溝状凹部を軌道の側方に掘削して主桁を配し、予め用意した工事桁用受桁に据え付け固定し、マクラギの下方及び側方のバラスト砕石を除去して、鋼製の受桁をマクラギの下方に挿入して軌道を支持し、主桁に接続固定する、という架設方法が採られる。
【0007】
このような架設方法では、バラスト砕石の除去範囲が主桁間の全域にわたるとともに、重い受桁の設置を人力に頼らざるをえない。
【0008】
また、特許文献1の工事桁は、すべてのマクラギを受桁に挿入する構成となっている。一般に軌道マクラギにはPCマクラギが用いられるが、PCマクラギは重量が重くなりがちであること、寸法バラツキ等によって幅が受桁の受幅よりも大きい場合に寸法調整が困難であること等の理由で、工事桁の架設前に、より軽量で切削等による寸法調整も容易な木製マクラギに置き換えられる。つまり、マクラギを受桁に挿入する前に、すべてのマクラギを木製マクラギに置き換えるという作業が必要となる。
【0009】
このため、列車が通過する間隔という限られた時間内での作業は極めて煩雑となり、工事桁の架設に要する時間が長くなるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明では工事桁の架設に要する時間を短縮し、ひいては建設コストを低減することができる工事桁、及びその架設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の鉄道工事桁は、軌道の両側にレールに沿って配置される一対の主桁と、レールの下方でレール交差するようにそれぞれ配置され、その両端が主桁に支持される複数の横桁と、隣合う横桁の間で左右のレールの直下にレールに沿って配置され、レールを下方から支持するとともに、その両端が横桁に支持される複数の縦桁と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、横桁の設置はマクラギ数丁おきに配置すればよく、横桁を設置した場所以外のマクラギは撤去して縦桁によってレールを支持するので、全部のマクラギに受桁を挿入する工法に比べて、横桁設置のためのマクラギ抜き取り及び掘削の作業が少なくて済み、鉄道工事桁の架設に要する時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本実施形態の工事桁の上面図、(b)は(a)のI−I線に沿った断面図、(c)は(a)のII−II線に沿った断面図である。
【図2】図1(a)のIII−III線に沿った断面図である。
【図3】図1(a)のIV−IV線に沿った断面図である。
【図4】縦桁の端部の構造を示す図である。
【図5】本実施形態の工事桁の設置工程を説明するための図である。
【図6】本実施形態の工事桁を単スパン橋梁として存置する際の工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1から図4を参照して、本実施形態に係る工事桁の構造を説明する。
【0016】
図1(a)は本工事桁の上面図、(b)は(a)のI−I線に沿った断面図、(c)は(a)のII−II線に沿った断面図である。図2は図1(a)のIII−III線に沿った断面図、図3は図1(a)のIV−IV線に沿った断面図、図4は縦桁の端部の構造を示す図である。
【0017】
本実施形態の工事桁1は、線路下構造物の構築等、軌道の下で掘削等の工事を行う場合に軌道を支持するためのものである。
【0018】
図1に示すように、工事桁1は、軌道の両側にレール5に沿って配置される一対の主桁2と、その両端が主桁2に支持される複数の横桁3と、隣合う横桁3の間で左右のレール5の直下にレール5に沿って配置され、その両端が横桁3に支持される複数の縦桁4と、を有する。
【0019】
主桁2は鋼材からなり、線路下構造物開削部の両側に、レール5に並行して設置される。
【0020】
横桁3は鋼材からなり、主桁2と主桁2の間に所定間隔おきに渡される。横桁3の両端は、図3に示すように主桁2の翼部2aにボルト7で締結される。
【0021】
なお、本実施形態では、後述する撤去作業を簡素化するために、中央部材3aと2つの両端部材3bとをボルト等で連結して一体化した横桁3を用いる。具体的には、中央部材3aは両端付近にレール5が締結される程度の長さであり、レール5よりも外側に突出した部分が両端部材3bとなっている。
【0022】
また、図1(a)においてボルト9が配置されている箇所は、本工事桁1を設置する前は、後述するマクラギ20が設置されていた場所である。つまり、本実施形態では、横桁3はマクラギ20の4丁分の間隔で設置されるが、その他の間隔で設置してもよい。
【0023】
縦桁4は、図4に示すように、上面が開放したU字断面の鋼材に、鉄筋11を配置したうえでコンクリート10を充填した構造となっており、コンクリート10の上面にレール固定部材12をボルト9b等により固定し、レール5は固定部材12にボルト9aを介して締結される。そして、縦桁4は、主桁2と横桁3の締結と同様にボルト8で横桁4締結される。
【0024】
なお、図4に示すように、縦桁4の両端のボルト穴31を設けた範囲は、仕切り板30により仕切られて、コンクリート10は充填されていない。ただし、鉄筋11は仕切り板30を貫通しており、縦桁4の端部まで伸びている。
【0025】
上記のようにコンクリート10を充填することで、縦桁4の剛性を向上させることができる。
【0026】
次に、上述した工事桁1の架設方法について、図5を参照して説明する。図5の(a)〜(e)は工事桁1の架設工程を説明するための図であり、左側の図が正面図、右側の図が側面図である。
【0027】
まず、工事前の状態(図5(a))から、主桁2を設置するための溝を掘削する。さらに横桁3を設置する部分のバラストを除去し、当該部のマクラギ20を横桁3に置き換える(図5(b))。
【0028】
次に、主桁2を図5(b)で掘削した溝に配置し、これと横桁3を締結する。締結したら、横桁3の周りにバラストを投入して突き固める(図5(c))。
【0029】
そして、壁21及びマクラギ20を撤去して(図5(d))、縦桁4をレール5の下に挿入し、縦桁4と横桁3をボルト8で締結することで、工事桁1の架設が終了する。
【0030】
上述したように、工事桁1の架設に際して、横桁3は数丁おきのマクラギ間に配置すればよく、横桁3を設置する位置のマクラギ20を抜き取り、その周辺を掘削して横桁3を配置して主桁1に締結するので、架設作業に要する時間を短縮できる。また、横桁3に置き換える位置以外のマクラギ20は撤去されて縦桁4に置き換えられるので、現在一般的に用いられるPCマクラギを架設作業のために軽量な木製マクラギに置き換える前作業が不要となる。さらに、工事桁1の架設にあたって、溶接作業が不要である。
【0031】
次に、線路下構造物の構築等の工事が終了した後に、工事桁1をスパンが横桁3の間隔である単スパン橋梁として本設適用する場合の工程について、図6を参照して説明する。図6(a)〜(d)は、本設適用するための工程を示す図であり、図5と同様に左側が正面図、右側が側面図である。
【0032】
図6(a)は線路下構造物構築工事中の状態を示す図、つまり図5(e)の状態である。
【0033】
当該工事が終了したら、縦桁4、横桁3を下方から支える支承40を設ける(図6(b))。支承40は、横桁3と地面との間にコンクリート等を充填したものである。
【0034】
なお、縦桁4と横桁3の接合部分の空隙にもコンクリートを充填する。この部分には、上述したように鉄筋11が配置されているので、コンクリート充填によって、鉄骨鉄筋コンクリート構造となる。
【0035】
支承40を設けたら主桁2を撤去し(図6(c))、さらに横桁3の両端部材3bも撤去する(図6(d))。
【0036】
これにより、工事桁1は鉄骨鉄筋コンクリート構造の単スパン橋梁として本設存置されたことになる。
【0037】
上記のように、線路下構造物の構築等の工事終了後に工事桁1を本設存置する場合には、撤去するのは主桁2及び横桁3の両端部材3bのみで済むので、工事前の状態に戻す場合に比べて少ない工数で容易に撤去作業が終了する。
【0038】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
1 工事桁
2 主桁
3 横桁
4 縦桁
5 レール
10 コンクリート
11 鉄筋
20 マクラギ
40 支承

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道の下を開削する工事の際に前記軌道を支持する鉄道工事桁において、
前記軌道の両側にレールに沿って配置される一対の主桁と、
前記レールの下方に当該レールと交差するようにそれぞれ配置され、その両端が前記主桁に支持される複数の横桁と、
隣り合う前記横桁の間で左右の前記レールの直下に前記レールに沿って配置され、前記レールを下方から支持するとともに、その両端が前記横桁に支持される複数の縦桁と、
を備えることを特徴とする鉄道工事桁。
【請求項2】
軌道の下を開削する工事の際に前記軌道を支持する鉄道工事桁を架設する方法において、
前記軌道の両側に前記レールに沿って主桁据え付け用の溝を掘削する工程と、
所定の間隔をもって複数のマクラギを抜き取り、当該抜き取った部分を掘削して横桁を配置する工程と、
前記主桁据え付け用の溝に主桁を据え付けて、前記横桁の両端を前記主桁に締結固定する工程と、
隣り合う前記横桁の間にあるマクラギを撤去し、左右のレールの直下にレールに沿って縦桁据え付け用の溝を掘削する工程と、
前記縦桁据え付け用の溝に縦桁を配置し、前記縦桁の両端を前記横桁に締結し、さらに前記縦桁と前記レールとを締結する工程と、
を有することを特徴とする鉄道工事桁の架設方法。
【請求項3】
軌道の下を開削する工事の際に前記軌道を支持する鉄道工事桁を利用した単スパン橋梁化工法において、
前記軌道の両側に前記レールに沿って主桁据え付け用の溝を掘削する工程と、
所定の間隔をもって複数のマクラギを抜き取り、当該抜き取った部分を掘削して横桁を配置する工程と、
前記主桁据え付け用の溝に主桁を据え付けて、前記横桁の両端を前記主桁に締結固定する工程と、
隣り合う前記横桁の間にあるマクラギをすべて撤去し、左右のレールの直下にレールに沿って縦桁据え付け用の溝を掘削する工程と、
前記縦桁据え付け用の溝に縦桁を配置し、前記縦桁の両端を前記横桁に締結し、さらに前記縦桁と前記レールとを締結する工程と、
前記開削工事終了後に、前記横桁と前記縦桁の接合部に鉄筋を配置しコンクリートを充填する工程と、
前記横桁及び縦桁を下方から支持する支承を構築する工程と、
前記主桁を撤去する工程と、
前記横桁の、前記縦桁との接合部より前記主桁側の部分を撤去する工程と、
を有することを特徴とする鉄道工事桁を利用した単スパン橋梁化工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−74603(P2011−74603A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224674(P2009−224674)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000207621)大日本土木株式会社 (13)
【Fターム(参考)】