説明

鉄道模型のレイアウトにおけるレイアウト要素の接続装置

【課題】複数個のレイアウト要素から成る鉄道模型のレイアウトにおいて、レイアウト要素同士を、自動的に位置調整して接続することが可能なレイアウト要素の接続装置を提供する。
【解決手段】複数個のレイアウト要素から成り、各レイアウト要素の接続のために、複数個のレイアウト要素を一体に組み合わせる機械的結合手段と、複数個のレイアウト部分のレールを含む通電部分を電気的に接続する電気的結合手段とを有する鉄道模型のレイアウトにおいて、各レイアウト要素は11、12、13、夫々の接続端部に設けた、相互に結合分離可能な一対の結合ユニット16、16を具備しており、上記結合ユニット16は、レイアウト要素上に配置されるレール14を一体的に有し、かつ、レイアウト要素に対して、左右、前後ないし上下に可動的に、各レイアウト要素の接続端部に取り付けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のレイアウト要素から成る鉄道模型のレイアウトにおいて、各レイアウト要素を接続するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数個のレイアウト要素から成る鉄道模型のレイアウトにおいては、各レイアウト要素同士を精密に位置調整して接続する必要がある。しかし現実には中々困難であり、各製品についてメーカーが工夫しているのが原状である。このため、レイアウト要素の設計や組み立てが面倒であり、製品によって精度上のばらつきがおきやすいという問題がある。
【0003】
これに対し、実用新案登録第3099959号は、鉄道模型用レイアウト装置について使用後は折り畳んで収納できるようにした発明を開示している。同発明は、鉄道模型のレール等を装着した板体を、表表紙相当部、裏表紙相当部及び裏表紙相当部に3分割し、これらの部材をヒンジで連結し、上記表表紙相当部、裏表紙相当部及び裏表紙相当部をヒンジで折り返した際に、各部材間が約90度の角度で保持されるようにした構成を有する。そしてこの構成により本棚等に収納できるという特徴を有するものであるが、これはヒンジによって各部材を連結しており、部材ごとに分離したり、組み合わせを変更したりすることができない。つまり、一定のレイアウトだけに限られるものであり、変化や発展性に乏しいという問題がある。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3099959号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に着目してなされたものであり、その課題は、複数個のレイアウト要素から成る鉄道模型のレイアウトにおいて、レイアウト要素同士を、自動的に位置調整して接続することが可能なレイアウト要素の接続装置を提供することである。また本発明の他の課題は、一定のレイアウトだけに限られることがなく、変化や発展性のある鉄道模型のレイアウトにおけるレイアウト要素の接続装置を提供することである。また本発明の他の課題は、ワンタッチで着脱可能な鉄道模型のレイアウトにおけるレイアウト要素の接続装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、本発明は、複数個のレイアウト要素から成り、各レイアウト要素の接続のために、複数個のレイアウト要素を一体に組み合わせる機械的結合手段と、複数個のレイアウト部分のレールを含む通電部分を電気的に接続する電気的結合手段とを有する鉄道模型のレイアウトにおいて、
各レイアウト要素は、夫々の接続端部に設けた、相互に結合分離可能な一対の結合ユニットを具備しており、上記結合ユニットは、レイアウト要素上に配置されるレールを一体的に有し、かつ、レイアウト要素に対して、左右、前後ないし上下に可動的に、各レイアウト要素の接続端部に取り付けるものとするという手段を講じたものである。
【0007】
本発明に係る鉄道模型のレイアウトにおけるレイアウト要素の接続装置は、複数個のレイアウト要素から成る鉄道模型のレイアウトにおいて、各レイアウト要素を接続するための装置である。従って、最小限2個のレイアウト要素を接続すること必要とするが、本発明では、夫々のレイアウト要素の接続のために突き合わせる部分を接続端部と呼ぶ。
【0008】
各レイアウト要素は、接続端部に複数箇所の接続部分を有している。ここで言う接続部分とは、何らかの形で接続に関与する部分というほどの意味であり、結合機能を有しているものだけではなく、結合機能を有していないものも含む。例えば、接続端部に3箇所の接続部分を有する場合、その1箇所又は2箇所に結合機能が備わっていれば良く、全ての接続部分に本発明に係る接続装置を適用する必要はない。しかし、全ての接続部分に本発明に係る接続装置を適用することも可能である。
【0009】
従って本発明では、接続端部における複数箇所の接続部分について、その内の少なくとも一箇所の接続部分に、相互に接続可能な嵌合構造を有する結合ユニットを配置するものとする。この嵌合構造は、各レイアウト要素の接続において、相互の位置決めを行い、かつ構造的な強度を負担する役割を果たす。
【0010】
結合ユニットは、接続方向へ突き出すような形状を有するオス部と、そのオス部に、突き出し方向への抜き差しにより嵌合可能に設けられたメス部とから成る雌雄嵌合構造を有するものであることが望ましい(請求項2記載の発明)。雌雄嵌合構造を有することにより、左右、上下及び前後の各方向において位置決めをし易く、かつ堅固な係合、嵌合を得やすいものとなる。
【0011】
そして、結合ユニットは、左右ないし上下に移動可能に、各レイアウト要素の接続端部に取り付けるようにするが、例えば左右方向へ可動の構成とすることは、夫々のレイアウト要素の接続のために突き合わせる接続端部の左右方向の位置を合わせるために好都合である。そこで、結合ユニットをレイアウト要素に取り付ける、ねじを通す孔を左右方向に長い長孔や大径孔などの大形孔とした構成とする(請求項3記載の発明)。
【0012】
本発明に係る鉄道模型のレイアウトにおけるレイアウト要素の接続装置は、レイアウトを構成する複数個の各レイアウト要素の接続部分に設けられるものであるから、その各レイアウト要素を接続するという性質上、レイアウト要素同士を、単に機械的に接続するに止まらず、電気的に接続することが必要になることもある。このような場合、機械的な接続手段と、電気的な接続部分とを同時的に行なうことが可能であり、本発明の装置による左右方向などへの位置ずれの調整機能により、電気的接続も調整できる可能性があり、有効である。
【0013】
例えば、レールを位置調整可能にレイアウト要素に設けておくことにより、レイアウト要素同士を接続する構成において、機械的接続手段の位置が多少ずれていたとしても、レイアウト要素同士がそのずれに応じて動き、接続されるので電気的接続も確実に行われることになり、実施上の有効性も高い。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、複数個のレイアウト要素から成る鉄道模型のレイアウトにおいて、レイアウト要素に対して可動的に取り付けた結合ユニットにより、いわばレイアウト要素同士を、自動的に位置調整して接続することが可能なレイアウト要素の接続装置を提供することができる。また本発明によれば、雌雄嵌合構造から成る結合ユニットを16有することにより、ワンタッチで着脱可能な鉄道模型のレイアウトにおけるレイアウト要素の接続装置を提供することできるなど、顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図示の実施形態を参照して、本発明に係る鉄道模型のレイアウトにおけるレイアウト要素の接続装置10の例について、より詳細に説明する。図1は、3個のレイアウト要素11、12、13から成る鉄道模型のレイアウト15において、通電部分としてのレール14に電力を供給するための装置を示しており、本発明に係る鉄道模型のレイアウトにおける通電装置10は、レイアウト15を構成する3個のレイアウト要素11、12、13の接続部分に設けられている。
【0016】
各レイアウト要素11、12、13の接続端部には、接続部分として、いわゆる雌雄嵌合構造によって構成された結合ユニットを複数個配置している。図示の例では、各レイアウト要素11、12、13の接続端部に、独立の結合ユニット16を取り付けて構成されている。各結合ユニット16は、接続端部において接続方向へ突き出すような形状を有するオス部17と、オス部17と突き出し方向への抜き差しにより嵌合可能なメス部18とを有し、位置決め手段の一つとしてオス部17には突き出し方向の受け溝17aが設けられ、メス部18には受け溝17aに係合する突部18aが設けられている。図2参照。
【0017】
上記の雌雄嵌合構造は、各レイアウト要素11、12、13の接続における、相互の位置決めを行い、かつ構造的な強度を負担する機械的結合手段の役割を果たす。このような雌雄嵌合構造を構成するものとして、オス部17の左右両側には、係合部17bが設けられており、また、メス部18には、係合部17bに係合する係合相手部18bが設けられている。また、上下方向の位置決めのために、オス部17の先端には突き出し方向への凸部17cが設けられ、メス部18の内奥には、凸部17cの入り込める凹部18cが設けられている。図示の凹部18cは、スリットによって囲まれて上下動可能に形成された弾性片18eと固定部18fによって構成され、挿入される凸部17cを弾力的に挟み込み固定する。図4、図5参照。上記のスリット18dにより囲まれ、上下可動に形成された弾性片18eは、凹部18cに嵌合している凸部17cの逃げを許容する逃げ部を構成する。
【0018】
上記の結合ユニット16は、各レイアウト要素11、12、13の接続端部に、可動的に取り付けられている。図示の場合、結合ユニット16は左右方向へ長く形成された長孔19を、複数箇所の取り付け部20に有しており、その長孔19に通す止めねじ21によって締め付けることなく取り付けることにより、左右へ首を振るように設けられている。22はシースであり、止めねじ21を通す筒状に形成されている。
【0019】
図1に示した例では、各レイアウト要素11、12、13の接続端部に、結合ユニット16を左右2個所に、設置している。このような場合、左右ともに結合ユニット16を可動的に取り付けても悪くはないが、片方だけ可動的にしておけば、目的を達することは明らかである。即ち、片方の接続位置を正確に決定しておくことにより、他方の接続位置に誤差があっても結合ユニット16の可動により吸収することができるので、組み立て時の調整の手間を軽減することができる。この組み立て時の調整は、メーカーによる組み立てと、ユーザーによる使用時の組み立ての両方に通用する。
【0020】
このような各レイアウト要素11、12、13の上部に、レール14を配置し、その下面を上部通電部分とするとともに、同じ各レイアウト要素11、12、13の、上記レール14よりも下部に回路配線23を下部通電部分として配置している。また、レール14は、これをレイアウト要素11、12、13の上面に配置するために、結合ユニット16から上方に伸びる脚部16aの上位に取り付けている。そして上記レール14の側と回路配線22の側に、夫々通電用の接続部24、25を配置するのであるが、図示の例では、レール14の側には特に接続部を設けることなく、上記のとおりレールそれ自体の下面を中間通電部分26の上端が接触する接続部24とし、回路配線22の側にのみ平板状の接続部25を設けている。
【0021】
図2及び図3に詳細に示されているように、各結合ユニット16は、夫々レール14を一体に具備しており、レール14を取り付けている道床部分27としての枕木には、上記の脚部16aが入り込む開口27aを設け、各レイアウト要素11、12、13の上面には、同じく脚部16aが通過する長孔28を左右方向へ長く形成し、レール14と結合ユニット16が一体としてレイアウト要素に対して可動的であるように構成することによって、前述した組み立て時の調整に対応している。29はレール側の突起で、突起29を通すために同じくレイアウト要素上面に同様の目的で長孔30が設けられており、上記の突起29は結合ユニット側の嵌合孔31に嵌合する。なお、結合ユニット16をレイアウト要素11、12、13に取り付ける、ねじなどを通す長孔19、28、30は大形孔の具体例である。
【0022】
上部通電部分の接続部24と下部通電部分の接続部25に加圧状態で接触する中間通電部分26は、脚部16aに配置され、上下両端が上部、下部の接続部24、25に加圧接触し、電気的接続を確実に確保するもので、図示の中間通電部分26は、導線を巻回したコイルより成り、上方の通電部分の接続部24と下方の回路配線の接続部25との間隔よりも大きい自然長を有し、圧縮状態で上方の通電部分の接続部24と下方の回路配線の接続部25との間に介在させている。しかし、コイルに限らず、板ばねなどを用いた導電片より成る中間通電部分26′を使用することも可能であり、どちらの場合も、レール14に対して加圧力による接触状態を保持することができる。
【0023】
上記のような各レイアウト要素11、12、13の接続端部では、各レイアウト要素の機械的結合に伴って回路配線23間も電気的に接続される。このため、回路配線23の接続部25に通じているプラス側及びマイナス側の端子32、33を、オス部17とメス部18に夫々設けている(図5参照)。図示の例ではオス部17の左右両側面に板ばね状の端子32を設置し、メス部18の左右両側面に板状の端子33を設置している。
【0024】
本発明に係る鉄道模型のレイアウトにおけるレイアウト要素の接続装置10は上記のように構成されており、複数個のレイアウト要素11、12、13から成る鉄道模型のレイアウトにおいて、各レイアウト要素11、12、13を結合ユニット16の雌雄嵌合構造により確実に接続することができる(図4〜図6)。結合ユニット16は、係合部17bと係合相手部18bとの係合、及び、凸部17cと凹部18cとの嵌合による機械的結合をもってレイアウト要素を一体に組み合わせ、かつ、端子32、33の接触により電気的結合を得て、レイアウト全体への通電を可能にする。
【0025】
特に各レイアウト要素11、12、13を、それらに可動的に取り付けた結合ユニット16によって接続する構成を取ることにより、各レイアウト要素相互において結合ユニット16の位置がずれていても、結合ユニット16を長孔19の範囲で左右方向へ動かし得るので、そのずれを吸収することができる(図7、図8)。それとともに、通電部分の接続部24、25も、中間通電部分26に対して摺動して電気的接続を保つので悪影響を受けることが少ない。従って、機械的と電気的との接続が一時に可能になり、レール14を含む通電部分に確実に電力を供給することができる。
【0026】
図9は結合ユニット16における結合と分離を示したもので、各レイアウト要素11、12、13をほぼ水平にして接続端部を合わせ(図9A)、結合ユニット16を結合させて全体が一体のレイアウト15を組み立て、このとき、結合ユニット16では、受溝17aと凸部18a、係合部17bと係合相手部18bが係合するとともに、凸部17cと凹部18cが嵌合し固定部18fにて機械的結合がなされ、それと同時に端子32、33が接触して電気的結合がなされる(図9B)。これによって、レール14及び灯火その他に通電可能な状態となり、鉄道模型の運行が可能になる。結合状態にある各レイアウト要素11、12、13を分解するには、接続端部における一方のレイアウト要素の端部(図1ではレイアウト要素13の端部)を持ち上げ(図9C)、接続端部を中心に折り曲げるようにすることで、凸部17cが凹部18cから脱する際、係合部17bと係合相手部18bの係合が外れるので、レイアウト要素同士の分離を容易かつ確実に行うことができる。その際、凸部17cはスリット18dで囲まれている弾性片18eを押し下げて脱するので離脱がスムーズに行われ、着脱を繰り返しても損傷のおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る鉄道模型のレイアウトにおけるレイアウト要素の接続装置の一例を示す分解斜視図。
【図2】レイアウト要素と結合ユニットを示す分解斜視図。
【図3】図2の変形例を示す分解斜視図。
【図4】一組の結合ユニットを示す平面図。
【図5】図4のものに対応する下面図。
【図6】結合ユニットの通電構造を示すもので、Aは単独のものを、Bは一組のものを示す下面図。
【図7】同じく一組の結合ユニットの結合時における可動状態を示す上面図。
【図8】同じく一組の結合ユニットの結合時における可動状態を示す横断面図。
【図9】レイアウト要素の結合と分解を示すもので、Aは結合ユニットの結合作業を示す断面図、Bは結合状態を示す断面図、Cは分離状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0028】
10 鉄道模型のレイアウトにおける通電装置
11、12、13 レイアウト要素
14 レール
15 鉄道模型のレイアウト
16 結合ユニット
17 オス部
17a 受け溝
17b 係合部
17c 凸部
18 メス部
18a 突部
18b 係合相手部
18c 凹部
18d スリット
18e 弾性片
18f 固定部
19、28、30 長孔
20 通電端子
21 止めねじ
22 シース
23 回路配線
24、25 接続部
26 中間通電部分
27 道床部分
27a 開口
29 レール側の突起
31 嵌合孔
32、33 端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のレイアウト要素から成り、各レイアウト要素の接続のために、複数個のレイアウト要素を一体に組み合わせる機械的結合手段と、複数個のレイアウト部分のレールを含む通電部分を電気的に接続する電気的結合手段とを有する鉄道模型のレイアウトにおいて、各レイアウト要素は、夫々の接続端部に設けた、相互に結合分離可能な一対の結合ユニットを具備しており、上記結合ユニットは、レイアウト要素上に配置されるレールを一体的に有し、かつ、レイアウト要素に対して、左右、前後ないし上下に可動的に、各レイアウト要素の接続端部に取り付けられていることを特徴とする鉄道模型のレイアウトにおけるレイアウト要素の接続装置。
【請求項2】
結合ユニットは、接続方向へ突き出すような形状を有するオス部と、そのオス部に、突き出し方向への抜き差しにより嵌合可能に設けられたメス部とから成る雌雄嵌合構造を有する請求項1記載の鉄道模型のレイアウトにおける接続装置。
【請求項3】
結合ユニットをレイアウト要素に取り付けるために、結合ユニットに設けたねじを通す孔を左右ないし前後方向に余裕を持った大形孔とした請求項1記載の鉄道模型のレイアウトにおける接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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