説明

鉄道車両のパネル接合構造、及びその固定部材

【課題】内側パネル(天井パネル)と骨部材(天井骨)とにネジ孔を形成する際に発生する切粉が、外板(屋根外板)と骨部材との間で飛散することを防止した鉄道車両のパネル接合構造を提供すること。
【解決手段】パネル接合構造PNは、屋根外板21を車内側から支持する天井骨31に対して、天井パネル41がビス60によって車内側から接合されるものである。このパネル接合構造PNは、天井骨31の水平部分31aにおける内側パネル41側と反対側の面に固定される固定部材50を備えている。この固定部材50は、天井骨31の水平部分31a及び周壁50aより車外側に突出するビス60の先端部分60aを包み込むようになっている。このように固定部材50が予め固定されているため、天井パネル41及び天井骨31にネジ孔62を形成する際に発生する切粉CHは、固定部材50の内部に閉じ込められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両における骨部材と内側パネルとのパネル接合構造、及びこのパネル接合構造に用いられる固定部材に関し、特に、内側パネル及び骨部材にネジ孔を形成する際に発生する切粉が外板と骨部材との間で飛散することを防止した鉄道車両のパネル接合構造、及びその固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の車体の製造においては、外板を車内側から支持する骨部材に対して、内側パネルがビスによって車内側から接合されるようになっている。このような骨部材と内側パネルとのパネル接合構造は、例えば下記特許文献1に記載されている。このパネル接合構造では、図9に示したように、内側パネルとしての天井パネル141が骨部材としての天井骨131に対して車内側からビス止めされている。即ち、天井パネル141と天井骨131とがネジ孔加工(孔開け加工及びタップ加工)された後、ビス160が天井パネル141及び骨部材131に形成されたネジ孔162に螺着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−4579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、天井パネル141と天井骨131とがネジ孔加工されるとき等には、切粉CHが発生する。この切粉CHは、ネジ孔162より車内側に落ちる場合と、ネジ孔162より車外側に侵入する場合とがある。ここで、切粉CHがネジ孔162より車内側に落ちる場合には、車室内を掃除機等で清掃することによって、切粉CHを除去できる。しかし、切粉CHがネジ孔162より車外側に侵入する場合には、掃除をするために、最後に組付けられる天井パネル141と、その他の内側パネルとを取り外す必要があり、手間がかかる。また、屋根外板121と天井骨131との間に手が届き難く、掃除をするのが困難であり、切粉CHを除去し難い。こうして、切粉CHが屋根外板121と天井骨131との間に残り、鉄道車両の走行時の振動等によって飛散する。この結果、切粉CHが屋根外板121と天井骨131との間に配置された電子機器180や配線等に付着して、電子機器180の不具合・故障を引き起こすおそれがある。
【0005】
本発明は、上記した課題を解決すべく、内側パネル及び骨部材にネジ孔を形成する際に発生する切粉が、外板と骨部材との間で飛散することを防止した鉄道車両のパネル接合構造、及びその固定部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鉄道車両のパネル接合構造は、外板を車内側から支持する骨部材に対して、内側パネルがビスによって車内側から接合されるものであって、前記骨部材の前記内側パネル側と反対側の面に固定され、前記骨部材を車外側に突き抜けたビスの先端部分を包み込み、前記内側パネル及び前記骨部材にネジ孔を形成する際に発生する切粉を閉じ込める固定部材を有するものであることを特徴とする。
ここで、「内側パネル及び骨部材にネジ孔を形成する際に発生する切粉」とは、内側パネルと骨部材とがネジ孔加工(孔開け加工及びタップ加工)されるときに発生する切粉、内側パネルと骨部材とに形成された丸孔にセルフタップビスがネジ込まれるときに発生する切粉等をいう。
【0007】
また、本発明に係る鉄道車両のパネル接合構造において、前記固定部材は、中空パイプの両端部が塞がれ、前記骨部材に接合された周壁に前記ビスが螺着するネジ孔が形成されたものであることが好ましい。
又は、本発明に係る鉄道車両のパネル接合構造において、前記固定部材は、中空パイプの孔部が挿入部材によって塞がれ、前記骨部材に接合された周壁に前記ビスが螺着するネジ孔が形成され、前記挿入部材の中に前記ビスの先端部分が挿入されたものであっても良い。
或いは、本発明に係る鉄道車両のパネル接合構造において、前記固定部材は、底面が前記骨部材に固定されて、前記ビスの先端部分が中に挿入される単一部材であっても良い。
特に、本発明に係る鉄道車両のパネル接合構造において、前記骨部材及び前記内側パネルは、鉄道車両の天井部に配置された天井骨及び天井パネルであり、前記固定部材は、前記天井骨の前記内側パネル側と反対側の面に固定されていることが好ましい。
【0008】
本発明に係る鉄道車両パネル接合構造の固定部材は、外板を車内側から支持する骨部材に対して、内側パネルを車内側からビスによって接合する接合部において、前記骨部材の前記内側パネル側と反対側の面に固定されるものであって、前記骨部材を車外側に突き抜けたビスの先端部分を包み込み、前記内側パネル及び前記骨部材にネジ孔を形成する際に発生する切粉を閉じ込めるものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る鉄道車両パネル接合構造の固定部材は、中空パイプの両端部が塞がれ、前記骨部材に接合された周壁に前記ビスが螺着するネジ孔が形成されるものであることが好ましい。
又は、本発明に係る鉄道車両パネル接合構造の固定部材は、中空パイプの孔部が挿入部材によって塞がれ、前記骨部材に接合された周壁に前記ビスが螺着するネジ孔が形成され、前記挿入部材の中に前記ビスの先端部分が挿入されるものであっても良い。
或いは、本発明に係る鉄道車両パネル接合構造の固定部材は、底面が前記骨部材に固定されて、前記ビスの先端部分が中に挿入される単一部材であっても良い。
【発明の効果】
【0010】
よって、本発明に係る鉄道車両のパネル接合構造、及びその固定部材によれば、内側パネルを骨部材に接合する前に、固定部材が、骨部材の内側パネル側と反対側の面に固定されている。そして、ビスが、内側パネルと骨部材とに形成されたネジ孔に車内側から螺着されたときに、固定部材は、骨部材を車外側に突き抜けたビスの先端部分を包み込むようになっている。このように固定部材が予め固定されているため、内側パネル及び骨部材にネジ孔を形成する際に発生する切粉が、ネジ孔より車外側に侵入しても、固定部材が切粉を内部に閉じ込める。従って、切粉が外板と骨部材との間で飛散することを防止でき、電子機器の不具合・故障を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】妻構の内部骨組構造を室内側から見た正面図である。
【図2】図1に示したA−A断面図である。
【図3】図1に示したB−B断面図である。
【図4】図1のC部分を拡大した断面図である。
【図5】図4のD−D断面図である。
【図6】第2実施形態における固定部材を示した図5相当の断面図である。
【図7】第3実施形態における固定部材を示した図5相当の断面図である。
【図8】第4実施形態における固定部材を示した斜視図である。
【図9】従来の天井パネルと天井骨とのパネル接合構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る鉄道車両のパネル接合構造、及びその固定部材について、図面を参照しながら以下に説明する。鉄道車両の車体は、台枠、側構、屋根構、妻構の六面体で構成されている。図1は、妻構の内部骨組構造1を室内側から見た正面図である。この内部骨組構造1では、図1において、台枠10と、鉄道車両の外面である外板20と、この外板20を車内側から支持する骨部材30とが示されている。ここで、図2は、図1に示したA−A断面図であり、図3は、図1に示したB−B断面図である。
【0013】
台枠10は、乗客や車内設備品等の荷重を支えるものであり、図1の仮想線で示した床面パネル11が敷設されている。外板20は、図1に示した屋根外板21及び側外板22と、図2及び図3に示した妻外板23とを備えている。屋根外板21の枕木方向の端部は、側外板22の上端部と溶接等によって接合されている。また、屋根外板21のレール方向の端部は、図2及び図3に示したように、当板24及び継手部材25を用いて妻外板23の上端部と溶接等によって接合されている。
【0014】
骨部材30は、妻構の骨格を構成し、化粧板である内側パネル40を組付けるものである。この骨部材30は、図1に示したように、天井骨31と、第1側骨32と、第2側骨33と、第3側骨34とを備えている。天井骨31は、枕木方向に延びていて、枕木方向の端部が斜め下方に延びるようになっている。天井骨31の下端部は、継手部材35を介して当板24に接合されるとともに、第1側骨32の上端部に接合されている。また、天井骨31は、図3に示したように、補強部材36を介して当板24に接合されるとともに、図1に示した支持部材37を介して屋根骨(図示省略)に支持されている。
【0015】
第1側骨32、第2側骨33、第3側骨34は、図1に示したように、それぞれ上下方向に延びている。第1側骨32の下端部は、コ字状の補強部材38に接合されていて、第2側骨33の上端部も、補強部材38に接合されている。第3側骨34の下端部は、台枠10に接合されている。上述した骨部材としての天井骨31、第1側骨32、第2側骨33、第3側骨34では、剛性を高めるために断面がL字状になっていて(図2、図3及び図5参照)、直交する内側パネル40が組付けられるようになっている。
【0016】
ところで、鉄道車両の車体の製造においては、外板20を車内側から支持する骨部材30に対して、内側パネル40が車内側から接合されるようになっている。内側パネル40は、天井パネル41と、第1側パネル42と、第2側パネル43と、第3側パネル44と、妻パネル45とを備えている。具体的に、天井パネル41は、図1〜図3の仮想線で示したように、天井骨31に車内側からビス止めによって接合されるようになっている。第1側パネル42,第2側パネル43,第3側パネル44は、図1の仮想線で示したように、第1側骨32,第2側骨33,第3側骨34に車内側からビス止めによって接合されるようになっている。妻パネル45は、図2及び図3の仮想線で示されていて、各骨部材31〜34に車内側からビス止めによって接合されるようになっている。
【0017】
ここで、従来における内側パネルと骨部材とのパネル接合構造について説明する。従来のパネル接合構造では、図9に示したように、内側パネルとしての天井パネル141が骨部材としての天井骨131に対して車内側からビス止めされている。即ち、天井パネル141を配置した状態で、天井パネル141と天井骨131とがネジ孔加工(孔開け加工及びタップ加工)され、ビス160が天井パネル141及び天井骨131に形成されたネジ孔162に螺着されている。なお、天井パネル141及び天井骨131に始めからネジ孔162を形成しておく場合には、天井パネル141を配置する際のズレに起因してビス160がネジ孔162に螺着できなくなるおそれがある。このため、天井パネル141を配置した状態でネジ孔加工されるようになっている。
【0018】
しかし、上述したようなパネル接合構造において、天井パネル141と天井骨131とがネジ孔加工されるとき、又は天井パネル141と天井骨131とに形成された丸孔(図示省略)にセルフタップビス(図示省略)がネジ込まれるとき等には、切粉CHが発生する。この切粉CHは、ネジ孔162より車外側に侵入した場合には、屋根外板121と天井骨131との間に残り、鉄道車両の走行時の振動等によって飛散する。この結果、切粉CHが屋根外板121と天井骨131との間に配置された電子機器180や配線等に付着して、電子機器180の不具合・故障を引き起こすおそれがある。なお、この問題の対処方法の一つとして、従来においては、電子機器180を覆うカバー(図示省略)等を設けている。しかし、この場合には、電子機器180全体を覆うカバー等を新たに設ける必要があるため、手間及びコストがかかっていた。
【0019】
そこで、この実施形態のパネル接合構造においては、上記した問題に対処すべく、図4及び図5に示したように、天井骨31に固定部材50が固定されている。ここで、図4は、図1のC部分を拡大した断面図であり、図5は、図4のD−D断面図であって、天井パネル41を天井骨31に接合した状態を示した図である。図4及び図5に示したように、このパネル接合構造PNは、天井骨31と天井パネル41と固定部材50とを備えた構造であり、固定部材50がビス60の取付位置に設けられた構造である。なお、この実施形態においては、図1に示したように、天井骨31に6個の固定部材50が接合されているが、各固定部材50の作用効果はそれぞれ同様であるため、図5を代表して説明する。
【0020】
固定部材50は、図5に示したように、断面が矩形形状の中空パイプ51とスポンジ52とを用いて構成されている。中空パイプ51は、レール方向(図5の左右方向)に延びていて、両端部に断面が矩形形状のスポンジ52が詰められている。なお、中空パイプ51の両端部に詰める詰め物は、スポンジ52に限定されるものではなく、ウレタン、木材、樹脂等、詰め易いものに適宜変更可能である。また、詰め物を用いずに、中空パイプ51の両端部を溶接、カシメ、折り曲げても良い。こうして、中空パイプ51の両端部は塞がれていて、固定部材50に密閉された内部空間SPが形成されている。内部空間SPは、発生する切粉CHを閉じ込める空間である。この固定部材50では、ビス60の取付位置をレール方向に所定量変化できるように、幅寸法W(レール方向長さ)が35mmになっている。また、高さ寸法Hが14mmで、厚さ寸法Tが1.2mmになっている。
【0021】
固定部材50は、天井骨31と天井パネル41とがビス止めによって接合される前に、天井骨31に固定されている。具体的には、固定部材50の下側の周壁50aは、天井骨31の水平部分31aの天井パネル41側と反対側の面に、スポット溶接によって固定されている。なお、固定部材50と天井骨31との固定方法は、接合強度を確保するために溶接が好ましいが、スポット溶接に限定されるものではなく、例えばアーク溶接等、適宜変更可能である。固定部材50の天井骨31に対する溶接位置は、天井骨31と天井パネル41とがネジ孔加工される位置に対応して、決められる。この固定部材50は、天井骨31に対して溶接し易くなるように、天井骨31と同じ種類の金属材料、例えばSPHC,SUS304,SS400等で構成されている。
【0022】
こうして、固定部材50が天井骨31に固定された状態で、図5に示したように、天井パネル41が天井骨31にビス止めによって接合されるようになっている。具体的には、先ず、天井パネル41と天井骨31の水平部分31aとの間に、ライナー61を介装する。ライナー61は、天井パネル41が正確に水平方向に延びるように、天井パネル41の水平度合い(平面度)を調整するとともに、天井の高さを調整するためのものである。この実施形態において、天井パネル41は、メラミン樹脂から成る化粧板で構成されている。ライナー61を介装した後、天井パネル41とライナー61と天井骨31の水平部分31aと固定部材50の周壁50aとに、ネジ孔加工(孔開け加工及びタップ加工)を施して、ネジ孔62を形成する。その後、ビス60をネジ孔62に螺着することで、天井パネル41が天井骨31の水平部分41aに接合される。なお、セルフタップビスを用いる場合には、ネジ孔加工では孔開け加工のみを施して、丸孔を形成する。
【0023】
このようにして、固定部材50は、図5に示したように、天井骨31の水平部分31a及び周壁50aを車外側に突き抜けたビス60の先端部分60aを包み込むようになっている。即ち、ネジ孔62から突出するビス60の先端部分60aが固定部材50の密閉された内部空間SPに位置するようになっている。このため、上述したようにネジ孔62を形成する際に(セルフタップビスの場合には、丸孔にセルフタップビスを螺着するときに)、切粉CHがネジ孔62より車外側に侵入しても、固定部材50が切粉CHを内部に閉じ込める。従って、切粉CHが固定部材50の外側に飛散することがなく、屋根外板21と天井骨31との間に配置された電子機器(図示省略)や配線等に付着することがない。
【0024】
また、この実施形態においては、天井パネル41,ライナー61,天井骨31に形成されたネジ孔62だけでなく、固定部材50の周壁50aに形成されたネジ孔62にも、ビス60が螺着されている。このため、固定部材50は、ビス60に対するネジ座として機能していて、ビス60の補強部材になっている。即ち、ネジ座として機能する固定部材50は、天井パネル41と天井骨31との接合強度を大きくするとともに、ビス60の緩みを防止している。また、この実施形態においては、従来のパネル接合構造に比べて、中空パイプ51とスポンジ52とで構成された固定部材50を用いるだけであるため、簡単な構成で安価に実施することができる。
【0025】
ここで、内側パネル40と骨部材30との接合手順について説明する。内側パネル40と骨部材30との接合においては、天井部に配置される天井パネル41と天井骨31との接合が最後に行われる。即ち、先ず、図1の仮想線で示したように、第1側パネル42,第2側パネル43,第3側パネル44が、第1側骨32,第2側骨33,第3側骨34に車内側からビス止めされる。また、図5に示したように、妻パネル45がライナー63を用いて天井骨31の鉛直部分31bに車内側からビス止めされる。こうして、天井パネル41以外の内側パネル40が接合された後に、天井パネル41及び天井骨31に対してネジ孔加工及びビス止めが行われる。なお、この実施形態において、妻パネル45の車内側(図5左側)が、メラミン樹脂から成る化粧板で構成され、妻パネル45の車外側(図5右側)が、アルミニウムから成る補強板で構成されている。
【0026】
ところで、上述した説明から明らかなように、天井パネル41を接合するためのネジ孔加工時には、天井パネル41以外の内側パネル40が、既に骨部材30に固定されている。このため、従来において、ネジ孔加工時に屋根外板21と天井骨31との間に侵入した切粉CHを除去するためには、天井パネル41以外の内側パネル40を骨部材30から取り外し、屋根外板21と天井骨31との間を視認できる状態にして、掃除する必要があった。即ち、屋根外板21と天井骨31との間に侵入した切粉CHを除去する場合には、屋根外板21以外の外板20と骨部材30との間に侵入した切粉CHを除去する場合に比べて、多くの内側パネル40を取り外す作業が必要であり、非常に手間がかかっていた。
【0027】
そこで、この実施形態のパネル接合構造PNは、特に天井部に適用されるようになっていて、骨部材30のうち、天井骨31の水平部分31aに固定部材50が接合されている。これにより、固定部材50が屋根外板21と天井骨31との間に侵入した切粉CHを内部に閉じ込めるため、この切粉CHを除去する必要がなくなり、従来のように多くの内側パネル40を取り外す手間を省くことができた。
【0028】
上記のように構成されたパネル接合構造PN、及び固定部材50の作用効果について説明する。
この実施形態によれば、天井パネル41を天井骨31に接合する前に、固定部材50は、天井骨31の水平部分31aにおける内側パネル41側と反対側の面に固定されている。そして、ビス60が、天井パネル41及び天井骨31とに形成されたネジ孔62に車内側から螺着されたときに、固定部材50は、図5に示したように、ネジ孔62から車外側に突き抜けたビス60の先端部分60aを包み込むようになっている。このように固定部材50が予め固定されているため、天井パネル41と天井骨31にネジ孔62を形成するときに発生する切粉CHが、ネジ孔62より車外側に侵入しても、固定部材50が切粉CHを内部に閉じ込める。従って、切粉CHが屋根外板21と天井骨31との間で飛散することを防止でき、屋根外板21と天井骨31との間に配置された電子機器の不具合・故障を防止することができる。
【0029】
次に、第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態における固定部材70が天井骨31に接合された状態を示した図である。固定部材70は、図6に示したように、天井骨31の水平部分31aから車外側に突き抜けたビス60の先端部分60aを包み込むようになっている。また、固定部材70は、中空パイプ51の孔部51aが挿入部材としてのスポンジ72によって塞がれたものである。なお、中空パイプ51の孔部51aを塞ぐ挿入部材は、スポンジ72に限定されるものではなく、ウレタン、樹脂、プラスチック、ウール等適宜変更可能である。固定部材70の周壁70aは、天井骨31の水平部分31aにおける天井パネル41側と反対側の面に、スポット溶接によって固定されている。
【0030】
そして、天井パネル41とライナー61と天井骨31の水平部分31aと固定部材70の周壁70aとに、ネジ孔加工(孔開け加工及びタップ加工)により、ネジ孔62が形成されるとともに、スポンジ72にビス60の先端部分60aを挿入する挿入穴72aが形成される。なお、スポンジ72(挿入部材)が極めて柔らかい低反発弾性部材で構成され、ビス60の先端部分60aがスポンジ72に突き刺さり易い場合には、挿入穴72aを形成しなくて良い。その後、ビス60をネジ孔62に螺着することで、天井パネル41が天井骨31の水平部分31aに接合される。
【0031】
このようにして、図6に示したように、ネジ孔62から突出するビス60の先端部分60aがスポンジ72の中に挿入されるようになっている。このことから、上述したようにネジ孔62を形成する際に、固定部材70のスポンジ72が、切粉CHを内部に閉じ込めたり、切粉CHをネジ孔62から車内側へ押し戻そうとする。従って、切粉CHが屋根外板21と天井骨31との間で飛散することを防止できる。第2実施形態のその他の作用効果は、第1実施形態の作用効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0032】
次に、第3実施形態について説明する。図7は、第3実施形態における固定部材80が天井骨31に接合された状態を示した図である。固定部材80は、図7に示したように、天井骨31の水平部分31aから車外側に突き抜けたビス60の先端部分60aを包み込むようになっている。この固定部材80は、全体がスポンジ82(単一部材)で構成されている。なお、固定部材80を構成する単一部材は、スポンジ82に限定されるものではなく、ウレタン、樹脂、プラスチック、ウール等適宜変更可能である。固定部材80の底面80aは、天井骨31の水平部分31aにおける天井パネル41側と反対側の面に、接着材を用いて固定(接着)されている。
【0033】
そして、天井パネル41とライナー61と天井骨31の水平部分31aとに、ネジ孔加工(孔開け加工及びタップ加工)により、ネジ孔62が形成されるとともに、スポンジ82にビス60の先端部分60aを挿入する挿入穴82aが形成される。なお、スポンジ82が極めて柔らかい低反発弾性部材で構成され、ビス60の先端部分60aがスポンジ82に突き刺さり易い場合には、挿入穴82aを形成しなくて良い。その後、ビス60をネジ孔62に螺着することで、天井パネル41が天井骨31の水平部分31aに接合される。
【0034】
このようにして、図7に示したように、ネジ孔62から突出するビス60の先端部分60aがスポンジ82の中に挿入されるようになっている。このことから、上述したようにネジ孔62を形成する際に、固定部材80のスポンジ82が、切粉CHを内部に閉じ込めたり、切粉CHをネジ孔62から車内側へ押し戻そうとする。従って、切粉CHが屋根外板21と天井骨31との間で飛散することを防止できる。また、この第3実施形態によれば、固定部材80はスポンジ82のみ(単一部材)で構成されているため、第1実施形態より簡単な構成で安価に実施することができる。
【0035】
次に、第4実施形態について説明する。図8は、第4実施形態における固定部材90を示した斜視図である。固定部材90は、図8に示したように、断面がC字状のCチャンネル91とスポンジ92とを用いて構成されていて、Cチャンネル91の両端部に、矩形形状のスポンジ92が詰められている。固定部材90の左壁の下端部90a、及び右壁の下端部90bは、天井骨31の水平部分31aにおける内側パネル41側と反対側の面(図5参照)に、スポット溶接によって固定されている。固定部材90のその他の構成は、第1実施形態の固定部材50の構成と同様であるため、その説明を省略する。また、第4実施形態の作用効果は、第1実施形態の作用効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0036】
以上、本発明に係るパネル接合構造及び固定部材について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、第1、第2、第4実施形態において、固定部材50、70、90が天井骨31に溶接されたが、固定部材50、70、90と天井骨31との固定方法は溶接に限られるものではなく、例えば、接着、ビス止め、リベット止め等、適宜変更可能である。
【0037】
また、各実施形態において、固定部材50、70、80、90を天井骨31の水平部分31aに固定したが、固定部材50、70、80、90を更に天井骨31の鉛直部分31bに固定しても良い。
また、各実施形態において、パネル接合構造PNを内部骨組構造1の天井部に適用した、即ち、固定部材を天井骨31に固定した。しかしながら、固定部材を固定する骨部材は、天井骨31に限定されるものではなく、例えば、第1側骨32、第2側骨33、第3側骨34であっても良く、適宜変更可能である。
また、各実施形態において、パネル接合構造PNを妻構の内部骨組構造1に適用したが、パネル接合構造PNの適用箇所は、側構、台枠、屋根構の内部骨組構造であっても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 内部骨組構造
10 台枠
11 床面パネル
20 外板
21 屋根外板
30 骨部材
31 天井骨
31a 水平部分
31b 鉛直部分
40 内側パネル
41 天井パネル
50 固定部材
50a 周壁
51 中空パイプ
52 スポンジ
60 ビス
60a 先端部分
61 ライナー
62 ネジ孔
SP 内部空間
PN パネル接合構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外板を車内側から支持する骨部材に対して、内側パネルがビスによって車内側から接合される鉄道車両のパネル接合構造において、
前記骨部材の前記内側パネル側と反対側の面に固定され、前記骨部材を車外側に突き抜けたビスの先端部分を包み込み、前記内側パネル及び前記骨部材にネジ孔を形成する際に発生する切粉を閉じ込める固定部材を有するものであることを特徴とする鉄道車両のパネル接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載する鉄道車両のパネル接合構造において、
前記固定部材は、
中空パイプの両端部が塞がれ、
前記骨部材に接合された周壁に前記ビスが螺着するネジ孔が形成されたものであることを特徴とする鉄道車両のパネル接合構造。
【請求項3】
請求項1に記載する鉄道車両のパネル接合構造において、
前記固定部材は、
中空パイプの孔部が挿入部材によって塞がれ、
前記骨部材に接合された周壁に前記ビスが螺着するネジ孔が形成され、
前記挿入部材の中に前記ビスの先端部分が挿入されたものであることを特徴とする鉄道車両のパネル接合構造。
【請求項4】
請求項1に記載する鉄道車両のパネル接合構造において、
前記固定部材は、
底面が前記骨部材に固定されて、前記ビスの先端部分が中に挿入される単一部材であることを特徴とする鉄道車両のパネル接合構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載する鉄道車両のパネル接合構造において、
前記骨部材及び前記内側パネルは、鉄道車両の天井部に配置された天井骨及び天井パネルであり、
前記固定部材は、前記天井骨の前記天井パネル側と反対側の面に固定されていることを特徴とする鉄道車両のパネル接合構造。
【請求項6】
外板を車内側から支持する骨部材に対して、内側パネルを車内側からビスによって接合する接合部において、前記骨部材の前記内側パネル側と反対側の面に固定されるものであって、
前記骨部材を車外側に突き抜けたビスの先端部分を包み込み、前記内側パネル及び前記骨部材にネジ孔を形成する際に発生する切粉を閉じ込めるものであることを特徴とする鉄道車両パネル接合構造の固定部材。
【請求項7】
請求項6に記載する鉄道車両パネル接合構造の固定部材において、
中空パイプの両端部が塞がれ、
前記骨部材に接合された周壁に前記ビスが螺着するネジ孔が形成されるものであること特徴とする鉄道車両パネル接合構造の固定部材。
【請求項8】
請求項6に記載する鉄道車両パネル接合構造の固定部材において、
中空パイプの孔部が挿入部材によって塞がれ、
前記骨部材に接合された周壁に前記ビスが螺着するネジ孔が形成され、
前記挿入部材の中に前記ビスの先端部分が挿入されるものであることを特徴とする鉄道車両パネル接合構造の固定部材。
【請求項9】
請求項6に記載する鉄道車両パネル接合構造の固定部材において、
底面が前記骨部材に固定されて、前記ビスの先端部分が中に挿入される単一部材であることを特徴とする鉄道車両パネル接合構造の固定部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−218449(P2012−218449A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82349(P2011−82349)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)