説明

鉄鉱石ペレットの製造方法

【課題】グレートキルン方式ペレット製造装置において、グレート炉の予熱室でのバースティング発生を確実に予防しうるペレット製造方法を提供する。
【解決手段】予熱室5の上部空間であって、予熱室内の雰囲気温度を測定する予熱室温度計44とは別に、該予熱室5の入口部に別途設けられた予熱室入口温度計43で測定された雰囲気温度Tと、離水室4の出口部であってグレート2直下に設けられた離水室出口火格子温度計42で測定されたガス温度Tとの温度差ΔT=T−Tが、過去の操業実績に基づき予め定めておいた許容温度差ΔTmaxより小さくなるように、現状の操業条件(例えば、離水室バーナ31の燃焼量、予熱室バーナ21の燃焼量、グレート移動速度およびペレット層厚の少なくとも一つ)を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉用原料などに使用される鉄鉱石ペレットを製造するグレートキルン方式による鉄鉱石ペレット製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鉱石ペレットをつくる製造工程は、乾燥、離水、予熱、焼成および冷却の各工程からなり、この製造工程の実施に用いられるグレートキルン方式鉄鉱石ペレット製造装置(以下、単に「グレートキルン方式焼成装置」という。)として、従来、図1の縦断面図に示すようなものが知られている。同図に示すように、このグレートキルン方式焼成装置は、グレート炉1、ロータリキルン(以下、単に「キルン」ともいう。)9およびアニュラクーラ11を備えている。
【0003】
グレート炉1は、無端状をなすトラベリング・グレート(以下、単に「グレート」という。)2によりこのグレート2上に敷かれた生ペレットGPを、乾燥室3、離水室4、予熱室5の順に各室の長手方向に移動させつつ、加熱用ガスの下向き通風によって乾燥・離水・予熱してペレット(以下、「予熱ペレット」という。)にキルン9での転動に耐えうる強度を付与するものである。
【0004】
生ペレットGPは、主原料としての鉄鉱石に副原料としての石灰石、ドロマイト等を配合し、さらに水分を添加して造粒されたものである。
【0005】
先ず、乾燥室3では、水分含有量8〜9質量%程度の生ペレットGPを250℃程度の雰囲気温度で乾燥させる。次いで、離水室4では、乾燥された生ペレットを450℃程度に昇温し、主に鉄鉱石中の結晶水を分解除去する。さらに、予熱室では、ペレットを1100℃程度まで昇温し、石灰石、ドロマイト等に含まれる炭酸塩を分解しCOを除去するとともに、鉄鉱石中のマグネタイトを酸化させる。このような工程を経て、キルン9での転動に十分耐えうる強度を有する予熱ペレットを作製することで、グレートキルン方式焼成装置の生産性を高めることが可能となる。
【0006】
ロータリキルン9は、このグレート炉1に直結されており、勾配をつけた円筒状回転炉であって、出口側に配設されたキルンバーナ10による燃焼により、グレート炉1の予熱室5から装入された前記乾燥・離水・予熱されたペレットを焼成する一方、そのペレット焼成用に使用された高温の燃焼排ガスを加熱用ガスとして予熱室5へ送り込むものである。従来は、キルンバーナ10により微粉炭、コークス炉ガス等の燃料をロータリキルン9内に吹き込み、燃焼用空気とともに燃焼させるようにしている。
【0007】
また、予熱室5の上部には、ロータリキルン9からのキルン燃焼排ガスを昇温させるためのキルン燃焼排ガス昇温手段として、予熱室バーナ21が設けられている。予熱室バーナ21の燃料としてコークス炉ガス(以下、「COG」と略称する。)や微粉炭が用いられ、予熱室5内でこのCOGや微粉炭をキルン燃焼排ガス中の残留酸素で燃焼させることにより、キルン燃焼排ガスを昇温させるようにしている。こうすることで、予熱ペレットの強度を高めることができ、操業不安定の原因となるロータリキルン9内におけるキルンリング(ペレット粉化物がキルン内壁レンガ表面に岩状に付着したもの)の発生を防止するようにしている(特許文献1,2参照)。
【0008】
6は予熱室用風箱群である。グレート2の下方空間はペレット移動方向に沿って複数個の部屋に仕切られており、これらの部屋が風箱と呼ばれている。つまり、予熱室用風箱群6は複数個の風箱よりなるものであり、予熱室5に対してその長手方向(ペレット移動方向)に沿って一列に例えば9個の風箱が並設されている。7は予熱室用吸引ファンで、吸引風量(下向通風量)調節用のファンダンパ(図示省略)を有し、キルン排ガスを加熱用ガスとしてグレート2上のペレット層、風箱群6を通して下向きに吸引し、次の離水室4へ送り出すものである。
【0009】
また、16は離水室用風箱群であり、離水室4に対してその長手方向(ペレット移動方向)に沿って一列に例えば5個の風箱が並設されている。17は離水室用吸引ファンで、吸引風量(下向通風量)調節用のファンダンパ(図示省略)を有し、予熱室排ガスAを加熱用ガスとして離水室4に導き、この加熱用ガスAをグレート2上のペレット層、風箱群16を通して下向きに吸引し、次の乾燥室3へ送り出すものである。
【0010】
上記予熱室バーナ21設置による予熱室内雰囲気温度の制御技術は、ペレット生産速度が一定で、生ペレットGP中の結晶水含有量も一定の場合には、予熱ペレットの強度を高めるのに非常に有効な手段である。
【0011】
ところで、近年の鉄鋼需要の増大に対応すべくペレットのさらなる増産が要請されている。また、近年における鉄鉱石原料の劣質化に伴ってペレットへの高結晶水鉱石の配合割合の増加も要請されている。しかしながら、これらの要請に対応すべく、単にペレット生産速度を増大させた場合や、ペレット生産速度を維持しつつ単に生ペレットGP中の結晶水含有量を高めた場合には、離水室4内雰囲気温度を従来どおりに維持したままで操業を行うと、ペレット(特に下層部のペレット)は、離水室4内で十分に結晶水が分解除去されなくなるため、ペレット内部に結晶水を残存したまま、より高温の予熱室5内に持ち込まれる。予熱室内に持ち込まれたペレットは急速昇温し、ペレット内部に残存する結晶水が急速に分解し、ペレット内部の水蒸気圧が急激に上昇してペレットのバースティング(爆裂)が発生する。バースティングで発生した粉によりペレット層の通気性が悪化し均一な加熱が阻害され、ペレット層の圧損が増大するなど操業が不安定化するとともに、予熱ペレットの強度が低下する。この結果、予熱室5内で発生した粉がキルン9内に持ち込まれるとともに、強度の低い予熱ペレットがキルン9内で転動により粉化するため、キルンリングが形成され、操業が継続できなくなる。したがって、上記予熱室5内でのバースティングを回避するために、結局はペレット生産速度を低下せざるを得なかった。
【0012】
そこで、出願人は、予熱室5からの排ガスを昇温させることで、増産時においても離水室4にてペレットから結晶水が十分に除去できるものと考え、離水室4にもバーナ(以下、「離水室バーナ」という。)31を設けることとした(特願2008−84178号参照)。しかしながら、離水室バーナ31の設置後においても予熱室5内でのバースティング発生を完全に防止するに至っていないのが現状である。
【0013】
ここで、発明者らは、予熱室5内でのバースティング発生は、予熱室5のペレット出口部にある、最もキルン9寄りの風箱内の圧力(以下、「予熱室風箱圧力」という。)PPHWBの変動により検知できることを見出した。図2は、一定操業条件下における予熱室風箱圧力PPHWBの経時的な変動の様子を示す一例であるが、予熱室風箱圧力PPHWBは、通常−340〜−380mmAq(ゲージ圧、以下同じ。ただし、1mmAq=9.80665Paである。)の間を変動しているのに対し、突然急激に低下し始め、−400mmAqよりも低くなってしまう場合が認められる。このように、予熱室風箱圧力PPHWBが通常より大幅に低下してしまうのは、予熱室5のペレット層内でバースティングが発生し、ペレット層の通気性が悪化して圧損が急激に増大したためと考えられる。
【0014】
したがって、予熱室風箱圧力PPHWBの変動を常時モニターすることにより、予熱室4内におけるバースティング発生を検知できることがわかったが、その検知は発生の事後のものであるので、事前にバースティングの発生を確実に防止しうる手段の開発が強く要請されていた。
【特許文献1】特開平11−325740号公報
【特許文献2】特開2005−60762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、グレートキルン方式ペレット製造装置において、グレート炉の予熱室内でのバースティング発生を確実に予防しうるペレット製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明者らは、予熱室でのバースティング発生には、離水室から予熱室へ持ち込まれた際におけるペレットの昇温速度が最も影響すると考え、先ず、以下のラボ試験にてその影響について調査を行った。
【0017】
まず、出願人の加古川製鉄所内に設置されているペレット製造装置で使用されている配合原料を用い、タイヤ型ペレタイザにて粒径10〜12mm、水分含有量が約8.5質量%の生ペレットに造粒した。そして、上記ペレット製造装置のグレートにおける熱電対流し(下記参照)で得られたペレット下層部の温度パターンを参考にして、生ペレットを小型乾燥器にて105℃で20分間乾燥して水分含有量が約0.2質量%の乾燥ペレットとした後(乾燥室相当)、この乾燥ペレットを小型乾燥器にてさらに300℃で5分間加熱し、離水ペレットとした(離水室相当)。そして、この離水ペレットを所定の雰囲気温度に調整した小型加熱炉中に装入し2分間保持して予熱ペレットとし(予熱室相当)、ペレット直上にセットした熱電対で測定された温度推移を線形近似してペレットの昇温速度を求めるとともに、予熱ペレットの5mm以下の篩下の質量割合を測定してこれを予熱ペレットの粉率とし、この予熱ペレットの分率によりバースティング発生の有無を判断した。
【0018】
図3に、ペレットの昇温速度と予熱ペレットの粉率との関係を示す。同図に示すように、ペレットの昇温速度が一定値(6〜7℃/s)以下では予熱ペレットの粉率は常に0.5質量%未満に抑えられるのに対し、ペレットの昇温速度が上記一定値を超えると予熱ペレットの粉率が急激に上昇し、バースティングが発生し始めることがわかった。
【0019】
したがって、上記ラボ試験の結果より、離水室から予熱室へ持ち込まれた際におけるペレットの昇温速度を一定値以下に制御することで、予熱室でのバースティング発生を防止しうることが確認できた。
【0020】
しかしながら、実機のペレット製造装置においては、移動するグレート上のペレット層の昇温速度を直接測定することは容易でない。例えば、金網製バスケット内に生ペレットを充填し、その生ペレット充填層内に長尺の熱電対を挿し込んだものをグレート上に載置し、グレートの移動に伴うペレット層の温度推移を測定すること(以下、「熱電対流し」と呼ぶ。)が、スポット的に行われているものの、非常にコストや手間がかかるため、常時実施できる手段ではない。
【0021】
そこで、発明者らは、ペレット層の昇温速度を直接測定する代わりに、ペレット層の昇温速度に対応するパラメータとして、常時かつ簡易に測定できる、予熱室入口温度Tと離水室出口火格子温度Tとの温度差ΔT=T−Tを用いれば良いのではないかと考えた。
【0022】
まず、発明者らは、離水室出口火格子温度Tと、熱電対流しで測定されたペレット下層部の温度との関係を調査した(なお、ペレット層は下向き通風で加熱されるため、ペレット下層部が最も昇温が遅れ、バースティングが発生しやすいことから、通常、熱電対流しではペレット下層部の温度を測定している。)。図4に示すように、離水室出口火格子温度測定計としての熱電対42は、その高さ方向の位置がペレット下層部にできるだけ近い位置としてグレート2直下200mmの位置に、熱電対流し用熱電対は、ペレット下層部の高さ方向中央位置であるグレート2直上35mmの位置に、それぞれ設置した。そして、熱電対流し用熱電対が離水室出口火格子温度計42の直上の位置に来たときの、双方の熱電対(温度計)でそれぞれ測定された温度を比較したところ、下記表1に示すように、離水室出口火格子温度Tは、熱電対流しで測定されたペレット下層部の温度より少し低目となるものの、その温度差は常に25℃前後とほぼ一定であった。したがって、離水室出口火格子温度Tにより、ペレット下層部の温度を評価できることが確認できた。
【表1】

【0023】
そこで、出願人の加古川製鉄所内に設置されたペレット製造装置において、上記予熱室入口温度Tと離水室出口火格子温度Tとの温度差ΔTと、予熱室風箱圧力PPHWBとの関係を調査した結果、図5に示すような関係が得られた。
【0024】
同図に示すように、温度差ΔTと予熱室風箱圧力PPHWBとの間には、全体として強い相関関係が認められる(図中の直線は回帰直線である。)ものの、温度差ΔTが高くなるにつれて予熱室風箱圧力PPHWBが、回帰直線から大きく低下するケース(バースティング発生に相当)が増加していることがわかる。
【0025】
したがって、温度差ΔTを所定温度(例えば、850℃)以下に維持することで、予熱室風箱圧力PPHWBの大幅な低下の確率を十分に小さくすることができ、バースティングの発生を予防しうる可能性があることがわかった。
【0026】
上記知見に基づき、以下の発明を完成するに至った。
【0027】
請求項1に記載の発明は、鉄鉱石ペレットをグレートで移動させつつ、乾燥室、離水室および予熱室で順次加熱した後、キルンバーナを備えたロータリキルンで焼成するグレートキルン方式の鉄鉱石ペレット製造方法において、前記予熱室の上部空間であって、前記予熱室内の雰囲気温度を測定する温度計(以下、「予熱室温度計」という。)とは別に、該予熱室のペレット入口部に別途設けられた温度計(以下、「予熱室入口温度計」という。)で測定された雰囲気温度(以下、「予熱室入口温度」という。)Tと、前記離水室のペレット出口部であって前記グレートの直下に設けられた温度計(以下、「離水室出口火格子温度計」という。)で測定されたガス温度(以下、「離水室出口火格子温度」という。)Tとの温度差ΔT=T−Tが、過去の操業実績に基づき予め定めておいた許容温度差ΔTmaxより小さくなるように、現状の操業条件を調整することを特徴とする鉄鉱石ペレットの製造方法である。
【0028】
請求項2に記載の発明は、前記現状の操業条件の調整が、前記離水室の上部に設けられたバーナ(以下、「離水室バーナ」という。)の燃焼量、前記予熱室の上部に設けられたバーナ(以下、「予熱室バーナ」という。)の燃焼量、グレート移動速度およびペレット層厚の少なくとも一つの調整である請求項1に記載の鉄鉱石ペレットの製造方法である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、予熱室入口温度Tと、離水室火格子温度Tとの温度差ΔT=T−Tが、過去の操業実績に基づき予め定めておいた許容温度差ΔTmaxより小さくなるように、現状の操業条件を調整することで、予熱室入口部におけるペレットの昇温速度を抑制することにより該予熱室内でバースティングが発生することを確実に防止できるようになった。
【0030】
この結果、本発明を適用することで、ペレット増産ないし高結晶水鉱石増配が確実に達成できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、上記[背景技術]のところで説明に使用した図1を参照しつつ詳細に説明する。
【0032】
〔実施形態〕
図1に示すように、予熱室排ガスAの温度を上昇させるために、離水室4には、気体燃料として例えばCOGを離水室5内に吹き込むための離水室バーナ31を複数本設けている。離水室バーナ31の燃料として、微粉炭でなく、気体燃料を採用したのは、離水室4に吹き込まれる予熱室排ガスAの温度は400〜450℃程度と低いため、微粉炭の場合は着火源がないと燃焼が継続しないのに対し、気体燃料の場合は着火源がなくても自動的に燃焼が継続することによる。また図1に例示するように、離水室バーナ31を天井壁4aに設置する場合は、微粉炭バーナを用いると、バーナフレームが長くなるため、ペレット層の最表面のペレットが過熱され、バースティングが発生しやすくなるので、この点からもバーナフレームの短い気体燃料を用いるのがよい。
【0033】
以下の説明において、「離水室入口」および「離水室出口」の「入口」および「出口」は、ペレットの移動方向を基準とするものである。上記複数本のバーナ31は、離水室入口4bを基点として(1/3)LDH〜0.98LDH(LDH:離水室全長)の間に配設するのが推奨される。離水室入口4bを基点として(1/3)LDH未満の位置にバーナ31を設置すると、離水室入口4b近傍の雰囲気温度が上昇し、乾燥室3内で十分に乾燥しきれずに付着水を残留したままペレットが離水室4に持ち込まれたときに、バースティングが発生しやすくなるためである。一方、離水室入口4bを基点として0.98LDHを超える位置(すなわち、離水室出口4cを基点として0.02LDH未満の位置)にバーナ21を設置すると、離水室出口4cの隔壁にバーナ21が近づきすぎでバーナフレームからの輻射熱により該隔壁の耐火物が損傷されやすくなるためである。上記複数本のバーナ31は、離水室入口4bを基点として(1/2)LDH〜0.95LDHの間に配設するのがさらに好ましく、(1/3)LDH〜0.92LDHの間に配設するのが特に好ましい。
【0034】
そして、離水室4のペレット出口部(例えば、離水室4の最もキルン9寄りの風箱のグレート移動方向中央位置)であってグレート2直下の位置に、離水室出口火格子温度計としての熱電対42を設置する。また、予熱室温度計44とは別に、予熱室5のペレット入口部(例えば、予熱室5の最も入口側の風箱のグレート移動方向中央位置)であって、ペレット層の上部空間に、予熱室入口温度計としての熱電対43を設置する。ここで、離水室4のペレット出口であってグレート2直下の位置に熱電対42を設置することとしたのは、既述したように、離水室4出口部でのペレット最下層の温度と最も密接に対応する温度をできるだけ精度良く測定するためである。また、予熱室5の入口部であってペレット層の上部空間に熱電対43を設置することとしたのは、予熱室5に持ち込まれた直後のペレット層を加熱することとなる雰囲気ガス温度をできるだけ精度良く測定するためである。ここに、上記温度測定精度を十分に確保するため、「離水室4のペレット出口部」とは、離水室4出口4cから0.2LDH(より好ましくは0.1LDH)の範囲を意味し、「予熱室5のペレット入口部」とは、予熱室5入口から0.2LPH(より好ましくは0.1LPH;ただし、LPH:予熱室全長)の範囲を意味するものとする。
【0035】
そして、これらの熱電対42および43にて、離水室出口火格子温度Tおよび予熱室入口温度Tを常時測定する。
【0036】
一方、上記[課題を解決するための手段]のところで既述したように、予熱室5の最もキルン9寄り風箱内に設置された圧力計(予熱室風箱圧力計)41にて予熱室風箱圧力PPHWBを常時測定する。なお、予熱室5の最もキルン9寄り風箱内の圧力を測定することとしたのは、予熱室5内のどの位置でバースティングが発生しても、それによる圧力変化を検知できるようにするためである。
【0037】
そして、予め、過去に実施した操業にて収集した、温度差ΔTと予熱室風箱圧力PPHWBとの関係を、例えば図5のような散布図にプロットし、その図を用いて許容温度差ΔTmaxを定めておく。例えば、図5の関係がある場合には、既述したように、回帰直線から大きく外れるプロットが比較的少ない850℃を許容温度差ΔTmaxとすればよい。
【0038】
そして、現状の操業において測定したTおよびTからそれらの温度差ΔT(=T−T)を算出し、この温度差ΔTが上記のようにして予め定めた許容温度差ΔTmaxより小さくなるように、現状の操業条件を調整すればよい。
【0039】
上記現状の操業条件を調整するための具体的手段としては、離水室バーナ31の燃焼量、予熱室バーナ21の燃焼量、グレート移動速度、ペレット層厚などを調整する手段を用いればよく、これらの手段をそれぞれ単独で用いてもよいし、複数の手段を併用してもよい。
【0040】
上記のようにして、温度差ΔTを許容温度差ΔTmaxより小さくなるように、現状の操業条件を調整することで、予熱室風箱圧力PPHWBの大幅な低下の確率が小さくなり、予熱室5内におけるバースティングの発生をより確実に予防することが可能となる。
【0041】
この結果、ペレット層の良好な通気性が維持されて均一な加熱が確保され、予熱ペレットの強度が高まる。そして、この強度の高い予熱ペレットはキルン9内で転動を受けても粉化しにくく、キルンリングの生成が防止されることとなり、より安定して、高生産性でかつ高品質のペレット製造が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施に係るグレートキルン方式鉄鉱石ペレット製造装置の一例を示す縦断面図である。
【図2】予熱室風箱圧力の経時的な変動の様子を示すグラフ図である。
【図3】ペレットの昇温速度と予熱ペレットの粉率との関係を示すグラフ図である。
【図4】熱電対流し用熱電対および離水室出口火格子温度計の高さ方向における位置関係を示す縦断面図である。
【図5】予熱室入口温度Tと離水室出口火格子温度Tとの温度差ΔTと、予熱室風箱圧力PPHWBとの関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0043】
1…グレート炉
2…トラベリング・グレート(グレート)
3…乾燥室
4…離水室
4a…離水室天井壁
4b…離水室入口
4c…離水室出口
5…予熱室
6…予熱室用風箱群
7…予熱室用吸引ファン
9…ロータリキルン
10…キルンバーナ
11…アニュラクーラ
16…離水室用風箱群
17…離水室用吸引ファン
21…予熱室バーナ
31…離水室バーナ
41…予熱室風箱圧力計
42…離水室出口火格子温度計
43…予熱室入口温度計
44…予熱室温度計
A…予熱室排ガス(加熱用ガス)
GP…生ペレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石ペレットをグレートで移動させつつ、乾燥室、離水室および予熱室で順次加熱した後、キルンバーナを備えたロータリキルンで焼成するグレートキルン方式の鉄鉱石ペレット製造方法において、
前記予熱室の上部空間であって、前記予熱室内の雰囲気温度を測定する温度計(以下、「予熱室温度計」という。)とは別に、該予熱室のペレット入口部に別途設けられた温度計(以下、「予熱室入口温度計」という。)で測定された雰囲気温度(以下、「予熱室入口温度」という。)Tと、前記離水室のペレット出口部であって前記グレートの直下に設けられた温度計(以下、「離水室出口火格子温度計」という。)で測定されたガス温度(以下、「離水室出口火格子温度」という。)Tとの温度差ΔT=T−Tが、過去の操業実績に基づき予め定めておいた許容温度差ΔTmaxより小さくなるように、現状の操業条件を調整することを特徴とする鉄鉱石ペレットの製造方法。
【請求項2】
前記現状の操業条件の調整が、前記離水室の上部に設けられたバーナ(以下、「離水室バーナ」という。)の燃焼量、前記予熱室の上部に設けられたバーナ(以下、「予熱室バーナ」という。)の燃焼量、グレート移動速度およびペレット層厚の少なくとも一つの調整である請求項1に記載の鉄鉱石ペレットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−24477(P2010−24477A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185045(P2008−185045)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】