説明

鉄骨の仮固定構造、鉄骨の仮固定方法

【課題】仮固定に用いる部材の取り外しが容易にでき、強風を受けても鋼管に傾きが生じるのを防止する。
【解決手段】上下に配置された一対の鋼管20を溶接接続する際にこれら一対の鋼管20を保持する構造は、一対の鋼管20の接続端部の対応する位置に間隔をあけて取り付けられた複数対のブラケット21と、伸長可能であるとともにその長さを固定可能な部材からなり、複数対のブラケット21の間に介装され、両端が対となるブラケット21と当接するように伸長した状態で長さが固定された第1の仮固定冶具60と、複数対のブラケット21が離間しないように拘束する第2の仮固定冶具70と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨を上下に溶接接続する際に、上側の鉄骨を下側の鉄骨に仮固定する構造及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、橋脚を施工する方法として、橋脚の内部に相当する位置に複数の鋼管を上下方向に連結しながら立設し、これら鋼管の周囲に縦主筋を配筋するとともに、縦主筋を囲繞するようにPCストランドを巻き付け、鋼管の上端に反力を取ってスリップフォームを上昇させながら、このスリップフォーム内にコンクリートを打設することで橋脚を構築するハイブリッドスリップフォーム工法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この工法において、鋼管を上下に連結する際には、上側の鋼管を下側の鋼管の上方に所定の隙間をあけて鉛直状態に仮固定した状態で、上記の隙間部分において溶接作業を行う。鋼管を仮固定する方法として、上下の鋼管に亘ってエレクションピースを溶接してこれら鋼管を連結する方法が考えられるが、エレクションピースにより連結してしまうと、鋼管の位置や傾斜を微調整することが難しい。
【0004】
これに対して、特許文献1には、鋼管の位置や姿勢を微調整しながら仮固定することが可能な方法が開示されている。この方法では、予め、連結する各鋼管の連結側端部の周囲に上下方向に開口するボルト孔が形成された複数のフランジブラケットを取付け、下側の鋼管のフランジブラケットのボルト孔にボルトを挿通させるとともに、このボルトにレベル調整用ナットを取り付けておく。そして、上側の鋼管を下側の鋼管上に設置し、ボルトを上側の鋼管に取り付けられたフランジブラケットのボルト孔に挿通させるとともに、レベル調整用ナットの高さを調整することで、上側の鋼管が鉛直になり、かつ、上下鋼管の間に溶接のための所定の隙間が形成されるように調整して仮固定する。この状態で、上下の鋼管の端部同士を溶接し、ボルトを外した後、ボルトが障害となって溶接できなかった部分を溶接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11―131423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された上記方法のように、ボルト及びレベル調整用ナットにより鋼管を仮固定した場合、溶接作業により鋼管に歪が生じてしまうとフランジブラケットと、ボルトとの間に大きな力が作用してボルトを取り外すことができなくなることがあり、その場合、ボルトを切断して撤去する必要があった。このようにボルトを切断してしまうと、鋼管を仮固定するための冶具を再利用できなくなってしまう。
【0007】
そこで、例えば、図10に示すように、上下の鋼管20の周囲に鉛直方向に延びるように板材からなる複数対のブラケット21を取付け、このブラケット21に開口21Aを設け、両端に開口161を有する伸縮部材160をこれらブラケット21の間に介装させるとともに、伸縮部材160の両端に形成された開口161及びブラケット21に形成された開口21Aに、ボルト170を水平方向に挿通させ、このボルト170にナット171を締め付けることで伸縮部材160の両端をブラケット21に固定することが考えられる。かかる構成によれば、伸縮部160を緩めることにより、溶接作業により鋼管20に歪みが生じても、これら位置調整用冶具を容易に取り外すことができる。しかしながら、取付け部分のボルト170と開口161の間には必然的に多少の空隙を設ける必要があり、鋼管20の上部に強風の影響などで横向きの大きな力が作用した場合に、両者間の隙間が変位して上側の鋼管20に傾きが生じてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、仮固定に用いる部材の取り外しが容易にでき、かつ、強風を受けた場合等にも鋼管などの鉄骨に傾きが生じるのを防止できる鉄骨の仮固定の構造及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の鉄骨の仮固定構造は、上側の鉄骨を下側の鉄骨に対して仮固定する構造であって、下側の鉄骨の上端部と、上側の鉄骨の下端部に上下に対向する位置に互いに間隔をあけてそれぞれ取付けられた複数対のブラケットと、前記ブラケットの各対の間に介装された伸長可能な部材からなり、両端が前記ブラケットと当接するように伸長した状態で長さが固定された第1の冶具と、前記ブラケットの各対に対して互いに引き寄せる向きの力を作用させる第2の冶具と、を備えることを特徴とする。
なお、本発明において、上側の鉄骨を下側の鉄骨に対して仮固定するとは、上下の鉄骨を溶接等で接続する際、接続作業に先立って、上側の鉄骨を下側の鉄骨に対して所定の位置及び姿勢に保持しておくことを意味する。
【0010】
上記の鉄骨の仮固定構造において、前記第1の冶具は、少なくとも両端部に螺条孔が形成された胴体部材と、前記胴体部の螺条孔に螺合する螺条部及び前記ブラケットと当接する当接部を備えた当接部材と、により構成され、前記当接部材の回転を拘束した状態で前記胴体部材を回転させることにより、伸縮するように構成されていてもよい。
【0011】
また、前記第2の冶具は、少なくとも両端に螺条孔が形成された胴体部材と、前記胴体部の螺条孔に螺合する螺条部及び前記ブラケットを保持可能な保持部を備えた保持部材と、により構成され、前記保持部材の回転を拘束した状態で前記胴体部材を回転させることにより、伸縮可能に構成されており、前記保持部により前記ブラケットを保持した状態で収縮させることで前記ブラケットの各対に対して互いに引き寄せる向きの力を作用させてもよい。
また、前記第2の冶具は前記鉄骨に対して前記第1の冶具の外側に取付けられていてもよい。
【0012】
また、本発明の仮固定方法は、上側の鉄骨を下側の鉄骨に対して仮固定する方法であって、下側の鉄骨の上端部と、上側の鉄骨の下端部に上下に対向する位置に互いに間隔をあけて複数対のブラケットを取付け、伸長可能な部材からなる第1の冶具を、前記ブラケットの各対の間にそれぞれ介装し、前記ブラケットと当接するように伸長させた状態で長さを固定し、前記ブラケットの各対に対して互いに引き寄せる向きの力を作用させる第2の冶具を取付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1の冶具により上側の鉄骨の荷重が下側の鉄骨に伝達され、また、第2の冶具により上下の鉄骨に引き寄せる向きの力が作用するため、上側の鉄骨を下側の鉄骨に対して仮固定できる。また、溶接完了時には、第1の冶具を収縮させ、第2の冶具により作用させる力をゆるめれば冶具を容易に取り外すことができる。さらに、鋼管の上部に強風等により横向きの大きな力が作用した場合であっても、第2の冶具が上下の鉄骨に取り付けられたブラケットが離間しないように拘束するため、鋼管に傾きが生じるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態のハイブリッドスリップフォーム工法により、橋脚を構築する方法を説明するための概略図である。
【図2】本実施形態のハイブリッドスリップフォーム工法で用いられる鋼管を示す図であり、(A)は正面図、(B)はI−I断面図である。
【図3】仮固定された鋼管の接続部を示す正面図である。
【図4】鋼管に取付けられた仮固定冶具を示す斜視図である。
【図5】(A)は、図3におけるI部の拡大図、(B)は(A)におけるI−I断面図、(C)は(A)におけるII−II断面図である。
【図6】第1の仮固定冶具の構成を示し、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図7】第2の仮固定冶具の構成を示し、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図8】強風などにより鋼管に水平力が作用した場合の仮固定された鋼管の接続端部を示す正面図である。
【図9】第1の仮固定冶具をブラケットに固定するボルトとして、先端部分のみネジの切られているタイプのボルトを用いた場合のブラケットと第1の仮固定冶具との接続部を示す図である。
【図10】鋼管を仮固定する方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の鉄骨の仮固定方法の一実施形態として、公知のハイブリッドスリップフォーム工法により橋脚を構築する際に上側の鋼管を下側の鋼管に対して仮固定する場合を例として説明する。
図1は、ハイブリッドスリップフォーム工法により、橋脚を構築する方法を説明するための概略図である。同図に示すように、ハイブリッドスリップフォーム工法では、まず、地盤を掘削し、掘削した部分に最下段の鋼管20を配置し、最下段の鋼管20の下端が埋設されるように基礎10を構築する。次に、鋼管20を上方に向かって順次溶接接続していく。また、これと並行して鋼管20の周囲に縦筋30を配筋する。そして、最上段の鋼管20の接続作業が完了したら、鋼管20の最上部に反力架台を設け、反力架台により吊持されるようにスリップフォーム装置を設置し、このスリップフォーム装置を上昇させながらコンクリートを打設していく。
【0016】
本実施形態では、ハイブリッドスリップフォーム工法において鋼管20の溶接接続する工程を以下に説明するようにして行う。
図2は、本実施形態のハイブリッドスリップフォーム工法で用いられる鋼管20を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)におけるI−I断面図である。同図に示すように、本実施形態で用いられる鋼管20は、上下端部(ただし、最下段の鋼管は上端部のみ)に周方向に間隔をあけて、複数のブラケット21が、鋼管20の軸方向に延びるように鋼管20の表面に対して垂直に取付けられている。
【0017】
上下の鋼管20を溶接接続するにあたり、まず、上側の鋼管20を下側の鋼管20の上方に溶接のための所定の隙間をあけて、上側の鋼管20のブラケット21が下側の鋼管20のブラケット21の真上に位置するように配置し、鉛直状態で仮固定する。
【0018】
図3は、仮固定された鋼管20の接続端部を示す正面図であり、図4は鋼管20に取付けられた仮固定冶具60,70を拡大して示す斜視図である。また、図5(A)は、図3におけるI部の拡大図、(B)は(A)におけるI−I断面図、(C)は(A)におけるII−II断面図である。
図3〜図5に示すように、上側の鋼管20は、上下の鋼管20のブラケット21に取り付けられた第1及び第2の仮固定冶具60、70により下側の鋼管20の上方に仮固定されている。また、図4及び図5に示すように、第2の仮固定冶具70は鋼管20に対して、第1の仮固定冶具60の外周側に取付けられている。
【0019】
図6は第1の仮固定冶具60の詳細な構成を示し、(A)は正面図、(B)は側面図である。同図に示すように、第1の仮固定冶具60は、胴体部61と、一対の把持部62とにより構成される。胴体部61は、軸方向に貫通する螺条孔61Aを有する六角柱状の部材である。また、把持部62は、コの字型に形成された把持部本体63に、表面に外周に螺条が形成された棒状の螺条部64が接続されてなる部材である。把持部本体63は、基底部63Cと、基底部63Cの両端に垂直に立設された一対の脚部63Aとにより構成される。各脚部63Aには、中心軸が一致するように開口63Bが形成されている。また、螺条部64は基底部63Cの中央に接続されている。そして、把持部62は、胴体部61の螺条孔61Aの両端部に螺条部64が螺合することで胴体部61に取付けられている。
【0020】
胴体部61に形成された螺条孔61Aの内周面には、一端部は右ネジの螺条が、他端部は左ネジの螺条が形成されている。また、一対の把持部62の螺条部64の表面に形成された螺条は一方が右ネジ、他方は左ネジであり、夫々螺条孔61Aのネジの向きが同じ側の端部に螺合している。
【0021】
かかる構成によれば、上下の把持部62の回転を拘束した状態で、胴体部61を一方向に回転させると、螺条孔61Aの上下のネジが逆向きとなっていることで、一対の把持部62は胴体部61から進出し、他方向に回転させると一対の把持部62は胴体部61内へ退行することとなる。
【0022】
図7は、第2の仮固定冶具70の構成を示し、(A)は正面図、(B)は側面図である。同図に示すように、第2の仮固定冶具70は、ターンバックル本体71と、一対の把持部72とにより構成される。ターンバックル本体71の両端には、夫々螺条孔71Aが形成されており、これら螺条孔71Aは一方が右ネジ、他方が左ネジとなっている。
【0023】
把持部72は、矩形環状に形成された枠部73に、外周に螺条が形成された棒状の螺条部74が接続されてなる。一対の把持部72の螺条部74の表面に形成された螺条は、一方が右ネジ、他方が左ネジとなっており、この螺条がターンバックル本体71のネジの向きが同じ螺条孔71Aに螺合している。
【0024】
かかる構成により、一対の把持部72の回転を拘束した状態で、ターンバックル本体71を一方に回転させると、一対の把持部72はターンバックル本体71から進出し、他方に回転させると一対の把持部72はターンバックル本体71内へ退行することとなる。
【0025】
図3〜図5に示すように、上側の鋼管20を下側の鋼管20の上方に仮固定するには、まず、クレーン等により、上側の鋼管20を下側の鋼管20の上方に、上側の鋼管20ブラケット21が下側の鋼管20のブラケット21の直上に位置するとともに、上側及び下側の鋼管20の間に溶接のための所定の隙間が形成されるように保持する。
【0026】
次に、第1の仮固定冶具60を上下の把持部本体63の脚部63Aの間にブラケット21が位置するように配置する。そして、スパナ等を用いて胴体部61を回転させて、基底部63Cにブラケット21が当接するまで把持部62を進出させる。このとき、各把持部62は、脚部63Aがブラケット21と係合することで、回転が拘束されるため、把持部62に対して胴体部61のみを回転させて、把持部62を進出させることができる。そして、把持部62の開口63B及びブラケット21の開口21Aにボルト80を挿通させ、ボルト80にナット81を締め付ける。なお、このボルト80は把持部62及びブラケット21の開口63B,21Aに比べてわずかに径が小さいものを用いている。以上の作業を鋼管20の周方向に取り付けた複数対のブラケット21の夫々について行う。
【0027】
次に、トランシット等を用いて上側の鋼管20が鉛直となるように、少なくとも2方向から確認しながら、上側の鋼管20の傾きを調整する。上側の鋼管20の傾きは、第1の仮固定冶具60を伸長させて、基底部63Cとブラケット21とが当接した状態で、第1の仮固定冶具60を適宜伸縮させることで、調整することができる。なお、固定冶具を伸縮させる機構として油圧ジャッキを用いている場合には、ジャッキを伸長させてしまうと油圧の開放による収縮量の制御が難しいため、ジャッキを収縮させて姿勢を調整することは困難であるが、本実施形態の第1の仮固定冶具60によれば、胴体部61を回転させることで収縮でき、鋼管20の姿勢をより容易に調整できるので、ジャッキは本実施形態のようにネジ構造であることが好適である。
【0028】
次に、第2の仮固定冶具70を、各枠部73内にブラケット21の把持部62より外側の部分が位置するように配置し、ターンバックル本体71を回転させ、各枠部73の内周面とブラケット21の上面とが当接するまで把持部72をターンバックル本体71に向かって退行させる。なお、この際、各把持部72は枠部73がブラケット21と係合することで回転が拘束されているため、把持部72に対してターンバックル本体71のみを回転させて把持部72を退行させることができる。これにより、上下のブラケット21に対して互いに引き寄せる向きの力を作用させる。
【0029】
以上の構成によれば、上側の鋼管20の荷重は、第1の仮固定冶具60を介して、下側の鋼管20へと伝達されるので、上側の鋼管20の荷重を下側の鋼管20により支持することができる。
また、ブラケット21及び第1の仮固定冶具60の把持部62の開口21A,63Bを挿通するようにボルト80及びナット81を取付けているため、第1の仮固定冶具60の離脱を防止できる。
【0030】
さらに、強風などにより鋼管20に横向きの力が作用すると、図8に示すように、上側の鋼管20の片側(図中右側)には上方に向かって、他側(図中左側)に下方には向かって、それぞれ力が作用することとなる。このとき、ブラケット21の開口21Aはボルト80に比べて大きく、両者間に隙間が存在するため、その隙間の分だけ上側の鋼管20が傾斜してしまうおそれがある。これに対して、上下の鋼管20のブラケット21に取り付けられた第2の仮固定冶具70により、これらブラケット21を引き寄せる向きの力を作用しているので、これらブラケット21が離間するのを阻止して、上側の鋼管20が傾斜することを防止できる。
【0031】
次に、上下の鋼管20の間の隙間を溶接して上下の鋼管20を接続する。この際、まず、第1及び第2の仮固定冶具60、70と干渉しない部分の溶接作業を先行して行う。仮固定冶具60,70にあたる部分以外の溶接が完了したら、第2の仮固定冶具70を伸長させてブラケット21から取り外し、第1の仮固定冶具60を収縮させてブラケット21の間から取り外す。そして、仮固定冶具60、70が障害となって、溶接できなかった残りの部分の溶接作業を行う。
【0032】
なお、第1及び第2の仮固定冶具60、70と干渉しない部分に溶接作業を行うことにより鋼管20に歪みが生じてこれら仮固定冶具60、70のブラケット21への取付部分に大きな荷重が作用しても、本実施形態では、第1及び第2の仮固定冶具60、70をネジ構造を利用して伸縮させる構成としているため、容易に伸縮させて切断等することなく取り外すことができる。したがって、取り外した第1及び第2の仮固定冶具60、70は別の鋼管20を接続する際に再利用することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、第2の仮固定冶具70として、図6を参照して説明した冶具を用いることとしたが、これに限らず、例えば、ゴムバンドなどにより上下の鋼管20に取り付けられたブラケット21が離間しないように拘束してもよい。
【0034】
また、本実施形態では、第1の仮固定冶具60として、ネジ構造により伸縮可能な構成としたが、これに限らず、油圧ジャッキなどの他の構成のジャッキにより伸縮可能な構成としてもよい。
また、本実施形態では、第1の仮固定冶具60からブラケット21に応力を伝達する方法として、把持部60の基底部63Cを押し当てる方法について説明したが、図9に示すように、ボルト180をシャックル等で使用する先端部分のみネジの切られているタイプとして、ボルト180により脚部63Aとブラケット21との間で応力を伝達する方法としてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、ハイブリッドスリップフォーム工法により橋脚を構築する場合について説明したが、これに限らず、鋼管同士を溶接により接続する場合には本発明を適用することができる。さらに、鋼管同士を溶接接続する場合に限らず、鉄骨同士を溶接接続する場合であっても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 基礎 20 鋼管
21 ブラケット 30 縦筋
40 PCストランド 50 橋脚
60 第1の仮固定冶具 61 胴体部
62 把持部 63 把持部本体
64 螺条部
70 第2の仮固定冶具 71 ターンバックル本体
72 把持部 73 枠部
74 螺条部
80 ボルト 81 ナット
100 クレーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側の鉄骨を下側の鉄骨に対して仮固定する構造であって、
下側の鉄骨の上端部と、上側の鉄骨の下端部に上下に対向する位置に互いに間隔をあけてそれぞれ取付けられた複数対のブラケットと、
前記ブラケットの各対の間に介装された伸長可能な部材からなり、両端が前記ブラケットと当接するように伸長した状態で長さが固定された第1の冶具と、
前記ブラケットの各対に対して互いに引き寄せる向きの力を作用させる第2の冶具と、
を備えることを特徴とする鉄骨の仮固定構造。
【請求項2】
請求項1記載の鉄骨の仮固定構造であって、
前記第1の冶具は、
少なくとも両端部に螺条孔が形成された胴体部材と、
前記胴体部の螺条孔に螺合する螺条部及び前記ブラケットと当接する当接部を備えた当接部材と、により構成され、
前記当接部材の回転を拘束した状態で前記胴体部材を回転させることにより、伸縮するように構成されていることを特徴とする鉄骨の仮固定構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の鉄骨の仮固定構造であって、
前記第2の冶具は、
少なくとも両端に螺条孔が形成された胴体部材と、
前記胴体部の螺条孔に螺合する螺条部及び前記ブラケットを保持可能な保持部を備えた保持部材と、により構成され、
前記保持部材の回転を拘束した状態で前記胴体部材を回転させることにより、伸縮可能に構成されており、
前記保持部により前記ブラケットを保持した状態で収縮させることで前記ブラケットの各対に対して互いに引き寄せる向きの力を作用させることを特徴とする鉄骨の仮固定構造。
【請求項4】
請求項1から3のうち何れか1項に記載の鉄骨の仮固定構造であって、
前記第2の冶具は前記鉄骨に対して前記第1の冶具の外側に取付けられていることを特徴とする鉄骨の仮固定構造。
【請求項5】
上側の鉄骨を下側の鉄骨に対して仮固定する方法であって、
下側の鉄骨の上端部と、上側の鉄骨の下端部に上下に対向する位置に互いに間隔をあけて複数対のブラケットを取付け、
伸長可能な部材からなる第1の冶具を、前記ブラケットの各対の間にそれぞれ介装し、前記ブラケットと当接するように伸長させた状態で長さを固定し、
前記ブラケットの各対に対して互いに引き寄せる向きの力を作用させる第2の冶具を取付けることを特徴とする鉄骨の仮固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−32828(P2011−32828A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182793(P2009−182793)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】