説明

鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具

【目的】 鉛直度測定用定規を、落下、変位あるいは位置ずれ等を生じることなく、鉄骨柱の側面から水平方向に突出した状態で鉄骨柱の上端部に強固に固定することができるとともに、取付け・取外しが容易で繰り返し使用することのできる鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具を提供する。
【構成】 鉛直度測定用定規12を鉄骨柱11の上端に固定して鉄骨柱11の建入れ直しの際にこの測定用定規12の目盛り部を鉄骨柱11の側面から水平方向に突出させるためのC型クランプ状の鉛直度測定用定規取付け治具13であって、鉄骨柱11の上端幅と略同一長さの平板14と、この平板14の一端部から当該平板14に対して垂直方向に突出する定規押え片15と、この定規押え片15と対向して平板14の他端部に取り付けられた締付ボルト16を有する締付片17とからなり、且つ前記定規押え片15の内側面には衝撃によるずれ防止部材としてラバーゴム18を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具に関し、特に、鉛直度測定用定規を鉄骨柱の上端部に固定して鉄骨柱の建入れ直しの際にこの定規を鉄骨柱の側面から水平方向に突出させるための鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、鉄骨造の構造物を構築する際に、クレーン等を用いて建込まれる鉄骨柱を倒れやねじれのない状態で所定の位置に設置すべく、鉄骨柱を固定する前に、建入れ直しと呼ばれる部材の倒れや歪みを除去するための微調整作業が行われている。そして、かかる建入れ直しは鉄骨柱の鉛直度をトランシット等の測量機械を用いて検査する方法を介して行われる。
【0003】すなわち、上記建入れ直しは、例えば図6に示すように、建込んだ鉄骨柱50の下端近傍の床面上であって該鉄骨柱50の側面51から一定の距離離れた箇所にいわゆる逃げ墨52を打つとともに、上端部には測定用定規55を鉄骨柱50の側面51から水平方向に突出した状態であてがい、トランシット53を用いて、上方の測定用定規55に対して読む目盛りを、逃げ墨52の側面51からの離れと一致させることにより鉄骨柱50の鉛直度すなわち建入れを検査しつつ行なうものである。そして、かかる検査を直交する2方向から行うとともに、調整ワイヤや調整ボルトを用いて鉄骨柱50の傾斜を微調整しつつ、鉄骨柱50を倒れやねじれのない状態で設置する。
【0004】一方、建込んだ鉄骨柱50の上端に上記鉛直度測定用の定規55をあてがう方法として、従来より、同図に示すように、高所作業車56等を用いて作業員が鉄骨柱50の上端付近に登り、作業員自身が直接鉄骨柱50の天端面に鉛直度測定用定規55を張出し状態で載置する方法が採用されていたが、かかる方法では、高所作業となるため危険が伴うとともに、高所作業車56の使用コストがかさむことになる。
【0005】これに対し、上記作業員による高所作業を回避するための手段として、接着剤の塗布面や磁石を有する当接面を備えた基台に当該当接面と垂直に測定用定規を取り付けた定規治具を、鉄骨柱を建込む前に鉄骨柱の上端部側面に予め当接貼着しておくことにより、建入れ直しの際に測定用定規を鉄骨柱の側面から水平方向に突出させる方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述した接着剤の塗布面や磁石を有する当接面を備えた定規治具では、接着剤によるものは繰り返しの使用によって接着力が低下し、取り付けた治具が落下したり変位したりする惧れがあり、また、磁石によるものは鉄骨柱50の建込み時の衝撃等により位置ずれを生じ、これによって測定障害を生じる惧れがあった。
【0007】そこで、この発明は上記問題点に着目してなされたもので、鉛直度測定用定規の落下、変位あるいは位置ずれ等を生じることなく、鉄骨柱の上端部に、鉛直度測定用定規を、鉄骨柱の側面から水平方向に突出した状態で強固に固定することができるとともに、取付け・取外しが容易で繰り返し使用することのできる鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記目的を鑑みてなされたものであり、その要旨は、鉛直度測定用定規を鉄骨柱の上端に固定して鉄骨柱の建入れ直しの際に前記測定用定規を鉄骨柱の側面から水平方向に突出させるための鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具であって、該取付治具が、C型クランプ状のクランプ部材であって、鉄骨柱の上端幅と略同一長さの平板と該平板の一端部から該平板に対して垂直方向に突出する定規押え片と該定規押え片と対向して前記平板の他端部に取り付けられた締付ボルトを有する締付片とからなり、且つ前記定規押え片の内側面にはラバーゴム等の衝撃によるずれ防止部材を取り付けたことを特徴とする鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具にある。
【0009】また、この発明の鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具は、前記平板の前記定規押え片及び締付片が突出する側の面内には、当該平板が鉄骨柱の天端面と当接する位置に、少なくとも当該平板と同一厚さを有する間隔保持プレートを取り付けることが好ましい。
【0010】
【作用】この発明の鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具を用いて鉛直度測定用定規を鉄骨柱の上端に固定するには、まず、定規押え片と締付片とによって鉄骨柱頭部の背向する一対の側面を外方から挟み込んだ状態で取付け治具の平板を鉄骨柱の天端面となる面に当接載置するとともに、定規押え片の内面と、これと対向する前記鉄骨柱頭部の一方の側面との間に鉛直度測定用定規を挟み込む。そして、締付片に取り付けた締付ボルトを締付ければ、締付ボルトは、締付片と対向する前記鉄骨柱頭部の他方の側面を押圧して前記鉄骨柱の一方の側面と定規押え片との間隔を狭め、これによってこれらの間に鉛直度測定用定規を強固に挟持固定する。
【0011】なお、鉛直度測定用定規を定規押え片と前記鉄骨柱頭部の一方の側面との間に挟み込む際に、測定用定規の側辺を取付け治具の平板内面に当接させれば、平板の内面は鉄骨柱の天端面となる面に沿って載置されているため、鉛直度測定用定規は、建入れ直しの際に水平方向に保持される。
【0012】また、定規押え片の内側面にはラバーゴム等の衝撃によるずれ防止部材が取り付けられ、これによって鉛直度測定用定規が衝撃等によってずれるのを防止する。
【0013】さらに、前記取付け治具を構成する平板の定規押え片及び締付片が突出する側の面内には、この平板が鉄骨柱の天端面と当接する位置に、少なくとも当該平板と同一厚さを有する間隔保持プレートを取り付ければ、この取付け治具を、既に設置された取付け治具と交差する方向に重ねて取付けて使用する際に、かかる2方向に重ねて取り付けた鉛直度測定用定規が鉄骨柱の天端面において相互に干渉するのを回避することができる。
【0014】
【実施例】以下この発明の一実施例を図面を用いて詳細に説明する。図1は、構築中の鉄骨造構造物の作業床10に建込まれた鉄骨柱11の倒れやねじれ等の歪みを除去する作業すなわち建入れ直しにおいて、該鉄骨柱11の鉛直度を検査する状況を示している。かかる建入れ直しは、建込んだ鉄骨柱11の下端近傍の作業床10上であって、該鉄骨柱11の側面30から一定距離離れた箇所に逃げ墨31を打つとともに、鉄骨柱11の上端部に鉛直度測定用の定規12を配置した後この測定用定規12の目盛りをトランシット13を用いて読み、かかる読定値と前記逃げ墨31の側面30からの離れとを一致させることにより行う。
【0015】そして、本実施例にかかる鉄骨柱11の鉛直度測定用定規取付け治具13は、図2にも示すように、上記建入れ直しにおいて、鉄骨柱11の上端部に測定用定規12を固定すべく用いられるものである。すなわち、当該取付け治具13は、後述するようにいわゆるC型クランプ状をなしており、鉄骨柱11の上端部側面から測定用定規12の目盛部分を水平方向に突出させた状態で配置すべく、測定用定規12を挟み込みつつ、鉄骨柱11の天端面に当該鉄骨柱11の頭部を挟み込んだ状態で載置固定されるものである。
【0016】そして、かかる取付け治具13は以下のような構成を有する。すなわち、取付け治具13は、図3(a)及び(b)に示すように、平板14と、この平板14の一端部から平板14に対して垂直方向に突出する定規押え片15と、該定規押え片15と対向して平板14の他端部に取り付けられた締付ボルト16を有する締付片17とによって構成され、締付ボルト16の調整により、定規押え片15と締付片17との間に被挟持物を挟み込むことのできるいわゆるC型クランプ状の構造を有している。
【0017】ここで、平板14は、しなることのない所定の厚さを有する例えば鉄板等の鋼板からなり、その上面図である図3(a)に示すように、定規押え片15側の拡幅部14aと締付片17側の狭小部14bとからなるいわゆるしゃもじ形をなしているとともに、その長さが鉄骨柱11の天端幅より若干長く、したがって取り付け状態において定規押え片15側の端部が鉄骨柱11の側面から突出するようになっている(図2参照)。
【0018】また、定規押え片15は、側面図である図3R>3(b)に示すように、断面L字形のアングル鋼の一片を、平板14の上記鉄骨柱11の側面からの突出部に相当する部分の内面に、溶接等によって固着することにより、当該アングル鋼の他片を平板14に対して垂直方向に突出させて構成する。また、この定規押え片15の内側面、すなわち取り付け状態において鉄骨柱11の側面と対向する側の面には、衝撃によるずれ防止部材としてのラバーゴム18が貼設されている。
【0019】一方、前記締付片17は、断面L字形のアングル鋼の一片を平板14の端部に溶接等により固着して当該アングル鋼の他片を平板14に対して垂直方向に突出させることにより、前記定規押え片15と対向して固定配置される。また、この締付片17は締付ボルト16を取り付けるためのネジ孔17aを有し、締付ボルト16はこのネジ孔17aに外方から螺合される。
【0020】そして、このような構成を有する鉛直度測定用定規取付け治具13を用いて鉛直度測定用定規12を鉄骨柱11の上端部に固定する作業は、高所作業によることなく安全かつ容易に行うことができる。すなわち、例えば建方前の水平に仮置きされた鉄骨柱11に対し、これの頭部を定規押え片15と締付片17とにより外方から挟み込むとともに平板14を鉄骨柱11の天端面となるべき面に当接させつつ、取付け治具13を鉄骨柱11の頭部に設置する。そして、ラバーゴム18が貼設された定規押え片15の内面と鉄骨柱11の一方の側面との間に測定用定規12を挟み込むとともに、締付片17に螺合した締付ボルト16を締め付ければ、定規取付け片15と鉄骨柱11の一方の側面との間に、測定用定規12が、その目盛り部分を鉄骨柱11から側方に突出した状態で容易かつ強固に挟持固定される。
【0021】なお、定規押え片15の内面と鉄骨柱11の一方の側面との間に鉛直度測定用定規12を挟み込む際に、測定用定規12の一方の側辺を平板14の内面に当接させつつ測定用定規12を挟み込めば、平板の内面は鉄骨柱の天端面となる面に沿って当接載置されているため、鉄骨柱の建入れ直し時において、測定用定規12の目盛り部分を容易に水平方向に突出させることができる。
【0022】この様にして仮置き状態において鉛直度測定用定規取付け治具13により鉛直度測定用定規12を取り付けた鉄骨柱11は、クレーン等により構築中の構造物の作業床10に建込まれる。ここで、測定用定規12はC型クランプ状の前記取付け治具13によって強固に固定されているため建込み時の衝撃等により落下、変位或いは位置ずれ等を生じることがない。また、鉄骨柱11が建込まれた時点で、鉛直度測定用定規12の目盛り部分は既に鉄骨柱11の上端部側面から水平方向に突出した状態にあるので、高所作業によって作業員が測定用定規12をあてがう作業を必要とすることなくトランシット等による建入れ直しを直ちに開始することができる。なお、これらの、取付け治具13及び測定用定規12は、構造物の構築が進んで床の高さが取付け治具13及び測定用定規12に届く高さに到達した時点で締付ボルト16を緩めることにより取り外して回収し再使用する。
【0023】また、図4(a)及び(b)は、本発明にかかる鉛直度測定用定規取付け治具の他の実施例を示すものである。すなわち、この実施例にかかる取付け治具20は、上述の実施例にかかる取付け治具13の構成に加えて、さらに、平板14の内面、すなわち定規押え片18及び締付片17が突出する側の面内には、少なくとも平板14と同一厚さを有する、拡幅部14aに取り付けられた一片の拡幅部間隔保持プレート24と狭小部14bに取り付けられた二片の狭小部間隔保持プレート25とを備えたものである。
【0024】そして、この鉛直度測定用定規取付け治具20によれば、図5に示すように、測定用定規12を2方向に設置すべく、2つの鉛直度測定用定規取付け治具を、鉄骨柱11の天端面に交差する2方向に重ねて取付けて使用する際、上方に重ねられる取付け治具として当該取り付け治具20を用いれば、拡幅部間隔保持プレート24と狭小部間隔保持プレート25が鉄骨柱11の天端面と当接することにより、下方の取付け治具13が挿入される間隔を保持して、これらの2方向に重ねて取り付けた鉛直度測定用定規が鉄骨柱の天端面において相互に干渉するのを回避し、これによって鉛直度測定用定規12を交差する2方向に向かって各々容易かつ強固に固定することができる。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本願発明の鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具によれば、定規をC型クランプ状のクランプ部材によって鉄骨柱の側面に強固に固定するため、鉄骨柱の建込み時の衝撃等により該定規が落下、位置ずれ等を起こすことを防止することができるとともに、当該取付け治具はボルト部材によって容易且つ確実に取付け,取り外しができるので繰り返し使用することができる。
【0026】また、当該取付け治具の平板に当該平板と同一厚さを有する間隔保持プレートを取り付ければ、かかる取付け治具を交差する2方向に重ねて使用する際に、これらの取付け治具が鉄骨柱の天端面において相互に干渉するのを回避して鉛直度測定用定規12を交差する2方向に向かって各々容易かつ強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具を用いて建入れ直しを行う状況を示す説明図である。
【図2】本発明の鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具を用いて鉄骨柱の天端面に鉛直度測定用定規を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図3】(a)は、本発明の鉄骨柱のの鉛直度測定用定規取付け治具の一実施例を示す上面図であり、(b)は、その側面図である。
【図4】本発明の鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具の他の実施例の説明図であり、(a)は、その上面図であり、(b)は、その側面図である。
【図5】本発明の鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具を用いて2方向に向かって鉛直度測定用定規を取り付けた状況を示す斜視図である。
【図6】従来の方法により建入れ直しを行なう状況を示す説明図である。
【符号の説明】
11 鉄骨柱
12 鉛直度測定用定規
13,20 鉛直度測定用定規取付け治具
14 平板
15 定規押え片
16 締付ボボルト
17 締付片
18 ラバーゴム
24 拡幅部間隔保持プレート
25 狭小部間隔保持プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】 鉛直度測定用定規を鉄骨柱の上端に固定して鉄骨柱の建入れ直しの際に前記測定用定規を鉄骨柱の側面から水平方向に突出させるための鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具であって、該取付治具が、C型クランプ状のクランプ部材であって、鉄骨柱の上端幅と略同一長さの平板と該平板の一端部から該平板に対して垂直方向に突出する定規押え片と該定規押え片と対向して前記平板の他端部に取り付けられた締付ボルトを有する締付片とからなり、且つ前記定規押え片の内側面にはラバーゴム等の衝撃によるずれ防止部材を取り付けたことを特徴とする鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具。
【請求項2】 前記平板の前記定規押え片及び締付片が突出する側の面内には、当該平板が鉄骨柱の天端面と当接する位置に、少なくとも当該平板と同一厚さを有する間隔保持プレートを取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の鉄骨柱の鉛直度測定用定規取付け治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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