説明

鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造

【課題】鉄骨梁貫通孔へダクト及び耐火被覆部材を固定できる。
【解決手段】建物のスラブ9を支持する鉄骨梁1のウェブ2に形成された梁貫通孔3の内側に耐火被覆部材4を円筒状に形成した耐火スリーブ5を挿通し、梁貫通孔3周囲のウェブ2を挟持すると共に耐火スリーブ5を固定する差込部材6(固定部材)によって耐火スリーブ5は梁貫通孔へ固定される。耐火スリーブ5の内部から差込部材6の固定部12に設けられた孔14に溶接ピン16を貫通させて溶接固定することで、耐火スリーブ5は鉄骨梁1に固定される。耐火スリーブ5内へ例えば空調や換気用のダクト7aが挿通され、耐火被覆部材4aが耐火スリーブ5に連続するように鉄骨梁1を覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨梁のウェブに形成された梁貫通孔に固定されるダクト及び耐火被覆部材の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨梁のウェブに形成された梁貫通孔へ挿通される例えば空調や換気用のダクトの鉄骨梁への固定方法や、鉄骨梁やダクトになされる耐火被覆の施工方法とあわせた鉄骨梁へのダクトの固定方法が提案されている。
【0003】
特許文献1に示すように、耐火被覆部材を円筒状に形成したスリーブを鉄骨梁のウェブに形成された梁貫通孔に挿通し固定する方法が提案されている。このスリーブには梁貫通孔に通すことができて、折り曲げ可能な固定用金物が備えられており、梁貫通孔へスリーブ及び固定用金物が挿通した状態で、固定用金物は折り曲げられてウェブを挟むことでスリーブを鉄骨梁に固定している。そして、このスリーブ内にダクト若しくはダクト用継ぎ手部材を密着状態で挿通し、鉄骨梁に耐火被覆が施される。
上述した方法によれば、固定用金物を折り曲げることで容易にスリーブを鉄骨梁に固定することができ、スリーブがダクトあるいはダクト用継ぎ手に対する断熱材と耐火被覆材を兼用するので、その兼用分だけ鉄骨梁の貫通孔の口径を小さくすることができる。
また、ウェブを挟んで固定するウェブの厚み分の切り込みが形成された複数の金属板が、耐火被覆の施されたダクトの側面に固定される梁貫通孔へのダクトの固定方法も汎用されている。
【特許文献1】特開平10−140705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の梁貫通孔へのダクト及び耐火被覆部材の設置方法では以下のような問題があった。
特許文献1に示す固定用金物やウェブの厚み分の切り込みの形成された金属板では、ウェブを挟んでいるが堅固に固定する構成ではないため、地震などで振動が生じた場合に鉄骨梁とダクト及び耐火被覆部材の固定が緩み、鉄骨梁に配設された耐火被覆部材とダクト周囲に配設された耐火被覆部材やスリーブとの間に隙間が生じてしまい、耐火被覆構造の耐火性能が低下してしまう問題があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、鉄骨梁のウェブに形成された梁貫通孔へダクト及び耐火被覆部材が固定できて、地震などで振動が生じた際にダクト及び耐火被覆部材が移動して、鉄骨梁に施された耐火被覆部材とダクトの周囲に配設された耐火被覆部材との間に隙間が生じる事が防げて、耐火性能を維持できる鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造は、鉄骨梁のウェブに形成された梁貫通孔の内側にダクト及びダクトを囲繞する第一の耐火被覆部材が挿通されて、第一の耐火被覆部材と連続するように前記鉄骨梁を第二の耐火被覆部材が覆う耐火被覆構造において、ダクト及び第一の耐火被覆部材は、梁貫通孔周囲のウェブを両側から挟持すると共に梁貫通孔に前記ダクト若しくは第一の耐火被覆部材を固定する固定部材によって、鉄骨梁に固定されていることを特徴とする。
本発明では、ダクト若しくはダクトを囲繞する第一の耐火被覆部材は固定部材によって鉄骨梁に固定されているので、地震などで振動が生じた際にダクト及び第一の耐火被覆部材が移動して第一の耐火被覆部材と鉄骨梁を覆う第二の耐火被覆部材との間に隙間が生じる事を防ぐことができる。
【0007】
また、本発明に係る鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造では、固定部材は梁貫通孔周囲のウェブを両側から挟持する挟持部と梁貫通孔にダクト若しくは第一の耐火被覆部材を固定する固定部とから構成されることを特徴とする。
本発明では、固定部材は挟持部が梁貫通孔の周囲のウェブを挟持し、固定部がダクト若しくは第一の耐火被覆部材を梁貫通孔に固定する構成なので鉄骨梁にダクト若しくは第一の耐火被覆部材を堅固に固定できる。
【0008】
また、本発明に係る鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造では、ダクト及び第一の耐火被覆部材は梁貫通孔に対して小径に設定されていて、ダクト及び第一の耐火被覆部材と梁貫通孔との距離は固定部材によって連結できる距離の範囲内で決定できることを特徴とする。
本発明では、ダクト及び第一の耐火被覆部材と梁貫通孔との距離は固定部材によって連結できる距離の範囲内で任意に決定できるので、梁貫通孔に対してダクト及び第一の耐火被覆部材が小径に設定されていて、梁貫通孔とダクト及び第一の耐火被覆部材との間に隙間が生じる場合にも鉄骨梁にダクト及び第一の耐火被覆部材を固定することができる。また、固定部材本体の寸法を変えることで固定部材がダクト及び第一の耐火被覆部材と梁貫通孔が連結できる距離を調整することができる。
【0009】
また、本発明に係る鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造では、第一の耐火被覆部材を円筒形に形成してなる耐火スリーブが鉄骨梁に固定された後にダクトは耐火スリーブに挿通される構成としてもよい。
本発明では、梁貫通孔へダクトに先行して耐火スリーブを挿通するので、梁貫通孔の寸法に合わせて梁貫通孔と耐火スリーブとの間に隙間が生じないように耐火スリーブを形成することができて、耐火スリーブと鉄骨梁の周囲に施される第二の耐火被覆部材との接続が行いやすい。
【0010】
また、本発明に係る鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造では、ダクトは周囲に第一の耐火被覆部材が配設された状態で梁貫通孔へ挿通される構成としてもよい。
本発明では、予めダクトの周囲に第一の耐火被覆部材が配設されて、ダクトと第一の耐火被覆部材とは隙間なく一体化した状態で鉄骨梁に固定されているので、地震などが生じた際にダクトと第一の耐火被覆部材が個別に振動して、鉄骨梁に施された第二の耐火被覆部材とダクト周囲の第一の耐火被覆部材との間に隙間が生じる事を防ぐことができる。
また、予めダクトの周囲に第一の耐火被覆部材を配設しておくことで、現場での作業を軽減させることができる。
【0011】
また、本発明に係る鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造では、第一の耐火被覆部材は高耐熱ロックウールで形成されていることを特徴とする。
本発明では、第一の耐火被覆部材は従来の耐火被覆部材よりも厚さが薄く高性能な高耐熱ロックウールで形成されているので、従来の耐火被覆部材よりも厚みが薄い分だけ梁貫通孔を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造では鉄骨梁の梁貫通孔へダクト及び耐火被覆部材を固定部材によって堅固に固定できるので、地震などで振動が生じた際にダクト及びダクト周囲に配設された耐火被覆部材が移動し、鉄骨梁に施された耐火被覆部材とダクト周囲に配設された耐火被覆部材との間に隙間が生じる事を防いで、耐火被覆部材の耐火性能を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第一の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造について、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1は本発明の第一の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造の概要を示す図、図2(a)は図1に示す鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造のA−A線断面図、(b)は図1に示す鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造のB−B線断面図、図3は本発明の第一の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造に備える差込部材を示す斜視図、図4は図3に示す差込部材を形成する前の金属板の形態を示す図である。
【0014】
図1、図2(a)、(b)に示すように、第一の実施の形態の鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造10aは、建物のスラブ9を支持する鉄骨梁1のウェブ2に梁貫通孔3を形成し、この梁貫通孔3へ耐火被覆部材4で形成された耐火スリーブ5を挿通し、予め梁貫通孔3周囲のウェブ2に設置されてウェブ2と耐火スリーブ5とを固定する差込部材6(固定部材)によって耐火スリーブ5は鉄骨梁1に固定されて、耐火スリーブ5内へは例えば空調設備や換気設備用のダクト7aが設置され、鉄骨梁1を耐火被覆部材4aが覆う構造である。
【0015】
耐火スリーブ5は、例えば、高耐熱ロックウールなどの例えば20mm程度の厚さの保温性を有する耐火被覆部材4を円筒形に形成したもので、外径寸法は梁貫通孔3の内径よりもやや小さく、内径は内部に配設されるダクト7aの外径よりもやや大きく、長さ寸法は鉄骨梁1のフランジ17の幅よりもやや長く形成される。耐火被覆部材4の厚さは、要求される耐火性能に応じるように適宜決定され、耐火スリーブ5の表面には必要に応じて耐火被覆の増強、防湿処理を施すものとする。
【0016】
差込部材6は、図3、図4に示すように、例えば幅15cm奥行き5cm程の大きさの平面視長方形状の金属板15を鋼加工等で固く変形しにくくした部材で、図1、図2に示す梁貫通孔3周囲のウェブ2を挟む挟持部11と、耐火スリーブ5を固定する固定部12とで概略構成される。本実施の形態では図4の横方向を幅方向とし、縦方向を奥行き方向とし、金属板15に対して垂直方向を高さ(上下)方向とする。
挟持部11は、便宜上奥行き方向に中央部aとその両側の端部b、bに三区分した金属板15の端部b、bを加工して形成され、固定部12は中央部aを加工して形成される。
【0017】
挟持部11は、以下のように形成される。まず、端部bと中央部aとの境界に幅方向の両端から例えば5〜6cm程の切り込みcを設け、切り込みcの端dを支点として端部bの断面形状が略コの字型を形成するように端部bを高さ方向に折り曲げて、さらに端部bの例えば端から2cm程の線eで略コの字型をなすように外側に折り曲げる。このとき端部bには、線eに向かって端部b奥行き方向の両側の下方から斜め方向に予め切込みfを入れておき、切込みfの部分が線eを曲げたときに爪部13を形成する。
【0018】
爪部13間の幅方向の間隔gは爪部13でウェブ2を堅固に挟持できる間隔とする。
このように加工形成された挟持部11は、ばね構造となりウェブ2を堅固に挟持できる構造となる。
固定部12には、金属板15の中央部aの幅方向の両端付近に、耐火スリーブ5の中側より外側へ貫通し耐火スリーブ5と差込部材6を固定する例えば溶接ピン16やビスが貫通できる欠込み部14が設けられる。
【0019】
このように形成された差込部材6は、梁貫通孔3周囲のウェブ2に挟持部11が差し込まれてウェブ2を挟持する。このとき差込部材6の取り付け箇所や個数は適宜設定でき、例えば梁貫通孔3の中心から90°ずつ周方向にずらした4箇所とする。また、梁貫通孔3に対する差込部材6の差込深さは梁貫通孔3へ挿通される耐火スリーブ5の外周が固定部12と接触し連結可能な位置に適宜設定する。
【0020】
耐火スリーブ5は梁貫通孔3へ挿通されて、耐火スリーブ5の中側より欠込み部14へ溶接ピン16を貫通させて差込部材6の固定部12に溶接ピン16を溶接固定し、耐火スリーブ5はウェブ2を挟持する差込部材6と連結されて鉄骨梁1に固定され、耐火スリーブ5内には密着するようにダクト7aが挿通される。
そして、鉄骨梁1には建物のスラブ9と接する鉄骨梁1の上面以外をコの字型に覆うように例えば高耐熱ロックウールなどの耐火被覆部材4aが配設される。このとき鉄骨梁に固定された耐火スリーブ5及びダクト7aは耐火被覆部材4aを貫通し、耐火被覆部材4aは耐火スリーブ5に隙間なく連続する構成とする。
【0021】
次に、上述した第一の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造の作用効果について図面を用いて説明する。
第一の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造10aでは、差込部材6の挟持部11がウェブ2を堅固に挟み、固定部12が耐火スリーブ5と溶接固定されて、耐火スリーブ5内に密着してダクト7aが挿通されるので、耐火スリーブ5及びダクト7aは鉄骨梁1に堅固に固定されて、地震などで振動が生じた際に耐火スリーブ5及びダクト7aが移動し、鉄骨梁1に配設された耐火被覆部材4aと耐火スリーブ5との間に隙間が生じることを防げて、耐火スリーブ5と耐火被覆部材4aの耐火性能を維持する作用効果を奏する。
【0022】
また、差込部材6は金属板15を鋼加工等で固く変形しにくくした部材でばね構造となり、差込部材6には爪部13が設けられているので鉄骨梁1と耐火スリーブ5を堅固に固定することができる。そして、差込部材6は簡易な構造なので容易に製作できる。また、梁貫通孔3へ耐火スリーブ5を固定した後にダクト7aを配設するので梁貫通孔3と耐火スリーブ5との間に隙間が生じないように耐火スリーブ5を形成してもよく、鉄骨梁1に配設される耐火被覆部材4aとの接続が隙間なく行いやすい。
【0023】
また、差込部材6は梁貫通孔3周囲のウェブ2に対する差込深さを調整することができるので、梁貫通孔3内径と耐火スリーブ5外径とに寸法差がある場合にもウェブ2に耐火スリーブ5を固定することができる。また第一の実施の形態によれば、耐火被覆部材4に高耐熱ロックウールを採用しているので、少ない厚みで耐火性能があり、耐火スリーブ5の外径を小さくすることができて、梁貫通孔3の大きさも小さくすることができる。
【0024】
上述した第一の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造10aでは、差込部材6を介して鉄骨梁1へ耐火スリーブ5を堅固に固定できるので、地震などで振動が生じた際に耐火スリーブ5が移動し、鉄骨梁1に配設された耐火被覆部材4aと耐火スリーブ5との間に隙間が生じる事が防げて、耐火スリーブ5と耐火被覆部材4aの機能を維持することができる。
【0025】
次に、第二の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第一の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第一の実施の形態と異なる構成について説明する。
図5は、本発明の第二の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造の一例を示す図である。図6(a)は、図5に示す鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造のA−A線断面図、(b)は、図5に示す鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造のB−B線断面図である。
【0026】
図5、図6(a)、(b)に示すように、第二の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造10bでは、第一の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造10aに備える耐火スリーブ5とダクト7aの代わりに、予め短管ダクト7bの周囲に例えば保温性を有する耐火被覆部材4を配設し、例えば図示しない番線などで固定した耐火被覆ダクト部材20を梁貫通孔3へ挿通し差込部材6を介して鉄骨梁1に固定するものである。
【0027】
耐火被覆ダクト部材20は短管ダクト7bの外周に耐火被覆部材4を貫通するビス21を備えており、梁貫通孔3周囲のウェブ2に差込部材6が配設された梁貫通孔3に挿通される。そして、第二の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造10bに備える差込部材6には、第一の実施の形態による差込部材6に設けられた欠込み部14の代わりにビス21の貫通する孔14aが設けられており、ビス21を差込部材6の孔14aに貫通させて、ビス21に座金22を介してナット23を締結することで耐火被覆ダクト部材20は差込部材6と連結し鉄骨梁1に固定される。そして、第一の実施の形態と同様に、耐火被覆ダクト部材20に備える耐火被覆部材4に連続するように鉄骨梁1の周囲に耐火被覆部材4aが配設されて、耐火被覆ダクト部材20の短管ダクト7bの両端部に例えばダクト接続用のソケット18などで空調や換気用のダクト7cがつながれる。
【0028】
第二の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造10bでは、第一の実施の形態と同様に、鉄骨梁1に耐火被覆ダクト部材20を堅固に固定できて、地震などによる振動で耐火被覆ダクト部材20が移動し、鉄骨梁1の周囲に配設された耐火被覆部材4aと耐火被覆ダクト部材20に備える耐火被覆部材4との間に隙間が生じることを防いで、耐火被覆部材4及び4aの耐火性能を維持することができる。
【0029】
また、耐火被覆ダクト部材20は短管ダクト7bに耐火被覆部材4が固定されているので、地震などによる振動で耐火被覆ダクト部材20に備える耐火被覆部材4が鉄骨梁1に固定されている短管ダクト7bから離れて鉄骨梁1に配設された耐火被覆部材4aとの間に隙間が生じることが防げる。また、耐火被覆ダクト部材20は予め短管ダクト7b周囲に耐火被覆部材4が配設され、ビス21が備えられており、ビス21に座金22を介してナット23を締結して差込部材6と固定される構成なので、第一の実施の形態に比べて現場における作業を軽減することができる。
【0030】
次に、第一の実施の形態の変形例について、添付図面に基づいて説明するが、上述の各実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、各実施の形態と異なる構成について説明する。
図7(a)、(b)、(c)は、上述した第一の実施の形態の変形例による梁貫通孔に対してスリーブが小径の場合の鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造を示す図である。
【0031】
図7(a)に示す鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造10cは、耐火スリーブ5と梁貫通孔3を偏心させて配設するもので、梁貫通孔3周囲のウェブ2と耐火スリーブ5とが差込部材6で連結可能な任意の箇所で梁貫通孔3周囲のウェブ2と耐火スリーブ5とを少なくとも2ヶ所の差込部材6で固定する構成である。
また、図7(b)に示す鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造10dは、耐火スリーブ5を梁貫通孔3と同心若しくは同心付近に配設するもので、奥行き、高さのある差込部材6を使用することで梁貫通孔3周囲のウェブ2と耐火スリーブ5とが差込部材6で連結可能な範囲を広くでき、耐火スリーブ5を梁貫通孔3の縁から離して同心若しくは同心付近に配設し、梁貫通孔3周囲のウェブ2と耐火スリーブ5とを少なくとも2ヶ所に設置された差込部材6で固定する構成である。
また、図7(c)に示す鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造10eは、耐火スリーブ5を梁貫通孔3に内接した状態に配設するもので、梁貫通孔3の周囲のウェブ2の少なくとも2ヶ所に固定された差込部材6に番線24を取り付けて番線24によって梁貫通孔3に耐火スリーブ5を押し付けて固定する構成である。また、番線24に代わって板バンドなどを使用してもよい。
このように梁貫通孔3に対して耐火スリーブ5が小径の場合にも鉄骨梁1と耐火スリーブ5とを固定できる。
【0032】
さらに、各実施の形態の鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造に備える差込部材の変形例について、添付図面に基づいて説明するが、上述の各実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、各実施の形態と異なる構成について説明する。
図8(a)、(b)、(c)は、上述した各実施の形態の変形例による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造に備える差込部材を示す図である。
【0033】
図8(a)に示す差込部材6aは、挟持部11の断面形状が線対称に対向配置させた一対の略Σ型で、一対の挟持部11の端部11aと中間の折り曲げられた部分11bがウェブ2に線接触しウェブ2を挟持する構成である。
また、図8(b)に示す差込部材6bは、挟持部11の端部11aが内側に折り曲げられてウェブ2に線接触しウェブ2を挟持するもので、挟持部11は端部11aを内側へ折り曲げる高さを異ならせた2組の挟持部11c、11dに分けられて、それぞれの端部11aによって異なる高さでウェブ2を挟持する構成である。
また、図8(c)に示す差込部材6cは、上述した差込部材6bとは逆に挟持部11の端部11aが外側に折り曲げられたもので、挟持部11は端部11aを外側へ折り曲げる高さを異ならせた2組の挟持部11e、11fに分けられて、挟持部11e、11fのそれぞれの折り曲げられた部分11g、11hが異なる高さでウェブ2に線接触し、ウェブ2を挟持する構成である。
差込部材6a、6b、6cは、ウェブ2に差し込まれる差込深さを調整することができる。
【0034】
以上、本発明による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施の形態では、耐火被覆部材4及び4aに高耐熱ロックウールを採用しているが、高耐熱ロックウールに変わってケイ酸カルシウムやセラミック系素材、ロックウール等を採用してもよいし、耐火被覆部材4と耐火被覆部材4aは異なる耐火被覆部材を採用してもよい。
また、上記の第一の実施の形態では、耐火スリーブ5内にダクト7aを配設しているが、ダクト7aの代わりにダクト継ぎ手を使用してもよい。
また、上述した実施の形態では、差込部材6はウェブ2のみを挟持しているが、図9に示すように挟持部11が挟持する間隔gや固定部12の幅寸法などを調整して、側面に梁貫通孔用の補強板25が重ねて溶接されたウェブ2を挟持してもよい。また、差込部材6に両端から切り込みを入れた爪部13を設けているが、両端以外に切り込みを入れて挟持部11の奥行き方向の中央に爪部13を作成してもよいし爪部13を設けない構成としてもよい。
また、差込部材6は梁貫通孔3の中心から90°ずつ周方向にずらした4箇所に設置しているが、梁貫通孔3の中心から120度ずつ周方向にずらした3箇所としてもよいし、梁貫通孔3の中心に対して等間隔に設置しなくてもよく、梁貫通孔3の内径寸法などの条件から差込部材6を設置する箇所や数を適宜設定してよい。また差込部材6の固定部12には溶接ピン16やビス21を貫通させる欠込み部14や孔14aを設けているが、例えば、欠込み部14に代わって丸孔や長孔などの開口部としてもよいし、孔14aに代わって長孔や欠き込み部としてもよい。
また、差込部材6と耐火スリーブ5や短管ダクト7bとの連結は溶接をしたり、ナット23及び座金22を用いて締結しているが、例えば割りピンなどで差込部材6と耐火スリーブ5若しくは短管ダクト7bとを連結してもよい。また、第二の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造10bに備えるビス21の代わりに、例えば図10に示すような両端がねじ状のコの字型のボルト26を採用し、ボルト26を短管ダクト7bに点溶接して、ボルト26の両端に座金22を介してナット23を締結してもよい。ボルト26は短管ダクト7bに点溶接できるので取り付けが容易である。
また、第一の実施の形態の変形例の鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造10c、10d、10eの耐火スリーブ5及びダクト7aを予め短管ダクト7bの周囲に耐火被覆部材4を配設した耐火被覆ダクト部材20としてもよい。
また、第一の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造10aに備える耐火スリーブ5を、例えば筒状の補強鉄板の内側と外側に耐火被覆部材4を配設した構成としてもよい。
要は、本発明において所期の機能が得られればよいのである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第一の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造の概要を示す図である。
【図2】(a)は図1に示す鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造のA−A線断面図、(b)は同じくB−B線断面図である。
【図3】本発明の第一の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造に備える差込部材を示す斜視図である。
【図4】図3に示す差込部材を形成する前の金属板の形態を示す図である。
【図5】本発明の第二の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造の概要を示す図である。
【図6】(a)は図5に示す鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造のA−A線断面図、(b)は同じくB−B線断面図である。
【図7】本発明の各実施の形態の変形例による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造を示す図である。
【図8】本発明の各実施の形態の変形例による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造に備える差込部材を示す図である。
【図9】本発明の各実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造に備える差込部材の他の変形例を示す図である。
【図10】第二の実施の形態による鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造の梁貫通孔への耐火スリーブの固定方法の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 鉄骨梁
2 ウェブ
3 梁貫通孔
4、4a 耐火被覆部材
5 耐火スリーブ
6、6a、6b、6c 差込部材(固定部材)
7a ダクト
7b 短管ダクト
10a、10b 鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造
11 挟持部
12 固定部
15 金属板
20 耐火被覆ダクト部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨梁のウェブに形成された梁貫通孔の内側にダクト及びダクトを囲繞する第一の耐火被覆部材が挿通されて、前記第一の耐火被覆部材と連続するように前記鉄骨梁を第二の耐火被覆部材が覆う耐火被覆構造において、
前記ダクト及び前記第一の耐火被覆部材は、前記梁貫通孔周囲の前記ウェブを両側から挟持すると共に前記梁貫通孔に前記ダクト若しくは前記第一の耐火被覆部材を固定する固定部材によって、前記鉄骨梁に固定されていることを特徴とする鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造。
【請求項2】
前記固定部材は前記梁貫通孔周囲の前記ウェブを両側から挟持する挟持部と前記梁貫通孔に前記ダクト若しくは前記第一の耐火被覆部材を固定する固定部とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造。
【請求項3】
前記ダクト及び前記第一の耐火被覆部材は前記梁貫通孔に対して小径に設定されていて、前記ダクト及び前記第一の耐火被覆部材と前記梁貫通孔との距離は前記固定部材によって連結できる距離の範囲内で決定できることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造。
【請求項4】
前記第一の耐火被覆部材を円筒形に形成してなる耐火スリーブが鉄骨梁に固定された後に前記ダクトは前記耐火スリーブに挿通されることを特徴とする請求項1乃至3に記載の鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造。
【請求項5】
前記ダクトは周囲に前記第一の耐火被覆部材が配設された状態で前記梁貫通孔へ挿通されることを特徴とする請求項1乃至3に記載の鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造。
【請求項6】
前記第一の耐火被覆部材は高耐熱ロックウールで形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の鉄骨梁貫通孔のダクト及び耐火被覆部材の設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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