説明

鉛の電解方法

【課題】スルファミン酸浴で電解精製するに際して、平滑剤の過剰による電着鉛の表面荒れを防止することが可能で、フッ素除去設備を設置する必要がなく、平滑な電着鉛を回収することができる鉛の電解方法を提供する。
【解決手段】電解液中の濃度を分析後、濃度が上限を超えた場合、電解液を活性炭に通すことで、電解液中の過剰な有機平滑剤の濃度を低減し、平滑な電着を得る鉛の電解方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄製錬、基盤や電子部品などリサイクル原料の溶融炉、及び産業廃棄物を溶融処理する乾式炉より発生する乾式煙灰中に含まれているPbを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄製錬の乾式煙灰中に含まれているPbを回収するため、煙灰を硫酸浸出し、硫酸鉛にした後、電気炉で溶融還元を行う。溶融還元により分離されたメタルをソーダ処理し、その後、メタルをアノード鋳造した後、珪フッ素酸浴中にて電解精製するBetts法を用いることでPbを回収している。
【0003】
Betts法において、例えば特開昭50−115120 高純度鉛の電解精製方法(特許文献1)に開示されているが、電解浴が珪フッ素酸であることから、排水にフッ素除去設備が必要である。
従来の技術に対して、フッ素除去設備を設置する必要なく、平滑な電着鉛を回収することができる鉛の電解方法を提供することを目的とするが、平滑剤の過剰により、電着した鉛の表面が平滑化されない場合がある。
【特許文献1】特開昭50−115120 高純度鉛の電解精製方法
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、スルファミン酸浴で電解精製するに際する平滑剤の過剰による、電着鉛の表面荒れを未然に防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記の課題を解決するため以下の発明を成した。
(1)電解液中の濃度を分析後、濃度が上限を超えた場合、電解液を活性炭に通すことで、電解液中の過剰な有機平滑剤の濃度を低減し、平滑な電着を得る鉛の電解方法。
(2)上記(1)において、電解液中の有機平滑材が、ノイゲンBN−1390または、BN−2560であることを特徴とする鉛の電解方法。
(3)上記1又は2の何れかにおいて、有機平滑剤の濃度の上限を700mg/Lとする鉛の電解方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、
(1)鉛の電解精製において、適切な有機平滑剤の濃度とすることにより、鉛の電着面が、平滑にすることができる方法を見出した。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明における一態様である処理フローを示す。
【図2】本発明における一態様である活性炭充填塔を示す。
【図3】本発明における一態様であって、電解液を活性炭に通過させた場合の平滑剤の濃度低下を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
本発明における鉛アノードは、例えば、鉛 70〜99mass%、錫 0.04mass%以下、ビスマス0〜30mass%含有する。
例えば、上記鉛アノードは、アノード鋳造されて得る。 該アノードを用いて電解精製を行う。
アノードのサイズとしては、カソードのサイズに比べ小さくすることで、エッジ効果を防ぐことができ、平滑で良好な電着鉛を回収することができる。
更に、スルファミン酸を20から100g/L添加するとより平滑な電着鉛を得ることが出来る。
【0009】
また平滑剤としては、有機平滑剤を用いる。 有機平滑剤としては、ノイゲンBN−1390及び又はノイゲンBN−2560を用いる。有機平滑剤の添加量は、1〜700mg/Lである。 電流密度100A/m以下、好ましくは、50から100A/mにすることで、平滑で良好な電着鉛を回収することができる。
この電解に際して、上記有機平滑剤が、過剰となると却って、電着鉛表面が荒れる現象があることを見出した。 このため本発明では、その添加の上限を超えた場合に、過剰分を活性炭により、除去し、有機平滑剤の上限を管理することにした。
この結果、常に平滑な鉛電着面を得ることが出来るようになった。
活性炭の電解液に対する比率は、活性炭に対して、対象の電解液を2.5から4.5g/L/minの比率で通液することが好ましい。
活性炭の粒径としては、2.3〜4.7mmが好ましい。
上記の有機平滑剤の添加量の上限は、700mg/Lと考え管理した結果、好ましい鉛電着面が、常に得られるようになった。
【実施例】
【実施例1】
【0010】
図1に、本発明の一態様である処理フローを示す。
電解液は、循環槽を通過し、活性炭充填塔を通過し、熱交換機、冷却機を介して、再び、電解槽へ送られる。
以下、上記処理フローにより、より具体的に、本発明を説明する。
電解液の液組成として、鉛濃度:80g/L、スルファミン酸濃度:20g/Lに調整した溶液に鉛87〜95%、錫0.04%以下、ビスマス 5〜13%含有する粗鉛をアノードとして、電流密度:90A/m2で通電する。
電解液中のノイゲンを除去するため、電解液循環ラインに容器(Φ150mm×680mm)を5基接続し、内部に活性炭を3kg/基入れて、液を800L/minの流量(比率3.75g/L/min)で通液させる。
活性炭は、ヤシ殻炭系のヤシコールL(粒径:2.36〜4.75mm)を用いた。
活性炭を塩化ビニール製の塔に充填した一態様を図2に示す。
活性炭を交換することなく、活性炭を充填した容器に、電解液を17日間通液することで、表1に示す如く、電解液中のノイゲン濃度が通常8mg/L/日程度しか濃度が、低下しないのに対して、43mg/L/日低下した。
【表1】

図3に、電解液を活性炭に通過させた場合のノイゲン濃度の低下状態を示す。
この場合では、1700mg/Lあった有機平滑剤であるノイゲンが、700mg/L以下となっている。
これにより、電解液中のノイゲンの濃度を管理することができ、ノイゲン入れ過ぎによる電着悪化を防止することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液中の濃度を分析後、濃度が上限を超えた場合、電解液を活性炭に通すことで、電解液中の過剰な有機平滑剤の濃度を低減し、平滑な電着を得ることを特徴とする鉛の電解方法。
【請求項2】
請求項1において、電解液中の有機平滑材が、ノイゲンBN−1390または、BN−2560であることを特徴とする鉛の電解方法。
【請求項3】
請求項1又は2の何れかにおいて、有機平滑剤の濃度の上限を700mg/Lとすることを特徴とする鉛の電解方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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