説明

鉛電池添加剤錠剤およびその製造法

【課題】 微量成分を含む鉛電池添加剤錠剤およびその製造法において、錠剤中に微量添加成分を簡便に所定量ずつ添加でき、且つその添加度合いを簡単に確認できる錠剤およびその方法を提供する。
【解決手段】 ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩の少なくとも一つを含む錠剤の表面の一部または全表面に、微量添加成分と着色剤とが含まれる鉛電池添加剤錠剤。および、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩の少なくとも一つを含む錠剤の表面の一部または全表面に、微量添加成分と着色剤とが含まれる溶液の所定量を付着せしめた後乾燥する鉛電池添加剤錠剤の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量成分を含む鉛電池添加剤錠剤およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者等はポリビニルアルコール等の有機ポリマーを鉛電池の電解液に添加することにより、鉛電池の劣化を防止し、更に劣化した鉛電池の活性化が可能であることを見出した(特許文献1参照)。更にこの有機ポリマーに微量成分、例えば銀、インジウム等を加えると一層有効であることを見出した(特許文献2,3参照)。また本発明者等は、有機ポリマーを鉛電池の電解液に添加する方法として、添加剤を所定の重量の錠剤とすることにより電池への添加操作が一層簡便となることを見出した(特許文献4参照)。
【0003】
しかしながら、錠剤の原料である粉末中に前記の微量成分を均一に混合することは困難であり、その混合度合いを確認することも困難であった。
【特許文献1】 特開2000−149981号公報
【特許文献2】 特開2007−109618号公報
【特許文献3】 特開2003−151618号公報
【特許文献4】 特願2007−154516号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、微量成分を含む鉛電池添加剤錠剤およびその製造法において、錠剤中に微量添加成分を簡便に所定量ずつ添加でき、且つその添加度合いを簡単に確認できる錠剤およびその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩の少なくとも一つを含む錠剤の表面の一部または全表面に、微量添加成分と着色剤とが含まれる鉛電池添加剤錠剤であり、さらに該微量添加成分が銀、インジウムよりなる群の中の少なくとも一つである鉛電池添加剤錠剤である。また本発明は、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩の少なくとも一つを含む錠剤の表面の一部または全表面に、微量添加成分と着色剤とが含まれる溶液の所定量を付着せしめた後乾燥する鉛電池添加剤錠剤の製造法であり、さらに該微量添加成分が銀、インジウムよりなる群の中の少なくとも一つである鉛電池添加剤錠剤の製造法である。
【発明の効果】
【0006】
即ち本発明では、微量添加成分を水またはアルコール等の液体に溶解し、更にその溶液に着色剤を加えることによって、鉛電池添加剤錠剤に加える微量添加成分の配分を容易にし、更に該微量添加成分が個々の錠剤に配分されていることを着色によって明確に確認できることにしたものである。
【0007】
本発明で用いる鉛電池添加剤錠剤は、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩等の粉末に必要に応じて成形助剤としてグリセリン脂肪酸エステルやシリカ粉末を加え、水分またはアルコールを加えて金型を用いて加圧成形することができる。このようにして成形した錠剤は多孔質であり、その表面に溶液を吹き付けるか滴下する等の方法により、任意の量の溶液をその表面に含浸させることができる。
【0008】
本発明で用いる微量添加成分は、負極の水素過電圧を上昇せしめることによりサルフェーションを解消し、且つ電極活物質の微細化により電極を活性化するポリビニルアルコール等の有機ポリマーについて、その作用を一層促進する効果を有するものであり、例えば銀では、銀コロイドまたは硫酸銀等を添加することにより放電時の大電流放電特性を改善するものである。銀の添加量としては電解液中および/または電極活物質中に銀成分が0.01ないし100ppm含まれる量とすることが望ましい。インジウムには、電極格子の機械的強度を増す目的で一般に用いられている鉛アンチモン合金からアンチモンが溶出して負極に析出することにより負極の水素過電圧が低下する作用を打ち消す効果があり、通常インジウムイオンとして1ないし1000ppmを電解液中および/または電極活物質中に含まれる量とすることが望ましい。
【0009】
本発明で用いる着色剤は、電池の電極反応に悪影響を及ぼさないものであれば良く、水またはアルコール等の溶媒に溶かして用いる。その色は赤、青、緑、黄等任意の色を用いることができる。更にこの着色によって、他の種類の錠剤と明確に識別することができ、誤使用を避ける効果もある。
【0010】
微量添加成分と着色剤を溶かした溶液は、吹き付け、滴下、印刷、浸漬等の方法により、鉛電池添加剤錠剤の表面に付着させると、多孔質な錠剤に吸収されてその表面が所定の色に着色される。この着色の面積や濃度により、個々の錠剤に吸収された微量添加成分の量を容易に検出することができる。これらの微量添加成分の添加量は通常厳密に制御する必要は無く、目標値に対して数十%の誤差があっても差支えない。従って錠剤の着色の程度を管理することで、充分にその目的を達成できる。
【0011】
微量添加成分と着色剤を溶かした溶液を鉛電池添加剤錠剤の表面に付着させた後、これを乾燥させると、該錠剤の表面に難溶性の層が形成され、これによってポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩等の溶解速度が制限される。例えば円盤状の錠剤の上面と下面に微量添加成分と着色剤を溶かした溶液を付着させ、これを乾燥した場合、錠剤の溶解速度を十分の一程度に制限することが出来、添加剤の効果を長期間持続させることが可能であり、また、添加剤の添加に伴なう発泡現象も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0012】
直径10ミリメートル、厚さ6ミリメートル、重量0.5グラムのポリビニルアルコールの錠剤の表面に、硫酸銀0.2%とローズベンガル0.02%とを含む水溶液0.03ミリリットルを吹きつけ、これを常温で乾燥した。錠剤は薄い赤色に着色し、所定量の硫酸銀を含むことがその外観から容易に確認できた。またこの錠剤は鉛電池の電解液中で容易に溶解し、所定の機能を発揮した。
【産業上の利用可能性】
【0013】
以上の説明から明らかなとおり、本発明は、鉛電池の長寿命化、活性化に使用する添加剤錠剤の性能向上に用いる微量添加成分の添加方法の合理化とその品質管理に極めて有効な方法を提供するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩の少なくとも一つを含む錠剤の表面の一部または全表面に、微量添加成分と着色剤とが含まれることを特長とする鉛電池添加剤錠剤。
【請求項2】
請求項1において、微量添加成分が銀、インジウムよりなる群の中の少なくとも一つである鉛電池添加剤錠剤。
【請求項3】
ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩の少なくとも一つを含む錠剤の表面の一部または全表面に、微量添加成分と着色剤とが含まれる溶液の所定量を付着せしめた後乾燥することを特長とする鉛電池添加剤錠剤の製造法。
【請求項4】
請求項3において、微量添加成分が銀、インジウムよりなる群の中の少なくとも一つである鉛電池添加剤錠剤の製造法。

【公開番号】特開2009−48984(P2009−48984A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240161(P2007−240161)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(596115953)
【出願人】(596062772)
【Fターム(参考)】